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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02D
管理番号 1345679
審判番号 不服2018-1481  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-02 
確定日 2018-11-28 
事件の表示 特願2016-508721「螺旋状羽根付鋼管杭及び合成杭並びに合成杭の造成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 9月24日国際公開、WO2015/141639、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年3月16日(優先権主張 平成26年3月19日)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年8月23日付けで手続補正がされ、平成29年10月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年2月2日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年3月28日付けで前置報告がされ、平成30年7月25日に審判請求人から前置報告に対する上申がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年10月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1 理由1(特許法第29条第2項)
本願請求項1ないし7に係る発明は、以下の引用文献1ないし5に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献一覧
引用文献1:登録実用新案第3188808号公報
引用文献2:特開2004-332431号公報
引用文献3:特開平1-142122号公報
引用文献4:特開2002-348864号公報
引用文献5:特開2000-154537号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって請求項1、7に「地表面下20mの深さまで粘土層が存在する」という事項を追加する補正は、発明特定事項である「地盤」を限定するものであって、補正前の請求項1、7に係る発明と補正後の請求項1、7に係る発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当初明細書の段落【0045】には、「<第一実施例> 続いて、図9を用いて、本鋼管杭1及び従来杭100を各々用いて造成した合成杭の鉛直載荷試験の結果(第一実施例)について説明する。なお、本試験は、地表面下約20mの深さまで粘土層、シルト層、砂質層が混在するベトナムの地盤で実施したものである。」点、同【0049】には、「<第二実施例> 続いて、図10を用いて、本鋼管杭1を用いて造成した合成杭の鉛直載荷試験の結果(第二実施例)を、理想的な支持力を有する合成杭と比較して説明する。本試験もまた、地表面下約20mの深さまで粘土層、シルト層、砂質層が混在するベトナムの地盤で実施したものである。」点が記載されているから、「地表面下20mの深さまで粘土層が存在する」という事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし7に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は、平成30年2月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
鋼管杭本体と、前記鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上の螺旋状羽根と、を備える螺旋状羽根付鋼管杭を、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤中に造成されるソイルセメント柱体に挿入することにより形成した合成杭であって、
前記螺旋状羽根は、前記鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端羽根と、前記鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間羽根と、から構成され、
前記螺旋状羽根の直径が前記鋼管杭本体の直径の3倍以上に設定され、
前記先端羽根と最下端にある前記中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、
前記中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定され、
最上端にある前記中間羽根と前記鋼管杭本体の杭頭部との間隔が0.3m以上0.5m以下に設定されてなる、合成杭。
【請求項2】
前記ソイルセメント柱体の最深位置から前記螺旋状羽根付鋼管杭の先端位置までの間隔が0.2m以上に設定されてなる、請求項1に記載の合成杭。
【請求項3】
前記螺旋状羽根の直径が前記鋼管杭本体の直径の3倍以上4倍以下に設定されてなる、請求項1又は2に記載の合成杭。
【請求項4】
前記先端羽根と最下端にある前記中間羽根との間隔が、最上端にある前記中間羽根と前記鋼管杭本体の杭頭部との間隔の2倍以上に設定され、
前記中間羽根同士の間隔が、最上端にある前記中間羽根と前記鋼管杭本体の杭頭部との間隔の3倍以上に設定されてなる、請求項1から3の何れか一項に記載の合成杭。
【請求項5】
前記螺旋状羽根の上面に前記鋼管杭本体を中心として放射状に複数設けられた板状の補強リブを備える、請求項1から4の何れか一項に記載の合成杭。
【請求項6】
前記補強リブは、平面視略台形状を呈し、その長辺としての第一辺は前記鋼管杭本体の外周面に当接するように配置され、その短辺としての第二辺は前記鋼管杭本体から離隔するように配置され、前記第一辺及び前記第二辺に対して直角な第三辺は前記螺旋状羽根の上面に当接するように配置されており、
前記第一辺と前記第三辺とから形成される角部に切欠部が形成されている、請求項5に記載の合成杭。
【請求項7】
鋼管杭本体と、前記鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上の螺旋状羽根と、を備える螺旋状羽根付鋼管杭を、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤中に造成されるソイルセメント柱体に挿入する工程を備える合成杭の造成方法であって、
前記螺旋状羽根の直径を、前記鋼管杭本体の直径の3倍以上に設定し、
前記螺旋状羽根を、前記鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端羽根と、前記鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間羽根と、から構成し、
前記先端羽根と最下端にある前記中間羽根との間隔を、2.0m以上に設定し、
前記中間羽根同士の間隔を、3.0m以上に設定し、
最上端にある前記中間羽根と前記鋼管杭本体の杭頭部との間隔を、0.3m以上0.5m以下に設定する、合成杭の造成方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。

