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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A23L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A23L
管理番号 1345667
審判番号 不服2017-16500  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-06 
確定日 2018-11-27 
事件の表示 特願2016-180088号「泡立ちの低減された脱酸トマト汁の製造方法、及び脱酸トマト汁製造時の泡立ち低減方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開、特開2018- 42508号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年9月15日の出願であって、平成29年7月7日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年8月9日に意見書及び手続補正書が提出され、平成29年8月21日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年11月6日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、平成30年8月15日付けで拒絶理由通知がされ、平成30年9月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成30年9月3日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、本願発明1及び4は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
脱酸トマト汁の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、配合であり、
配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり、その配合先は、濃縮除パルプトマト汁の希釈液であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液の漿液相対粘度は、1.36以上7.08以下であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液のBrixは、10.1以上40.4以下であり、
前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である。」

「【請求項4】
炭酸カルシウムを配合し、配合後に生成するカルシウム生成物の少なくとも一部を除去することによる脱酸トマト汁製造における泡立ち低減方法であって、それを構成するのは、少なくとも、配合であり、
配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり、その配合先は、濃縮除パルプトマト汁の希釈液であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液の漿液相対粘度は、1.36以上7.08以下であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液のBrixは、10.1以上40.1以下であり、
前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である。」

なお、本願発明2、3、5及び6の概要は以下のとおりである。
本願発明2及び3は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明5及び6は、本願発明4を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2012-223144号公報)には、次の事項が記載されている。

1a)「【請求項1】
透明トマト汁にカルシウム又はその塩を配合することにより得られる、
脱酸トマト汁。
【請求項2】
前記カルシウム又はその塩が、炭酸カルシウムである、
請求項1に記載の脱酸トマト汁。
【請求項3】
配合後に生成するカルシウム生成物の少なくとも一部を除去することにより得られる、
請求項1又は2に記載の脱酸トマト汁。
【請求項4】
前記カルシウム生成物が、クエン酸カルシウムである、
請求項3に記載の脱酸トマト汁。
【請求項5】
珪藻土で濾過することにより前記カルシウム生成物の少なくとも一部を除去する、
請求項3又は4に記載の脱酸トマト汁。
【請求項6】
粘度が0?100cPである、
請求項1?5のいずれか一項に記載の脱酸トマト汁。
【請求項7】
トマト搾汁又はその濃縮物と、
請求項1?6のいずれか一項に記載の脱酸トマト汁と、を少なくとも含有する、
トマト含有飲料。
【請求項8】
トマト搾汁又はその濃縮物に、請求項1?6のいずれか一項に記載の脱酸トマト汁を配合することを特徴とする、
トマト含有飲料の酸味抑制方法。」

1b)「【0001】
本発明は、脱酸トマト汁及びその製造方法、並びに、トマト含有飲料及びトマト含有飲料の酸味抑制方法に関する。」

1c)「【0029】
ここで、本実施形態の脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができ、特に限定されないが、高糖度の脱酸トマト汁を得る観点から、Brixが8?80であることが好ましい。なお、本明細書において、糖度は、Brix値を意味する。ここで、Brix値とは、溶液100g中に含まれる可溶性固形分(糖類など)のグラム量を計測する単位である。Brix値は、市販の屈折率計又は糖度計を用いて測定することができる。」

1d)「【0033】
上記のカルシウム又はその塩の配合量は、脱酸トマト汁の所望する酸味に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。例えば、透明トマト汁中にクエン酸のみが含まれ、且つ、カルシウム又はその塩が透明トマト汁中で100%解離し、クエン酸とカルシウム又はその塩が100%反応してカルシウム生成物を形成する場合、当該クエン酸に対して、カルシウム又はその塩0.8当量を配合すれば十分である。但し、実際には、透明トマト汁中にはクエン酸以外の他の成分が含まれ、また、カルシウム又はその塩が透明トマト汁中で100%解離し得ず、さらには、クエン酸とカルシウム又その塩によるカルシウム生成物の形成が100%進行し得ないので、実用上は、これらのバランスを考慮して、適宜設定する。
【0034】
カルシウム又はその塩を配合することにより生成するカルシウム生成物(塩、水和物、又はキレート等)の具体例としては、例えば、クエン酸カルシウム、リンゴ酸カルシウム、乳酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウム、グアニル酸カルシウム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0035】
ここで、上記カルシウム生成物を脱酸トマト汁から除去すると、脱酸トマト汁の酸味が一段と低減する。また、未反応のカルシウム又はその塩及びカルシウム生成物は白色の固形物が多く、かかる白色沈殿物の存在により飲料の見栄えが損なわれ得るとともに、他の飲料と混合した際に所望しない色変化を生じ得る。したがって、透明トマト汁にカルシウム又はその塩を配合した後、上記カルシウム生成物の少なくとも一部を除去することが好ましい。その際、未反応のカルシウム又はその塩を除去することがより好ましい。カルシウム生成物の除去方法は、濾過、遠心分離等の公知の手法を適宜適用して行うことができ、特に限定されない。とりわけ、脱酸トマト汁中に沈殿・析出・分散しているカルシウム生成物は、濾過法によって簡易且つ低コストで除去することができる。かかる濾過法を適用する場合、安価に透明性の高い脱酸トマト汁を得る観点から、珪藻土或いはフィルターを用いた濾過等を用いることが好ましい。」

