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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 B60B 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 B60B 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60B |
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管理番号 | 1345440 |
審判番号 | 不服2017-16619 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-11-08 |
確定日 | 2018-11-13 |
事件の表示 | 特願2013-106536号「走行機構」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月8日出願公開、特開2014-226983号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成25年5月20日を出願日とする特許出願であって、平成29年1月19日付けで拒絶理由が通知され、同年3月27日付けで意見書が提出され、同年8月31日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月8日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。 第2 原査定(平成29年8月31日付け拒絶査定)の概要 この出願については、平成29年1月19日付け拒絶理由通知書に記載した以下の理由によって、拒絶をすべきものである。 この出願の請求項1?7に係る発明は、引用文献1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.実願昭49-135068号(実開昭51-60003号)のマイクロフィルム 2.特開昭63-247101号公報 第3 審判請求時の補正について 審判請求時の補正は、補正前の請求項2に記載した、発明を特定するために必要な事項である「車輪」又は「係止部材」に取り付けられた「弾性部材」が、「係止部材の各々の前後」に取り付けられていることをさらに特定し、補正後の請求項1に係る発明とするとともに、補正前の請求項3?7を補正後の請求項2?6とするものである。 補正後の請求項1に係る補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0027】等の記載及び図面の図1、図2、図7等の記載に基づくものであり、発明を特定するために必要な事項である「弾性部材」の取り付け位置を減縮するものと認められ、新規事項を追加するものではない。また、本件補正は、特別な技術的特徴を変更(シフト補正)をしようとするものではないことも明らかである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び第4項の規定に適合するものであり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、「第5 当審の判断」及び「第6 まとめ」に示すように、補正後の請求項1?6に係る発明は、独立特許要件を満たすものであるから、同法同条第6項にも適合する。 2 その他の補正について 補正前の請求項3?7を補正後の請求項2?6に係る発明とする補正が、特許法第17条の2第3項から第5項の規定に適合するものであることは明らかである。 第4 本願発明 本願の請求項1?6に係る発明(以下「本願発明1?6」という。それぞれ原査定の請求項2?7に係る発明と対応する。)は、平成29年11月8日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。(下線は補正箇所である。当審で付与した。) 「【請求項1】 車輪と、複数の係止部材とを具備し、 前記係止部材の各々が、前記車輪の周方向に沿った前後方向に揺動可能に該車輪の外周部に取り付けられ、且つ、前記車輪の周方向に沿った前後の端部に係止部を有し、 弾性部材をさらに具備し、前記弾性部材が、揺動した前記係止部材を復元する方向に付勢するように、前記係止部材の各々の前後において、前記車輪又は前記係止部材に取り付けられていることを特徴とする走行機構。 【請求項2】 前記係止部材が、前記車輪の回転軸線と平行な軸線回りに揺動することを特徴とする請求項1に記載の走行機構。 【請求項3】 前記係止部材の各々が、走行時に路面と接する凸曲面状の走行面を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の走行機構。 【請求項4】 前記係止部材の各々が、扇形の縦断面形状を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の走行機構。 【請求項5】 前記扇形の円弧の曲率半径が、前記車輪の半径よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の走行機構。 【請求項6】 前記複数の係止部材が、前記車輪の周方向に沿って等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の走行機構。」 第5 当審の判断 1 引用文献の記載事項等 (1) 引用文献1の記載事項等 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明(以下「引用発明1」という。)は、以下のとおりである。 (1a)(明細書第2頁第5行?第3頁第8行) 「従来の車輪の如く[1](当審注:丸数字を[]で表記した。以下同様。)輪心には車輪が嵌め込めるようになつており、これに[2]のスポークを左右に首を振れるように取りつける。又、この[2]スポークはワダチに対しても本図に示す如く前向きに傾斜をもたせて取りつける。このため急に大きな重力がかかつた場合、ワダチが引つ込む事が出来る。その場合、[3]の押えバネがすぐ元に戻し、又、重力を支える力を持たされる。