「【考案が解決しようとする課題】
【0001】
従来の鋼管杭は土質により地上部分に出る杭頭にブレが生じる事があった。これを修正してさらに、杭の打込み後に地盤に密着できるように改良を行う。」

「【課題を解決するための手段】
【0002】
鋼管杭の先端部分と杭頭部分の2カ所にスクリュー型の案内羽根を設ける。(図1より)
図1の1により鋼管杭本体を回転することにより、推進スクリューでスムーズに地盤に貫入され地中にさらに密着されていき、2は杭頭付近地盤への支持力をさらにはかり、全体で鋼管杭を地盤面への密着を上げる事ができる。」
「【考案の効果】
【0003】
鋼管杭本体の約4倍幅のスクリューを上下に付けたため、掘進時の掘削土砂の流動化防止、スクリューの土質食込みによる杭の安定化等が上げられる。
従来の杭は一般的に機械打設で行ってきたが、考案の杭は回転だけで掘進していくため、騒音が押さえられて街中でも施工可能となる。
さらに、打ち込み時間も短縮できるメリットがある。」

図1は次のものである。



図1から、鋼管杭の杭頭と、杭頭部分のスクリュー型の案内羽根との距離を300mmとすることが見てとれる。

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「鋼管杭本体の先端部分と杭頭部分の2カ所にスクリュー型の案内羽根を設け、鋼管杭本体を回転することにより、推進スクリューでスムーズに地盤に貫入される鋼管杭であって、鋼管杭本体の約4倍幅のスクリューを上下に付けており、鋼管杭の杭頭と、杭頭部分のスクリュー型の案内羽根との距離が300mmである鋼管杭」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「【0026】
また図1に示す下方の外側面に翼部を有する鋼管杭3は、図3に示すように、下方の外側面に翼部、図示した例では螺旋状の翼部3aを有する鋼管製の杭である。図示した例では上方の外周面や中間部の外周面に翼部(図示した例では螺旋状の翼部)3b、3cを有すると共に鋼管杭の本体部即ち、翼を除いた部分3dの下端に板状の突起部3eを有するものである。なお、この突起部3eを除いた鋼管杭の本体部(即ち翼を除いた部分)3dの最下端を鋼管杭の最下端部という。先端に板状の突起部は存在しなくても良く、その場合は、鋼管杭の下端部が最下端部である。」
「【0035】
図1(f)に示したように、下方の外側面に翼部を有する鋼管杭3を回転させながら埋設し、図1(g)に示すように、鋼管杭の下方の外側面の翼部が固化材の豊富なソイルセメント部分2a中に位置させる。」
「【0036】
このソイルセメントが固化するとソイルセメント合成杭4が高い支持力を発揮するのである。」
「【0037】
なお、鋼管杭を埋設する際、鋼管杭3の翼部を除く部分の外径dの最下端部とソイルセメント柱の最下端との間隔、図5でL1と示した間隔が少なくとも20cm?30cm程度存在すると、ソイルセメント合成杭の支持力が最も優れた性能を発揮する。それ故、翼部を除く部分の外径dの最下端部がソイルセメント柱の最下端から、20cm?30cm程度上方に位置するようにするのが最も好ましい。なお、図5にL2として示した間隔は、前述した鋼管杭3の翼部外径Dの1?2倍程度の範囲までソイルセメント柱築造装置1を引き上げた距離に相当する。
「【0038】
また、築造するソイルセメント柱の外径(図5にDcと示した径)は、使用する鋼管杭の翼部外径Dの1.2倍?2倍程度でかつ40cm以上120cm以下とすることが最も好ましい。」
「【0039】
これは、鋼管杭が、その翼部の外径Dが翼部を除く部分の外径dの約1.5倍以上2.5倍未満でかつ20?70cmである鋼管杭である場合に、余りにソイルセメント柱の径が大きいと、鋼管杭と一体的に挙動し得ない部分が存在し、ソイルセメント合成杭としての性能が低下する恐れがあり、一方の径の細いソイルセメント柱は、均一な混合状態のものとすることが困難であるからである。」
「【0040】
また、ソイルセメント柱中に下方の外側面に翼部を有する鋼管杭が埋設されたソイルセメント合成杭は、ソイルセメントと鋼管杭が一体化されて優れた性能を発揮するのであるが、その性能を最高に発揮させるためには、鋼管の径と翼部の径を特定した方がよい。鋼管杭の径と翼径との比が小さすぎても大きすぎても、ソイルセメント合成杭としての性能が十分には発揮されない。」

