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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1346314
審判番号 不服2018-2349  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-31 
確定日 2018-11-12 
事件の表示 特願2017-113006「屋内空間部又は屋外空間部に用いる側面用ネット、及び該側面用ネットの屋内空間部又は屋外空間部への取り付け方法」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年4月11日(以下「優先日」という。)に出願した特願2017-88902号を先の出願として、同年5月22日付けで特許法第41条第1項に規定する優先権の主張を伴う特願2017-113006号として出願されたものであって、同年9月1日付けで拒絶理由通知がされ、同年10月18日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がされ、同年12月11日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年2月1日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。


第2 平成30年2月1日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成30年2月1日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、下記(1)から(2)に補正をするものである。

(1)本件補正前の請求項1(平成29年10月18日提出の手続補正書に記載のもの)
「屋内空間部の側面に又は屋外空間部の支柱間に吊り張りされる防球用等としてのネット体と、該ネット体を空間部の側面、又は支柱間に沿って取り付ける端辺側の連結用ロープから構成された屋内空間部又は屋外空間部に用いる側面用ネットにおいて、前記端辺側の連架用ロープ、又はネット体、或いは前記端辺側の連架用ロープ及びネット体には所望の位置、又は所望の間隔で前記端辺側の連架用ロープとネット体とを一体的に連結するネット体連結手段が設けられ、且つ該ネット体連結手段を介して前記端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付ける前記ネット体の上・下対向端辺側、左・右端辺側のうちの少なくとも一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態で取り付け幅を調整して取り付けられていることを特徴とする屋内空間部又は屋外空間部に用いる側面用ネット。」

(2)本件補正後の請求項1(平成30年2月1日提出の手続補正書に記載のもの)
(下線は補正箇所を示す。)
「屋内空間部の側面に又は屋外空間部の支柱間の形状に応じて形成され、吊り張りされる防球用等としてのネット体と、該ネット体を空間部の側面、又は支柱間に沿って取り付ける端辺側の連架用ロープから構成された屋内空間部又は屋外空間部に用いる側面用ネットにおいて、前記端辺側の連架用ロープ、又はネット体、或いは前記端辺側の連架用ロープ及びネット体には所望の位置、又は所望の間隔で前記端辺側の連架用ロープとネット体とを一体的に連結すべく複数本の連結ロープで構成されたネット体連結手段が設けられ、且つ該ネット体連結手段を介して前記端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付ける前記ネット体の上・下対向端辺側、左・右端辺側のうちの少なくとも一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態でネット体の端部側との取り付け幅を調整して取り付けられていることを特徴とする屋内空間部又は屋外空間部に用いる側面用ネット。」

(3)本件補正(請求項1の補正)の内容について
本件補正は、本件補正前の請求項1の発明特定事項である「屋内空間部の側面に又は屋外空間部の支柱間に吊り張りされる防球用等としてのネット体」を、「屋内空間部の側面に又は屋外空間部の支柱間の形状に応じて形成され、吊り張りされる防球用等としてのネット体」と限定し、「ネット体連結手段」を「複数本の連結ロープで構成されたネット体連結手段」と限定し、さらに、「取り付け幅」を「ネット体の端部側との取り付け幅」と限定するものであり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものといえる。
また、「端辺側の連結用ロープ」を「端辺側の連架用ロープ」とする補正は、請求項1のその他の箇所において「端辺側の連架用ロープ」の記載が複数あること、また、明細書においても、対応する部材を「端辺側の連架用ロープ」と一貫して記載されていることから、特許法第17条の2第5項第3号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当するものと認められる。

2 本件補正発明についての独立特許要件についての検討
上記1 で検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものが含まれるから、本件補正後の請求項1に係る発明(上記(2)に示したもの。以下、「本件補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすものであるか否かについて検討する。

(1)特許法第36条第6項第2号に規定する要件について
本件補正後の請求項1の記載は、上記1(2)のとおりであるところ、本件補正により新たに特定されるものとなった事項である「該ネット体連結手段を介して前記端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付ける前記ネット体の上・下対向端辺側、左・右端辺側のうちの少なくとも一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態でネット体の端部側との取り付け幅を調整して取り付けられている」の意味する内容について検討する。

上記の点について検討するに、「前記端辺側の連架用ロープの両端側を、…ネット体の端部側との取り付け幅を調整して取り付け」るのうち、「ネット体の端部側との取り付け幅」が、何についての「取り付け幅」であるのかが明確でなく、また、「幅」とは、一般に「横方向の長さ」を意味するものであるが、「左・右端辺側のうちの少なくとも一端辺側に沿」う場合は、端辺側の連架用ロープは上下方向に取り付けられるから、「幅」というものも観念できない。
したがって、本件補正後の請求項1の「該ネット体連結手段を介して前記端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付ける前記ネット体の上・下対向端辺側、左・右端辺側のうちの少なくとも一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態でネット体の端部側との取り付け幅を調整して取り付けられている」の意味する内容を理解することができない。

