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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1346429
審判番号 不服2017-12028  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-10 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2013-202123「撮像素子およびその製造方法ならびに電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月13日出願公開,特開2015- 70070,請求項の数(12)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成25年9月27日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 2月24日 手続補正
平成28年12月20日 拒絶理由通知
平成29年 2月13日 意見書提出・手続補正
平成29年 5月11日 拒絶査定(以下,「原査定」という。)
平成29年 8月10日 審判請求・手続補正
平成30年 4月20日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知1」という。)
平成30年 6月20日 意見書提出・手続補正
平成30年 7月19日 拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知2」という。)
平成30年 8月 3日 手続補正

第2 本願発明
本願請求項1-12に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明12」という。)は,平成30年8月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-12に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1-本願発明12は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
画素ごとに光電変換部を有する半導体基板と,
前記半導体基板に設けられた画素分離溝と,
前記半導体基板の受光面側に設けられた固定電荷膜とを備え,
前記固定電荷膜は,前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続して設けられた第1絶縁膜と,前記第1絶縁膜上の少なくとも前記受光面に部分的に設けられた第2絶縁膜と,前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続して設けられた第3絶縁膜とが,前記半導体基板側から,前記第1絶縁膜,前記第2絶縁膜および前記第3絶縁膜の順に形成され,
前記第1絶縁膜および前記第3絶縁膜は,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2))または酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))のいずれか1種によって形成され,前記第2絶縁膜は,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),酸化チタン(TiO_(2))および酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))のうちの前記半導体基板上に設けられる前記第1絶縁膜よりも高屈折率材料を用いて形成されている
撮像素子。
【請求項2】
前記第2絶縁膜は,前記受光面から前記画素分離溝の壁面の一部にかけて連続している,請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記第1絶縁膜の膜厚は1nm以上25nm以下である,請求項1または2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記第2絶縁膜の膜厚は10nm以上80nm以下である,請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の撮像素子。
【請求項5】
前記第3絶縁膜の膜厚は10nm以上80nm以下である,請求項1乃至3のいずれかに記載の撮像素子。
【請求項6】
前記第1絶縁膜及び前記第3絶縁膜は酸化ハフニウムである,請求項1乃至5のいずれかに記載の撮像素子。
【請求項7】
前記半導体基板と前記第1絶縁膜との間に酸化シリコン膜が設けられている,請求項1乃至6のいずれか記載の撮像素子。
【請求項8】
前記酸化シリコン膜の膜厚は1nmである,請求項7に記載の撮像素子。
【請求項9】
画素ごとに光電変換部を有すると共に,画素分離溝を有する半導体基板の受光面に固定電荷膜を成膜する工程を含み,前記固定電荷膜の製造工程では,
前記半導体基板の前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続した第1絶縁膜を形成したのち,
前記第1絶縁膜上の少なくとも前記受光面に部分的に,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),酸化チタン(TiO_(2))および酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))のうちの前記半導体基板上に設けられる前記第1絶縁膜よりも高屈折率材料によって構成される第2絶縁膜を形成し,
前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜上に,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),酸化チタン(TiO_(2))および酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))のうちの前記半導体基板上に設けられる前記第1絶縁膜よりも高屈折率材料によって構成される第3絶縁膜を形成する
撮像素子の製造方法。
【請求項10】
前記第1絶縁膜および前記第3絶縁膜を原子層蒸着法または有機金属化学気相成長法によって形成する,請求項9に記載の撮像素子の製造方法。
【請求項11】
前記第2絶縁膜を物理的気相成長法によって形成する,請求項9または10に記載の撮像素子の製造方法。
【請求項12】
撮像素子を含み,
前記撮像素子は,
画素ごとに光電変換部を有する半導体基板と,
前記半導体基板に設けられた画素分離溝と,
前記半導体基板の受光面側に設けられた固定電荷膜とを備え,
前記固定電荷膜は,前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続して設けられた第1絶縁膜と,前記第1絶縁膜上の少なくとも前記受光面に部分的に設けられた第2絶縁膜と,前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続して設けられた第3絶縁膜とが,前記半導体基板側から,前記第1絶縁膜,前記第2絶縁膜および前記第3絶縁膜の順に形成され,
前記第1絶縁膜および前記第3絶縁膜は,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2))または酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))のいずれか1種によって形成され,前記第2絶縁膜は,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),酸化チタン(TiO_(2))および酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))のうちの前記半導体基板上に設けられる前記第1絶縁膜よりも高屈折率材料を用いて形成されている
電子機器。」

第3 引用文献及び引用発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載
当審拒絶理由通知1に引用された引用文献1(特開2013-175494号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下同じ。)

「【技術分野】
【0001】
本開示は,裏面照射型の固体撮像装置とその製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,基板上の配線層が形成される側とは反対側から光を照射する,裏面照射型の固体撮像装置が提案されている(下記特許文献1参照)。裏面照射型の固体撮像装置では,光照射側に配線層や回路素子等が形成されないため,基板に形成された受光部の開口率を高くできる他,入射光が配線層等に反射されることなく受光部に入射されるので,感度の向上が図られる。
特許文献1の固体撮像装置は,光学混色を低減するために,画素境界に遮光膜を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-186818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような固体撮像装置において,光学混色の低減等のさらなる特性向上が求められている。
【0005】
本開示は,光学混色の低減等の特性をさらに向上させた固体撮像装置を提供する。また,その固体撮像装置を用いた電子機器を提供する。」

