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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1346381
審判番号 不服2017-19204  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-25 
確定日 2018-12-04 
事件の表示 特願2016-202900「光学フィルムおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年4月19日出願公開,特開2018-63402,請求項の数(4)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2016-202900号(以下「本件出願」という。)は,平成28年10月14日に出願された特許出願であって,その後の手続は,概略,以下のとおりである。
平成29年 3月28日付け:拒絶理由通知書
平成29年 6月 1日付け:意見書
平成29年 6月 1日付け:手続補正書
平成29年 6月27日付け:拒絶理由通知書
平成29年 8月29日付け:意見書
平成29年 9月29日付け:拒絶査定
平成29年12月25日付け:審判請求書

2 本願発明
本件出願の請求項1?請求項4に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明4」という。)は,平成29年6月1日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項4に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
偏光板と該偏光板の表面に貼合されたプロテクトフィルムとを有する光学フィルムであって,
前記偏光板は,偏光子と,該偏光子に積層された保護膜とを含み,
前記プロテクトフィルムは,粘着剤層と,該粘着剤層を介して前記偏光板に積層されたプロテクト層とを含み,
前記光学フィルムの幅方向において,
前記保護膜の側端は,前記偏光子の側端よりも外側に位置し,
前記プロテクト層の側端は,前記偏光子の側端と同じ位置にあるか,前記偏光子の側端よりも内側に位置する,光学フィルム。

【請求項2】
前記光学フィルムは,枚葉状に形成されている,請求項1に記載の光学フィルム。

【請求項3】
前記光学フィルムは,ロール状に巻回されている,請求項1に記載の光学フィルム。

【請求項4】
偏光板と該偏光板の表面に貼合されたプロテクトフィルムとを有する光学フィルムの製造方法であって,
前記偏光板は,偏光子と,該偏光子に積層された保護膜とを含み,
前記プロテクトフィルムは,粘着剤層と,該粘着剤層を介して前記偏光板に積層されたプロテクト層とを含み,
前記光学フィルムの幅方向において,
前記保護膜の側端を,前記偏光子の側端よりも外側に位置し,
前記プロテクト層の側端を,前記偏光子の側端と同じ位置にするか,前記偏光子の側端よりも内側に位置して,光学フィルムを製造する,光学フィルムの製造方法。」

3 原査定の拒絶の理由
平成29年9月29日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)における拒絶の理由は,概略,本願発明1?本願発明4は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2013-29754号公報
引用文献2:特開2013-186252号公報
引用文献3:特開2008-51847号公報
なお,主引用例は引用文献1であり,引用文献2及び引用文献3は,副引用例である。

第2 当合議体の判断
1 引用文献の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1には,以下の記載がある。なお,下線部は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,表面にプロテクトフィルムが剥離可能に貼合されている長尺の偏光板を巻芯部に巻取ってなる偏光板ロールおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
…(省略)…
【0003】
一方,巻取り前の偏光板の表面に剥離可能なプロテクトフィルムを貼合してプロテクトフィルム付き偏光板とし,これにより偏光板の表面を保護することがある。
【0004】
しかし,この偏光板を巻芯部に巻取ると,プロテクトフィルムが偏光板の表面から浮き上がってしまい,いわゆるプロテクトフィルムの浮き欠陥が発生するという問題がある。
…(省略)…
【課題を解決するための手段】
【0007】
…(省略)…一般的なプロテクトフィルムは,片面に設けられている粘着剤層を介して偏光板の表面に剥離可能に貼合されている。
【0008】
上述した粘着剤層は,塗工によって形成される塗工層であることが多い。
…(省略)…
【0010】
…(省略)…
しかし,未塗工領域の全面に塗工層を設けると,プロテクトフィルムからはみ出した余分な塗工層によって製造設備等が汚染されるという問題がある。
【0011】
そこで,未塗工領域の全面に塗工層を設けるのではなく,未塗工領域のうち,プロテクトフィルムの浮き欠陥の発生を抑制することができる領域にまで塗工層の側縁部をプロテクトフィルムの側縁部に向かって延設すれば,上述した問題を回避しつつ,プロテクトフィルムの浮き欠陥の発生を抑制することができることを見出し,本発明を完成するに至った。
…(省略)…
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の偏光板ロールにおけるプロテクトフィルム付き偏光板の一実施形態を示す拡大概略断面図である。
【図2】(a),(b)は,本発明の偏光板ロールにおけるプロテクトフィルムの一実施形態を示す概略平面図である。」
(当合議体注:図1及び図2は以下の図である。
図1:

