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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A24F
審判 全部申し立て 2項進歩性  A24F
管理番号 1345859
異議申立番号 異議2017-700606  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-14 
確定日 2018-10-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6050826号発明「エアロゾル発生装置用の引出器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6050826号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第6050826号の請求項1-13に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6050826号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、2012年11月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年11月21日 欧州特許庁(EP)、2012年2月13日 欧州特許庁(EP))を国際出願日とする出願であって、平成28年12月2日に特許権の設定登録がなされ、同年12月21日に特許掲載公報が発行されたところ、平成29年6月14日に特許異議申立人山本美映子(以下、「申立人」という。)より全請求項について特許異議の申立てがされた。
そして、当審において、同年8月30日付けで取消理由を通知したところ、その指定期間内である同年12月13日付けで特許権者より意見書が提出された。
その後、当審において、平成30年3月12日付けで取消理由(決定の予告)を通知したところ、その指定期間内である同年7月3日付けで特許権者より意見書と訂正請求書が提出され、申立人より同年8月7日付けで意見書が提出された。
以下、平成30年7月3日付け訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、これに係る訂正を「本件訂正」という。

第2 本件訂正の可否
1.本件訂正の内容
本件訂正は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?10を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?10について訂正を求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記引出器(101)は、第1の位置と第2の位置の間で移動可能にエアロゾル発生装置に結合され、」とあるのを、「前記引出器(101)は、前記エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクル(105)を含み、第1の位置と第2の位置の間で移動可能にエアロゾル発生装置に結合され、」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記引出器(101)は、前記エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクル(105)を含み、開口が、」とあるのを「開口が、」に訂正する。

2.本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1記載の「引出器」に関して、「エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクルを含」む旨を特定することを目的とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としたものである。
この点、申立人は、平成30年8月7日付け意見書(以下、「申立人意見書」という。)において、訂正により請求項1に加えられた、「A)引出器(101)が摺動レセプタクル(105)を含むこと」及び「B)摺動レセプタクル(105)がエアロゾル形成基材を受け入れること」について、「A)に関しては、・・・引出器が手動レセプタクル以外の要素を含まない場合、引出器=摺動レセプタクルとなる。この場合、A)の訂正事項は、引出器を摺動レセプタクルに言い換えたにすぎない。」、また、「引出器を含むエアロゾル発生装置がエアロゾル形成基材を受け入れることが、訂正前の請求項1に既に特定されている。そうすると、B)で特定した摺動レセプタクルがエアロゾル形成基材を受け入れることは、訂正前の請求項1に既に特定されている。」から、上記A)及びB)の事項は、請求項1の技術的範囲を何ら狭めるものではなく「特許請求の範囲の減縮」に相当するものではないと主張している(申立人意見書1頁下から7行?2頁13行)。
しかし、上記A)の事項についての申立人の主張は、「引出器が摺動レセプタクル以外の要素を含まない場合」の主張であるが、請求項1の記載は、引出器が摺動レセプタクル以外の要素を含まない場合に限定されるものではないから、上記主張を採用することはできない。
また、上記B)の事項についても、訂正前の請求項1には、引出器を含むエアロゾル発生装置がエアロゾル形成基材を受け入れる旨の記載はあるが、具体的にエアロゾル発生装置のどこでエアロゾル形成基材を受け入れるかについては特定されておらず、本件訂正によりはじめて、エアロゾル形成基材を受け入れる部分が摺動レセプタクルに限定されたのであるから、上記B)で特定した摺動レセプタクルがエアロゾル形成基材を受け入れることは、訂正前の請求項1に既に特定されていたとすることはできない。
よって、本件訂正は、上記A)及びB)の事項により請求項1の記載を減縮しているものと認められ、請求項1の技術的範囲を何ら狭めるものではなく「特許請求の範囲の減縮」にはあたらないとする申立人の主張は採用できない。
そして、訂正事項1に係る内容は、訂正前の請求項2の「前記引出器(101)は、前記エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクル(105)を含み、」の記載並びに明細書の段落【0008】の「本明細書で用いる場合に、用語『エアロゾル発生物品』及び『喫煙物品』は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出することができるエアロゾル形成基材を含む物品を指す。」の記載及び段落【0014】の「引出器は、エアロゾル形成物品(審決注:「エアロゾル発生物品」の誤記と思われる。)を受け入れるための摺動レセプタクルを含むことができ、」の記載に基づくものであるから、新規事項を付加するものではないし、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正により、訂正前の請求項2の「引出器」が、「エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクルを含」むという発明特定事項が、引用する請求項1に加えられたのに伴って、重複を避けるため、当該発明特定事項を請求項2から削除することを目的とするものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、訂正事項2は、訂正前請求項2で特定していた上記発明特定事項を、引用する請求項1で特定したものであるから、請求項2の内容を実質的に変更するものではなく、新規事項を付加するものではないし、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもない。

(3)一群の請求項に係る訂正か否かについて
訂正前の請求項1?10は、請求項3?10が直接又は間接的に請求項2を引用するものであると共に、請求項2は請求項1を直接引用するものである。
よって、訂正前の請求項3?10は、訂正事項1及び2に係る請求項1及び2の訂正により、連動して訂正されるものであるから、本件訂正の請求は一群の請求項に対してなされたものである。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するもので、訂正後の請求項〔1?10〕についての訂正を認める。