「【0025】
[1-2 要部の構成]
図2に,本実施形態の固体撮像装置1の画素領域3における断面構成を示し,図3に,本実施形態の固体撮像装置1の画素領域3の平面レイアウトを示す。本実施形態の固体撮像装置1は,裏面照射型のCMOS型固体撮像装置を例としたものであり,4つの光電変換部に対して所要の画素トランジスタを共有させた,いわゆる4画素共有を1単位とした例である。また,以下の説明では,第1導電型をp型とし,第2導電型をn型として説明する。
【0026】
図2に示すように,本実施形態の固体撮像装置1は,複数の画素を有する基板12と,基板12の表面側に形成された配線層13と,支持基板31とを備える。また,基板12の裏面側に順に形成された固定電荷を有する絶縁膜(以下,固定電荷膜)20と,絶縁膜21と,遮光膜25と,平坦化膜26と,カラーフィルタ層27と,オンチップレンズ28とをさらに備える。
【0027】
基板12は,シリコンからなる半導体基板で構成され,例えば1μm?6μmの厚みを有して形成されている。基板12の画素領域3にはフォトダイオードからなる光電変換部40と,画素回路部を構成する複数の画素トランジスタ(Tr1?Tr4)とから構成される画素が複数個,二次元マトリクス状に形成されている。そして,隣接する光電変換部40間は素子分離部19により電気的に分離されている。また,図2では図示を省略するが,基板12に形成された画素領域の周辺領域には,周辺回路部が構成されている。
【0028】
光電変換部40は,基板12の表面側及び裏面側に形成される第1導電型(以下p型)半導体領域23,24と,その間に形成される第2導電型(以下n型)半導体領域22とで構成されている。光電変換部40では,そのp型半導体領域23,24とn型半導体領域22との間のpn接合で主なフォトダイオードが構成されている。光電変換部40では,入射した光の光量に応じた信号電荷が生成され,n型半導体領域22に蓄積される。また,基板12の界面で発生する暗電流の原因となる電子は基板12の表面及び裏面に形成されたp型半導体領域23,24の多数キャリアである正孔に吸収されることにより,暗電流が抑制される。
また,各光電変換部40はp型半導体領域で構成された画素分離層18と,その画素分離層18内に形成された素子分離部19によって電気的に分離されている。」

「【0034】
素子分離部19は,基板12の裏面側から深さ方向に形成された溝部39内に順に埋め込んで形成された固定電荷膜20,及び絶縁膜21とで構成され,基板12に形成された画素分離層18内に彫り込まれて形成されている。すなわち,素子分離部19は,図に示すように画素を取り囲むように格子状に形成されている。また,隣接する光電変換部40と光電変換部40との間に画素トランジスタが形成されている場合には,フローティングディフュージョン部30やソース・ドレイン領域に重なるように配置されている。」

「【0036】
また,溝部39に形成される固定電荷膜20は溝部39の内周面及び底面に成膜されると共に,基板12の裏面全面に形成されている。なお,以下の説明では,溝部39の内周面及び底面を合わせて,「内壁面」として説明する。固定電荷膜20としては,シリコン等の基板上に堆積することにより固定電荷を発生させてピニングを強化させることが可能な材料を用いることが好ましく,負の電荷を有する高屈折率材料膜または高誘電体膜を用いることができる。具体的な材料としては,例えば,ハフニウム(Hf),アルミニウム(Al),ジルコニウム(Zr),タンタル(Ta)及びチタン(Ti)のうち少なくとも1つの元素を含む酸化物または窒化物を適用することができる。成膜方法としては,例えば,化学気相成長法(以下,CVD(Chemical Vapor Deposition)法),スパッタリング法,原子層蒸着法(以下,ALD(Atomic Layer Deposition)法)等が挙げられる。
ALD法を用いれば,成膜中に界面準位を低減するSiO2膜を同時に1nm程度の膜厚に形成することができる。また,上記以外の材料としては,ランタン(La),プラセオジム(Pr),セリウム(Ce),ネオジム(Nd),プロメチウム(Pm),サマリウム(Sm),ユウロピウム(Eu),ガドリニウム(Gd),テルビウム(Tb),ジスプロシウム(Dy),ホルミウム(Ho),ツリウム(Tm),イッテルビウム(Yb),ルテチウム(Lu)及びイットリウム(Y)のうち少なくとも1つの元素を含む酸化物または窒化物等が挙げられる。さらに,上記固定電荷膜は,酸窒化ハフニウム膜または酸窒化アルミニウム膜で形成することも可能である。
【0037】
上述の固定電荷膜20の材料には,絶縁性を損なわない範囲で,膜中にシリコン(Si)や窒素(N)が添加されていてもよい。その濃度は,膜の絶縁性が損なわれない範囲で適宜決定される。このように,シリコン(Si)や窒素(N)が添加されることによって,膜の耐熱性やプロセスの中でイオン注入の阻止能力を上げることが可能になる。
【0038】
本実施形態では,溝部39の内壁面及び基板12の裏面に負の電荷を有する固定電荷膜20が形成されているため,固定電荷膜20に接する面に反転層が形成される。これにより,シリコン界面が反転層によりピンニングされるため,暗電流の発生が抑制される。また,基板12に溝部39を形成する場合,溝部39の側壁及び底面に物理的ダメージが発生し,溝部39の周辺部でピニング外れが発生する可能性がある。この問題点に対し,本実施形態では,溝部39の側壁及び底面に固定電荷を多く持つ固定電荷膜20を形成することによりピニング外れが防止される。
【0039】
絶縁膜21は,固定電荷膜20が形成された溝部39内に埋め込まれると共に,基板12の裏面側全面に形成されている。絶縁膜21の材料としては,固定電荷膜20とは異なる屈折率を有する材料で形成することが好ましく,例えば,酸化シリコン,窒化シリコン,酸窒化シリコン,樹脂などを用いることができる。また,正の固定電荷を持たない,又は正の固定電荷が少ないという特徴を持つ材料を絶縁膜21に用いることができる。
【0040】
そして,溝部39が絶縁膜21に埋め込まれることにより,各画素を構成する光電変換部40が絶縁膜21を介して分離される。これにより,隣接画素に信号電荷が漏れ込みにくくなるため,飽和電荷量(Qs)を超えた信号電荷が発生した場合において,溢れた信号電荷が隣接する光電変換部40へ漏れ込むことを低減することができる。このため,電子混色を抑制することができる。
【0041】
また,基板12の入射面側となる裏面側に形成された固定電荷膜20と絶縁膜21の2層構造はその屈折率の違いにより,反射防止膜の役割を有する。これにより,基板12の裏面側から入射した光の基板12の裏面側における反射が防止される。」