ワダチは[4]の芯金とこれを鋳込んだスポンジ状のゴム[5]からなる。[4]芯金は鋼バネ板で作られ、適当なバネ性も持ち、[2]スポークにて支えられている地点と地面に接する地点との間隔の相違が重力に依るモーメントの大小を起こし、これによつて異なつた歪みが起こり、地面と車軸に対し殆んど同一の高さを維持する。[5]ワダチゴムが次のワダチに移動する場合も同様に同一の高さを維持し、従来の円のワダチの回転と同様に回転出来る。[6]スポーク押え板は、スポークが左右に、車輪が側面に傾かない為の支え板であり、スポークとの摩擦をさけ、フエノール樹脂等を当り面に使用する。[4][5]ワダチは車軸に対し同心円でなく、バネ性にて移動時に車軸に対し等距離にあるように作る。」 (1b) 引用文献1には、以下の図面が記載されている。 第1図 (1c) 摘示(1a)に記載された事項を踏まえると、第1図(摘示(1b))から、以下の事項が看取される。 「輪心[1]に複数のスポーク[2]が取り付けられ、前記複数のスポーク[2]のそれぞれにワダチ[4][5]が取り付けられている。」 上記(1a)?(1c)の記載を総合すると、引用文献1には、以下の引用発明1が記載されている。 「輪心[1]に複数のスポーク[2]を左右に首を振れるように取り付け、 前記複数のスポーク[2]のそれぞれにワダチ[4][5]が取り付けられ、 前記ワダチ[4][5]は、芯金[4]とこれを鋳込んだスポンジ状のゴム[5]からなり、 前記スポーク[2]は前記ワダチ[4][5]に対しても前向きに傾斜をもたせて取り付けられ、それにより、急に大きな重力がかかつた場合、前記ワダチ[4][5]が引つ込む事が出来、その場合、押えバネ[3]がすぐ元に戻し、又、重力を支える力を持たされる、 車輪。」 (2) 引用文献2の記載事項等 引用文献2の記載事項及び引用文献2に記載された発明(以下「引用発明2」という。)は、以下のとおりである。 (2a)(第1頁左下欄第4?10行) 「2.特許請求の範囲 円形踏面31を持つ回転足3・3・が水平軸2により放射状車輪1に設けられ、該回転足3の各々は伸縮体4を介して偏心環5と連結され、該偏心環5は操縦部6に挿入された制御体8と連動され、該制御体8は上下及び回動自在の構造となされてなる回転足機構」 引用発明2は、「2.特許請求の範囲」(摘示(2a))に記載された事項により特定されたとおりのものである。 2 対比・判断 (1) 引用発明1を主引用発明とした場合 (1-1) 本願発明1について ア 本願明細書段落【0020】の「・・・車輪10は、円筒状の車輪本体11と、車輪本体11の両端に配置され且つ車輪本体11より大径の環状プレート12とを有するボビン状の部材である。・・・」の記載、本願明細書段落【0021】の「・・・係止部材20は、揺動軸21と、走行機構1の走行時に路面と接する走行面22と、対向する略扇形の端面23と、係止部材20の前面及び後面である係止面24とを有している。係止部材20の各々は、揺動軸21の両端を車輪10の両端の環状プレート12の取付孔13に嵌合させることによって、車輪10の周方向に沿った前後方向に揺動可能に車輪10の外周部に取り付けられる(図1及び図2)。・・・」の記載及び本願図面の【図3】を参照すれば、本願発明1の「車輪」は、「ハブ」(「車輪などの中心部の、軸とスポークの間の部材。」[株式会社岩波書店 広辞苑第六版])の機能を有する構成であるといえる。 そして、引用発明1の「輪心[1]」は、「スポーク[2]」が取り付けられる構成であることから、「ハブ」の機能を有する構成であるといえる。 そうすると、本願発明1の「車輪」と、引用発明1の「輪心[1]」とは、いずれも「ハブ」の機能を有する構成であることから、引用発明1の「輪心[1]」が、本願発明1の「車輪」に相当するといえる。 イ 本願発明1の「複数の係止部材」に関し、「係止部材」は、「前記車輪の周方向に沿った前後方向に揺動可能に該車輪の外周部に取り付けられ、且つ、前記車輪の周方向に沿った前後の端部に係止部を有」する構成であり、本願明細書段落【0021】の「・・・係止部材20は、揺動軸21と、走行機構1の走行時に路面と接する走行面22と、対向する略扇形の端面23と、係止部材20の前面及び後面である係止面24とを有している。・・・」の記載を考慮すると、「走行時に路面と接する」機能を有する構成であるといえる。 一方、引用発明1の「スポーク[2]」は、「輪心[1]」に、「左右に首を振れるように取り付け」られた構成であり、「左右」とは、「『輪心[1]』の周方向に沿った前後方向」であることもその構成から明らかである。 また、「わだち」とは、「[1]車が通って道に残した輪の跡。てつ。[2]転じて、通過する車の輪。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であることを考慮すれば、引用発明1の「ワダチ[4][5]」は、「走行時に路面と接する」機能を有する構成であるといえる。 そして、引用発明1の「輪心[1]に複数のスポーク[2]を左右に首を振れるように取り付け、それぞれの前記複数のスポーク[2]にワダチ[4][5]が取り付けられ」た構成と、本願発明1の「複数の係止部材とを具備し、前記係止部材の各々が、前記車輪の周方向に沿った前後方向に揺動可能に該車輪の外周部に取り付けられ、且つ、前記車輪の周方向に沿った前後の端部に係止部を有」する構成とは、「複数の係止部材とを具備し、前記係止部材の各々が、前記車輪の周方向に沿った前後方向に揺動可能に該車輪の外周部に取り付けられ、」の構成を限度として共通する。 ウ 引用発明1の「押えバネ[3]」は、「前記スポーク[2]は前記ワダチ[4][5]に対しても前向きに傾斜をもたせて取り付けられ、それにより、急に大きな重力がかかつた場合、前記ワダチ[4][5]が引つ込む事が出来、その場合」に、「ワダチ[4][5]」を「すぐ元に戻」す構成であることから、「押えバネ[3]」は「スポーク[2]」の前に取り付けられている。 そうすると、引用発明1のかかる「押えバネ[3]」を備える構成と、本願発明1の「弾性部材をさらに具備し、前記弾性部材が、揺動した前記係止部材を復元する方向に付勢するように、前記係止部材の各々の前後において、前記車輪又は前記係止部材に取り付けられている」構成とは、「弾性部材をさらに具備し、前記弾性部材が、揺動した前記係止部材を復元する方向に付勢するように、前記係止部材の各々の前において、前記車輪又は前記係止部材に取り付けられている」構成の限度で共通する。 