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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01R
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01R
管理番号 1345858
異議申立番号 異議2018-700015  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-05 
確定日 2018-10-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6158418号発明「コネクタ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6158418号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1?6〕について訂正することを認める。 特許第6158418号の請求項1?3、5及び6に係る特許を維持する。 特許第6158418号の請求項4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第6158418号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?6に係る特許についての出願は、2015年(平成27年)2月18日(優先権主張2014年2月18日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月16日にその特許権の設定がされ(特許掲載公報発行日平成29年7月5日)、その後平成30年1月5日に特許異議申立人石井悠太(以下、「異議申立人」という。)により全請求項に対して特許異議の申立てがされ、平成30年3月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成30年4月26日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して異議申立人より平成30年7月6日付けて意見書が提出されたものである。

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである(下線は訂正箇所であり、当審で付した)。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「接続対象物と接触する接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置する」との記載を「接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置する」に訂正する。
(請求項1を直接的に引用する請求項2、3、及び請求項1を間接的に引用する請求項5、6も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5における「請求項2?請求項4何れか1項」との記載を「請求項2又は請求項3」に訂正する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6における「請求項2?請求項5何れか1項」との記載を「請求項2、請求項3又は請求項5何れか1項」に訂正する。

(2)訂正の目的、新規事項追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の有無及び一群の請求項
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1のうち訂正前請求項1の「接続対象物と接触する接点部を有し」との記載を「接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し」とする訂正は、訂正前請求項1の「接点部」の構成をより具体的に特定し限定するものである。
また、訂正前請求項1の「当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置する」との記載を「当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置する」とする訂正は、訂正前請求項1の「接点部」の部位を、その一部である「嵌合接点部」に特定し限定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無
訂正事項1のうち「接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し」の点は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の段落【0034】の「リア接点部9b1は、スリット4e1から突出している部分の板縁に設けられる。より具体的には、挿入口4cから挿入されるプラグコネクタ2と最初に接触する接触部位から、プラグコネクタ2との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である。」との記載及び同段落の「このリア接点部9b1の下端側にはプラグ端子5と押圧接触する嵌合接点部9b2が設けられる。嵌合接点部9b2はハウジング4の内壁4eのスリット4e1から突出し、正規の接触位置として嵌合室4dの内側でプラグ端子5の端子面5aと接触する」との記載に基づくものである。
