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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04G
管理番号 1345864
異議申立番号 異議2018-700036  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-18 
確定日 2018-10-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6166933号発明「建物の改築方法、及び建物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6166933号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2-7〕、8について訂正することを認める。 特許第6166933号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 特許第6166933号の請求項8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6166933号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成25年4月3日に出願したものであって、平成29年6月30日に特許の設定登録がされ、その後、その特許に対し、平成30年1月18日に特許異議申立人森谷晴美(以下「申立人」という。)より特許異議の申立てがされ、同年4月2日(4月5日発送)付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月4日に意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正」という。)がなされ、同年7月12日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項2において、「所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記所定階に設けられた予備室と、前記上階に設けられた主寝室とを有する建物の改築方法であって、」と記載されているのを、「所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記所定階に設けられた予備室と、前記上階に設けられた主寝室とを有し、前記居間と前記予備室とが建具によって区画された建物の改築方法であって、」(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)に訂正する。(請求項2の記載を引用する請求項3?7も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、「前記所定階の予備室を新たな主寝室に改装するとともに、前記上階の主寝室を新たな予備室とする工程とを含む、」と記載されているのを、「前記所定階の予備室を新たな主寝室に改装するとともに、前記上階の主寝室を新たな予備室とし、前記建具を除去して前記居間と新たな前記主寝室とを間仕切り壁で区画する工程とを含む、」に訂正する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8を削除する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項1は、所定階の居間と予備室の構成について、「前記居間と前記予備室とが建具によって区画された」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項1は、所定階の居間と予備室の構成についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許明細書(願書に添付した明細書)の段落【0033】には、「・・・また、改築前に設けられていた、和室R12と居間R11とを区画する引き違い形式の建具R12a(図1参照)を除去して間仕切り壁R31aにする(予備室を新たな主寝室に改装する工程)。・・・」(「和室R12」が「予備室」に対応する。)と記載されているとおり、訂正事項1は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否について
訂正事項2は、所定階の予備室を主寝室に改装する工程について、「前記建具を除去して前記居間と新たな前記主寝室とを間仕切り壁で区画する」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としているといえる。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するか否かについて
上記アで説示したように、訂正事項2は、所定階の予備室を主寝室に改装する工程についてより具体的に特定するものであって、発明のカテゴリー、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものとはいえない。
ウ 願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるか否かについて
本件特許明細書(願書に添付した明細書)の段落【0033】には、「・・・また、改築前に設けられていた、和室R12と居間R11とを区画する引き違い形式の建具R12a(図1参照)を除去して間仕切り壁R31aにする(予備室を新たな主寝室に改装する工程)。・・・」(「和室R12」が「予備室」に対応する。)と記載されているとおり、訂正事項2は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であるといえる。

(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項8を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ 一群の請求項について
訂正前の請求項3ないし7は、それぞれ請求項2を引用しているものであって、訂正事項1及び2によって訂正される請求項2に連動して訂正されるものであるから、請求項2ないし7は一群の請求項である。

3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔2?7〕、8について訂正することを認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 訂正後の請求項1ないし7に係る発明
本件訂正後の請求項1ないし7に係る発明は、下記のとおりのものである(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、それらをまとめて「本件発明」という。)。

「【請求項1】
所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記第一の上階個室に隣接する第二の上階個室とを有する建物の改築方法であって、
前記上階の床の一部を除去し、前記第一の上階個室を前記居間と連通する吹抜け空間とする工程と、
前記第二の上階個室と前記第一の上階個室とを仕切る仕切り壁を除去し、前記第二の上階個室を前記吹抜け空間に連通させる工程とを含む、建物の改築方法。
【請求項2】
所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記所定階に設けられた予備室と、前記上階に設けられた主寝室とを有し、前記居間と前記予備室とが建具によって区画された建物の改築方法であって、
前記上階の床の一部を除去し、前記第一の上階個室を前記居間と連通する吹抜け空間とする工程と、
前記所定階の予備室を新たな主寝室に改装するとともに、前記上階の主寝室を新たな予備室とし、前記建具を除去して前記居間と新たな前記主寝室とを間仕切り壁で区画する工程とを含む、建物の改築方法。
【請求項3】
前記第一の上階個室に、前記第一の上階個室に設けられた既存の採光窓よりも高さ寸法の大きな採光窓を設置する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の建物の改築方法。
【請求項4】
前記上階の床の一部を除去する工程では、前記上階の床の下面に沿った水平面に設置された水平ブレースを残して床を除去する、請求項1?3のいずれか一項に記載の建物の改築方法。
【請求項5】
前記上階の床の一部を除去する工程では、前記上階の床を除去する領域内に位置するとともに前記上階の床高さの位置に設置された梁を残して床を除去する、請求項1?4のいずれか一項に記載の建物の改築方法。
【請求項6】
前記上階の床は、前記上階の床高さの位置に設置された梁に載置され目地モルタルで固定された複数の軽量気泡コンクリートパネルによって構成される、請求項1?5のいずれか一項に記載の建物の改築方法。
【請求項7】
前記建物の屋根に、太陽光発電装置を設置する工程を更に含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の建物の改築方法。」