よって、本件補正発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができないものである。

(2)特許法第29条第2項に規定する要件について
本件補正発明は、上記(1)のとおり明確ではないが、明細書の記載(例えば、ネット体を空間部の側面に取り付ける場合は段落【0021】?【0022】等)を考慮し、「該ネット体連結手段を介して前記端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付ける前記ネット体の上・下対向端辺側、左・右端辺側のうちの少なくとも一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態でネット体の端部側との取り付け幅を調整して取り付けられている」とは、少なくとも、ネット体連結手段を介して端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付けるネット体の上・下対向端辺側のうちの少なくとも一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態で、空間部の側面または支柱とネット体の端部との距離を調整して取り付けられている状態を含むものであると解し、念のため本件補正発明の進歩性の要件について検討する。

ア 本件補正発明
本件補正発明は、上記1(2)に記載したとおりのものである。

イ 引用文献、引用発明等
原査定の拒絶の理由で引用された本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2013-233393号公報には、次の記載がある。(下線は審決で付した。以下同じ。)

「【0001】
本発明は、屋内の空間部に防球用、又は間仕切り用として使用するネットの移動装置、屋内の空間部へのネットの吊り張り移動方法に関する。」

「【0027】
本発明の屋内の空間部へのネットの移動装置1の第1実施例について説明する。
【0028】
上記屋内の空間部へのネットの移動装置1は、空間部Kの対向する側面に取り付けるウインチ2(ウインチ2の種類特に問うものでなく、巻き取り用ドラムにロープを巻き取る巻き取り方式のウインチ、又はロープをエンドレス状に移動するエンドレス方式のウインチと巻き取りリールを用いる)と、該ウインチ2の近傍する上部側の位置に取り付けられた滑車3と、前記ウインチ2の駆動で滑車3を介して引き出し移動又はは巻き取り移動する移動用ロープ4(本発明においてロープとは、ワイヤロープ、樹脂用ロープ等の総称である。)と、該移動用ロープ4の先端側に取り付けた連結具(図示せず)と、該連結具と連結すべく両端側に連結用ストッパー6が取り付けられ、滑車3間の長さに形成された吊り張り用ロープ10と、該吊り張り用ロープ10に上端側を取り付けたネット7から構成されている。
【0029】
前記吊り張り用ロープ10は、ネット7の上端側を筒状に形成した挿通部8に挿通することでネット7に設けられ、また、空間部Kのウインチ2の設置された側面11A、11Bとネット7の側端面7A、7Bとの距離L1、L2に応じた位置でネット7の上部両端を固定する調整体5が設けられている。」

「【0039】
本発明の屋内の空間部へのネットの移動装置1は上記のように構成され次に、該移動装置1を用いて屋内の空間部Kにネット7を吊り張り移動する場合、及びネット7を収納移動する場合について説明する。
【0040】
ネット7を空間部Kに吊り張り移動する場合は、先ず、空間部Kの対向する両端側にウインチ2を取り付ける固定枠12を固定し、その上部側近傍に滑車3を取り付ける。
【0041】
その後、両ウインチ2を同期して駆動し移動用ロープ4をそれぞれ空間部Kの床面側に滑車3を介して引き出し移動し、ネット7の上部側に設けられた吊り張り用ロープ10の両端部に取り付けられた連結用ストッパー6に移動用ロープ4の先端に取り付けられた連結具5を介して連結する。
【0042】
この際、ウインチ2の取り付けられた一方の空間部Kの側面11Aとネット7の一方の側端面7Aとの距離L1、及び他方の空間部Kの側面11Bとネット7の他方の側端面7Bとの距離L2に応じて吊り張り用ロープ10におけるネット7の取り付け位置は調整体5を用いて調整する。
【0043】
これにより、空間部Kの形状に応じて常に適切な位置にネット7を吊り張りできる。
【0044】
次に、両ウインチ2を同期して駆動し移動用ロープ4を巻き取り移動するとともに、ウインチ2を固定枠12に沿って滑車3側に移動して滑車3との距離を縮めることで、乱巻き等なく移動用ロープ4を巻き取ることができる。
【0045】
これにより、吊り張り用ロープ10を空間部Kの上方側に移動し、ネット7の上部側を空間部Kの上方に移動する。
【0046】
その後、吊り張り用ロープ10を直線状に空間部に架け渡すべくさらに移動用ロープ4を引っ張り移動し、連結用ストッパー6が滑車3に当接して停止、又はリッミタによりウインチ2の駆動を停止する。
【0047】
これにより、容易にネット7の上端側を空間部に吊り張りすることができる。
【0048】
しかも、吊り張り用ロープ10はネット7の両側端面7A、7Bと両側壁11A、11Bとの距離L1、L2を予め吊り張り用ロープ10へのネット7の取り付け位置で調整しているために、該吊り張り用ロープ10を空間部Kに直線状に吊り張りするだけで空間部Kに応じた最適なネット7の吊り張りを可能とする。」