また、訂正事項1のうち「当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置する」との点は、上記本件明細書等の段落【0034】の記載に加え、本件明細書等の段落【0041】の「リア端子9では弾性腕9aの付け根の部分に位置する変位支点9cが、非嵌合状態で、前後方向Yにおいてリア接点部9b1よりも嵌合位置にあるプラグ端子5の側に位置するように設けられている」との記載及び【図5】、【図7】の記載に基づくものである。
したがって、訂正事項1は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえる(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項)。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、また、当該訂正事項により、訂正前の特許請求の範囲には含まれないとされていた発明が訂正後の特許請求の範囲に含まれることとなるという事情は認められない。したがって、訂正事項1は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない(特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項)。
イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的
訂正事項2は、訂正前請求項4の削除であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無
訂正事項2は、訂正前請求項4の削除であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかといえる。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項2は、訂正前請求項4の削除であるから、特許請求の範囲を拡張・変更するものでないことは明らかといえる。
ウ 訂正事項3及び4
(ア)訂正の目的
訂正事項3及び4は、訂正事項2において削除するとする訂正前請求項4に対する引用関係を解消する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項追加の有無
訂正事項3及び4は、訂正前請求項4に対する引用関係を解消する訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかといえる。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の有無
訂正事項3及び4は、訂正前請求項4に対する引用関係を解消する訂正であるから、特許請求の範囲を拡張・変更するものでないことは明らかといえる。
エ 一群の請求項
訂正前の請求項1?6について、請求項2?6はそれぞれ請求項1を直接的又は間接的に引用するものであり、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?6に対応する訂正後の請求項1?6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、訂正事項1?4は、一群の請求項に対して請求されたものであるといえる。

(3)本件訂正請求に関する異議申立人の意見について
ア 異議申立人の意見の概要
本件訂正請求について、異議申立人は平成30年7月6日に提出した意見書の「3.意見の内容」の「(1)訂正について」において、概略次のとおり主張する。
特許権者は、本件特許発明は、「当該弾性片は、その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている」との構成要件を有することにより、「接点部が接続対象物と接触すると、接触部が直ちに斜め下方に向けて回動変位する」こととなり「接続対象物と接触する嵌合過程で、フロント端子とリア端子とがより確実に互いに接触しないようにすることができるという技術思想を有する。」と主張するが、特許権者が主張するような「接点部が接続対象物と接触すると、接触部が直ちに斜め下方に向けて回動変位する」ためには、「変位支点」が、「嵌合接点部」よりも「ハウジングに挿入された接続対象物の側とは反対側」に位置する「最初に接触する接触部位」よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置することが重要なのであって、「嵌合接点部」が、変位支点との関係でどのように位置付けられているのかとは無関係であるから、訂正事項1の訂正の趣旨が不明である。
イ 当審の判断
上記(2)ア(ア)で述べたとおり、訂正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえ、訂正の趣旨が不明であるとはいえない。
この点について付言すると、本件訂正前の請求項1に係る発明においては、「接点部」が「前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部」と幅のある範囲で規定される一方、「弾性片部は、その変位支点が前記接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている」と規定されていることから、「変位支点」が、接続対象物と「最初に接触する接触部位」を含む幅のある「接点部」よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置することが特定されるにすぎない。これに対し、訂正事項1により、訂正後の請求項1に係る発明にあっては、「変位支点」は、「接点部」のうち「嵌合接点部」よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置することが特定されることとなる。そしてこの訂正事項1により、「接点部が接続対象物と接触すると、接触部が直ちに斜め下方に向けて回動変位する」ことが確保され、「接続対象物と接触する嵌合過程で、フロント端子とリア端子とがより確実に互いに接触しないようにすることができる」ということを一層達成しうることとなるといえる。