「【0099】
〈6.第6の実施形態:固体撮像装置〉
次に,本開示の第6の実施形態に係る固体撮像装置について説明する。本実施形態の固体撮像装置の全体構成は,図1と同様であるから図示を省略する。図16は,本実施形態の固体撮像装置41の要部の断面構成図である。図16において,図2に対応する部分には同一符号を付し重複説明を省略する。
【0100】
本実施形態の固体撮像装置41は,素子分離部42の構成が第1の実施形態と異なる。本実施形態では,素子分離部42は,溝部39内に順に埋め込んで形成された第1固定電荷膜43,第2固定電荷膜44,第1絶縁膜45及び第2絶縁膜46を備える。なお,本実施形態では,溝部39の側面をテーパ形状とし,基板12の深さ方向に開口径が小さくなるように形成した。以下に,溝部39内及び基板12の裏面に形成される各膜を,その製造方法と共に説明する。
【0101】
第1固定電荷膜43は,溝部39の内壁面及び基板12の裏面を被覆するように形成されており,CVD法又はALD法を用いて形成されている。第1固定電荷膜43を形成する材料としては,第1の実施形態における固定電荷膜20の材料と同様の材料を用いることができる。
【0102】
CVD法又はALD法を用いて第1固定電荷膜43を形成する場合,成膜中に界面準位を低減するSiO2膜が同時に形成される。このSiO2膜は,1nm程度の厚さで形成することが好ましい。この基板界面に形成されるSiO2膜の厚みを除いた場合,第1固定電荷膜43は,3nm以上の厚さで形成されることが好ましく,例えば,3nm以上20nm以下に形成されるのが好ましい。
【0103】
第2固定電荷膜44は,第1固定電荷膜43を被覆するように溝部39内及び基板12の裏面に形成されており,例えば,PVD(Physical Vapor Deposition)法を用いて形成されている。第2固定電荷膜44を形成する材料についても,第1固定電荷膜43と同様,第1の実施形態における固定電荷膜20の材料と同様の材料を用いることができる。また,第2固定電荷膜44は,第1固定電荷膜43と同じ材料で形成されてもよく,また,異なる材料で形成されてもよい。
【0104】
第2固定電荷膜44は,基板12の裏面において,例えば40nm以上60nm以下の膜厚で形成されるのが好ましい。第2固定電荷膜44を40nm以上60nm以下の膜厚に形成することにより,基板12の裏面側におけるピニングの効果や,後述する反射防止膜の効果をより確実に得ることができる。
【0105】
第1絶縁膜45は,第2固定電荷膜44を被覆するように溝部39内及び基板12の裏面に形成されており,PVD法やCVD法で形成される異方性酸化膜,例えば,TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)材料やシラン材料を含む酸化膜で形成される。第1絶縁膜45は,基板12の裏面において,例えば,0nm以上600nm以下の膜厚で形成されるのが好ましい。
【0106】
第2絶縁膜46は,第1絶縁膜45を被覆するように溝部39内及び基板12の裏面に形成されており,本実施形態では,ALD法やCVD法を用いて形成された等方性酸化膜,例えば,シリコン酸化膜等で形成されている。本実施形態では,第2絶縁膜46により溝部39内を全て埋め込む。また,第2絶縁膜46は,基板12の裏面において,例えば0nm以上300nm以下の膜厚で形成されるのが好ましく,第1絶縁膜45と第2絶縁膜46とを合わせた膜厚が10nm以上900nm以下,好ましくは50nm以上700nm以下,より好ましくは,100nm以上500nm以下となるように形成される。
【0107】
また,基板12の裏面側及び溝部39内部に形成された第1固定電荷膜43,第2固定電荷膜44,第1絶縁膜45及び第2絶縁膜46からなる積層膜は,反射防止膜の役割も果たす。
なお,本実施形態では,第1絶縁膜45,第2絶縁膜46の2層の絶縁膜を形成する場合について説明しているが,本開示はこれに限らず,第1,第2絶縁膜45,46のいずれかが形成されればよい。また,第1絶縁膜45として異方性酸化膜,第2絶縁膜46として等方性酸化膜を形成する場合について説明しているが,逆の場合であってもよい。
さらに,溝部39の内周面は,第1固定電荷膜43,第2固定電荷膜44,第1絶縁膜45及び第2絶縁膜46の全てまたは一部が積層されている構造であっても,上記いずれの膜も積層されていない構造であってもよい。」