第3 本件発明
上記のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1?13に係る発明(以下、各請求項の番号に従い、それぞれを「本件特許発明1」等といい、まとめて「本件特許発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
エアロゾル形成基材(203)を受け入れることができるエアロゾル発生装置(1)であって、
前記エアロゾル形成基材(203)を加熱するためのものであり、かつ該エアロゾル形成基材(203)の内部部分(211)を貫通するように構成された加熱器(115)と、
エアロゾル発生装置に受け入れられた前記エアロゾル形成基材を引き出すための引出器(101)と、
を含み、
前記引出器(101)は、前記エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクル(105)を含み、第1の位置と第2の位置の間で移動可能にエアロゾル発生装置に結合され、該第1の位置は、前記加熱器(115)が前記エアロゾル形成基材(203)と接触することによって定められる作動位置であり、該第2の位置は、該エアロゾル形成基材(203)が該加熱器(115)から分離することによって定められる引出位置であり、前記引出器が、第1及び第2の位置の両方で前記エアロゾル発生装置に結合されたままであることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
開口が、該引出器が前記第1の位置にある時に該摺動レセプタクル内に受け入れられた該エアロゾル形成基材を前記加熱器が貫通することを可能にするために該摺動レセプタクルの壁を通って形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記摺動レセプタクル(105)が前記第1及び第2の位置の間でスリーブ(103)内で摺動するように配置されるような該摺動レセプタクル(105)を受け入れるためのスリーブ(103)を含むことを特徴とする請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記摺動レセプタクル(105)は、前記スリーブ(103)に当接するように配置されたフランジ(107)を含むことを特徴とする請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記摺動レセプタクル(105)が装置(1)から滑り出るのを防止するためのストッパ(401)を更に含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記摺動レセプタクル(105)が前記第1及び第2の位置の間で移動する時に該摺動レセプタクル(105)を案内するためのガイドピン(110)を更に含むことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記エアロゾル形成基材(203)は、喫煙物品(201)内に与えられ、前記摺動レセプタクル(105)は、該喫煙物品(201)が前記引出器(101)に受け入れられた時に前記第1の位置にあることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記エアロゾル形成基材(203)を支持するための支持体(105b)が、前記摺動レセプタクル(105)の面を含み、該面は、空気の貫流を許すための少なくとも1つの開口(109)を含むことを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記摺動レセプタクル(105)は、前記エアロゾル形成基材(203)が該摺動レセプタクル(105)に受け入れられ、かつ該摺動レセプタクル(105)が前記第1の位置にある時に該エアロゾル形成基材(203)を把持するための把持手段(111)を含むことを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記摺動レセプタクル(105)は、前記エアロゾル形成基材(203)が前記加熱器(115)によって加熱されるように正しく位置決めされた時に該エアロゾル形成基材(203)が当接する面を含むことを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
エアロゾル形成基材(203)を含む喫煙物品(201)を加熱式エアロゾル発生装置から引き出す方法であって、該加熱式エアロゾル発生装置が、該エアロゾル形成基材(203)を加熱してエアロゾルを形成するための加熱器(115)と該加熱式エアロゾル発生装置に結合され、かつ該喫煙物品(201)を受け入れるための摺動レセプタクル(105)を含む引出器(101)とを含み、
前記方法は、
前記摺動レセプタクル(105)に受け入れられた喫煙物品(201)と共に該摺動レセプタクル(105)を該喫煙物品(201)の前記エアロゾル形成基材(203)が前記加熱器(115)によって加熱されるように位置決めされた第1の位置から該喫煙物品(201)の該エアロゾル形成基材(203)が該加熱器(115)から実質的に分離された第2の位置まで摺動させる段階であって、該喫煙物品(201)の該エアロゾル形成基材(203)が、該摺動レセプタクル(105)上の支持体(105b)によって該摺動させる段階中に支持され、前記引出器が、第1及び第2の位置の両方で前記加熱式エアロゾル発生装置に結合されたままである前記摺動させる段階と、
前記喫煙物品(201)を前記摺動レセプタクル(105)から取り出す段階と、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記加熱式エアロゾル発生装置は、電気加熱器を含む電気加熱式エアロゾル発生装置であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記喫煙物品は、タバコを含むことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の方法。」

第4 取消理由の概要
本件特許に対する、平成29年8月30日付け取消理由の概要は次のとおりである。

1.取消理由1(明確性)
本件特許発明1に係る特許請求の範囲の記載には不備があり、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2?10に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

2.取消理由2(進歩性)
本件特許発明1?13は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された甲第1?6号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

<甲号証一覧>
甲第1号証 特表平11-507718号公報
甲第2号証 米国特許第5591368号明細書
甲第3号証 特表平11-503912号公報
甲第4号証 米国特許第5388594号明細書
甲第5号証 特開平7-184627号公報
甲第6号証 特開2010-178730号公報
なお、以下それぞれを「甲1」等という。

第4 当審の判断
1.甲号証の記載について
(1)甲1には、以下の各事項が記載されている。
(1a)「本発明の好ましい例では、喫煙者による作動でライター穴からシガレットの少なくとも一部を排出するように位置されたプランジャーの如き機構を含む排出システムが提供される。」(9頁17?19行)

(1b)「シガレット23はライター25の前端29でオリフィス27に挿入されるように及びオリフィス27から除去されるように適応されている。」(10頁21?23行)