2 取消理由の概要
請求項1ないし8に係る特許に対して平成30年4月2日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(刊行物)
甲第1号証:特開2009-275355号公報
甲第2号証:特開平9-302953号公報
甲第3号証:特開2004-27675号公報
甲第4号証:特開平6-73794号公報
甲第5号証:特開2001-182329号公報
甲第6号証:特開2002-167986号公報

3 特許法第29条第2項について(進歩性の欠如違反)
(1)刊行物
ア 甲第1号証
(ア)甲第1号証の記載事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された甲第1号証(特開2009-275355号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当決定で付した。以下同様。)。
a 特許請求の範囲
「【請求項1】
複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、前記開閉領域に床材を取付けて閉鎖させた2層状態と、を相互に改装可能な住宅の床着脱構造であって、前記住宅の躯体に支持されて、前記開閉領域の縁部に沿って配置された縁梁と、前記2層状態のときに、両端が前記縁梁に着脱可能に固定されて前記開閉領域に架設される中間梁と、前記2層状態のときに、端部が前記縁梁と前記中間梁とに着脱自在に固定される複数の床材と、前記吹き抜け状態のときに、前記開閉領域の縁部に沿って前記縁梁に着脱自在に固定される手すり又は間仕切壁と、を備えることを特徴とする住宅の床着脱構造。
【請求項2】
前記床材は、その下面に長手方向に沿って設けられるトラス構造の補強体を備えることを特徴とする請求項1に記載の住宅の床着脱構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の住宅の床着脱構造を用いて、前記吹き抜け状態と前記2層状態とを相互に変更する住宅の改装方法であって、前記吹き抜け状態から前記2層状態に改装する場合には、前記手すり又は前記間仕切壁を前記開閉領域の縁部から取外し、前記縁梁に前記中間梁を固定して、当該中間梁と前記開閉領域の縁部とに前記複数の床材を載置して床を形成するとともに、前記2層状態から前記吹き抜け状態に改装する場合には、前記床材及び前記中間梁を取り外して、前記手すり又は前記間仕切壁を前記開閉領域の縁部に固定することを特徴とする住宅の改装方法。」
b 明細書
「【0001】
この発明は複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、上階の床を取付けて前記開閉領域を閉じた2層状態と、を相互に改装可能な住宅の床着脱構造及び住宅の改装方法に関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のような住宅の増床方法であっても、たとえ大掛かりな工事を行ったとしても増床した後の床を高い強度のものとすることができるか否かは、施工作業者が個別的に評価する必要がある。
【0005】
また、上述とは逆に建設当初は住宅に吹き抜けを設けなかったが、後に吹き抜けを設けたい場合には、建物の強度に応じて梁や上階の床及び下階の天井を新たに加工して、吹き抜けを設ける大掛かりな改装工事が必要となる。
【0006】
そこで本発明は、吹き抜け状態から床を設けた2層状態に容易に変更できるだけでなく、2層状態から吹き抜け状態にも極めて容易に変更することができ、いずれの状態とするかを任意に選択できる可逆性を有する住宅の床着脱構造及び住宅の改装方法を提供することを目的とする。」
「【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の住宅の床着脱構造によると、開閉領域に床を取付けて閉鎖した2層状態のときには、開閉領域に架設される中間梁はその両端を住宅の躯体に支持される縁梁に固定されるので、中間梁は強固に支持される。そして、この中間梁と縁梁とに架け渡すように床材が載置されて着脱自在に固定される。したがって、床材は縁梁及び中間梁を介して住宅の躯体に支持されることとなり、2層状態のときに十分に強固で安全な床とすることができる。
【0011】
また、上階と下階との間の開閉領域を開放した吹き抜け状態のときには、開閉領域の縁部に沿って縁梁に固定される手すり又は間仕切壁が設置されるので、居住者が吹き抜けから落下するといった危険を抑制できる安全な吹き抜けにすることができる。特に、手すり又は間仕切壁は住宅の躯体に支持される縁梁に固定されるので、十分な強度で、安全に固定される。
【0012】
そして、縁梁、床材、手すり、及び間仕切壁はそれぞれ着脱自在に構成されているので、上階と下階との間の開閉領域を開放させた開放感のある吹き抜け状態と、開閉領域を閉じた床面積を広くすることができる2層状態と、に極めて簡単に且つ安全に改装することができる。すなわち、吹き抜け状態と2層状態とを任意に選択することができる。
【0013】
請求項2に記載の住宅の床着脱構造によると、床材は、その下面に長手方向に沿って設けられるトラス構造の補強体を備えるので、床材が撓むことや破損することを抑制することができ、2層状態のときに、より安全な床とすることができる。
【0014】
請求項3に記載の住宅の改装方法によると、吹き抜け状態から2層状態に改装する場合には、手すり又は間仕切壁を開閉領域の縁部から取外し、中間梁の両端それぞれを縁梁に固定して、中間梁と開閉領域の縁部とに複数の床材を載置して床を形成することで、極めて簡単に2層状態に改装することができ、2層状態から吹き抜け状態に改装する場合には、床材及び中間梁を取り外して、手すり又は間仕切壁を開閉領域の縁部に固定することで極めて簡単に吹き抜け状態に改装することができる。」
「【発明を実施するための最良の形態】・・・
【0022】
次に、以上のように構成される住宅の床着脱構造1を用いて吹き抜け状態と2層状態とを相互に変更する住宅の改装方法について説明する。まず2層状態から吹き抜け状態に改装する場合には、図7(a)に示すように、まず、複数の床材5を開閉領域4から取り外す。次に、床材5を支持していた床下地材17a及び束16を中間梁14から取外し、その後、縁梁6に固定された中間梁7を取り外す。このようにすると上階と下階との間を隔てる部材が全くなくなるので、開放感の高い吹き抜けとすることができる。そして、図7(b)に示すように、手すり7又は間仕切壁8を開閉領域4の縁部22に沿って配置し吹き抜け状態を完成させる。このように、床材5のみならず、中間梁14まで開閉領域4から取り外すことで、極めて開放感の高い吹き抜けとすることができる。」