(2)引用発明1
前記(1)より,引用文献1には,第6の実施形態について,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「 画素領域3にはフォトダイオードからなる光電変換部40と,画素回路部を構成する複数の画素トランジスタ(Tr1?Tr4)とから構成される画素が複数個,二次元マトリクス状に形成されている基板12と,
各光電変換部40は画素分離層18と,その画素分離層18内に形成された素子分離部19によって電気的に分離されている基板12の裏面側から深さ方向に形成された溝部39と,
溝部39の内壁面及び基板12の裏面を被覆するように形成された第1固定電荷膜43と,
第1固定電荷膜43を被覆するように基板12の裏面に形成された第2固定電荷膜44を有し,
第1固定電荷膜43は,ハフニウム(Hf),アルミニウム(Al),ジルコニウム(Zr),タンタル(Ta)及びチタン(Ti)のうち少なくとも1つの元素を含む酸化物または窒化物によって形成され,
第2固定電荷膜44は,第1固定電荷膜43と同じ材料で形成されてもよく,また,異なる材料で形成されてもよい
裏面照射型のCMOS型固体撮像装置。」

(3)引用発明2
また,前記(1)より,引用文献1には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「光電変換部40と,画素回路部を構成する複数の画素トランジスタ(Tr1?Tr4)とから構成される画素が複数個,二次元マトリクス状に形成されており,基板12の裏面側から深さ方向に形成された溝部39を有する基板12の裏面を被覆するように第1固定電荷膜43及び第2固定電荷膜44を形成する工程を含み,
溝部39の内壁面及び基板12の裏面を被覆するように第1固定電荷膜43を形成し,
第1固定電荷膜43を被覆するように基板12の裏面に第2固定電荷膜44を形成し,
第2固定電荷膜44は,第1固定電荷膜43と同じ材料で形成されてもよく,また,異なる材料で形成されてもよい
裏面照射型のCMOS型固体撮像装置の製造方法。」

2 引用文献2について
当審拒絶理由通知1に引用された引用文献2(特開2012-191005号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本開示は,固体撮像素子,固体撮像素子の製造方法および撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型の固体撮像素子では,フォトダイオードにおける結晶欠陥や,半導体基板に形成された受光部とその上の絶縁層との界面における界面準位が,暗電流の原因となることが知られている。
【0003】
そこで,暗電流の発生を抑制する技術として,半導体基板の全面,例えば,受光画素領域(以下,「有効領域」という)および光学的黒領域(以下,「OB領域」という)上に,負の固定電荷を持つ膜を形成する技術が提案されている。この技術では,半導体基板上に負の固定電荷を持つ膜を形成し,受光部と絶縁層との界面付近に正電荷(ホール)を蓄積することで,界面準位に起因する暗電流の発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-239116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,界面準位に起因する暗電流は,有効領域とOB領域とでは,その案電流量が異なる。従って,上述した負の固定電荷を有する膜を半導体基板の全面に形成する場合には,全体的な暗電流量は低減するものの,有効領域とOB領域との暗電流差が発生し,いわゆるOB段差が発生することが問題となっている。
【0006】
かかる問題に鑑みて,本発明は,有効領域における暗電流と光学的黒領域における暗電流との差を小さくすることができ,いわゆるOB段差を改善することができる固体撮像素子,固体撮像素子の製造方法および撮像装置を提供するものである。」