(1c)「シガレット23を加熱するための、好ましくはライター25に対してシガレットを保持するための実質的に円筒形の加熱設備39、及び電力源37から加熱設備のシガレット加熱素子120に予め決められた量のエネルギーを送るための電気コントロール回路41はライターの前部分33に配置されることが好ましい。」(11頁21?24行)

(1d)「好ましい例では、加熱設備39はハブから伸びるように支持された複数の均等に又は不均等に半径方向に間隔をあけて配置された加熱ブレード120を含み、それらは挿入されたシガレット23の周囲で多数の、例えば8つの領域を加熱するために回路41の制御下で電力源37によって個々に電圧を印加される。」(12頁1?5行)

(1e)「加熱素子120はタバコフレーバーを発生するためにタバコを加熱するためのいかなる好適な加熱素子も含むことができる。例えば、加熱システムは米国特許No.5388594、米国出願シリアルNo.08/380718(1995年1月30日出願)、シリアルNo.08/225120(1994年4月8日出願)、シリアルNo.08/224848(1994年4月8日出願)、シリアルNo.08/314463(1994年9月28日出願)、シリアルNo.08/333470(1994年11月2日出願)、シリアルNo.08/370125(1995年1月9日出願)、及びシリアルNo.08/426165(1994年4月20日出願、発明の名称”Heater for Use in an Electrical Smoking System”)に開示された抵抗及び誘導加熱システムのいかなるものも含むことができる。」(12頁9?19行)

(1f)「喫煙システム21で使用するための好適なシガレット23は米国特許No.5388594及びシリアルNo.08/380718(1995年1月30日出願)シリアルNo.08/425166(1995年4月20日出願、発明の名称”Cigarette for Electrical Smoking System”)及びシリアルNo.08/425837(1995年4月20日出願、発明の名称“Cigarette for Electrical Smoking System”)に詳細に記載され示されており、それらの全体が参考としてここに組入れられる。但し、いかなる好適なシガレットも使用できる。」(14頁4?11行)

(1g)「各ブレード120は表わされた例では抵抗ヒーター素子を形成する。」(15頁3行)

(1h)「図2A-3Cを参照すると、本発明による排出システムが示されている。図2A-2Dで最もわかるように、前面212を有するプランジャー210が与えられている。以下に詳細に記載されるように、プランジャー210はライター内の3つの位置(即ち引っ込まれた又は作用位置A、第1の伸ばされた又は排出位置B及び第2の伸ばされた又は保護位置C)において位置可能である。以下で説明されるように、位置BとCは組合せることができる。」(15頁17?22行)

(1i)「引っ込まれた又は作用位置Aでは、プランジャー210はプランジャー210が穴50Aの外の引っ込まれた位置Aから位置Bに移動可能でかつ穴50A中に戻ってその引っ込まれた位置Aに移動可能であるように充分な間隔(例えば約3ミリの隙間)を有するベース50によって規定される穴50Aに位置される。」(15頁22?26行)

(1j)「例えば、示されたようにプランジャー210の前端は後方の部分より大きな直径を有し、ベース50は穴50A内に対応する形状を規定し、それによって静止位置Aのプランジャー50のために止めが形成される。」(15頁26行?16頁1行)

(1k)「例えば、従来のフィリップス型のヘッドを有するショルダーピン235はプランジャー前面212に規定される穴215に挿入され、プランジャー210を通ってアーム230の末端に押し嵌められる。」(16頁4?7行)

(1l)「アーム230はその外側表面に形成された3つの円周溝又は戻り止め230A,230B及び230Cを与えられる。ボール216が与えられ、それはベース50の穴に設けられたスプリング217によって偏らされている。スプリングで偏らされたボール216はスプリング250の圧縮力に対してアーム230を静止して保持するように十分な力をだすことによって戻り止め230A,230B及び230Cの選択されたものとボール-戻り止め関係を形成する。戻り止め230A,230B及び230Cはアーム230の外側表面上に間隔をあけて配置され、それの末端に接続されたプランジャー210の(1)引っ込まれた又は作用位置A、(2)第1の伸ばされた又は排出位置B及び(3)第2の伸ばされた又は保護位置Cにそれぞれ相当する。スプリングで偏らせたボール216の保持力は喫煙者によって手で抑えられ、あるいは別の方法でスイッチ245を所望の方向に作動させ、スプリングで偏らせたボール216との係わりから離れるように戻り止めを移動したり、スプリングで偏らせたボール216との係わりが得られるようにアーム230の別の戻り止めを移動し、それによって望むとおりに連続対応位置A,B又はCでプランジャー210を静止して位置させることができる。この望ましいプランジャーの位置は隣接した位置又は第3の残りの位置のいずれかである。」(16頁21行?17頁9行)

(1m)「ライター25を作動するために、喫煙者はまず例えばライター開口又はオリフィス27から最も遠い位置にスイッチを位置させる。それはプランジャー210の引っ込まれた又は作用位置Aに相当し、図2Aに示されたようにヒーターブレード120によって規定される円筒形穴中へのシガレット23の挿入を可能にする。」(17頁14?18行)

(1n)「特に、排出システムは(1)プランジャー210の位置Aがヒーターブレード120によって規定される円筒形シガレット受口の遠端に(即ち挿入開口の反対側に)設けられる、(2)挿入されたシガレット端がプランジャー前面212と接する、及び(3)シガレット23がヒーターブレード120に対して望むように位置される、ように配置される。」(17頁18?22行)

