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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1346245
審判番号 不服2018-1451  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-02 
確定日 2018-12-10 
事件の表示 特願2016-545699「偏光板およびこれを含む画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 2日国際公開、WO2015/046997、平成28年11月10日国内公表、特表2016-535322、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)9月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年(平成25年)9月30日、韓国及び2014年(平成26年)9月26日、韓国)を国際出願日とする出願であって、平成29年3月6日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日に意見書の提出とともに手続補正がなされ、同年11月7日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し平成30年2月2日に拒絶査定不服審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2 原査定の概要
原査定の拒絶の理由の概要は、以下のとおりである。

理由1(新規性)
本願の本件補正前の請求項1?8、15、17?20に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2(進歩性)
本願の本件補正前の請求項1?8、15、17?20に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、請求項9?11、16に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項12?14に係る発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2009-37223号公報
引用文献2:特開2012-52000号公報
引用文献3:特開2007-254650号公報

3 本件発明
本願の請求項1?15に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明15」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりの発明であって、その本件発明1及び本件発明15は以下のとおりの発明である。

本件発明1
「 偏光子と、
前記偏光子の少なくとも一面に形成される保護層とを含む偏光板であって、前記保護層は、水酸基価(hydroxy value)が500mg・KOH/g以上900mg・KOH/g以下のラジカル硬化型組成物の硬化物であり、
前記ラジカル硬化型組成物は、(A)分子内に少なくとも2つのヒドロキシ基を含むラジカル重合性の第1化合物、(B)分子内に少なくとも1つの親水性官能基を含むラジカル重合性の第2化合物、および(C)ラジカル開始剤を含み、
前記ラジカル重合性の第2化合物は、下記の化学式18?化学式23で表される化合物からなる群より選択された1種以上であることを特徴とする、偏光板。
【化1】



本件発明15
「 請求項1に記載の偏光板を含むことを特徴とする、画像表示装置。」

また、本件発明2?14は、本件発明1に限定を加えたものにあたる。

4 引用文献の記載事項及び引用文献に記載された発明
(1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2009-37223号公報)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が、発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉で軽量性に優れ、モバイル用途の液晶表示装置、大型液晶テレビなどの形成に好適に用いられる偏光板に関するものである。本発明はまた、この偏光板を用いた光学部材にも関係している。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、薄肉軽量化と耐久性能とを同時に満足する偏光板を提供し、また、信頼性に優れ、モバイル用途や大型テレビ用途などの液晶表示装置を形成しうる光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子の少なくとも片面に、厚さが20μm 以下の保護膜を有しており、その保護膜は、引張弾性率(単位:N/mm^(2) )と厚さ(単位:mm)の積が40N/mm以上となるように形成されている偏光板が提供される。また本発明によれば、上記の偏光板に、他の光学機能を示す光学層が積層されている光学部材が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明による偏光板は、偏光子と保護膜との良好な密着性を保ちつつ、薄肉軽量性に優れ、さらに高い耐久性能を示すものとなる。その結果、装置組立時の加熱処理や装置使用時の環境条件に十分耐えうる薄肉軽量の偏光板及びそれを備える光学部材を得ることができ、それを用いて、信頼性に優れ、モバイル用途や大形テレビ用途などの液晶表示装置を形成することができる。」

イ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について具体的に説明する。偏光子としては一般に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向されたものが用いられる。偏光子を構成するポリビニルアルコール系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルや、酢酸ビニル及びこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85?100モル%、好ましくは98?100モル%の範囲である。このポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1,000?10,000の範囲、好ましくは 1,500?5,000の範囲である。
【0010】
[偏光板]
偏光板は、このようなポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、ホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及びこれらの工程が施されて二色性色素が吸着配向された一軸延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに保護膜を形成する工程を経て製造される。一軸延伸は、二色性色素による染色の前に行ってもよいし、二色性色素による染色と同時に行ってもよいし、二色性色素による染色の後に行ってもよい。一軸延伸を二色性色素による染色後に行う場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前に行ってもよいし、ホウ酸処理中に行ってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行うことも可能である。一軸延伸は、例えば、周速の異なるロール間を通過させる方式や、熱ロールを用いて引っ張る方式などにより行うことができる。また、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤で膨潤した状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は4?8倍程度である。

(中略)