したがって、上記引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

「下方、上方及び中間部の外側面に螺旋状の翼部3a、3b及び3cを有する鋼管杭3を回転させながら埋設し、鋼管杭の下方の外側面の翼部が固化材の豊富なソイルセメント部分2a中に位置させ、ソイルセメントが固化するとソイルセメント合成杭4が高い支持力を発揮するソイルセメント合成杭4であって、鋼管杭が、その翼部の外径Dが翼部を除く部分の外径dの約1.5倍以上2.5倍未満であり、ソイルセメント柱中に下方の外側面に翼部を有する鋼管杭が埋設されたソイルセメント合成杭は、ソイルセメントと鋼管杭が一体化されて優れた性能を発揮するソイルセメント合成杭」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3の第2頁左上欄第17行-右下欄第8行及び第1図、第4図及び第7図の記載からみて、当該引用文献3には、小口径鋼管杭本体と、小口径鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上のスパイラルウイングと、を備える小口径鋼管杭であって、スパイラルウイングは、小口径鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端スパイラルウイングと、小口径鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間スパイラルウイングと、から構成され、スパイラルウイングの間隔が3m程度までは、極限荷重にあまり差が見られず、3m以上では極限荷重が小さくなるという技術的事項が記載されていると認められる。

4 引用文献4について
また、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4の段落【0011】には「この翼5は、杭体2の内径とほぼ等しい開口部6を有し、外径が杭体2の外径の1.5?3倍程度のドーナツ状の鋼板を、半径方向の1か所を切断して螺旋状に曲げ加工したものである。勿論プレス加工により形成してもよい。そして、開口部6を杭体2の内径に整合させて取付部3に溶接により接合することにより、杭体2の先端部に螺旋状の翼5が構成される。」、同【0013】には、「図3は本実施の形態の他の例を示すもので、本例においては、補強部材10を角形鋼材に代えて、台形状(又は三角形状)の鋼板によって構成したものである。なお、補強部材10は、図1に示すように、翼5の外周端部と杭体2との間に設けてもよく、あるいは図3に示すように、翼5の半径方向の途中と杭体2との間に設けてもよい。これは、翼5に作用する地盤反力は台形的に分布しているものと推定されるため、翼5の外周側には大きな地盤反力が作用せず、翼5の付け根近傍になるほど地盤反力が大きくなるためである。」と記載されている。

5 引用文献5について
更に、原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された引用文献5の段落【0048】には「図8の例では、補強部材8を三角形状の鋼板で構成した場合を示したが、図9に示すように、溶接性を考慮して変形したほぼ台形状の補強部材8aを用いてもよい。また、上記の鋼製の補強部材8,8aに代えて、図10(a)に示すように、溝形鋼からなる補強部材8bを用いてもよく、あるいは、図10(b)に示すように、山形鋼からなる補強部材8cを用いてもよい(以下、上記の各補強部材8,8a,8b,8cを一括して補強部材8と記すことがある)。この場合、溝形鋼又は山形鋼の側面を下方になるにしたがって幅が漸減される形状に形成する。なお、補強部材8は上記の例に限定するものではなく、適宜の形状又は構造のものを用いることができる。」と記載されている。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用文献1を主引用例とする検討
ア 本願発明1と引用発明1の対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

引用発明1の「鋼管杭本体の先端部分と杭頭部分の2カ所のスクリュー型の案内羽根」は、本願発明1の「鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上の螺旋状羽根」に相当する。
また、引用発明1の「鋼管杭本体の先端部分」の「スクリュー型の案内羽根」、「鋼管杭本体」の「杭頭部分」の「スクリュー型の案内羽根」は、それぞれ本願発明1の「先端羽根」、「中間羽根」に相当する。
さらに、引用発明1の「スクリュー」が「鋼管杭本体の約4倍幅」は、本願発明1の「螺旋状羽根の直径が鋼管杭本体の直径の3倍以上」に相当する。
そして、引用発明1の「鋼管杭の杭頭と、杭頭部分のスクリュー型の案内羽根との距離が300mm」は、本願発明1の「最上端にある前記中間羽根と前記鋼管杭本体の杭頭部との間隔が0.3m以上0.5m以下」に相当する。
以上のことから、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「鋼管杭本体と、鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上の螺旋状羽根と、を備える螺旋状羽根付鋼管杭であって、螺旋状羽根は、前記鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端羽根と、前記鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間羽根と、から構成され、螺旋状羽根の直径が鋼管杭本体の直径の3倍以上に設定され、最上端にある前記中間羽根と前記鋼管杭本体の杭頭部との間隔が0.3m以上0.5m以下に設定されてなる螺旋状羽根付鋼管杭」