(1o)「挿入されたシガレット端はこの挿入端からシガレットを通る中央気流が実質的に妨げられるようにプランジャー前面212に接しており、それによって吸引時に気流は特に前に加熱されたシガレット区域を介してシガレット側面を通るように横方向に最初に向けられる。もしプランジャー前面212と挿入されたシガレット端の間の界面が気密であるなら、シガレットロッドは崩壊するか又はそうでなければ区域を加熱する前の特に最初の吸い込みにおいて横方向の気流のためのすき間を満足に与えることができない。従って、一定の気流がプランジャー210の側面からプランジャー前面212と挿入されたシガレット端の間に、そしてそれらの間の円周間隙を介して又はプランジャー210に形成された溝213を介してシガレットを通って長手方向に向けられる。」(17頁28行?18頁10行)

(1p)「ライター25からシガレットを除去するために、喫煙者は例えば手でスイッチ245を作動し、特にシガレット排出の方向に(即ちライター25の開口又はオリフィス27の方に)スイッチ245を押し、アーム戻り止め230Aからスプリングで偏らせたボール216を離し、(a)プランジャー210の休止又は“喫煙”位置Aに相当するスイッチ位置から(b)図2Bに示されたようなプランジャー210の第1の伸ばされた又は排出位置Bに相当するスイッチ位置に移動する。プランジャー245は従って排出方向に移動し、シガレット23の挿入端を押し、シガレット23の挿入端を開口27の方に移動し、それによって少なくとも部分的にシガレット23を排出する。明確化のため、シガレット排出の方向は図2Bの矢印によって表わされ、シガレット23は示されていない。」(18頁25行?19頁7行)

(1q)「位置B及びCは排出するために及びもし戻り止めがスプリングで偏らせたボール216と静止して係わるならライター内部を保護するために任意に単一の位置に組合される。」(22頁21?23行)

以上の(1a)?(1q)によると、甲1には以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

「オリフィスを備え、シガレットが、前端で、オリフィスに挿入されるように及びオリフィスから除去されるように適応されているライターであって、シガレットを加熱するための、好ましくはライターに対してシガレットを保持するための実質的に円筒形の加熱設備と、ライターからシガレットを除去するプランジャーと、を含み、プランジャーはライター内の3つの位置(即ち引っ込まれた又は作用(“喫煙”)位置A、第1の伸ばされた又は排出位置B及び第2の伸ばされた又は保護位置C)において位置可能であり、位置B及びCは任意に単一の位置に組み合わされるライター。」

また、甲1には以下の方法発明(以下、「甲1方法発明」という。)が記載されていると認められる。

「ライターからシガレットを除去する方法であって、ライターは、シガレットを加熱するための、好ましくはライターに対してシガレットを保持するための実質的に円筒形の加熱設備と、ライターからシガレットを除去するプランジャーとを含み、前記方法は、プランジャーをライター内の3つの位置(即ち引っ込まれた又は作用(“喫煙”)位置A、第1の伸ばされた又は排出位置B及び第2の伸ばされた又は保護位置C)で移動させて、シガレットの挿入端を押し、シガレットの挿入端を開口の方に移動する段階とシガレットを排出する段階を、を含む方法。」

(2)甲2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「In another embodiment 470 shown in FIGS. 13 and 14, heating elements 471 are spaced somewhat further from the wall of cavity 430, and each is provided with a somewhat sharper “V” tip 472, as well as with fold 473 to increase their rigidity. In this way, heating elements 471 actually pierce and extend into the disposable portion to provide the desired intimate thermal contact. 」(21欄29?36行)
(対訳:図13と14において示された他の実施例470においては、加熱素子471はくぼみ430の壁から幾分か更に間隔を置かれていて、そして各々にはその剛性を増すために折り重ね473と同様に幾分鋭いV字形先端472が設けられる。このようにして、加熱素子471は所望の親密な熱的接触を与えるために使い捨て部中に突き刺し延入する。)

(3)甲3には、以下の事項が記載されている。
(3a)「図22と23において示された他の実施例470においては、加熱素子471はくぼみ430の壁から幾分か更に間隔を置かれていて、そして各々にはその剛性を増すために折り重ね473と同様に幾分鋭いV字形先端472が設けられる。このようにして、加熱素子471は所望の親密な熱的接触を与えるために使い捨て部中に突き刺し延入する。」(70頁10?14行)

(4)甲6には、以下の各事項が記載されている。
(4a)「以下、本願発明に係る市販の紙巻き煙草や葉巻として、フィルター付き紙巻き煙草を例に挙げ、図面を参照しながら以下に詳細に説明する。」(段落【0033】)

(4b)「治具は、図1に1つの実施例の外観を示す。治具100は、フィルター付き紙巻き煙草90を挿入する煙草挿入口9と、突起部10と、動作状態を示す表示器5と、外部からの電力を受取るコネクター6(図2に図示)と、外部空気取り入れ口8と図2中に示す内部構成品からなる。」(段落【0034】)

(4c)「ヒーター1の熱が外部ケース3に伝導することを防ぐ熱的絶縁管2」(段落【0035】)

(4d)「フィルター付き紙巻き煙草の挿入停止位置を決めるストッパー4」(段落【0035】)

