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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1345879
異議申立番号 異議2018-700389  
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2018-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-05-10 
確定日 2018-10-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第6230805号発明「毛髪化粧料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6230805号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6230805号の請求項1?4に係る特許(以下、「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成25年4月10日に出願されたものであって、平成29年10月27日にその特許権の設定登録がなされ、同年11月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、平成30年5月10日に特許異議申立人 山岡 篤実(以下、「申立人」ともいう。)から特許異議の申立てがなされ、当審は、同年7月19日付けで取消理由を通知した。それに対し、特許権者から同年9月21日付けで意見書が提出された。

第2 本件特許発明
特許第6230805号の請求項1?4に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、特許第6230805号の請求項1?4に係る発明を、その請求項に付された番号順に、「本件特許発明1」等という。)。

「 【請求項1】
(a)水系分散媒、
(b)ワックス、及び
(c)HLBが10より高く15未満である非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)を含み、(c)非イオン性界面活性剤/(b)ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上であり、かつ、イオン性界面活性剤を実質的に含有しない、透明(L値70以上)な毛髪化粧料。
【請求項2】
(d)保湿剤、(e)セット剤、(f)糖アルコールからなる群から選択される一種以上をさらに含む請求項1に記載の毛髪化粧料。
【請求項3】
(c)非イオン性界面活性剤が、POEアルキルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEヒマシ油またはPOE硬化ヒマシ油およびその誘導体からなる群から選択される一種又は二種以上である、請求項1又は2に記載の毛髪化粧料。
【請求項4】
(b)ワックスがキャンデリラロウ及びカルナバロウから選択される一種又は二種である、請求項1?3のいずれか一項に記載の毛髪化粧料。」


第3 取消理由通知に記載した取消理由の概要

平成30年7月19日付けで通知した取消理由は、本件特許発明1?3は、特開2004-262908号公報(甲第1号証)に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するものであり、本件特許発明1?4は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1?4に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものであるというものであり、具体的な理由は、以下のとおりである。

1.甲第1号証に記載された発明
下記「第6 甲1?5に記載された事項」の記載事項1-1、1-4及び1-7の記載からみて、甲第1号証には、「マイクロクリスタリンワックス1.0質量%、パラフィンワックス1.0質量%、ミツロウ2.0質量%、没食子酸-3,4-ジグルコシド0.4質量%、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油5.0質量%、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油4.0質量%、セタノール1.5質量%、セトステアリルアルコール3.0質量%、イソノナン酸イソノニル2.5質量%、ミリスリン酸イソプロピル3.0質量%、ポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテル6.0質量%、加水分解ケラチン液8.0質量%、シリコンペースト3.0質量%、アモジメチコン3.0質量%、ジヒドロキシベンゾフェノン0.1質量%、パラオキシ安息香酸プロピル0.2質量%、パラオキシ安息香酸メチル0.2質量%、クジンエキス0.6質量%、クエン酸0.5質量%、(pH4.5に調整)、香料組成物C0.1質量%、精製水残部(合計質量%=100.0質量%)含むヘアトリートメント」の発明(以下、「甲1-1発明」という。)が記載されていると認められる。

2.本件特許発明1との対比
本件特許発明1と甲1-1発明を対比すると、甲1-1発明における「精製水」、「マイクロクリスタリンワックス・・・パラフィンワックス・・・ミツロウ」、「ヘアトリートメント」は、それぞれ、本件特許発明1における「水系分散剤」、「ワックス」、「毛髪化粧料」に相当する。
また、甲1-1発明の「ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油」及び「ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油」は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)の一種であり、甲1-1発明の「ポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテル」は、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル(POE・POPアルキルエーテル)の一種であると認められるところ、当該POE硬化ヒマシ油及びPOE・POPアルキルエーテルは、本件特許発明3の記載からみて、本件特許発明1における「非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)」に含まれるものであるから、甲1-1発明の「ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油・・・ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油・・・ポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテル」は、本件特許発明1における「非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)」に該当するものである。
そして、甲1-1発明における非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)、すなわち(ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテル)/(マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、ミツロウ)(質量比)は、(5.0+4.0+6.0)/(1.0+1.0+2.0)=3.75であって、本件特許発明1で規定する「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上」の範囲内である。さらに、甲1-1発明は、その構成成分からみて、イオン性界面活性剤を含有しないものである。
そうすると、本件特許発明1と甲1-1発明は、
「(a)水系分散媒、(b)ワックス、及び(c)非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)を含み、(c)非イオン性界面活性剤/(b)ワックスの配合比率(質量比)が3.75であり、かつ、イオン性界面活性剤を実質的に含有しない、毛髪化粧料。」
で一致し、以下の点で相違している。

(相違点1)
非イオン性界面活性剤について、本件特許発明1においてはそのHLB値が10より高く15未満であると規定されているのに対し、甲1-1発明においては、そのHLBの値が不明である点。
(相違点2)
本件特許発明1の毛髪化粧料は、「透明(L値70以上)」であるのに対し、甲1-1発明の毛髪化粧料は、透明度についての記載がない点。

3.相違点1についての判断
相違点1について、甲1-1発明において使用されている非イオン性界面活性剤である、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテルのうち、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油及びポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油のHLB値は、それぞれ、14、13.5である(下記「第6 甲1?5に記載された事項」の記載事項2-1を参照。)。
そして、ポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテルのHLB値は9であると認められる(岩瀬コスファ、化粧品・原料データベース、「ユニルーブ 50MB-168」、[online]、インターネット<URL:http://www.iwasedatabase.jp/presc_detail.php?id=PS00110&t=1296397749、及び、日本エマルジョン株式会社HP、「テクノロジー」の「有機概念図による乳化処方設計とは?」の「2.2有機性値と無機性値」の「有機概念図用原料集」の第192行「PPG-38ブテス-37」、[online]、インターネット<URL:https://www.nihon-emulsion.co.jp/shared/pdf/tech/raw_materials_collection.xlsxを参照。)。
そして、甲1-1発明には、HLBが14であるポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油が5.0質量%、HLBが13.5であるポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油が4.0質量%、及びHLBが9であるポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテルが6.0質量%が配合されているから、当該各非イオン性界面活性剤の配合量とHLB値を考慮すると、それら三種の非イオン性界面活性剤全体としてのHLB値は、10?15に該当する値である蓋然性が極めて高い。
そうすると、上記相違点1は実質的な相違点とはならない。