エ 引用発明1の「車輪」は、その機能・構成から、本願発明1の「走行機構」に相当する。 上記ア?エを踏まえると、本願発明1と引用発明1の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 車輪と、複数の係止部材とを具備し、 前記係止部材の各々が、前記車輪の周方向に沿った前後方向に揺動可能に該車輪の外周部に取り付けられ、 弾性部材をさらに具備し、前記弾性部材が、揺動した前記係止部材を復元する方向に付勢するように、前記係止部材の各々の前において、前記車輪又は前記係止部材に取り付けられている走行機構。 <相違点1> 本願発明1の「係止部材」は、「前記車輪の周方向に沿った前後の端部に係止部を有し」ているのに対し、引用発明1の「ワダチ[4][5]」は、かかる特定がされていない点。 <相違点2> 本願発明1の「弾性部材」は、「係止部材の各々の前後」に取り付けられているのに対し、引用発明1の「押えバネ[3]」は、「スポーク[2]」の「前」にのみ取り付けられている点。 事案に鑑み、上記相違点2について検討する。 上記相違点2に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び2のいずれにも記載も示唆もされておらず、当業者といえども、引用発明1、引用文献1及び引用文献2に記載された技術的事項から、上記相違点2に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。 また、本願発明1は、上記相違点2に係る構成によって、「車輪10」が「時計回り」に回転する場合であっても、「反時計回り」に回転する場合であっても、「構成及び効果において相違はない」状態で(段落【0019】)、「段差のある路面や不整地を走行する際に、大きなトラクションを得ることができる」(段落【0015】)という、格別な効果を奏するものである。 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 (1-2) 本願発明2?6について 本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (2) 引用発明2を主引用発明とした場合 (2-1)本願発明1について ア 上記「(1)ア」のとおり、本願発明1の「車輪」は、「ハブ」の機能を有する構成であるといえる。 そして、引用発明2の「放射状車輪1」は、「ハブ」の機能を有する構成であるといえるから、引用発明1の「放射状車輪1」が、本願発明1の「車輪」に相当する。 イ 上記「(1)イ」のとおり、本願発明1の「係止部材」は、「走行時に路面と接する」機能を有する構成であることから、引用発明2の「回転足3」が、本願発明1の「係止部材」に相当し、複数具備されていることも明らかである。 上記ア及びイを踏まえると、本願発明1と引用発明2の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 車輪と、複数の係止部材とを具備した走行機構。 <相違点3> 本願発明1の「係止部材」は、「前記車輪の周方向に沿った前後方向に揺動可能に該車輪の外周部に取り付けられ、且つ、前記車輪の周方向に沿った前後の端部に係止部を有し」ているのに対し、引用発明1の「回転足3」は、かかる特定がされていない点。 <相違点4> 本願発明1は「弾性部材」をさらに具備し、「前記弾性部材が、揺動した前記係止部材を復元する方向に付勢するように、前記係止部材の各々の前後において、前記車輪又は前記係止部材に取り付けられている」のに対し、引用発明1は、「弾性部材を備えていない」点。 事案に鑑み、上記相違点4について検討する。 上記相違点4に係る本願発明1の構成は、引用文献1及び2のいずれにも記載も示唆もされておらず、当業者といえども、引用発明2、引用文献1及び引用文献2に記載された技術的事項から、上記相違点4に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。 また、本願発明1は、上記相違点4に係る構成によって、「車輪10」が「時計回り」に回転する場合であっても、「反時計回り」に回転する場合であっても、「構成及び効果において相違はない」状態で(段落【0019】)、「段差のある路面や不整地を走行する際に、大きなトラクションを得ることができる」(段落【0015】)という、格別な効果を奏するものである。 したがって、相違点3について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明2及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。 (2-2) 本願発明2?6について 本願発明2?6は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに減縮したものであるから、本願発明1と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2018-10-26 |
出願番号 | 特願2013-106536(P2013-106536) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60B)
P 1 8・ 537- WY (B60B) P 1 8・ 536- WY (B60B) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 田々井 正吾 |
特許庁審判長 |
中川 真一 |
特許庁審判官 |
仁木 学 氏原 康宏 |
発明の名称 | 走行機構 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 伊藤 健太郎 |
代理人 | 伊藤 公一 |
代理人 | 伊藤 健太郎 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 三橋 真二 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 伊藤 公一 |