• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F24F
管理番号 1346418
審判番号 不服2018-3532  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-03-12 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2014-136155号「冷温水空調システム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 1月28日出願公開、特開2016- 14493号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年7月1日の出願であって、平成29年4月28日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年7月3日付けで意見書が提出され、平成29年12月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年3月12日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年12月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1-7に係る発明は、下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開平11-193970号公報

第3 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は、平成30年3月12日の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
水熱媒が通過する水熱媒循環回路と、
前記水熱媒循環回路上に設けられ、水熱媒を加熱又は冷却する熱源機と、
前記水熱媒循環回路上に設けられ、前記熱源機から流出する水熱媒が流入する複数の放熱器と、
前記複数の放熱器に対応して前記水熱媒循環回路上に各々設けられ、前記複数の放熱器に流入する水熱媒の量を調整する流量調整弁と、
操作手段と、
前記操作手段から出力される前記放熱器の運転開始、前記放熱器の運転停止、室温制御、水温制御の情報に基づいて前記流量調整弁を制御する制御手段と、を備え、
前記複数の放熱器は、
加熱された水熱媒のみ流入する暖房運転専用放熱器、
冷却された水熱媒のみ流入する冷房運転専用放熱器、及び
加熱及び冷却された水熱媒の何れも流入する冷房運転暖房運転兼用放熱器のうち二種類以上が適用され、
前記水熱媒循環回路上には、
前記暖房運転専用放熱器と、前記冷房運転専用放熱器又は前記冷房運転暖房運転兼用放熱器と、が各々一台以上存在する状態、又は、
前記冷房運転専用放熱器と、前記暖房運転専用放熱器又は前記冷房運転暖房運転兼用放熱器と、が各々一台以上存在する状態となっており、
前記制御手段は、
前記暖房運転専用放熱器が暖房運転においてのみ運転可能、前記冷房運転専用放熱器が冷房運転においてのみ運転可能、前記冷房運転暖房運転兼用放熱器が暖房運転または冷房運転の何れかの運転モードにおいてのみ運転可能、または暖房運転及び冷房運転の何れの運転モードでも運転可能となるように、前記複数の放熱器の各々を冷温水空調システムの構築を完了して空調運転を開始する前に、初期設定として設定し、
暖房運転の運転モードでのみ運転可能となるように設定された放熱器に、冷房運転の運転モードにおいて水熱媒が通過しないように前記流量調整弁を閉塞制御し、暖房運転の運転モードにおいて冷房運転の運転モードへ切替える指示が前記操作手段からあった場合に、前記流量調整弁の全てが閉塞していることを条件として冷房運転の運転モードへの切替えを許容する、又は
冷房運転の運転モードでのみ運転可能となるように設定された放熱器に、暖房運転の運転モードにおいて水熱媒が通過しないように前記流量調整弁を閉塞制御し、冷房運転の運転モードにおいて暖房運転の運転モードへ切替える指示が前記操作手段からあった場合に、前記流量調整弁の全てが閉塞していることを条件として暖房運転の運転モードへの切替えを許容する
ことを特徴とする冷温水空調システム。
【請求項2】
前記制御手段によって制御される報知手段をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の冷温水空調システム。
【請求項3】
前記制御手段は、
