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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1346408
審判番号 不服2017-15512  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-19 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2013- 22618「生体信号測定用電極及びその製造方法、並びに生体信号測定システム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月19日出願公開、特開2013-158651、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年2月7日(パリ条約による優先権主張 2012年2月7日 大韓民国)の出願であって、平成28年12月12日付けで拒絶理由が通知され、平成29年2月23日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年6月15日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、同年10月19日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年7月30日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月15日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし12に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、平成30年10月15日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1及び2は以下のとおりである。

「 【請求項1】
第一面には、少なくとも2つの金属電極が付着され、異なる第二面は、生体に付着され、所定の面積及び厚みを有する1つの伝導性粘着剤と、
前記伝導性粘着剤が前記生体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を支持し、所定サイズの前記伝導性粘着剤が挿入できる寸法に裁断され、前記伝導性粘着剤が挿入された支持部材と、
前記支持部材の前記生体に接触される一面に塗布され、前記生体に接着される接着物質と、を含み、
前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であり、前記伝導性粘着剤が同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され、前記抵抗によって、前記少なくとも2つの金属電極間は、短絡せず、
前記支持部材と前記接着物質は、互いに異なる物質からなることを特徴とする生体信号測定用電極。」

「 【請求項2】
第一面には、少なくとも2つの金属電極が付着され、異なる第二面は、生体に付着され、所定の面積及び厚みを有する1つの伝導性粘着剤と、
前記伝導性粘着剤の一面に付着される前記少なくとも2つの金属電極と、
前記伝導性粘着剤が前記生体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を支持し、所定サイズの前記伝導性粘着剤が挿入できる寸法に裁断され、前記伝導性粘着剤が挿入された支持部材と、
前記支持部材の前記生体に接触される一面に塗布され、前記生体に接着される接着物質と、を含み、
前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であり、前記伝導性粘着剤が同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され、前記抵抗によって、前記少なくとも2つの金属電極間は、短絡せず、
前記支持部材と前記接着物質は、互いに異なる物質からなることを特徴とする生体信号測定用電極。」

なお、本願発明3ないし12の概要は以下のとおりである。
本願発明3ないし7は、本願発明1又は2を減縮した発明である。
本願発明8は、本願発明1に係る生体信号測定用電極に対応する生体信号測定用電極を備えた生体信号測定システムの発明である。
本願発明9は、本願発明2に係る生体信号測定用電極に対応する生体信号測定用電極を備えた生体信号測定システムの発明である。
本願発明10ないし12は、本願発明8又は9を減縮した発明である。


第3 引用文献の記載事項、引用発明

1 引用文献1について

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献1(再公表特許第2005/103186号)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付加した。引用文献の記載事項について、以下同様。)。

(引1-ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲル粘着組成物及びその製造方法、並びに該ゲル粘着組成物を用いた電極に関する。特に、生体に貼付して用いる粘着剤として好適に使用されるゲル粘着組成物である。」

(引1-イ)「【0034】
本発明の目的は、粘着性に優れたゲル粘着組成物を提供することである。特に、本発明の目的は、ポリエチレンテレフタレート表面である基材シート表面と電極素子部であるカーボンコート面との両方に対して、良好な付着性を有するゲル粘着組成物を提供することである。また、本発明の目的は、優れた人体皮膚面への密着性をも有するゲル粘着組成物とその製造方法を提供することである。さらに、本発明の目的は、これらのゲル粘着組成物を導電性ゲル粘着層として含む電極を提供することでもある。」