図2:

)

イ 「【発明を実施するための形態】
【0015】
…(省略)…本実施形態にかかる偏光板ロールは,図1に示すプロテクトフィルム付き偏光板1と,このプロテクトフィルム付き偏光板1を外周面にロール状に巻取っている図示しない巻芯部と,を備えている。
【0016】
プロテクトフィルム付き偏光板1は,図1に示すように,表面2aにプロテクトフィルム3が剥離可能に貼合されている偏光板2で構成されている。
【0017】
プロテクトフィルム3は,長尺であるとともに,図2(a)に示すように,片面3aの中央部に粘着剤を含有する塗工層31が設けられている。
…(省略)…
【0018】
また,プロテクトフィルム3は,片面3aの両側縁部近傍に塗工層31が設けられていない未塗工領域32,32を有している。本実施形態では,各未塗工領域32が少なくなるように,塗工層31の側縁部31aを,プロテクトフィルム3の側縁部3bに向かって矢印A方向に延設している。
【0019】
図2(b)に示すように,延設されている塗工層31の側縁部31bは,プロテクトフィルム3の側縁部3bよりも片面3aの中央部側に位置している。すなわち,本実施形態では,未塗工領域32の全面ではなく,未塗工領域32のうち,プロテクトフィルム3の浮き欠陥の発生を抑制することができる領域にまで塗工層31の側縁部31aをプロテクトフィルム3の側縁部3bに向かって矢印A方向に延設している。
…(省略)…
【0020】
矢印Bに示すプロテクトフィルム3の幅方向において,塗工層31の延設されている側縁部31bと,プロテクトフィルム3の側縁部3bとの間の距離Lは,2?11mmであるのが好ましく,2?6mmであるのがより好ましい。
…(省略)…
【0024】
上述したプロテクトフィルム3と,偏光板2との貼合は,塗工層31を介して一対の貼合ロール等を用いて行うことができる。プロテクトフィルム3が貼合される偏光板2は,長尺であるとともに,偏光フィルムの片面または両面に保護フィルムを貼合して形成されている。
…(省略)…
【0031】
以下,実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが,本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお,実施例で用いた偏光板およびプロテクトフィルムは,以下の通りである。
【0032】
(偏光板)
厚さ20μmの偏光フィルムの両面に,各厚さが80μmである保護フィルムが貼合されてなる,長さ1000mm,幅1330mmの偏光板を用いた。
…(省略)…
【0034】
(プロテクトフィルム)
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂の片面中央部に,厚さ24μmの塗工層が設けられてなる,長さ1000mm,幅1320mmのプロテクトフィルムを用いた。
…(省略)…
【実施例】
【0036】
<プロテクトフィルム付き偏光板の作製>
…(省略)…プロテクトフィルムの幅方向において,塗工層の延設されている側縁部と,プロテクトフィルムの側縁部との間の距離Lが,表1に示す値となるように,塗工層をプロテクトフィルムの側縁部に向かって延設させた。次いで,この塗工層を介してプロテクトフィルムを上述した偏光板の片面に貼合し,プロテクトフィルム付き偏光板を得た(表1中の試料No.1?4)。
…(省略)…
【0038】
(プロテクトフィルムの浮き欠陥の評価方法)
プロテクトフィルムが貼合されている偏光板の表面を,表1に示す直径を有するポリ塩化ビニル樹脂製のロールの外周面に接触させ,プロテクトフィルム付き偏光板をロールの外周面に沿わせて湾曲させた際に,プロテクトフィルムの浮き欠陥が発生するか否かを,目視観察して評価した。
【0039】
評価基準は,以下のものを用いた。
○:プロテクトフィルムの浮き欠陥が発生しなかった。
×:プロテクトフィルムの浮き欠陥が発生した。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から明らかなように,塗工層の側縁部を延設させている試料No.1?4は,プロテクトフィルムの浮き欠陥の発生を抑制できているのがわかる。また,距離Lを小さくするにつれて,直径が小さいロールに対してもプロテクトフィルムの浮き欠陥の発生を抑制できる結果を示した。」