(イ)甲第1号証の認定
上記(ア)で摘記された事項からみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、前記開閉領域に床材を取付けて閉鎖させた2層状態と、を相互に改装可能な住宅であって、
前記住宅の躯体に支持されて、前記開閉領域の縁部に沿って配置された縁梁と、前記2層状態のときに、両端が前記縁梁に着脱可能に固定されて前記開閉領域に架設される中間梁と、前記2層状態のときに、端部が前記縁梁と前記中間梁とに着脱自在に固定される複数の床材と、前記吹き抜け状態のときに、前記開閉領域の縁部に沿って前記縁梁に着脱自在に固定される手すり又は間仕切壁と、を備える住宅において、
前記2層状態から前記吹き抜け状態に改装する場合には、前記床材及び前記中間梁を取り外して、前記手すり又は前記間仕切壁を前記開閉領域の縁部に固定する、住宅の改装方法。」

イ 甲第2号証
(ア)甲第2号証の記載事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された甲第2号証(特開平9-302953号公報)には、次の事項が記載されている。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 上階と下階とを連通する吹き抜け空間が設けられ、該吹き抜け空間の上階と下階との境界部分に、床を支持可能な強度を有するとともに、吹き抜け空間の装飾となる梁が両端部を躯体に支持された状態で水平に配置されていることを特徴とする建物。
【請求項2】 上記吹き抜け空間に隣接する躯体の上階と下階との境界部分に、床を支持可能に吹き抜け空間側に突出する支持部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の建物。
【請求項3】 上記梁上に敷き詰めることにより上記吹き抜け空間の上階と下階との境界部分に床を構成可能な複数の床体が予め用意されていることを特徴とする請求項1または2記載の建物。
【請求項4】 上記請求項1、2または3記載の建物において床面積を増加させる際の増床方法であって、上記建物の床面積を増加するに際して、上記梁上に床を構成可能な部材を設置することにより、上記吹き抜け空間の上階と下階との境界部分に新たに床を構築することを特徴とする増床方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吹き抜け空間を有する建物と、該建物における増床方法に関するものである。・・・
【発明が解決しようとする課題】・・・
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、吹き抜け空間の上階と下階との境界部分に短い施工期間で容易かつ低コストに床を構築することができる建物及び増床方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の建物は、図1、図2及び図3に示すように、上階(二階20)と下階(一階1)とを連通する吹き抜け空間28が設けられ、該吹き抜け空間28の上階20と下階1との境界部分に、床44を支持可能な強度を有するとともに、吹き抜け空間28の装飾となる梁40…が両端部を躯体(外壁32、内壁29)に支持された状態で水平に配置されていることを上記課題の解決手段とした。
【0009】
上記構成によれば、予め、吹き抜け空間28の上階20と下階1との境界部分に床44を支持可能な梁40…が配置されているので、上述のように床面積を増やすために、吹き抜け空間28に上階20の床44を設ける場合に、改築前の住宅部分に大幅な改築を施す必要がなく、吹き抜け空間28の梁40…上に容易に床44を構築できる。従って、住宅の床面積を増加させる際のコストと施工期間を大幅に低減することができる。
【0010】
また、改築前の住宅部分に大幅な改築を施す必要がないとともに、施工期間が短いことから、床面積を増加させるための施工期間中の住宅内における生活の制限を僅かなものとすることができる。また、吹き抜け空間28の上階20と下階1との部分に梁40…を設けることにより、吹き抜け空間28の一部が遮られて吹き抜け空間28による開放感が僅かに低下する可能性があるが、逆に吹き抜け空間28に梁40…を設けることにより、なにもない空間である吹き抜け空間28に変化を付けて意匠性を高めることができる。・・・