4.相違点2についての判断
甲1-1発明における非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)は3.75である。
一方、本件特許明細書の段落【0028】には、「本発明における(c)非イオン性界面活性剤/(b)ワックスの配合比率(質量比)は、1.0以上であり、より好ましくは1.1以上である。この質量比が1.0未満では(b)ワックスを十分に可溶化できず、透明かつ安定性のよい組成物を得ることが難しい。・・・」と記載されており、また、実施例においても、当該比が2や1で透明(L値70以上)であることが記載されていることから、本件特許発明1の毛髪化粧料は、「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上」であることにより、「透明(L値70以上)」という透明度が達せられているものと理解でき、そのため、非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が3.75である甲1-1発明の毛髪化粧料も、「透明(L値70以上)」という透明度が達せられている蓋然性が極めて高い。
そうすると、上記相違点2は実質的な相違点とはならない。

5.本件特許発明1についてのまとめ
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明である。
また、甲1-1発明における非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)は3.75であるが、甲第1号証には、当該ワックスの配合量は、0.1?50%の範囲で良いことが記載されているから(下記「第6 甲1?5に記載された事項」の記載事項1-2)、当該範囲の中で、非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)を変えることも当業者が適宜なし得たことであり、それにより、当業者が予測し得ない効果が奏されるとも認められない。
したがって、上記ワックスの配合量の範囲で非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)を3.75から変えた毛髪化粧料も、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

6.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1において、「保湿剤、セット剤、糖アルコールからなる群から選択される一種以上をさらに含む」との発明特定事項を追加したものであるが、甲1-1発明の「没食子酸-3,4-ジグルコシド」は、セット性(整髪性)を向上させる成分、すなわち「セット剤」であると認められるから(下記「第6 甲1?5に記載された事項」の記載事項1-6)、 本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明である。
また、上記5.で述べた理由と同様の理由から、非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)を3.75から変えることも当業者が適宜なし得たことである。そして、甲第1号証には、甲1-1発明の毛髪化粧料には、毛髪化粧料に慣用されている各種添加成分を、所望に応じ配合できること、及びそのような添加成分として、セット剤に該当する毛髪固定用高分子樹脂や保湿剤などがあることが記載されているから(下記「第6 甲1?5に記載された事項」の記載事項1-3)、毛髪化粧料の慣用成分である毛髪固定用高分子樹脂、保湿剤及び糖アルコール(糖アルコールについては、実施例5に、糖アルコールである「ソルビット」を配合した処方例が記載されている。)を配合することも当業者が適宜なし得たことである。
したがって、本件特許発明2は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもある。

7.本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明1又は2において、「非イオン性界面活性剤が、POEアルキルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、POEヒマシ油またはPOE硬化ヒマシ油およびその誘導体からなる群から選択される一種又は二種以上である」との発明特定事項を追加したものであるが、甲1-1発明における「ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油」及び「ポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油」は、本件特許発明3における「POE硬化ヒマシ油」に、甲1-1発明における「ポリオキシエチレン(37)ポリオキシプロピレン(38)ブチルエーテル」は、本件特許発明3における「POE・POPアルキルエーテル類」に、それぞれ該当するから、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明である。
また、上記5.及び6.で述べた理由と同様の理由から、本件特許発明3は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもあると認められる。

8.本件特許発明4について
本件特許発明4は、本件特許発明1?3において、「ワックスがキャンデリラロウ及びカルナバロウから選択される一種又は二種である」との発明特定事項を追加したものであり、甲1-1発明は、当該特定ワックスを用いるものではない点で相違するが、甲第1号証には、甲第1号証で使用できるワックスの種類として、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス及びミツロウと共に、キャンデリラロウ及びカルナウバロウ(「カルナバロウ」と同義)も記載されており(下記「第6 甲1?5に記載された事項」の記載事項1-2)、さらに実施例において、ワックスとして、キャンデリラロウやカルナバロウを用いて毛髪化粧料を製造した製造例も具体的に記載されている(実施例1、6等)から、甲1-1発明において、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス及びミツロウに代えて、キャンデリラロウやカルナバロウを用いることも当業者が適宜なし得たことである。そして、そのような構成を採用することより、当業者が予測し得ない効果が奏されるとも認められない。
したがって、本件特許発明4は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 取消理由についての合議体の判断
上記「第3 取消理由通知に記載した取消理由の概要」の4.の相違点2に対する判断について、特許権者の平成30年9月21日付けの意見書における主張を踏まえて再検討したところ、本件特許発明1で規定される「透明(L値70以上)」という透明度を実現するためには、「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上」であることに加え、水相中に非イオン性界面活性剤を添加してミセルを形成し、そのミセルの中にワックスを溶解させるというような「可溶化」工程を採用する必要があるものと理解できる。
一方、甲1-1発明の毛髪化粧料は、「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上」を満たすものであるとはいえ、下記「第6 甲1?5に記載された事項」の記載事項1-7の記載から明らかなように、その製造は、上記のような「可溶化」ではなく、「乳化」によりなされており、「乳化」では白濁した組成物が得られるのに対し「可溶化」では透明又は半透明の組成物が得られるから、甲1-1発明の毛髪化粧料の透明度を本件特許発明1の透明度と同等のL値70以上であると推認することはできず、相違点2は実質的な相違点であると認められる。
そして、甲第1号証には、甲1-1発明の毛髪化粧料を透明な毛髪化粧料にしようとすることや、当該毛髪化粧料を製造するために、乳化工程ではなく可溶化工程を採用することについての記載や示唆は何らなされていない。一方、本件特許発明1は、非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)を1.0以上と規定すると共に、可溶化して透明(L値70以上)にすることにより、イオン性界面活性剤を用いずとも、セット力やアレンジ力に優れ、安定で皮膚刺激が低い毛髪化粧料の提供を可能とするものであり(本件特許明細書【0001】、【0011】、表2及び3)、これは甲第1号証の記載からは当業者といえども予測できない、格別顕著な効果であると認められる。
したがって、本件特許発明1は、上記甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。また、同様の理由から、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4についても、甲第1号証に記載された発明とはいえないし、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
よって、上記取消理由によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。


