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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D03D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D03D
管理番号 1345845
異議申立番号 異議2018-700145  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-02-22 
確定日 2018-09-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6185302号発明「布帛および繊維製品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6185302号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正することを認める。 特許第6185302号の請求項1?6、8?13に係る特許を維持する。 特許第6185302号の請求項7に係る特許についての申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
本件特許第6185302号(以下「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成25年6月21日の出願であって、平成29年8月4日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成30年2月22日に特許異議申立人特許業務法人虎ノ門知的財産事務所(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされ、平成30年5月8日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年6月8日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、平成30年7月26日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の請求
1.訂正の内容
平成30年6月8日付け訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第6185302号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?13について訂正する」ことを求めるものであり、その訂正の内容は、本件特許に係る願書に添付した特許請求の範囲を、次のように訂正するものである。(下線部は、訂正箇所を示す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「含まれることを特徴とする布帛。」と記載されているのを、「含まれ、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下であり、かつ前記セルロース系繊維がレーヨン繊維であることを特徴とする布帛。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?6、8?13についても同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれかに記載の布帛。」と記載されているのを、「請求項1?6のいずれかに記載の布帛。」に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?9のいずれかに記載の布帛。」と記載されているのを、「請求項1?6、8、9のいずれかに記載の布帛。」に訂正する。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1?10のいずれかに記載の布帛。」と記載されているのを、「請求項1?6、8?10のいずれかに記載の布帛。」に訂正する。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?11のいずれかに記載の布帛。」と記載されているのを、「請求項1?6、8?11のいずれかに記載の布帛。」に訂正する。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項13に「請求項1?12のいずれかに記載の布帛。」と記載されているのを、「請求項1?6、8?12のいずれかに記載の布帛。」に訂正する。

2.訂正の適否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明では、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量が特定されてない。また、セルロース系繊維として種類が特定されてない。
これに対して、訂正後の請求項1に係る発明では、メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量を0.1質量%以下に限定し、かつセルロース系繊維をレーヨン繊維に限定することにより特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、訂正後の請求項2?6、8?13は、訂正後の請求項1に記載された「前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下であり、かつ前記セルロース系繊維がレーヨン繊維である」との記載を引用することにより、訂正後の請求項2?6、8?13に係る発明におけるメタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量とセルロース系繊維の種類を限定するものであるため、訂正後の請求項2?6、8?13に係る当該訂正事項1は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、請求項1の発明特定事項を上位概念から下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
また、訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載以外に、訂正前の請求項2?6、8?13の記載について訂正するものではなく、請求項2?6、8?13のカテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に基づいて導き出される構成である。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量について、訂正前の特許請求の範囲の請求項7に「メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下である」と記載されている。また、セルロース系繊維について、願書に添付した明細書段落【0027】に「セルロース系繊維としては、レーヨン繊維・・・が好ましい。」と記載されている
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

(2)訂正事項2
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、請求項7を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2は、請求項7を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項2は、請求項7を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(3)訂正事項3?7
ア 訂正の目的について
訂正事項3?7は、上記訂正事項2に係る訂正(請求項7の削除)に伴い、訂正前の請求項8、10?13が引用する請求項7を削除し、請求項間の引用関係の整合を図るものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3?7は、上述の如く、請求項8、10?13が引用する請求項を減らす訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3?7は、上述の如く、請求項8、10?13が引用する請求項を減らす訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

