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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C09J 審判 全部申し立て 2項進歩性 C09J |
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管理番号 | 1345867 |
異議申立番号 | 異議2017-700911 |
総通号数 | 228 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2018-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-09-27 |
確定日 | 2018-10-09 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6108186号発明「ウレタン系粘着剤組成物、これを用いて得られる粘着フィルム及び表面保護用フィルム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6108186号の明細書、及び、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 特許第6108186号の請求項1、2、6、7に係る特許を維持する。 特許第6108186号の請求項3?5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第6108186号に係る出願(特願2015-238144号)は、出願人荒川化学工業株式会社(以下「特許権者」ということがある。)により、平成27年12月7日になされた特許出願であり、平成29年3月17日に特許権の設定登録がなされた。 本件特許につき、平成29年9月27日付けで、特許異議申立人加藤加津子(以下「申立人1」という。)により、本件特許異議申立(以下「申立1」という。)がなされ、また、平成29年10月5日付けで、特許異議申立人有江純子(以下「申立人2」という。)により、本件特許異議申立(以下「申立2」という。)がなされ、平成30年1月10日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年2月7日に特許権者より意見書及び訂正請求書の提出がなされ、これに対し、同年3月27日に申立人2より意見書が提出されたものである(申立人1は、特許法第120条の5第5項の規定により審判長が指定した期間内に意見書を提出しなかった。)。 その後、平成30年5月7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年6月28日に特許権者より意見書及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して、同年8月16日に申立人2より意見書が提出されたものである(申立人1は、特許法第120条の5第5項の規定により審判長が指定した期間内に意見書を提出しなかった。)。 なお、特許法第120条の5第7項の規定により上記平成30年2月7日に提出された訂正請求書は取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 上記平成30年6月28日提出の訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線部は訂正箇所を示す。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「イオン化合物(D)」と記載されているのを、「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7についても同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部含有すること」と記載されているのを、「(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部、(D)成分を(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部含有し、(C)成分を(A)成分100重量部に対して10?100重量部含有すること」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7についても同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)」と記載されているのを、「ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いて製造した水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)」に訂正する(請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7についても同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3、4及び5を削除する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「請求項1?5のいずれかに記載」と記載されているのを、「請求項1、又は2のいずれかに記載」に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?5のいずれかに記載」と記載されているのを、「請求項1、又は2のいずれかに記載」に訂正する。 (7)訂正事項7 明細書の【0018】段落に、「これらの中でも、リワーク性の点から、(a1)成分は、ポリーテルポリオールのみ、又は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとの併用が好ましく、同様の点からポリエーテルのみを用いることがより好ましい。」と記載されているのを、「これらの中でも、リワーク性の点から、(a1)成分は、ポリエーテルポリオールのみ、又は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとの併用が好ましく、同様の点からポリエーテルポリオールのみを用いることがより好ましい。」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、及び、一群の請求項について (1)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について ア 訂正事項1について 訂正事項1は、本件明細書における「(D)成分は、アニオンとカチオンを含む化合物であれば特に限定されず、公知の有機系のイオン化合物、及び無機系のイオン化合物も使用することができる。これらの化合物は単独で使用しても良く、また二種類以上を混合して使用しても良い。これらの中でも、導電性向上の点からアルカリ金属塩であることが好ましく、リチウム塩が特に好ましい。具体的には、・・・(中略)・・・リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、・・・(中略)・・・及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上がより好ましい。」(【0033】)との記載に基づいて、「イオン化合物(D)」を「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)」に限定するものであるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 そして、訂正事項1は、イオン化合物の範囲を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 また、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2は、(D)成分の含有量に関し、訂正前においては「(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部」含有するとのみ特定されていたところを、この特定に加え、(D)成分を「(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部」含有すると特定することにより、(D)成分の含有量の範囲を限定するものであり、また、訂正事項2は、(C)成分の含有量に関し、訂正前においては特定がなされていなかったところを、「(C)成分を(A)成分100重量部に対して10?100重量部」含有すると特定することにより、(C)成分の含有量の範囲を限定するものであるから、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、(D)成分の含有量に関し、本件明細書の【表1】の実施例1には、(C)成分50重量部に対して(D)成分を0.1重量部、すなわち、(C)成分の合計100重量部に対して、0.2重量部配合することが記載され、同様に、実施例5には、(C)成分50重量部に対して(D)成分を8重量部、すなわち、(C)成分の合計100重量部に対して16重量部配合することが記載されている。そして、実施例1、5以外(実施例2?4、6?14)はいずれも、(C)成分の合計100重量部に対して(D)成分を2?16重量部の範囲内で配合することが記載されている。そして、具体的に、(D)成分として、「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド」(実施例1?11)、及び、「トリフルオロメタンスルホン酸リチウム」(実施例14)を用いることが記載されている。 さらに、(C)成分の含有量に関し、本件明細書の【0032】には、「(C)成分の含有量は、導電性向上、およびリワーク性の点から(A)成分100重量部に対して10?100重量部であることが好ましく、」と記載されている。 加えて、訂正事項2は、(D)成分の含有量、及び、(C)成分の含有量の範囲を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 また、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様である。 ウ 訂正事項3について 訂正事項3は、「ポリウレタン樹脂(A)」に関し、本件明細書の【0018】における「(a1)成分は、ポリエーテルポリオールのみ、又は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとの併用が好ましく、同様の点からポリエーテルポリオールのみを用いることがより好ましい。」(下線部は上記訂正事項7による訂正)との記載、また、【0044】の合成例1における、ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いたポリウレタン樹脂(A)を調製する旨の記載に基づいて、訂正前においては、「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)」と特定されていたものを、この特定に加え、「ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いて製造した水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)」と特定することにより、ポリウレタン樹脂(A)成分をより具体的に特定し、さらに限定するものであるから、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。 そして、訂正事項3は、ポリウレタン樹脂(A)の範囲を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 また、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?7も同様である。 エ 訂正事項4について 訂正事項4は、請求項3?5の削除のみであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 オ 訂正事項5について 訂正事項5は、上記訂正事項4に伴って、訂正前の請求項3?5を引用する請求項6の記載を、当該請求項3?5の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 カ 訂正事項6について 訂正事項6は、上記訂正事項4に伴って、訂正前の請求項3?5を引用する請求項7の記載を、当該請求項3?5の記載を引用しないものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるといえるとともに、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 キ 訂正事項7について 訂正事項7は、本件明細書の【0018】において、「ポリーテルポリオール」を「ポリエーテルポリオール」に、「ポリエーテル」を「ポリエーテルポリオール」に訂正するものであり、前者は「エ」の脱字が明らかであるし、後者は文脈からして明らかな誤記であるといえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものであるといえるとともに、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではないから、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものといえる。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項1?7について、請求項2が請求項1を引用し、請求項3が請求項1、2を引用し、請求項4が請求項1?3を引用し、請求項5が請求項1?4を引用し、請求項6が請求項1?5を引用し、請求項7が請求項1?5を引用することから、請求項1?7は一群の請求項をなし、本件訂正の請求は一群の請求項ごとにされたものである。 (3)まとめ 上記(1)、(2)より、訂正事項1?7は、特許法第120条の5第2項、第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項1?7について訂正を求めるものであり、これらの訂正事項はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号または第4号に掲げる事項を目的とするものに該当し、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記「第2」のとおり、本件訂正は認容し得るものであるから、本件訂正後の請求項1?7に係る発明(以下、請求項1に係る発明を項番に対応して「本件発明1」などどいい、併せて「本件発明」ということがある。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いて製造した水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物であって、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物及びリン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)並びにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)を含有し、(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部、(D)成分を(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部含有し、(C)成分を(A)成分100重量部に対して10?100重量部含有することを特徴とするウレタン系粘着剤組成物。 【請求項2】 上記(A)成分がポリエーテルポリオール及び脂肪族ジイソシアネートを含有する組成物の反応物である請求項1記載のウレタン系粘着剤組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 プラスチックフィルム基材に請求項1、又は2のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された粘着フィルム。 【請求項7】 プラスチックフィルム基材に請求項1、又は2のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された光学部材の表面保護用フィルム。」 第4 各申立人が主張する取消理由 1 申立1について 申立人1は、平成29年9月27日付け本件特許異議申立書(以下「申立書1」という。)において、下記(1)に示す甲1-1?甲1-7を提示し、下記(2)のとおり主張している。 (1)申立人1が提出した証拠方法 甲1-1:特開2015-7226号公報(下記「甲2-1」と同じ) 甲1-2:特開2015-98503号公報(下記「甲2-8」と同じ) 甲1-3:株式会社産業調査会「実用プラスチック成形加工事典」、1997年3月24日初版第1刷、586頁?587頁 甲1-4:特開平10-7795号公報 甲1-5:産業調査会「プラスチック・機能性高分子材料事典」、2004年2月20日初版第1刷、504頁?505頁 甲1-6:特開2014-162821号公報 (2)申立人1の主張 「本件特許発明1?7は、いずれも、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された技術事項及び周知技術を適用することにより、当業者が容易になし得た発明である。」(申立書1第21頁) 「本件特許発明1?7は、いずれも、甲第2号証に記載された発明に甲第1号証に記載された技術事項及び周知技術を適用することにより、当業者が容易になし得た発明である。」(申立書1第26頁) 2 申立2について 申立人2は、平成29年10月5日付け本件特許異議申立書(以下「申立書2」という。)において、下記(1)に示す甲2-1?甲2-21を提示し、下記(2)ア及びイのとおり主張している。 (1)申立人2が提出した証拠方法 甲2-1:特開2015-7226号公報(上記「甲1-1」と同じ) 甲2-2:特開2015-151429号公報 甲2-3:特開2009-102525号公報 甲2-4:特開2007-169377号公報 甲2-5:特開2006-182794号公報 甲2-6:特開2009-281575号公報 甲2-7:特開2007-138020号公報 甲2-8:特開2015-98503号公報(上記「甲1-2」と同じ) 甲2-9:特開2005-154491号公報 甲2-10:モノサイザー W-260の製品情報(http://www.dic-global.com/jp/ja/products/additive/modifier/high_function/polyurethane.html、DIC株式会社ホームページ、検索日:平成29年9月25日) 甲2-11:特開2005-214226号公報 甲2-12:特開平7-331015号公報 甲2-13:国際公開第2008/038465号公報 甲2-14:アデカサイザー RS-735の製品情報(https://www.adeka.co.jp/chemical/products/pvc/pro125c.html、株式会社ADEKAホームページ、検索日:平成29年9月25日) 甲2-15:国際公開第2015/080130号公報 甲2-16:サンソイザー E-4030の製品情報(http://www.nj-chem.co.jp/products/chem/pdf/e-4030.pdf、新日本理化株式会社のホームページ、検索日:平成29年10月3日) 甲2-17:サンソイザー E-6000の製品情報(http://www.nj-chem.co.jp/products/chem/pdf/e-6000.pdf、新日本理化株式会社のホームページ、検索日:平成29年10月3日) 甲2-18:TOPの製品情報(http://www.daihachi-chem.co.jp/product_search/pdf/itiran_02.pdf、大八化学工業株式会社のホームページ、検索日:平成29年10月3日) 甲2-19:特開2003-266604号公報 甲2-20:特開2003-221428号公報 甲2-21:特開2003-291292号公報 (2)申立人2の主張 ア 「本件特許発明は、甲第1号証又は甲第2号証及び甲第3?9号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」(申立書2第43頁?44頁) イ 「本件特許発明は発明の詳細な説明に記載したものではなく、そして、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明を容易に実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本件特許は特許法第36条第6項第1号及び同法第4項第1号の規定する要件を満たさないものであり、同法第113条第4号の規定に該当し、取り消されるべきものである。」(申立書2第44頁) 第5 取消理由の概要 訂正前の請求項1?7に対して、平成30年5月7日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである(同年1月10日付けで特許権者に通知した取消理由と同趣旨である。)。 ・取消理由1(進歩性):訂正前の請求項1?7に係る発明は、いずれも、引用文献1に記載された発明、引用文献2?7に記載された事項、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。 ・取消理由2:(実施可能要件)発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。 ・取消理由3:(サポート要件):訂正前の請求項1?4、6?7に係る発明は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 引用文献1:特開2015-7226号公報(甲1-1、甲2-1) 引用文献2:特開2015-98503号公報(甲1-2、甲2-8) 引用文献3:特開2009-102525号公報(甲2-3) 引用文献4:特開2007-169377号公報(甲2-4) 引用文献5:特開2006-182794号公報(甲2-5) 引用文献6:特開2005-154491号公報(甲2-9) 引用文献7:特開2015-91922号公報(当審で新たに引用) 第6 当審の判断 当審は、上記平成30年5月7日付けで特許権者に通知した、引用文献1(甲1-1、甲2-1)を根拠とする取消理由1(進歩性)、及び、取消理由2(実施可能要件)、取消理由3(サポート要件)は、本件訂正により解消したと判断する。 1 取消理由1(進歩性)について (1)引用文献に記載された事項(下線は当審で付したものである。) ア 引用文献1に記載された事項 「【請求項1】 末端に第1級の水酸基を有し、水酸基価10?40mgKOH/gであるポリウレタン樹脂(A)100重量部、多官能イソシアネート化合物(B)1?20重量部、ならびにポリアルキレングリコール系化合物、エポキシ系化合物およびリン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも1種(C)10?100重量部を含有することを特徴とする再剥離型ウレタン粘着剤組成物。 【請求項2】 ポリウレタン樹脂が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及び多官能イソシアネートを反応させて得られたものである請求項1の再剥離型ウレタン粘着剤組成物。 【請求項3】 前記(C)成分の平均分子量が300?800であることを特徴とする請求項1または2に記載の再剥離型ウレタン粘着剤組成物。 ・・・(略)・・・ 【請求項6】 プラスチックフィルム基材に請求項1?5のいずれかに記載の再剥離型ウレタン粘着剤組成物の粘着層が形成された再剥離可能な粘着フィルム。 【請求項7】 プラスチックフィルム基材に請求項1?5のいずれかに記載の再剥離型ウレタン粘着剤組成物の粘着層が形成された再剥離可能な光学部品の表面保護用フィルム。」 「【0001】 本発明は、再剥離可能な粘着フィルムの粘着層の形成に適した再剥離型ウレタン粘着剤組成物並びに再剥離性粘着フィルム及び光学部品の表面保護用フィルムに関する。」 「【0003】 この問題を解決すべく、種々のウレタン粘着剤が提案されている。ウレタン粘着剤とは、末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂と多官能イソシアネート化合物との二液性の粘着剤のことで、ポリウレタン樹脂と多官能イソシアネートが架橋することによって粘着特性が発現する。ポリウレタン樹脂に用いられるポリオール成分としては、ポリエーテルポリオールあるいはポリエステルポリオールがよく知られており、このうち、ポリエーテルポリオールを使用したウレタン粘着剤は、柔軟性が出て粘着力は向上するが、凝集力が低下して糊残りしやすくなるといった問題点がある。一方、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを用いたウレタン粘着剤は、粘着剤としての凝集力が高く糊残りを抑制することができるが、粘着剤層自体の硬度も高くなって被着体との密着性が低下し、粘着力が発現しにくくなることが知られている(特許文献1)。」 「【0007】 本発明は、短時間の乾燥硬化によって粘着力を発現させることができるために生産性が高く、さらに、例えば、100℃以上の硬化条件であっても被着体への濡れ広がり性が良好で、粘着力が過度に上昇してしまうこともなく安定した特性が得られる再剥離が可能なウレタン樹脂粘着剤組成物、およびウレタン樹脂粘着剤の接着層が形成された再剥離可能な粘着フィルムを提供することを目的とする。」 「【0016】 本発明の再剥離型ウレタン粘着剤組成物は、従来のウレタン粘着剤よりも反応性が高く、硬化に要する時間で短いので生産性が高い。かつ、例えば、100℃以上の硬化条件下であっても安定した被着体への濡れ広がり性が得られる。そのため、貼付け作業等の作業効率性に優れ、しかも再剥離が可能で、被着体表面に糊残りを生じにくいので、再剥離可能な粘着フィルム、特に、パソコン、テレビ、携帯電話等の液晶ディスプレイやタッチパネルなどの光学部品の表面を汚れや傷から保護する保護フィルム用粘着剤として好適である。」 「【0018】 [(A)成分] (A)成分は、ポリエーテル系ポリオールとポリエステル系ポリオールと多官能イソシアネート化合物とをウレタン反応触媒の存在又は非存在下で重合反応させて得られる。 【0019】 上記ポリエーテル系ポリオールとは、分子内にエーテル結合を含み2個以上水酸基を有する末端が第1級のアルコールである。具体的には、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキサイド),末端エチレンオキサイドキャップのポリプロピレングリコール,ポリテトラメチレングリコールなど公知のものを例示できる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算値)は、特に限定されないが、糊残りが生じにくい凝集力が得られる点で数平均分子量が700?5,000のものが好ましく、より好ましくは1,000?4000程度である。その使用量はポリウレタン樹脂を構成するポリオール中の30?90%が好ましく、更に好ましくは50?80%である。 ・・・(略)・・・ 【0023】 上記(A)成分の合成に用いる多官能イソシアネート化合物としては、芳香族系多官能イソシアネート、脂肪族系多官能イソシアネート、芳香脂肪族系多官能イソシアネート、脂環族系多官能イソシアネート等公知のものを特に制限なく使用することができる。」 「【0044】 本発明の粘着剤には必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤、導電性付与剤等の添加剤を配合しても良い。 【0045】 本発明の粘着フィルムは、基材フィルムに本発明の再剥離型ウレタン粘着剤組成物の接着層が形成されたものである。基材フィルムとしては、例えば、プラスチックフィルム、プラスチックシート、紙、合成紙、金属箔などが例示できる。本発明の粘着剤は、透明性、被着体への濡れ広がり性、再剥離性などに優れるので、光学特性に優れる基材フィルムと組み合わせ、光学部品の表面保護のための粘着フィルムに適用することが好ましい。」 「【実施例】 ・・・(略)・・・ 【0050】 合成例1 ポリウレタン樹脂溶液の合成 撹拌器、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備え付けた4口フラスコにアデカポリエーテルAM-302(末端エチレンオキサイドキャップの3官能ポリプロピレングリコール、水酸基価56mgKOH/g、分子量3,000、アデカ製)160部、クラレポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、水酸基価112mgKOH/g、分子量1,000、クラレ製)40部、ヘキサメチレンジイソシアネート(日本ポリウレタン工業製)13部加え、触媒としてジオクチル錫ジラウレート0.1部、トルエン142部仕込み、80℃まで徐々に昇温し、4時間反応を行った。IRを用いてイソシアネート基の消滅を確認してから冷却し、ポリウレタン樹脂溶液(不揮発分 60%)を得た。このポリウレタン樹脂の数平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値、以下同じ)は12,000、水酸基価は22mgKOH/gであった。 ・・・(略)・・・ 【0058】 <評価方法> 1、塗工方法 (実施例1) ポリウレタン樹脂(A)として合成例1で合成したポリウレタン樹脂溶液167重量部((A)成分として100重量部)に対して、多官能イソシアネート化合物(B)としてコロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体 日本ポリウレタン工業製)を10重量部と、(C)成分としてモノサイザー W-260(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量434、DIC製)を25重量部とを配合し、粘着剤を得た。得られた粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚50μm)に乾燥塗膜10μmになるように塗工し、120℃で2分、あるいは120℃で5分乾燥させ、粘着シートを得た。 ・・・(略)・・・ 【0090】 【表1】 【0091】 表1中の記号、略号は以下のとおりである。 コロネートHX:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体、日本ポリウレタン工業製 コロネートHL:コロネートHX:ヘキサメチレンジイソシアネートのアダクト体、日本ポリウレタン工業製 W-260:モノサイザーW-260(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量434、DIC製) W-262:モノサイザーW-262(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量55) RS-700:アデカサイザーRS-700(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量約550、アデカ製) RS-735:アデカサイザーRS-735(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量約850、アデカ製) E-4030:サンソサイザーE-4030(エポキシ系化合物、分子量約350、新日本理化製) E-6000:サンソサイザーE-6000(エポキシ系化合物、分子量約400、新日本理化製) TOP:TOP(リン酸エステル系化合物、分子量435、大八化学工業製) PN-150:アデカサイザーPN-150(ポリエステル系化合物 分子量約1,000 アデカ製) PN-200:アデカサイザーP-200(ポリエステル系化合物 分子量約2,000 アデカ製)」 イ 引用文献2に記載された事項 「【請求項1】 ポリウレタン系樹脂を含むウレタン系粘着剤であって、 該ポリウレタン系樹脂が、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)とを含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン系樹脂であり、 該ポリオール(A)と該多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比が、NCO基/OH基として、1.0を超えて5.0以下であり、 該ウレタン系粘着剤が、フルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含む、 ウレタン系粘着剤。 【請求項2】 前記イオン性液体が、前記フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成される、請求項1に記載のウレタン系粘着剤。 【請求項3】 前記オニウムカチオンが、窒素含有オニウムカチオン、硫黄含有オニウムカチオン、リン含有オニウムカチオンから選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のウレタン系粘着剤。 【請求項4】 前記ポリオール(A)が、数平均分子量Mnが400?20000のポリオールを含む、請求項1から3までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤。 【請求項5】 前記多官能イソシアネート化合物(B)の前記ポリオール(A)に対する含有割合が5重量%?60重量%である、請求項1から4までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤。 【請求項6】 基材層と粘着剤層を有し、 該粘着剤層が、請求項1から5までのいずれかに記載のウレタン系粘着剤を含む、 表面保護フィルム。 【請求項7】 請求項6に記載の表面保護フィルムが貼着された光学部材。 【請求項8】 請求項6に記載の表面保護フィルムが貼着された電子部材。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ウレタン系粘着剤に関する。本発明のウレタン系粘着剤は、従来一般に糊残りがしやすいものとして知られているウレタン系粘着剤であるにもかかわらず、糊残り防止性に非常に優れる。本発明は、また、このようなウレタン系粘着剤を用いた表面保護フィルムに関する。本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層を有し、例えば、光学部材や電子部材の表面に貼着して該表面を保護する用途に好ましく用いられる。」 「【0009】 また、前述のように、表面保護フィルムは、表面保護の必要がなくなった時点で、光学部材や電子部材などの被着体から剥離される。この際、表面保護フィルムの基材層や、光学部材や電子部材などは、プラスチック材料を構成材料として含むため、電気絶縁性が高く、摩擦や剥離の際に静電気を発生する。したがって、表面保護フィルムを偏光板などの光学部材から剥離する際にも静電気が発生し、このような静電気が残ったままの状態で液晶に電圧を印加すると、液晶分子の配向が損失したり、パネルの欠損が生じたりする。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明の課題は、帯電防止性に非常に優れ、糊残り防止性やリワーク性にも優れた、ウレタン系粘着剤を提供することにある。また、本発明の課題は、このようなウレタン系粘着剤を粘着剤層に用いた表面保護フィルムであって、帯電防止性に非常に優れ、糊残り防止性やリワーク性にも優れた、表面保護フィルムを提供することにある。また、本発明の課題は、そのような表面保護フィルムが貼着された光学部材や電子部材を提供することにある。」 「【0069】 ポリウレタン系樹脂は、好ましくは、脂肪酸エステルを含む。ポリウレタン系樹脂が脂肪酸エステルを含むことにより、濡れ速度が向上し得る。脂肪酸エステルは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。 【0070】 脂肪酸エステルの含有割合は、ポリオール(A)に対して、好ましくは5重量%?50重量%であり、より好ましくは7重量%40重量%であり、さらに好ましくは8重量%?35重量%であり、特に好ましくは9重量%?30重量%であり、最も好ましくは10重量%?20重量%である。脂肪酸エステルの含有割合を上記範囲内に調整することによって、濡れ速度が一層向上し得る。脂肪酸エステルの含有割合が少なすぎると、濡れ速度が十分に向上できないおそれがある。脂肪酸エステルの含有割合が多すぎると、コスト的に不利になる問題が生じたり、粘着特性が維持できないという問題が生じたり、被着体が汚染されたりするという問題が生じたりするおそれがある。 【0071】 脂肪酸エステルの数平均分子量Mnは、好ましくは200?400であり、より好ましくは210?395であり、さらに好ましくは230?380であり、特に好ましくは240?360であり、最も好ましくは270?340である。