(引1-ウ)「【0099】
(電極)
本発明は、ゲル粘着層を備えた電極であって、当該ゲル粘着層がゲル粘着組成物を含む電極でもある。
このゲル粘着組成物としては、架橋された水溶性高分子、水、保湿剤及び両親媒性高分子を含み、上記両親媒性高分子が、水を除く当該組成物全量に対して0.05?7.0重量%含まれているゲル粘着組成物が好ましい。
このゲル粘着層は、ポリエチレンテレフタレート層の表面に対しても良好に付着することができ、ポリエステル系又はポリウレタン系樹脂をバインダーとして含むカーボンペーストにより形成されたカーボンコート層に対しても良好な付着性を示すことができる。そのため、前記電極は、ゲル粘着層に電解質を含ませる等の公知の方法により導電性を付与することにより、前記ゲル粘着層がカーボンコート層との界面を有し、さらにポリエチレンテレフタレート層との界面をも有する電極として構成することができる。
例えば、下記の電極を採用することができる。すなわち、
シート状の表面基材を構成するポリエチレンテレフタレート層と、
このポリエチレンテレフタレート層の背面に間隔をあけて配され、それぞれ一対の電極端子につながった電極素子部を構成する一対のカーボンコート層と、
前記一対のカーボンコート層の背面と、当該一対のカーボンコート層の間に位置するポリエチレンテレフタレート層の背面にそれぞれ跨って配されたゲル粘着層を有する電極であって、
上記ゲル粘着層が、ゲル粘着組成物を含み、
当該ゲル粘着組成物は、架橋された水溶性高分子、水、保湿剤及び両親媒性高分子を含み、上記両親媒性高分子が、水を除く当該組成物全量に対して0.05?7.0重量%含まれているゲル粘着組成物である、
電極である。
前記ゲル粘着層に前記ゲル粘着組成物が含まれる電極の場合、前記ゲル粘着層がカーボンコート層とポリエチレンテレフタレート層との両方に良好に粘着することから、両層とも層間剥離を生じることなく、人体皮膚面に対しても良好な付着性を示す。
従って、本発明の電極は、心電図測定用電極、低周波治療用電極、体脂肪率測定用電極等として好適に用いることができる。また、本発明の電極は、水不溶性高分子を含むことにより、優れた粘着性を示すこともできる。
【0100】
図1は、本発明の電極の第一の実施態様例を示した図である。前記実施態様例は、前記ゲル粘着層がカーボンコート層との界面を有し、さらにポリエチレンテレフタレート層との界面をも有する電極の実施態様例である。図1(a)は、本発明の電極の表面を示す図である。図1(b)は、図1(a)の電極におけるA-A断面図である。図1(c)は、図1(a)の電極における裏面を示す図である。
【0101】
図1(a)に示すように、本発明の電極1には一対の電極端子2を備えている。前記電極端子2は、図1(b)に示すように、ポリエチレンテレフタレート層である表面基材4及びカーボンコート層5を挟んで固定具3と嵌合することにより、電極1の所定の位置に設置されている。固定具3は、電極層として機能するカーボンコート層5上に現れている部分が絶縁テープ7で被覆されている。更に、ゲル粘着層6が、前記ゲル粘着層と前記カーボンコート層との界面と、前記ゲル粘着層とポリエチレンテレフタレート層との界面とが、前記ゲル粘着層の片方の面上に存在するように形成されている。電極1は、上記のように、ゲル粘着層6が形成され、表面基材4と反対の表面にセパレータ8が形成される。前記電極の使用時において、セパレータ8が剥がされて、表出したゲル粘着層6の表面が、人体皮膚面に粘着することとなる。
【0102】
前記電極は、上記の積層構造を有するが、表面基材4とカーボンコート層5との積層構造においては、図1(c)に示すように、PET領域が2つのカーボンコート領域に挟まれたパターンを有する。しかし、本発明の電極は、ゲル粘着層に含まれるゲル粘着組成物がポリエチレンテレフタレート表面とカーボンコート面との両方に良好な付着性を示すことから、皮膚面から剥がした際に、基材シート層と導電性のゲル粘着層との層間剥離が生じることがなく、心電図測定用電極、低周波治療用電極、体脂肪率測定用電極等として好適に用いることができる。