「【0122】
(変形例2)
次に,第2変形例の固体撮像素子1Bについて説明する。図8は,第3の実施形態に係る固体撮像素子の構成を示す図である。本実施形態に係る固体撮像素子1Bは,上述した固体撮像素子1Bの負の固定電荷を有する膜の膜構成を変えたものであり,その他の構成については同一符号を付して説明を省略する。
【0123】
図8に示すように,固体撮像素子1Bは,半導体基板2の有効領域21上に第1の膜61を備え,OB領域22上に第2の膜62を備えている。
【0124】
第1の膜61は,半導体基板2上に形成された第1層61aと,この第1層61a上に形成された第2層61bと,この第2層61b上に形成された第3層61cとが積層された構成を有する。
【0125】
第1層61aは,例えば,酸化ハフニウム膜,酸化アルミニウム膜,酸化ジルコニウム膜,酸化タンタル膜および酸化チタン膜のうちいずれかの1つの膜からなり,ALD法またはMOCVD法により形成される。
【0126】
また,第2層61bは,例えば,酸化ハフニウム膜,酸化アルミニウム膜,酸化ジルコニウム膜,酸化タンタル膜および酸化チタン膜のうちいずれかの1つの膜からなり,PVD法により形成される。
【0127】
また,第3層61cは,例えば,酸化ハフニウム膜,酸化アルミニウム膜,酸化ジルコニウム膜,酸化タンタル膜および酸化チタン膜のうちいずれかの1つの膜からなり,ALD法またはMOCVD法により形成される。
【0128】
上第2の膜62は,半導体基板2上に形成された第1層62cを有する。この第1層62cは,例えば,酸化ハフニウム膜,酸化アルミニウム膜,酸化ジルコニウム膜,酸化タンタル膜および酸化チタン膜のうちいずれかの1つの膜からなり,ALD法またはMOCVD法により形成される。
【0129】
次に,図9を参照して上記固体撮像素子1Bの製造方法について説明する。ここでは,本変形例の固体撮像素子1Bの特徴的な構成である第1の膜61および第2の膜62を形成する工程について説明し,その他の工程については説明を省略する。
【0130】
まず,図9(a)に示すように,ALD法またはMOCVD法により,半導体基板2の有効領域21およびOB領域22上に,負の固定電荷を有する膜63を形成する。この負の固定電荷を有する膜63の材料としては,例えば,酸化ハフニウム,酸化アルミニウム,酸化ジルコン,酸化タンタルおよび酸化チタンのうちいずれか1つの酸化物が挙げられる。
【0131】
ALD法で形成する場合の形成条件は,例えば,形成基板温度200?500℃,プリカーサ流量が10?500sccm,照射時間1?15秒,O_(3)流量10?500sccm,とする。第1の膜の膜厚は,好ましくは1nm以上である。なお,第1の膜をALD法により形成した場合には,同時に,半導体基板2の表面に,酸化シリコン膜(厚さ1nm程度)が形成されることがある。
【0132】
次に,図9(b)に示すように,PVD法により,負の固定電荷を有する膜63上に負の固定電荷を有する膜64を形成する。負の固定電荷を有する膜64の材料としては,例えば,酸化ハフニウム,酸化アルミニウム,酸化ジルコン,酸化タンタルおよび酸化チタンのうちいずれか1つの酸化物が挙げられる。
【0133】
なお,PVD法で形成する際の形成条件は,例えば,圧力0.01?50Pa,DCパワー500?2000W,Ar流量5?50sccm,O_(2)流量5?50sccmとする。
【0134】
次に,図9(c)に示すように,有効領域21上に形成された負の固定電荷を有する膜64上にレジスト40を形成した後,ウェットエッチングすることにより,OB領域22上に形成された2層の負の固定電荷を有する膜63,64を選択的に除去し,有効領域21上に第1の膜61の第1層61aおよび第2層61bを形成する。
【0135】
次に,図9(c)に示すように,ALD法またはMOCVD法により,第1の膜61の第2層61b上,およびOB領域22における半導体基板2上に,負の固定電荷を有する膜65を形成する。これにより,第1の膜61の第3層61cを形成するとともに,半導体基板2のOB領域22上に,第2の膜62の第1層62cを形成する。第1の膜61の第3層61cおよび第2の膜62の第1層62cの材料としては,例えば,酸化ハフニウム,酸化アルミニウム,酸化ジルコン,酸化タンタルおよび酸化チタンのうちいずれか1つの酸化物が挙げられる。
【0136】
なお,ALD法で形成する場合の形成条件は,例えば,形成基板温度200?500℃,プリカーサ流量が10?500sccm,照射時間1?15秒,O_(3)流量10?500sccmとする。
【0137】
第1層61a上に第2層61bを形成し,第2層61b上に第3層61cを形成することによって,3層61a,61b,61cが積層された第1の膜61が構成される。この第1の膜61によって,有効領域21における電荷蓄積領域4の表面に正電荷蓄積領域5aが形成される。
【0138】
また,第1層62cにより構成された第2の膜62によって,OB領域22における電荷蓄積領域4の表面に正電荷蓄積領域5bが形成される。
第1の膜61の第3層61cと第2の膜62の第1層62cは,膜55を形成することで一体として形成される。
【0139】
次に,上述した工程と同様の工程により,絶縁膜6,遮光膜7,平坦化膜8,カラーフィルタ9およびオンチップレンズ10を形成し,図8に示す固体撮像素子1Bが製造される。
【0140】
図10は,固体撮像素子1Bの第2の膜62を,ALD法などで成膜した層とPVD法で成膜した層との2層の積層構造とした場合と,ALD法などで成膜した第1層62cの1層とした場合の暗電流量を示す図である。図10に示すように,第2の膜62を2層とするより,本変形例のように1層(単層)とした方がOB領域における暗電流量が低減する。
【0141】
PVD法で成膜した層は,ALD法で成膜した層に比べて緻密でないため負の固定電荷を阻害する水素などを含みやすい。本変形例のように,第2の膜62をPVD法で成膜した層を含まないALD法などで成膜した層の構造としたことで,水素などの負の固定電荷を阻害する物質が侵入しにくくなる。これにより,固体撮像素子1Bの第2の膜62中の負の固定電荷密度を高くすることができ,負バイアス効果が増加して暗電流が改善すると考えられる。
【0142】
このように,有効領域より暗電流が多く発生するOB領域に形成する第2の膜62の暗電流量を減らすことで,有効領域の暗電流量とOB領域の暗電流量との差(OB段差)を小さくすることができる。」

3 引用文献3について
当審拒絶理由通知1に引用された引用文献3(特開2006-282480号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は,薄膜付きガラス基板,その製造方法およびそれを用いた半導体装置に関し,詳しくは,イメージセンサのような半導体素子を実装可能な薄膜付きガラス基板に関する。」

「【0023】
さらに,これらの結果は垂直方向からのスパッタによるものであるが,ターゲットをガラス基板から離れた位置に設置し,シャドーイング効果を利用した成膜手法がより効果的な場合もある。すなわち,図9(実施の形態4)および10(実施の形態5)に示すように,溝側面が垂直およびテーパ状の溝を有するガラス基板に対して,入射方向を斜め(矢印方向)にしたスパッタリングを行なうことにより(例えば入射角θ1=45°),一方の溝側面および溝底面に薄膜材料が入射し難くなり,溝内において薄膜の切断状態を容易かつ確実に生じさせることができる。なお,図10に示すようなテーパ状の溝の場合,スパッタ入射角θ1は溝のテーパ角θよりも大きい方が段差被覆性をより悪化させる上で好ましい。なお,図9および10において,15,17は薄膜,16,18はガラス基板,17,19は溝である。」