また、訂正事項1が本件明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものといえること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しないことは、上記(2)アの(イ)及び(ウ)で述べたとおりである。
よって、異議申立人の上記主張は理由がない。

(4)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?6〕について訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求は上記2.のとおり認められるので、本件特許に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?3、5及び6に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
・本件発明1
「【請求項1】
ハウジングとコネクタ端子とを備え、コネクタ端子が、
ハウジングの挿入口から挿入される接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するフロント端子と、
フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するリア端子と、を備えるコネクタにおいて、
前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されていることを特徴とするコネクタ。」
・本件発明2
「【請求項2】
前記フロント端子は、前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部を有し、当該接点部は前記弾性片部の変位支点よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている請求項1記載のコネクタ。」
・本件発明3
「【請求項3】
前記フロント端子は、その接触部と弾性片部との間に、前記リア端子の接触部の前記挿入口側の先端が入り込む隙間を有する請求項1又は請求項2記載のコネクタ。」
・本件発明5
「【請求項5】
前記フロント端子の接点部が、前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から、接続対象物との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である請求項2又は請求項3記載のコネクタ。」
・本件発明6
「【請求項6】
前記フロント端子の接点部と前記リア端子の接点部とが接続対象物と接触することで互いに非接触のまま異方向へ変位する請求項2、請求項3又は請求項5何れか1項記載のコネクタ。」

(2)取消理由の概要
本件訂正前の請求項1?6に係る特許に対して平成30年3月5日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。
[取消理由1]請求項1?6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?6に係る特許は取り消されるべきものである。
[取消理由2]請求項1?6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?6に係る特許は取り消されるべきものである。
[取消理由3]請求項1、2、4?6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定により特許を受けることができないものであり、請求項1、2、4?6に係る特許は取り消されるべきものである。
[取消理由4]請求項1?6に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?6に係る特許は取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2012-221592号公報
甲第2号証:特開2010-40309号公報

(3)甲号証の記載及び発明
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証(特開2012-221592号公報)には、「コネクタ」に関し図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0012】
さらに、第二コンタクト部において第一コンタクト部のパッドへの接触に起因する反力が伝達されること自体を防止することはできていない。このため、第二コンタクト部のパッドに対する押圧力が、第一コンタクト部のパッドへの接触に依存して変化して不安定となることを十分に防止することはできず、依然として電気的接続の信頼性が低下するという問題が生じる。」
(イ)「【0015】
本発明は、上記問題に鑑み、電気的接続の信頼性を確保できかつプレスフィット方式に対応可能なコネクタを提供することを目的とする。」
(ウ)「【0021】