【0103】
また、本発明の電極は、粘着性に優れていることから、他の形態の電極にも好適に用いることができる。図2(a)?図2(d)は、本発明の電極の第二乃至第五の実施態様例について電極端子付近の断面図である。また、図3は、本発明の電極の第六の実施態様例についての側面図並びゲル粘着層側の正面図である。
【0104】
図2(a)は、本発明の電極における第二の実施態様例の断面図である。本実施態様例の電極は、心電図検査用電極等として好適に用いることができる。
【0105】
電極10は、表面基材11である樹脂フィルム上にAg、Ag/AgCl等の金属やカーボン等を含む導電性インクを印刷コーティングして、導電層12を形成し、又は、表面基材11である樹脂フィルム上に金属箔(アルミ、ステンレス、Ag等)、若しくはカーボン等を練り込んだ導電性フィルムをラミネートして導電層12を形成して、片面に導電層を備えた片面導電性フィルムを形成する。電極10は、導電層12上に上述のゲル粘着組成物を貼付させてなり、片面導電性フィルムにゲル粘着層13が形成されただけの簡易な電極である。電極10の使用時においては、ゲル面の保護の為にゲル粘着層13上に形成されたセパレーター14が剥離され、片面導電性フィルムのゲルが形成されていない部分が鰐口クリップ等で挟まれてリード線と接続される。かくして、電極10は、セパレーター14が剥離されることにより現れたゲル粘着層表面が人体皮膚面等に貼付された電極として用いられる。
【0106】
表面基材11としての樹脂フィルムの厚みは5?150μm程度が良い。前記樹脂フィルムの材質は、特に制限されないが、印刷に適した合成紙(ポリプロピレンに無機フィラーを添加したもの)、PET、OPPフィルム等が好ましい。又、外観を向上させるために、表面基材における導電インクのコーティング面と逆の面に対して、化粧印刷を施したり、柔軟性を損なわない程度に、紙、不織布、発泡体(ポリエチレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリウレタン等の軟質の発泡シート)、ポリウレタン等のフィルム若しくはシートがラミネートされていれも良い。導電性インクは、公知の導電性インクを用いることができるが、複数種を組み合せて多層コーティングしても良い。
【0107】
図2(b)は、本発明の電極における第三の実施態様例の断面図である。本実施態様例の電極は、一般用またはオペ室用等の心電図電極として好適に用いることができる。
【0108】
電極20は、スナップ端子21とエレメント24のカシメ構造を有する電極エレメントとゲルの組み合せを基本的な電極構造として有する電極である。表面基材22の面積がゲル粘着層25より大きくなっており、はみ出した部分には、粘着剤がコーティングされて、粘着処理面23が形成されている。電極20は、ゲル粘着層25に含まれるゲルの粘着のみでは粘着性が不充分なため、粘着の枠として粘着処理面23を設けた構造を備えている。電極エレメント24は、樹脂の成型品にAg/AgCl等の金属をコーティングしたものを用いることができる。スナップ端子21は、通電性を有する公知のものを用いることができるが、ステンレス等の金属の場合と、カーボンを練り込んだ樹脂成型品の場合が有る。表面基材22としては、不織布、発泡体(ポリエチレン、ポリエチレンビニルアセテート、ポリウレタン等の軟質の発泡シート)ポリウレタン、PET、PVC等が使用可能である。これらの表面基材は単独でも複数を組み合わせても良い。通常は、これらの表面基材の片面に粘着処理したものを用いる。電極20は、上述のゲル粘着組成物を用いているために、粘着処理面とともに粘着が人体皮膚面等に対して粘着するので、粘着性に優れている。なお、図2(b)においてはセパレーターを図示していないが、電極の使用時においては前記の第二の実施態様例と同様に、セパレーターが剥離されて、使用されることとなる。」