1e)「【0037】
なお、脱酸トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができるため、特に限定されないが、トマト含有飲料の低粘度化をより一層高める観点から、粘度が0?100cPであることが好ましい。ここで、脱酸トマト汁の粘度は、トマトストレートBrix4.5換算で算出したものとする。また、粘度が0とは、粘度が0.5未満のもの、及び、検出限界以下のものを含む含意である。粘度の下限は、特に限定されないが、0.01cP以上であることが好ましい。」

1f)「【0061】
(実施例1)
まず、市販の透明濃縮トマト汁(Clear Tomato Concentrate 60°Brix、LYCORED社製、Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:17.5、酸度:1.06、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備した。次に、得られた透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌して、発生する炭酸ガスを排出した。タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、市販の珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去して、実施例1の脱酸トマト汁を作製した。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「脱酸トマト汁の製造方法であって、透明濃縮トマト汁(Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:17.5、酸度:1.06、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備し、次に、得られた透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌して、発生する炭酸ガスを排出し、タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去することで構成される、脱酸トマト汁の製造方法。」

2.引用文献2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2014-30387号公報)には、次の事項が記載されている。

2a)「【0030】
(脱酸トマト汁)
脱酸トマト汁は、トマト汁、好ましくは透明トマト汁を、脱酸処理することにより得られる。酸味を抑え、甘味を引き出したトマト含有飲料を作製するには、脱酸処理を行い、酸成分を低減させた1または2種類以上脱酸トマト汁を、一部含有することが好ましい。脱酸処理の手法に関しては、吸着剤処理や膜処理など、一般に用いられる脱酸処理を採用することができるが、好ましくはカルシウム又はその塩を配合することにより脱酸処理する「カルシウム脱酸」、及び重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより脱酸処理する「陰イオン交換樹脂脱酸」が採用される。
【0031】
脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができる。高糖度の脱酸トマト汁を得たい場合は、Brixが8?80であることが好ましいが、特に限定するものではない。なお、本明細書において、糖度とはBrix値を意味する。ここで、Brix値とは、溶液100g中に含まれる可溶性固形分(糖類など)のグラム量を計測する単位である。Brix値は、市販の屈折率計又は糖度計を用いて測定することができる。
【0032】
また、本発明の脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁等は、特に限定されないが、Brix4.5調整時の酸度が0.1?0.5であることが好ましい。酸度が低い透明トマト汁を用いることで得られる脱酸トマト汁の酸度が低くなる傾向にある。一方、透明トマト汁の酸度が高いほど、カルシウム又はその塩の配合による酸度の低減効果が顕著に発揮され易い傾向にある。なお、本明細書において、酸度は、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を用いた電位差滴定法により算出される、クエン酸換算での濃度(%)を意味する。
【0033】
また、本発明の脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁等は、特に限定されないが、pHが3.7?4.6であることが好ましい。pHが中性側に偏ると、カルシウム又はその塩の配合による効果が低くなり、得られる脱酸トマト汁のクエン酸の低減率が低くなる傾向にある。