図1に示すように、本実施例1のコネクタ1は、複数条のパッド2(被接触子)を両面に含むカードエッジ3(被接続体)を挿入方向Sに挿入可能で挿入方向Sと反対方向の抜出方向に抜出可能な開口部4aを有するハウジング4(筐体)と、パッド2のそれぞれに一対一に対応する二種類のコンタクト5及びコンタクト15を含む。なお、挿入方向Sと抜出方向を併せて挿抜方向と呼称する。複数条のパッド2はカードエッジ3の両面において幅方向Wを配列方向として等間隔Pにて配列される。」
(エ)「【0023】
加えて、図1に示すように、第一コンタクト部6のパッド2に接触する第一接触面6aを、第二コンタクト部7のパッド2に接触する第二接触面7aよりも挿抜方向においてカードエッジ3側つまり挿入方向Sの矢印の反対の抜出方向側にオフセットさせて位置させる。」
(オ)「【0026】
なお、図1中Cは、押圧力作用方向Fにおけるハウジング4及び開口部4aの中央を指し、この中央Cは、カードエッジ3が挿入された場合においては、カードエッジ3の厚み方向の中央に一致する。コンタクト5及びコンタクト15はいずれも、カードエッジ3の厚み方向の両面に位置するパッド2に対して押圧力を作用させるため、図1に示すように、この中央Cを境界として、押圧力作用方向Fは逆方向をなす。」
(カ)「【0041】
図7に示すように、押圧力作用方向Fの指向する方向から順に、第二コンタクト部7、第一コンタクト部6が、並列され、L字状をなす平面状に構成された支持部8の押圧力作用方向F側の端部8aから挿入方向Sと反対側に指向する方向に、第二コンタクト部7が延出され、支持部8の挿入方向Sと反対側の端部8bから、挿入方向Sと反対側に指向する方向に第一コンタクト部6が延出される。」
(キ)「【0042】
端部8aと端部8bとは押圧力作用方向Fつまり所定方向において、第一コンタクト部6と第二コンタクト部7を力学的に独立させるにあたって必要となる第一の所定距離だけ離隔されて配置される。」
(ク)「【0043】
第一コンタクト部6は、端部8bから挿入方向Sと反対側に延出した後、押圧力作用方向Fに指向した後、さらに、挿入方向Sに指向するようにU字状に湾曲して、さらに、押圧力作用方向Fの反対方向に指向する折り返し部分を有するように、全体としてJ字形状をなすように折り曲げられて構成される。この折り返し部分が第一接触部6aを構成する。」
(ケ)「【0044】
第二コンタクト部7は、端部8aから挿入方向Sと反対側の抜出方向に対して押圧力作用方向Fの反対側に指向する成分を有して傾斜するように延出されて、第一変更点において、挿入方向Sと反対側かつ押圧力作用方向Fに指向する成分を有して抜出方向に傾斜するように延出方向が変更される。」
(コ)「【0045】
さらに、第二コンタクト部7は、その後の第二変更点において、抜出方向に対して押圧力作用方向Fと反対側に指向する成分を有して傾斜するように延出方向が変更されて、全体として偏平なZ字形状をなすように、第一変更点と第二変更点において折り曲げられて構成される。この第二変更点が第二接触部7aを構成する。」
(サ)「【0049】
なお、コンタクト5は、銅合金等の導電性と弾性を有する単一の弾性部材を適宜プレス加工、折り曲げ加工等を施すことにより構成される。第一接触面6a及び第二接触面7aの表面については必要により適宜メッキ処理がなされる。」
(シ)「【0072】
すなわち、本実施例1のコネクタ1によれば、カードエッジ3にハウジング4を接続するにあたって、カードエッジ3をハウジング4に対して挿入方向Sに挿入する挿入工程において、パッド2に対して第二コンタクト部7の第二接触面7a及び第二コンタクト部17の第二接触面17aより先に、第一コンタクト部6の第一接触面6a及び第一コンタクト部16及び第一接触面16aを接触させて、パッド2の表面をワイピングして、表面上の異物を除去することができる。」
(ス)「【0073】
さらに、第一コンタクト部6は第二コンタクト部7とは所定方向において相互に離隔した別箇所において支持部8により支持されるため、第一コンタクト部6と第二コンタクト部7とを力学的に独立させることができる。つまり、第一コンタクト部6の第一接触面6aのパッド2への接触にあたりパッド2から第一コンタクト部6に作用する反力が、第二コンタクト部7に伝達されることを防止することができ、第二コンタクト部7のパッド2への接触のための押圧力を安定させることができる。」

また、甲第1号証の各図面(特に【図7】)及び上記各摘示事項から、甲第1号証には次の事項が記載されているといえる。
(セ)【図7】から、第一コンタクト部6は、その第一接触面6aと弾性片部との間に、第二コンタクト部7の第二接触面7aの、ハウジング4の開口部4a側の先端が入り込む隙間を有する点。
(ソ)【図7】及び上記摘示事項(オ)(カ)(ケ)(コ)より、第二コンタクト部7には、開口部4aから挿入されるカードエッジ3と接触する接点部が形成されている点。
(タ)【図7】及び上記摘示事項(オ)(カ)(ケ)(コ)並びに上記(ソ)より、第二コンタクト部7の接点部が、開口部4aから挿入されるカードエッジ3と最初に接触する接触部位から、カードエッジ3との正規の嵌合位置で接触する接触部位7aまでを含む点。
(チ)【図7】及び上記摘示事項(オ)(カ)(キ)より、第二コンタクト部7の端部8aが第二コンタクト部7の弾性片部の力学的支点、すなわち、変位支点となる点。
(ツ)【図7】及び上記摘示事項(オ)(カ)(キ)(ケ)(コ)(チ)より、第二コンタクト部7の弾性片部の変位支点となる端部8aは、第二コンタクト部7の接点部のうちカードエッジ3との正規の嵌合位置で接触する接触部位と、押圧力作用方向Fで同じ位置に位置するように形成されている点。
(テ)【図7】から、第一コンタクト部6は、開口部4aから挿入されるカードエッジ3と接触する接点部を有し、この接点部は弾性片部の変位支点となる端部8aよりもハウジング4に挿入されたカードエッジ3の側に位置するように形成されている点。