(引1-エ)【図1】




(引1-オ)【図2】




(2)上記(引1-ア)ないし(引1-オ)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 心電図測定用電極、体脂肪率測定用電極として好適に用いることができる電極1であって、
ポリエチレンテレフタレート層である表面基材4と、電極層として機能するカーボンコート層5との積層構造において、PET領域が2つのカーボンコート領域に挟まれたパターンを有し、
前記表面基材4及び前記カーボンコート層5を挟んで固定具3と嵌合することにより、所定の位置に設置されている一対の電極端子2を備え、
導電性のゲル粘着層6が、前記ゲル粘着層6と前記カーボンコート層5との界面と、前記ゲル粘着層6とポリエチレンテレフタレート層との界面とが、前記ゲル粘着層6の片方の面上に存在するように形成され、
前記ゲル粘着層6の前記表面基材4と反対の表面にセパレータ8が形成されており、
使用時において、前記セパレータ8が剥がされて、表出した前記ゲル粘着層6の表面が、人体皮膚面に粘着する、電極1。」

2 引用文献2ないし5について

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献2(実願昭57-58号(実開昭58-105304号)のマイクロフィルム)には、次の事項が記載されている。

(引2-ア)「 本考案は、電極保持体内に電極と共にインピーダンス変換或はこれに加えて電圧増幅を行う能動素子回路が一体に収納された生体用電極に関するものである。
この種の生体用電極は、例えばホリグラフ、心電計等に接続して生体信号の測定・記録を行う場合に、通常高いS/N比を保証する。しかしながら、放送局の近くで使用する場合或は電気メスによる手術中に使用する場合等、高周波電圧が混入し、特に後者の場合実際上生体信号に雑音が混入、正確な波形の解読が不可能になる。このような環境下では従来ラインの途中又はホリグラフ或は心電計等の本体内に高周波阻止フイルタを挿入していたが、高周波に起因して生体信号領域に混入する雑音は、充分に除去できなかった。
よつて本考案は、低周波のみならず高周波に起因する雑音も有効に除去し得る冒頭に述べた生体用電極を提供することを目的とする。本考案によれば、この目的は能動素子回路を電極と一体化させることが、比較的大きなレベルの高周波混入電圧に対しては半導体の非直線性による検波回路を電極部分に併存させることになる点に着眼して、電極保持体内に能動素子回路への高周波侵入阻止用のフイルタを一体に組込むことにより解決される。」(明細書第1頁10行?第2頁下から5行)

(引2-イ)「以上の説明から明らかなように、本考案により電極と一体化された能動素子回路に高周波阻止フイルタを組込むことにより、交流雑音やラインの揺れによる雑音が除去されるだけでなく、後続の高周波阻止フイルタでは除去が難かしくなる高周波電圧の混入に起因する低周波雑音が有効に除去され、高周波雑音の発生している環境下特に電気メスによる手術中の生体に対する測定も何ら問題なく行い得るようになる。」(明細書第6頁7?15行)

(引2-ウ)第1図




(引2-エ)第2図




上記(引2-ア)ないし(引2-エ)の記載から、上記引用文献2には、「電極保持体内に電極と共にインピーダンス変換或はこれに加えて電圧増幅を行う能動素子回路が一体に収納された生体用電極において、能動素子回路に高周波阻止フイルタを組込むことにより、高周波電圧の混入に起因する低周波雑音が有効に除去され、高周波雑音の発生している環境下特に電気メスによる手術中の生体に対する測定も何ら問題なく行い得るようにすること」という技術的事項が記載されている。

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2010-264174号公報)には、次の事項が記載されている。

(引3-ア)「【0001】
本発明は、筋肉が収縮する際に発生する筋電位を皮膚表面から検出する表面筋電位センサに係り、特に筋電位検出電極と増幅回路との間の接続を改良した表面筋電位センサに関するものである。」

(引3-イ)「【0024】
図1に示すように、表面筋電位センサ1は、乾式の受動電極からなる筋電位検出電極2と、筋電位検出電極2で検出された筋電位を増幅する増幅回路(以下、計装アンプと言う)3とを有し、筋電位検出電極2と計装アンプ3とを同軸ケーブル4で接続し、かつ同軸ケーブル4の外部導体5をボディアース配線6としたものである。
【0025】
同軸ケーブル4としては、中心導体7の外周に、絶縁被覆層8、外部導体5からなる外部導体層、被覆層9を順次被覆した極細同軸ケーブルを用いるとよい。
【0026】
筋電位検出電極2及びボディアース電極10は、人体に装着するために、布状素材11に固定され、さらに、同軸ケーブル4の一部が布状素材11に縫い付けられて着用部を構成している。
【0027】
ボディアースは、人体と低インピーダンスで接続することが望ましいことから、人体と接する面を全面導電布として、これをボディアース電極10としている。そのボディアース電極10上に、絶縁層12を挟んで筋電位検出電極2が必要箇所に配置されている。
【0028】
各筋電位検出電極2は、それぞれ同軸ケーブル4の中心導体7と導通され、各同軸ケーブル4の中心導体7の他端はそれぞれ計装アンプ3の入力端子に接続される。各同軸ケーブル4の外部導体5はそれぞれボディアース電極10と導通され、外部導体5の他端は計装アンプ3の基準電位VREFと等電位に導通され、ハムノイズ等の空間を伝わって人体へ結合するノイズを抑制するようにされる。なお、各同軸ケーブル4は筋電位計測時に邪魔にならないように束ねられている。
【0029】
計装アンプ3は、2つの入力端子を有する差動アンプであり、一方の入力端子には、上述したように筋電位検出電極2が同軸ケーブル4を介して接続される。他方の入力端子には別の筋電位検出電極2から基準となる筋電位信号が入力されるようになっている。筋電位検出電極2と計装アンプ3の接続方法の詳細については後述する。また、計装アンプ3には、ゲイン(高域通過特性)を調整するゲイン調整回路(図示せず)が備えられる。この計装アンプ3は、それぞれの入力端子に入力された筋電位の差を増幅し、基準電位VREFを中心に出力するものである。」

