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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61F
管理番号 1345734
審判番号 不服2017-6436  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-05-02 
確定日 2018-11-05 
事件の表示 特願2014-526175「関節形成術インプラントを再置換するための再置換システム、ツール、および方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 2月21日国際公開、WO2013/025814、平成26年12月 4日国内公表、特表2014-531920〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続経緯
本件出願は、2012年8月15日(パリ条約による優先権主張2011年8月15日、米国)を国際出願日とするものであり、平成28年1月21日付けで拒絶理由が通知され、同年7月15日付けで手続補正書が提出されたが、同年12月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年5月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同時に手続補正され、特許法第162条に基づく審査において平成29年6月2日付けで更に拒絶理由が通知されたが、それに対する応答がなされなかったものである。

第2 特許請求の範囲の記載
平成29年5月2日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の、請求項1及び4の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
患者の関節を修復するための再置換インプラントを作製する方法であって、
前記患者の関節に存在する、不具合のあるインプラントの少なくとも一部分と関連付けられる画像データをコンピュータシステムが取得する工程と、
前記画像データから、前記不具合のあるインプラントおよび前記患者の関節に関する情報をコンピュータシステムが導出する工程と、
前記不具合のあるインプラントを作製するために使用されている元の電子データファイルを使用して、前記不具合のあるインプラントに関する既存の情報をコンピュータシステムが取得する工程と、
前記不具合のあるインプラントおよび前記患者の関節に関する前記導出された情報、ならびに前記不具合のあるインプラントに関する前記既存の情報に基づいて、前記再置換インプラントをコンピュータシステムが、前記不具合のあるインプラントを除去した後の残存解剖学的支持構造の切除および/または準備が最小限になるように設計する工程と、
を備えた、方法。」
「【請求項4】
患者の関節を修復するための再置換インプラントを埋め込むために使用する外科用ツールを作製する方法であって、
不具合のある関節インプラントの少なくとも一部分と関連付けられる画像データを取得する工程と、
前記画像データからインプラント表面情報及び関節面情報を導出する工程と、
接触面であって、前記不具合のあるインプラント表面の少なくとも一部分及び/又は患者の関節の少なくとも一表面部分に係合するための接触面を含む、外科用ツールを提供する工程であって、前記外科用ツールは、再置換インプラント部位を準備する際に手術器具の移動を方向付けるための少なくとも1つのガイドをさらに含む、という工程と、
を備え、
前記外科用ツールを提供する工程は、
前記接触面の少なくとも一部分が、実質的に、前記導出されたインプラント表面の少なくとも一部分及び/又は前記導出された関節の表面部分のネガ型であるように、前記導出されたインプラント表面情報に基づいて前記接触面をコンピュータシステムによって成形する工程と、
前記手術器具によって前記インプラント部位上において誘発される変化が、再置換インプラントの所望の向きを保証するように、前記画像データから前記少なくとも1つのガイドの位置、形状、および/または向きをコンピュータシステムによって決定する工程と、
を有し、
前記外科用ツールは、さらに、前記不具合のある関節インプラントの除去を促進するように構成されている、
方法。」

第3 平成29年6月2日付けの拒絶理由の概要
請求項1及び4に関連する拒絶理由の概要は次のとおりである。
理由A
(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由B
(産業上の利用可能性)この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

●理由Aについて

・請求項 1-3
(A1)補正による追加された記載における「準備」について、何をどのように準備することを言いたいのか詳細及び技術的範囲が不明である。
また、係る不備により、「準備」が、インプラントの最適化に影響を与えるような操作であることが、担保できていない。

・請求項 1-3
(A2)請求項1に係る発明が備える「前記不具合のあるインプラントおよび前記患者の関節に関する前記導出された情報、ならびに前記不具合のあるインプラントに関する前記既存の情報に基づいて、前記再置換インプラントをコンピュータシステムが、前記不具合のあるインプラントを除去した後の残存解剖学的支持構造の切除および/または準備が最小限になるように設計する工程」における「設計」について、その定義及び術的範囲が不明瞭である。

・請求項 4
(A4)請求項4について、各工程を実施する主体が不明である。

●理由Bについて
・請求項 4
(B1)請求項4に係る方法の発明は、上記(A4)でも述べたように、各工程を実施する主体が不明である。
このため、・・・・・外科用ツールを作成するために、外科医等の医療行為従事者が、取得した画像データに基づいてコンピュータシステムを用いつつ各種の判断(診断)を行って情報を導出し、導出した情報に基づいて行う判断(診断)を踏まえて外科用ツールの製造のための情報を生成する、ような方法が、技術的範囲に含まれうる状況にある。