(4)一群の請求項についての説明
訂正前の請求項1?13について、請求項2?13は、請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、請求項1の訂正に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?13は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3.まとめ
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に規定する事項を目的とし、同条第4項並びに同条第9項の規定によって準用する第126条第5項及び第6項に適合するので、訂正後の請求項〔1-13〕について訂正を認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件特許の請求項1?6、8?13に係る発明(以下「本件発明1?6、8?13」という。)は、上記訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?6、8?13に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維とセルロース系繊維とを含む布帛であって、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度とセルロース系繊維の単繊維繊度との差が0.4dtex以下であり、かつ布帛の水分率が5.5質量%以上であり、かつメタ型全芳香族ポリアミド繊維とセルロース系繊維とが混紡され、かつメタ型全芳香族ポリアミド繊維が布帛に、布帛重量に対し50?98重量%含まれ、かつセルロース系繊維が布帛に、布帛重量に対し2?50重量%含まれ、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下であり、かつ前記セルロース系繊維がレーヨン繊維であることを特徴とする布帛。
【請求項2】
布帛に、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、ポリべズビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリカーボネート繊維、再生繊維、天然繊維からなる群より選択されるいずれかの繊維がさらに含まれる、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
布帛に含まれる全ての繊維において、単繊維繊度の差が互いに0.4dtex以下である、請求項1または請求項2に記載の布帛。
【請求項4】
ISO6942に規定する耐輻射熱試験において、センサーが24℃上昇するまでの時間RHTI24が6.5秒以上である、請求項1?3のいずれかに記載の布帛。
【請求項5】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維が布帛重量に対して50?98重量%含まれる、請求項1?4のいずれかに記載の布帛。
【請求項6】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、結晶化度が15?25%の範囲内である、請求項1?5のいずれかに記載の布帛。
【請求項8】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維を形成するメタ型全芳香族ポリアミドが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1?10mol%となるように共重合させた芳香族ポリアミドである、請求項1?6のいずれかに記載の布帛。
-(NH-Ar1-NH-CO-Ar1-CO)- ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【請求項9】
第3成分となる芳香族ジアミンが式(2)、(3)、または芳香族ジカルボン酸ハライドが、式(4)、(5)である、請求項8に記載の布帛。
H2N-Ar2-NH_(2 ) ・・・式(2)
H2N-Ar2-Y-Ar2-NH_(2) ・・・式(3)
XOC-Ar3-COX ・・・式(4)
XOC-Ar3-Y-Ar3-COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項10】
布帛を構成するいずれかの繊維が難燃剤を含む、請求項1?6、8、9のいずれかに記載の布帛。
【請求項11】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維が有機染料を含む、請求項1?6、8?10のいずれかに記載の布帛。
【請求項12】
布帛を構成するいずれかの繊維が紫外線吸収剤および/または反射剤を含む、請求項1?6、8?11のいずれかに記載の布帛。
【請求項13】
請求項1?6、8?12のいずれかに記載された布帛を用いてなる繊維製品。」

第4 当審の判断
1.取消理由通知書に記載した取消理由の概要
平成30年5月8日付け取消理由通知書に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。なお、申立人の申立て理由は、全て通知した。

(理由1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(理由2)本件特許は、明細書の記載が下記の点で不備のため、第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

以下、「甲第1号証」等を「甲1」等といい、「甲第1号証に記載された発明」等を「甲1発明」等といい、「甲第1号証に記載された事項」等を「甲1記載事項」等という。
また、「本件特許の請求項1?6、8?13に係る発明」を、「本件発明1?6、8?13」という。

<引用文献一覧>
甲1:特開平4-50340号公報
甲2:特開平10-53920号公報
甲3:特開平7-238439号公報
甲4:「高強度・高弾性率繊維など各種高機能繊維に関するデータ集」「2.2.1(2) パラ型アラミド繊維 帝人 “トワロン”」、[online]、[2018年1月15日検索]、インターネット、<URL:http//www.kaizenken.jp/db/chap2/data2_2/1_high-strength_and_hig-modulus_fiber/2_2_1_2_twaron.pdf>
甲5:「高強度・高弾性率繊維など各種高機能繊維に関するデータ集」「2.2.1(3) アラミド繊維(メタ型 帝人 “コーネックス”(技術資料)」、[online]、[2018年1月15日検索]、インターネット、<URL:http//www.kaizenken.jp/db/chap2/data2_2/2_high-thermostability_and_flame_retardant_fiber/2_2_2_3_conex2_.pdf>
甲6:特開2012-36534号公報
甲7:吉川和志、「新しい繊維の知識(増補改訂版)」、長江書房、1971年4月20日、16頁
甲8:特開2009-73760号公報

(1)(理由1)(特許法第29条第2項)
ア 本件発明1?5、10、12、13について
本件発明1?5、10、12、13は、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に想到し得た発明である。

イ 本件発明6、8、9について
本件発明6、8、9は、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に想到し得た発明である。

ウ 本件発明11について
本件発明11は、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲3記載事項、あるいは甲1発明及び甲6記載事項、あるいは、甲1発明、甲3記載事項及び甲6記載事項に基いて当業者が容易に想到し得た発明である。