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することによって、濡れ速度がより一層向上し得る。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnが小さすぎると、添加部数が多くても濡れ速度が向上しないおそれがある。脂肪酸エステルの数平均分子量Mnが大きすぎると、乾燥時の粘着剤の硬化性が悪化し、濡れ特性に留まらずその他粘着特性に悪影響を及ぼすおそれがある。」 「【0088】 <A-2.イオン性液体> 本発明のウレタン系粘着剤は、フルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含む。本発明のウレタン系粘着剤がフルオロ有機アニオンを含むイオン性液体を含むことにより、帯電防止性に非常に優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。本発明のウレタン系粘着剤に含まれるイオン性液体は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。 【0089】 本発明において、イオン性液体とは、25℃で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)を意味する。 【0090】 イオン性液体は、フルオロ有機アニオンを含むイオン性液体であれば、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なイオン性液体を採用し得る。このようなイオン性液体としては、好ましくは、フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成されるイオン性液体である。イオン性液体として、フルオロ有機アニオンとオニウムカチオンから構成されるイオン性液体を採用することにより、帯電防止性にきわめて非常に優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。」 「【0113】 これらのイオン性液体の中でも、より好ましくは、1-ヘキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムペンタフルオロエタンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルピリジニウムノナフルオロブタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-オクチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘプタフルオロプロパンスルホネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、トリメチルプロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。」 「【0128】 イオン性液体の配合量としては、使用するポリマーとイオン性液体の相溶性により変わるため一概に定義することができないが、一般的には、ポリウレタン系樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001重量部?50重量部であり、より好ましくは0.01重量部?40重量部であり、さらに好ましくは0.01重量部?30重量部であり、特に好ましくは0.01重量部?20重量部であり、最も好ましくは0.01重量部?10重量部である。イオン性液体の配合量を上記範囲内に調整することにより、帯電防止性に非常に優れたウレタン系粘着剤を提供することができる。イオン性液体の上記配合量が0.01重量部未満であると十分な帯電防止特性が得られないおそれがある。イオン性液体の上記配合量が50重量部を超えると被着体への汚染が増加する傾向がある。」 「【0147】 ≪B.表面保護フィルム≫ 本発明の表面保護フィルムは、光学部材や電子部材の表面保護に好ましく用いられる表面保護フィルムである。本発明の表面保護フィルムは、基材層と粘着剤層とを有し、該粘着剤層が、本発明のウレタン系粘着剤を含む。」 「【0168】 基材層の材料としては、用途に応じて、任意の適切な材料を採用し得る。例えば、プラスチック、紙、金属フィルム、不織布などが挙げられる。好ましくは、プラスチックである。基材層は、1種の材料から構成されていても良いし、2種以上の材料から構成されていても良い。例えば、2種以上のプラスチックから構成されていても良い。」 「【0253】 〔実施例73〕 1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド:0.01重量部を、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(森田化学工業社製、Li-TFSI):0.01重量部に変更した以外は、実施例1と同様に行い、基材上にウレタン系粘着剤(73)からなる粘着剤層を作製した。 次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(73)を得た。 評価結果を表10に示した。 【0254】 〔実施例74〕 リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの量を0.1重量部に変更した以外は、実施例73と同様に行い、基材上にウレタン系粘着剤(74)からなる粘着剤層を作製した。 次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(74)を得た。 評価結果を表10に示した。 【0255】 〔実施例75〕 リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの量を1重量部に変更した以外は、実施例73と同様に行い、基材上にウレタン系粘着剤(75)からなる粘着剤層を作製した。 次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(75)を得た。 評価結果を表10に示した。 【0256】 〔実施例76〕 リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドの量を10重量部に変更した以外は、実施例73と同様に行い、基材上にウレタン系粘着剤(76)からなる粘着剤層を作製した。 次いで、粘着剤層の表面に、一方の面にシリコーン処理を施した厚さ25μmのポリエステル樹脂からなる基材のシリコーン処理面を貼合せて、表面保護フィルム(76)を得た。 評価結果を表10に示した。」 「【表10】 」 ウ 引用文献3に記載された事項 「【請求項1】 イオン導電剤がポリエーテルポリオールに溶解された高分子組成物からなる導電性付与剤において、 該イオン導電剤が、成分(a)、(b)及び(c)を含有するイオン導電剤であることを特徴とする導電性付与剤。 ここで、 (a)過塩素酸アルカリ金属塩、 (b)含フッ素有機アニオン塩、 (c)イオン性液体、 である。 【請求項2】 前記成分(a)が、過塩素酸リチウムであることを特徴とする請求項1に記載の導電性付与剤。 ・・・(略)・・・ 【請求項7】 前記アニオンAが、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド酸からなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項5又は6に記載の導電性付与剤。 ・・・(略)・・・ 【請求項13】 粘着剤100質量部に、請求項1?9のいずれかに記載の導電性付与剤が、0.1?50質量部添加されてなることを特徴とする導電性材料。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、熱可塑性樹脂、紫外線硬化型樹脂、ゴムまたはエラストマー及び粘着剤などに添加して、導電性を付与するための導電性付与剤及び該導電性付与剤が添加されてなる導電性材料に関する。」 「【0004】 近年、イオン導電剤として、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸リチウムやトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン酸リチウム等の含フッ素有機アニオン塩類を用いた導電性付与剤が提案されている(例えば特許文献2参照)。一方でイミダゾリウムや4級アンモニウム系のイオン性液体を用いた導電性付与剤が提案されている(例えば特許文献3参照)これらの化合物は、導電性が高く、熱的安定性に優れ、取り扱いが容易であるが、高価であるという欠点があった。」 「【0006】 特許文献4には、イオン導電剤として、過塩素酸塩類と含フッ素有機アニオン塩類とがポリエーテルポリオールに添加されてなる導電性付与剤が開示されている。該導電性付与剤によれば、過塩素酸塩類の添加量を低減でき、安全性の高い導電性付与剤を提供できるが、樹脂への相溶性及び得られる導電材料の導電性に問題があり、ブリードが生じたり、あるいは、帯電防止性能が不十分であるといった問題がある。また、耐熱性も不十分であり、特性がさらに向上された導電性付与剤が求められている。」 「【0037】 また、本発明の導電性付与剤を用いてなる導電性材料は、耐ブリード性、耐熱性、帯電防止性に優れ、長期間安定した特性を持続できる。」 「【0070】 上記例示したアニオンAのなかでも、トリフルオロメタンスルホン酸、ビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸及びトリス(トリフルオロメタン)スルホニルメチド酸は、導電性が高く、耐熱性に優れ、より好ましい。」 「【0073】 次に、本発明の導電性材料について、以下に説明する。 本発明は、熱可塑性樹脂、ゴム又はエラストマー、紫外線硬化型樹脂またはアクリル系に代表される粘着剤100質量部に、本発明の導電性付与剤が、0.1?50質量部添加されてなることを特徴とする導電性材料である。」 「【0089】 上記熱可塑性樹脂、ゴム又はエラストマー、紫外線硬化型樹脂または粘着剤100質量部に、本発明の導電性付与剤が、0.1?50質量部添加されてなることを特徴とする導電性材料においてイオン導電剤の添加量が0.1質量部未満の場合、導電性材料の導電性が不十分となる場合があり、また、50質量部より超の場合、導電性は十分であるが、ブリードが発生しやすくなる場合がある。」 「【実施例】 【0090】 以下、本発明を、実験例に基づいて説明する。なお、本発明はこれら実験例により、なんら限定されない。実験例中、「部」は「質量部」を表す。 【0091】 実験例1 ポリエーテルポリオールであるPEO-PPO共重合体(三洋化成工業(株)、ニューポールPE-62(以下、「PEO-PPO共重合体」と略記する。))80部に、イオン導電剤として、過塩素酸リチウム10部と含フッ素有機アニオンアルカリ金属塩類であるトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(以下「MSL」と略記する。)10部を加えた後、温度70℃で加熱混練させて導電性付与剤を得た。 【0092】 ついで、熱可塑性樹脂であるポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業(株)、パンデックスT-8190N)(以下、「PU」と略記する。)90部に、先に得られた導電性付与剤10部を添加し、テストロール機(日新科学(株)製、HR-2型)中、温度100℃で加熱、混練させて、厚さ1mmの導電性シートを得た。 【0093】 得られた導電性シートの温度25℃、湿度40%における表面抵抗値を、表面抵抗測定機(三菱化学(株)製HT-210)を用いて測定した。結果を、表1に示す。 【0094】 得られた導電性シートを室温にて30日間保存し、表面状態を観察した。シート表面にベタツキは無く、ブリードは確認されなかった。結果を表1に示す。 【0095】 また、当該導電性付与剤について、消防法危険物第5類判定試験である圧力容器試験を実施した。本試験は固体及び液体物質の加熱分解の激しさを判断する試験であり、規定のオリフィス板を使用し、試験試料を圧力容器内で加熱した際に、50%以上の確率で破裂板が破裂するか否かを判定するものである。例えば細孔径1.0mmのオリフィス板を取り付けて行う試験のうち、破裂板が破裂した確率が50%以下の場合のみ「ランク3」つまり「危険性無し」の判定となる。当該導電性付与剤の圧力容器試験結果は危険性ありの判定であった。結果を表3に示す。 【0096】 実験例2 PEO-PPO共重合体80部に、イオン導電剤として、過塩素酸リチウム10部とイオン性液体であるN-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩(以下「BPSI」と略記する。)10部を使用した以外は、実験例1と同様にして導電性シートを得た。 【0097】 得られた導電性シートについて実験例1と同様にして、表面抵抗値の測定、保存試験後のブリードの有無の観察を実施し、導電性付与剤については圧力容器試験を実施した。結果を表1に示す。 【0098】 実験例3 PEO-PPO共重合体80部に、イオン導電剤として、MSL10部とBPSI10部を使用した以外は、実験例1と同様にして導電性シートを得た。 【0099】 得られた導電性シートについて実験例1と同様にして、表面抵抗値の測定、保存試験後のブリードの有無の観察を実施し、導電性付与剤については圧力容器試験を実施した。結果を表1に示す。 【0100】 実験例4 PEO-PPO共重合体80部に、イオン導電剤として、過塩素酸リチウム10部とMSL5部、及びBPSI5部を使用した以外は、実験例1と同様にして導電性シートを得た。 【0101】 得られた導電性シートについて実験例1と同様にして、表面抵抗値の測定、保存試験後のブリードの有無の観察を実施し、導電性付与剤については圧力容器試験を実施した。結果を表1に示す。 【0102】 実験例5 PEO-PPO共重合体80部に、イオン導電剤として、過塩素酸リチウム10部とMSL5部、及びイオン性液体である1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド酸塩(以下「EMImSI」と略記する。)5部を使用した以外は、実験例1と同様にして導電性シートを得た。 【0103】 得られた導電性シートについて実験例1と同様にして、表面抵抗値の測定、保存試験後のブリードの有無の観察を実施し、導電性付与剤については圧力容器試験を実施した。結果を表1に示す。 【0104】 【表1】 」 エ 引用文献4に記載された事項 「【技術分野】 【0001】 本発明は、帯電防止ポリウレタン粘着剤及びその製造方法に関する。本発明の接着剤は、液晶ディスプレイを始めとするディスプレイ類や、偏光板等の光学部品の表面保護フィルムとして好適に用いられる。 【背景技術】 【0002】 液晶ディスプレイ等のディスプレイ類や、偏光板等の光学部品には、表面を汚染や傷付きから保護するために、弱粘着性の保護フィルムが貼付される。この保護フィルムは被保護体の使用時には剥離されるが、その際の剥離耐電による埃の付着や、回路の損傷を防ぐために、帯電防止機能が付与されているのが通常である。」 「【0006】 こうした問題を解決するために、帯電防止剤として金属塩を添加する手法が取られている。・・・(略)・・・」 「【0056】 帯電防止性能の観点から、金属のカチオンと炭素を含む有機アニオンとからなるイオン性化合物を用いるのが好ましい。イオン性化合物(B)のカチオンは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のカチオンであるのがより好ましく、中でも、プロトンを除けば最もイオン移動度の高いリチウムカチオンがさらに好ましい。また接着剤への溶解性や、カチオンの電離度向上の面から、イオン性化合物(B)のアニオンは、フッ化アルキル基を含んだ有機アニオンであるのがより好ましい。具体的には、メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブチルスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド等が挙げられる。 【0057】 本発明の帯電防止ポリウレタン接着剤におけるイオン性化合物(B)の含有量は、水酸基末端ポリウレタン(A)の固形分100重量部当たり0.001重量部以上であることが好ましく、10重量部以下であることが好ましい。更に好ましくは0.005重量部以上であり、5重量部以下である。配合量が0.001重量部以上であれば望ましい帯電防止性能が発現しやすく、10重量部以下であれば接着性能を損なったり、接着剤層の表面へのブリードアウトに伴う被着体への移行がない又は移行を起こす可能性が軽減されるので好ましい。」 「【実施例】 【0067】 次に、本発明について、実施例、比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 [合成例1] 攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備え、摺り合わせ部をテフロンリングでシールした4口のセパラブルフラスコに、2官能ポリプロピレングリコール(ハイルーブD-660、分子量3000、第一工業製薬株式会社製)286.0g、3官能ポリプロピレングリコール(ポリハードナーT-500、分子量5000、第一工業製薬株式会社製)158.9g、イソホロンジイシソアネート(デグサジャパン株式会社製)42.4g、トルエン47.3g、触媒としてネオスタンU-810(ジオクチルスズジラウレート、日東化成株式会社製)0.05mgを仕込み(仕込み中のジオール/トリオールモル比:75/25)、90℃まで徐々に昇温して1時間反応を行った。イソシアネート価を確認した後に、トルエン400gを加え、60℃まで冷却し、ジイソプロパノールアミンの50重量%トルエン溶液25.4gを30分かけて滴下し、トルエン40gで滴下漏斗内を洗浄した。ネオスタンU-810を200mg追加し、よく攪拌して全体を均一としてから100℃まで昇温し、3時間加熱した。IR(赤外分光光度計)でイソシアネート基(2270cm^(-1)付近)が完全に消費されたことを確認して加熱を終了し、60℃以下になったところでアセチルアセトン3.365gを添加し、よく攪拌した。更に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド5.0gを加え、均一になるまでよく攪拌した。この溶液は無色透明で、固形分50重量%であった。これを主剤溶液(A)とする。」 