(4e)「1. 喫煙者は、自分の好みのフィルター付き紙巻き煙草90を、治具100の煙草挿入口9に、ストッパー4で止まる所まで挿入する。これにより、細いヒーター1が、フィルター付き紙巻き煙草90の煙草部92中に挿入される。この挿入された状態の本願治具と挿入されたフィルター付き紙巻き煙草90との位置関係を、図4に示す。
2. 喫煙者は、本願治具のコネクター6より電力を供給し、ヒーター1の温度上昇により煙草部92の葉が、直接加熱され、ニコチンが蒸発するまで待つ。ここで、表示器5は、吸引可能になったことを知らせる時もあるが、単に加熱状態のみを表示する時もある。」(段落【0037】)

(4f)「3. 喫煙者は、煙草の葉が加熱され、煙草の葉からニコチンが蒸発し始めると、本願治具に、フィルター付き煙草90を挿入したまま、あるいは、本願治具から、フィルター付き煙草90を抜き出して、フィルター91から、煙草の葉から蒸発しているニコチンを吸引する。」(段落【0037】)

(4g)「ストッパー4は、円盤状でバネ性を有する外側爪41と、バネ性を有する内側爪42を持っており、それぞれ熱的絶縁管2と、ヒーター1とバネにより摩擦力を生じ、任意の所で固定される。」(段落【0056】)

(4h)「図8に、他の実施例によるストッパー4の構造を示す。本実施例のストッパーを使用するために、治具100の外側ケース3の側面に、溝45を設け、熱的絶縁管2との間に空間を設ける。この空間に、図8-2、図8-3に示すストッパー43を挿入するものである。ストッパーの位置決めは、ストッパー位置決めツマミ44により行うことは説明を要しない。」(段落【0057】)

以上の(4a)?(4h)によると、甲6には以下の発明(以下、「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。

「フィルター付き紙巻き煙草を挿入する煙草挿入口からなる治具、であって、喫煙者は、自分の好みのフィルター付き紙巻き煙草を、煙草挿入口に、ストッパーで止まる所まで挿入する治具であって、
フィルター付き紙巻き煙草の煙草部中に挿入される細いヒーターと、
ストッパー位置決めツマミにより位置決めされるストッパーと、
を含む治具。」

2.取消理由1について
取消理由1は、「本件特許発明1は、『該第1の位置は、前記加熱器(115)が前記エアロゾル形成基材(203)と接触することによって定められる作動位置であり、該第2の位置は、該エアロゾル形成基材(203)が該加熱器(115)から分離することによって定められる引出位置であり、』という点を特定している。しかしながら、この第1の位置及び第2の位置は、加熱器と、本件特許発明1の発明の構成要件ではない『エアロゾル形成基材』との位置関係を基準として定義されたものである。このため、エアロゾル形成基材を発明の構成要件としない本件特許発明1の装置において、エアロゾル形成基材を基準として定められた第1の位置と第2の位置は、具体的にどの位置を示すのかが不明確である。」(特許異議申立書37頁15?25行)というものである。
しかし、本件特許発明1は、引出器が、加熱器を備えたエアロゾル発生装置に受け入れられたエアロゾル形成基材を引き出すためのものであることを前提として、前記引出器は、第1の位置と第2の位置の間で移動可能にエアロゾル発生装置に結合されていて、加熱器がエアロゾル形成基材と接触する位置を第1の位置とし、また加熱器がエアロゾル形成基材から分離する位置を第2の位置として規定していると理解できるから、不明確な点はない。

なお、申立人は、「具体的には例えば、本件発明1の装置にエアロゾル形成基材が備えられていない状態では、エアロゾル形成基材は加熱器から常に分離した状態にあるので、第1の位置は、その文言上存在し得ないこととなる。また、引出器が例えば位置Aと位置Bとの間を移動可能であり、位置A及び位置Bの両方でエアロゾル形成基材が加熱器と接触可能な場合において、引出器が位置Bにあるときに喫煙者がエアロゾル形成基材を手動で引き抜く動作をしたとする。この場合、位置Bでは、エアロゾル形成基材と加熱器が接触した状態と分離した状態の両方が生じ得るので、位置Bは第1の位置と第2の位置の両方に相当し得ることとなってしまう。」(特許異議申立書37頁26?最終行)と主張している。
しかし、本件特許発明は、引出器で加熱器を備えたエアロゾル発生装置に受け入れられたエアロゾル形成基材を引き出すためのものであることからすれば、本件特許発明の通常の使用態様ではエアロゾル形成基材がエアロゾル発生装置に受け入れられていると認められるから申立人の主張を採用することはできない。

以上のとおりであるから、本件特許発明1に係る特許請求の範囲の記載には不備があるとはいえないから、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2?10に係る特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないと言うことはできない。

3.取消理由2について
(1)甲1を主引例とする取消理由の検討
ア.請求項1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「シガレット」は、加熱されてタバコフレーバーを発生するものであるから、本件発明1の「エアロゾル形成基材」に、また、甲1発明の「ライター」は、オリフィスによりシガレット(エアロゾル形成基材)を受け入れることができるから、本件特許発明1の「エアロゾル発生装置」及び「装置」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の「加熱設備」は、シガレット(エアロゾル形成基材)を加熱するためのものであるから、本件特許発明1の「加熱器」に相当する。 更に、甲1発明の「プランジャー」は、ライター(エアロゾル発生装置)に受け入れられたシガレット(エアロゾル形成基材)を引き出すものであるから、本件特許発明1の「引出器」に相当する。
そして、当該プランジャーの作用(“喫煙”)位置Aは、本件特許発明1の「第1の位置」に、また排出位置B及び保護位置Cは、本件特許発明1の「第2の位置」に相当する。
してみれば、両発明は次の一致点及び相違点1を有する。

