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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 G01S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01S
管理番号 1346279
審判番号 不服2017-15987  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-27 
確定日 2018-12-05 
事件の表示 特願2014-538977「ナビゲーションシステム受信機におけるクロックドリフトプロファイル判定」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 2日国際公開、WO2013/063193、平成27年 1月15日国内公表、特表2015-501430、請求項の数(14)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年10月25日を国際出願日(パリ条約による優先権主張2011年10月25日(以下、「優先日」という。)、米国)とする出願であって、平成27年10月19日付けで手続補正がなされ、平成28年8月4日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月9日付けで手続補正がなされたが、平成29年6月23日付けで拒絶査定がなされ(送達日:平成29年6月28日)、これに対し、平成29年10月27日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、当審において、平成30年5月31日付けで拒絶理由が通知され(以下、「当審拒絶理由」という。)、平成30年10月9日付けで手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1-14に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明14」という。)は、平成30年10月9日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-14に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1、2、9に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ナビゲーションシステム受信機であって、
前記ナビゲーションシステム受信機のための受信機クロックを生成するように構成されるクロック源と、
前記クロック源と結合されるテスト回路であって、前記テスト回路により受信されたテスト信号の検出及び追跡に基づいて前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させるように構成される、前記テスト回路と、
を含み、
前記テスト信号が少なくとも1つの連続波(CW)信号を含み、
前記テスト回路が、前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させるために前記少なくとも1つのCW信号の周波数と位相との少なくとも1つを追跡する追跡ユニットを含む、ナビゲーションシステム受信機。」

「【請求項2】
ナビゲーションシステム受信機であって、
前記ナビゲーションシステム受信機のための受信機クロックを生成するように構成されるクロック源と、
前記クロック源と結合されるテスト回路であって、前記テスト回路により受信されたテスト信号の検出及び追跡に基づいて前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させるように構成される、前記テスト回路と、
を含み、
前記テスト信号が少なくとも1つの連続波(CW)信号を含み、
前記テスト回路が、
前記テスト信号のサンプルを受信するように構成されるバッファと、
前記バッファと結合され、前記テスト信号の前記受信したサンプルで動作可能である周波数検出モジュールであって、前記少なくとも1つのCW信号に対して前記受信機クロックに関連付けられる初期周波数オフセットを計算するように構成される、前記周波数検出モジュールと、
前記受信機クロックに関連付けられる前記ドリフトプロファイルの判定を促進させるために前記少なくとも1つのCW信号の周波数と位相との少なくとも1つを追跡する追跡ユニットと、
を含む、ナビゲーションシステム受信機。」

「【請求項9】
ドリフトプロファイル判定の方法であって、
ナビゲーションシステム受信機において、少なくとも1つの連続波(CW)信号を含むテスト信号のサンプルを受け取ることと、
前記テスト信号の前記受信したサンプルに基づいて受信機クロックに関連付けられる初期周波数オフセットを判定することと、
前記初期周波数オフセットを用いて前記少なくとも1つのCW信号のパラメータを追跡することと、
前記少なくとも1つのCW信号の前記パラメータの前記追跡に基づいて、前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させることと、
を含む、方法。」

なお、本願発明3-8、10-14の概要は以下のとおりである。
本願発明3-6、8は、本願発明2を減縮した発明である。
本願発明7は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明10-14は、本願発明9を減縮した発明である。

第3 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献1(特表2004-514877号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は電子回路に関する。さらに詳しくは、本発明は局部発振器(Local Oscillator)(LO)周波数エラーを時間に関してLO周波数に特性を付与することによって補正する新規かつ改善された方法及び装置に関する。」

「【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、多数の動作条件上でLOに特性を付与することと、動作条件に基づいてLOを補正することとによって、局部発振器(LO)の周波数エラーを減少させる新規かつ改善された方法と装置である。」