第4 当審の判断
1 明確性について
(1-1)請求項1について
(あ)請求項1には「前記再置換インプラントをコンピュータシステムが、前記不具合のあるインプラントを除去した後の残存解剖学的支持構造の切除および/または準備が最小限になるように設計する工程」と記載されている。
しかしながら、上記記載の「再置換インプラントをコンピュータシステムが・・・・・設計する」では、「コンピュータシステム」が「再置換インプラント」の何を「設計」しているのか不明であり、その技術的内容・意味を特定することができない。
また、本件出願明細書には、異なるインプラントや外科的ガイドテンプレートの適合に関して、段落【0135】に「行われる撮像、および以前に説明されたように行われる任意の査定、評価、補正、および/または相互参照に基づいて、ソフトウェアが、寸法、全体サイズ、および形状に関して、異なるインプラントおよび/または外科的ガイドテンプレートの適合を評価してもよい。寸法、全体サイズ、および形状は、皮質骨の形状および寸法、皮質骨の厚さ、骨内膜骨の形状、髄腔のサイズ、関節面の形状および寸法、軟骨下骨の形状および寸法、または軟骨下骨の厚さに関して最適化されてもよい。したがって、例えば、インプラントは、特注されるか、またはAP寸法および形状、内外側寸法および形状、上下寸法および形状、関節面の形状、皮質骨と接触している界面の形状および寸法、髄内部分または構成要素の形状および寸法のうちのいずれか、あるいはそれらの組み合わせに関して最適化される、いくつかの事前製造されたインプラントから選択されるかのいずれかであってもよい。これらのパラメータは、例えば、異なる程度の関節屈曲または伸展、あるいは外転または内転、あるいは内部または外部回転のために、インプラント機能について最適化されてもよい。」(下線を付与した。以下同様。)と記載されているにすぎない。
したがって、請求項1の上記記載は、本件出願明細書の当該記載に関連するものとしてみても的確に表現しているといえない。
(い)また、請求項1の「残存解剖学的支持構造の切除および/または準備が最小限になる」との記載では、「解剖学的支持構造の切除」と並列関係にある「解剖学的支持構造の準備」の具体的な内容が不明であり、その技術的意味を特定することができない。
一方、本件出願明細書には、準備に関して、段落【0122】に「残っている潜在的な解剖学的支持構造の量を知ることによって、この実施形態は、インプラント除去後に残存解剖学的支持構造の最小限の切除および/または準備を必要とするように、再置換インプラントが選択および/または設計されることを可能にする。・・・・・所望であれば、再置換インプラントの骨に対面する構造が、(下層の解剖学的表面の切断または準備をほとんどまたは全く伴わずに埋込を促進するように)「破損したインプラント」の構造を複製することができる一方で、関節に対面する構造または関節動作構造(および/またはインプラントの厚さ)への変更は、所望の様式で再置換インプラントおよび再置換された関節の生体力学を変更することができる。」と記載されているものの、「切断」あるいは「切除」と並列関係にある「準備」が定義されておらず、同段落【0008】に「現在の再置換手術では、外科医は、最初に、破損したインプラント構成要素を除去し、次いで、再置換インプラントのための解剖学的支持構造を準備する。」、同段落【0014】に「本開示はまた、1つ以上の骨切断/切除、例えば、単一の切断、いくつかの比較的小さい切断、1つ以上の面取り切断を用いた埋込部位の準備も提供する。本開示はまた、関節面または下層の骨のバーリングまたは拡孔等の他の修正を用いた埋込部位の準備も提供する。」、同段落【0131】に「いったん患者および『破損したインプラント』情報の処理、査定、評価、および/または相互参照/補正が所望の程度に達成されると、結果として生じる画像および/またはデータ情報は、解剖学的表面の準備および再置換インプラントの埋込のための再置換インプラント、インプラント構成要素、および外科用ツールの作成を含むことができる、・・・・・開示されたシステムを用いると、下層の骨支持構造のより正確な推定値を決定することができ、したがって、より少ない骨および他の支持構造が、再置換インプラントに備えて除去される必要があるとともに、再置換インプラントまたはインプラント構成要素が既存の支持構造にとって適切に構築されることを可能にする。加えて、解剖学的参照点としての破損したインプラントの使用と組み合わせた、既存の支持構造の識別は、髄内または他の高侵襲性参照点または方法を必ずしも用いることなく、再置換インプラントの位置付けを可能にする。また、本方法は、手術前に、髄内ステムまたは他のそのような支持構造を必要とせずに、十分な解剖学的支持構造が再置換インプラントを支持するために残っているかどうかを外科医が決定することを可能にする。」、同段落【0132】に「所望であれば、インプラントならびに生成された画像データに関する情報を使用して、解剖学的表面の準備を支援するカスタム治具等の外科用ツールを構築することができる。関節の中にインプラントを設置する前に、埋込部位が準備され、次いで、インプラントが設置される。」、同段落【0220】に「埋込部位は、図示されるように、単一の切断921で準備されている。・・・・・埋込部位は、単一の切断(921として示される切断線)で準備されている。」、同段落【0279】に「関節面を横断する単一の切断で埋込部位を準備することができる。」および同段落【0282】に「本開示の1つの目的は、望ましくは、再置換インプラントおよび破損したインプラントの除去を促進する関連外科用ツールの選択または設計および製造、解剖学的支持構造の準備、および再置換インプラントの良好な支持を確保しながら既存の解剖学的支持構造(すなわち、皮質骨および海綿骨等の下層の構造)の最大値を保存したままの再置換インプラントの埋込を促進するように、破損したインプラントおよび関連解剖学的構造の正確な術前査定およびモデル化を可能にすることである。」と記載されているが、いずれも「切断」あるいは「切除」と並列関係にある「準備」についての記載といえない。
(う)してみると、請求項1の「準備」及び「設計」について特定できないから、請求項1に係る発明は不明確である。