(2) 引用発明
引用文献1の【0031】?【0041】の記載からみて,引用文献1には,次の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)。
「 厚さ20μmの偏光フィルムの両面に,各厚さが80μmである保護フィルムが貼合されてなる,長さ1000mm,幅1330mmの偏光板と,
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂の片面中央部に,厚さ24μmの塗工層が設けられてなる,長さ1000mm,幅1320mmのプロテクトフィルムを具備し,
塗工層を介してプロテクトフィルムを偏光板の片面に貼合して得た,
プロテクトフィルム付き偏光板。」

同様に,引用文献1には,次の発明も記載されている(以下「引用発明2」という。)。
「 厚さ20μmの偏光フィルムの両面に,各厚さが80μmである保護フィルムが貼合されてなる,長さ1000mm,幅1330mmの偏光板と,
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート樹脂の片面中央部に,厚さ24μmの塗工層が設けられてなる,長さ1000mm,幅1320mmのプロテクトフィルムを用い,
塗工層を介してプロテクトフィルムを偏光板の片面に貼合する,
プロテクトフィルム付き偏光板の製造方法。」

(3) 引用文献2の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2には,以下の記載がある。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光板の製造方法に関する。
…(省略)…
【0004】
透明保護フィルムは乾燥段階において寸法変化が生じやすい。…(省略)…特に,偏光子の両面に貼り合わせる透明保護フィルムの寸法変化率が異なる場合には,カールが発生しやすく,作業効率を低下させていた。
…(省略)…
【図面の簡単な説明】
【0016】
…(省略)…
【図2】本発明の偏光板の製造方法に係る他の実施形態の一例を示す断面図である。」
(当合議体注:図2は以下の図である。

)