暖房運転の運転モードにおいて冷房運転の運転モードへ切替える指示が前記操作手段からあった場合に、前記流量調整弁のうち少なくとも一つの流量制御弁が開放していることを条件として冷房運転の運転モードへの切替えを許容しない旨を前記報知手段に報知させる
ことを特徴とする請求項2に記載の冷温水空調システム。
【請求項4】
前記制御手段は、
冷房運転の運転モードにおいて暖房運転の運転モードへ切替える指示が前記操作手段からあった場合に、前記流量調整弁のうち少なくとも一つの流量制御弁が開放していることを条件として暖房運転の運転モードへの切替えを許容しない旨を前記報知手段に報知させる
ことを特徴とする請求項2に記載の冷温水空調システム。
【請求項5】
前記制御手段は、
暖房運転の運転モードが実行されている場合に、冷房運転の運転モードに設定されている放熱器が運転不可である旨を前記報知手段に報知させる
ことを特徴とする請求項2?請求項4の何れか一項に記載の冷温水空調システム。
【請求項6】
前記制御手段は、
冷房運転の運転モードが実行されている場合に、暖房運転の運転モードに設定されている放熱器が運転不可である旨を前記報知手段に報知させる
ことを特徴とする請求項2?請求項4の何れか一項に記載の冷温水空調システム。」

第4 引用文献、引用発明
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【請求項1】 循環水を加熱または冷却する吸収冷温水機と、循環水を循環させるための配管系と、循環水と空気が熱交換する水空気熱交換手段を有する複数台の室内機とを備えた吸収式空調システムであって、前記室内機側に設けられ室内機の運転/停止または前記吸収式冷温水機の運転/停止信号の少なくとも何れかを出力する複数の操作手段と、この複数の操作手段から出力される吸収冷温水機の運転/停止信号または室内機の運転/停止信号に基づいて前記吸収冷温水機の運転/停止を制御する運転制御手段とを備え、この運転制御手段に室内機の運転/停止または前記吸収冷温水機の運転/停止信号の少なくとも何れかを出力する全ての操作手段から吸収冷温水機の停止信号または室内機の停止信号が出力されたときに、前記運転制御手段は前記吸収冷温水機を停止させるよう制御することを特徴とする吸収式空調システム。」
「【0008】本発明の目的は、一般ユーザーによる複数室内からの空調要求及び冷暖房切り替え要求に合わせて快適に空調できる使い勝手の良い吸収式空調システムを提供するにあり、また、冷房運転時の結晶防止や冷温水流量の制御を自動的に行って負荷要求の無い部屋の冷房などを必要としない省エネ型の吸収式空調システムを提供するにある。」
「【0012】更に本発明は、運転制御手段は、循環水温度を暖房運転モードおよび冷房運転モードの各々に応じた温度に制御することを特徴とする吸収式空調システムを開示する。更に本発明は、水空気熱交換手段を建物内または一部の室内に設けるとともに、この水空気熱交換手段により冷却または加熱された空気を空調される室へ導く空気系を備えたことを特徴とする吸収式空調システムを開示する。更に本発明は、吸収冷温水機に配管を介して冷却塔を接続したことを特徴とする吸収式空調システムを開示する。更に本発明は、配管系は、この配管系内を流通する循環水を循環させるポンプと、循環水の流通を停止させる弁とを有し、前記運転制御手段はこれらポンプと弁とを制御することを特徴とする吸収式空調システムを開示する。更に本発明は、運転制御手段を前記吸収冷温水機側に設置したことを特徴とする吸収式空調システムを開示する。更に本発明は、運転制御手段は、運転/停止ボタン、冷房/暖房運転選択ボタン、設定温度表示部を備えたことを特徴とする吸収式空調システムを開示する。更に本発明は、配管系にバッファタンクを設け、このバッファタンクを介して前記水空気熱交換手段を含む循環水の循環系路を形成したことを特徴とする吸収式空調システムを開示する。」
「【0016】図1は本発明のシステムの一実施例を示す図で、吸収冷温水機30は外部熱源を導入して吸収溶液を加熱して冷媒蒸気を発生させる高温再生器1、低温再生器2、発生した冷媒蒸気を冷却水で冷却して凝縮液化させる凝縮器3、液冷媒を散布して蒸発させその蒸発潜熱で冷水を冷却する蒸発器4、蒸発した冷媒蒸気を溶液に吸収させるとともに冷却水で冷却する吸収器5、濃溶液と希釈液を熱交換させる高温熱交換器6、低温熱交換器7、溶液循環ポンプ8、冷媒ポンプ9、溶液スプレポンプ13が配設されている。また、暖房時に高温再生器1から高温の冷媒蒸気を蒸発器4に導いて管内を流れる温水を加熱させるための冷暖房切り替え弁18及び蒸発器4で凝縮した液冷媒を溶液系統に送る液冷媒送り制御弁19などを動作的に配管接続するとともに、熱源入力制御装置10が配設されている。