(ト)【図7】及び上記摘示事項(ス)より、第一コンタクト部6の接点部と第二コンタクト部7の接点部とは、カードエッジ3と接触することで互いに非接触のまま変位する点。
(ナ)上記(ツ)及び(テ)より、第一コンタクト6の接点部と第二コンタクト部7の接点部とは、カードエッジ3と接触することで異方向へ変位する点。

イ 甲第1号証に記載の発明
上記アより、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「ハウジング4とコンタクト5とを備え、
コンタクト5が、ハウジング4の開口部4aから挿入されるカードエッジ3と接触する第一接触面6aと、この第一接触面6aを変位可能に支持する弾性片部とを有する第一コンタクト部6と、第一コンタクト部6の第一接触面6aに続いてカードエッジ3と接触する第二接触面7aと、この第二接触面7aを変位可能に支持する弾性片部とを有する第二コンタクト部7と、を備えるコネクタ1において、
第二コンタクト部7は、第二接触面7aに設けられ開口部4aから挿入されるカードエッジ3と最初に接触する接触部位から、カードエッジ3との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である接点部を有し、当該弾性片部はその変位支点となる端部8aがカードエッジ3との正規の嵌合位置で接触する接触部位と、押圧力作用方向Fで同じ位置に位置するように形成されている、
コネクタ。」

ウ 甲第2号証に記載事項
甲第2号証(特開2010-40309号公報)には、「多接点端子を有する電気コネクタ」に関し図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【0021】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態のコネクタの外観を示す斜視図である。図1にて、コネクタ1は、電気絶縁材料で作られたハウジング10に、金属板から作られた端子20が植設されている。」
(イ)「【0022】
上記ハウジング10は、本体部11と脚部12とを有している。本体部11は平面形状が横方向に長い略台形をなし、縦方向に延びる短筒外面を有し、横方向両端下部に上記脚部12が設けられている。上記ハウジング10の本体部11は、上方に開口して相手コネクタの被嵌合部を受入れる受入凹部13が上記横方向に長く形成されており、該受入凹部13の対向内面には、後述の端子20を植設する端子溝14が上記横方向で定間隔に複数形成されている。・・・」
(ウ)「【0026】
第一弾性腕22は、基部21側の部分の左側縁が延長された被取付部22Aと、該被取付部22Aよりも上方部分が段状に幅が小さくなりそのまま上方へ延びる第一弾性部22Bを有し、該第一弾性部22Bの上端に右方へ突出せる第一接触部22Cが設けられている。」
(エ)「【0027】
これに対し、第二弾性腕23は、上記基部21から、上記第一弾性腕22の第一弾性部22Bよりも若干小さい幅で上方に延びる第二弾性部23Aを有している。該第二弾性部23Aは上記第一弾性腕22の第一接触部22Cの直下まで延びていて、該第二弾性部23Aの上端に右方へ突出する第二接触部22Bが設けられている。該第二弾性腕23の第二接触部23Bと上記第一弾性腕22の第一接触部22Cのそれぞれの突端を通る線X’は、図3(A)に見られる相手コネクタ30の対応端子31の対応接触部31A(の接触面)を通りコネクタ嵌合方向に延びる仮想の接触線Xと平行であり、該接触線Xに対して距離δだけ偏位している。・・・」
(オ)「【0035】
(3)しかる後に、相手コネクタ30を降下させる。相手コネクタ30はその外壁33が上記コネクタ1のハウジング10の本体部11の外面で案内され、該相手コネクタ30の嵌合凹部36で上記本体部11に嵌合し始める。嵌合当初では、相手コネクタ30の嵌入壁37に設けられた端子31が、コネクタ1の端子20の第一弾性腕22に設けられた第一接触部22Cに当接し、その当接圧で左右両側の第一弾性腕22同士を左右に押し拡げて弾性変形させる(図3(B)参照)。この第一弾性腕22の第一接触部22Cの弾性変位量は距離δである。このとき、第二弾性腕23は、相手コネクタ30とは当接しておらず、未だ弾性変形していない。」
(カ)「【0036】
(4)さらに、相手コネクタ30を押し下げると、図3(A)における状態からの勢いで降下し、相手コネクタ30の端子31がコネクタ1の第二弾性腕23の第二接触部23Bに当接し、第二弾性腕23をも押し拡げて弾性変形させる(図3(C)参照)。この第二弾性腕23の第二接触部23Bの弾性変位量も上記第一接触部22Cと同じ距離δである。・・・」
(キ)「【0038】
<第二実施形態>
第一実施形態では、第一弾性腕22と第二弾性腕23とは、順次独立して弾性変形したが、本実施形態は、両弾性腕22,23は、一時的に連係して弾性変形する。」
(ク)「【0039】
図4(A)において、第一弾性腕22は第一接触部22Cの下縁に凹部22C‐1が形成されていて、該第一接触部22Cの先端部に係止部22C‐2を有している。一方、第二弾性腕23は第二接触部23Bの上端部に、上方に向いた突状の被係止部23B-1が設けられている。該被係止部23B‐1は上記凹部22C‐1内に進入して位置しており、横方向、すなわち接触部22C,23Bの変位方向で、上記係止部22C‐2に間隔をもって対面している。・・・」

また、甲第2号証の各図面及び上記各摘示事項から、甲第2号証には次の事項が記載されているといえる。