(引3-ウ)「【0039】
筋電位検出電極2の数だけ計装アンプ3を用意し、計装アンプ3の一方の入力端子には筋電位検出電極2を接続する。他方の入力端子にはマルチプレクサ40を用いて、任意の別の筋電位検出電極2からの信号COMを接続する。
【0040】
また、計装アンプ3の直前にはバッファアンプ41が設けられる。バッファアンプ81は、筋電位検出電極72,73と計装アンプ70の入力端子間のインピーダンスを下げ、ノイズに強くするために設けているが、バッファアンプ41は、マルチプレクサ40により、検出回路の入力インピーダンスが小さくなる可能性があるため、検出回路を高入力インピーダンスにするために入れるものであり、計装アンプ3の直前に設けている。
【0041】
このような接続にすることで、任意の筋電位検出電極2を基準とした筋電位波形を取得することができる。また、微弱な筋電位を増幅することができ、検出精度を向上させることができる。」

(引3-エ)【第1図】




(引3-オ)【第2図】




上記(引3-エ)の【第1図】の記載から、筋電位検出電極2が複数配置されていることが見てとれる。
そうすると、上記(引3-ア)ないし(引3-オ)の記載から、上記引用文献3には、「筋肉が収縮する際に発生する筋電位を皮膚表面から検出する表面筋電位センサにおいて、人体と接する面を全面導電布としてこれをボディアース電極10とし、そのボディアース電極10上に、絶縁層12を挟んで筋電位検出電極2が必要箇所に複数配置され、筋電位検出電極2の数だけ計装アンプ3を用意し、計装アンプ3の一方の入力端子には筋電位検出電極2を接続し、他方の入力端子にはマルチプレクサ40を用いて、任意の別の筋電位検出電極2からの信号COMを接続することにより、任意の筋電位検出電極2を基準とした筋電位波形を取得することができるようにすること」という技術的事項が記載されている。

(3)原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献4(特表2001-506154号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引4-ア)「本発明は、高価な材料を必要とせず、安価に製造できる生医学電極を提供することにより、上述の要求を満たす。本発明に係る生医学電極は標準のリード線コネクタを患者に相互連結するために使用される。生医学電極は使い捨て電極と、再使用可能なリード線アダプタとを有する。使い捨て電極は患者の皮膚に固定され、患者と再使用可能なリード線アダプタとの間で電気信号を伝達する役目を果たす。再使用可能なリード線アダプタはいくつかの機能を有する。例えば、再使用可能なリード線アダプタは電極センサ又は導体として、及び、使い捨て電極と標準のリード線コネクタとの間のインターフェイスとして作用する。更に、再使用可能なリード線アダプタは電極センサ又は導体を収容する。使い捨て電極と再使用可能なリード線電極との組み合わせ(ここでは、生医学電極として定義する)はイオン流れと電流流れとの間のトランスデューサとして作用する医学電極機能を遂行する。このように、再使用可能なリード線アダプタは使い捨て電極に取り付けられ、患者の心臓により発生した小さな電圧をECG装置へ送る伝導経路を提供する。本発明の生医学電極は安定したベースラインを有する規則的な記録を提供する。
本発明の使い捨て電極は上側部と、接着剤コーティングを備えた下側部と、第1の開口とを具備する円滑な層フィルムを有する。更に、使い捨て電極は上側部と、接着剤コーティングを備えた下側部と、第1の開口に対応する第2の開口とを具備する頂層を有する。頂層の上側部は円滑な層フィルム上の接着剤コーティングにより円滑な層フィルムの下側部に固定される。更に、使い捨て電極は、上側部と下側部とを備え、導電性ゲル層と係留層とからなる導電性パッチを有し、係留層は、係留層が導電性ゲル層上に積層されるのに十分な多孔性を有する多孔性材料で作られる。導電性パッチの上側部は頂層上の接着剤コーティングにより頂層の下側部に固定され、導電性パッチの下側部は患者に接触する。円滑な層フィルムは好ましくはポリエチレン材料で作られ、上側部上に接着剤コーティングを含むことができる。」(第16頁20行?第17頁16行)