【0016】
かくして、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向された偏光子を作製することができる。この偏光子の少なくとも片面に保護膜を形成して、偏光板とする。この際本発明では、厚さが20μm 以下であって、引張弾性率(単位:N/mm^(2) )と厚さ(単位:mm)の積が40N/mm以上となるように、保護膜が形成される。

(中略)

【0021】
[保護膜]
そこで本発明においては、保護膜の引張弾性率と厚さの積が40N/mm以上となるようにする。この値が40N/mm以上であれば、厚さ20μm 以下の保護膜においても偏光子の収縮を1%以下に抑えることができる。引張弾性率と厚さの積が50N/mm以上となるようにするのがより好ましい。なお、引張弾性率は MPa単位で表されることもあるが、この単位で表される値は、N/mm^(2) 単位で表される値と同じになる。

(中略)

【0026】
本発明で規定する厚さが20μm 以下の保護膜は、偏光子表面へのコーティングによって形成するのが有利である。コーティングによって保護膜を形成する組成物には、樹脂又はその前駆体を主成分とするものが有利に用いられ、その樹脂として具体的には、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを挙げることができる。なお、ここでいう樹脂前駆体とは、重合性のモノマー又はオリゴマーを意味する。樹脂又はその前駆体を含む組成物から保護膜を形成する場合、樹脂単独では、保護膜の引張弾性率と厚さの積が40N/mm以上となるようにするのは困難なことが多い。そこで、かかる組成物に無機フィラーを存在させることが好ましい。

(中略)

【0028】
保護膜を形成するための樹脂は、保護膜形成用のコーティング組成物として、重合体を配合したものを用いてもよいし、モノマーを配合した組成物を塗工後、活性エネルギー線の照射や加熱により重合・硬化させることで形成してもよい。活性エネルギー線は、電子線、紫外線などが一般的に用いられるが、中でも紫外線が有利に用いられる。保護膜を形成するためのモノマー(以下、「硬化性樹脂」ともいう)としては、アクリル系やオキセタン系などの化合物を用いることができる。また、活性エネルギー線の照射により重合・硬化させる場合は、通常、光重合開始剤が配合される。光重合開始剤は、各種のものが市販されており、これらから適宜なものを選択して用いることができる。

(中略)