(相違点1)
本願発明1は「螺旋状羽根付鋼管杭を、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤中に造成されるソイルセメント柱体に挿入することにより形成した合成杭」であるのに対し、引用発明1はそのような構成を備えていない点。
(相違点2)
羽根の取付構造について、本願発明1は「前記先端羽根と最下端にある前記中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、前記中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定され」ているのに対し、引用発明1は中間羽根を複数備えておらず、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔及び中間羽根同士の間隔について特定されていない点。

イ 判断
(ア)相違点1について
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、ソイルセメント柱体に螺旋状羽根付鋼管杭を挿入することは、記載も示唆もされていない。
引用文献2には、上記第5の2のとおり引用発明2が記載されており、当該発明には、下方、上方及び中間部の外側面に螺旋状の翼部3a、3b及び3cを有する鋼管杭3を回転させながら埋設し、鋼管杭の下方の外側面の翼部が固化材の豊富なソイルセメント部分2a中に位置させ、ソイルセメントが固化するとソイルセメント合成杭4が高い支持力を発揮するソイルセメント合成杭という構成が記載されているが、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤に対して合成杭を設けることは記載されていない。
また、引用文献3には、上記第5の3に摘記した事項が、引用文献4には、上記第5の4に摘記した事項が、引用文献5には、上記第5の5に摘記した事項が記載されているが、単体の杭として用いられる螺旋状の翼部を有する鋼管杭を、ソイルセメント部分に挿入することにより形成した合成杭として用いること、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤に対して合成杭を設けることは記載されていない。
さらに、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤に対して引用発明1の鋼管杭や合成杭を設けることは、当業者が適宜なし得ることともいえない。
よって、引用発明1において、本願発明1の相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(イ)相違点2について
上記相違点2について検討する。
a 引用文献2には、上記第5の2のとおり引用発明2が記載されており、当該発明には、下方、上方及び中間部の外側面に螺旋状の翼部3a、3b及び3cを有する鋼管杭3を回転させながら埋設し、鋼管杭の下方の外側面の翼部が固化材の豊富なソイルセメント部分2a中に位置させ、ソイルセメントが固化するとソイルセメント合成杭4が高い支持力を発揮するソイルセメント合成杭という構成が記載されているが、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定されるという構成は記載されていない。
よって、引用発明1に引用発明2を適用したとしても、本願発明1の相違点2に係る構成とはならない。

b 引用文献3には、上記第5の3に摘記した事項から、小口径鋼管杭本体と、小口径鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上のスパイラルウイングと、を備える小口径鋼管杭であって、スパイラルウイングは、小口径鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端スパイラルウイングと、小口径鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間スパイラルウイングと、から構成され、スパイラルウイングの間隔が3m程度までは、極限荷重にあまり差が見られず、3m以上では極限荷重が小さくなるという技術的事項が開示されていると認められるが、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定されるという構成は記載されていない。
よって、引用発明1に引用文献3に記載の技術事項を適用したとしても、本願発明1の相違点2に係る構成とはならない。

c 引用文献4には、上記第5の4に摘記した事項が、引用文献5には、上記第5の5に摘記した事項が記載されているが、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定されることは何ら開示も示唆もされていない。

d 以上のとおりであるから、引用発明1において、本願発明1の相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)むすび
よって、本願発明1は、当業者が引用文献1ないし5に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではない。

(2)引用文献2を主引用例とする検討
ア 本願発明1と引用発明2の対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「下方、上方及び中間部の外側面に螺旋状の翼部3a、3b及び3cを有する鋼管杭3」は、本願発明1の「鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上の螺旋状羽根と、を備える螺旋状羽根付鋼管杭」に相当する。
また、引用発明2の「下方」の「螺旋状の翼部3a」、「上方及び中間部」の「螺旋状の翼部」「3b及び3c」は、それぞれ本願発明1の「先端羽根」、「中間羽根」に相当する。
さらに、引用発明2の「固化材の豊富なソイルセメント部分2a」は、本願発明1の「地盤中に造成されるソイルセメント柱体」に相当する。
そして、引用発明2の「鋼管杭3」を「回転させながら埋設」し、「固化材の豊富なソイルセメント部分2a中に位置させ、ソイルセメントが固化するとソイルセメント合成杭4が高い支持力を発揮するソイルセメント合成杭4」は、本願発明1の「螺旋状羽根付鋼管杭」を「地盤中に造成されるソイルセメント柱体に挿入することにより形成した合成杭」に相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明2とは、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「鋼管杭本体と、前記鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上の螺旋状羽根と、を備える螺旋状羽根付鋼管杭を、地盤中に造成されるソイルセメント柱体に挿入することにより形成した合成杭であって、前記螺旋状羽根は、前記鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端羽根と、前記鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間羽根と、から構成される合成杭」