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の一例の建物及び増床方法を図面を参照して説明する。図1及び図2はこの一例の建物の一階及び二階の間取りを示すものであり、図3は増床後の吹き抜け部分を示すものである。図1に示すように、建物の一階(下階)1には、建物の一側面aの中央部より少しずれた位置に配置された玄関2と、該玄関2と他の部屋をつなぐ廊下3と、該廊下3と二階20とをつなぐ階段4とが配置されている。
【0019】
また、一階1には、上記廊下3の一方の側縁側と上記建物の一側面aに隣接する側面bとの間に、上記一側面a側から浴室5、洗面室6、トイレ7とが水回り設備として配置され、さらに、これら水回り設備の設けられた建物の上記側面b側には、トイレ7に隣接してキッチン8が設けられている。また、一階1には、上記廊下3の他方の側縁側と上記建物の一側面aに隣接する他の側面cとの間に和室9が設けられ、和室9と上記建物の一側面aとの間に押入10と和室9の床の間9aが設けられている。
【0020】
また、一階1には、上記建物の一側面aとは反対の側面d側に、キッチン8に隣接してリビングダイニング11が設けられている。・・・
【0021】
また、上記廊下22の一側縁側と上記建物の一側面aに隣接する側面bとの間には、それぞれ収納スペース23、24を有する二つの洋室25、26が互いに隣接して配置されている。また、上記廊下22の他側縁側と上記建物の一側面aに隣接する他の側面cとの間には、上記一階1の和室9の上に洋室27が配置され、上記一階1のリビングダイニング11の和室9に隣接する部分の上に一階1と連通する吹き抜け空間28が配置されている。従って、洋室27と吹き抜け空間28とが隣接して配置されるとともに、これらの間が内壁29により仕切られている。
【0022】
また、吹き抜け空間28と廊下22とが隣接して配置されるとともに、これらの間(廊下側22)に手摺30が設けられている。そして、吹き抜け空間28の二階20部分は、平面視して四角形上とされ、その四方が、上記洋室27の内壁29と、上記廊下22の手摺30と、上記側面c側の外壁31と、上記側面d側の外壁32とにより囲まれた状態となっている。
【0023】
そして、吹き抜け空間28においては、その一階1と二階20の境界部分、すなわち二階20の床の高さ位置に、外壁32と内壁29とに掛け渡された状態で、三本の梁40…が配置されている。 そして、梁40…の左右両端部は、それぞれ外壁32と、内壁29とに取り付けられている。・・・
【0025】
上記梁40…は、後述する床パネル41…による固定荷重及び床パネル41…上にかかる活荷重に耐えうる強度を有するものである。・・・
【0031】
次に、上述のような建物において、床面積を増やす際の増床方法を説明する。まず、上記建物においては、建築された段階で、上記梁40…及び支持部42、43が設けられている。そして、上記梁40…は、基本的になにも無い空間である吹き抜け空間に配置されて、吹き抜け空間を装飾するようになっている。・・・
【0033】
・・・また、上記床44の部分を居住スペースとしての部屋として用いる場合には、床パネル41…からなる床44の上面に図示しないカーペットや畳やシートやフローリングやその他の床材を配置する必要がある。また、上記手摺30の部分において、手摺30を取り外して、入出口を有する間仕切り壁(図示略)を設置する必要がある。・・・
【0035】
また、上記支持部42、43に代えて、吹き抜け空間の一階と二階との境界部分の側縁部に梁40…を配置し、床44を梁40…だけで支持するようにしても良い。また、建物の間取り、階数、梁40…の数、吹き抜け空間28の形状等は、上記例に限定されるものではなく、適宜、変更することができる。
【0036】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の建物によれば、既に設置された梁上に床を構築することにより床面積を増加させることができるので、床面積を増加させる際のコストと施工期間を大幅に低減することができる。また、改築前の住宅部分に大幅な改築を施す必要がないとともに、施工期間が短いことから床の面積を増加させるための施工期間中の住宅内における生活の制限を僅かなものとすることができる。また、吹き抜け空間の上階と下階との部分に梁を設けることにより、吹き抜け空間の意匠性を高めることができる。また、梁40…は、吹き抜け空間29を有す建物の強度を高くする機能を有する。・・・」
b 図1、2から、リビングダイニングの吹き抜け空間が設けられる上階部分(吹き抜け空間に新たに床を構築することにより設けられる部屋)は、建物外周部に面することが看取できる。