【0031】
偏光子の少なくとも一方の面に設ける保護膜の厚さは、薄肉軽量性、保護機能、取扱い性などの観点から、20μm 以下とする。この保護膜厚さの下限は、上記した引張弾性率と厚さの積が40N/mm以上という条件から、自ずと定まるが、一般には2μm 以上である。偏光子の両面に保護膜を設ける場合、その表裏で異なる組成からなる保護膜を用いることもできる。
【0032】
本発明では、以上説明したような厚さが20μm 以下の保護膜、好ましくはコーティングによって形成される保護膜を偏光子の少なくとも片面に設ける。もちろん、偏光子の両面に上記のような保護膜を設けることもできる。厚さが20μm 以下の保護膜を偏光子の片面に設けた場合、偏光子のもう一方の面には、他の保護膜を設けるのが好ましい。他の保護膜の例としては、トリアセチルセルロースをはじめとするセルロース系樹脂などの透明高分子フィルムを挙げることができる。
【0033】
したがって、偏光子の両面に上記の如き厚さが20μm 以下の保護膜を設ける形態や、偏光子の片面に上記の如き厚さが20μm 以下の保護膜を設け、偏光子の他面には透明高分子フィルムからなる保護膜を設ける形態が、好ましいものとして挙げられる。後者の場合、透明高分子フィルムに位相差板としての機能を付与することもできる。偏光子の一方の面に透明高分子フィルムからなる保護膜を設ける場合、その厚さは、通常20?100μm 程度である。
【0034】
本発明において、保護膜を設けた偏光板には、必要に応じてその保護膜の上に、ハードコート層、反射防止層、防眩層、位相差層などの各種処理を施してもよい。一方、偏光子の表面に設けられる厚さが20μm 以下の保護膜自体に、ハードコート性能、防眩性能、帯電防止性能などの各種機能を付与することもできる。
【0035】
まず、ハードコート性能について説明する。ハードコート性能とは、皮膜が高い硬度を示す機能を意味し、好ましいハードコート性能として、例えば、JIS K 5600-5-4:1999 に規定される鉛筆硬度が2H以上、さらには3H以上、とりわけ4H以上であることが挙げられる。その他にも、例えば、スチールウールに500g/cm^(2) の荷重をかけて表面を擦ったときに、10回以上擦っても傷がつかないことなどが挙げられる。
【0036】
このようなハードコート性能は、保護膜を形成する組成物として、高硬度の皮膜(ハードコート)を与える材料を選定することで付与できる。高硬度の皮膜を与える材料としては、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などを用いることができるが、生産性、硬度などの観点から、紫外線硬化性樹脂が好ましく使用される。紫外線硬化性樹脂を用いる場合は、当該紫外線硬化性樹脂を含む組成物を偏光子に塗布し、紫外線を照射することにより、ハードコート性能が付与された保護膜を形成することができる。
【0037】
紫外線硬化性樹脂としては、市販されているものを用いることができ、例えば、多官能(メタ)アクリレートを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。ここでいう「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、他に「(メタ)アクリル酸」とか「(メタ)アクリロイル」などというときの「(メタ)」も同様の趣旨である。多官能(メタ)アクリレートの例としては、ポリオール(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0038】
ポリオール(メタ)アクリレートとは、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルを意味する。ポリオール(メタ)アクリレートを構成する多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、シクロヘキサンジメチロール、1,4-シクロヘキサンジオール、スピログリコール、トリシクロデカンジメチロール、水添ビスフェノールA、エチレンオキサイド付加ビスフェノールA、プロピレンオキサイド付加ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリジメチロールプロパン、グリセリン、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコース類などを挙げることができる。
【0039】
ポリオール(メタ)アクリレートの具体例を挙げると、1,6-ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどがある。
【0040】
ウレタン(メタ)アクリレートとは、分子内にウレタン結合(-NHCOO-)と少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を意味する。具体的には、1分子中に少なくとも1個の水酸基が残っているポリオール(メタ)アクリレートをジイソシアネートに反応させることにより製造できる。この反応におけるジイソシアネートとしては、例えば、芳香族、脂肪族又は脂環式の各種ジイソシアネート類を使用することができる。具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、3,3′-ジメチルビフェニル-4,4′-ジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネートなどが挙げられる。これらのうち芳香族ジイソシアネートは、その水添物として使用することもできる。
【0041】
また、高い可撓性が付与されるとともに硬化収縮が緩和されたハードコート層を得るために、例えば特開 2007-46031 号公報に記載されるような、ポリオール(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、及び少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーの混合物を、紫外線硬化性樹脂とすることもできる。この場合、ポリオール(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートとしては、それぞれ上に例示したものから適宜選択して、1種又は2種以上を用いることができる。この場合のポリオール(メタ)アクリレートは、好ましくはペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートを含む。また、上記の少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーとして、具体的には例えば、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートの単独重合体や、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体などが挙げられる。
【0042】
以上のような紫外線硬化性樹脂に、先に説明したような無機フィラーを配合した組成物を、偏光子の表面に塗布し、紫外線を照射して硬化させることにより、本発明で規定する高い弾性率の保護膜とすることができる。また、本発明で規定する保護膜の表面に一層の表面硬度を付与することを望む場合には、その保護膜の上に上記したような紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線を照射して硬化させ、追加のハードコート層とすることもできる。

(中略)

【0045】
さらに、紫外線硬化性樹脂を含むコーティング組成物には通常、光重合開始剤が混合して用いられる。上記したような(メタ)アクリレート系の紫外線硬化性樹脂に対してはラジカル系の光重合開始剤が用いられ、各種のものが市販されている。市販されているラジカル系光重合開始剤の代表的な例を、化学構造から分類し、さらに化学名とメーカー及び商品名で示すと、次のようなものがある。」

ウ 「【0063】
[光学部材]
また偏光板の使用に際しては、本発明で規定する保護膜層を介して、偏光機能以外の光学機能を示す光学層を設けた光学部材とすることもできる。光学部材の形成を目的に偏光板に積層される光学層には、例えば、反射層、半透過型反射層、光拡散層、位相差板、集光板、輝度向上フィルムなど、液晶表示装置等の形成に用いられるものがある。前記の反射層、半透過型反射層及び光拡散層は、反射型ないし半透過型や拡散型、それらの両用型の偏光板からなる光学部材を形成する場合に用いられるものである。」