【0034】
(カルシウム脱酸トマト汁)
カルシウム脱酸とは、上記のトマト汁等、好ましくは透明トマト汁に、カルシウム又はその塩を配合することにより、トマト汁中の酸成分を除去することであり、処理後の透明トマト汁(脱酸トマト汁)において酸味が低減するものである。これは、透明トマト汁等に含まれる酸味成分、例えばクエン酸等のヒドロキシ酸及とカルシウムとが反応してカルシウム生成物(塩、水和物、又はキレート等)を形成することによるものと推定される。脱酸トマト汁の酸味を低減させるために配合されるカルシウム又はその塩の具体例としては、例えば、カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び乳酸カルシウムが好ましく、脱酸処理後トマト加工物の香味へ与える影響を極力抑える観点から、炭酸カルシウムがより好ましい。上記のカルシウム又はその塩の配合量は、脱酸トマト汁の所望する酸味に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。カルシウム又はその塩を配合することにより生成するカルシウム生成物(塩、水和物、又はキレート等)を脱酸トマト汁から除去すると、脱酸トマト汁の酸味が一段と低減する。また、未反応のカルシウム又はその塩及びカルシウム生成物は白色の固形物が多く、かかる白色沈殿物の存在により飲料の見栄えが損なわれ得るとともに、他の飲料と混合した際に所望しない色変化を生じ得る。したがって、透明トマト汁にカルシウム又はその塩を配合した後、上記カルシウム生成物の少なくとも一部を除去することが好ましい。その際、未反応のカルシウム又はその塩を除去することがより好ましい。カルシウム生成物の除去方法は、濾過、遠心分離等の公知の手法を適宜適用して行うことができ、特に限定されない。とりわけ、脱酸トマト汁中に沈殿・析出・分散しているカルシウム生成物は、濾過法によって簡易且つ低コストで除去することができる。かかる濾過法を適用する場合、安価に透明性の高い脱酸トマト汁を得る観点から、珪藻土或いはフィルターを用いた濾過等を用いることが好ましい。
【0035】
かくして得られる濾過、遠心分離等の処理を施した脱酸トマト汁は、不要な水不溶性固形分の少なくとも一部が除去され、且つ、カルシウム生成物が必要に応じて除去されることにより、そうでないものと比較して、低粘度であり、且つ、酸度が低減されたものとなる。そのため、かかる脱酸トマト汁を用いて、トマト含有飲料を調製することにより、得られるトマト含有飲料の粘度の低減、及び、酸度或いは酸味の低減が、再現性よく簡便に行われる。」

2b)「【0063】
(脱酸トマト汁試料A)
本実施例において使用するカルシウム脱酸トマト汁は以下の手順で調製されたものである。
まず、市販の透明濃縮トマト加工物(Clear Tomato Concentrate 60°Brix、LYCORED社製、Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:17.5、酸度:1.06、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備した。次に、得られた透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌して、発生する炭酸ガスを排出した。タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、市販の珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去した。」

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「カルシウム脱酸トマト汁を調整する方法であって、透明濃縮トマト加工物(Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:17.5、酸度:1.06、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備し、次に、得られた透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌して、発生する炭酸ガスを排出し、タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去することで構成される、カルシウム脱酸トマト汁を調整する方法。」

3.引用文献3について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(特開2014-30388号公報)には、次の事項が記載されている。