(1-2)請求項4について
請求項4には、「患者の関節を修復するための再置換インプラントを埋め込むために使用する外科用ツールを作製する方法であって、不具合のある関節インプラントの少なくとも一部分と関連付けられる画像データを取得する工程と、前記画像データからインプラント表面情報及び関節面情報を導出する工程と、・・・・・外科用ツールを提供する工程であって、・・・・・という工程と、を備え、前記外科用ツールを提供する工程は、・・・・・前記導出されたインプラント表面情報に基づいて前記接触面をコンピュータシステムによって成形する工程と、・・・・・前記画像データから前記少なくとも1つのガイドの位置、形状、および/または向きをコンピュータシステムによって決定する工程と、を有し」と記載されている。
しかしながら、上記記載の「画像データを取得する工程」、「前記画像データからインプラント表面情報及び関節面情報を導出する工程」、「前記接触面をコンピュータシステムによって成形する工程」および「ガイドの位置、形状、および/または向きをコンピュータシステムによって決定する」では、各工程を実施する主体が不明であって、特定することができない。
してみると、請求項4の各工程を実施する主体が特定できないから、請求項4に係る発明は不明確である。

(1-3)小括
よって、請求項1及び4に係る発明は不明確であるから、特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることの要件に適合しない。

2 請求項4に係る発明の産業上の利用可能性について
上述したとおり、請求項4の各工程を実施する主体を特定できないから、当該請求項に係る発明は不明確であるが、仮に、請求項4の各工程を実施する主体は本件出願明細書の記載を参酌することにより特定できるものであり、請求項4に係る発明は、当該請求項の記載から特定できるものとしてさらに検討する。
本件出願明細書の段落【0009】に「本開示は、患者の、インプラントの、および潜在的に一般母集団解剖学的な複数のデータソースを収集および査定し、種々のデータソースを相互参照および評価し、ならびに外科医および/またはインプラント設計者/製造業者が置換または「再置換」インプラントを選択、設計、製造し、1人または複数の選択された患者に埋め込む際に使用するために、評価された出力を提供するためのシステム、デバイス、および方法を説明する。」と記載されているから、主体としての外科医等の医療行為従事者が記載されている。
そうすると、請求項4に係る発明には、外科医等の医療行為従事者が、取得した画像データに基づいてコンピュータシステムを用いつつ各種の判断を行って情報を導出し、導出した情報に基づいて行う判断を踏まえて外科用ツールの製造のための情報を生成する、という方法、すなわち、人間を診断する方法が含まれるものと認められる。
したがって、請求項4に係る発明は、特許法第29条柱書きに規定された産業上利用できる発明に該当しない。

第5 むすび
以上のとおり、特許請求の範囲の記載は、請求項1及び4について、特許法第36条第6項第2号の要件を満たしておらず、また、請求項4に係る発明について、当該要件を満たすとしてみても同法第29条柱書きの規定に規定する要件を満たしていないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-12 
結審通知日 2018-06-15 
審決日 2018-06-26 
出願番号 特願2014-526175(P2014-526175)
審決分類 P 1 8・ 14- WZ (A61F)
P 1 8・ 537- WZ (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松浦 陽  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 高木 彰
瀬戸 康平
発明の名称 関節形成術インプラントを再置換するための再置換システム、ツール、および方法  
代理人 岡村 和郎  
代理人 永井 浩之  
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