「【表1】 」 オ 引用文献5に記載された事項 「【技術分野】 【0001】 本発明は、帯電防止性を有する表面保護フィルム用ポリウレタン粘着剤組成物に関し、詳しくは光学分野、医療分野等に好適に用いられる帯電防止性を有する表面保護フィルム用ポリウレタン粘着剤組成物、及び表面保護フィルムに関する。」 「【0009】 アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム等が挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム 、ラジウムが挙げられる。 上記陰イオン半径が0.275nm以上の陰イオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-))、パーフルオロブチルスルホン酸イオン(C_(4)F_(9)SO_(3)^(-))、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン((C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-))、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオン((CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-))、テトラフェニル硼酸アニオン(BPh_(4)^(-))が挙げられる。 【0010】 他方、好ましい陽イオンとしては、より価数が小さい1価のイオンを有するアルカリ金属イオンが挙げられ、特に好ましくは、プロトン以外で最も移動度が高いリチウムイオンを有するリチウム塩が挙げられる。 このようなリチウム塩としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CF_(3)SO_(3))_(2)N)、パーフルオロブチルスルホン酸リチウム(LiC_(4)F_(9)SO_(3))、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N)、リチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(Li(CF_(3)SO_(2))_(3)C)、テトラフェニル硼酸リチウム(LiBPh_(4))等が挙げられる。 【0011】 塩の配合量は、ポリウレタン100重量部あたり0.005?10重量部が好ましい。さらに好ましくは0.007?5重量部である。配合量が0.005重量部未満では、帯電防止性能が低くなり、10重量部超過では、ポリウレタンとの相溶性が悪くなり光学特性を損なう場合がある。 本発明に用いられるポリウレタンは、特に限定されることなく使用することができ、ポリオールとイソシアネート化合物を用いて製造することができる。」 「【実施例】 【0034】 以下、本発明を、実施例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、および評価方法は以下に示す通りである。 <原材料> 1)主剤(A) A-1:攪拌機、環流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた四口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネート(旭化成製「デュラネート50M」)521.0g、2官能ポリプロピレングリコール(第一工業製薬製、分子量1000)1548.7g、トルエン1699.7g、及び触媒としてジオクチル錫ジラウレート(日東化成製「ネオスタンU-810」)300mgを仕込み、1時間かけて90℃まで昇温し、その後90℃にて2時間反応した後、赤外分光光度計で残存NCO基を確認し、理論値(3.39%)以下となったところで、55℃まで冷却した。ここに3官能ポリプロピレングリコール(第一工業製薬製、分子量350)903.4gとトルエン170.0gを加え、再び90℃まで昇温し3時間反応した。赤外分光光度計で残存NCO基を確認し、完全に消えたところで70℃まで冷却した。ここへヘキサメチレンジイソシアネート86.8gとトルエン170gを加えた後、90℃に昇温し、更に90℃にて3時間反応した。赤外分光光度計で残存NCO基を確認し、完全に消えていたところで反応を終了し、冷却した。温度が80℃以下になったら、アセチルアセトン4.85gを加えて30分間よく攪拌し、錫触媒を不活性化した。この反応溶液は無色透明で、粘度800(mPa・s,25℃)、固形分60.5wt%であった。これを主剤溶液A-1とする。 A-2:市販ウレタン系粘着剤主剤(東洋インキ製造製「サイアバインSH101M」) A-3:攪拌機、環流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた四口フラスコに、脂肪族系3官能イソシアネート(三菱化学製「NY710A」)235.86g、3官能ポリプロピレングリコール(第一工業製薬製「G3000」)3323.1g、メチルエチルケトン1441.04g、触媒としてジオクチル錫ジラウレート(日東化成製「ネオスタンU-810」)350mgを仕込み、1時間かけて90℃まで昇温し、その後90℃にて2時間反応した。赤外分光光度計で残存NCO基が完全に消えたことを確認した後、反応を終了し、冷却した。温度が80℃以下になったところで、アセチルアセトン5.66gを加えて30分間よく攪拌し、錫触媒を不活性化した。この反応溶液は無色透明で、粘度800(mPa・s,25℃)、固形分71.3wt%であった。これを主剤溶液A-3とする。 A-4:攪拌機、環流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた四口フラスコに、2官能ポリエチレングリコール(第一工業製薬製、分子量1000)45.36g、3官能ポリプロピレングリコール(第一工業製薬製、分子量700)79.38gとトルエン60.0gを仕込み、50℃まで30分かけて昇温し、その後50℃にて30分攪拌してポリエチレングリコールを溶解させた。ここに、1,4-ジアゾビシクロ(2,2,2)オクタン(和光純薬工業製、1級試薬)140mg、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(和光純薬工業製、1級試薬)15.26gの順で加え、均一になるまで攪拌させた後、30分かけて90℃まで再び昇温し、90℃にて6時間反応した。赤外分光光度計で残存NCO基を確認し、完全に消えたところで反応を終了し、冷却した。この反応溶液は白色で粘度2070(mPa・s,25℃),固形分71.5wt%であった。これを主剤溶液A-4とする。 2)硬化剤(B) B-1:脂肪族系多官能イソシアネート(三菱化学製「マイテックNY710A」) B-2:脂肪族系多官能イソシアネート(東洋インキ製造製「サイアバインT-501B」) 3)塩(C) C-1:リチウムビストリフルオロメタンスルホニウムイミド(シグマアルドリッチ製、純度99.95%) C-2:リチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(Tochem Products Co.製) C-3:エチル硫酸-N-エチル-N,N-ジメチルーN-ラウリルアンモニウムを以下の方法で製造した。攪拌機、環流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた四口フラスコに、ジメチルラウリルアンモニウム(和光純薬製、純度97%以上)21.340g、水50g、ジエチル硫酸(和光純薬製、純度97%以上)15.418gを室温にて滴下し、3時間反応した。この反応溶液をエバポレーションした後、100℃にて5時間減圧乾燥し、30.2gの固体を得た。これを塩C-3とする。 C-4:トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(シグマアルドリッチ製、純度96%) C-5:リチウムクロライド(和光純薬工業製、純度99%以上) <評価方法> 1、塗工方法 主剤溶液(A)、硬化剤(B)、塩(C)とアセトンとを所定の配合比で混合し、攪拌子を用いて70rpmで30分間、均一になるまで攪拌し、粘着剤溶液とした。これを、PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製「T100-38」、厚み38μm)上に乾燥塗膜の厚みが10±2μmとなるようにアプリケーターで塗工し、120℃で1分間セーフベンにて乾燥し、粘着シートを作成した。シリコンセパレーター(三菱化学ポリエステルフィルム製「MR25」)と粘着剤面を貼り合わせ、40℃で3日間、状態調節したものを評価用積層体サンプルとした。 2、評価方法 1)光学特性:上記の粘着剤を塗工した粘着シートの透明性を目視で確認し、以下の基準に従って評価した。 【0035】 ○:無色透明 △:わずかに霞んでいる ×:白濁している 2)帯電圧及び除電時間:上記の粘着剤を塗工した粘着シートを4cm四方に切り取り、スタチックオネストメーター(宍戸商会製「TYPE S-5109」)を用いて、155rpm回転状態で、10kVの印加電圧を2分間かけた後の電圧(帯電圧)と、帯電圧が0kVになる時間(除電時間)を3分間まで測定した。3分間で0kVにならない場合は、「減衰せず」と記した。 3)粘着力:上記の評価用積層体サンプルからシリコンセパレーターを剥離し、その粘着面をステンレス鋼板(SUS304)と貼り合わせ、2kgのロールで一往復加重して圧着し、室温で1週間放置後の粘着力を剥離試験器で(180度ピール条件)測定した。測定条件は23℃、65%RH、剥離速度を0.3m/minとした。 <実施例1?7及び比較例1?5> 1)実施例1?7、比較例1?5 表1及び2に示す塩(C)をアセトン3mlに溶解し、同じく表1、2に示す主剤A、硬化剤Bを加え、前述の塗工方法に従って基材PETフィルムに塗布、乾燥して粘着シートを作成し、前述の評価項目に従って評価した。帯電圧評価結果と透明性評価結果を表1、2に示す。 【0036】 【表1】 」 カ 引用文献6に記載された事項 「【技術分野】 【0001】 本発明は、帯電防止粘着剤及び該粘着剤の製造方法に関する。詳しくは、本発明は、被着体表面を所定の期間、機械的及び電気的に保護するための表面保護フィルムに好適な粘着剤に関する。より詳しくは、本発明の粘着剤は、液晶パネル、プラズマディスプレイ、偏光板、CRT(ブラウン管)等の光学部品の表面保護用粘着フィルム形成に好適に用いられる。」 「【0009】 本発明の目的は、各種ディスプレイ、偏光板等の光学部材の表面保護粘着フィルム用の粘着剤として好適な透明性に優れ着色もほとんどなく、再剥離性に優れ、剥離時の剥離帯電が少ない帯電防止粘着剤を提供することを目的とする。」 「【0037】 本発明に用いられるイオン化合物(B)としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、塩化アンモニウム、塩素酸カリウム、塩化アルミニウム、塩化銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、チオシアン酸ナトリウム等の無機塩類、酢酸ナトリウム、アルギン酸ソーダ、リグニンスルホン酸ソーダ、トルエンスルホン酸ソーダ等の有機塩類が挙げられる。これらは単独もしくは混合して使用することができる。導電性及び安全性等の観点から、塩化ナトリウム、塩化カリウム、過塩素酸リチウム等が好ましい。 【0038】 また、その含有量は、粘着剤固形分100重量%中に0.1?50重量%であることが好ましい。さらに好ましくは1?30重量%である。0.1重量%未満では十分なイオン導電性が得られず、50重量%よりも多くイオン化合物(B)を含有しても導電性向上の効果がほとんど期待できなくなり、さらに粘着物性の低下、及び樹脂との相溶性の低下により塗膜の白化が起こりやすくなるので好ましくない。」 「【実施例】 【0058】 合成例1 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリエステルポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、OH価112、分子量1,000、クラレ株式会社製)68g、ポリエーテルポリオールG-3000B(3官能ポリエーテルポリオール、PO鎖100重量%、OH価56、分子量3000、旭電化株式会社製)265g、トルエン125g、過塩素酸リチウム9g、触媒として2-エチルヘキサン酸鉄0.03g、ナフテン酸鉛0.04gを仕込み、液が十分均一になった後に、ヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエル株式会社製)24gを1時間で滴下して、90℃で3時間反応を行った。 赤外分光光度計(IR)でイソシアネート基の消失を確認した後、冷却してトルエン115gを加えた。この反応溶液は無色透明で固形分60%、粘度3,000cps、Mw(重量平均分子量)50,000であった。 【0059】 合成例2 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリエステルポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、OH価112、分子量1,000、クラレ株式会社製)68g、ポリエーテルポリオールGL-3000(3官能ポリエーテルポリオール、EO/PO=20/80重量%、OH価56、分子量3000、旭電化株式会社製)265g、トルエン125g、過塩素酸リチウム9g、触媒としてDBTDL0.09g、2-エチルヘキサン酸錫0.04gを仕込み、液が十分均一になった後に、ヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエル株式会社製)24gを1時間で滴下して、90℃で2時間反応を行った。 赤外分光光度計(IR)でイソシアネート基の消失を確認した後、冷却してトルエン115gを加えた。この反応溶液は無色透明で固形分60%、粘度3,500cps、Mw(重量平均分子量)60,000であった。 【0060】 合成例3 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリエステルポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、OH価112、分子量1,000、クラレ株式会社製)68g、ポリエーテルポリオールGL-3000(3官能ポリエーテルポリオール、EO/PO=20/80重量%、OH価56、分子量3000、旭電化株式会社製)265g、トルエン125g、塩化リチウム10g、触媒としてDBTDL0.10g、2-エチルヘキサン酸錫0.05gを仕込み、液が十分均一になった後に、ヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエル株式会社製)24gを1時間で滴下して、90℃で2時間反応を行った。 赤外分光光度計(IR)でイソシアネート基の消失を確認した後、冷却してトルエン115gを加えた。この反応溶液は無色透明で固形分60%、粘度3,400cps、Mw(重量平均分子量)55,000であった。 【0061】 合成例4 撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにポリエステルポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、OH価112、分子量1,000、クラレ株式会社製)68g、ポリエーテルポリオールGL-3000(3官能ポリエーテルポリオール、EO/PO=20/80重量%、OH価56、分子量3000、旭電化株式会社製)265g、トルエン125g、過塩素酸リチウム10g、触媒としてDBTDL0.10g、2-エチルヘキサン酸錫0.05g、及びヘキサメチレンジイソシアネート(住友バイエル株式会社製)24gを全部一括で仕込み、90℃で3時間反応を行った。 赤外分光光度計(IR)でイソシアネート基の消失を確認した後、冷却してトルエン115gを加えた。この反応溶液はやや白濁しており、固形分58%、粘度3,300cps、Mw(重量平均分子量)50,000であった。 ・・・(略)・・・ 【表1】 」 キ 引用文献7に記載された事項 「【技術分野】 【0001】 本発明は、被着体から剥離する際に剥離帯電を起こすことのない粘着シートに関する。」 「【0033】 次に、アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩、フランシウム塩等があげられる。 陰イオンとしては、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン((CF_(3)SO_(2))_(2)N^(-))、パーフルオロブチルスルホン酸イオン(C_(4)F_(9)SO_(3)^(-))、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドアニオン((C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N^(-))、トリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチドアニオン((CF_(3)SO_(2))_(3)C^(-))、テトラフェニル硼酸アニオン(BPh_(4)^(-))があげられる。 【0034】 他方、好ましい陽イオンとしては、より価数が小さい1価のイオンを有するアルカリ金属イオンがあげられ、特に好ましくは、プロトン以外で最も移動度が高いリチウムイオンを有するリチウム塩があげられる。 このようなリチウム塩としては、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CF_(3)SO_(3))_(2)N)、パーフルオロブチルスルホン酸リチウム(LiC_(4)F_(9)O_(3))、リチウムビス ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(C_(2)F_(5)SO_(2))_(2)N)、リチウムトリス(トリフルオロメチルスルホニル)メチド(Li(CF_(3)SO_(2))_(3)C)、テトラフェニル硼酸リチウム(LiBPh_(4))等があげられる。 【0035】 アルカリ金属塩の配合量は、ウレタン樹脂100質量部に対し2?10質量部が好ましい。さらに好ましくは3?7質量部である。配合量が2質量部未満では、帯電防止性が不足する場合があり、10質量部を超過しても、帯電防止性の向上はほとんどないうえ、ウレタン樹脂との相溶性が悪化することにより、粘着層からアルカリ金属塩が析出し被着体を汚染する場合がある。」 