3a)「【0029】
(脱酸トマト汁)
脱酸トマト汁は、トマト汁、好ましくは透明トマト汁を、脱酸処理することにより得られる。酸味を抑え、甘味を引き出したトマト含有飲料を作製するには、脱酸処理を行い、酸成分を低減させた1または2種類以上脱酸トマト汁を、一部含有することが好ましい。脱酸処理の手法に関しては、吸着剤処理や膜処理など、一般に用いられる脱酸処理を採用することができるが、好ましくはカルシウム又はその塩を配合することにより脱酸処理する「カルシウム脱酸」、及び重炭酸置換又は炭酸置換された陰イオン交換樹脂に通液することにより脱酸処理する「陰イオン交換樹脂脱酸」が採用される。「カルシウム脱酸」は、カルシウム由来の塩味(えんみ)がトマトの甘味を引き立て、トマト含有飲料の呈味を改善する点で効果的であり、また、操作も簡単である。また、「陰イオン交換樹脂脱酸」は透明トマト汁本来の味覚を維持する点で好適である。
【0030】
脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁は、必要に応じて濃縮或いは希釈して用いることができる。高糖度の脱酸トマト汁を得たい場合は、Brixが8?80であることが好ましいが、特に限定するものではない。なお、本明細書において、糖度とはBrix値を意味する。ここで、Brix値とは、溶液100g中に含まれる可溶性固形分(糖類など)のグラム量を計測する単位である。Brix値は、市販の屈折率計又は糖度計を用いて測定することができる。
【0031】
また、本発明の脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁等は、特に限定されないが、Brix4.5調整時の酸度が0.1?0.5であることが好ましい。酸度が低い透明トマト汁を用いることで得られる脱酸トマト汁の酸度が低くなる傾向にある。一方、透明トマト汁の酸度が高いほど、カルシウム又はその塩の配合による酸度の低減効果が顕著に発揮され易い傾向にある。なお、本明細書において、酸度は、0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液を用いた電位差滴定法により算出される、クエン酸換算での濃度(%)を意味する。
【0032】
また、本発明の脱酸トマト汁の原料として用いる透明トマト汁等は、特に限定されないが、pHが3.7?4.8、さらには4.2?4.6であることが好ましい。pHが中性側に偏ると、カルシウム又はその塩の配合による効果が低くなり、得られる脱酸トマト汁のクエン酸の低減率が低くなる傾向にある。
【0033】
(カルシウム脱酸トマト汁)
カルシウム脱酸とは、上記のトマト汁等、好ましくは透明トマト汁に、カルシウム又はその塩を配合することにより、トマト汁中の酸成分を除去することであり、処理後の透明トマト汁(脱酸トマト汁)において酸味が低減するものである。これは、透明トマト汁等に含まれる酸味成分、例えばクエン酸等のヒドロキシ酸及とカルシウムとが反応してカルシウム生成物(塩、水和物、又はキレート等)を形成することによるものと推定される。脱酸トマト汁の酸味を低減させるために配合されるカルシウム又はその塩の具体例としては、例えば、カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、コハク酸カルシウム、塩化カルシウム等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム及び乳酸カルシウムが好ましく、脱酸処理後トマト加工物の香味へ与える影響を極力抑える観点から、炭酸カルシウムがより好ましい。上記のカルシウム又はその塩の配合量は、脱酸トマト汁の所望する酸味に応じて適宜設定することができ、特に限定されない。カルシウム又はその塩を配合することにより生成するカルシウム生成物(塩、水和物、又はキレート等)を脱酸トマト汁から除去すると、脱酸トマト汁の酸味が一段と低減する。また、未反応のカルシウム又はその塩及びカルシウム生成物は白色の固形物が多く、かかる白色沈殿物の存在により飲料の見栄えが損なわれ得るとともに、他の飲料と混合した際に所望しない色変化を生じ得る。したがって、透明トマト汁にカルシウム又はその塩を配合した後、上記カルシウム生成物の少なくとも一部を除去することが好ましい。その際、未反応のカルシウム又はその塩を除去することがより好ましい。カルシウム生成物の除去方法は、濾過、遠心分離等の公知の手法を適宜適用して行うことができ、特に限定されない。とりわけ、脱酸トマト汁中に沈殿・析出・分散しているカルシウム生成物は、濾過法によって簡易且つ低コストで除去することができる。かかる濾過法を適用する場合、安価に透明性の高い脱酸トマト汁を得る観点から、珪藻土或いはフィルターを用いた濾過等を用いることが好ましい。
【0034】
かくして得られる濾過、遠心分離等の処理を施した脱酸トマト汁は、不要な水不溶性固形分の少なくとも一部が除去され、且つ、カルシウム生成物が必要に応じて除去されることにより、そうでないものと比較して、低粘度であり、且つ、酸度が低減されたものとなる。そのため、かかる脱酸トマト汁を用いて、トマト含有飲料を調製することにより、得られるトマト含有飲料の粘度の低減、及び、酸度或いは酸味の低減が、再現性よく簡便に行われる。」

3b)「【0060】
(脱酸トマト汁試料A:カルシウム脱酸)
本実施例において使用するカルシウム脱酸トマト汁は以下の手順で調製されたものである。
まず、市販の透明濃縮トマト加工物(Clear Tomato Concentrate 60°Brix、LYCORED社製、Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:17.5、酸度:1.06、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備した。次に、得られた透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌して、発生する炭酸ガスを排出した。タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、市販の珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去した。」