「【0025】
しかしながら、ダウンコンバータ110内のLO114周波数が不正確であれば、サーチ手順は複雑である。図2は典型的な位相ロックされたループ(Phase Locked Loop)(PLL)合成LO200のブロック図を示す。参照発振器202はPLLに関する周波数参照として用いられる。参照発振器202は固定された発振器であり得るし、或いは小さな同調幅を有する安定した電圧制御発振器(Voltage Controlled Oscillator)(VCO)であり得る。無線電話は参照発振器202として電圧制御温度補正水晶発振器(Voltage Controlled Temperature Compensated Crystal Oscillator)(VCTCXO)を利用してもよい。VCOが参照発振器202として使用されるところでは、参照調整制御ライン(reference adjust control line)204が与えられる。」


「【0032】
図4はGPS性能を有する無線電話400におけるLO安定化回路のブロック図を示す。無線電話400は無線電話システムを通じての通信を可能にする電話トランシーバ410を組み込む。無線電話400はまた、GPS受信機420を組み込み位置決定を支援する。図4にて示される実施形態では、無線電話400は電話モード或いはGPSモードのいずれかで動作し、両方のモードは同時に動作しない。しかしながら、電話とGPSの両モードは、十分な処理性能が無線電話400内に存在すれば、同時に動作し得る。
【0033】
無線周波数(RF)信号はアンテナ402を用いて無線電話へ及び無線電話から接続する。アンテナ402を通じて接続されるRF信号はGPS受信機420に関する受信信号だけでなく、電話トランシーバ410送受信信号をも含む。図4にて示される実施形態では、GPS受信機420と電話トランシーバ410が共通のLO450を分け合う。上述の通り、LO450の不正確さはGPS受信機420に関するより大きなサーチ空間を結果としてもたらす。従って、図4にて示される実施形態は電話トランシーバ410によって受信された情報を利用して、GPS受信機420がサーチを行うときに、LO450周波数エラーが最小にされるようにLO450に特性を付与する。
【0034】
内部LO450に特性を付与するために、無線電話400は高い周波数安定性を有する外部信号を与えられる。デュアルモードスペクトル拡散システムに関する通信工業協会(TIA)/電子工業協会(EIA)95-B移動局-基地局互換性基準にて規定された符号分割多元接続(CDMA)システムのような無線システムにおいは、信号は継続して基地局により放送されている。基地局により継続して放送されている信号はパイロットチャネルと同期チャネルを含む。これらの信号の両方が高い周波数安定性を表し、いずれかがLO450に特性を付与するために必要とされる外部参照として用いられ得る。
【0035】
TIA/EIA 95‐Bによって規定されるようなCDMAシステムで動作するように設計された無線電話400は、受信機内にサーチャを組み込み、パイロット信号の存在を継続的にサーチする。無線電話400では電話トランシーバ410内の受信機が基地局(図示されていない)によって送信されたパイロット信号を受信する。
【0036】
無線電話400はパイロット信号の存在を利用することができGPSモードにおける信号捕捉を改善する。受信機は周波数の安定したパイロット信号を外部周波数参照として利用してLO450における周波数エラーを判断する。受信機によって判断された周波数エラーは発振器特性付与回路430に報告される。さらに、センサ440、442は無線電話400中に配置されLO450周波数エラーに寄与する要因をモニタする。センサ440、442は、温度、温度勾配、RF電力増幅器(PA)動作、RF PAデューティサイクル(duty cycle)、バッテリーボルト数、時間累積電力(cumulative power on time)、湿度或いはLO450周波数エラーに寄与すると判断されるその他の変数を含むがそれらに限定されない要因をモニタし得る。センサ440は信号を発振器特性付与回路430に接続する。センサ440示数(readings)に対応する多くのディジタル化された値は平均化されて、その平均はメモリ434のアレイに記憶される。センサ440がアナログ値を出力するならば、発振器特性付与回路430は、平均化しメモリ430内に平均値を記憶する前に、該示数をディジタル化する。センサ440がディジタル値を出力するならば、発振器特性付与回路430は信号をさらに条件付ける必要はなく、平均化されたディジタルセンサ440示数を単に保管する。発振器特性付与回路430の一部を形成する処理装置432は平均化機能を実行する。
【0037】
発振器特性付与回路430はまた電話トランシーバ410によって判断され報告される多くの周波数エラー示数を平均化する。平均化された周波数エラー示数はまたメモリ434のアレイに記憶される。平均化された周波数エラーは対応する平均化されたセンサ440-442示数に関連したメモリ434位置に記憶される。このような方法で、動作環境の断片とLO450の関連する周波数エラーがカタログ化される。発振器特性付与回路430は、無線電話400が電話モードで動作しているかぎり、新たなセンサ440示数と関連する周波数エラーを累積し続ける。無線電話400がGPSモードで動作するとき、発振器特性付与回路430は以前に保管したセンサ440示数と周波数エラー情報とを利用してGPS受信機420の信号捕捉を援助する。」