ここで、段落【0041】にある「連結具5」は「連結具」の誤記と認められ、また、段落【0046】にある「リッミタ」は「リミッタ」の誤記と認められる。
また、引用文献の図2には、ネット7は空間部の側面に応じた形状となっており、空間部の側面に沿って取り付けられている点が示されている。

上記の記載を総合すると、上記引用文献には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「連結具と連結すべく両端側に連結用ストッパー6が取り付けられ滑車3間の長さに形成された吊り張り用ロープ10と、該吊り張り用ロープ10に上端側を取り付けたネット7と、からなり、
ネット7は空間部の側面に応じた形状となっており、空間部の側面に沿って取り付けられるものであり、
吊り張り用ロープ10は、ネット7の上端側を筒状に形成した挿通部8に挿通することでネット7に設けられ、また、空間部Kのウインチ2の設置された側面11A、11Bとネット7の側端面7A、7Bとの距離L1、L2に応じた位置でネット7の上部両端を固定する調整体5が設けられており、
ネット7の上部側に設けられた吊り張り用ロープ10の両端部に取り付けられた連結用ストッパー6には、移動用ロープ4の先端に取り付けられた連結具が連結されており、この際、ウインチ2の取り付けられた一方の空間部Kの側面11Aとネット7の一方の側端面7Aとの距離L1、及び他方の空間部Kの側面11Bとネット7の他方の側端面7Bとの距離L2に応じて吊り張り用ロープ10におけるネット7の取り付け位置は調整体5を用いて調整されており、
両ウインチ2を同期して駆動し移動用ロープ4を巻き取ることで、吊り張り用ロープ10は空間部Kの上方側に移動され、ネット7の上部側は空間部Kの上方に移動され、さらに、連結用ストッパー6が滑車3に当接して停止、又はリミッタによりウインチ2の駆動を停止することで、吊り張り用ロープ10は直線状に空間部に架け渡されたものとなっており、
ネット7の両側端面7A、7Bと両側壁11A、11Bとの距離L1、L2を予め吊り張り用ロープ10へのネット7の取り付け位置で調整しているために、該吊り張り用ロープ10を空間部Kに直線状に吊り張りするだけで空間部Kに応じた最適な吊り張りが可能となっている、
屋内の空間部に防球用、又は間仕切り用として使用するネット7及び吊り張り用ロープ10からなるもの。」

ウ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
後者の「ネット7」は、「空間部の側面に応じた形状となっており、空間部の側面に沿って取り付けられるもの」であり、さらに、「屋内の空間部に防球用、又は間仕切り用として使用する」ものであるから、前者の「屋内空間部の側面に応じて形成され、吊り張りされる防球用等としてのネット体」に相当する。
また、後者の「吊り張り用ロープ10」について、「空間部Kに直線状に吊り張りするだけで空間部Kに応じた(ネットの)最適な吊り張りが可能となって」いるから、この「吊り張り用ロープ10」は、前者の「該ネット体を空間部の側面に沿って取り付ける端辺側の連架用ロープ」に相当する。
また、後者の「ネット7」及び「吊り張り用ロープ10」により、前者の「屋内空間部に用いる側面用ネット」に相当するものを構成している。
また、後者の「挿通部8」は「ネット7」に設けられており、また、「調整体5」は「ネット7の上部両端を固定する」ことから「吊り張り用ロープ10」または「ネット7」のいずれかに設けられていることは明らかである。してみると、後者の「ネット7の上端側を筒状に形成した挿通部8」及び「ネット7の上部両端を固定する調整体5」を有する点と、前者の「前記端辺側の連架用ロープ、又はネット体、或いは前記端辺側の連架用ロープ及びネット体には所望の位置、又は所望の間隔で前記端辺側の連架用ロープとネット体とを一体的に連結すべく複数本の連結ロープで構成されたネット体連結手段が設けられ」ている点とは、「ネット体、或いは前記端辺側の連架用ロープ及びネット体には所望の位置で端辺側の連架用ロープとネット体とを連結すべくネット体連結手段が設けられ」ている点で共通する。
また、後者においては、「吊り張り用ロープ10は、ネット7の上端側を筒状に形成した挿通部8に挿通することでネット7に設けられ、また、空間部Kのウインチ2の設置された側面11A、11Bとネット7の側端面7A、7Bとの距離L1、L2に応じた位置でネット7の上部両端を固定する調整体5が設けられ」ているから、前者と同様、「該ネット体連結手段を介して前記端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付ける前記ネット体の上・下対向端辺側の一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態でネット体の端部側との取り付け幅を調整して取り付けられている」といえる。

