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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23F
管理番号 1345631
審判番号 不服2017-19041  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-22 
確定日 2018-11-26 
事件の表示 特願2013-264978号「凍結濃縮法による濃縮茶抽出液及び抽出物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年7月2日出願公開、特開2015-119657号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年12月24日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成29年 2月20日 : 拒絶理由通知
同年 4月21日 : 意見書
同年 9月13日 : 拒絶査定
同年12月22日 : 審判請求書及び手続補正書
平成30年 2月 7日 : 手続補正書(方式)

第2 原査定の概要
原査定(平成29年9月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし11に係る発明は、以下の引用文献1及び2に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平5-328901号公報
2.特開昭61-146150号公報

第3 本願発明
本願請求項1ないし3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成29年12月22日の手続補正(以下、「本件補正」という。)で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。
なお、本件補正は、本件補正前の請求項1ないし8の削除であり、本件補正後の請求項1ないし3は本件補正前の請求項9ないし11と発明を特定する事項が同一である。

「【請求項1】
デキストリンの添加によって茶抽出液をBrix7.3%以上に調整した後、凍結濃縮する濃縮茶抽出液の濃縮時の香味損失抑制方法。
【請求項2】
デキストリンがマルトデキストリンである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
マルトデキストリンのDEが16?21である請求項1または2に記載の方法。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】茶類の熱水抽出液を予めタンナーゼ処理した後凍結濃縮することを特徴とする濃縮茶類抽出液の製法。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】茶類抽出液についてみれば、前記の如くタンナーゼ処理することによってティークリームの生成を防止できることは知られているが、タンナーゼ処理後の抽出液を濃縮する方法としては一般的に減圧濃縮法が採用されている。そのために加熱による風味の劣化及び水分の蒸発に伴う香気成分の散逸は避けられず、茶類特有の馥郁とした好ましい風味を保有する濃縮液を得ることは困難である。
【0005】また紅茶の凍結濃縮法も既に検討されているが、茶類の熱水抽出液は凍結すると多量のティークリームが生成するために凍結濃縮法による濃縮は困難であり実用には至っていない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の如き従来方法の欠点を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、茶類の熱水抽出液を予めタンナーゼ処理した後凍結することによりティークリームの生成もなく、極めて良好、均一な氷晶が形成され、これを適宜な分離手段により母液から分離することにより、茶類のデリケートな風味をそのまま保持した濃縮液が容易に得られることを見いだし本発明を完成した。
【0007】従って本発明の目的は、茶類の熱水抽出液を予めタンナーゼ処理した後凍結濃縮するという簡便な手段により、風味及び嗜好性に優れた濃縮茶類抽出液を工業的に極めて有利に製造する方法を提供するにある。」
「【0015】
【参考例1】
紅茶抽出液の調製
紅茶葉(BOP:スリランカ産)150gに約85℃の熱水1500gを注ぎ、約3分間保温静置した後茶葉を分離し、Bx4.0°の紅茶抽出液1200gを得た。
【0016】
【実施例1】参考例1で得られた抽出液400gにタンナーゼ(キッコーマン製)0.04g(0.01%)を加え、35?40℃で2時間酵素処理を行った。次いで90?95℃で10分間加熱し、酵素の失活と殺菌を行った。酵素処理を終えた抽出液を-20℃に凍結し、ついで半解凍粉砕を行ってシャーベット状とした後-2℃でバスケット型遠心分離器で氷晶を分離し、Bx9.7°の濃縮液113gを得た(本発明品1:濃縮物固形分収率71%)。氷晶部264gを解凍したところBxは0.6°であった。」
「【0023】
【実施例2】参考例3で得られたウーロン茶抽出液600gにタンナーゼ(キッコーマン)0.03g(0.005%)を加え、約35?40℃で1時間酵素処理を行った。次いで90?95℃で10分間加熱し、酵素の失活と殺菌を行なった。酵素処理を終えた抽出液を-20℃に凍結し、次いで半解凍粉砕を行ってシャーベット状にして-2℃でバスケット型遠心分離器で氷晶を分離し、Bx8°の濃縮液180gを得た(本発明品2:濃縮物固形分収率80%)。氷晶部396gを解凍したところBxは0.5°であった。」
「【0029】
【発明の効果】本発明方法によれば、従来凍結濃縮法に適さないとされてきた茶類抽出液を予めタンナーゼ処理してから凍結することにより速やかに氷晶が生成し、容易に凍結濃縮することができる。しかもタンナーゼ処理を行わない従来の凍結濃縮法に比べて著しく抽出収率を向上することができる。さらに蒸発濃縮法の場合のように茶類抽出液は加熱されることがないため抽出液中の香気香味成分等が散逸したり、劣化することがほとんどなく、また分離された氷晶は予備冷却に利用した後溶解して次の抽出溶媒として利用することもでき、歩留まりも顕著に向上する。」