「【0039】
発振器特性付与回路430は、代わりに、周波数エラーの値をGPS受信機420に情報バス436上で送信してもよい。周波数エラーを知ることによってGPS受信機420はサーチ空間を狭めることができ、より少ない計算で信号を捕捉することができる。発振器特性付与回路430は、代わりに2つの訂正の組合せを供給しても良い。発振器特性付与回路430は、GPS受信機420にGPSモードへ最初に入った際周波数を知らせてもよい、そして無線電話400がGPSモードである間にLO制御ライン438上で信号を与えることによってどんな周波数ドリフトをも訂正してもよい。活発なLO450周波数ドリフトを訂正することによって、LO450周波数が連続的相関の集積中に多数の周波数ビン上をドリフトするときに生じる信号スミヤリングが最小化される。
【0040】
LO制御ライン438上で供給される信号を用いたLO450周波数エラー補正は、図2で示されるように、PLL合成LO200上で実行され得る。図2に参照を戻して、出力周波数244が参照発振器202の出力に比例することを思い出しなさい。一旦、参照発振器202のVCO利得がわかれば、参照調整204電圧における所与の変化に対する出力周波数244における変化が判断され得る。こうして、図4の発振器特性付与回路430はPLL合成LO200の参照調整204ラインを駆動する電圧を計算できて判断された周波数エラーを補正する。」


したがって、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(なお、段落【0025】における「LO200」は、段落【0040】のとおり、「LO450」に対応するから、便宜のため、「LO200」を「LO200(LO450)」と表記する。)。
「多数の動作条件上でLOに特性を付与することと、動作条件に基づいてLOを補正することとによって、局部発振器(LO)の周波数エラーを減少させるため(段落【0015】より。以下、同様。)の、GPS性能を有する無線電話400におけるLO安定化回路であって、無線電話400は無線電話システムを通じての通信を可能にする電話トランシーバ410を組み込み(段落【0032】)、
GPS受信機420と電話トランシーバ410が共通のLO450を分け合い、電話トランシーバ410によって受信された情報を利用して、GPS受信機420がサーチを行うときに、LO450周波数エラーが最小にされるようにLO450に特性を付与し(【0033】)、
LO200(LO450)の参照発振器202はPLLに関する周波数参照として用いられ(【0025】)、
無線電話400では電話トランシーバ410内の受信機が基地局によって送信されたパイロット信号を受信(【0035】)し、
受信機は周波数の安定したパイロット信号を外部周波数参照として利用してLO450における周波数エラーを判断し、受信機によって判断された周波数エラーは発振器特性付与回路430に報告され、さらに、センサ440、442は無線電話400中に配置されLO450周波数エラーに寄与する要因をモニタし、センサ440は信号を発振器特性付与回路430に接続し、センサ440示数(readings)に対応する多くのディジタル化された値は平均化されて、その平均はメモリ434のアレイに記憶され(【0036】)、
発振器特性付与回路430はまた電話トランシーバ410によって判断され報告される多くの周波数エラー示数を平均化し、平均化された周波数エラーは対応する平均化されたセンサ440-442示数に関連したメモリ434位置に記憶され、無線電話400がGPSモードで動作するとき、発振器特性付与回路430は以前に保管したセンサ440示数と周波数エラー情報とを利用してGPS受信機420の信号捕捉を援助(【0037】)する、
LO安定化回路(【0032】)。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特表2009-533661号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、一般に、デジタル・クロック回路に関し、より具体的には、クロック・ジッタ及び動作周期を評価する回路及びシステムに関する。」