また、図示は省略したが、自動抽気システムAPUとそのガスを貯える貯気タンクSTが配設されている。冷房運転、特に暖房から冷房運転へ切り替えたときの冷房運転時にこの抽気システムが駆動し、吸収の障害となる各種の物質の除去をはかる。また、吸収器5及び凝縮器3の伝熱管内に冷却水を通水させる冷却水配管21、ファン29を備えた冷却塔CT、冷却水ポンプ22などからなる冷却水配管系統があり、該冷却水配管系には電動排水弁23、自動空気抜き弁24、補給水配管25、補給水供給制御電動弁26、フロート弁27、液面スイッチ28が配設されている。室内機31は約3台から15台程度配設され、各室内機31には送風ファン42、冷温水が通水される熱交換コイル43が設けられている。蒸発器4からの冷温水は冷温水配管45、冷温水行き管47経由で各室内機31へ送られ、冷温水戻り管46、冷温水ポンプ50を経由して再び冷温水配管45を通って蒸発器4へ戻ってくる。また一部の冷温水はバイパス流量制御弁49で制御される冷温水バイパス管48を通って戻され、またポンプ50入口にはシスターン51からの配管が接続されている。冷温水流量制御弁44は室内機31への流量制御を行う。」
「【0017】コントローラ40には、図6に示すように運転スイッチ60、冷房選定スイッチ63、暖房選定スイッチ64、送風量設定スイッチ65、室内温度設定スイッチ66、運転状態表示パネル67、スピーカ68等が設けられ、渡り配線61を介して室内機運転制御盤41と接続されている。運転制御装置20は信号伝達線62により各室内機の制御盤41と連絡されており、いづれかのコントローラ40でスイッチ等の操作が行われるとその信号を該当する制御盤41を介して取り込む。そして各種の検出器からの入力も取り込み、操作信号及び検出器からの入力に応じて吸収冷温水機30や各種の弁の制御を行う。これらの動作を行うためには、運転制御装置20は例えば、マイクロプロセッサと上記各種動作を行うためのプログラムから構成される。」
「【0018】以下、本実施例の動作を説明する。まず通常の冷房運転について説明する。すべての室内機31のコントローラ40では冷房選定スイッチ63が選定され、送風量設定スイッチ65、室内温度設定スイッチ66が設定され運転スイッチ60が入っているとする。この信号は室内機運転制御盤41を介して渡り配線61、信号伝達線62を介して運転制御装置20に送られる。この冷房運転時には吸収冷温水機30の冷暖房切り替え弁18は閉じられ、液冷媒送り制御弁19も閉じられている。この状態で吸収冷凍サイクルは次のように動作している。即ち都市ガスや灯油などの燃焼熱で高温発生器1では吸収溶液を加熱して冷媒蒸気を発生し、溶液を濃縮する。高温再生器1で発生した冷媒蒸気を熱源として低温再生器2では、溶液を加熱して冷媒蒸気を発生し、さらに濃縮する。低温発生器2で発生した冷媒蒸気及び高温発生器1の冷媒は凝縮器3に導かれ冷却水で冷却されて凝縮液化され、液冷媒は蒸発器4に送られる。蒸発器4では液冷媒が散布されて蒸発させられ、その蒸発潜熱で管内を流れる冷温水が冷却される。また高温再生器で濃縮された濃溶液の一部は高温熱交換器6を通り、低温再生器2からの濃溶液と合流して低温熱交換器7へ送られ、溶液スプレポンプ13により吸収器5の管群上に散布される。吸収器5では、管内を流れる冷却水によって散布された濃溶液が冷却されるとともに、蒸発器4で発生した冷媒蒸気が吸収器5に導かれ、濃溶液に吸収されて低温の希溶液が生成される。この生成された希溶液は溶液循環ポンプ8により、濃溶液と希溶液を熱交換させる低温熱交換器7へ送られ、このあと2分されて一方は低温再生器2に送られ、残りはさらに高温熱交換器6、及び溶液循環量制御弁11を経由して高温再生器1に送られる。以上のように吸収冷凍サイクルが構成されている。ここで溶液として臭化リチウム水溶液が、また、冷媒としては水が用いられる。また吸収器5及び凝縮器3では気体の冷媒を液化するため不凝縮ガスが存在すると著しく熱物質移動性能が阻害されるために、これら機器から不凝縮性ガスを抽気する自動抽気システムAPUとそのガスを貯える貯気タンクST(これらは図示省略)が設けられ、冷房運転時常時作動している。」
「【0026】次に暖房運転の諸動作を述べる。ある室内機31のコントローラ40(図6)でユーザーが暖房選定スイッチ64を選定して運転スイッチ60を入れたとする。この場合は、(1)システムが冷房運転中、(2)システムが冷房運転モードで停止中、(3)システムが暖房運転に切り替え終了している場合の3ケースがある。(1)の場合は切り替えできない旨をコントローラ40からスピーカ68より合成音声でまたは運転表示パネル67から文字表示でユーザーに伝える。(3)の場合は通常の暖房運転であり、あとで説明する。(2)の場合は、冷房運転モードから暖房への切り替え可能な場合であり、その動作は次の通りである。」