(イ)甲第2号証の認定
上記(ア)で摘記された事項及び図示内容からみて、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「上階と下階とを連通する吹き抜け空間が設けられ、該吹き抜け空間の上階と下階との境界部分に、床を支持可能な強度を有するとともに、吹き抜け空間の装飾となる梁が両端部を躯体に支持された状態で水平に配置されており、上記梁上に床を構成可能な床体を設置することにより、上記吹き抜け空間の上階と下階との境界部分に新たに床を構築することができる、建物であって、
下階には吹き抜け空間が設けられたリビングダイニングと和室があり、上階には洋室と廊下があり、和室と吹き抜け空間とが隣接して配置され、吹き抜け空間と洋室とが隣接して配置されるとともに、これらの間が内壁により仕切られ、吹き抜け空間と廊下とが隣接して配置されるとともに、これらの間に手摺が設けられ、リビングダイニングの吹き抜け空間が設けられる上階部分(吹き抜け空間に新たに床を構築することにより設けられる部屋)は、建物外周部に面している、
建物。」

ウ 甲第3号証
(ア)甲第3号証の記載事項
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された甲第3号証(特開2004-27675号公報)には、次の事項が記載されている。
a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 建物に複数ステージをなす各完成段階を与え、各ステージで、床、間仕切り壁及び/又は設備を追加して設けることにより、各ステージで異なる間取りを与えるグローイング住宅。・・・
【請求項5】 前記建物のあるステージで、床の上に設けた間仕切り壁の上に部屋を設けてなる請求項1?4のいずれかに記載のグローイング住宅。・・・
【請求項8】 前記建物のあるステージで、下階から上階に渡る吹抜け部を設ける請求項1?7のいずれかに記載のグローイング住宅。・・・
【請求項11】 前記建物に、各ステージで採用される予定の間取りを想定した位置に間口部を設けておく請求項1?10のいずれかに記載のグローイング住宅。
【請求項12】 前記建物の各ステージで、建物の開口部に窓を新設し、及び/又は既設窓を他の窓に変更する請求項1?11のいずれかに記載のグローイング住宅。
【請求項13】 前記建物に設けた間仕切り壁及び/又は収納の配置を移動可能にした請求項1?12のいずれかに記載のグローイング住宅。・・・」
b 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はライフスタイルや家族の成長、変化に応じて異なる間取りを与えるグローイング住宅に関する。」
c 「【0006】
本発明の課題は、ライフスタイル等の変化に応じて、建物の部屋数や設備を多様に変化させることにある。」
d 「【0034】
グローイング住宅1は、柱11と梁12を接合した2階建て相当の鉄骨建物10であり、ステージ0?ステージ4の5ステージをなす各完成段階を建物10に与え、各ステージの建物10に床、間仕切り壁及び/又は設備を追加、移設又は削除して設けることにより、以下に詳述する如くに、建物10の各ステージにおいて異なる間取りを与える。尚、本実施形態では、柱11と梁12にH形鋼を用い、しかも柱11と梁12に同一断面のH形鋼を用いる。」
d 「【0055】
(ステージ3)(図1(D)、図2(B)、図6、図13) 建物10は、ステージ3で、1階床31を土間21に拡張したり、2階床42を吹抜け部45に拡張し、1階床31や2階床42の床面積を増やす。1階床31の拡張部に和室61を設け、2階床42に子供室62を増設する。2階床42には、洗面室63、トイレ64も設けられる。吹抜け部45にサウンドボックス49を設けることもできる。ステージ3は、子供が大きくなり、部屋数が必要になった暮らしに対応する。」
e 「【0065】
(6)建物10のあるステージ(ステージ2)では、必要な広さの2階床42に設け、2階床42の上に子供室44、主寝室43等の部屋を設けることができる。部屋数を必要に応じて増設できる。」
f 「【0073】
以上、本発明の実施の形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、ステージを戻ってもよいし、間仕切り壁や部屋を減らすこともできる。また、本発明は2階建て建物に限らず、1階建て、3階建て以上の建物にも適用できる。」
g 図13から、1階には吹抜け部に隣接して和室が配置され、2階には吹抜け部に隣接して子供部屋が配置されていることが看取できる。