「【0005】
従って、低価格で、探索誤差のない製品回路中に少なくとも部分的に組み込むことが可能であり、そして未知周波数のクロック信号のジッタ及びパルス幅を迅速に決定することが可能な、クロック信号のジッタ及びパルス幅を決定する方法及び装置を提供することが望まれる。」

「【0020】
データ収集に必要な回路は測定回路11として別個に示されており、サンプル・ラッチL1、基準クロック15、及び基準クロック15のエッジにおけるインターフェース12のクロック信号の収集されたサンプル値のための記憶装置16を含む。プロセッサ18及びメモリ19は、本発明による方法を実行するためにオプション的に含められ、或いは、記憶装置16からの生データは、境界ラッチ17を介してテスト・システムによってクロック・アウトすることができ、又はさもなければ、インターフェース13Bを介してユニット10Bから読み出すことができる。また、プロセッサ18及びメモリ19が含まれており、サンプリングされたクロック・データがローカルに処理される場合、インターフェース13B及び/又は境界ラッチ17は、本発明による方法によって実行される分析の結果を読み出して取得することができる。」


「【0037】
図9は、本発明の代替的な実施形態による方法を示す。推測周期TGを掃引しながらジッタ分析を実行するのではなく、図9の方法はサンプル・セットを予め分析してTGを直接決定する。初めに、図3の方法のように、測定すべきクロック信号を不完全関連周波数のローカル基準クロックによりサンプリングしてN個のサンプル値を得る(ステップ90)。測定すべきクロック信号の周期が既知である場合には、Tはその周期に設定され、そうでない場合にはTは1に設定される(ステップ91)。次に、離散型フーリエ変換(DFT)をサンプル・セットに施し(ステップ92)、DFT結果の中のピーク値の位置を見出だし(ステップ93)、これからTとピーク・インデックスの積をサンプル値の数で割ることによってTGが得られる。次に、時間軸がTGから生成され、オプションのドリフト補正が適用され、サンプル値は、オプション的にドリフト補正された時間軸を用いて、単位区間に折り重ねられる(ステップ94)。サンプル値は次に、時間軸によって示される部分区間に従ってヒストグラムのビンの中に入れられ、そして、累積分布関数(cdf)が各ビン内のサンプル値の2つの論理値「1」及び「0」のカウント数の比によって計算される。次にcdfを微分して確率密度関数(pdf)が得られ、そのpdfの形状からジッタが決定される(ステップ97)。図3の方法のように、ピーク・ツー・ピークのジッタは、pdfのピーク幅から決定することができ、rmsジッタはpdfピークの偏差から計算することができる。次に、パルス幅は、pdf中のピーク間の時間差から決定される(ステップ98)。」


よって、引用文献2には、次の技術事項が記載されていると認められる。
「製品回路中に少なくとも部分的に組み込むことが可能であり、そして未知周波数のクロック信号のジッタ及びパルス幅を迅速に決定することが可能な、クロック信号のジッタ及びパルス幅を決定する方法及び装置(段落【0005】より。以下、同様。)であって、
データ収集に必要な測定回路11は、サンプル・ラッチL1、基準クロック15、及び基準クロック15のエッジにおけるインターフェース12のクロック信号の収集されたサンプル値のための記憶装置16を含み(【0020】)、
測定すべきクロック信号を不完全関連周波数のローカル基準クロックによりサンプリングしてN個のサンプル値を得、測定すべきクロック信号の周期が既知でない場合にはTは1に設定され、次に、離散型フーリエ変換(DFT)をサンプル・セットに施し、DFT結果の中のピーク値の位置を見出だし、これからTとピーク・インデックスの積をサンプル値の数で割ることによってTGが得られ、次に、時間軸がTGから生成され、サンプル値は、時間軸を用いて、単位区間に折り重ねられ、サンプル値は次に、時間軸によって示される部分区間に従ってヒストグラムのビンの中に入れられ、そして、累積分布関数(cdf)が各ビン内のサンプル値の2つの論理値「1」及び「0」のカウント数の比によって計算され、次にcdfを微分して確率密度関数(pdf)が得られ、そのpdfの形状からジッタが決定され、ピーク・ツー・ピークのジッタは、pdfのピーク幅から決定することができ、rmsジッタはpdfピークの偏差から計算することができ、パルス幅は、pdf中のピーク間の時間差から決定される(【0037】)、
クロック信号のジッタ及びパルス幅を決定する方法及び装置(【0005】)。」