第5 申立理由の概要及び提出した証拠
1.申立理由の概要
(1)申立理由1(新規性欠如)
本件特許発明1、3及び4は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1、3及び4に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(2)申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性欠如)
本件特許発明1?4は、甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1?4に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(3)申立理由3(甲第3号証及び甲第4号証に基づく進歩性欠如)
本件特許発明1?4は、甲第3号証及び甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定する発明に該当するものであるから、本件特許発明1?4に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。

(4)申立理由4(明確性違反)
本件特許発明1?4は、不明確であるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、本件特許発明1?4に係る特許は、同法113条第4号に該当する。

(5)申立理由5(サポート要件違反)
本件特許発明1?4は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許発明1?4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものであり、同法第113条第4号に該当する。

(6)申立理由6(実施可能要件違反)
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、本件特許発明1?4を実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。

2.証拠方法
(1)甲第1号証:特開2004-262908号公報
(2)甲第2号証:特開2009-292734号公報
(3)甲第3号証:特開2006-096670号公報
(4)甲第4号証:特開2000-086456号公報
(5)甲第5号証:「化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ株式会社、平成8年11月1日、第505?517頁

(以下、「甲第1号証」?「甲第5号証」をそれぞれ「甲1」?「甲5」という。)

第6 甲1?甲5に記載された事項
1.甲1
(1)記載事項1-1(請求項1)
「(A)融点30℃以上の油脂及び/又はロウ状物質と(B)ポリフェノール類とを含有することを特徴とする毛髪化粧料。」

(2)記載事項1-2(【0007】)
「本発明に用いられる融点30℃以上の油脂及び/又はロウ状物質として、より具体的には、・・・キャンデリラロウ、カルナウバロウ、・・・ミツロウ、・・・パラフィンロウ、・・・マイクロクリスタリンワックス等・・・が挙げられ、これら油脂及び/又はロウ状物質は1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。・・・配合量は、通常0.01?60%、好ましくは0.05?55%、さらに好ましくは0.1?50%であり、・・・」

(3)記載事項1-3(【0011】)
「本発明の毛髪化粧料は、前述の必須成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、従来の毛髪化粧料に慣用されている各種添加成分を所望に応じ、配合することができる。
これらの添加成分としては、例えば塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等の陽イオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤、ポリビニルピロリドンやアルキル樹脂等の毛髪固定用高分子樹脂、メチルポリシロキサン等の高重合シリコーン化合物および変性シリコーン、架橋型シリコーン末、メチルシロキサン網状重合体、シリコングラフトポリマー、トリメチルグリシン、ヒアルロン酸等の保湿剤、タンパク加水分解物、生薬、ビタミン、殺菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、クエン酸やコハク酸等の有機酸およびその塩、炭化水素、エステル油、高級アルコール、着色剤、pH緩衝剤、香料、溶剤(エタノール)、脂肪酸、微粒子粉末等が挙げられる。
これらの添加成分は1種単独でまたは2種以上を適宜組み合わせて使用することができ、また、毛髪化粧料を調製する際の適当な段階で配合することができる。」

(4)記載事項1-4(【0015】)
「【実施例】
以下、実施例及び比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、各成分の量は質量%である。また、各例において、配合成分の合計は100質量%である。
〔実施例1、比較例1?2〕
表1に示す組成のヘアワックスを下記調製方法にて調製し、実施例1および比較例1?2の毛髪化粧料を得た。各毛髪化粧料について、セット性およびべたつきの無さを下記方法により評価した。結果を表1に併記する。」

(5)記載事項1-5(【0016】)
「調製方法
キャンデリラロウ、サラシミツロウ、ワセリン、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、流動パラフィン、油溶性の防腐剤を約80℃に加熱溶解、これに約70℃の精製水、没食子酸-3,5-ジグルコシド、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、トリエタノールアミン、水溶性の防腐剤からなる水相を攪拌下で徐々に加えて、乳化を行う、約40℃に冷却した後、エタノール、香料を攪拌しながら加え、減圧脱気する。」

(6)記載事項1-6(【0019】)

「【表1】



(7)記載事項1-7(【0021】)
「[実施例3]
以下に示す処方のヘアトリートメントを下記調製法に従って調製した。



2.甲2
(1)記載事項2-1(【0075】)
「親水性非イオン界面活性剤としては、・・・POE(20)ヒマシ油(HLB10.5)、POE(40)ヒマシ油(HLB12.5)、POE(50)ヒマシ油(HLB14.0)、POE(60)ヒマシ油(HLB14.0)、POE(20)硬化ヒマシ油(HLB10.5)、POE(30)硬化ヒマシ油(HLB11.0)、POE(40)硬化ヒマシ油(HLB13.5)、POE(60)硬化ヒマシ油(HLB14.0)、POE(80)硬化ヒマシ油(HLB16.5)、POE(40)硬化ヒマシ油(100)硬化ヒマシ油(HLB16.5)等のポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油類。・・・」