(イ)甲第3号証の認定
上記(ア)で摘記された事項及び図示内容からみて、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「建物に複数ステージをなす各完成段階を与え、各ステージで、床、間仕切り壁及び/又は設備を追加して設け、または減らすことにより、各ステージで異なる間取りを与えるグローイング住宅であって、前記のあるステージで、下階から上階に渡る吹抜け部を設け、1階には吹抜け部に隣接して和室が配置され、2階には吹抜け部に隣接して子供部屋が配置されている、グローイング住宅。」

エ 甲第4号証
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された甲第4号証(特開平6-73794号公報)には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 上下に連結された建物ユニットにより構成される吹抜け空間において、上部ユニットの床梁または下部ユニットの天井梁の位置に少なくとも一つの水平ブレースが露出した状態で設けられていることを特徴とする建物ユニット。
【請求項2】 請求項1記載の建物ユニットにおいて、前記ブレースには照明器具等の諸設備を取り付ける取り付け部材が設けられていることを特徴とする建物ユニット。」

オ 甲第5号証
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された甲第5号証(特開2001-182329号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】
従来、ALC製の床パネルなどを用いて床構造を形成する方法は、H形鋼などのパネル支持部材の上面にALC床パネルなどを水平方向に配列した後に、配列した床パネルと床パネルとの突き合わせ部に形成される目地用空隙に、モルタルなどの目地材を詰め込むことにより、床パネル間の接合を行っている。」

カ 甲第6号証
取消理由で通知した、本件特許の出願日前に頒布された甲第6号証(特開2002-167986号公報)には、次の事項が記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工池に隣接して建物本体が設けられており、建物本体の一階からは、人工池上を被覆するようにデッキが設けられるとともに、このデッキに面した建物本体内は、一階居室の上層階に吹き抜け空間が設けられており、一階居室は、デッキに面して通風可能な通風部が設けられ、吹き抜け空間は、上記通風部と対向する位置に換気部が設けられており、人工池上の空気を、通風部から一階居室に取り入れ、吹き抜け空間を介して換気部から排気するようになされたことを特徴とする住宅建物。」
「【0009】
すなわち、この住宅建物1は、人工池2に隣接して設けられてなり、一階11からは、人工池2上を被覆するようにデッキ10が設けられるとともに、このデッキ10に面した一階11の居間11aは、二階12に吹き抜けられてなり、一階11の居間11aは、南に面して採光調節可能な採光窓3が設けられるとともに蓄熱床4が設けられ、かつ、デッキ10に面して通風可能な通風部5が設けられ、吹き抜け空間12aは、南に面して採光調節可能な採光窓3が設けられるとともに、上記通風部5と対向する位置に換気部6が設けられている。」
「【0013】
吹き抜け空間12a、居間12b、ダイニングキッチン12iは、他の二階12の部分よりも天井高が高くなされており、奥行きD方向に沿って北側から南側へ葺き下げられた片流れ屋根91を構成するようになされている。この片流れ屋根91の屋上には、太陽光発電ユニット92が設けられる。」

(2)判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、前記開閉領域に床材を取付けて閉鎖させた2層状態と、を相互に改装可能な住宅」と、本件発明1の「所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記第一の上階個室に隣接する第二の上階個室とを有する建物」とは、「所定階と、前記所定階の上階を有する建物」である点で共通する。
また、甲1発明の「前記床材及び前記中間梁を取り外して、」「複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と」することと、本件発明1の「前記上階の床の一部を除去し、前記第一の上階個室を前記居間と連通する吹抜け空間とする工程」とは、「前記上階の床の一部を除去し、前記上階を前記所定階と連通する吹抜け空間とする工程」である点で共通する。
さらに、甲1発明の「住宅の改装方法」は、本件発明1の「建物の改築方法」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、次の点で一致し相違する。

(一致点)
「所定階と、前記所定階の上階を有する建物の改築方法であって、
前記上階の床の一部を除去し、前記上階を前記所定階と連通する吹抜け空間とする工程を含む、建物の改築方法。」

(相違点1)
建物について、本件発明1は「所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記第一の上階個室に隣接する第二の上階個室とを有する」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

(相違点2)
吹抜け空間について、本件発明1は「前記第一の上階個室を前記居間と連通する」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

(相違点3)
改築工程について、本件発明1は「前記第二の上階個室と前記第一の上階個室とを仕切る仕切り壁を除去し、前記第二の上階個室を前記吹抜け空間に連通させる工程」を含むのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