<一致点>
エアロゾル形成基材を受け入れることができるエアロゾル発生装置であって、
前記エアロゾル形成基材を加熱するための加熱器と、
エアロゾル発生装置に受け入れられた前記エアロゾル形成基材を引き出すための引出器と、
を含み、
前記引出器は、第1の位置と第2の位置の間で移動可能にエアロゾル発生装置に結合され、該第1の位置は、前記加熱器が前記エアロゾル形成基材と接触することによって定められる作動位置であり、該第2の位置は、該エアロゾル形成基材が該加熱器から分離することによって定められる引出位置であり、前記引出器が、第1及び第2の位置の両方で前記エアロゾル発生装置に結合されたままである装置。

<相違点1>
本件特許発明1は、加熱器がエアロゾル形成基材の内部部分を貫通するように構成されており、引出器がエアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクルを含むのに対し、甲1発明は、そのように構成されていない点。

(イ)判断
以下、上記相違点1について検討する。
甲1発明の引出器は、摺動レセプタクルを含んでおらず、甲1発明のプランジャーの構成からすれば、当該プランジャーに摺動レセプタクルを設ける動機付けはなく、甲1発明に基いて本件発明1を当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできないし、仮に動機付けがあったとしても、甲2?6には、摺動レセプタクルを引出器に設ける構成については記載されていない。
また、仮に摺動レセプタクルを採用できるとしても、甲2?6の記載に基づき、甲1発明の加熱設備(加熱器)としてエアロゾル形成基材の内部部分を貫通する構成のものを採用すると共に、当該摺動レセプタクルを採用した場合には、加熱器と摺動レセプタクルの干渉を避けるため、摺動レセプタクルに加熱器を貫通する構成を備える必要性があり、そのような構成を採用してまでプランジャー210(引出器)に摺動レセプタクルを採用することが、単なる設計的事項であるということはできない。
よって、本件特許発明1の相違点1に係る構成を甲1発明及び甲2?6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない。
なお、申立人は、申立人意見書において、「訂正請求項後の請求項1における、『受け入れる』は、広く解釈すべきであり、プランジャー210がシガレット23に接して支持するような場合も含むものである。」と主張している(2頁25?28行)が、一般的な用語の解釈として「受け入れる」の用語をそのように広く解することはできない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1は甲1発明及び甲2?6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.請求項2ないし10について
請求項2ないし10は、いずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、請求項1の記載を更に減縮するものであるから、本件特許発明1が甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない以上、本件特許発明2ないし10も甲1発明から当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない。
なお、申立人は、申立人意見書において、請求項2についても甲1発明及び周知の手段に基づいて当業者が容易に発明できた旨主張している(申立人意見書3頁9?32行)が、上記ア.で検討したように、甲1発明にはそもそも摺動レセプタクルを設ける動機付けがないのであるから、あえて加熱器との干渉を避けるために、摺動レセプタクルに加熱器を貫通する開口を設けてまでプランジャー210(引出器)に摺動レセプタクルを採用することを単なる設計事項ということはできない。
以上のとおりであるから、本件特許発明2ないし10は甲1発明及び周知の手段に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ.請求項11?13について
(ア)対比
本件特許発明11と甲1方法発明を対比すると、甲1方法発明の「シガレット」は、加熱されてタバコフレーバーを発生し、これを喫煙するためのものであるから、本件特許発明11の「エアロゾル形成基材を含む喫煙物品」に、また、甲1方法発明の「ライター」は、シガレット(エアロゾル形成基材を含む喫煙物品)を受け入れ加熱するものであるから、本件特許発明11の「加熱式エアロゾル発生装置」にそれぞれ相当する。
また、甲1方法発明の「加熱設備」は、シガレット(エアロゾル形成基材を含む喫煙物品)を加熱してエアロゾルを発生させるためのものであるから、本件特許発明11の「加熱器」に相当する。
更に、甲1方法発明の「プランジャー」は、ライター(エアロゾル発生装置)に受け入れられたシガレット(エアロゾル形成基材を含む喫煙物品)に結合し、摺動することにより引き出すものであるから、本件特許発明11の「引出器」に相当する。
そして、当該プランジャーの摺動により、「シガレット」は「ライター」から引き出されており、当該プランジャーの作用(“喫煙”)位置Aでは、シガレットは加熱設備より加熱され、また、排出位置B及び保護位置Cでは、シガレットは加熱設備から分離されることになるから、甲1方法発明の作用(“喫煙”)位置A並びに排出位置B及び保護位置Cは、それぞれ本件特許発明1の「第1の位置」並びに「第2の位置」に相当する。
してみれば、両発明は次の一致点を有し、少なくとも相違点2で相違する。

<一致点>
エアロゾル形成基材を含む喫煙物品を加熱式エアロゾル発生装置から引き出す方法であって、該加熱式エアロゾル発生装置が、該エアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを形成するための加熱器と該加熱式エアロゾル発生装置に結合される引出器とを含み、前記方法は、該喫煙物品の前記エアロゾル形成基材が前記加熱器によって加熱されるように位置決めされた第1の位置から該喫煙物品の該エアロゾル形成基材が該加熱器から実質的に分離された第2の位置まで摺動させる段階であって、該喫煙物品の該エアロゾル形成基材が、前記引出器が、第1及び第2の位置の両方で前記加熱式エアゾル発生装置に結合されたままである前記摺動させる段階と、前記喫煙物品を取り出す段階と、を含む方法。