「【実施例】 【0044】 以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。 【0045】 1.粘着シートの作製 [実施例及び比較例] 以下に示す実施例及び比較例の粘着層塗布液の構成成分を、表1?2記載の固形分比(質量部)でメチルエチルケトン(MEK)と共に混合、撹拌し実施例及び比較例の粘着層塗布液(固形分41%)を得た。次に基材として、厚み125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーT-60、東レ社製)の一方の面に、乾燥後の厚みが7μmとなるよう各粘着層塗布液をバーコート法により塗布、乾燥して粘着層を形成し、セパレータとして厚み50μmのポリエチレンフィルム(M-4ブルー、タマポリ社製)と貼り合せた。次いで23℃の環境に、72時間エージングすることにより実施例及び比較例の粘着シートを作製した。 ・・・(略)・・・ 【0052】 C3:リチウムイミド塩(物質名:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、製品名:EF-N115、三菱マテリアル電子化成社製)」 「【表1】 」 (3)引用文献1に記載された発明の認定 引用文献1の請求項1には、「末端に第1級の水酸基を有し、水酸基価10?40mgKOH/gであるポリウレタン樹脂(A)100重量部、多官能イソシアネート化合物(B)1?20重量部、ならびにポリアルキレングリコール系化合物、エポキシ系化合物およびリン酸エステル系化合物から選ばれる少なくとも1種(C)10?100重量部を含有することを特徴とする再剥離型ウレタン粘着剤組成物。」との記載がある。 ここで、【表1】における実施例1?13についてみると、(C)成分として、アルキレングリコール系(モノサイザー W-260、モノサイザー W-262、アデカサイザー RS-700、アデカサイザー RS-735)、エポキシ系(サンソサイザー E-4030、サンソサイザー E-6000)、リン酸系(TOP)のうち、いずれか一つを用いることが記載されている。 そして、(C)成分の詳細はそれぞれ、【0091】の記載によれば、W-260:モノサイザーW-260(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量434、DIC製)、W-262:モノサイザーW-262(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量556)、RS-700:アデカサイザーRS-700(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量約550、アデカ製)、RS-735:アデカサイザーRS-735(ポリアルキレングリコール系化合物、分子量約850、アデカ製)、E-4030:サンソサイザーE-4030(エポキシ系化合物、分子量約350、新日本理化製)、E-6000:サンソサイザーE-6000(エポキシ系化合物、分子量約400、新日本理化製)、TOP:TOP(リン酸エステル系化合物、分子量435、大八化学工業製)と説明されている。 なお、上記「W-260」の分子量について、【0091】には「55」と記載されているが、「556」の誤記と認める(参照:www.dic-global.com/jp/ja/products/additive/modifier/high_function/polyurethane.html)。 そして、引用文献1に記載された(C)成分の分子量は、約350(サンソサイザーE-4030)?約850(アデカサイザーRS-735)であるといえる。 したがって、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「末端に第1級の水酸基を有し、水酸基価10?40mgKOH/gであるポリウレタン樹脂(A)100重量部、多官能イソシアネート化合物(B)1?20重量部、分子量350?850の化合物であって、ポリアルキレングリコール系化合物(モノサイザー W-260、モノサイザー W-262、アデカサイザー RS-700、アデカサイザー RS-735)、エポキシ系化合物(サンソサイザー E-4030、サンソサイザー E-6000)、及び、リン酸エステル系化合物(TOP)からなる群より選択される1種の化合物(C)を10?100重量部含有する、再剥離型ウレタン粘着剤組成物。」(以下、「引用発明1」という。) (4)引用発明1と本件発明1との対比 引用発明1における「末端に第1級の水酸基を有し、水酸基価10?40mgKOH/gである水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)」、「多官能イソシアネート化合物(B)」、及び、「再剥離型ウレタン粘着剤組成物」はそれぞれ、本件発明1における「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)」、「多官能イソシアネート化合物(B)」、及び、「ウレタン系粘着剤組成物」に相当している。 また、引用発明1における「ポリアルキレングリコール系化合物(モノサイザー W-260、モノサイザー W-262、アデカサイザーRS-700、アデカサイザーRS-735)」は、本件明細書の【0030】にポリエーテルエステル化合物の製品として例示される「モノサイザー W-260」、「モノサイザー W-262」、「アデカサイザー RS-700」、「アデカサイザーRS-735」と同一であることから、本件発明1における「ポリエーテルエステル化合物」に相当し、引用発明1における「エポキシ系化合物(サンソサイザーE-4030、サンソサイザーE-6000)」は、本件明細書の【0029】にエポキシ化脂肪酸エステル化合物の製品として例示される「サンソサイザーE-4030」、「サンソサイザーE-6000」と同一であることから、本件発明1における「エポキシ化脂肪酸エステル化合物」に相当し、引用発明1における「リン酸エステル系化合物(TOP)」は、本件明細書の【0031】にリン酸エステル化合物の製品として例示される「TOP」と同一であることから、本件発明1における「リン酸エステル化合物」に相当しているといえ、これらは、本件発明1と同様に、水酸基及びイソシアネート基を含有しないといえる。 さらに、これらの3種の化合物の分子量に関し、引用発明1における(C)成分と本件発明における(C)成分とを対比すると、引用発明1は「分子量350?850の化合物」であるのに対し、本件発明における(C)成分は、「分子量250?1000の化合物」であるから、分子量350?850の範囲で重複している。 加えて、(C)成分の含有量に関し、引用発明1は、「ポリウレタン樹脂(A)100重量部」に対し、「(C)を10?100重量部含有する」ものであるから、このことは、本件発明1の「(C)成分を(A)成分100重量部に対して10?100重量部含有する」に相当している。 したがって、引用発明1と本件発明1とを対比した場合の一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量350?850の化合物であって、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物及びリン酸エステル化合物からなる群より選択される1種の化合物(C)を(A)成分100重量部に対して10?100重量部含有する、ウレタン系粘着剤組成物。」 <相違点1> ポリウレタン樹脂(A)に関し、本件発明1においては、「ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いて製造」しているものに特定しているのに対し、引用発明1においては、それが特定されていない点。 <相違点2> イオン化合物(D)に関し、本件発明1においては、「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)を含有し、(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部、(D)成分を(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部含有」しているのに対し、引用発明1においては、それが特定されていない点。 (5)相違点についての検討 相違点1について検討する。 引用文献1の【0003】には、「ポリウレタン樹脂に用いられるポリオール成分としては、ポリエーテルポリオールあるいはポリエステルポリオールがよく知られており、このうち、ポリエーテルポリオールを使用したウレタン粘着剤は、柔軟性が出て粘着力は向上するが、凝集力が低下して糊残りしやすくなるといった問題点がある。」との記載、すなわち、ポリウレタン樹脂に用いるポリオール成分として、ポリエーテルポリオールのみを用いると、糊残りという問題がある旨記載されている。 そして、引用文献1の【0018】には、「(A)成分は、ポリエーテル系ポリオールとポリエステル系ポリオールと多官能イソシアネート化合物とをウレタン反応触媒の存在又は非存在下で重合反応させて得られる。」と記載され、ポリウレタン樹脂(A)成分は、ポリエーテル系ポリオールに加えて、ポリエステル系ポリオールをも用いることが前提となっていることがわかる。 さらに、実施例をみても、すべての合成例1?8において「クラレポリオールP-1010」というポリエステルポリオールを用いており、ポリエーテルポリオールのみを用いたポリウレタン樹脂(A)についての開示はない。 そうすると、当業者にしてみれば、【0016】の記載によれば被着体に糊残りが生じにくいとしている引用発明1のポリウレタン樹脂(A)に用いるポリオール成分として、あえて糊残りが生じやすいとされるポリエーテルポリオールのみを採用する動機はないといえる。 そして、引用文献2?7を参酌したとしても、ポリウレタン樹脂(A)に用いるポリオール成分として、ポリエーテルポリオールのみを採用する根拠は見いだせない。 また、本件訂正事項7によって訂正された、本件明細書の【0018】には、「リワーク性の点から、(a1)成分は、・・・(中略)・・・ポリエーテルポリオールのみを用いることが好ましい」と記載され、実施例においても、ポリエーテルポリオールのみを用いた場合(実施例1?11、14)は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとを併用した場合(実施例12、13)と比べ、リワーク性に優れる(粘着力が低い)という効果を奏することが具体的に示されている。 したがって、当該相違点1は実質的なものであり、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1、及び、引用文献2?7に記載の事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 (6)本件発明2、6、7について 本件発明2は、本件発明1において、「上記(A)成分がポリエーテルポリオール及び脂肪族ジイソシアネートを含有する組成物の反応物である」と特定したものであり、本件発明6は、プラスチックフィルム基材に本件発明1、2のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された粘着フィルムであり、本件発明7は、プラスチックフィルム基材に本件発明1、2のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された光学部材の表面保護用フィルムである。 そして、上記(5)で述べたとおり、本件発明1が当業者にとって容易に想到し得たとはいえないのであるから、本件発明1を引用しているこれら本件発明2、6、7についても、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 (7)まとめ 以上のとおりであるから、本件発明1、2、6、7は、引用発明1、及び、引用文献2?7に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 2 取消理由2(実施可能要件)及び取消し理由3(サポート要件)について (1)本件発明の課題について 本件発明の解決すべき課題は、「本発明は、被着体への汚染が少なく、リワーク性にも優れた帯電防止性を有する粘着剤組成物、ならびにそれを用いた粘着フィルムおよび表面保護用フィルムを提供する」(本件明細書【0007】)ことである。 (2)イオン化合物(D)について 本件訂正により、本件発明1において単に「イオン化合物(D)」と記載されていたところを、「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)」に訂正され、具体的に実施例で用いられている2種に限定された。 本件明細書の【表1】をみると、これら2種のイオン化合物(D)については、「表面抵抗率」、「汚染性」、「粘着力」の評価において、いずれも優れた効果、すなわち、帯電防止性を有し、被着体への汚染が少なく、リワーク性にも優れるという効果を奏することが示されているといえる。 したがって、本件発明1が、(D)成分として、「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)」に特定されている以上、発明の詳細な説明の記載が、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているとはいえない。また、本件発明2、、6?7についても同様である。 また、本件発明1が、(D)成分として、「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)」に特定されているから、上記課題を解決することを確認するために、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、複雑高度な実験等をする必要があるともいえず、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (3)申立人2の主張について 申立人2は、平成30年8月16日付け意見書において、「トリフルオロメタン酸リチウムについては、(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部の範囲内で本件発明の効果を奏し得ることが、本件特許明細書の記載によりサポートされていない」(第5頁)と主張している。 この点、確かにトリフルオロメタン酸リチウムについては実施例14に記載があるのみであって、実施例においては、(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部のすべての範囲内で開示されていないが、実施例が1点のみであるからといって、0.2?16重量部のすべての範囲内で効果を奏しないとはいいきれず、また、本件明細書の【0033】、【0034】、及び、実施例の記載によれば、実施例14におけるトリフルオロメタン酸リチウムを使用した場合に本件発明の効果が得られることが示され、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを使用した場合と比べて多少の違いがあるとしても、本件発明の課題を解決する上で問題となる程度ではないことを考慮すると、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと化学的構造が類似しているトリフルオロメタン酸リチウムでも、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドと同様の範囲で本件発明の効果を奏すると理解できる。 したがって、トリフルオロメタン酸リチウムについては、(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部の範囲内で本件発明の効果を奏し得ることが、本件特許明細書の記載によりサポートされていない、とまではいえない。 3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立について (1)申立1における甲第2号証を主引例とした場合について ア 引用文献2に記載された事項 甲第2号証(引用文献2:特開2015-98503号公報)には、上記「1(1)イ」で示したとおりの記載がある。 すなわち、引用文献2には、光学部材に表面を保護するためのウレタン系粘着剤において、光学部材からの表面保護フィルムの剥離に際して発生する静電気が、液晶分子の配向を損失させたりパネルの欠損を生じさせたりするため、糊残り防止性及びリワーク性に加え、優れた帯電防止性が求められること(【0009】、【0011】)、ポリウレタン樹脂は、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるものであること(【請求項1】)、ポリウレタン樹脂の濡れ速度を向上させるために、好ましくは、数平均分子量Mnが200?400の脂肪酸エステルを配合すること(【0069】、【0071】)、また、その脂肪酸エステルの含有割合は、ポリオール(A)に対して、好ましくは5重量%?50重量%(ポリオール(A)100重量部に対して5?50重量部)であることが記載されている(【0070】)。 また、ウレタン系粘着剤には帯電防止性を付与するために、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、又はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等の、アルカリ金属塩を含むイオン性液体を所定量配合することが記載され(【0113】、【0128】、【表10】)、具体的には、【表10】によると、イオン性液体の配合量は、ポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、及び、脂肪酸エステルの合計配合量148重量部に対し、0.01、0.1、1又は10重量部であるから、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)と脂肪酸エステルの合計100重量部に対しては、約0.0068、約0.068、約0.68、又は約6.8重量部と計算され、また、脂肪酸エステル30重量部に対し、0.01、0.1、1又は10重量部であるから、脂肪酸エステル100重量部に対しては、約0.03、約0.33、約3.3又は約33重量部と計算される。 イ 引用発明の認定 以上の記載からすれば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2-1」という。)が記載されていると認められる。 「ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)とを含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン樹脂、数平均分子量Mnが200?400の脂肪酸エステル、並びに、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等のアルカリ金属塩を含むイオン性液体を含有し、前記イオン性液体をポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、及び脂肪酸エステルの合計100重量部に対して約0.0068、約0.068、約0.68、又は約6.8重量部、かつ、脂肪酸エステル100重量部に対して、約0.03、約0.33、約3.3又は約33重量部含有し、前記脂肪酸エステルを、ポリオール(A)100重量部に対して5?50重量部含有するウレタン系粘着剤」 ウ 引用発明2-1と本件発明1との対比・判断 引用発明2-1の「脂肪酸エステル」は、本件明細書の【0028】に(C)成分として例示されており、その例示化合物(引用文献2の【0072】)からみて水酸基及びイソシアネート基を含有していない。また、本件発明1の化合物(C)の分子量は、式量又は数平均分子量であるから(本件明細書の【0027】)引用発明2-1の「数平均分子量Mnが200?400の脂肪酸エステル」は、本件発明1における「水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物であって、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物及びリン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)」と「脂肪酸エステル」を含む点で一致している。 また、引用発明2-1の「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等のアルカリ金属塩を含むイオン性液体」は、本件発明1における「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)」に相当している。 そして、引用発明2-1の「アルカリ金属塩を含むイオン性液体を含有し、前記イオン性液体を」「脂肪酸エステル100重量部に対して、約0.03、約0.33、約3.3又は約33重量部含有」することは、本件発明1における「イオン化合物(D)を含有し、(D)成分を」「(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部含有」することと、脂肪酸エステル100重量部に対して約0.33又は約3.3重量部含有する点で一致している。 また、引用発明2-1の「ウレタン系粘着剤」は、複数の成分を含む組成物であるから、本件発明1の「ウレタン系粘着剤組成物」に相当している。 したがって、引用発明2-1と本件発明1とを対比すると、一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「脂肪酸エステル(C)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等のイオン化合物(D)を含有し、(D)成分を(C)成分の合計100重量部に対して約0.33又は約3.3重量部含有する、ウレタン系粘着組成物」 <相違点1> 本件発明1は、「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)」を含有するウレタン系粘着剤組成物であるのに対し、引用発明2-1は、「ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)とを含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン樹脂」を含有するウレタン系粘着組成物である点。 <相違点2> (D)成分の含有量に関し、本件発明1は、「(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部」含有するのに対し、引用発明2-1は、「ポリオール(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、及び脂肪酸エステルの合計100重量部に対して約0.0068、約0.068、約0.68、又は約6.8重量部」含有する点。 <相違点3> (C)成分の含有量に関し、本件発明1は、「(A)成分100重量部に対して10?100重量部」含有するのに対し、引用発明2-1は、「ポリオール(A)100重量部に対して5?50重量部」含有する点。 <相違点4> ポリウレタン樹脂(A)に関し、本件発明1は、「ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いて製造」したものに特定しているのに対し、引用発明2-1は、それが特定されていない点。 エ 相違点1についての検討 周知技術を示す甲1-5(プラスチック機能性高分子材料事典)には、ポリウレタン樹脂の製造方法が紹介されている。すなわち、イソシアネートとポリオールを予め反応させイソシアネート基末端プレポリマーを合成し、これに硬化剤を混合・反応させてポリウレタン樹脂を形成するプレポリマー法と、イソシアネート以外の原料を混合した混合物を調整し、これと未変性のイソシアネートを混合・反応させてポリウレタン樹脂を成形するワンショット法とが記載されている(505頁左欄)。 また、周知技術を示す甲1-6(特開2014-162821号公報)には、表面保護フィルムを形成するためのウレタン系粘着剤の主成分であるポリウレタン系樹脂について、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から得られるポリウレタン系樹脂であるか、又は、ウレタンプレポリマー(C)を含有する組成物から得られるポリウレタン系樹脂であることが記載されている(請求項1、5、6等)。 すなわち、ウレタンポリマー(ポリウレタン樹脂)としてのポリウレタンポリオールと多官能イソシアネートを反応させる方法(いわゆるプレポリマー法)と、ポリオールと多官能イソシアネートとを一度に反応させる方法(いわゆるワンショット法)とがあることは周知であるといえる。 ここで、引用発明2-1についてみると、ポリウレタン樹脂は、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)とを含有する組成物を硬化して得られるものであるから、ワンショット法により得られるものであるといえる。他方、本件発明1についてみると、水酸基を含有するポリウレタン樹脂と多官能イソシアネート化合物(B)を反応させる方法で粘着剤のポリウレタン樹脂を得ているのであるから、上記プレポリマー法であるといえる。 つまり、相違点1は、ポリウレタン樹脂の製造方法が相違していることに伴って、(A)成分が相違しているものといえる。 ポリウレタン樹脂の製造方法に関し、引用文献2の【0076】には、「ウレタンプレポリマーを経由させて得られるポリウレタン系樹脂では、本発明の効果が発現し得ないおそれがあるため、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させてポリウレタン系樹脂を得る方法としては、好ましくは、ウレタンプレポリマーを経由させてポリウレタン系樹脂を得る方法以外の方法である。」と記載されており、つまり当業者であれば、引用発明2-1においては、好ましくはプレポリマー法を用いない方がよいと解するのが通常の理解であるから、ポリウレタンの製造方法に関する限り、引用発明2-1における「ワンショット法」を、本件発明1における「プレポリマー法」に変更させることは、当業者ならば通常行わないといえる。 また、上記二つの製造方法の相違により、分子量や架橋構造の異なるポリウレタン樹脂が得られることは技術的に明らかであって、しかも、そのようなポリウレタン樹脂に、特定量の(C)成分と(D)成分が加わるのであるから、これらを含む粘着剤組成物の物性や挙動、そして、被着体への汚染が少なく、リワーク性にも優れた帯電防止性を有するという効果については、当業者であっても予測が困難であるといえる。 したがって、ポリウレタン樹脂を製造する方法について、プレポリマー法やワンショット法などの方法があることが周知であるとしても、ワンショット法をプレポリマー法に変更するには阻害要因があって、効果の予測も困難であるから、引用発明2-1をもとに、ワンショット法をプレポリマー法に変更することは、当業者が容易になし得ることではない。 よって、引用発明2-1のワンショット法に対応する「ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)とを含有する組成物を硬化させて得られるポリウレタン樹脂」を含有するウレタン系粘着組成物を、本件発明1におけるプレポリマー法に対応する「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)」を含有するウレタン系粘着剤組成物とすることは、当業者が容易になし得ることではない。 オ 小括 上記エの相違点1で検討したとおり、相違点1は実質的な相違点であるといえるから、相違点2?4については検討するまでもなく、引用発明2-1をもとに本件発明1とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえず、本件発明1は、引用文献2を主引例とした場合については、特許法第29条第2項の規定に違反しているとはいえない。 また、本件発明2、6、7は、すべて本件発明1を引用するものであるから、本件発明2、6、7についても、引用文献2を主引例とした場合については、特許法第29条第2項の規定に違反しているとはいえない。 (2)申立2における甲2-2(特開2015-151429号公報)を主引例とした場合について ア 甲2-2には以下の記載がある。 「【請求項1】 ポリウレタンのプレポリマーおよびカルボン酸エステルを含む粘着剤であって、前記カルボン酸エステルが、下記条件(A)および(B)の少なくとも一方を満たすことを特徴とする粘着剤。 (A) 前記カルボン酸エステルが、分子中にエーテル結合を含む。 (B) 前記カルボン酸エステルが、1分子中に炭素原子を31個以上含む。」 「【請求項17】 前記化学式(II)で表されるカルボン酸エステルが、下記化学式(1001)で表されるカルボン酸エステルおよび下記化学式(1010)で表されるカルボン酸エステルの少なくとも一方である請求項12記載の粘着剤。 【化1001】 【化1010】 」 「【0005】 ウレタン粘着剤等の粘着剤を用いた粘着シート(粘着テープ)は、例えば、前記粘着剤を基材に塗工し、加熱して(必要に応じ、加熱とともに乾燥して)粘着層を形成することにより、製造することができる。 【0006】 しかし、ウレタン粘着剤を基材に塗工した後の加熱温度が低すぎると、前記粘着層の硬化(架橋反応)が不十分となり、前記基材の端からはみ出すおそれがある。また、加熱とともに乾燥(溶媒の除去)を行う場合、前記加熱温度が低すぎると、乾燥に時間を要するため、生産性の低下を招くおそれがある。一方、前記加熱温度が高すぎると、前記粘着層の、前記基材に対する密着性が低下するおそれがある。 【0007】 そこで、本発明は、粘着剤を基材に塗工した後の加熱温度を高くすることが可能で生産性がよく、かつ、前記基材と粘着層との密着性が良好な粘着剤、それを用いた粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置の提供を目的とする。」 「【0098】 また、本発明の粘着剤において、前記カルボン酸エステルの含有率は、特に限定されないが、さらに良好な基材密着性を発現する観点、および、被粘着物に対する優れた濡れ性(濡れ広がり性)を発現する観点から、本発明の粘着剤の全重量に対し、5重量%以上が好ましい。また、前記カルボン酸エステルの含有率は、塗布した粘着剤が基材の端からはみ出すことを防止する観点から、本発明の粘着剤の全重量に対し、50重量%以下が好ましい。前記カルボン酸エステルの含有率は、本発明の粘着剤の全重量に対し、より好ましくは10?30重量%、さらに好ましくは15?25重量%である。 【0099】 [1-2.カルボン酸エステル以外の成分] 本発明の粘着剤において、前記カルボン酸エステル以外の成分は、特に限定されず、例えば、一般的な粘着剤と同様またはそれに準じても良い。 【0100】 例えば、本発明の粘着剤は、前述のとおり、さらに、プレポリマーを含むことが好ましい。この場合において、本発明の粘着剤が、さらに、架橋剤を含んでいても良いが、含んでいなくても良い。粘着剤保存中の不要な架橋(硬化)等を防止する観点からは、本発明の粘着剤は、プレポリマーを含み、架橋剤を含まないことが好ましい。その場合、例えば、粘着シート製造時における前記「塗工工程」等において、本発明の粘着剤に前記架橋剤を混合等することが好ましい。 【0101】 前述のとおり、前記プレポリマーは、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオールであることがより好ましい。前記ポリウレタンポリオールの含有率は、特に限定されないが、本発明の粘着剤の全重量に対し、好ましくは70?80重量%、より好ましくは30?70重量%、さらに好ましくは40?60重量%である。この場合、本発明の粘着剤が、架橋剤として、さらに、ポリイソシアネートを含んでいても良いし、含んでいなくても良い。本発明の粘着剤が、架橋剤として前記ポリイソシアネートを含む場合、その含有率は、特に限定されないが、本発明の粘着剤の全重量に対し、好ましくは0.5?70重量%、さらに好ましくは2?10重量%である。なお、前記ポリオールおよびポリイソシアネートの種類等は、後述の「2.粘着剤の製造方法」において、本発明の粘着剤の製造方法の例示とともに述べる。」 「【0106】 なお、前記ポリウレタンポリオール含有組成物の合成においては、例えば、(1)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒、ポリイソシアネートを全量フラスコに仕込む方法、および、(2)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒をフラスコに仕込んでポリイソシアネ-トを滴下する添加する方法が可能である。(1)の方が簡便であるが、(2)の方が反応を制御しやすいため、必要に応じて使い分けることが可能である。」 「【0108】 前記ポリオールは、特に限定されず、例えば、二官能(一分子中に水酸基を二個有する)でも三官能以上(一分子中に水酸基を三個以上有する)でも良いが、三官能以上であることが好ましく、三官能であることが特に好ましい。また、前記ポリオールは、一種類のみ用いても複数種類併用しても良い。前記ポリオールは、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールの一方または両方でも良い。」 「【0114】 前記ポリイソシアネート(有機ポリイソシアネート化合物)としては、特に限定されないが、例えば、公知の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。また、ポリイソシアネートは、一種類のみ用いても複数種類併用しても良い。」 「【0116】 前記脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。」 「【0149】 なお、前記表3中、「グリセリンPO・EO」は、グリセリンのプロピレンオキシドおよびエチレンオキシド付加物を表す。「DBTDL」は、ジブチルスズジラウレートを表す。また、脂肪酸エステルは、下記化学式(1001)で表され、nが平均12(分布を有する)の脂肪酸エステルであり、1分子中の炭素数は平均40である。 」 すなわち、引用文献2には、ポリウレタンのプレポリマーおよびカルボン酸エステルを含む粘着剤に関し(【請求項1】)、カルボン酸エステルが、化学式(1001)で表されるカルボン酸エステルであること(【請求項17】)、プレポリマーは、ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオールであることがより好ましいこと(【0101】)、粘着剤が、架橋剤として、さらに、ポリイソシアネートを含んでいても良いこと(【0101】)、脂肪酸エステルは、例えば、上記化学式(1001)で表され、nが平均12(分布を有する)の脂肪酸エステルであること(【0149】)が記載されている。 イ 引用発明の認定 以上の記載からすれば、甲2-2には次の発明(以下、「引用発明2-2」という。)が記載されていると認められる。 「ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオール、ポリイソシアネート、及び、下記化学式(1001)で表され、nが平均12(分布を有する)の脂肪酸エステルを含有する粘着剤(式省略)」 ウ 本件発明1と引用発明2-2とを対比 引用発明2-2における「ポリオールおよびポリイソシアネートから合成されるポリウレタンポリオール」、「ポリイソシアネート」はそれぞれ、本件発明1における「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)」、「多官能イソシアネート化合物(B)」に相当している。 また、引用発明の2-2の「化学式(1001)で表され、nが平均12(分布を有する)の脂肪酸エステル」は、分子量が平均798の、水酸基及びイソシアネート基を含有しないポリエーテルエステル化合物であるから、本件発明1の「水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物であって、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物及びリン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)」に相当している。 そして、引用発明2-2の「粘着剤」は、ポリウレタンを含むから、本件発明1の「ウレタン系粘着剤組成物」に相当している。 したがって、引用発明2-2と本件発明1とを対比すると、一致点、相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、及び、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物であって、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物及びリン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)を含有するウレタン系粘着剤組成物。」 <相違点1’> 帯電防止剤(導電性付与剤)に関し、本件発明1は、「リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)を含有し、(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部、(D)成分を(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部含有」しているのに対し、引用発明2-2は、帯電防止剤(導電性付与剤)を含有していない点 <相違点2’> (C)成分の含有量に関し、本件発明1は、「(C)成分を(A)成分100重量部に対して10?100重量部含有」しているのに対し、引用発明2-2は、含有量を特定していない点 <相違点3’> ポリウレタン樹脂(A)に関し、本件発明1は、「ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いて製造」したものに特定しているのに対し、引用発明2-2は、それが特定されていない点。 エ 相違点1’についての検討 本件発明が解決すべき課題は、上記2(1)でも述べたとおり、「被着体への汚染が少なく、リワーク性にも優れた帯電防止性を有する粘着剤組成物、ならびにそれを用いた粘着フィルムおよび表面保護用フィルムを提供する」(本件明細書【0007】)ことであり、この課題を解決する手段としては、「水酸基を含有するポリウレタン樹脂、多官能イソシアネート化合物、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物、並びにイオン化合物を組み合わせた組成物にすること」(本件明細書【0008】)である。 他方、引用発明2-2について、甲2-2の明細書をみると、「本発明は、粘着剤を基材に塗工した後の加熱温度を高くすることが可能で生産性がよく、かつ、前記基材と粘着層との密着性が良好な粘着剤、それを用いた粘着シート、粘着シートの製造方法、および画像表示装置の提供を目的とする。」と記載され(【0007】)、明細書全体をみても、帯電防止性についての課題は全く記載されていない。 したがって、当業者にしてみれば、引用発明2-2をもとに帯電防止剤である特定量の(D)成分を添加しようとする動機はない。そして、一般に、保護フィルムに対し帯電防止剤を含有させることが周知技術であるとしても、(D)成分を「(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部かつ(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部」含有するように特定することは、当業者にとって容易になし得るとはいえない。 オ 小括 以上のとおり、相違点1’は実質的な相違点であるといえるから、相違点2’、3’については検討するまでもなく、引用発明2-2をもとに本件発明1とすることは、当業者が容易になし得ることであるとはいえず、本件発明1は、甲2-2を主引例とした場合については、特許法第29条第2項の規定に違反しているとはいえない。 また、本件発明2、6、7は、すべて本件発明1を引用するものであるから、本件発明2、6、7についても、甲2-2を主引例とした場合については、特許法第29条第2項の規定に違反しているとはいえない。 (3)申立2における(A)?(D)成分の含有量に関する実施可能要件及びサポート要件違反について 申立人2は、申立書において、「本件特許出願時の技術常識を参酌しても、(A)?(D)の各成分を、それぞれ、ある程度以上の含有量(比率)に関わらず、前記各成分を含有してさえいれば、本件特許発明の効果を奏する剤となることが予測可能であるとはいえない。」、「したがって、本件出願時の技術常識を参酌しても、本件特許明細書に記載されている発明を本件特許発明の範囲まで拡張ないし一般化できるとは考えられない。また、本件特許明細書は、当業者が本件特許発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」と主張している。 しかしながら、本件発明1は、平成30年6月28日付けで提出された訂正請求書による認容された訂正により、(D)成分について、実施例の記載を根拠にして、「(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部含有」すると特定され、さらに、「(C)成分を(A)成分100重量部に対して10?100重量部含有」すると特定され、すなわち、(C)成分、及び、(D)成分の含有量が特定範囲に限定されている。 よって、(A)?(D)成分の「含有量」に着目してみれば、本件明細書に記載されている発明を本件発明の範囲まで拡張ないし一般化できないとはいえず、また、本件明細書は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、平成30年1月10日付けで通知した取消理由、平成30年5月7日付けで通知した取消理由(決定の予告)、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、2、6、7に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、2、6、7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件発明3?5は削除されたので、本件発明3?5に係る異議申立ては却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 ウレタン系粘着剤組成物、これを用いて得られる粘着フィルム及び表面保護用フィルム 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は帯電防止性を有するウレタン系粘着剤組成物、これを用いて得られる粘着フィルム及び表面保護用フィルムに関するものである。 【背景技術】 【0002】 偏向板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム等の光学部材の表面の汚れや傷付きを防止する目的で、表面保護フィルムが広く利用されている。表面保護フィルムは、基材フィルムの片面に、微粘着力の粘着剤層を設けた構成を有する。 【0003】 表面保護フィルムは不要になった段階で剥離して除去されるが、光学部材から剥離除去する際に静電気が発生する。光学部材に静電気が残ったままの状態で液晶に電圧を印加すると、液晶分子の配向が損失し、パネルの欠損が生じてしまう問題がある。また、静電気の存在は、塵埃を付着させたり、作業性を低下させたりする要因ともなり得る。 【0004】 そこで、これらの静電気の発生を防止するために、粘着剤層に帯電防止機能を付与する要求が高まっており、帯電防止剤を添加した帯電防止粘着剤、帯電防止性粘着層が開発されている。例えば、特許文献1では、塩酸塩、過塩素酸塩等のイオン化合物を含有したポリウレタン系粘着剤、特許文献2では、アルカリ金属を配合したポリウレタン系粘着剤が提案されている。 【0005】 しかしこれらの方法では、充分な帯電防止性を発現させるためにはイオン化合物を多く添加する必要がある。その結果、表面保護フィルムを光学部材に貼着した状態が長く続くと、ブリード現象によりイオン化合物が被着体を汚染してしまう問題を有している。また、粘着力の経時上昇性が高く、重剥離化してしまうため、リワーク性に劣るという問題があった。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】 特開2005-154491号公報 【特許文献2】 特開2015-91922号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、被着体への汚染が少なく、リワーク性にも優れた帯電防止性を有する粘着剤組成物、ならびにそれを用いた粘着フィルムおよび表面保護用フィルムを提供する。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者は、前記課題を解決すべく、水酸基を含有するポリウレタン樹脂、多官能イソシアネート化合物、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物、並びにイオン化合物を組み合わせた組成物にすることにより、上記課題を解決することを見出した。 【0009】 すなわち、本発明は、水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物(C)並びにイオン化合物(D)を含有し、(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部含有するウレタン系粘着剤組成物である(本発明1)。 【0010】 本発明2は、本発明1における(A)成分が、ポリエーテルポリオール及び脂肪族ジイソシアネートを含有する組成物の反応物であるウレタン系粘着剤組成物である。 【0011】 本発明3は、本発明1または2のいずれかにおいて、(C)成分が(A)成分100重量部に対して10?100重量部であるウレタン系粘着剤組成物である。 【0012】 本発明4は、本発明1?3のいずれかにおいて、(D)成分がリチウム塩であるウレタン系粘着剤組成物である。 【0013】 本発明5は、本発明1?4のいずれかにおいて、(D)成分がリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるウレタン系粘着剤組成物である。 【0014】 本発明6は、プラスチックフィルム基材に本発明の1?5のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された粘着フィルムである。 【0015】 本発明7は、プラスチックフィルム基材に本発明の1?5のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された光学部材の表面保護用フィルムである。 【発明の効果】 【0016】 本発明のウレタン系粘着剤組成物は、従来の帯電防止ウレタン系粘着剤よりも少ないイオン化合物の添加で帯電防止性が発現するため、イオン化合物がブリードすることによって生じる被着体への汚染が少ない。また、粘着力の経時上昇性が低く、リワーク性に優れるため、光学部材の表面を汚れや傷から保護する保護フィルム用粘着剤として好適である。 【発明を実施するための形態】 【0017】 本発明のウレタン系粘着剤組成物(以下、単に、「粘着剤」という場合がある)は、水酸基を含有するウレタン樹脂(A)(以下、「(A)成分」という。)、多官能イソシアネート化合物(B)(以下、「(B)成分」という。)、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物(C)(以下、「(C)成分」という。)、ならびにイオン化合物(D)(以下、「(D)成分」という。)を含有し、(D)成分が(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部含有することを特徴とする。 【0018】 [(A)成分] 上記(A)成分は、水酸基を含有するポリウレタン樹脂であれば特に限定されることなく使用することができ、ポリオール(a1)(以下、「(a1成分)」という)と多官能イソシアネート化合物(a2)(以下、「(a2成分)」という)とを反応させて得られるものを用いることができる。上記(a1)成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、前記ポリオールの水酸基数は、1分子中に2?4個の範囲であることが好ましい。これらの中でも、リワーク性の点から、(a1)成分は、ポリエーテルポリオールのみ、又は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとの併用が好ましく、同様の点からポリエーテルポリオールのみを用いることがより好ましい。 【0019】 上記ポリエーテルポリオールとは、メチレンオキサイド鎖、エチレンオキサイド鎖、プロピレンオキサイド鎖、ブチレンオキサイド鎖等のアルキレンオキサイド鎖の繰り返し構造をそれぞれ単独で、あるいは2種類以上有するものが使用できる。これらの中でもイソシアネート基との反応性が優れる点から第1級水酸基を有するものが好ましく、具体的には、ポリエチレングリコール、末端ポリエチレングリコールキャップのポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールの数平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフ法によるポリスチレン換算値)は、特に限定されないが、合成時の反応制御がより容易になる点で数平均分子量が700?5,000程度のものが好ましく、より好ましくは1,000?4,000程度である。 【0020】 上記(A)成分の合成に用いるポリエステルポリオールとしては、公知のポリエステルポリオールが用いられる。酸成分としてアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等が挙げられ、アルコール成分としてエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。その他、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も挙げられる。ポリエステルポリオールの数平均分子量は、特に限定されないが、合成時の反応制御がより容易になる点で700?5,000程度のものが好ましく、より好ましくは1,000?4,000程度である。 【0021】 また、本発明では必要に応じて(a1)成分の一部を、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ダイマージオール、ヒマシ油ポリオール等の低分子ポリオール類、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類に置き換えて併用することができる。 【0022】 上記(A)成分の合成に用いる(a2)成分としては、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ジイソシアナートメチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネートなどを用いることができる。これらの多官能イソシアネート化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、変色を抑制できる点から、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートを用いることが好ましく、合成時の反応制御がより容易になる点で脂肪族ジイソシアネートがより好ましい。 【0023】 また、(a2)成分には、上記ジイソシアネートのアダクト体、ビュウレット体、イソシアヌレート体等も併用することができる。 【0024】 上記(A)成分の製造方法としては、(a2)成分が有するイソシアネート基のモルに対し、(a1)成分が有する水酸基のモルが過剰となるように両者を反応させる方法が挙げられる。なお、上記反応は、後述する有機溶媒中で行ってもよい。上記(a1)成分が有する水酸基と(a2)成分が有するイソシアネート基とのモル比(OH/NCO)としては、反応性制御の容易性及び粘着フィルムの機械的強度の点から、1.1?2.5の範囲であることが好ましく、1.2?1.8の範囲がより好ましい。上記(A)成分の数平均分子量としては、作業性において粘着剤の粘度が適度となる点で、8,000?30,000の範囲であることが好ましく、10,000?25,000の範囲がより好ましい。なお、(A)成分の数平均分子量は、上記(a1)成分の数平均分子量と同様に測定した値を示す。 【0025】 上記ウレタン反応に使用する有機溶剤としては、公知のものを使用できる。具体的には、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトン等を例示できる。 【0026】 [(B)成分] 本発明に用いられる(B)成分としては、上記の(A)成分の合成に使用する多官能イソシアネート化合物、及び上記多官能イソシアネート化合物のアダクト体、ビュウレット体、またはイソシアヌレート体等が挙げられる。硬化性の点から3官能以上が好ましく、中でもアダクト体、イソシアヌレート体が好ましい。(B)成分配合量は、機械的強度の点から(A)成分100重量部に対して1?20重量部であることが好ましく、同様の点から5?15重量部がより好ましい。 【0027】 [(C)成分] 本発明の(C)成分は、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物であれば、特に限定されることなく使用することができる。(A)成分、及び(B)成分とも反応しない(C)成分を配合することで、後述のイオン化合物(D)の導電性を向上させることができ、少量の(D)成分の添加で帯電防止性を発現させることができるため、(D)成分の被着体への汚染を抑制することができる。また、(C)成分の配合により経時での粘着力の上昇を抑制できるため、リワーク性に優れた粘着剤を提供することができる。なお(C)成分の分子量は、式量または数平均分子量であり、化学式の式量で分子量を特定できる場合は式量をいう。数平均分子量は、上記同様にゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算の値である。 【0028】 上記(C)成分の具体例としては、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物、リン酸エステル化合物、脂肪族エステル化合物、脂環式エステル化合物、芳香族エステル化合物などが挙げられ、これらの化合物は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの中でも導電性をより向上させる点で、25℃で液状であり、かつ粘度が200mPa・s以下であるものがより好ましく、さらに(A)成分との相溶性の点からエポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物、リン酸エステル化合物が好ましい。 【0029】 上記エポキシ化脂肪酸エステル化合物としては、エポキシ化菜種脂肪酸ブチル、エポキシ化菜種脂肪酸オクチル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシヘキサヒドロフタル酸オクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリル等を挙げることができる。