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された、引用文献3(米国特許出願公開第2008/0094861号明細書)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「[0033] FIG. 7A is a block diagram of an improved ramp voltage generator circuit which can be used instead of the circuitry in block 19 A of FIG. 6 to synchronize operation of the predictive duty cycle controller with an external clock signal.」
(当審訳:図7Aは、予測的なデューティ・サイクル制御器の動作を外部クロック信号と同期するために、図6のブロック19Aの回路の代わりに用いることのできる、改良されたランプ電圧発生器回路のブロックダイヤグラムです。)

[0061] The phase of the pulse edge of the signal V49 produced at the output 49 of delay circuit 48 is compared to the phase of external clock CLKEXT by phase-frequency detector 50 , the output of which is input to charge-pump-based loop filter 49 . Loop filter 49 then controls current mirror input transistor 44 to generate the output current in current mirror output transistor 42 A. The derived signal V49 at the output of delay circuit 48 is phase and frequency locked to external clock CLKEXT. Therefore, phase locked loop 48 maintains the peak value of CLKEXT constant at Vref despite typical semiconductor process variations. Therefore, the latch output signal CLKINT is also phase and frequency locked with respect to external clock signal CLKEXT, but is skewed in phase with respect to internal signal V49 by the amount of delay produced in delay circuit 48 . 」(当審訳:遅延回路48の出力49において生成された信号V49のパルス縁の位相は、位相周波数検出器50によって、外部クロックCLKEXTの位相と比較され、その出力は、電荷ポンプ・ベースのループフィルタ49に入力されます。ループフィルタ49は、それから、カレントミラー出力・トランジスタ42Aにおいて出力電流を発生するために、カレントミラー入力トランジスタ44を制御します。遅延回路48の出力における、導出された信号V49は、外部クロックCLKEXTに位相と周波数で同期(locked)しています。それゆえ、位相同期(locked)ループ48は、典型的な半導体の製造プロセスの変動にもかかわらず、CLKEXTのピーク値をVrefに維持します(当審注:「DC-DC・ブースト・コンバータを外部クロックCLKEXTに同期させて駆動させる場合であっても、VRAMPのピーク値をVrefに維持します」の意味)。よって、ラッチ出力信号CLKINTもまた、外部クロック信号CLKEXTに対して位相周波数同期(locked)していますが、しかし、内部遅延信号V49に対しては、遅延回路48によって生成される遅延量によって、位相がスキューしています。)


第4 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「GPS性能を有する無線電話400」が、本願発明1における「ナビゲーションシステム受信機」に相当する。

イ 引用発明では、「GPS受信機420と電話トランシーバ410が共通のLO450を分け合」っており、「GPS受信機420がサーチを行うときに、LO450周波数エラーが最小にされるようにLO450に特性を付与し」ているから、引用発明における「内部LO450」(以下、「LO450」ともいう。)は、「GPS受信機420」のための「LO450」であるといえる。
よって、「GPS受信機420」のための「LO450」の発生する信号が、本願発明1における「前記ナビゲーションシステム受信機のための受信機クロック」に相当する。