<相違点2>
本件特許発明11は、引出器が、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品を受け入れるための摺動レセプタクルに係る構成を含み、喫煙物品のエアロゾル形成基材が、摺動レセプタクル上の支持体によって摺動させる段階中に支持されるのに対し、甲1方法発明は、そのような構成を有していない点。

(イ)判断
以下、上記相違点2について検討する。
甲1方法発明の引出器は、摺動レセプタクルを含んでおらず、甲1方法発明のプランジャーの構成からすれば、当該プランジャーにレセプタクルを設ける動機付けはない。
よって、当該プランジャーを摺動させる段階中、シガレットをレセプタクルにより支持する構成を採用することが、甲1方法発明に基いて当業者が容易にできたと言うことはできない。
また、甲2?6にも摺動レセプタクルを引出器に設ける構成については記載されていない。
よって、本件特許発明11を甲1発明及び甲2?6に基いて当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない。
そして、請求項12及び13は、いずれも請求項11の記載を直接又は間接的に引用するものであり、請求項11の記載を更に減縮するものであるから、本件特許発明11が甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明できたと言うことはできない以上、本件発明12及び13も甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明できたと言うことはできない。
なお、申立人は、「甲1発明のプランジャー210は、シガレットを受ける部材という点で共通している。」と主張している(特許異議申立書51頁最終行?52頁2行)が、プランジャー210は、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品を受け入れるものとしての「シガレットを受ける部材」にあたるとはいえない。

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明11ないし13は甲1方法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)甲6を主引例とする取消理由の検討
(ア)対比
本件特許発明1と甲6発明を対比すると、甲6発明の「フィルター付き紙巻き煙草」は、エアロゾルを形成するものであることは明らかであるから、本件特許発明1の「エアロゾル形成基材」に、また、甲6発明の「治具」は、煙草挿入口よりフィルター付き紙巻き煙草(エアロゾル形成基材)を受け入れて、煙草の葉を加熱するものであるから、本件特許発明1の「エアロゾル発生装置」にそれぞれ相当する。
また、甲6発明の「細いヒーター」は、フィルター付き紙巻き煙草(エアロゾル形成基材)を加熱するためのものであり、かつフィルター付き紙巻き煙草(エアロゾル形成基材)の内部部分を貫通するように構成されているから、本件特許発明1の「加熱器」に相当する。
してみれば、両発明は次の一致点及び相違点3を有する。

<一致点>
エアロゾル形成基材を受け入れることができるエアロゾル発生装置であって、
前記エアロゾル形成基材を加熱するためのものであり、かつ該エアロゾル形成基材の内部部分を貫通するように構成された加熱器を含む装置。

<相違点3>
本件特許発明1は、エアロゾル発生装置に受け入れられた前記エアロゾル形成基材を引き出すための引出器とを含み、前記引出器は、前記エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクルを含み、第1の位置と第2の位置の間で移動可能にエアロゾル発生装置に結合され、該第1の位置は、前記加熱器が前記エアロゾル形成基材と接触することによって定められる作動位置であり、該第2の位置は、該エアロゾル形成基材が該加熱器から分離することによって定められる引出位置であり、前記引出器が、第1及び第2の位置の両方で前記エアロゾル発生装置に結合されたままであるのに対し、甲6発明は、そのような引出器を含んでいない点。

(イ)判断
以下、上記相違点3について検討する。
甲6発明には、ストッパー位置決めツマミにより位置決めされるストッパーが設けられているが、当該ストッパーはフィルター付き紙巻き煙草(エアロゾル形成基材)の位置決めのために設けられたものであり、フィルター付き紙巻き煙草(エアロゾル形成基材)を細いヒータ(加熱器)から分離する引出位置まで移動させるものではないから、当該ストッパーを本件特許発明1の引出器に相当すると言うことはできない。
また、甲1に引出器に係る記載があるとしても、甲6発明のストッパーを甲1の引出器に置き換える動機付けはないし、甲1発明の引出器は摺動レセプタクルを含んでいないから、甲6発明及び甲1の記載事項に基いて本件特許発明1を当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない。
そして、請求項2ないし10は、いずれも請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、請求項1の記載を更に減縮するものであるから、本件特許発明1が甲6発明に基いて本件特許発明1を当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない以上、本件特許発明2ないし10も甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない。
また、本件特許発明11は甲6発明との対比において、本件特許発明1と同様の相違点を有するから、同様の理由により、本件特許発明11を甲6発明及び甲1の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない。
更に、請求項12及び13は、いずれも請求項11の記載を直接又は間接的に引用するものであり、請求項11の記載を更に減縮するものであるから、本件特許発明11が甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない以上、同様に本件特許発明12及び13も当業者が容易に発明をすることができたと言うことはできない