上記記載から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「茶類の熱水抽出液を予めタンナーゼ処理した後、凍結濃縮する濃縮茶類抽出液の製法。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「特許請求の範囲
1. 茶類を水抽出処理して茶類エキストラクトを製造するに際して、約5乃至約30重量%のデキストリンを予め添加溶解したデキストリン水溶液を用いて且つ約80℃以上の抽出温度で抽出処理することを特徴とする茶類エキストラクトの製法。」
「本発明者等は、上記の如き茶類の高温抽出の利点を有効に利用でき、尚かつ冷却した場合におけるクリームダウンを抑制する方法を検討した。
その結果、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの茶類を熱水抽出するに際し、該熱水に予め、約5乃至約30重量%のデキストリンを溶解した溶液を用い、且つ、抽出処理温度を80℃以上とすることにより、従来の茶類エキストラクト製造上の前記した如き数々の欠点が一挙に解決できることを見出し本発明を完成した。
従つて本発明の目的は、香味、色調に優れ、嗜好性の高い濃厚な茶類エキストラクトを極めて効率良く、工業的に有利に製造する方法を提供することにある。」(3頁右上欄末行?左下欄13行)
「実 施 例 1
デキストリン・・・240gを脱塩水2,160gに溶解して10%デキストリン水溶液とし、これに市販紅茶200gを加えて、90°?95°にて30分間攪拌抽出した。抽出終了後30℃まで冷却し、遠心分離、晒布濾過して、紅茶エキストラクト2,100gを得た。」(5頁左上欄8?15行)
「〔分析結果及び官能評価〕
実施例1及び比較例1?3で得られた紅茶エキストラクトについて、Brix、pH、タンニン含有量及びカフエイン含有量を分析した。またこれらのエキストラクトを約25℃で12時間保管した後の沈殿生成量を肉眼観察した。これらの結果を第1表に示した。

*注) -:沈殿が認められなかつたもの、+:沈殿がはつきりと認められたもの、++:沈殿が多量生成し沈殿層を形成していたもの

また実施例1および比較例1?3によつて得られたエキストラクト各10gに熱水50gを加えて希釈し、官能により水色、香り、味及び総合評価を行つた。官能検査は専門パネル20人により行ない、色調、香り、味及び嗜好性について、最も好むものを1点選択させた。その結果を第2表に示した。

第2表の結果が示す通り、実施例1で得られた本発明の紅茶エキストラクトは、香味、色調共に顕著に優れ、嗜好性においては他に抜きん出ていた。」(5頁右上欄12行?6頁左上欄1行)

上記記載から、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「茶類を水抽出処理して茶類エキストラクトを製造するに際して、約5乃至約30重量%のデキストリンを予め添加溶解したデキストリン水溶液を用いて且つ約80℃以上の抽出温度で抽出処理することを特徴とする茶類エキストラクトの製法。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。
引用発明1の「茶類の熱水抽出液」、「凍結濃縮」は、その作用又は技術的意義からみて、本願発明1の「茶抽出液」、「凍結濃縮」に相当する。
また、引用発明1の「濃縮茶類抽出液の製法」は、本願発明1の「濃縮茶抽出液の濃縮時の香味損失抑制方法」に、「方法」という限りにおいて相当する。

(2)一致点
本願発明1と引用発明1は、以下の構成において一致する。
「茶抽出液を凍結濃縮する方法。」

(3)相違点
本願発明1と引用発明1は、以下の点で相違する。
ア 相違点1
本願発明1は「デキストリンの添加によって茶抽出液をBrix7.3%以上に調整した後、凍結濃縮する」のに対し、引用発明1は「茶類の熱水抽出液を予めタンナーゼ処理した後、凍結濃縮する」点。
イ 相違点2
本願発明1は「濃縮茶抽出液の濃縮時の香味損失抑制方法」であるのに対し、引用発明1は「濃縮茶類抽出液の製法」である点。

(4)判断
ア 相違点1についての判断
引用発明1は、茶類の熱水抽出液を凍結すると多量のティークリームが生成されるために凍結濃縮法による濃縮は困難であるという問題を解決するために、凍結濃縮前にタンナーゼ処理を行うというものである(【0005】及び【0006】)。しかし、タンナーゼ処理以外の処理であっても、ティークリームの生成を抑制すれば凍結濃縮が可能であることまでを開示するものではない。
これに対し、引用発明2は、デキストリン水溶液を用いた茶類の抽出によりクリームダウンを抑制するものであり、「第1表」を参照すると、「実施例1」は「Brix」「13.1°」「沈殿の生成」「-」であり、沈殿が認められなかったものである。
そうすると、引用発明1のタンナーゼ処理前の茶類の熱水抽出液として、既に沈殿の認められない引用発明2の茶類エキストラクトをあえて、更に採用する理由はないといえる。
また、本願発明は、「香味の優れた濃縮茶抽出液を効率的に製造する凍結濃縮法を提供すること」を目的としており(【0011】)、「茶類の抽出液のBrixが7.3%以上であると凍結濃縮を開始した際に茶抽出液から純粋な氷晶が生成・分離し易くなるため、効率よく濃縮を開始することができる。Brixが7.3%未満であると茶抽出液全体が氷結し、純粋な氷晶ができないため凍結濃縮を開始することができない。」(【0024】)という理由により、本願発明1は「デキストリンの添加によって茶抽出液をBrix7.3%以上に調整した後、凍結濃縮する」ものである。
これに対し、引用文献2には凍結濃縮についての記載はないし、引用文献1には凍結濃縮前のBrix調整に係る事項やBrix調整により凍結濃縮の際に純粋な氷晶を生成することについての記載ないし示唆はない。
以上から、引用発明1及び引用発明2に基づき、相違点1に係る本願発明1の構成は当業者が容易に想到し得たものとはいえない。

イ したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-13 
出願番号 特願2013-264978(P2013-264978)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 濱田 光浩  
特許庁審判長 紀本 孝
特許庁審判官 窪田 治彦
藤原 直欣
発明の名称 凍結濃縮法による濃縮茶抽出液及び抽出物の製造方法  
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