ウ 上記「イ」を踏まえると、引用発明における、「PLLに関する周波数参照として用いられ」る「LO200(LO450)」が、本願発明1における「前記ナビゲーションシステム受信機のための受信機クロックを生成するように構成されるクロック源」に相当する。

エ 引用発明における「電話トランシーバ410」は、GPS受信機420と「LO450を分け合」っているから、引用発明における「LO450」(より正確には、その「参照発振器202」)が、「電話トランシーバ410」に結合されていることは明らかである。
また、引用発明における「電話トランシーバ410内の受信機」は「判断された周波数エラー」を「発振器特性付与回路430に報告」し、「センサ440、442」は「無線電話400中に配置されLO450周波数エラーに寄与する要因をモニタし、センサ440は信号を発振器特性付与回路430に接続し」ている。
よって、引用発明における(「参照発振器202」が結合されている)「電話トランシーバ410」、「発振器特性付与回路430」及び「センサ440-442」(以下、包括的に、「発振器特性付与回路430等」という。)は、一体となって「LO450周波数エラー」をテストしているといえるから、本願発明1における「前記クロック源と結合されるテスト回路」に相当するといえる。

オ 引用発明における「基地局によって送信されたパイロット信号」は、「受信機」が「外部周波数参照として利用してLO450における周波数エラーを判断」する信号であるから、本願発明における「テスト信号」に相当する。
また、引用発明における上記「基地局によって送信されたパイロット信号」は、「外部周波数参照として利用」できるものであって、通常、所定の期間にわたって連続波(CW)として送信されるものであり、これは、本願発明1における「前記テスト信号が少なくとも1つの連続波(CW)信号を含」むことに相当する。

カ 引用発明における「発振器特性付与回路430等」の「電話トランシーバ410内の受信機」は、「周波数の安定したパイロット信号を外部周波数参照として利用してLO450における周波数エラーを判断」しているのであるから、「パイロット信号」を「利用」するために、「検出」していることは明らかなことである。
よって、引用発明における「発振器特性付与回路430等」は、(その「電話トランシーバ410内の受信機」によって)「パイロット信号」を「検出」しているといえるから、本願発明1における「前記テスト回路により受信されたテスト信号の検出及び追跡に基づいて前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させるように構成される前記テスト回路」とは、「前記テスト回路により受信されたテスト信号の検出を行う、前記テスト回路」の点で共通するといえる。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ナビゲーションシステム受信機であって、
前記ナビゲーションシステム受信機のための受信機クロックを生成するように構成されるクロック源と、
前記クロック源と結合されるテスト回路であって、前記テスト回路により受信されたテスト信号の検出を行う、前記テスト回路と、
を含み、
前記テスト信号が少なくとも1つの連続波(CW)信号を含む、
ナビゲーションシステム受信機。」

(相違点1)
本願発明1では、テスト回路が、「前記テスト回路により受信されたテスト信号の検出及び追跡に基づいて前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させるように構成される」のに対し、引用発明では、「発振器特性付与回路430等」が「パイロット信号」を「検出」しているといえるものの、「パイロット信号」の「検出及び追跡」に基づいて「LO450」の発生する信号に関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させるように構成されることは示されていない点(なお、本願発明1でいう「ドリフトプロファイル」とは、本願明細書の段落【0003】に記載されているとおり、「時間にわたりクロック周波数がどのように変化するかのプロファイル」のことである。)。

(相違点2)
本願発明1では「前記テスト回路が、前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させるために前記少なくとも1つのCW信号の周波数と位相との少なくとも1つを追跡する追跡ユニットを含む」のに対し、引用発明における「発振器特性付与回路430等」では、そのような追跡ユニットを含んでいない点。