(2)(理由2)(特許法第36条第4項第1号)
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、単繊維繊度の測定方法に関する記載がない。単繊維繊度の測定方法としては、重量から平均繊度を算出するJISL1015のA法及びB法、1本で行う振動法、また顕微鏡を用いて断面を観察する方法等があり、多数の測定方法が存在する。また、用いる繊維の単繊維繊度には、ばらつきがあり、その布帛に含まれる全ての繊維において、単繊維繊度の差が互いに全て0.4dtex以下であったか否かについて、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、記載がなく、その確認方法も記載されていない。
よって、本件発明1?6、8?13は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に当業者が容易に実施できる程度に記載されたものではない。

2.理由2(特許法第36条第4項第1号)について
事案に鑑み、理由2をまず検討する。
(1)繊度及び繊度の測定方法について
糸の太さの指標である繊度(テックスtex)は、糸の長さ1000mあたり試料のグラム数で表すものである。日本では、普通デシテックス(dtex)が用いられている(1dtex=0.1tex)。
また、繊維の繊度の測定方法に関しては、「JISL1015:2010化学繊維ステープル試験方法」が制定されており、その「8.5繊度」の項に「8.5.1正量繊度 正量繊度は次のいずれかによる。なお、通常はA法によって行うが、A法を適用しにくい繊維についてはB法を適用してもよい。」とあるように、通常は繊維の繊度の測定方法として、JISL1015の8.5のA法を用いるのが、技術常識である。
(2)本件特許明細書に、単繊維繊度の測定方法は記載されていないが、上記(1)で述べた技術常識によれば、当業者であれば、JISL1015の8.5のA法に準拠して測定すればよいことは理解でき、それによって求めた単繊維繊度の差を求めることによって本件発明は実施できるものである。また、単繊維繊度のバラツキについても、セルロース系繊維がレーヨン繊維と特定されたことにより、そのバラツキは小さいものとなったので、当業者が実施できないとはいえない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件発明1?6、8?13について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものである。
(3)小括
よって、本件特許の明細書の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとすることはできず、本件発明1?6、8?13に係る特許は、特許法第113条第4号に該当することを理由として、取り消すことはできない。

3.理由1(特許法第29条第2項)について
(1)甲1発明
甲1には、以下の甲1発明が記載されている(特に、2頁左下欄1?7行、2頁左下欄8?12行、3頁左上欄13行?右上欄2行、4頁右下欄16行?5頁左上欄1行、6頁左上欄1?9行、第2表の実施例6)。
「芳香族ポリアミド繊維52重量%と難燃レーヨン繊維(東洋紡(株)タフバン登録商標)28重量%とからなる繊維とポリエステル繊維20重量%とが均一に混合されてなる布帛であって、芳香族ポリアミド繊維と難燃レーヨン繊維(東洋紡(株)タフバン登録商標)の単繊維繊度の差が0.6de(0.66dtex)である、芳香族ポリアミド繊維布帛。」

(2)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「芳香族ポリアミド繊維」、「難燃レーヨン繊維(東洋紡(株)タフバン登録商標)」は、それぞれ、本件発明1の「メタ型全芳香族ポリアミド繊維」、「レーヨン繊維」に相当するので、両者は、少なくとも、次の相違点1及び相違点2において相違する。
<相違点1>
本件発明1は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度とセルロース系繊維(レーヨン繊維)の単繊維繊度との差が0.4dtex以下であるのに対して、甲1発明は、芳香族ポリアミド繊維と難燃レーヨン繊維(東洋紡(株)タフバン登録商標)の単繊維繊度の差が0.6de(0.66dtex)である点。

<相違点2>
本件発明1は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下であるのに対して、甲1発明は、残存溶媒量が不明である点。

相違点1を検討する。
甲1発明は、芳香族ポリアミド繊維とポリエステル繊維の混用比率を特定の範囲とすることで形態保持性の良好な布帛を得る(甲1の2頁右上欄8行?18行)ことを課題とするもので、本件発明1のように、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度とセルロース系繊維(レーヨン繊維)の単繊維繊度との差を0.4dtex以下にして単繊維間の空隙量を大きくしようとする動機付けがない。
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度とセルロース系繊維(レーヨン繊維)の単繊維繊度との差が0.4dtex以下である点は、甲2?甲8にも、記載されていないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、相違点1に係る構成を有することにより、単繊維間の空隙量を大きくすることができ遮熱性が向上する(本件明細書【0028】)という格別な作用効果を奏する。