3.甲3
(1)記載事項3-1(特許請求の範囲)
「【請求項1】
(a)ワックスの微粒子と、
(b)下記一般式(1)で表される疎水変性ポリエーテルウレタンと、
を含有することを特徴とする透明毛髪化粧料。
R^(1)-{(O-R^(2))_(k)-OCONH-R^(3)[-NHCOO-(R^(4)-O)_(n)-R^(5)]_(h)}_(m)・・・(1)
(式中、R^(1)、R^(2)及びR^(4)は、互いに同一でも異なっても良い炭化水素基を表し、R^(3)はウレタン結合を有しても良い炭化水素基を表し、R^(5)は直鎖、分岐鎖又は2級の炭化水素基を表し、mは2以上の数であり、hは1以上の数であり、k及びnは独立に0?1000の範囲の数である)
【請求項2】
請求項1に記載の透明毛髪化粧料において、界面活性剤として(c)非イオン性界面活性剤と、(d)両性界面活性剤及び又は半極性界面活性剤とを含有することを特徴とする透明毛髪化粧料。
・・・
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の透明毛髪化粧料において、L値が50.0?100.0であることを特徴とする透明毛髪化粧料。
・・・」

(2)記載事項3-2(【0016】)
「ワックスの微細分散方法
本発明において、ワックスを微細分散する方法は特に限定されるものではないが、例えば、分散媒中にワックスと各種界面活性剤とを添加し、これをワックスの融点以上に加温した状態で攪拌混合し、その後常温に冷却することによって、分散媒中にワックスを微細に分散することが可能である。・・・本発明においては、毛髪化粧料における皮膚刺激性、あるいはワックス微粒子の温度安定性、経時安定性等の観点から、特に非イオン性界面活性剤と、両性界面活性剤及び又は半極性界面活性剤とを組み合わせて用いることが好適である。例えば、非イオン性界面活性剤単独で用いた場合は、皮膚刺激性は良好なものの、温度により系のHLBが変化し、経時安定性が損なわれる欠点がある。また、非イオン性界面活性剤とアニオン界面活性剤との組合せ、アニオン界面活性剤単独、あるいはカチオン性界面活性剤単独で用いた場合には、温度安定性は向上するものの、人によっては皮膚刺激性の問題を生じてしまうことが考えられる。」

(3)記載事項3-3(【0018】)
「非イオン性界面活性剤
本発明に用いられる非イオン性界面活性剤は、特に限定されるものではないが、好適なHLBは6?15、特に好適なHLBは7?14である。非イオン性界面活性剤のHLBが6?15の範囲を逸脱すると、ワックスを微細に分散することができない場合がある。・・・」

(4)記載事項3-4(【0068】)
「以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、配合量は特に断りの無い限り、質量%で示す。」


(5)記載事項3-5(【0076】、【0077】)
「【表2】


(製造方法) イオン交換水の一部に、カルナバロウ(ワックス)と、POE(15)POP(1)ベヘニルエーテル(非イオン性界面活性剤)と、イミダゾリニウムベタイン(両性界面活性剤)とを加え、約95℃で攪拌混合し、透明性を帯びた後、氷冷して、カルナバロウが微細に分散された組成物を得た。これにイオン交換水の残部と、疎水変性ポリエーテルウレタンを含む他の成分を添加して攪拌混合して、毛髪化粧料を得た。」

4.甲4
(1)記載事項4-1(【0075】)
「【表8】




5.甲5
(1)記載事項5-1(第514頁左欄下から第3?1行)
「6・2 多価アルコールの添加
界面活性剤は多価アルコールとの相互作用により親油化し、可溶化は増大する。」

(2)記載事項5-2(第514頁右欄第1?5行)
「ポリオキシエチレンアルキルエーテルはグリセリンとの相互作用により、曇点が下がる。ポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶液への各種多価アルコール添加による曇点への影響を図2・22に示した。」

(3)記載事項5-3(図2・22)






第7 特許異議申立理由についての合議体の判断

1.申立理由4(明確性違反)について
申立理由4は、本件特許発明の明確性に係る事項であるため、他の申立理由に先立って、当該申立理由4について検討する。

申立人は、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」との記載について、本件特許明細書等(【0030】)には、「イオン性界面活性剤」の含有量が記載されていないし、具体的な含有量については、【0060】の表2の比較例1としてベタインを5質量%含む例が記載されているだけであるから、このような本件特許明細書の記載からは、本件特許発明1における「イオン性界面活性剤」の含有量を明確に把握できず、よって、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」との記載は発明の範囲を不明確にするものである旨の主張をしている。
しかしながら、「実質的」とは、「実際に内容が備わっているさま。また、外見や形式よりも内容・本質に重点をおくこと。」を意味する(広辞苑第5版)ものであるから、上記「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」とは、「イオン性界面活性剤をイオン性界面活性剤としての内容が備わっているように含有しない」こと、すなわち「イオン性界面活性剤をそのイオン性界面活剤としての性質を発揮するような量では含有しない」ことを意味するものとして、その文言上、当業者にとって明確であると認められる。この点、本件特許明細書【0030】にも、「「実質的に含有しない」とは、これらイオン性界面活性剤が、その活性剤としての効力を発揮し得る程度の配合量で含まれることを排除することを意味する。」と記載されており、当該本件特許明細書の記載は、上記のような「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」の文言上の意味を支持するものといえる。
したがって、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」との文言には、何ら不明確なところはない。
また、本件特許発明1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2?4についても同様である。
よって、申立理由4には理由がない。