したがって、上記引用文献3には次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

「カルシウム脱酸トマト汁を調整する方法であって、透明濃縮トマト加工物(Brix:60、酸度:3.64、pH:4.15)をイオン交換水で約4倍に希釈還元して、透明トマト汁(Brix:17.5、酸度:1.06、pH:4.2、Brix4.5調整時の粘度:1.36cP)を準備し、次に、得られた透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌して、発生する炭酸ガスを排出し、タンクを20℃まで冷却した後、遠心分離し、珪藻土を用いて濾過し、さらに5μmのフィルターで濾過することで固形分を除去することで構成される、カルシウム脱酸トマト汁を調整する方法。」

第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)引用発明1に基づく場合
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
・後者の「脱酸トマト汁の製造方法」は前者の「脱酸トマト汁の製造方法」に相当し、以下同様に、「透明濃縮トマト汁」は「濃縮除パルプトマト汁」に、「透明濃縮トマト汁をイオン交換水で約4倍に希釈還元し」た「透明トマト汁」は「濃縮除パルプトマト汁の希釈液」に、それぞれ相当する。

・後者は、「透明トマト汁1500kgをタンク内に仕込み、80℃まで加温した後、タンク上部から炭酸カルシウム12.75kgを投入し、60分間撹拌し」ているから、「脱酸トマト汁の製造方法を構成するのは、少なくとも配合であり、配合されるのは、炭酸カルシウムであり、その配合先は、透明トマト汁である」という事項を含むことは明らかであり、当該事項は、前者における「それを構成するのは、少なくとも、配合であり、配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり、その配合先は、濃縮除パルプトマト汁の希釈液であり」、「前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である」に、「それを構成するのは、少なくとも、配合であり、配合されるのは、炭酸カルシウムであり、その配合先は、濃縮除パルプトマト汁の希釈液である」という限りにおいて一致する。
また、後者において、「透明トマト汁」の「Brix4.5調整時の粘度」が「1.36cP」であることは、前者における「該濃縮除パルプトマト汁の希釈液の漿液相対粘度は、1.36以上7.08以下」であることに、「濃縮除パルプトマト汁の希釈液は所定の粘度」であるという限りにおいて一致する。
さらに、後者において、「透明トマト汁」の「Brix」が「17.5」であることは、前者における「濃縮除パルプトマト汁の希釈液のBrixは、10.1以上40.4以下」であることに相当する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「脱酸トマト汁の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、配合であり、
配合されるのは、炭酸カルシウムであり、その配合先は、濃縮除パルプトマト汁の希釈液であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液は所定の粘度であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液のBrixは、10.1以上40.4以下である。」

(相違点)
(相違点1A-1)濃縮除パルプトマト汁の希釈液への配合に関し、本願発明1においては、「配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり」、「前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である」のに対して、引用発明1においては、「配合されるのは、炭酸カルシウム」であり、消泡剤を配合することは特定されていない点。

(相違点1A-2)濃縮除パルプトマト汁の希釈液に関し、本願発明1においては、「漿液相対粘度は、1.36以上7.08以下」であるのに対して、引用発明1においては、「Brix4.5調整時の粘度」が「1.36cP」であるとされるものの、その粘度がどのような測定法に基づくものなのかは不明な点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1A-1について検討する。
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2001-145469号公報(特に、特許請求の範囲、段落0001及び0032)、特表2016-506758号公報(特に、特許請求の範囲、段落0095)、特表2009-538135号公報(特に、特許請求の範囲、段落0033、0042及び0059)、特表2007-531522号公報(特に、特許請求の範囲、段落0012、0017及び0018)及び特開2003-250459号公報(特に、段落0020、0022及び0030-0032)に記載があるように、トマトジュース等の飲料に消泡剤を添加することは、本願の出願前に周知の技術(以下、「周知技術」という。)であると認められる。
しかしながら、上記周知技術は、濃縮除パルプトマト汁の希釈液に炭酸カルシウムを配合した時の泡立ちを低減するものではない。
しかも、引用発明1において、透明トマト汁(濃縮除パルプトマト汁の希釈液)に炭酸カルシウムを配合した時の泡立ちが、歩留り、製造効率の低下や液送不良等の問題を引き起こすという課題を有することは、引用文献1ないし3の記載及び本願の出願前における技術常識を考慮しても、当業者が認識し得たものということはできないから、引用発明1に周知技術を適用して、消泡剤の配合の時期を炭酸カルシウムの配合前にする動機付けはない。
そうすると、引用発明1において、周知技術に基づき、上記相違点1A-1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、上記相違点1A-2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)引用発明2に基づく場合
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
後者の「カルシウム脱酸トマト汁を調整する方法」は、前者の「脱酸トマト汁の製造方法」に相当し、以下同様に、「透明濃縮トマト加工物」は「濃縮除パルプトマト汁」に、「透明濃縮トマト加工物をイオン交換水で約4倍に希釈還元し」た「透明トマト汁」は「濃縮除パルプトマト汁の希釈液」に、それぞれ相当する。
そして、引用発明2は、「カルシウム脱酸トマト汁を調整する方法」及び「透明濃縮トマト加工物」という用語以外は、引用発明1と同じ発明特定事項を有しているから、上記(1)アの検討を踏まえると、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「脱酸トマト汁の製造方法であって、それを構成するのは、少なくとも、配合であり、
配合されるのは、炭酸カルシウムであり、その配合先は、濃縮除パルプトマト汁の希釈液であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液は所定の粘度であり、
当該濃縮除パルプトマト汁の希釈液のBrixは、10.1以上40.4以下である。」