イ 「【発明を実施するための形態】
【0017】
…(省略)…本発明の偏光板の製造方法では,偏光子Pの両面に接着剤(a1,a2)を介して第1の透明保護フィルムT1および第2の透明保護フィルムT2が設けられる。前記偏光子Pの幅W_(p)は,第1の透明保護フィルムT1の幅W_(t1)および第2の透明保護フィルムT2の幅W_(t2)以下である。
…(省略)…
【0018】
…(省略)…図2,図4に記載の偏光板は,偏光子の幅W_(p)と,接着剤(a1,a2)の幅が一致しており,偏光子Pの幅方向の端部より外側には接着剤を有しない場合である。
…(省略)…
【0021】
前記偏光子の幅Wp(mm)は,通常,300?2000mmであるのが好ましい。一方,第1の透明保護フィルムT1の幅W_(t1)(mm)および第2の透明保護フィルムT2の幅W_(t2)(mm)は,前記偏光子Pの幅W_(p)(mm)以上である。通常は,第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムの幅が,350?2300mmであるのが好ましい。
…(省略)…
【実施例】
【0054】
…(省略)…
【0056】
<透明保護フィルム>
透明保護フィルムとして,下記に示すものを用いた。
透明保護フィルムの幅はいずれも1330mmである。
1:厚さ25μmの環状オレフィン系樹脂フィルム(JSR社製,アートン);寸法変化率=0.0763
2:厚さ35μmの環状オレフィン系樹脂フィルム(JSR社製,アートン);寸法変化率=0.0515
3:厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム(コニカ社製,KC4UYW);寸法変化率=0.2011
【0057】
<偏光子の作製>
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製:VF-PS7500,幅1000mmまたは幅2600mm)を用いて,30℃の純水中に60秒間浸漬しながら延伸倍率2.5倍まで延伸し,30℃のヨウ素水溶液(重量比:純水/ヨウ素(I)/ヨウ化カリウム(KI)=100/0.01/1)中で45秒間染色し,4重量%ホウ酸水溶液中で延伸倍率が5.8倍になるように延伸し,純水中に10秒間浸漬した後,フィルムの張力を保ったまま60℃で3分間乾燥して偏光子を得た。この偏光子の厚さは25μm,幅は446mmまたは幅1160mmであった。
【0058】
<接着剤の調製>
ポリビニルアルコール樹脂(日本合成化学工業(株)製:エコマティ)100重量部と架橋剤(大日本インキ化学工業(株)製:ウォーターゾール)35重量部を純水3760重量部中に溶解して接着剤水溶液を調製した。
【0059】
実施例1
(偏光板の作製)
幅1330mmの上記透明保護フィルム1(厚さ25μmの環状オレフィン系樹脂フィルムの片面に,上記接着剤水溶液を乾燥後の接着剤層の厚みが80nmとなるように塗布して,接着剤付きの透明保護フィルム1を得た。一方,幅1330mmの上記透明保護フィルム2(厚さ40μmのトリアセチルセルロースフィルム)の片面に,上記接着剤水溶液を乾燥後の接着剤層の厚みが80nmとなるように塗布して,接着剤付きの透明保護フィルム2を得た。上記接着剤付きの透明保護フィルム1および2に対する,接着剤の塗布は,塗布された接着剤の幅が,幅1160mmの偏光子の幅と同じになるように,かつ,各透明保護フィルム1および2の両側において接着剤を塗布しない箇所が略同じになるように行った。次いで,23℃の温度条件下で,上記幅1160mmの偏光子の両面に,上記で接着剤付きの透明保護フィルム1および2を,偏光子の幅方向において,偏光子の両側の端部から外側に向けて存在する接着剤の幅wがそれぞれ0mmになるように,同時にロール機で貼り合せた。その後,80℃で10分間の乾燥工程を施して偏光板を作製した。得られた偏光板は,偏光板の幅方向の接着剤幅wがいずれも0mmであり,図2の態様に係る。」

(4) 引用文献3の記載
原査定の拒絶の理由に引用され,本件出願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3には,以下の記載がある。
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は,液晶表示装置(LCD),プラズマディスプレイ(PDP)などの画像表示装置に用いる光学部材に関する。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
…(省略)…
【0008】
本発明は,上記課題に鑑み,光学フィルムを汚すことなく形成及び運搬できる光学部材を提供せんとするものであり,さらには,積層しても各光学部材同士が貼付しにくい光学部材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
…(省略)…
【0010】
本発明の光学部材は,少なくとも一面側の離型フィルムの周縁部が粘着層の周縁部よりも外方に張り出すように積層してある粘着シートを用いることにより,離型フィルムの張り出した部分を把持して運搬できるため,粘着層を押圧せず運搬でき,粘着層から接着材乃至粘着剤がはみ出すことがない。また,光学フィルムに周縁部が粘着層の周縁部よりも外方に張り出すように粘着シートを貼付することにより,光学フィルム及び離型フィルムの周縁部は粘着層の周縁部よりも張り出しているため,粘着層から接着剤乃至粘着剤がはみ出すことがない。
…(省略)…
【0043】
光学部材5は,図4に示すように,図1又は2に示した粘着シート1の他面側の剥離フィルム2を剥離して,光学フィルム6上に貼付して形成したものであり,光学フィルム6の周縁部の全部,つまり全周に渡り粘着層4の周縁部4aよりも外方に張り出すように貼付してある(この張り出した部分を張出部6aともいう。)。
…(省略)…
【0044】
張出部6aは,粘着層4の周縁部4aから0.5mm以上,好ましくは1.0mm以上,さらに好ましくは3mm以上張り出してあるのがよい。
…(省略)…
【0045】
光学フィルム6としては,例えば,偏光フィルム,偏光変換素子,反射板,半透過板,位相差フィルム,輝度向上フィルム,保護フィルム,反射防止フィルム,電磁波シールドフィルム,光学補償フィルム,近赤外線カットフィルム,調色フィルムやこれらを組み合わせた積層体など平面型画像装置の表示パネル等に用いる種々のものが挙げることができる。」