(ウ)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし13は甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書の「(4-4)申立の理由2:特許法第29条第1項第3号」(38頁3行?46頁27行)において、本件特許発明1ないし8及び10ないし13は甲1に、また、本件特許発明1ないし8及び10は甲6に記載されたものである旨主張している。
しかし、上記第4 3.(1)ア.(ア)で示したとおり、本件特許発明1と甲1発明は上記相違点1を有し、これは実質的な相違であるから、引用する発明を含めて本件特許発明1ないし8及び10が甲1に記載されていると言うことはできない。
また、本件特許発明11と甲1方法発明は上記相違点3を有し、これは実質的な相違であるから、引用する発明を含めて本件特許発明11ないし13が甲1に記載されていると言うことはできない。
さらに、本件特許発明1と甲6発明は上記相違点4を有し、これは実質的な相違であるから、引用する発明を含めて本件特許発明1ないし8及び10が甲6に記載されていると言うことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、請求項1?13に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によって、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1?13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基材(203)を受け入れることができるエアロゾル発生装置(1)であって、
前記エアロゾル形成基材(203)を加熱するためのものであり、かつ該エアロゾル形成基材(203)の内部部分(211)を貫通するように構成された加熱器(115)と、
エアロゾル発生装置に受け入れられた前記エアロゾル形成基材を引き出すための引出器(101)と、
を含み、
前記引出器(101)は、前記エアロゾル形成基材を含むエアロゾル発生物品を受け入れるための摺動レセプタクル(105)を含み、第1の位置と第2の位置の間で移動可能にエアロゾル発生装置に結合され、該第1の位置は、前記加熱器(115)が前記エアロゾル形成基材(203)と接触することによって定められる作動位置であり、該第2の位置は、該エアロゾル形成基材(203)が該加熱器(115)から分離することによって定められる引出位置であり、前記引出器が、第1及び第2の位置の両方で前記エアロゾル発生装置に結合されたままであることを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
開口が、該引出器が前記第1の位置にある時に該摺動レセプタクル内に受け入れられた該エアロゾル形成基材を前記加熱器が貫通することを可能にするために該摺動レセプタクルの壁を通って形成されることを特徴とする請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記摺動レセプタクル(105)が前記第1及び第2の位置の間でスリーブ(103)内で摺動するように配置されるような該摺動レセプタクル(105)を受け入れるためのスリーブ(103)を含むことを特徴とする請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記摺動レセプタクル(105)は、前記スリーブ(103)に当接するように配置されたフランジ(107)を含むことを特徴とする請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記摺動レセプタクル(105)が装置(1)から滑り出るのを防止するためのストッパ(401)を更に含むことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記摺動レセプタクル(105)が前記第1及び第2の位置の間で移動する時に該摺動レセプタクル(105)を案内するためのガイドピン(110)を更に含むことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記エアロゾル形成基材(203)は、喫煙物品(201)内に与えられ、前記摺動レセプタクル(105)は、該喫煙物品(201)が前記引出器(101)に受け入れられた時に前記第1の位置にあることを特徴とする請求項2から請求項6のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記エアロゾル形成基材(203)を支持するための支持体(105b)が、前記摺動レセプタクル(105)の面を含み、該面は、空気の貫流を許すための少なくとも1つの開口(109)を含むことを特徴とする請求項2から請求項7のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記摺動レセプタクル(105)は、前記エアロゾル形成基材(203)が該摺動レセプタクル(105)に受け入れられ、かつ該摺動レセプタクル(105)が前記第1の位置にある時に該エアロゾル形成基材(203)を把持するための把持手段(111)を含むことを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記摺動レセプタクル(105)は、前記エアロゾル形成基材(203)が前記加熱器(115)によって加熱されるように正しく位置決めされた時に該エアロゾル形成基材(203)が当接する面を含むことを特徴とする請求項2から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
エアロゾル形成基材(203)を含む喫煙物品(201)を加熱式エアロゾル発生装置から引き出す方法であって、該加熱式エアロゾル発生装置が、該エアロゾル形成基材(203)を加熱してエアロゾルを形成するための加熱器(115)と該加熱式エアロゾル発生装置に結合され、かつ該喫煙物品(201)を受け入れるための摺動レセプタクル(105)を含む引出器(101)とを含み、
前記方法は、
前記摺動レセプタクル(105)に受け入れられた喫煙物品(201)と共に該摺動レセプタクル(105)を該喫煙物品(201)の前記エアロゾル形成基材(203)が前記加熱器(115)によって加熱されるように位置決めされた第1の位置から該喫煙物品(201)の該エアロゾル形成基材(203)が該加熱器(115)から実質的に分離された第2の位置まで摺動させる段階であって、該喫煙物品(201)の該エアロゾル形成基材(203)が、該摺動レセプタクル(105)上の支持体(105b)によって該摺動させる段階中に支持され、前記引出器が、第1及び第2の位置の両方で前記加熱式エアロゾル発生装置に結合されたままである前記摺動させる段階と、
前記喫煙物品(201)を前記摺動レセプタクル(105)から取り出す段階と、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記加熱式エアロゾル発生装置は、電気加熱器を含む電気加熱式エアロゾル発生装置であることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記喫煙物品は、タバコを含むことを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-09-28 
出願番号 特願2014-542802(P2014-542802)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A24F)
P 1 651・ 537- YAA (A24F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 長浜 義憲  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
山崎 勝司
登録日 2016-12-02 
登録番号 特許第6050826号(P6050826)
権利者 フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
発明の名称 エアロゾル発生装置用の引出器  
代理人 須田 洋之  
代理人 豊島 匠二  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 近藤 直樹  
代理人 西島 孝喜  
代理人 大塚 文昭  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  
代理人 豊島 匠二  
代理人 須田 洋之  
代理人 上杉 浩  
代理人 西島 孝喜  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 大塚 文昭  
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