(相違点3)
合成杭を形成する地盤について、本願発明1は「地表面下20mの深さまで粘土層が存在する」地盤であるのに対し、引用発明2はそのような地盤を対象としていない点。
(相違点4)
羽根の構造について、本願発明1は「前記螺旋状羽根の直径が前記鋼管杭本体の直径の3倍以上に設定され、前記先端羽根と最下端にある前記中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、前記中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定され、最上端にある前記中間羽根と前記鋼管杭本体の杭頭部との間隔が0.3m以上0.5m以下に設定され」ているのに対し、引用発明2は、螺旋状羽根の直径が鋼管杭本体の直径の約1.5倍以上2.5倍未満に設定されており、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔、中間羽根同士の間隔及び最上端にある中間羽根と鋼管杭本体の杭頭部との間隔について特定されていない点。

イ 判断
(ア)相違点3について
上記相違点3について検討する。
引用文献1には、上記第5の1のとおり引用発明1が記載されているが、合成杭については何ら記載されておらず、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤に対して杭を設けることも記載されていない。
また、引用文献3には、上記第5の3に摘記した事項が、引用文献4には、上記第5の4に摘記した事項が、引用文献5には、上記第5の5に摘記した事項が記載されているが、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤に対して杭を設けることは記載されていない。
さらに、地表面下20mの深さまで粘土層が存在する地盤に対して合成杭を設けることは、当業者が適宜なし得ることともいえない。
よって、引用発明2において、本願発明1の相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(イ)相違点4について
上記相違点4について検討する。
a 引用文献1には、上記第5の1のとおり引用発明1が記載されており、当該発明には、鋼管杭の先端部分と杭頭部分の2カ所にスクリュー型の案内羽根を設け、鋼管杭本体を回転することにより、推進スクリューでスムーズに地盤に貫入される鋼管杭であって、鋼管杭本体の約4倍幅のスクリューを上下に付けており、鋼管杭の杭頭と、杭頭部分のスクリュー型の案内羽根との距離が300mmである鋼管杭という構成が記載されているが、螺旋状羽根の直径が鋼管杭本体の直径の約1.5倍以上2.5倍未満に設定されている構成を、鋼管杭本体の直径の約4倍幅とすることは記載も示唆もされておらず、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定されるという構成も何ら記載されていない。
よって、引用発明2に引用発明1を適用したとしても、本願発明1の相違点4に係る構成とはならない。

b 引用文献3には、上記第5の3に摘記した事項から、小口径鋼管杭本体と、小口径鋼管杭本体に取り付けられた一つ以上のスパイラルウイングと、を備える小口径鋼管杭であって、スパイラルウイングは、小口径鋼管杭本体の先端部に取り付けられた先端スパイラルウイングと、小口径鋼管杭本体の先端部を除く部分に取り付けられた中間スパイラルウイングと、から構成され、スパイラルウイングの間隔が3m程度までは、極限荷重にあまり差が見られず、3m以上では極限荷重が小さくなるという技術的事項が開示されているが、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定されるという構成は記載されていない。
よって、引用発明2に引用文献3に記載の技術事項を適用したとしても、本願発明1の相違点4に係る構成とはならない。

c 引用文献4には、上記第5の4に摘記した事項が、引用文献5には、上記第5の5に摘記した事項が記載されているが、先端羽根と最下端にある中間羽根との間隔が2.0m以上に設定され、中間羽根同士の間隔が3.0m以上に設定されることは何ら開示も示唆もされていない。

d 以上のとおりであるから、引用発明2において、本願発明1の相違点4に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。

(ウ)むすび
よって、本願発明1は、当業者が引用文献1ないし5に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1を引用するものであって、本願発明1の発明特定事項を全て含むものであるといえる。
よって、本願発明2ないし6は、本願発明1と同様の理由で、当業者が引用文献1ないし5に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明7について
本願発明7は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の発明特定事項に対応する構成を全て含むものであるといえる。
よって、本願発明7は、本願発明1と同様の理由で、当業者が引用文献1ないし5に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではない。

第7 原査定について
1 理由1(特許法第29条第2項)について
本願発明1ないし7は、上記第6で述べたとおり、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1ないし5に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-15 
出願番号 特願2016-508721(P2016-508721)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E02D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 亀谷 英樹  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
須永 聡
発明の名称 螺旋状羽根付鋼管杭及び合成杭並びに合成杭の造成方法  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  
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