エ 「【0066】
[液晶表示装置]
以上説明したような偏光板又は光学部材は、液晶セルの片側又は両側に配置して、液晶表示装置とすることができる。液晶セルは、種々のモードのものであることができる。」

(2)引用文献に記載された発明
上記記載事項イの段落【0034】、【0036】には、偏光板に関し、偏光子の保護膜自体にハードコート性能が付与された保護膜を形成することが記載されており、特に段落【0041】には、高い可撓性が付与されるとともに硬化収縮が緩和されたハードコート層を得ることが記載されている。
そうすると、引用文献1の記載事項イに基づけば、引用文献1には、高い可撓性が付与されるとともに硬化収縮が緩和されたハードコート層を保護膜とした偏光板として、以下の発明が記載されていると認められる。
「偏光子の少なくとも片面に保護膜を形成した偏光板であって、
保護膜が、引張弾性率(単位:N/mm^(2) )と厚さ(単位:mm)の積が40N/mm以上となるように、厚さ2μm 以上20μm 以下であって、
保護膜を形成する組成物として、保護膜自体にハードコート性能を付与する紫外線硬化性樹脂が使用され、さらに紫外線硬化性樹脂は、高い可撓性が付与されるとともに硬化収縮が緩和されたハードコート層を得るために、ポリオール(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、及び少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーの混合物であり、少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーは、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、さらに、紫外線硬化性樹脂を含むコーティング組成物にラジカル系の光重合開始剤が混合して用いられ、
保護膜は、紫外線硬化性樹脂を含むコーティング組成物を偏光子に塗布し、紫外線を照射することにより形成されたものである、
偏光板。」(以下、「引用発明」という。)

5 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。

(ア)引用発明の「偏光子」、「保護膜」及び「偏光板」は、技術的にみて、それぞれ、本件発明1の「偏光子」、「保護層」及び「偏光板」に相当する。
そして、引用発明の「保護膜」は、「偏光子の少なくとも片面」に「形成した」ものとされているから、本件発明1の「保護層」における「前記偏光子の少なくとも一面に形成される」とする要件を満たしている。
また、引用発明の「偏光板」は、「偏光子の少なくとも片面に保護膜を形成」してなるものであるから、本件発明1の「偏光板」における「偏光子と、前記偏光子の少なくとも一面に形成される保護層とを含む」とする要件を満たしている。

(イ)引用発明の「保護膜」は、「紫外線硬化性樹脂を含むコーティング組成物にラジカル系の光重合開始剤が混合して用いられ」、「紫外線硬化性樹脂を含むコーティング組成物を偏光子に塗布し、紫外線を照射することにより形成された」保護膜であるから、紫外線の照射によりコーティング組成物が硬化物となり保護膜を形成するものといえる。したがって、引用発明の「コーティング組成物」は、本件発明1の「ラジカル硬化型組成物」に相当し、引用発明の「保護膜」は、本件発明1の「ラジカル硬化型組成物の硬化物」であるとする要件を満たしている。

(ウ)引用発明の「コーティング組成物」に混合して用いられる「ラジカル系の光重合開始剤」は、技術的にみて、本件発明1の「(C)ラジカル開始剤」に相当する。そうすると、引用発明の「コーティング組成物」と本件発明1の「ラジカル硬化型組成物」とは、「(C)ラジカル開始剤を含み、」とする点で共通する。

(エ)以上より、本件発明1と引用発明とは、
「偏光子と、前記偏光子の少なくとも一面に形成される保護層とを含む偏光板であって、前記保護層は、ラジカル硬化型組成物の硬化物であり、前記ラジカル硬化型組成物は、(C)ラジカル開始剤を含む偏光板。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]ラジカル硬化型組成物が、本件発明1は、「水酸基価(hydroxy value)が500mg・KOH/g以上900mg・KOH/g以下」であって、「(A)分子内に少なくとも2つのヒドロキシ基を含むラジカル重合性の第1化合物」と、「(B)分子内に少なくとも1つの親水性官能基を含むラジカル重合性の第2化合物」とを含み、かつ「前記ラジカル重合性の第2化合物は、下記の化学式18?化学式23で表される化合物からなる群より選択された1種以上である」のに対し、引用発明は、水酸基価が明らかにされておらず、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体である、少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーを含む点。
(合議体注:「下記の化学式18?化学式23」は、前記3に記載したとおりのものである。)