2.申立理由1(新規性欠如)、申立理由2(甲1に基づく進歩性欠如)について
(1)申立理由1について
ア.甲1に記載された発明との対比・判断
上記甲1の摘記事項1-1?1-6の記載からみて、甲1には、「キャンデリラロウ1.0質量%、サラシミツロウ8.0質量%、ワセリン10.0質量%、没食子酸-3,5-ジグルコシド0.4質量%、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油35.0質量%、流動パラフィン1.0質量%、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム0.5質量%、トリエタノールアミン0.03質量%、ジヒドロキシベンゾフェノン0.1質量%、パラオキシ安息香酸プロピル0.4質量%、パラオキシ安息香酸メチル0.2質量%、安息香酸0.15質量%、エタノール1.0質量%、フェノキシエタノール0.5質量%、香料組成物A0.1質量%、精製水残部(合計質量%=100.0質量%)含むヘアワックス」の発明(以下、「甲1-2発明」という。)が記載されていると認められる。
ここで、本件特許発明1と甲1-2発明を対比すると、甲1-2発明における「精製水」、「キャンデリラロウ・・・サラシミツロウ・・・ワセリン」、「ヘアワックス」は、それぞれ、本件特許発明1における「水系分散剤」、「ワックス」、「毛髪化粧料」に相当する。
また、甲1-2発明における「ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油」は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(POE硬化ヒマシ油)の一種であるところ、当該POE硬化ヒマシ油は、本件特許発明3の記載からみて、本件特許発明1における「非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)」に含まれるものであるから、甲1-2発明における当該「ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油」は、本件特許発明1における「非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)」に該当する。
そして、甲1-2発明における「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)」は、「ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油/(キャンデリラロウ+サラシミツロウ+ワセリン)(質量比)」である、35.0/(1.0+8.0+10.0)から算出される「1.8」であって、本件特許発明1で規定する「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上」の範囲内である。
そうすると、本件特許発明1と甲1-2発明とは、
「(a)水系分散媒、(b)ワックス、及び(c)非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)を含み、(c)非イオン性界面活性剤/(b)ワックスの配合比率(質量比)が1.8である、毛髪化粧料。」で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1-1)
非イオン性界面活性剤について、本件特許発明1においてはそのHLB値が10より高く15未満であると規定されているのに対し、甲1-2発明においては、そのHLBの値が不明である点。
(相違点1-2)
本件特許発明1は、イオン性界面活性剤を実質的に含有しないのに対し、甲1-2発明は、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを0.5質量%含有する点。
(相違点1-3)
本件特許発明1の毛髪化粧料は、「透明(L値70以上)」であるのに対し、甲1-2発明の毛髪化粧料は、透明度についての記載がない点。

申立人は、上記相違点1-1?1-3の点で、本件特許発明1は甲1-2発明と一見相違するものの、当該各相違点はいずれも相違点とはならず、本件特許発明1は甲1-2発明と同一である旨主張しているが、以下で述べるように、本件特許発明1は、少なくとも相違点1-2及び1-3において、甲1-2発明と相違するものであるから、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。

(ア)相違点1-2について
申立人は、本件特許発明1における「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」との記載について、本件特許明細書には、当該「イオン性界面活性剤」の含有量が具体的に記載されていないから、本件特許発明と甲1-2発明とを厳密に対比することができないところ、本件特許明細書には、比較例1として、イオン性界面活性剤の1種であるベタインを5質量%含む組成物が記載されているから、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」は、「イオン性界面活性剤を5質量%未満含有する」に換言し得るものであり、よって、イオン性界面活性剤の1種である塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを0.5質量%含む甲1-2発明は、「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」ものである旨の主張をしている。
しかしながら、上記第7の1.で述べたように、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」とは、「「イオン性界面活性剤」をそのイオン性界面活性剤としての性質を発揮するような量では含有しない」ことを意味するものと認められる。
そして、本件特許明細書に、比較例として、イオン性界面活性剤であるベタインを5質量%含む組成物が記載されているとしても、これは、「イオン性界面活性剤」を、そのイオン性界面活性剤としての性質を発揮する量で配合した組成物の一例を示したにすぎず、当該5質量%を、「イオン性界面活性剤」がイオン性界面活性剤としての性質を発揮する最低限度の含有量と認めることはできないから、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」を、「イオン性界面活性剤を5質量%未満含有する」に換言することなどはできない。加えて、甲1の記載事項1-3の記載からみて、甲1-2発明の「塩化ステアリルトリメチルアンモニウム」は、陽イオン性界面活性剤としての効果を期待して配合されているイオン性界面活性剤と認められるから、当該甲1-2発明は、「イオン性界面活性剤を実質的に含有」したものであると認められる。
そうすると、本件特許発明1と甲1-2発明とは、相違点1-2において相違するものである。

(イ)相違点1-3について
申立人は、甲1-2発明においては、ワックス等の油性成分に対して、非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油が過剰に含まれているため、甲1-2発明のヘアワックスは透明性を有する蓋然性が高い旨の主張をしている。
しかしながら、甲1-2発明のヘアワックスは、「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上」を満たすものではあっても、「乳化」により製造されたものであるから(記載事項1-5)、上記「第4 取消理由についての合議体の判断」において述べた理由と同じ理由により、当該甲1-2発明の透明度がL値70以上であると推認することはできない。
そうすると、本件特許発明1と甲1-2発明とは、相違点1-3において相違するものである。

以上から、本件特許発明1は、少なくとも相違点1-2及び1-3において、甲1-2発明と相違するものであるから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明であるということはできない。
この点は、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明3及び4についても、同様である。
したがって、申立理由1は理由がない。