(2)判断
新規性について
本願発明1と引用発明との間には、上記相違点1、相違点2があるから、本願発明1は、引用発明と同一発明ではない。

進歩性について
事案に鑑みて、まず、上記相違点2について検討する。
引用文献2には、「周期が既知でない」「クロック信号」について、「測定すべきクロック信号を不完全関連周波数のローカル基準クロックによりサンプリングしてN個のサンプル値を得、次に、離散型フーリエ変換(DFT)をサンプル・セットに施し、DFT結果の中のピーク値の位置を見出だし、これからTとピーク・インデックスの積をサンプル値の数で割ることによってTGが得られ」、「TGから生成され」た「時間軸を用いて」、「サンプル値」を「単位区間」で「折り重ね」、「時間軸によって示される部分区間」をパラメータとした統計的処理を施すことによって、「測定すべきクロック信号」の「ジッタ及びパルス幅を決定する方法」が記載されている。
また、引用文献3には、外部クロック信号CLKEXTに対して位相周波数同期した出力信号CLKINTを発生させる、位相周波数検出器50を用いた周知の位相周波数同期(locked)ループ回路が記載されている。
しかし、引用文献2、引用文献3の何れの文献にも、上記相違点2に係る本願発明1の構成は、記載も示唆もされていないから、引用発明の「発振器特性付与回路430等」において、上記相違点2に係る本願発明1のように「追跡ユニット」を備える構成とすることは、当業者といえども、容易に想到し得たことであるとはいえない。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明1は、引用発明と同一発明ではない。また、本願発明1は、上記相違点1について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術(引用文献3)に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2は、本願発明1における上記相違点2と同様の「前記受信機クロックに関連付けられる前記ドリフトプロファイルの判定を促進させるために前記少なくとも1つのCW信号の周波数と位相との少なくとも1つを追跡する追跡ユニット」を構成として含むものである。
よって、本願発明2は、本願発明1について述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術(引用文献3)に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

3.本願発明7について
本願発明7は、本願発明1を減縮した発明であるから、本願発明1について述べたのと同様の理由により、引用発明と同一ではなく、また、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術(引用文献3)に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4.本願発明3-6、8について
本願発明3-6、8は、本願発明2を減縮した発明であるから、上記「2.」で述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術(引用文献3)に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

5.本願発明9について
本願発明9と引用発明とを対比すると、両者は、次の相違点3の点で相違する。
(相違点3)
本願発明9は、「ドリフトプロファイル判定方法」であって、「前記初期周波数オフセットを用いて前記少なくとも1つのCW信号のパラメータを追跡することと、前記少なくとも1つのCW信号の前記パラメータの前記追跡に基づいて、前記受信機クロックに関連付けられるドリフトプロファイルの判定を促進させることと」を含むのに対し、引用発明における「発振器特性付与回路430等」では、「ドリフトプロファイル判定」が行われておらず、したがって、「ドリフトプロファイル判定を促進させる」のに必要とされる「前記初期周波数オフセットを用いて前記少なくとも1つのCW信号のパラメータを追跡する」構成を含んでいない点。

そこで、上記相違点3について検討すると、引用文献2、引用文献3の何れの文献にも、上記相違点3に係る本願発明9の構成は、記載も示唆もされていない。
よって、引用発明の「発振器特性付与回路430等」において、上記相違点3に係る本願発明9のように、「前記初期周波数オフセットを用いて前記少なくとも1つのCW信号のパラメータを追跡する」構成を備えるようにし、これに基づいて「ドリフトプロファイル判定方法」を行なうようにすることは、当業者といえども、容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本願発明9は、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術(引用文献3)に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

6.本願発明10-14について
本願発明10-14は、本願発明9を減縮した発明であるから、上記「5.」で述べたのと同様の理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術(引用文献3)に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第5 原査定の概要
原査定における拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
「理由1.(新規性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

理由3.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

<理由1(特許法第29条第1項第3号)について>
・請求項1、7、9-10
・引用文献1
本願の請求項1、7、9-10に係る発明は、引用文献1に記載された発明である。

<理由2(特許法第29条第2項)について>
・請求項1、7、9-10
・引用文献1
本願の請求項1、7、9-10に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

・請求項2-6、8、11-26
・引用文献1-3
本願の請求項2-6、8、11-26に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1-3の記載に基づいて、当業者が容易になし得たことである。