(引4-イ)「 第5図は使い捨て電極12を製造する方法を示す。下表面即ち下側部に接着剤62を有する円滑な層フィルム60のロールが提供される。上表面即ち上側部に接着剤66を有する頂層64のロールが提供される。円滑な層フィルム60は接着剤62により頂層64の下表面68に施される。次いで、出来上がった組み合わせ体の中央部に穴69を所定の間隔でポンチ加工する。好ましくは、頂層66は下表面上にプルタブ71を有する。
穿孔部分76を備えた係留層74に積層された導電性ゲル層72を有する導電性のゲルウエプ70が提供される。導電性のゲルウエブ70は接着剤66により頂層64の下表面に施される。」(第33頁6?14頁16行)

上記(引4-ア)及び(引4-イ)の記載から、上記引用文献4には、「生医学電極の使い捨て電極において、導電性パッチの上側部と頂層の下側部を接着剤コーティングにより固定すること」という技術的事項が記載されている。

(4)原査定の拒絶の理由において周知技術を示す文献として引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献5(実願平5-7092号(実開平6-66623号)のCD-ROM)には、次の事項が記載されている。

(引5-ア)「 【0010】
図1及び図2に本考案の一実施例の構成を示す。図において、円板状のラベル1の片面にはほぼ円形のメッシュ状の補強材2の外周が接着剤3を介して接着固定されている。またラベル1の中心には電極素子4が貫通して固定されており、補強材2には円板状のAMPS5が一体となって含浸されている。AMPS5はラベル1と等しい内径を有する円筒状の型に流し込むことにより成形される。
【0011】
上記のように構成された生体用電極によると、AMPS5は補強材2に一体的に含浸されており、補強材2は接着剤3を介してラベル1に接着固定されているので、電極を皮膚から剥離するときにAMPS5はラベル1とともに一体的に剥離され、分離して皮膚に残ることはない。」

(引5-イ)【第1図】




上記(引5-ア)及び(引5-イ)の記載から、上記引用文献5には、「生体用電極において、AMPS5を一体的に含浸させた補強材2を、接着剤3を介してラベル1に接着固定すること」という技術的事項が記載されている。


第4 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明とを対比する。


(ア)引用発明の「ゲル粘着層6」が、ある面積及び厚みを有していることは明らかであるから、引用発明の「導電性のゲル粘着層6」は、本願発明1の「所定の面積及び厚みを有する1つの伝導性粘着剤」に相当する。

(イ)引用発明の「ゲル粘着層6」の「片方の面」は、本願発明1の「伝導性粘着剤」の「第一面」に相当する。

(ウ)引用発明の「電極層として機能するカーボンコート層5」と、本願発明1の「金属電極」とは、「電極」の点で共通する。

(エ)引用発明の「ゲル粘着層6」の「前記表面基材4」と「反対の表面」は、本願発明1の「伝導性粘着剤」の「異なる第二面」に相当する。

(オ)引用発明の「人体皮膚面」は、本願発明1の「生体」に相当する。

(カ)上記(ア)ないし(オ)の対比を踏まえると、引用発明の「片方の面上に」「電極層として機能するカーボンコート層5」の「2つのカーボンコート領域」「との界面」が「存在するように形成され」、「使用時に」「表面基材4と反対の表面」が「人体皮膚面に粘着する」「導電性のゲル粘着層6」と、本願発明1の「第一面には、少なくとも2つの金属電極が付着され、異なる第二面は、生体に付着され、所定の面積及び厚みを有する1つの伝導性粘着剤」とは、「第一面には、少なくとも2つの電極が付着され、異なる第二面は、生体に付着され、所定の面積及び厚みを有する1つの伝導性粘着剤」の点で共通する。

イ 引用発明において、「ゲル粘着層6の前記表面基材4と反対の表面」が「人体皮膚面に粘着」しているとき、「前記ゲル粘着層6の片方の面上に存在する」「ポリエチレンテレフタレート層との界面」において「前記ゲル粘着層6」が「表面基材4」に粘着していることは明らかである。
そうすると、引用発明の「前記ゲル粘着層6の片方の面上」との「界面」を有する「表面基材4」と、本願発明1の「前記伝導性粘着剤が前記生体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を支持し、所定サイズの前記伝導性粘着剤が挿入できる寸法に裁断され、前記伝導性粘着剤が挿入された支持部材」とは、「前記伝導性粘着剤が前記生体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を保持する保持部材」の点で共通する。