(2)申立理由2について
上記(1)ア.(ア)及び(イ)で述べたとおり、本件特許発明1は、少なくとも相違点1-2及び1-3の点で相違するものと認められる。
相違点1-2について申立人は、甲1には、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム(陽イオン性界面活性剤)等の各種添加成分を必須成分としないことが記載されているから(記載事項1-3)、毛髪化粧料の物性等を考慮して、陽イオン性界面活性剤とは異なる別の添加成分を用いることや、添加成分を用いずに毛髪化粧料とすることは、当業者が容易に想到し得たことである旨の主張をしている。
確かに塩化ステアリルトリメチルアンモニウムは、甲1において必須成分ではないものの、他方、毛髪化粧料に配合し得る慣用成分として具体的に挙げられている成分であり(記載事項1-3)、甲1-2発明は、「融点30℃以上の油脂及び/又はロウ状物質、ポリフェノール類」といった必須成分以外に、そのような毛髪化粧料配合の慣用成分、具体的には、「塩化ステアリルトリメチルアンモニウムのほか、流動パラフィン、ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油、トリエタノールアミン、ジヒドロベンゾフェノン、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチル、安息香酸、エタノール、フェノキシエタノール、香料組成物A」といった多数の慣用成分を含む16種類の成分を、それぞれ所定量配合することによって所望の性質を有するヘアワックスとして提供されているものと認められる。ヘアワックスのような組成物は、種々の成分が混然一体となって所定の性質や効果を奏するものであることを考慮すると、上記のような所望の性質を有するものとなった甲1-2発明から、毛髪化粧料の慣用成分である塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを取り除くことを当業者が積極的に行うと解することはできないし、また、甲1のいかなる記載をみても、また本件特許出願時の技術常識を参酌しても、塩化ステアリルトリメチルアンモニウムを甲1-2発明から除こうとする動機付けとなるような記載や示唆を見出すことはできない。
さらに、相違点1-3については、上記「第4 取消理由についての合議体の判断」で述べた理由と同様に、甲1には、甲1-2発明のヘアワックスを透明なものにしようとすることや、当該ヘアワックスを製造するために、乳化工程ではなく、可溶化工程を採用することについては記載も示唆もされていないから、甲1-2発明において、L値70以上という透明度を設定し、そのような透明度のヘアワックスを提供することは、当業者といえども困難であったといえ、この点からも、本件特許発明1は、甲1の記載事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであると認めることはない。
そして、本件特許発明1は、非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)を1.0以上と特定すると共に、可溶化して透明(L値70以上)にすることにより、イオン性界面活性剤を用いずとも、セット力やアレンジ力に優れ、安定で皮膚刺激が低い毛髪化粧料の提供を可能とするものであり(本件特許明細書【0001】、【0011】、表2及び3)、これは甲1の記載からは当業者といえども予測できない、格別顕著な効果であると認められる。
以上から、本件特許発明1は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものとは認められない。
この点は、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4についても、同様である。
したがって、申立理由2は理由がない。


3.申立理由3(甲3及び甲4に基づく進歩性欠如)について
(1)甲3に記載された発明との対比・判断
甲3には、「イオン交換水78.95質量%、疎水変性ポリエーテルウレタン0.5質量%、POE(15)POP(1)ベヘニルエーテル3.5質量%、イミダゾリニウムベタイン2.0質量%、カルナバロウ2.5質量%、ブチレングリコール2.0重量%、プロピレングリコール10.0質量%、フェノキシエタノール0.5質量%、香料0.05質量%を含み、L値が85である透明毛髪化粧料。」の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
ここで、本件特許発明1と甲3発明を対比すると、甲3発明における「イオン交換水」、「カルナバロウ」、「透明毛髪化粧料」、「イミダゾリニウムベタイン」は、それぞれ、本件特許発明1における「水系分散媒」、「ワックス」、「毛髪化粧料」、「イオン性界面活性剤」に相当する。
また、甲3発明における「POE(15)POP(1)ベヘニルエーテル」は、POE・POPアルキルエーテルの一種であるところ、当該POE・POPアルキルエーテル類は、本件特許発明3の記載からみて、本件特許発明1における「非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)」に含まれるものであるから、甲3発明における当該「POE(15)POP(1)ベヘニルエーテル」は、本件特許発明1における「非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)」に該当する。
そして、甲3発明における「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)」は、「POE(15)POP(1)ベヘニルエーテル/カルナバロウ(質量比)」である3.5/2.5から算出される「1.4」であって、本件特許発明1で規定する「非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上」の範囲内である。
さらに、甲3発明におけるL値は「85」であり、これは、本件特許発明1で規定された「透明(L値70以上)」の範囲内である。
そうすると両者は、「(a)水系分散媒、(b)ワックス、及び(c)非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)を含み、(c)非イオン性界面活性剤/(b)ワックスの配合比率(質量比)が1.4であり、かつ、透明(L値85)である毛髪化粧料。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点3-1)
本件特許発明1においては、非イオン性界面活性剤のHLB値が「10より高く15未満である」のに対し、甲3発明においては、非イオン性界面活性剤のHLB値が不明である点。

(相違点3-2)
本件特許発明1は、「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」のに対し、甲3発明においては、イミダゾリニウムベタインを2.0質量%含有する点

申立人は、上記相違点3-1及び3-2は、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである旨、主張しているが、以下で述べるように、当該申立人の主張は採用できない。

まず、相違点3-2について、申立人は、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」は、「イオン性界面活性剤を5質量%未満含有する」に換言し得るから、イオン性界面活性剤の1種であるイミダゾリニウムベタインを2.0質量%含有する甲3発明は、「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」といえるものであって、当該相違3-2は相違点とはならないし、仮にそうでないとしても、甲3に記載の発明は、両性界面活性剤や半極性界面活性剤を必須成分としないものであり(請求項1)、さらに、非イオン性界面活性剤を単独で用いた場合には、温度によりHLBが変化し、経時安定性が損なわれるものの、皮膚刺激性が良好であることも記載されているから(記載事項3-2)、皮膚刺激性を考慮して、両性界面活性剤や半極性界面活性剤を使用しないことは、当業者が容易に想到し得たことである旨の主張をしている。
しかしながら、上記「第7 特許異議申立理由についての合議体の判断」の2.(1)ア.(ア)で述べたように、本件特許発明1の「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」なる記載が、「イオン性界面活性剤を5質量%未満含有する」を意味するものとはいえないから、イミダゾリニウムベタインを2.0質量%含有する甲3発明が、「イオン性界面活性剤を実質的に含有しない」ものであるとは認められない。
さらに、申立人が指摘する上記甲3の非イオン性界面活性剤単独使用に関する記載について検討しても、当該記載により、甲3発明において、非イオン性界面活性を単独で用いることが、当業者にとって容易に想到し得たこととは認められない。具体的には、甲3には、「本発明においては、毛髪化粧料における皮膚刺激性、あるいはワックス微粒子の温度安定性、経時安定性等の観点から、特に非イオン性界面活性剤と、両性界面活性剤及び又は半極性界面活性剤とを組み合わせて用いることが好適である。」(記載事項3-2)と記載され、加えて、甲3の実施例がすべて両性界面活性剤(イオン性界面活性剤の一種)を含有するものであるように、そもそも甲3は、非イオン性界面活性剤と、両性界面活性剤及び又は半極性界面活性剤とを組み合わせて用いる発明を開示するものである。そうすると、そのような甲3における上記非イオン性界面活性剤単独使用に関する記載は、それら界面活性剤を組み合わせず、非イオン性界面活性剤単独で用いた場合の問題点について記載したにすぎないものであって、むしろ、問題のある非イオン性界面活性剤の単独使用を否定する記載と解されるから、上記甲3の非イオン性界面活性剤単独使用に関する記載から両性界面活性剤や半極性界面活性剤を使用しないという構成を想起するなどとは、およそ当業者が通常行うことであるとは認められない。