イ 判断
(ア)まず、上記[相違点]が実質的な相違点であるかについて検討する。
引用発明の、「少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー」は、「2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体」である。そして、「2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート」は、本件発明1の「(A)分子内に少なくとも2つのヒドロキシ基を含むラジカル重合性の第1化合物」に該当し、「2-ヒドロキシエチルアクリレート」は、本件発明1の「化学式18」で表される化合物である「(B)分子内に少なくとも1つの親水性官能基を含むラジカル重合性の第2化合物」に該当する。
しかしながら、引用発明の「コーティング組成物」は、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートをモノマーとして含むものではない。引用発明の「ポリオール(メタ)アクリレート」は、本願明細書の段落【0070】に記載される「(D)多官能性(メタ)アクリル系化合物」に該当し、水酸基及び親水性官能基を有さないものであり、また、引用発明の「ウレタン(メタ)アクリレート」も水酸基及び親水性官能基を有さないものであるから、本件発明1の「第1化合物」及び「第2化合物」の何れもに該当しない。したがって、引用発明の「コーティング組成物」は、本件発明1の「第1化合物」及び「第2化合物」の何れも含んでいない。
また、本件発明1は、ラジカル硬化型組成物について「(A)・・・ラジカル重合性の第1化合物、(B)・・・ラジカル重合性の第2化合物、および(C)ラジカル開始剤を含み、」と記載していることから、本件発明1は、ラジカル硬化型組成物に、(A)第1化合物、(B)第2化合物、および(C)ラジカル開始剤以外の、上記ポリオール(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートを含むことを包含しているといえる。そこで、引用発明のコーティング組成物から形成される保護膜と、本件発明1のラジカル硬化型組成物の硬化物とが、硬化物として等しいものといえるかについて検討すると、ポリオール(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートとともに、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートをモノマーとして混合した組成物を、偏光子に塗布し、紫外線を照射して形成した硬化物と、ポリオール(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートに、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体を混合した組成物を、偏光子に塗布し、紫外線を照射して形成した硬化物とは、モノマー成分が共通するものの、前者は、ポリオール(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートが2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートと混在して共重合体を形成するものであるのに対し、後者は、ポリオール(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートにより形成される共重合体中に、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体が混在して高い可撓性が付与されるとともに硬化収縮が緩和されたハードコート層を形成するというものである。したがって、可撓性等について同じ物性を備えた硬化物が形成されるとはいえない。そして、本件発明1は、ラジカル硬化型組成物が、ポリオール(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートを含むものに限定されず、他の成分を含むことを排除していないものであるが、引用発明のコーティング組成物は、ポリオール(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、及び少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー以外に、本件発明1の「(A)分子内に少なくとも2つのヒドロキシ基を含むラジカル重合性の第1化合物」と、「(B)分子内に少なくとも1つの親水性官能基を含むラジカル重合性の第2化合物」を含まないものであるから、引用発明のコーティング組成物により形成される保護膜が、本件発明1のラジカル硬化型組成物の硬化物と、同じ物性を備えたものとなるとはいえない。
さらに、引用発明は、「コーティング組成物」に含まれる化合物の分量が特定されない発明であるから、引用発明の「コーティング組成物」における水酸基価を推定することができず、その値が本件発明1における500mg・KOH/g以上900mg・KOH/g以下の範囲にあるということができないから、本件発明1の「保護層」とは物性(保護層中の水酸基の密度)が異なるといえる。
したがって、上記[相違点]は実質的に相違するものといえるから、本件発明1と引用発明とが同一の発明であるということはできない。