4 引用文献4について
当審拒絶理由通知1に引用された引用文献4(国際公開第2013/080769号)には,図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は,CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサなどに代表される固体撮像素子に関する。」

「【0006】
しかしながら,この固体撮像素子では,p型の注入量や注入面積を増やすと光電変換の特性や飽和電荷量など電気特性などが劣化する。また,p型の不純物を活性化するために高温の熱処理を行うと,当該熱処理によって素子構造がダメージを受けたり変質したりすることが懸念される。具体的に例えば,この高温の熱処理によって,当該熱処理までに基板に注入したドーパントが意図せず拡散することで,光電変換の特性や飽和電荷量など電気特性などが劣化し得る。また,裏面照射型の固体撮像素子では,基板の裏面にp型の注入を行った時点で,当該基板の表面に素子や配線が形成されているため,その後の熱処理における制約が多くなる。
【0007】
そこで,例えば特許文献2及び3では,受光部を設けた基板の表面に,負の固定電荷を有する固定電荷層を設けた固体撮像素子が提案されている。この固体撮像素子では,固定電荷層を設けることで基板の表面に正孔を集積させ,当該正孔と暗電流を成す電子とを再結合させることで,当該電子の蓄積部への移動を防ぎ,暗電流を低減する。」

「【0140】
[8] 固定電荷層を,例えば酸化ハフニウムなどで構成すると,他の層を構成する材料(例えば,酸化シリコン)よりも屈折率を大きくすることができる。この場合,固定電荷層を,インナーレンズとして利用することが可能となり,混色を低減することができるため,好ましい。ただし,固定電荷層と,隣接する他の層との屈折率差が大きくなると,基板10内に入射しようとする光が固定電荷層で反射され,固体撮像素子の感度が低下することが懸念される。
【0141】
そこで,固定電荷層の膜厚を調整して,反射を抑制すると好ましい。例えば,カラーフィルタを透過する光の中で,波長が中間となる緑の光(例えば,500nm以上560nm以下)を基準として,当該緑の光の反射が抑制されるように,固定電荷層の膜厚を調整すると好ましい。
【0142】
具体的に例えば,固定電荷層の,蓄積部11の直上となる領域の中心の膜厚が,下記式(1)を満たすように調整すると好ましい。なお,下記式(1)中のNは固定電荷層の屈折率であり,Kは0以上である任意の1つの整数である。また,固定電荷層の膜厚は,光の反射が最小となる膜厚から所定の範囲内であれば,十分に反射を抑制することができる。そのため,下記式(1)では,固定電荷層の膜厚が当該範囲(例えば±25%)内の値となることを,許容したものとしている。
【0143】
0.75×{500/(4×N)+K×500/(2×N)}nm以上,かつ,
1.25×{560/(4×N)+K×560/(2×N)}nm以下 ・・・(1)
【0144】
カラーフィルタを透過する光には,緑の他に赤や青が含まれる。そのため,赤や青の光の反射も抑制されるように,固定電荷層の膜厚を調整すると,さらに好ましい。また,固定電荷層の膜厚を増大すると,固定電荷層における光の吸収が増大する。そのため,固定電荷層の膜厚を可能な限り薄くすると,さらに好ましい。」

第4 対比及び判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア 引用発明1の「光電変換部40」は,本願発明1の「光電変換部」に相当し,「画素ごとに光電変換部を有する」ものといえる。
イ 引用発明1の「基板12」は,「シリコンからなる半導体基板で構成され」(第3の1(1)【0027】)ており,本願発明1の「半導体基板」に相当する。
ウ 引用発明1の「溝部39」は,本願発明1の「画素分離溝」に相当し,「半導体基板に設けられた」ものといえる。
エ 引用発明1の「第1固定電荷膜43」及び「第2固定電荷膜44」は,本願発明1の「固定電荷膜」に相当する。
また,引用発明1の「第1固定電荷膜43」及び「第2固定電荷膜44」は,裏面照射型のCMOS型固体撮像装置の基板12の裏面に形成されており,「前記半導体基板の受光面側に設けられた」ものといえる。
オ 引用発明1の「第1固定電荷膜43」は,本願発明1の「第1絶縁膜」に相当する。
また,引用発明1の「第1固定電荷膜43」は,溝部39の内壁面及び基板12の裏面を被覆するように形成されたものであり,溝部39の内周面及び底面を合わせて,「内壁面」(第3の1(1)【0036】)であるから,「前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続して設けられた」ものといえる。
カ 引用発明1の「第2固定電荷膜44」は,本願発明1の「第2絶縁膜」に相当する。
また,引用文献1には,「溝部39の内周面は,第1固定電荷膜43,第2固定電荷膜44,第1絶縁膜45及び第2絶縁膜46の全てまたは一部が積層されている構造であっても,上記いずれの膜も積層されていない構造であってもよい。」(第3の1(1)【0107】)ことが記載されており,引用発明1の「第2固定電荷膜44」は,溝部の内周面に設けられない構造,もしくは,溝部の内周面途中で切断される構造等が記載されているから,これは本願発明1の「少なくとも前記受光面に部分的に設けられた」に相当する。
よって,引用発明1の「第2固定電荷膜44」は,「前記第1絶縁膜上の少なくとも前記受光面に部分的に設けられた」ものといえ,本願発明1と引用発明1とは「前記半導体基板側から,前記第1絶縁膜,前記第2絶縁膜」「の順に形成され」ている点で一致する。
キ 引用発明1の「第1固定電荷膜43」は,「ハフニウム(Hf),アルミニウム(Al),ジルコニウム(Zr),タンタル(Ta)及びチタン(Ti)のうち少なくとも1つの元素を含む酸化物」「よって形成され」ることは,本願発明1の「前記第1絶縁膜」は,「酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2))または酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))のいずれか1種によって形成され」ることに相当する。
ク 引用発明1の「裏面照射型のCMOS型固体撮像装置」は,本願発明1の「撮像素子」に相当する。
ケ すると,本願発明1と引用発明1とは,下記コの点で一致し,下記サの点で相違する。
コ 一致点
「 画素ごとに光電変換部を有する半導体基板と,
前記半導体基板に設けられた画素分離溝と,
前記半導体基板の受光面側に設けられた固定電荷膜とを備え,
前記固定電荷膜は,前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続して設けられた第1絶縁膜と,前記第1絶縁膜上の少なくとも前記受光面に部分的に設けられた第2絶縁膜とが,前記半導体基板側から,前記第1絶縁膜,前記第2絶縁膜の順に形成され,
前記第1絶縁膜は,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2))または酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))のいずれか1種によって形成される
撮像素子。」