(ケ)【図4】及び上記摘示事項(ク)より、第一弾性腕22は、その第一接触部22Cと第一弾性部22Bとの間に、第二弾性腕23の接触部の受入凹部13側の先端が入り込む隙間を有する点。
(コ)【図3】より、第一弾性腕22と第二弾性腕23は、互いに非接触のまま変位する点。
(サ)【図3】より、第二弾性腕23の第二接触部23Bには、受入凹部13から挿入される相手端子31と接触する接点部が形成されている点。
(シ)【図3】及び上記摘示事項(カ)並びに上記(サ)より、第二弾性腕23の接点部が、受入凹部13から挿入される相手端子31と最初に接触する接触部位から、相手端子31との正規の嵌合位置で接触する接触部位までを含む点。

エ 甲第2号証に記載された発明
上記ウより、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
「ハウジング10と端子20とを備え、
端子20が、ハウジング10の受入凹部13から挿入される相手端子31と接触する第一接触部22Cと、この第一接触部22Cを変位可能に支持する第一弾性部22Bとを有する第一弾性腕22と、
第一弾性腕22の第一接触部22Cに続いて相手端子31と接触する第二接触部23Bと、この第二接触部23Bを変位可能に支持する第二弾性部23Aとを有する第二弾性腕23と、を備えるコネクタ1において、
第二弾性腕23の第二接触部23Bは、受入凹部13から挿入される相手端子31と最初に接触する接触部位から相手端子31との正規の嵌合位置で接触する接触部位までを含む接点部を有している、
コネクタ。」

(4)対比・判断
ア 甲1発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「ハウジング4」は、本件発明1の「ハウジング」に相当する。
以下同様に、「コンタクト5」は「コネクタ端子」に、
「ハウジング4の開口部4a」は「ハウジングの挿入口」に、
「カードエッジ3」は「接続対象物」に、
「第一接触面6a」は「接触部」に、
「この第一接触面6aを変位可能に支持する弾性片部」は「この接触部を変位可能に支持する弾性片部」に、
「第一コンタクト部6」は「フロント端子」に、
「第一コンタクト部6の第一接触面6aに続いてカードエッジ3と接触する第二接触面7a」は「フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部」に、
「この第二接触面7aを変位可能に支持する弾性片部」は「この接触部を変位可能に支持する弾性片部」に、
「第二コンタクト部7」は「リア端子」に、
「コネクタ1」は「コネクタ」に相当する。
上記相当関係を踏まえると、甲1発明の「第二コンタクト部7は、第二接触面7aに設けられ開口部4aから挿入されるカードエッジ3と最初に接触する接触部位から、カードエッジ3との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である接点部を有し」は、本件発明1の「前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し」に相当する。
したがって、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は次のとおりとなるといえる。
<一致点a>
「ハウジングとコネクタ端子とを備え、コネクタ端子が、
ハウジングの挿入口から挿入される接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するフロント端子と、
フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するリア端子と、を備えるコネクタにおいて、
前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有しているコネクタ。」
<相違点a1>
リア端子の弾性片部の変位支点に関し、本件発明1は、「その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている」のに対し、甲1発明は、「その変位支点となる端部8aがカードエッジ3との正規の嵌合位置で接触する接触部位と、押圧力作用方向Fで同じ位置に位置するように形成されている」点。
b 判断
甲第1号証には、相違点a1に係る本件発明1の構成である、リア端子の弾性片部の変位支点が接点部の嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成する点は、記載も示唆もされていない。
また、甲第1号証には、複数の端子が接続対象物と接触して変位する際に相互に接触することなく接続対象物と確実に接触できるコネクタを提供するために、リア端子の接触部をフロント端子の接触部から離れるように変位させる構成を採用するという技術的事項を示唆する記載は存在しないし、かかる技術的事項が当業者にとって自明であるともいえない。
そして、本件発明1は、相違点a1に係る本件発明1の構成を有することにより、「リア端子の接触部がフロント端子の接触部から離れるように変位する」(段落【0011】)ことによって、「複数の端子が接続対象物と接触して変位する際に相互に接触することなく接続対象物と確実に接触できるコネクタを提供する」という(段落【0008】)格別な作用効果を奏するものといえる。
したがって、本件発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2、3、5及び6について
本件発明2、3、5及び6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に技術的限定構成を付加するものである。したがって、本件発明2、3、5及び6と甲1発明とを対比すると、少なくとも上記相違点a1が存在することとなる。