「図1



したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「循環水を加熱または冷却する吸収冷温水機と、循環水を循環させるための配管系と、循環水と空気が熱交換する水空気熱交換手段を有する複数台の室内機と、室内機への冷温水の流量制御を行う冷温水流量制御弁と、を備えた吸収式空調システムであって、前記室内機には送風ファン、冷温水が通水される熱交換コイルが設けられ、前記室内機側に設けられ室内機の運転/停止または前記吸収式冷温水機の運転/停止信号の少なくとも何れかを出力する複数の操作手段と、この複数の操作手段から出力される吸収冷温水機の運転/停止信号または室内機の運転/停止信号に基づいて前記吸収冷温水機の運転/停止を制御する運転制御手段とを備え、この運転制御手段に室内機の運転/停止または前記吸収冷温水機の運転/停止信号の少なくとも何れかを出力する全ての操作手段から吸収冷温水機の停止信号または室内機の停止信号が出力されたときに、前記運転制御手段は前記吸収冷温水機を停止させるよう制御する吸収式空調システム。」


第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
引用発明における「循環水を加熱または冷却する吸収冷温水機」、「循環水を循環させるための配管系」、「室内機への冷温水の流量制御を行う冷温水流量制御弁」、「室内機側に設けられ室内機の運転/停止または前記吸収式冷温水機の運転/停止信号の少なくとも何れかを出力する複数の操作手段」、「複数の操作手段から出力される吸収冷温水機の運転/停止信号または室内機の運転/停止信号に基づいて前記吸収冷温水機の運転/停止を制御する運転制御手段」、「吸収式空調システム」は、各文言の意味、機能または作用等からみて、本願発明1における「水熱媒循環回路上に設けられ、水熱媒を加熱又は冷却する熱源機」、「水熱媒が通過する水熱媒循環回路」、「複数の放熱器に対応して前記水熱媒循環回路上に各々設けられ、前記複数の放熱器に流入する水熱媒の量を調整する流量調整弁」、「操作手段」、「操作手段から出力される前記放熱器の運転開始、前記放熱器の運転停止、室温制御、水温制御の情報に基づいて前記流量調整弁を制御する制御手段」、「冷温水空調システム」に相当する。
引用発明における「冷温水が通水される熱交換コイル」は、引用文献1の図1の配置をみると、熱交換コイル43が冷却水の循環する回路上に複数設けられているので、本願発明1における「水熱媒循環回路上に設けられ、前記熱源機から流出する水熱媒が流入する複数の放熱器」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「水熱媒が通過する水熱媒循環回路と、
前記水熱媒循環回路上に設けられ、水熱媒を加熱又は冷却する熱源機と、
前記水熱媒循環回路上に設けられ、前記熱源機から流出する水熱媒が流入する複数の放熱器と、
前記複数の放熱器に対応して前記水熱媒循環回路上に各々設けられ、前記複数の放熱器に流入する水熱媒の量を調整する流量調整弁と、
操作手段と、
前記操作手段から出力される前記放熱器の運転開始、前記放熱器の運転停止、室温制御、水温制御の情報に基づいて前記流量調整弁を制御する制御手段と、を備えた冷温水空調システム。」
(相違点)
本願発明1は、「複数の放熱器」について、「前記複数の放熱器は、
加熱された水熱媒のみ流入する暖房運転専用放熱器、
冷却された水熱媒のみ流入する冷房運転専用放熱器、及び
加熱及び冷却された水熱媒の何れも流入する冷房運転暖房運転兼用放熱器のうち二種類以上が適用され、
前記水熱媒循環回路上には、
前記暖房運転専用放熱器と、前記冷房運転専用放熱器又は前記冷房運転暖房運転兼用放熱器と、が各々一台以上存在する状態、又は、
前記冷房運転専用放熱器と、前記暖房運転専用放熱器又は前記冷房運転暖房運転兼用放熱器と、が各々一台以上存在する状態となって」いると特定するとともに、「制御手段」について、「前記暖房運転専用放熱器が暖房運転においてのみ運転可能、前記冷房運転専用放熱器が冷房運転においてのみ運転可能、前記冷房運転暖房運転兼用放熱器が暖房運転または冷房運転の何れかの運転モードにおいてのみ運転可能、または暖房運転及び冷房運転の何れの運転モードでも運転可能となるように、前記複数の放熱器の各々を冷温水空調システムの構築を完了して空調運転を開始する前に、初期設定として設定し暖房運転の運転モードでのみ運転可能となるように設定された放熱器に、冷房運転の運転モードにおいて水熱媒が通過しないように前記流量調整弁を閉塞制御し、暖房運転の運転モードにおいて冷房運転の運転モードへ切替える指示が前記操作手段からあった場合に、前記流量調整弁の全てが閉塞していることを条件として冷房運転の運転モードへの切替えを許容する、又は