(相違点)
(相違点1B-1)濃縮除パルプトマト汁の希釈液への配合に関し、本願発明1においては、「配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり」、「前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である」のに対して、引用発明2においては、「配合されるのは、炭酸カルシウム」であり、消泡剤を配合することは特定されていない点。

(相違点1B-2)濃縮除パルプトマト汁の希釈液に関し、本願発明1においては、「漿液相対粘度は、1.36以上7.08以下」であるのに対して、引用発明2においては、「Brix4.5調整時の粘度」が「1.36cP」であるとされるものの、その粘度がどのような測定法に基づくものなのかは不明な点。

イ 相違点についての判断
上記(1)イの検討を踏まえると、引用発明2において、周知技術に基づき、上記相違点1B-1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたものではない。
したがって、上記相違点1B-2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(3)引用発明3に基づく場合
引用発明3は、引用発明2と同じであるから、上記(2)の検討を踏まえると、本願発明1は、当業者であっても、引用発明3及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2及び3について
本願発明2及び3も、本願発明1の「配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり」、「前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である」という発明特定事項と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3のいずれか一つの発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明4について
本願発明4は、本願発明1の「脱酸トマト汁の製造方法」を「脱酸トマト汁製造における泡立ち低減方法」としたものであって、本願発明1の「配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり」、「前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である」という発明特定事項と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3のいずれか一つの発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明5及び6について
本願発明5及び6も、本願発明4の「配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり」、「前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である」という発明特定事項と同一の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明4と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし3のいずれか一つの発明及び周知技術に基いて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし11について上記引用文献1ないし3のいずれか一つに記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年9月3日提出の手続補正書により補正された請求項1ないし6に係る発明は、それぞれ「配合されるのは、消泡剤、及び炭酸カルシウムであり」、「前記消泡剤の配合の時期は、前記炭酸カルシウムの配合前である」という発明特定事項を含むものとなっており、上記のとおり、本願発明1ないし6は、上記引用発明1ないし3のいずれか一つの発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、本願の特許請求の範囲の請求項1ないし6の記載が、次の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知した。

「請求項1ないし6に係る発明にあっては、「除パルプトマト汁の漿液相対粘度は、1.36以上7.08以下」であり、かつ、「除パルプトマト汁のBrixは、10.1以上40.4以下」であることが、発明特定事項とされている。
しかるに、発明の詳細な説明の記載の限りでは、除パルプトマト汁の漿液相対粘度及びBrixがそれぞれ上記の範囲内にあるもの全てにわたって所望の効果を奏するものとは確認できない。
したがって、請求項1ないし6に係る発明は、発明の詳細な説明に開示された範囲を越えるものである。」

しかしながら、平成30年9月3日提出の手続補正書による補正において、補正前の「除パルプトマト汁」が「濃縮除パルプトマト汁の希釈液」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし6は、当業者が引用発明1ないし3のいずれか一つの発明及び周知技術に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-13 
出願番号 特願2016-180088(P2016-180088)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A23L)
P 1 8・ 537- WY (A23L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 飯室 里美  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 泡立ちの低減された脱酸トマト汁の製造方法、及び脱酸トマト汁製造時の泡立ち低減方法  
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