<理由3(特許法第36条第6項第2号)について>
・請求項12
(1)「テスト信号に対応し…周波数ドメイン表示」なる記載の意味が、日本語として明確でない。
(2)「予期される位置」及び「検出された位置」と、「周波数ドメイン表示」との関係が明確でない。

<引用文献等一覧>
1.特表2004-514877号公報
2.特表2009-533661号公報
3.米国特許出願公開第2008/0094861号明細書」

第6 原査定についての判断
(1)理由1、2について
本願発明1、7(なお、原査定における拒絶の対象とされた請求項9-10は、平成30年10月9日付けの手続補正により、削除されている。)が、引用発明と同一ではないことは、上記「第4」「1.」、「3.」で述べたとおりである。
また、本願発明1-14が、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術(引用文献3)に基づいて容易に発明をすることができたものではないことは、上記「第4」「1.」-「6.」で述べたとおりである。
よって、原査定における理由1、2は維持できない。

(2)理由3について
ア 請求項10(原査定における拒絶の対象とされた請求項12に対応する。)の記載が明確であるか、以下に検討する。
(ア)「テスト信号に対応し…周波数ドメイン表示」なる記載について
本願明細書の段落【0033】に、「406において、方法400は、テスト信号に対応する検出可能周波数ピークを含む周波数ドメイン表示にアクセスすることを含む。周波数ドメイン表示は、テスト信号のFFTを実行することにより得られる。」と記載されているとおり、請求項10における「周波数ドメイン表示」とは、テスト信号を周波数分析することによって得られる表示を意味していることは、当業者にとって明らかなことである。
よって、請求項10における「テスト信号に対応し…周波数ドメイン表示」なる記載は、「テスト信号に対応する」「周波数ドメイン表示」を意味していることは明らかである。

(イ)「予期される位置」及び「検出された位置」と「周波数ドメイン表示」との関係について
本願発明10は、「初期周波数オフセットを判定する」ために「周波数ドメイン表示」を行っているのであるから、請求項10に記載された「ピークの予期される位置」及び、「ピークの」「検出された位置」が、「周波数ドメイン表示」における位置であることは、当業者にとって自明のことである。

イ まとめ
以上のとおり、請求項10の記載は明確であって、原査定における理由3は維持できない。

第7 当審拒絶理由通知の概要
当審において通知した拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「平成29年10月27日付けでした手続補正は、下記の点で国際出願日における国際特許出願の明細書若しくは図面(図面の中の説明に限る。)の翻訳文、国際出願日における国際特許出願の請求の範囲の翻訳文(特許協力条約第19条(1)の規定に基づく補正後の請求の範囲の翻訳文が提出された場合にあっては、当該翻訳文)又は国際出願日における国際特許出願の図面(図面の中の説明を除く。)(以下、翻訳文等という。)(誤訳訂正書を提出して明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をした場合にあっては、翻訳文等又は当該補正後の明細書、特許請求の範囲若しくは図面)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない(同法第184条の12第2項参照)。



請求項9及び請求項17に「前記テスト信号が1より多い衛星から受信される信号を含む」の記載があるが、このような事項は、翻訳文等に記載されていない。
したがって、請求項9及び請求項17に関する補正並びにこれらをそれぞれ引用する請求項10及び請求項18に関する補正は、翻訳文等に記載した事項の範囲内でしたものとは認められない。 」

第8 当審拒絶理由について
平成30年10月9日付けの手続補正により、補正前の請求項9、10、17、18が削除された。
よって、当審拒絶理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-22 
出願番号 特願2014-538977(P2014-538977)
審決分類 P 1 8・ 113- WY (G01S)
P 1 8・ 537- WY (G01S)
P 1 8・ 121- WY (G01S)
P 1 8・ 55- WY (G01S)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼場 正光  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
櫻井 健太
発明の名称 ナビゲーションシステム受信機におけるクロックドリフトプロファイル判定  
代理人 片寄 恭三  

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