そして、上記(ア)bで述べたのと同様に、相違点a1に係る本件発明2、3、5及び6の構成は、甲1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、本件発明2、3、5及び6は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲2発明を主引用発明とした場合
(ア)本件発明1について
a 対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「ハウジング10」は、本件発明1の「ハウジング」に相当する。
以下同様に、「端子20」は「コネクタ端子」に、
「ハウジング10の受入凹部13」は「ハウジングの挿入口」に、
「相手端子31」は「接続対象物」に、
「第一接触部22C」は「接触部」に、
「この第一接触部22Cを変位可能に支持する第一弾性部22B」は、「この接触部を変位可能に支持する弾性片部」に、
「第一弾性腕22」は「フロント端子」に、
「第一弾性腕22の第一接触部22Cに続いて相手端子31と接触する第二接触部23B」は「フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部」に、
「この第二接触部23Bを変位可能に支持する第二弾性部23A」は「この接触部を変位可能に支持する弾性片部」に、
「第二弾性腕23」は「リア端子」に、
「コネクタ1」は「コネクタ」に相当する。
上記相当関係を踏まえると、甲2発明の「第二弾性腕23の接触部23Bは、受入凹部13から挿入される相手端子31と最初に接触する接触部位から相手端子31との正規の嵌合位置で接触する接触部位までを含む接点部を有し」は、本件発明1の「前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し」に相当する。
したがって、本件発明1と甲2発明の一致点及び相違点は次のとおりとなるといえる。
<一致点b>
「ハウジングとコネクタ端子とを備え、コネクタ端子が、
ハウジングの挿入口から挿入される接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するフロント端子と、
フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するリア端子と、を備えるコネクタにおいて、
前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有しているコネクタ。」
<相違点b1>
リア端子の弾性片部の変位支点に関し、本件発明1は、「その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている」のに対し、甲2発明は、第二弾性腕23の第二弾性部23Aの変位支点については明らかではなく、このため、第二弾性腕23の第二弾性部23Aの変位支点と、相手端子31との正規の嵌合位置で接触する接触部位との相互関係についても明らかではない点。

b 判断
甲第2号証には、相違点b1に係る本件発明1の構成である、リア端子の弾性片部の変位支点が接点部の嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成する点は記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証には、複数の端子が接続対象物と接触して変位する際に相互に接触することなく接続対象物と確実に接触できるコネクタを提供するために、リア端子の接触部をフロント端子の接触部から離れるように変位させる構成を採用するという技術的事項を示唆する記載は存在しないし、かかる技術的事項が当業者にとって自明であるともいえない。
そして、本件発明1は、相違点b1に係る本件発明1の構成を有することにより、「リア端子の接触部がフロント端子の接触部から離れるように変位する」(段落【0011】)ことによって、「複数の端子が接続対象物と接触して変位する際に相互に接触することなく接続対象物と確実に接触できるコネクタを提供する」という(段落【0008】)格別な作用効果を奏するものといえる。
したがって、本件発明1は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明2、3、5及び6について
本件発明2、3、5及び6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に技術的限定構成を付加するものである。したがって、本件発明2、3、5及び6と甲2発明とを対比すると、少なくとも上記相違点b1が存在することとなる。
そして、上記(ア)bで述べたのと同様に、相違点b1に係る本件発明2、3、5及び6の構成は、甲2発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない。
したがって、本件発明2、3、5及び6は、甲2発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)異議申立人の意見について
ア 異議申立人の意見の概要
取消理由について、異議申立人は平成30年7月6日に提出した意見書の「3.意見の内容」の「(2)取消理由について」において、概略次のとおり主張する。
本件発明の技術思想が、「接点部が接続対象物と接触すると、接触部が直ちに斜め下方に向けて回動変位する」ことにあるとしても、これは、「変位支点9cが、非嵌合状態で、前後方向Yにおいて『最初に接触する接触部位』よりも嵌合位置にあるプラグ端子5の側に位置するように設けられている」ことによるものであって、この点は甲第1号証や、甲第2号証に開示されている。