(イ)判断
相違点1ないし相違点3は関連するので、併せて検討する。
a 甲第2号証について
甲第2号証には、上記(1)イ(イ)のとおり甲2発明が記載されており、当該発明には、下階(本件発明1の「所定階」に相当する。)に吹き抜け空間が設けられたリビングダイニング(同「居間」)があり、上階に吹き抜け空間と隣接して配置される洋室(同「第二の上階個室」)があり、リビングダイニングの吹き抜け空間に新たに床を構築することにより設けられる部屋(同「第一の上階個室」)は建物外周部に面しているから、甲2発明の吹き抜け空間の床を構築した状態の建物は、本件発明1の相違点1に係る構成を備えているといえる。
しかしながら、甲第2号証には、上階の床の一部を除去して吹き抜け空間を設けることは開示されておらず、吹き抜け空間と洋室との間を仕切る内壁を除去することは、記載も示唆もされていない。また、甲第2号証には、吹き抜け空間と廊下との間に手摺が設けられているから、廊下と吹き抜け空間とは連通していると解されるが、内壁を除去して設けられたものではない。
よって、甲1発明に甲2発明を適用したとしても、本件発明1の相違点3に係る工程を含むものとはならない。
b 甲第3号証について
甲第3号証には、上記(1)ウ(イ)のとおり、甲3発明、具体的には、床や間仕切り壁を追加して設け、または減らすことにより、異なる間取りとするとともに、下階から上階に渡る吹抜け部を設ける、住宅が開示されている。
しかしながら、甲第3号証には、床の一部を除去して吹き抜け空間を設ける際に、吹き抜け空間とそれに隣接する室(部屋)との間を仕切る壁を除去して、それらを連通させることは、記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明に甲3発明を適用したとしても、本件発明1の相違点3に係る工程を含むものとはならない。
c 甲第4ないし6号証について
甲第4ないし6号証には、上記(1)エないしカで摘記したとおりの事項が記載されているが、建物において、上階の床の一部を除去して吹抜け空間とするように改築することは開示されておらず、少なくとも本件発明1の相違点3に係る工程は、何ら開示も示唆もされていない。
d まとめ
以上のとおりであるから、甲1発明において、本件発明1の相違点3に係る工程を含むものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件発明1は、当業者が甲第1ないし6号証に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではない。

イ 本件発明2について
(ア)対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と、前記開閉領域に床材を取付けて閉鎖させた2層状態と、を相互に改装可能な住宅」と、本件発明2の「所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記所定階に設けられた予備室と、前記上階に設けられた主寝室とを有し、前記居間と前記予備室とが建具によって区画された建物」とは、「所定階と、前記所定階の上階を有する建物」である点で共通する。
また、甲1発明の「前記床材及び前記中間梁を取り外して、」「複数階層からなる住宅における上階と下階との間の所定の開閉領域を開放させた吹き抜け状態と」することと、本件発明2の「前記上階の床の一部を除去し、前記第一の上階個室を前記居間と連通する吹抜け空間とする工程」とは、「前記上階の床の一部を除去し、前記上階を前記所定階と連通する吹抜け空間とする工程」である点で共通する。
さらに、甲1発明の「住宅の改装方法」は、本件発明2の「建物の改築方法」に相当する。
以上のことから、本件発明2と甲1発明とは、次の点で一致し相違する。

(一致点)
「所定階と、前記所定階の上階を有する建物の改築方法であって、
前記上階の床の一部を除去し、前記上階を前記所定階と連通する吹抜け空間とする工程を含む、建物の改築方法。」

(相違点A)
建物について、本件発明2は「前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記所定階に設けられた予備室と、前記上階に設けられた主寝室とを有し、前記居間と前記予備室とが建具によって区画され」ているのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

(相違点B)
吹抜け空間について、本件発明2は「前記第一の上階個室を前記居間と連通する」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

(相違点C)
改築工程について、本件発明2は「前記所定階の予備室を新たな主寝室に改装するとともに、前記上階の主寝室を新たな予備室とし、前記建具を除去して前記居間と新たな前記主寝室とを間仕切り壁で区画する工程」を含むのに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。