したがって、両者の間には、次の一致点、相違点がある。
(一致点)
「屋内空間部の側面に応じて形成され、吊り張りされる防球用等としてのネット体と、該ネット体を空間部の側面に沿って取り付ける端辺側の連架用ロープから構成された屋内空間部に用いる側面用ネットにおいて、ネット体、或いは前記端辺側の連架用ロープ及びネット体には所望の位置で端辺側の連架用ロープとネット体とを連結すべくネット体連結手段が設けられ、且つ該ネット体連結手段を介して前記端辺側の連架用ロープの両端側を、取り付ける前記ネット体の上・下対向端辺側の一端辺側に沿って、ネット体の幅より延出した状態でネット体の端部側との取り付け幅を調整して取り付けられている屋内空間部に用いる側面用ネット。」
(相違点)
「ネット体連結手段」について、本件補正発明は、端辺側の連架用ロープとネット体とを「一体的に」連結すべく「複数本の連結ロープで構成された」ものであるのに対し、引用発明はそのようなものではない点。

エ 相違点についての判断
上記相違点について検討する。
例えば、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-207650号公報に、「前記長物の網7の前記ロープ6への固定については、図4に示すように、前記ロープ6と前記長物の網7の上部及び下部(図外)をまとめてバンド11等の紐体で固定する。その他前記バンド11を使う代わりに、金具等で固定することも可能である。さらに、前記長物の網7に前記ロープへの固定用紐体を予め設けておくことなどして、前記長物の網7を前記ロープ6へ固定してもよい。」(段落【0013】)とあり、図1には、ロープ6が複数箇所で固定されている点が示されており、また、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2013-19198号公報には、「主索ロープ18には、複数の吊り下げ用ロープ20が約3mの間隔をおいて計11本垂下させて取付けられており、この吊り下げ用ロープ20の下端に網体22の上縁部22aが取り付けられている。」(段落【0032】)とあり、また、本件出願の優先日前に頒布された刊行物である実公昭46-10043号公報に、「4は海苔網、7は海苔網吊りロープで上記海苔網張り用ロープ取付環6に取り付けられている。8は海苔網吊りロープ7に取付けられた海苔網吊り副ロープで他端は海苔網に結び付けられている。」とあり、図1及び3には、海苔網吊り副ロープ8が複数設けられている点が示されているように、ネットや網の取り付けに関して、ロープ(連架用ロープ)と網(ネット体)とを一体的に連結すべく、複数本の別のロープや紐(連結ロープ)を設けることは、本件出願の優先日前において、従来周知の常套手段である。
そして、引用発明が、吊り張り用ロープ10とネット7とが固定されるものであることからすれば、引用発明において、吊り張り用ロープ10とネット7とを固定(連結)させる手段として、上記の常套手段である、一体的に連結すべく複数本の連結ロープを設けた構成を用いることは、当業者が適宜なし得る程度のことである。
してみると、引用発明に当該周知技術を適用して、上記相違点に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本件補正発明の発明特定事項全体によって奏される効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲内のものである。

オ したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)補正の却下の決定のむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
平成30年2月1日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年10月18日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

特開2013-233393号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された上記引用文献及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の2で検討した本件補正発明から、「ネット体」に関して(屋内空間部の側面に又は屋外空間部の支柱間)「の形状に応じて形成され、」という限定を削除し、また、「ネット体連結手段」に関して「複数本の連結ロープで構成された」という限定を削除し、また、「取り付け幅」に関して「ネット体の端部側との」という限定を削除したものである。
また、本願発明の「端辺側の連結用ロープ」は、「端辺側の連架用ロープ」の誤記であることは明らかである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに、他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願発明は、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-07-31 
結審通知日 2018-08-21 
審決日 2018-09-05 
出願番号 特願2017-113006(P2017-113006)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (A63B)
P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 573- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
P 1 8・ 572- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大澤 元成  
特許庁審判長 尾崎 淳史
特許庁審判官 吉村 尚
荒井 隆一
発明の名称 屋内空間部又は屋外空間部に用いる側面用ネット、及び該側面用ネットの屋内空間部又は屋外空間部への取り付け方法  

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