ウ 引用発明は一対の電極端子2を備えた電極1であるところ、電極として機能するためには、一対の電極端子2間が短絡しないように構成されている必要があることは明らかである。そして、一対の電極端子2のそれぞれに接続された電極層として機能するカーボンコート層5の2つの領域は、導電性のゲル粘着層6に接しているのだから、ゲル粘着層6がカーボンコート層5の2つの領域間が短絡しない程度の抵抗を有していることも明らかである。
したがって、引用発明の「導電性のゲル粘着層6」が、本願発明1の「同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され、前記抵抗によって、前記少なくとも2つの」「電極間は、短絡せず」という特定事項を満たすものであることは明らかである。

(2)よって、本願発明1と引用発明とは、

「 第一面には、少なくとも2つの電極が付着され、異なる第二面は、生体に付着され、所定の面積及び厚みを有する1つの伝導性粘着剤と、
前記伝導性粘着剤が前記生体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を保持する保持部材と、を含み、
前記伝導性粘着剤が同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され、前記抵抗によって、前記少なくとも2つの電極間は、短絡しない、
生体信号測定用電極。」

の発明である点で一致し、次の3点で相違する。

(相違点1)
伝導性粘着剤の第一面に付着される少なくとも2つの電極が、本願発明1は「金属」であるのに対し、引用発明は「カーボン」である点。

(相違点2)
前記伝導性粘着剤が前記生体に付着されたとき、伝導性粘着剤を保持する保持部材が、本願発明1においては、「前記伝導性粘着剤を支持し、所定サイズの前記伝導性粘着剤が挿入できる寸法に裁断され、前記伝導性粘着剤が挿入された支持部材」であるのに対し、引用発明においては、「ゲル粘着層6の片方の面上」「との界面」を有する「表面基材4」である点。

(相違点3)
本願発明1は、「前記支持部材の前記生体に接触される一面に塗布され、前記生体に接着される接着物質」「を含み」、「前記支持部材と前記接着物質は、互いに異なる物質からなること」が特定されているのに対し、引用発明は、「使用時において、前記セパレータ8が剥がされて、表出した前記ゲル粘着層6の表面が、人体皮膚面に粘着する」のみで、「表面基材4」が「人体皮膚面」に接触する部分を有さない点。

(相違点4)
本願発明1は、「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であ」るのに対し、引用発明は、「電極層として機能するカーボンコート層5」が「ポリエチレンテレフタレート層である表面基材4」にコートされたものであることから、「PET領域」を挟む「2つのカーボンコート領域」間の距離が固定されている点。

(3)相違点についての判断

ア 事案に鑑み、最初に上記相違点4について検討する。

(ア)引用文献3には、人体と接する面を全面導電布としてこれをボディアース電極10とし、そのボディアース電極10上に、絶縁層12を挟んで筋電位検出電極2が必要箇所に複数配置された表面筋電位センサが記載されているが、複数の筋電位検出電極2を配置する位置が変更可能であることは明記されていない。
また、ボディアース電極10が導電布で形成されていることから、ボディアース電極10上に絶縁層12を挟んで配置された筋電位検出電極2の位置が、変更可能であるとは認められない。

(イ)引用文献2、4及び5には、生体信号測定に係る電極が記載されているが、伝導性粘着剤に複数の電極を配置することは記載も示唆もない。

(ウ)そうすると、引用文献1ないし5に接した当業者といえども、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項を、容易に想起し得たとはいえない。

イ したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2について

本願発明2は、本願発明1の「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であ」るとの特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明3ないし12について

本願発明3ないし12も、本願発明1の「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であ」るとの特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断

1 進歩性について

進歩性に係る原査定の理由は、請求項1、3ないし14に係る発明は、上記引用文献1ないし3に記載された発明、並びに上記引用文献4及び5に記載された周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年10月15日になされた手続補正により、本願発明1ないし12は、「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であ」るとの特定事項を有するものとなっており、上記第4で検討したとおり、当該特定事項を有する本願発明1ないし12は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2なしい5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、進歩性に関して、原査定を維持することはできない。