相違点2を検討する。
メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下である点は、甲2?甲8にも、記載されていないし、示唆する記載もない。
本件発明1は、相違点2に係る構成を有することにより、メタ型芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわせない及び染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い(本件明細書【0019】)という格別な作用効果を奏する。
以上のとおりであるから、甲1発明において、上記相違点1及び相違点2に係る本件発明1に係る構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。

よって、本件発明1は、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明2?5、10、12、13について
本件発明2?5、10、12、13は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件発明6、8、9について
本件発明6、8、9は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項、あるいは、甲1発明及び甲2記載事項及び甲3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件発明11について
本件発明11は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明、あるいは、甲1発明及び甲3記載事項、あるいは甲1発明及び甲6記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)小括
以上のとおり、本件発明1?6、8?13は、特許法第29条第2項の規定に違反するものではなく、本件発明1?6、8?13に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、取り消されるべきものではない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1?6、8?13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?6、8?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項7は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項7に対して申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許の請求項7に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維とセルロース系繊維とを含む布帛であって、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度とセルロース系繊維の単繊維繊度との差が0.4dtex以下であり、かつ布帛の水分率が5.5質量%以上であり、かつメタ型全芳香族ポリアミド繊維とセルロース系繊維とが混紡され、かつメタ型全芳香族ポリアミド繊維が布帛に、布帛重量に対し50?98重量%含まれ、かつセルロース系繊維が布帛に、布帛重量に対し2?50重量%含まれ、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、残存溶媒量が0.1質量%以下であり、かつ前記セルロース系繊維がレーヨン繊維であることを特徴とする布帛。
【請求項2】
布帛に、パラ型全芳香族ポリアミド繊維、ポリベズビスオキサゾール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリカーボネート繊維、再生繊維、天然繊維からなる群より選択されるいずれかの繊維がさらに含まれる、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
布帛に含まれる全ての繊維において、単繊維繊度の差が互いに0.4dtex以下である、請求項1または請求項2に記載の布帛。
【請求項4】
ISO6942に規定する耐輻射熱試験において、センサーが24℃上昇するまでの時間RHTI24が6.5秒以上である、請求項1?3のいずれかに記載の布帛。
【請求項5】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維が布帛重量に対して50?98重量%含まれる、請求項1?4のいずれかに記載の布帛。
【請求項6】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維において、結晶化度が15?25%の範囲内である、請求項1?5のいずれかに記載の布帛。
【請求項7】(削除)
【請求項8】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維を形成するメタ型全芳香族ポリアミドが、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1?10mol%となるように共重合させた芳香族ポリアミドである、請求項1?6のいずれかに記載の布帛。
-(NH-Ar1-NH-CO-Ar1-CO)- ・・・式(1)
ここで、Ar1はメタ配位又は平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【請求項9】
第3成分となる芳香族ジアミンが式(2)、(3)、または芳香族ジカルボン酸ハライドが、式(4)、(5)である、請求項8に記載の布帛。
H_(2)N-Ar2-NH_(2) ・・・式(2)
H_(2)N-Ar2-Y-Ar2-NH_(2) ・・・式(3)
XOC-Ar3-COX ・・・式(4)
XOC-Ar3-Y-Ar3-COX ・・・式(5)
ここで、Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子又は官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【請求項10】
布帛を構成するいずれかの繊維が難燃剤を含む、請求項1?6、8、9のいずれかに記載の布帛。
【請求項11】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維が有機染料を含む、請求項1?6、8?10のいずれかに記載の布帛。
【請求項12】
布帛を構成するいずれかの繊維が紫外線吸収剤および/または反射剤を含む、請求項1?6、8?11のいずれかに記載の布帛。
【請求項13】
請求項1?6、8?12のいずれかに記載された布帛を用いてなる繊維製品。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-09-20 
出願番号 特願2013-130684(P2013-130684)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (D03D)
P 1 651・ 536- YAA (D03D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長谷川 大輔  
特許庁審判長 門前 浩一
特許庁審判官 蓮井 雅之
井上 茂夫
登録日 2017-08-04 
登録番号 特許第6185302号(P6185302)
権利者 帝人株式会社
発明の名称 布帛および繊維製品  
代理人 為山 太郎  
代理人 為山 太郎  
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