イ 当審の判断
まず、本件発明1は、「前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている」との発明特定事項により発明を特定しているのであって、「変位支点」が「最初に接触する接触部位」との関係で、「前記接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている」ものとなるよう特定しているものではない。そして、かかる発明特定事項を示唆する記載が、甲第1号証及び甲第2号証の何れにもないことは上記(4)ア(ア)b及び(4)イ(ア)bで述べたとおりである。
また、挿入口から挿入される接続対象物は挿入態様によっては挿入口幅方向にずれて挿入されることが予想され、そうすると、「最初に接触する接触部位」も変わることとなる。本件発明1は、上記発明特定事項によって、仮に、挿入口から挿入される接続対象物が挿入口幅方向にずれたとしても、接続対象物がリア端子に接触すると、常にリア端子の接触部が斜め下方に向けて回動変位することを担保しているともいえ、この点は甲第1号証及び甲第2号証のいずれにも記載されていない。
したがって、異議申立人の上記主張は理由がない。

(6)小括
以上のとおりであるから、本件発明1?3、5及び6は、甲第1号証に記載された発明ではなく、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものでもない。
また、本件発明1、2、5及び6は、甲第2号証に記載された発明ではなく、さらに、本件発明1?3、5及び6は甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1?3、5及び6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由(特許異議申立書に記載された特許異議申立理由)によっては取り消すことができない。
また、他にそれら請求項1?3、5及び6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項4は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項4に対して異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項がもはや存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとコネクタ端子とを備え、コネクタ端子が、
ハウジングの挿入口から挿入される接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するフロント端子と、
フロント端子の接触部に続いて接続対象物と接触する接触部と、この接触部を変位可能に支持する弾性片部とを有するリア端子と、を備えるコネクタにおいて、
前記リア端子は、前記接触部に設けられ前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から前記接続対象物との正規の嵌合位置で接触する嵌合接点部までを含む接点部を有し、当該弾性片部は、その変位支点が前記接点部の前記嵌合接点部よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されていることを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記フロント端子は、前記挿入口から挿入される接続対象物と接触する接点部を有し、当該接点部は前記弾性片部の変位支点よりもハウジングに挿入された接続対象物の側に位置するように形成されている請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記フロント端子は、その接触部と弾性片部との間に、前記リア端子の接触部の前記挿入口側の先端が入り込む隙間を有する請求項1又は請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】(削除)
【請求項5】
前記フロント端子の接点部が、前記挿入口から挿入される接続対象物と最初に接触する接触部位から、接続対象物との正規の嵌合位置で接触する接触部位までの板縁部分である請求項2又は請求項3記載のコネクタ。
【請求項6】
前記フロント端子の接点部と前記リア端子の接点部とが接続対象物と接触することで互いに非接触のまま異方向へ変位する請求項2、請求項3又は請求項5何れか1項記載のコネクタ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-09-19 
出願番号 特願2016-504141(P2016-504141)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (H01R)
P 1 651・ 113- YAA (H01R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 学  
特許庁審判長 大町 真義
特許庁審判官 尾崎 和寛
内田 博之
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6158418号(P6158418)
権利者 イリソ電子工業株式会社
発明の名称 コネクタ  
代理人 大竹 正悟  
代理人 大竹 正悟  
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