イ 「【図面の簡単な説明】
【0062】
…(省略)…
【図4】本発明の光学部材の一実施形態を示し,(A)は側面図,(B)は上面図,(C)は正面図である。」
(当合議体注:図4は以下の図である。

)

2 本願発明1について
請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明1を対比すると,以下のとおりとなる。
(1) 対比
ア 光学フィルム
引用発明1の「プロテクトフィルム付き偏光板」は,「プロテクトフィルムを偏光板の片面に貼合して得た」ものである。
ここで,「偏光板の片面」は,偏光板の表面と理解することができるから,引用発明1の「プロテクトフィルム付き偏光板」は,偏光板と,偏光板の表面に貼合されたプロテクトフィルムを有するものといえる。また,引用発明1の「偏光板」及び「プロテクトフィルム」は,その文言が意味するとおりの光学的機能や保護作用を具備すると理解するのが自然である。
そうしてみると,引用発明1の「偏光板」,「プロテクトフィルム」及び「プロテクトフィルム付き偏光板」は,それぞれ,本願発明1の「偏光板」,「プロテクトフィルム」及び「光学フィルム」に相当する。また,引用発明1の「プロテクトフィルム付き偏光板」は,本願発明1の「光学フィルム」における,「偏光板と該偏光板の表面に貼合されたプロテクトフィルムとを有する」という要件を満たす。

イ 偏光板
引用発明1の「偏光板」は,「厚さ20μmの偏光フィルムの両面に,各厚さが80μmである保護フィルムが貼合されてなる」。ここで,引用発明1の「偏光フィルム」は,技術的にみて,偏光子ということができ,また,引用発明1の「保護フィルム」は,保護膜ということができる。
そうしてみると,引用発明1の「偏光フィルム」及び「保護フィルム」は,それぞれ,本願発明1の「偏光子」及び「保護膜」に相当する。また,引用発明1の「偏光板」は,本願発明1の「偏光板」における,「偏光子と,該偏光子に積層された保護膜とを含み」という要件を満たす。

ウ プロテクトフィルム
上記イと同様に検討すると,引用発明1の「ポリエチレンテレフタレート樹脂」及び「塗工層」は,それぞれ,本願発明1の「プロテクト層」及び「粘着剤層」に相当する。また,引用発明1の「プロテクトフィルム」は,本願発明1の「プロテクトフィルム」における,「粘着剤層と,該粘着剤層を介して前記偏光板に積層されたプロテクト層とを含み」という要件を満たす。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明1は,次の構成で一致する。
「 偏光板と該偏光板の表面に貼合されたプロテクトフィルムとを有する光学フィルムであって,
前記偏光板は,偏光子と,該偏光子に積層された保護膜とを含み,
前記プロテクトフィルムは,粘着剤層と,該粘着剤層を介して前記偏光板に積層されたプロテクト層とを含む,
光学フィルム。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明1は,次の点で相違する。
(相違点1)
「光学フィルム」に関して,本願発明1は,「前記光学フィルムの幅方向において」,[A]前記保護膜の側端は,前記偏光子の側端よりも外側に位置し,[B]前記プロテクト層の側端は,前記偏光子の側端と同じ位置にあるか,前記偏光子の側端よりも内側に位置するのに対して,引用発明1は,これが明らかではない点。