冷房運転の運転モードでのみ運転可能となるように設定された放熱器に、暖房運転の運転モードにおいて水熱媒が通過しないように前記流量調整弁を閉塞制御し、冷房運転の運転モードにおいて暖房運転の運転モードへ切替える指示が前記操作手段からあった場合に、前記流量調整弁の全てが閉塞していることを条件として暖房運転の運転モードへの切替えを許容する」(以下「特定制御A」という。)と特定しているのに対して、引用発明は、「熱交換コイル」を「冷房運転用、暖房運転用、または、冷房運転暖房運転兼用」と初期設定しない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明の目的は、「一般ユーザーによる複数室内からの空調要求及び冷暖房切り替え要求に合わせて快適に空調できる使い勝手の良い吸収式空調システムを提供する」(【0008】)ことにあり、そのために引用発明は、「前記室内機側に設けられ室内機の運転/停止または前記吸収式冷温水機の運転/停止信号の少なくとも何れかを出力する複数の操作手段と、この複数の操作手段から出力される吸収冷温水機の運転/停止信号または室内機の運転/停止信号に基づいて前記吸収冷温水機の運転/停止を制御する運転制御手段とを備え、この運転制御手段に室内機の運転/停止または前記吸収冷温水機の運転/停止信号の少なくとも何れかを出力する全ての操作手段から吸収冷温水機の停止信号または室内機の停止信号が出力されたときに、前記運転制御手段は前記吸収冷温水機を停止させるよう制御する」こと(以下「特定制御B」という。)を採用している。
しかしながら、引用文献1には、「熱交換コイル」を「冷房運転用、暖房運転用、または、冷房運転暖房運転兼用」と初期設定することについて記載も示唆もされておらず、「熱交換コイル」を初期設定することが単なる設計的事項であるともいえない。そうすると、特定制御Bを採用する引用発明において、初期設定を前提とする特定制御Aを採用することも想定できない。 よって、引用発明において相違点に係る本願発明1に係る構成を採用することはできない。
したがって、本願発明1は、当業者であっても引用発明に基いて容易に発明をすることができたものとすることはできない。

2.本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1の構成をすべて含むものであり、当該本願発明1が上記「1.(2)相違点についての判断」で示したとおり、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできないから、本願発明2ないし6も、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

第6 原査定について
請求時の補正により、本願発明1-6は「前記暖房運転専用放熱器が暖房運転においてのみ運転可能、前記冷房運転専用放熱器が冷房運転においてのみ運転可能、前記冷房運転暖房運転兼用放熱器が暖房運転または冷房運転の何れかの運転モードにおいてのみ運転可能、または暖房運転及び冷房運転の何れの運転モードでも運転可能となるように、前記複数の放熱器の各々を冷温水空調システムの構築を完了して空調運転を開始する前に、初期設定として設定」するという事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1に基いて、容易に発明をすることができたものとすることはできない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-26 
出願番号 特願2014-136155(P2014-136155)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F24F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 横溝 顕範金丸 治之  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 莊司 英史
井上 哲男
発明の名称 冷温水空調システム  
代理人 特許業務法人きさ特許商標事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