サ 相違点
(ア)相違点1
本願発明1は,「前記固定電荷膜」は,「第1絶縁膜」と「第2絶縁膜」と「前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続して設けられた第3絶縁膜」が,「前記半導体基板側」から順に形成されているのに対し,引用発明1は,固定電荷膜には第3絶縁膜が形成されていない点。
また,本願発明1は,第3絶縁膜が「酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2))または酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3))のいずれか1種によって形成される」のに対し,引用発明1は,固定電荷膜には第3絶縁膜が形成されていない点。
(イ)相違点2
本願発明1は,「前記第2絶縁膜は,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),酸化チタン(TiO_(2))および酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))のうちの前記半導体基板上に設けられる前記第1絶縁膜よりも高屈折率材料を用いて形成されている」のに対して,引用発明1は,第2固定電荷膜44は,第1固定電荷膜43と同じ材料で形成されてもよく,また,異なる材料で形成されてもよい点。

(2)相違点についての判断
相違点2について検討する。
引用文献1には,「また,基板12の裏面側及び溝部39内部に形成された第1固定電荷膜43,第2固定電荷膜44,第1絶縁膜45及び第2絶縁膜46からなる積層膜は,反射防止膜の役割も果たす。」(第3の1(1)【0107】)こと,また,引用文献4((第3の4【0140】-【0144】)には光の波長,固定電荷層の屈折率を考慮して固定電荷層の膜厚を調整して,反射を抑制する技術が記載されているが,いずれの文献においても,積層膜のいずれの膜の屈折率をどのように調整するかまで認識しておらず,引用発明1において,第2絶縁膜は,第1絶縁膜よりも高屈折率材料を用いて形成する動機付けがない。
そして,本願発明1は,相違点2に係る構成を備えることによって,「第1絶縁膜23Aよりも厚膜に形成される第2絶縁膜23Bに高屈折率の材料を用いることによって反射防止効果を効率よく得られるほかに,光電変換部22へ入射する光を増やして撮像素子10の感度を向上させることが可能となる。」(本願明細書【0026】)という格別の効果を奏すると認められる。

(3)まとめ
したがって,本願発明1は,引用文献1-4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2-8について
本願発明2-8は,本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用文献1-4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明9について
(1)本願発明9と引用発明2との対比
ア 引用発明2の「光電変換部40」は,本願発明9の「光電変換部」に相当し,「画素ごとに光電変換部を有する」ものといえる。
イ 引用発明2の「溝部39」は,本願発明9の「画素分離溝」に相当する。
ウ 引用発明2の「基板12」は,「シリコンからなる半導体基板で構成され」(第3の1(1)【0027】)ており,本願発明9の「半導体基板」に相当し,基板12の裏面側から深さ方向に形成された溝部39を有するから,「画素分離溝を有する半導体基板」といえる。
エ 引用発明2の「基板12の裏面」は,裏面照射型のCMOS型固体撮像装置であるから「受光面」といえる。
オ 引用発明2の「第1固定電荷膜43」及び「第2固定電荷膜44」は,本願発明9の「固定電荷膜」に相当する。
カ 引用発明2の「基板12の裏面を被覆するように第1固定電荷膜43及び第2固定電荷膜44を形成する工程」は,上記エ,オを考慮すると,本願発明9の「半導体基板の受光面に固定電荷膜を成膜する工程」に相当し,「前記固定電荷膜の製造工程」といえる。
キ 引用発明2の「第1固定電荷膜43」は,本願発明9の「第1絶縁膜」に相当する。
また,引用発明2の「第1固定電荷膜43」は,溝部39の内壁面及び基板12の裏面を被覆するように形成されたものであり,溝部39の内周面及び底面を合わせて,「内壁面」(第3の1(1)【0036】)であるから,引用発明2の「溝部39の内壁面及び基板12の裏面を被覆するように第1固定電荷膜43を形成し,」は,本願発明9の「前記半導体基板の前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続した第1絶縁膜を形成し」に相当する。
ク 引用発明2の「第2固定電荷膜44」は,本願発明9の「第2絶縁膜」に相当する。
また,引用文献1には,「溝部39の内周面は,第1固定電荷膜43,第2固定電荷膜44,第1絶縁膜45及び第2絶縁膜46の全てまたは一部が積層されている構造であっても,上記いずれの膜も積層されていない構造であってもよい。」(第3の1(1)【0107】)ことが記載されており,引用発明2の「第2固定電荷膜44」は,溝部の内周面に設けられない構造,もしくは,溝部の内周面途中で切断される構造等が記載されているから,これは本願発明9の「少なくとも前記受光面に部分的に」「形成した」に相当する。
よって,引用発明2の「第2固定電荷膜44」は,「少なくとも前記受光面に部分的に」「形成した」ものといえ,本願発明9と引用発明2とは,「前記第1絶縁膜上の少なくとも前記受光面に部分的に,」「第2絶縁膜を形成し」ている点で一致する。
ケ 引用発明2の「裏面照射型のCMOS型固体撮像装置の製造方法」は,本願発明9の「撮像素子の製造方法」に相当する。
コ すると,本願発明9と引用発明2とは,下記サの点で一致し,下記シの点で相違する。
サ 一致点
「 画素ごとに光電変換部を有すると共に,画素分離溝を有する半導体基板の受光面に固定電荷膜を成膜する工程を含み,前記固定電荷膜の製造工程では,
前記半導体基板の前記受光面から前記画素分離溝の壁面および底面にかけて連続した第1絶縁膜を形成したのち,
前記第1絶縁膜上の少なくとも前記受光面に部分的に,第2絶縁膜を形成した
撮像素子の製造方法。」