(3) 判断
ア 引用発明1の「プロテクトフィルム」は「幅1320mm」,「偏光板」は「幅1330mm」である。また,プロテクトフィルムは,通常,偏光板の両側端を除いた,幅方向の中央に貼り合わせられると考えられる。
そうしてみると,引用発明1の「プロテクトフィルム付き偏光板」においては,「偏光板」が,「プロテクトフィルム」の両側端から5mmずつはみ出していると考えるのが自然である。
ここで,引用発明1の「偏光板」において,仮に,「保護フィルム」の幅が「偏光フィルム」の幅よりも広く,ただし,10mm以下だけ広いならば,引用発明1の「プロテクトフィルム付き偏光板」は,相違点1に係る本願発明1の構成を具備したものとなる(前記[A]の位置関係及び前記[B]の位置関係を満たしたものとなる。)。
しかしながら,引用発明1の「偏光フィルム」及び「保護フィルム」の幅は,不明である。また,引用文献1には,これら幅について,何ら記載されておらず,示唆する記載もない。

イ 引用文献2の【0021】には,「前記偏光子の幅W_(p)(mm)は,通常,300?2000mmであるのが好ましい。一方,第1の透明保護フィルムT1の幅W_(t1)(mm)および第2の透明保護フィルムT2の幅W_(t2)(mm)は,前記偏光子Pの幅W_(p)(mm)以上である。通常は,第1の透明保護フィルムおよび第2の透明保護フィルムの幅が,350?2300mmであるのが好ましい。」と記載されている。
したがって,引用文献2には,保護フィルムの幅を,偏光子の幅以上とすることが記載されているといえる。しかしながら,【0021】に記載された数値範囲や,実施例(【0056】ないし【0059】)を考慮すると,保護フィルムの幅は,偏光子の幅よりも50?300mm程度広いと考えられる。
そうしてみると,当業者が,仮に,引用発明1と引用文献2に記載された技術を組み合わせたとしても,相違点1に係る本願発明1の構成を具備することにはならない(前記[A]の位置関係は満たすが,前記[B]の位置関係は満たさない。)。

なお,引用発明1の「プロテクトフィルム」は「偏光板」を保護するためのものであるから,その幅は,「偏光板」の幅に近い方が望ましいといえる。したがって,引用発明1の「プロテクトフィルム」の幅を狭いものに変更すること(前記[B]の位置関係を満たす方向に変更すること)が,容易であるということもできない。

ウ 引用文献3には,「偏光フィルム」及び「保護フィルム」の幅について,記載も示唆もない。

(4) 小括
以上のとおりであるから,本願発明1は,引用文献2及び引用文献3に記載された事項を心得た当業者であっても,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

3 本願発明2?本願発明4について
(1) 本願発明2及び本願発明3について
本願発明2及び本願発明3は,前記相違点1に係る本願発明1の構成を具備する発明である。
したがって,本願発明1と同じ理由により,本願発明2及び本願発明3は,引用文献2及び引用文献3に記載された事項を心得た当業者であっても,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

(2) 本願発明4について
本願発明4と引用発明2を対比すると,両者は,次の点で相違する。
(相違点2)
「光学フィルムの製造方法」に関して,本願発明4は,「前記光学フィルムの幅方向において」,「前記保護膜の側端を,前記偏光子の側端よりも外側に位置し」,「前記プロテクト層の側端を,前記偏光子の側端と同じ位置にするか,前記偏光子の側端よりも内側に位置して,光学フィルムを製造する」という構成を具備するのに対して,引用発明2は,これが明らかではない点。

相違点2についての判断は,前記2(3)と同様である。
すなわち,引用発明2の「偏光フィルム」及び「保護フィルム」の幅は,不明である。また,引用文献1には,これら幅について,何ら記載されておらず,示唆する記載もない。そして,引用発明2と引用文献2に記載された技術を組み合わせたとしても,相違点2に係る本願発明4の構成を具備することにはならないし,引用文献3には「偏光フィルム」及び「保護フィルム」の幅について記載がない。
したがって,本願発明4は,引用文献2及び引用文献3に記載された事項を心得た当業者であっても,引用文献1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。

第3 まとめ
以上のとおりであるから,原査定の拒絶の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-19 
出願番号 特願2016-202900(P2016-202900)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 植野 孝郎関口 英樹  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
関根 洋之
発明の名称 光学フィルムおよびその製造方法  
代理人 松谷 道子  
代理人 吉田 環  
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