(イ)次に、進歩性について検討する。
引用文献1には、記載事項イの段落【0026】に「コーティングによって保護膜を形成する組成物には、樹脂又はその前駆体を主成分とするものが有利に用いられ、・・・(中略)・・・なお、ここでいう樹脂前駆体とは、重合性のモノマー又はオリゴマーを意味する。」との記載があり、段落【0028】に「保護膜を形成するための樹脂は、保護膜形成用のコーティング組成物として、重合体を配合したものを用いてもよいし、モノマーを配合した組成物を塗工後、活性エネルギー線の照射や加熱により重合・硬化させることで形成してもよい。」との記載がある。しかし、段落【0037】の「紫外線硬化性樹脂としては、市販されているものを用いることができ、例えば、多官能(メタ)アクリレートを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。・・・(中略)・・・多官能(メタ)アクリレートの例としては、ポリオール(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートを挙げることができる。」との記載に基づけば、引用発明における保護膜を形成する組成物における「樹脂又はその前駆体に該当する化合物」は、ポリオール(メタ)アクリレート及びウレタン(メタ)アクリレートであることは明らかである。
そして、引用発明における、「少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマー」は、ポリオール(メタ)アクリレートやウレタン(メタ)アクリレートからなる多官能(メタ)アクリレートを1種又は2種以上組み合わせて用いて得られるハードコート性能に加えて、「高い可撓性が付与されるとともに硬化収縮が緩和された」ハードコート層を得るために、新たに加えられたものであるから、少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーの代わりにそのモノマーを用いるとすると、高い可撓性を付与し硬化収縮を緩和する効果を阻害することとなる。したがって、引用発明における少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーを混合する代わりに、当該ポリマーを構成するモノマーを混合することは、当業者であっても、容易になし得るということができない。
そうしてみると、たとえ当業者といえども、引用発明の「コーティング組成物」に基づいて、本件発明1の「ラジカル硬化型組成物」の組成(上記モノマーを含む構成)に到ることはないといえる。そして、組成物の組成が相違するからには、その硬化物もまた何らかの点において相違するといえるから、本件発明1の「硬化物」の構成に到ることもないといえる。
あるいは、引用発明は、「コーティング組成物」に含まれる化合物が特定されない発明である。また、引用発明の「コーティング組成物」に関して、引用文献1の段落【0041】では特開2007-46031号公報が引用されているところ、その段落【0042】、【0044】及び【0047】、並びに、実施例(段落【0161】?【0223】に開示された組成比を考慮すると、当業者が引用発明の「コーティング組成物」の水酸基価を「500mg・KOH/g以上900mg・KOH/g以下」の範囲とすることが容易であったということはできないから、本件発明1の「保護層」の構成に到ることも容易であったということはできない。
よって、本件発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

ウ むすび
以上のとおりであるから、本件発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当するものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものともいえない。

(2)本件発明2?15について
本件発明2?15は、いずれも、本件発明1の、ラジカル硬化型組成物が「水酸基価(hydroxy value)が500mg・KOH/g以上900mg・KOH/g以下」であって、「(A)分子内に少なくとも2つのヒドロキシ基を含むラジカル重合性の第1化合物」と、「(B)分子内に少なくとも1つの親水性官能基を含むラジカル重合性の第2化合物」とを含み、かつ「前記ラジカル重合性の第2化合物は、下記の化学式18?化学式23で表される化合物からなる群より選択された1種以上である」とする構成を備えている。そうすると、本件発明2?15も、本件発明1と同じ理由により、引用発明とと同一の発明であるということができず、引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものともいえない。

6 原査定について
本件発明1?15は、いずれもラジカル硬化型組成物が「水酸基価(hydroxy value)が500mg・KOH/g以上900mg・KOH/g以下」であって、「(A)分子内に少なくとも2つのヒドロキシ基を含むラジカル重合性の第1化合物」と、「(B)分子内に少なくとも1つの親水性官能基を含むラジカル重合性の第2化合物」とを含み、かつ「前記ラジカル重合性の第2化合物は、下記の化学式18?化学式23で表される化合物からなる群より選択された1種以上である」とする構成を備えている。一方、引用発明は、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体からなる少なくとも2個の水酸基を含むアルキル基を有する(メタ)アクリルポリマーを含むものである。
そうしてみると、前記5(1)及び(2)において検討したとおり、本件発明1?15は、引用発明と同一の発明であるということができず、また、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということもできない。

7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-26 
出願番号 特願2016-545699(P2016-545699)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
P 1 8・ 113- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小西 隆  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 宮澤 浩
川村 大輔
発明の名称 偏光板およびこれを含む画像表示装置  
代理人 渡部 崇  
代理人 実広 信哉  
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