相違点3-1について、申立人は、甲3発明における「POE(15)POP(1)ベヘニルエーテル」のHLBは10であるとし(甲4の記載事項4-1参照。)、甲3において、非イオン性界面活性剤の好適なHLBは6?15の範囲であり、当該範囲を逸脱すると、ワックスを微細に分散することができないから(記載事項3-3)、ワックスの分散度合い等に応じて、HLBが10であるPOE(15)POP(1)ベヘニルエーテルを、上記HLBの範囲内の他の非イオン性界面活性剤に代えてみることは、当業者が容易に想到し得たことである旨の主張をしている。
しかしながら、上記で述べたように、甲3は、非イオン性界面活性剤と両性界面活性剤及び又は半極性界面活性剤とを組み合わせて用いる発明を開示するものであるから、上記記載事項3-3の非イオン性界面活性剤の好適なHLB値は、両性界面活性剤及び又は半極性界面活性剤とを組み合わせて用いる際の、非イオン性界面活性剤の数値範囲を示したものにすぎず、甲3の他の記載をみても、非イオン性界面活性剤を単独で用いた場合に、いかなるHLB値であれば、甲3発明と同等な透明性を有する毛髪化粧料が得られるのかについては記載も示唆もなされていない。

したがって、甲3の記載からは、甲3発明において、イオン性界面活性剤であるイミダゾリニウムベタインを用いず、さらにHLBが10より高く15未満である非イオン性界面活性剤を用いるという本件特許発明1の構成に想到することは当業者といえども容易になし得たこととは認められない。

一方、本願特許発明1は、界面活性剤として、非イオン性界面活性剤のみを使用し、当該非イオン性界面活性剤のHLB値を10より高く15未満とすることにより、イオン性界面活性剤を用いずとも、セット力やアレンジ力に優れ、安定で皮膚刺激が低い毛髪化粧料の提供を可能とするものであり(本件特許明細書【0001】、【0011】、表1及び2)、これは当業者といえども、甲3に記載された発明及び甲4の記載事項から予測できない格別顕著な効果であるものと認められる。
以上から、本件特許発明1は、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとは認められない。
この点は、本件特許発明1をさらに限定した発明である本件特許発明2?4についても、同様である。
したがって、申立理由3は理由がない。


4.申立理由5(サポート要件違反)について

本件特許明細書には、

「本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、皮膚刺激性のあるイオン性界面活性剤を用いることなく、常温で固体?半固体のワックス(特に、カルナバロウ、キャンデリラロウ等の天然ワックス)を水系分散媒中に微細分散させることにより、ワックスによるセット力やアレンジ力に優れるとともに、安定で透明性が高く、頭皮への刺激性も低い毛髪化粧料を提供することを目的とする。」(【0008】)

「本発明者等は、前記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の範囲のHLBを有する非イオン性界面活性剤を用い、ワックスと非イオン性界面活性剤との配合比を特定範囲のものとすることにより、セット力やアレンジ力に優れるとともに、ワックスを安定かつ透明に溶解することができ、頭皮への刺激性も低い毛髪化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」(【0009】)

と記載されていることからみて、本件特許発明1の解決すべき課題は、「皮膚刺激性のあるイオン性界面活性剤を用いず、常温で固体?半固体のワックスを含むセット力やアレンジ力に優れるとともに、安定で透明性が高く、頭皮への刺激性も低い毛髪化粧料を提供すること」であると認められる。

ここで、本件特許明細書には、実施例において、HLB値が12.5?13.9である非イオン性界面活性剤を用い、非イオン性界面活性剤/ワックスの配合比率(質量比)を1あるいは2とし、水系分散媒中に、ワックスであるカルナバロウ及びキャンデリラロウを微細分散させ、L値70以上とした組成物について、刺激性、アレンジ力及びセット力を評価したところ、いずれも良好な結果が得られたこと(表2?4の実施例1?11)、非イオン性界面活性剤のHLBは、10?15の範囲で均一な分散系の形成が可能であること(表1、【0047】)が具体的に示されている。
さらに、本件特許明細書には、「本発明における(c)非イオン性界面活性剤/(b)ワックスの配合比率(質量比)は、1.0以上であり、より好ましくは1.1以上である。この質量比が1.0未満では(b)ワックスを十分に可溶化できず、透明かつ安定性のよい組成物を得ることが難しい。・・・」(【0028】)なる記載や「・・・本発明ではイオン性界面活性剤、すなわちアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤を実質的に含有しない。・・・イオン性界面活性剤を配合しないことにより、頭皮刺激性等の安全性の問題を回避することができる。」(【0030】)なる記載がなされており、このような本件特許明細書の記載と、上記実施例の記載を考慮すれば、(a)水系分散媒、(b)ワックス、及び(c)HLBが10より高く15未満である非イオン性界面活性剤を含み、(c)非イオン性界面活性剤/(b)ワックスの配合比率(質量比)が1.0以上であり、かつ、イオン性界面活性剤を実質的に含有しない、透明(L値70以上)な毛髪化粧料であれば、上記本件特許発明1の解決すべき課題を解決できるものと当業者は理解できる。
したがって、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、上記本件特許発明1の解決すべき課題を解決できることが当業者に認識できるように記載されていると認められる。
本件特許発明2?4についても、同様の理由から、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明2?4の解決すべき課題を解決できることが当業者に認識できるように記載されていると認められる。