シ 相違点
(ア)相違点3
本願発明9は,第2絶縁膜が「酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),酸化チタン(TiO_(2))および酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))のうちの前記半導体基板上に設けられる前記第1絶縁膜よりも高屈折率材料によって構成される」を有するのに対し,引用発明2は,第2固定電荷膜44は,第1固定電荷膜43と同じ材料で形成されてもよく,また,異なる材料で形成されてもよい点。
(イ)相違点4
本願発明9は,「前記第1絶縁膜および前記第2絶縁膜上に,酸化ハフニウム(HfO_(2)),酸化ジルコニウム(ZrO_(2)),酸化アルミニウム(Al_(2)O_(3)),酸化チタン(TiO_(2))および酸化タンタル(Ta_(2)O_(5))のうちの前記半導体基板上に設けられる前記第1絶縁膜よりも高屈折率材料によって構成される第3絶縁膜を形成する」のに対して,引用発明2は,第3絶縁膜を形成していない点。

(2)相違点についての判断
相違点3について検討する。
引用文献1には,「また,基板12の裏面側及び溝部39内部に形成された第1固定電荷膜43,第2固定電荷膜44,第1絶縁膜45及び第2絶縁膜46からなる積層膜は,反射防止膜の役割も果たす。」(第3の1(1)【0107】)こと,また,引用文献4((第3の4【0140】-【0144】)には光の波長,固定電荷層の屈折率を考慮して固定電荷層の膜厚を調整して,反射を抑制する技術が記載されているが,いずれの文献においても,積層膜のいずれの膜の屈折率をどのように調整するかまで認識しておらず,引用発明2において,第2絶縁膜は,第1絶縁膜よりも高屈折率材料を用いて形成する動機付けがない。
そして,本願発明9は,相違点4に係る構成を備えることによって,「第1絶縁膜23Aよりも厚膜に形成される第2絶縁膜23Bに高屈折率の材料を用いることによって反射防止効果を効率よく得られるほかに,光電変換部22へ入射する光を増やして撮像素子10の感度を向上させることが可能となる。」(本願明細書【0026】)という格別の効果を奏すると認められる。

(3)まとめ
したがって,本願発明9は,引用文献1-4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 本願発明10-11について
本願発明10-11は,本願発明9の発明特定事項をすべて含むものであるから,本願発明9と同じ理由により,引用文献1-4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 本願発明12について
本願発明12は,独立請求項であるが,本願発明1の発明特定事項をすべて含むものであるから,本願発明1と同じ理由により,引用文献1-4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,平成29年8月10日付け手続補正による補正前の請求項1,3-9に記載された発明について,上記引用文献1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
また,平成29年8月10日付け手続補正による補正前の請求項2に記載された発明について,上記引用文献1-3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら,平成30年8月3日付け手続補正により補正された請求項1-12に記載された発明は,上記のとおり,引用文献1-3に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由1の概要及び判断
特許法第29条第2項について
当審では,平成30年6月20日付け手続補正による補正前の請求項1-7は,引用文献1-4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものとの拒絶の理由を通知しているが,上記のとおり,引用文献1-4に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,当審拒絶理由1を維持することはできない。

2 当審拒絶理由2の概要及び判断
特許法第36条第6項第2号及び第1号について
当審では,平成30年8月3日付け手続補正による補正前の請求項9,14は,明確性要件に適合しない,また,サポート要件に適合しないとの拒絶の理由を通知しているが,平成30年8月3日付け手続補正において,上記の請求項9,14を削除する補正がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1-12は,当業者が引用文献1-4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-28 
出願番号 特願2013-202123(P2013-202123)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 梶尾 誠哉今井 聖和  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 河合 俊英
恩田 春香
発明の名称 撮像素子およびその製造方法ならびに電子機器  
代理人 特許業務法人つばさ国際特許事務所  

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