2 明確性について

明確性に係る原査定の理由は、請求項1ないし14に係る「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記金属電極間に形成される抵抗は、前記伝導性粘着剤の厚みに基づいて決定され、前記抵抗によって、前記少なくとも2つの金属電極間は、短絡せず」という事項は、厚みが可変であることを特定しているのか、それとも決定された特定ある厚さであることを特定しているのかが明確でなく、また、請求項7に係る「前記抵抗は、前記伝導性粘着剤上で、前記少なくとも2つの金属電極が位置する地点間の距離に基づいて決定される」という事項は、少なくとも2つの金属電極が位置する地点間の距離が可変であること意味するのか、それとも、距離が決定されたものであることを意味するのかが明確でないから、特許請求の範囲の請求項1ないし14の記載は特許法第36条第2項に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないというものである。
しかしながら、平成30年10月15日になされた手続補正により、請求項7は削除され、独立項である請求項1、2、8及び9において「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であり、前記伝導性粘着剤が同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され、前記抵抗によって、前記少なくとも2つの金属電極間は、短絡せず」と補正された結果、「前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であ」ること、「2つの電極間の抵抗」は、伝導性粘着剤の「厚み」ではなく、「2つの金属電極間の距離」に依存するものであることが明確になった。
したがって、明確性に関して、原査定を維持することはできない。

3 原査定についてのまとめ

以上のとおりであるから、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について

1 当審拒絶理由は特許法第36条第6項第2号に係る拒絶理由である。

(1)当審では、請求項1及び2の「前記伝導性粘着剤が生体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を支持する前記伝導性粘着剤の第三面に付着された支持部材」という記載では、伝導性粘着剤と支持部材との位置関係を理解することができないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項1及び2に対応する補正後の請求項1及び2において「前記伝導性粘着剤が前記生体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を支持し、所定サイズの前記伝導性粘着剤が挿入できる寸法に裁断され、前記伝導性粘着剤が挿入された支持部材」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(2)当審では、請求項1及び2の「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記金属電極間に形成される抵抗は、可変的であり、前記伝導性粘着剤の所定の厚みに基づいて決定され」という記載が、何を特定するものであるのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項1及び2に対応する補正後の請求項1及び2において「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であり、前記伝導性粘着剤が同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(3)当審では、請求項1及び2の「前記支持部材に塗布されている接着物質」という記載では、支持部材のどこに接着物質が塗布されているのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項1及び2に対応する補正後の請求項1及び2において「前記支持部材の前記生体に接触される一面に塗布され、前記生体に接着される接着物質」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(4)当審では、請求項6の「前記抵抗は、可変的であり、前記伝導性粘着剤上で、前記少なくとも2つの金属電極が位置する地点間の距離に基づいて決定されること」という記載が、何を特定するものであるのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項6が削除され、補正後の請求項1及び2において「前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であり、前記伝導性粘着剤が同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(5)当審では、請求項7の「前記抵抗は、前記少なくとも2つの金属電極の広さに基づいて決定されること」という記載が、何を特定するものであるのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項7に対応する補正後の請求項6において「前記抵抗は、前記少なくとも2つの金属電極の広さが広いほど、抵抗値は小さくなること」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(6)当審では、請求項9及び10の「前記伝導性粘着剤が人体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を支持する前記伝導性粘着剤の第三面に付着された支持部材」という記載では、伝導性粘着剤と支持部材との位置関係を理解することができないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項9及び10に対応する補正後の請求項8及び9において「前記伝導性粘着剤が人体に付着されたとき、前記伝導性粘着剤を支持し、所定サイズの前記伝導性粘着剤が挿入できる寸法に裁断され、前記伝導性粘着剤が挿入された支持部材」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(7)当審では、請求項9及び10の「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記金属電極間に形成される抵抗は、可変的であり、前記伝導性粘着剤の所定の厚みに基づいて決定され」という記載が、何を特定するものであるのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項9及び10に対応する補正後の請求項8及び9において「前記少なくとも2つの金属電極が、前記伝導性粘着剤に付着されるとき、前記少なくとも2つの金属電極を前記伝導性粘着剤に付着させる位置が前記少なくとも2つの金属電極間の距離が異なる位置に変更可能であり、前記伝導性粘着剤が同一面上の2点間の抵抗が当該2点間の距離に応じて変化する材料で構成され」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

(8)当審では、請求項9及び10の「前記支持部材に塗布されている接着物質」という記載では、支持部材のどこに接着物質が塗布されているのかが不明であるとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月15日になされた手続補正により、補正前の請求項9及び10に対応する補正後の請求項8及び9において「前記支持部材の前記生体に接触される一面に塗布され、前記生体に接着される接着物質」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。

2 以上のとおりであるから、当審拒絶理由は全て解消した。


第7 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし12は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明1ないし12が明確でないとはいえない。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2013-22618(P2013-22618)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松本 隆彦  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 渡戸 正義
福島 浩司
発明の名称 生体信号測定用電極及びその製造方法、並びに生体信号測定システム  
代理人 特許業務法人共生国際特許事務所  

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