(イ)判断
相違点Aないし相違点Cは関連するので、併せて検討する。
a 甲第2号証について
甲第2号証には、上記(1)イ(イ)のとおり甲2発明が記載されており、当該発明には、下階(本件発明1の「所定階」に相当する。)に吹き抜け空間が設けられたリビングダイニング(同「居間」)と吹き抜け空間と隣接して配置される和室(同「予備室」)があり、上階には吹き抜け空間と隣接して配置される洋室があり、リビングダイニングの吹き抜け空間に新たに床を構築することにより設けられる部屋(同「第一の上階個室」)は、建物外周部に面している。そして、「洋室」と「主寝室」とは、単に用途、使用者、使用目的が異なるだけであるから、それらを互いに変更することは、当業者が適宜に変更し得る程度の事項であり、また、リビングダイニングと和室とが建具で仕切られていることは本件出願時において周知である。そうすると、甲2発明の吹き抜け空間の床を構築した状態の建物は、本件発明2の相違点Aに係る構成をほぼ備えており、甲1発明に甲2発明を適用して、本件発明2の相違点Aに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえる。
しかしながら、甲第2号証には、上階の床の一部を除去して吹き抜け空間を設けることは開示されておらず、吹き抜け空間と和室との間を仕切る建具を除去して、間仕切り壁で区画することは、記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明に甲2発明を適用したとしても、本件発明2の相違点Cに係る工程を含むものとはならない。
b 甲第3号証について
甲第3号証には、上記(1)ウ(イ)のとおり、甲3発明、具体的には、床や間仕切り壁を追加して設けること、または減らすことにより、異なる間取りとする、また下階から上階に渡る吹抜け部を設ける、住宅が開示されている。
しかしながら、甲第3号証には、床の一部を除去して吹き抜け空間を設ける際に、吹き抜け空間とそれに隣接する室(部屋)との間を仕切る建具を除去して、間仕切り壁で区画することは、記載も示唆もされていない。
よって、甲1発明に甲3発明を適用したとしても、本件発明2の相違点Cに係る工程を含むものとはならない。
c 甲第4ないし6号証について
甲第4ないし6号証には、上記(1)エないしカで摘記したとおりの事項が記載されているが、建物において、上階の床の一部を除去して吹抜け空間とするように改築することは開示されておらず、少なくとも本件発明2の相違点Cに係る工程は、何ら開示も示唆もされていない。
d まとめ
以上のとおりであるから、甲1発明において、本件発明2の相違点Cに係る工程を含むものとすることは、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件発明2は、当業者が甲第1ないし6号証に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではない。

ウ 本件発明3ないし7について
本件発明3ないし7は、本件発明1又は本件発明2を引用するものであって、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるといえる。
よって、本件発明3ないし7は、本件発明1又は本件発明2と同様の理由で、当業者が甲第1ないし6号証に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではない。

4 請求項8に対する特許異議の申立てについて
上記第2のとおり、請求項8を削除する本件訂正が認められたので、請求項8に対する本件特許異議の申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項8に対する本件特許異議の申立ては、不適法な特許異議の申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきである。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由、証拠によっては、本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項8に対する本件特許異議の申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記第一の上階個室に隣接する第二の上階個室とを有する建物の改築方法であって、
前記上階の床の一部を除去し、前記第一の上階個室を前記居間と連通する吹抜け空間とする工程と、
前記第二の上階個室と前記第一の上階個室とを仕切る仕切り壁を除去し、前記第二の上階個室を前記吹抜け空間に連通させる工程とを含む、建物の改築方法。
【請求項2】
所定階に設けられた居間と、前記所定階の上階且つ前記居間の上方に設けられるとともに建物外周部に面する第一の上階個室と、前記所定階に設けられた予備室と、前記上階に設けられた主寝室とを有し、前記居間と前記予備室とが建具によって区画された建物の改築方法であって、
前記上階の床の一部を除去し、前記第一の上階個室を前記居間と連通する吹抜け空間とする工程と、
前記所定階の予備室を新たな主寝室に改装するとともに、前記上階の主寝室を新たな予備室とし、前記建具を除去して前記居間と新たな前記主寝室とを間仕切り壁で区画する工程とを含む、建物の改築方法。
【請求項3】
前記第一の上階個室に、前記第一の上階個室に設けられた既存の採光窓よりも高さ寸法の大きな採光窓を設置する工程を更に含む、請求項1又は2に記載の建物の改築方法。
【請求項4】
前記上階の床の一部を除去する工程では、前記上階の床の下面に沿った水平面に設置された水平ブレースを残して床を除去する、請求項1?3のいずれか一項に記載の建物の改築方法。
【請求項5】
前記上階の床の一部を除去する工程では、前記上階の床を除去する領域内に位置するとともに前記上階の床高さの位置に設置された梁を残して床を除去する、請求項1?4のいずれか一項に記載の建物の改築方法。
【請求項6】
前記上階の床は、前記上階の床高さの位置に設置された梁に載置され目地モルタルで固定された複数の軽量気泡コンクリートパネルによって構成される、請求項1?5のいずれか一項に記載の建物の改築方法。
【請求項7】
前記建物の屋根に、太陽光発電装置を設置する工程を更に含む、請求項1?6のいずれか一項に記載の建物の改築方法。
【請求項8】 (削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-09-21 
出願番号 特願2013-77827(P2013-77827)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E04G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 星野 聡志  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 小野 忠悦
住田 秀弘
登録日 2017-06-30 
登録番号 特許第6166933号(P6166933)
権利者 旭化成ホームズ株式会社
発明の名称 建物の改築方法、及び建物  
代理人 西本 博之  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 清水 義憲  
代理人 阿部 寛  
代理人 西本 博之  
代理人 阿部 寛  
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