なお、申立人は、ワックスがセット力やアレンジ力を付与できる成分であることは技術常識であるから、ワックスの含量が少ない場合には、セット力やアレンジ力に優れる毛髪化粧料を提供できないため、ワックスの下限値が特定されていない本件特許発明1?4は、課題を解決する手段が反映されておらず、本件特許明細書の記載から裏付けられているとは認められない旨の主張をしている。
しかしながら、申立人も認めるように、ワックスがセット力やアレンジ力を付与できる成分であることは本特許出願時の技術常識であるところ、本件特許明細書の【0041】には、本件特許発明の毛髪化粧料は、ヘアリキッド、ヘアフォーム、ヘアムース、ヘアスプレー、ヘアミスト、ヘアジェル、ヘアワックス等様々な形態で提供することができる旨記載されているから、本件特許発明1においてワックスの含有量が特定されていなくとも、当業者であれば、そのような各種毛髪化粧料の形態に応じてワックスの添加量を適宜調整することにより、セット力やアレンジ力に優れる毛髪化粧料を製造できるものと認められ、上記本件特許発明1?4の解決すべき課題を解決することができると理解できる。さらにいえば、セット力やアレンジ力は、ワックスの配合量のみならず、他の成分を添加することでも調節できるのであるから(本件特許明細書の【0032】、【0040】)、この点を考慮すれば、なおのこと、本件特許発明1においてワックスの含有量が特定されていなくとも、当業者は上記本件特許発明1?4の解決すべき課題を解決することができると理解できる。
さらに申立人は、本件特許発明1、3及び4は、毛髪化粧料に含まれる成分として、水系分散媒、ワックス、HLBが10より高く15未満である非イオン性界面活性剤(但し、分岐非イオン活性剤及びセチルエーテル系ノニオン界面活性剤を除く)の三成分のみを特定したものであって、その他の成分については規定がないが、本件特許明細書の実施例6には、当該三成分に加えて、多価アルコールであるジプロピレングリコールを含まない場合、溶解性が低減することが示されており、さらに甲5には、界面活性剤は多価アルコールとの相互作用により親油化し、可溶化量が増大すること、及びポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶液に添加される多価アルコールの種類と濃度によって曇点が変化することが記載されているから(記載事項5-1?5-3)、多価アルコールが存在しない場合には、界面活性剤は親油化されず、ワックスを可溶化できる量が少なく、透明で安定性の高い毛髪化粧料が得られないし、あらゆる多価アルコールを用いた場合に同様な機能を発揮することも推認できないとして、多価アルコールを含むこと及び多価アルコールの種類が特定されていない本件特許発明1?4は、課題を解決する手段が反映されているとはいえない旨の主張をしている。
しかしながら、本件特許明細書の実施例6及び【0050】の記載によれば、多価アルコールであるジプロピレングリコールを含まない場合であっても、当該三成分のみによって、L値70以上90未満という、本件特許発明1で規定するL値を満たす組成物が得られることが理解できる。
また、本件特許明細書には、多価アルコールをさらに添加することにより透明性が向上することも記載されており(表4)、一方、甲5によれば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル水溶液に添加される多価アルコールの種類と濃度によって曇点が変化することが知られているから(記載事項5-3)、多価アルコールを添加してさらに透明度の高い組成物を得ようとする際には、当業者は、当該本件特許明細書の記載に加え、このような甲5記載の技術常識も参酌して、当該多価アルコールの種類や濃度を適宜検討することにより、所望のL値を達成する組成物を得ることができるものと認められる。
以上から、申立人の主張はいずれも採用できない。
したがって、申立理由5は理由がない。


5.申立理由6(実施可能要件違反)について
申立人は、甲5に記載のように、多価アルコールの種類と多価アルコール濃度によって曇点が変化することは技術常識であり、曇点が異なれば透明性も異なるため、どのような多価アルコールをどの程度用いた場合に、所望の透明性を有する毛髪化粧料が得られるのかということを予測することは困難であって、L値70以上の透明性を有する毛髪化粧料を製造する際には、本件特許明細書の記載及び本件特許明の出願時の技術常識を参酌しても、当業者に過度の試行錯誤を要するものである旨の主張をしている。
しかしながら、申立人の上記主張は、本件特許発明1?4において、多価アルコールを含有する場合について言及したものであるところ、上記「4.申立理由5(サポート要件違反)について」でも述べたとおり、本件特許明細書には、多価アルコールを用いずとも、水系分散媒、ワックス、及びHLB値が10より高く15未満の範囲内である非イオン性界面活性剤という三成分のみによって、本件特許発明1で規定のL値を有する化粧料組成物を調製することが可能であることが具体的に示されている(実施例6)から、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、多価アルコールを含むことが特定されていない本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものと認められる。また、本件特許発明1?4において、多価アルコールを含有する場合の発明については、本件特許明細書には、多価アルコールをさらに添加することによって、毛髪化粧料の透明性が一層向上することが記載されており(表4)、当該記載と共に、上記甲5記載の多価アルコールの性質に係る技術常識も考慮して、添加する多価アルコールの種類や濃度を検討すればよく、当業者は過度の負担なく、L値70以上の組成物を製造できるものと認められる。
以上から、上記主張は採用できず、本件特許明細書の発明の詳細な説明は当業者が本件特許発明1?4の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものと認められる。
したがって、申立理由6は理由がない。


第8 むすび
以上のとおりであるから、当審で通知した取消理由及び申立人が主張する取消理由によっては、本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1?4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-10-16 
出願番号 特願2013-81994(P2013-81994)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 小久保 勝伊▲高▼ 美葉子  
特許庁審判長 田村 聖子
特許庁審判官 井上 明子
大久保 元浩
登録日 2017-10-27 
登録番号 特許第6230805号(P6230805)
権利者 株式会社 資生堂
発明の名称 毛髪化粧料  
代理人 内田 直人  
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