具体的には、アデカサイザーD-32、D-55、O-130P、O-180A(アデカ製)、サンソサイザーE-PS、nE-PS、E-PO、E-4030、E-6000、E-2000H、E-9000H(新理本理化製)が挙げられ、(A)成分との相溶性の点からアデカサイザーD-55、サンソサイザーE-4030が好ましい。 【0030】 上記ポリエーテルエステル化合物としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド)ブロックおよび/又はランダム共重合体、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノール類のエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノール類のテトラヒドロフラン付加重合体などのポリアルキレングリコールの末端エステル変性化合物などを挙げることができる。具体的には、モノサイザーW-260、W-262(DIC製)、アデカサイザーRS-107、RS-700、RS-735、RS-966、RS-1000(アデカ製)などが挙げられる。中でも、(A)成分との相溶性の点からモノサイザーW-262、アデカサイザーRS-700、RS-735が好ましい。 【0031】 上記リン酸エステル化合物としては、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル、リン酸オクチルジフェニルおよびリン酸トリクレシルなどを挙げることができる。具体的には、TBP、TOP、TPP、TCP、TXP、CDP(大八化学工業製)などが挙げられ、中でも、(A)成分との相溶性の点から、TOPが好ましい。 【0032】 上記(C)成分の配合量は、導電性向上、およびリワーク性の点から(A)成分100重量部に対して10?100重量部であることが好ましく、(A)成分100重量部に対して20?50重量部がより好ましい。10重量部未満であると帯電防止性を発現しにくくなるだけでなく、リワーク性も低下してしまい、100重量部以上にすると被着体への汚染が生じやすくなる。 [(D)成分] 【0033】 本発明に用いられる(D)成分は、アニオンとカチオンを含む化合物であれば特に限定されず、公知の有機系のイオン化合物、及び無機系のイオン化合物も使用することができる。これらの化合物は単独で使用しても良く、また二種類以上を混合して使用しても良い。これらの中でも、導電性向上の点からアルカリ金属塩であることが好ましく、リチウム塩が特に好ましい。具体的には、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、六フッ化リン酸リチウム、リチウムチオシアナート、メタンスルホン酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、パーフルオロブチルスルホン酸リチウム、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド等が挙げられる。これらの中でも、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上がより好ましい。 【0034】 上記(D)成分の配合量は、帯電防止性の発現と被着体への汚染の点から(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部であることが好ましく、同様の点から0.1?2重量部がより好ましい。 【0035】 本発明のウレタン系粘着剤組成物は、上記(A)成分?(D)成分を配合することによって製造することができる。上記各成分の配合方法は、特に限定されず、どの成分から混合しても良い。また、必要に応じ、希釈溶剤として、上記の有機溶剤を用いることができる。 【0036】 本発明のウレタン系粘着剤組成物には必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、酸化チタン等の充填剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、光安定剤、防錆剤、レベリング剤等の添加剤を配合しても良い。 【0037】 本発明の粘着フィルムは、基材フィルムに本発明のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成されたものである。基材フィルムとしては、例えば、プラスチックフィルム、プラスチックシート、紙、合成紙、金属箔などが例示できる。本発明の粘着剤は、帯電防止性、汚染性、リワーク性などに優れるので、光学特性に優れる基材フィルムと組み合わせ、光学部品の表面保護のための粘着フィルムに適用することが好ましい。 【0038】 上記粘着層は、上記(A)成分?(D)成分を含む粘着剤組成物を上記基材フィルムへ塗工することによって、形成される。 【0039】 本発明において塗工方法としては、従来公知の方法が使用でき、例えばロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法などが使用できる。 【0040】 また必要に応じて、これら基材フィルムの粘着剤と接する面に、易接着処理を施してもよい。易接着処理の方法としては、例えば、コロナ放電を処理する方法やアンカーコート剤を塗布する方法などが挙げられる。 【0041】 本発明において、粘着層の厚み(乾燥後の厚み)は、粘着フィルムの用途によっても異なるが、5?50μmが好ましい。 【0042】 上記ウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された光学部材の表面保護用フィルムもまた本発明の1つである。該光学部材としては、例えば、偏向板、位相差板、ディスプレイ用のレンズフィルム、プリズムシート、ハードコートフィルム、透明導電性フィルム、タッチパネル、カバーシート、カラーフィルター、ウインドウフィルム等が挙げられる。本発明の粘着層は帯電防止性とリワーク性に優れるため、特に偏向板、透明導電性フィルム、タッチパネル等が好適である。 【実施例】 【0043】 以下に実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各例中、特記しない限り、%は重量基準である。 【0044】 合成例1 ポリウレタン樹脂溶液(A-1)の合成 撹拌器、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備え付けた4口フラスコにアデカポリエーテルAM-302(末端ポリエチレングリコーキャップの3官能ポリプロピレングリコール、数平均分子量3,000、アデカ製)150部、PTMG1000(2官能ポリテトラメチレングリコール、数平均分子量1,000、三菱化学製)50部、ヘキサメチレンジイソシアネート(東ソー製)15部加え、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部、トルエン143部仕込み、80℃まで徐々に昇温し、4時間反応を行った。IRを用いてイソシアネート基の消滅を確認してから冷却し、ポリウレタン樹脂溶液(A-1)(不揮発分 60%)を得た。このポリウレタン樹脂の数平均分子量は15,000であった。 【0045】 合成例2 ポリウレタン樹脂溶液(A-2)の合成 撹拌器、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備え付けた4口フラスコにアデカポリエーテルAM-302 150部、クラレポリオールP-1010(2官能ポリエステルポリオール、数平均分子量1,000、クラレ製)50部、ヘキサメチレンジイソシアネート14部加え、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部、トルエン143部仕込み、80℃まで徐々に昇温し、4時間反応を行った。IRを用いてイソシアネート基の消滅を確認してから冷却し、ポリウレタン樹脂溶液(A-2)(不揮発分 60%)を得た。このポリウレタン樹脂の数平均分子量は14,000であった。 【0046】 合成例3 ポリウレタン樹脂溶液(A-3)の合成 撹拌器、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備え付けたクラレポリオールF-3010(3官能脂肪族系ポリエステルポリオール、数平均分子量3,000、クラレ製)100部、クラレポリオールP-1010 50部、ヘキサメチレンジイソシアネート 14部加え、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.1部、トルエン143部仕込み、80℃まで徐々に昇温し、4時間反応を行った。IRを用いてイソシアネート基の消滅を確認してから冷却し、ポリウレタン樹脂溶液(A-3)(不揮発分 60%)を得た。このポリウレタン樹脂の数平均分子量は14,000であった。 【0047】 <評価方法> 1、塗工方法 (実施例1) ポリウレタン樹脂(A)として合成例1で合成したポリウレタン樹脂溶液(A-1)167重量部((A)成分として100重量部)に対して、多官能イソシアネート化合物(B)としてコロネートHX(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体 東ソー製)を10重量部と、(C)成分としてサンソサイザーE-4030(エポキシ化脂肪酸ブチル、分子量350、粘度20mPa・s、新日本理化製)を50重量部、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CF_(3)SO_(2))_(2)N)0.1重量部を配合し、粘着剤を得た。得られた粘着剤をポリエチレンテレフタレートフィルム(膜厚50μm)に乾燥塗膜10μmになるように塗工し、120℃で3分乾燥させ、粘着層が形成された粘着フィルムを得た。該粘着フィルムを用いて、表面抵抗率、汚染性、及び粘着力を評価し結果した。各評価試験の結果を表1に示す。 【0048】 <表面抵抗率> 粘着層の表面抵抗率(Ω/□)をハイレスターUP MCP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用い、温度23℃-50%RHの環境下で測定した。表面抵抗率が小さいほど、帯電防止性能が良好であることを意味する。 【0049】 <汚染性> 粘着剤層をガラス板に貼着した後、60℃-90%RHの環境下に24時間放置した。その後、23℃-50%RHに取り出し30分間放置した後、汚染性を目視で評価した。評価基準は以下のとおりである。 ○:ガラス板への粘着剤層移行の全くないもの △:ガラス板への粘着剤層移行がわずかであるもの ×:ガラス板への粘着剤層が移行しているもの 【0050】 <粘着力> 25mm×80mmの試験片を準備する。23℃-50%RHの環境下で粘着剤層をガラス板に貼着し、2kgのローラーを1往復させる方式で圧着した。24時間後に300mm/minの引張速度で180°方向に引き剥がし、粘着力(単位:N/25mm)を測定した。 【0051】 (実施例2) (D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.4重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0052】 (実施例3) (D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0053】 (実施例4) (D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを3.2重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0054】 (実施例5) (D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0055】 (実施例6) (C)成分としてサンソサイザーE-4030 10重量部、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.6重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0056】 (実施例7) (C)成分としてサンソサイザーE-4030 25重量部、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.7重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0057】 (実施例8) (C)成分としてサンソサイザーE-4030 100重量部、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを1.1重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0058】 (実施例9) (C)成分としてアデカサイザーRS-700(ポリエーテルエステル化合物、分子量550、粘度30mPa・s、アデカ製)50重量部、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0059】 (実施例10) (C)成分としてアデカサイザーRS-735(ポリエーテルエステル化合物、分子量850、粘度80mPa・s、アデカ製)(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0060】 (実施例11) (C)成分としてTOP(リン酸トリオクチル、分子量435、粘度30mPa・s、大八化学工業製)(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0061】 (実施例12) (A)成分としてポリウレタン樹脂溶液(A-2)167重量部((A)成分として100重量部)、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0062】 (実施例13) (A)成分としてポリウレタン樹脂溶液(A-3)167重量部((A)成分として100重量部)、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0063】 (実施例14) (D)成分としてトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(CF_(3)SO_(3)Li)を0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0064】 (比較例1) (C)成分を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0065】 (比較例2) (D)成分を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0066】 (比較例3) (D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを16重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0067】 (比較例4) (C)成分としてクラレポリオールP-510(2官能ポリエステルポリオール、数平均分子量500、クラレ製)を10重量部、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.6重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【0068】 (比較例5) (C)成分としてポリサイザーW-1410(ポリエステル化合物、数平均分子量1,500、粘度600mPa・s、DIC製)を50重量部、(D)成分としてリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを0.8重量部とした以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、同様に評価した。 【表1】 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ポリオールとしてポリエーテルポリオールのみを用いて製造した水酸基を含有するポリウレタン樹脂(A)、多官能イソシアネート化合物(B)、水酸基及びイソシアネート基を含有しない分子量250?1000の化合物であって、エポキシ化脂肪酸エステル化合物、ポリエーテルエステル化合物及びリン酸エステル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)並びにリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びトリフルオロメタンスルホン酸リチウムのいずれか1種以上であるイオン化合物(D)を含有し、(D)成分を(A)?(C)成分の合計100重量部に対して0.05?5重量部、(D)成分を(C)成分の合計100重量部に対して0.2?16重量部含有し、(C)成分を(A)成分100重量部に対して10?100重量部含有することを特徴とするウレタン系粘着剤組成物。 【請求項2】 上記(A)成分がポリエーテルポリオール及び脂肪族ジイソシアネートを含有する組成物の反応物である請求項1記載のウレタン系粘着剤組成物。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 (削除) 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 プラスチックフィルム基材に請求項1、又は2のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された粘着フィルム。 【請求項7】 プラスチックフィルム基材に請求項1、又は2のいずれかに記載のウレタン系粘着剤組成物の粘着層が形成された光学部材の表面保護用フィルム。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2018-09-28 |
出願番号 | 特願2015-238144(P2015-238144) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C09J)
P 1 651・ 537- YAA (C09J) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松原 宜史 |
特許庁審判長 |
冨士 良宏 |
特許庁審判官 |
井上 能宏 原 賢一 |
登録日 | 2017-03-17 |
登録番号 | 特許第6108186号(P6108186) |
権利者 | 荒川化学工業株式会社 |
発明の名称 | ウレタン系粘着剤組成物、これを用いて得られる粘着フィルム及び表面保護用フィルム |