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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06Q
管理番号 1346444
審判番号 不服2017-14750  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-04 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2016-217330「電力需要調達支援システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月17日出願公開、特開2018- 77571、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年11月7日の出願であって、平成29年2月9日付けで拒絶理由通知がされ、平成29年4月13日付けで手続補正がされ、平成29年7月4日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年10月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成29年7月4日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.本願請求項1-10に係る発明は、以下の引用文献1-7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-336890号公報
2.特開2013-240154号公報
3.特開平2-228763号公報
4.特開2000-276460号公報
5.特開2007-41969号公報
6.西川 茂彦 ほか,電力託送における広域機関への発電・販売計画提出に関するJX手順の考察,電子情報通信学会技術研究報告 IN2016-18-IN2016-22 情報ネットワーク,一般社団法人電子情報通信学会,2016年 6月 9日,第116巻 第97号,pp.63-66,ISSN 0913-5685
7.特開2005-122521号公報

2.請求項10に係る発明は不明確であり、本願は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明
本願請求項1-9に係る発明(以下、「本願発明1」-「本願発明9」という。)は、平成29年10月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
順伝播型のニューラルネットワークの説明変数として、少なくとも、電力需要予測の対象日時に関する情報と、前記対象日時の天候予想情報と、前記対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、前記電力需要予測を行なう予測日時までの各電力需要者の需要実績情報と、を取得する説明変数取得手段と、
前記取得した説明変数を入力として用いて前記順伝播型のニューラルネットワークを動作させ、前記各電力需要者の前記対象日時の電力需要予測量を出力する電力需要予測手段と、
を備え、
前記対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報は、曜日別の電力需要傾向および電力需要の季節変動を反映させるために、1週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、2週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、3週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、を含む情報処理装置。」

なお、本願発明2-9の概要は以下のとおりである。

本願発明2-6は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明7-8は、それぞれ本願発明1に対する方法、プログラムの発明であり、本願発明1とカテゴリ表現が異なるだけの発明である。

本願発明9は、本願発明1である情報処理装置と同様の機能を含むシステムの発明である。

第4 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審において付加したものである。

ア.
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電力自由化で出現した電力小売事業家が自分で保有する自家発電機と、他(電力会社,電力取引市場,他の電力小売事業家など)から購入した電力(バックアップ電力)を合わせて顧客(需要家)に販売(供給)する場合に、需要をどのように見積もり、さらに、自家発電機と購入電力(バックアップ電力)の量(割合)をどのように計画するのがよい(収益が上がる)か、評価・検討・最適化するためのシステムに関する。」

イ.
「【0031】
なお、詳しい処理フローについては、図2を用いて説明する。図2は、本発明の処理フローを示す。まず、条件DB(気象・イベント・カレンダ等)(211)から気温・イベントなど電力や蒸気などの需要量の変動にかかわる情報を、需要実績DB(212)から需要家の需要実績の情報を入力し、需要予測式の学習(更新)を行い、需要予測式(パラメータ)(214)を記憶する(201)。そして、今度は、需要予測式(パラメータ)(214)を用いて、需要予測式による需要を算出し、需要予測結果DB(213)に記憶する(202)。次に、需要実績DB(212)と需要予測結果DB(213)を入力し、需要予測の予測誤差を評価し、予測誤差情報(215)を記憶する(203)。次に、この予測誤差情報(215)を参考に、適当な需要予測上乗せ比率(量)パラメータ(a)を設定する(204)。さらに、需要量(供給量)のうち、自家発電機による供給量と、電力会社等からのバックアップ電力買電比率(量)のパラメータ(b)を適当に設定する(205)。予測・実績のズレのうち自家発電による調整分とバックアップ購入変動分を評価し(206)、自家発電コスト情報(216)から自家発電にかかるコストを算出し(207)、バックアップ電力コスト情報(217)からペナルティを含むバックアップ買電コストを算出する(208)。さらに、需要がいつも予測値や契約電力よりオーバーして、来年度の契約電力や契約内容を変更しなければならないようなら、そのコストについても評価する(209)。204?209を複数の需要予測値上乗せパラメータ(a)、および、自家発電・買電比(量)パラメータ(b)で行い、最適(需要変動リスク範囲内で収益が最大)となる需要予測値上乗せパラメータ(a)・自家発電・買電比(量)パラメータ(b)を決定する(210)。
【0032】
条件DB(気象・イベント・カレンダ等)(211)の情報は、気温(最高気温,最低気温,平均気温など),風速,風向,湿度,天気などの気象情報や、デパートやスーパーの売り出し、バレンタイン,クリスマスセール,ホテルの結婚式やイベントホールのイベント情報などのイベント情報,休日,祝日,曜日などのカレンダ情報,工場の生産計画,ホテルの客数など、需要の変動要因となる様々な条件データを使用することができる。なお、冷暖房の電力需要などは、(単に気温の高低によらず)人の感覚に影響を受けやすい(例:昨日より○○℃も気温が低くなったので、急に寒くなったように感じる、暖房を使おう、など)。従って、人の感覚を表すようなパラメータ(例:前日と当日の気温差など)を加えると、需要予測に効果的である。
【0033】
需要実績DB(212)は、過去の需要実績値を保持するデータベースである。過去の30分毎、あるいは、1時間毎などの需要実績を記憶しておく。バックアップ契約で前日に申告するのが30分毎であれば30分毎のデータ,1時間毎であれば1時間毎のデータがあると望ましい(但し、1時間毎のデータしかない場合にも、例えば、前後の時間の需要の重みをつけて、30分毎のデータに内部で分割して処理するなどの対応をすればよい)。」

ウ.
「【0036】
また、需要予測式の学習(更新)(201)の方法は、前述した単回帰分析,重回帰分析により、需要予測式(パラメータ)を求める以外にも、ニューラルネットワークを使って、気温,イベントなどの情報から電力需要を求める方法,データマイニングによる方法,単純に過去数日分のデータの平均値を予測値とする方法など、様々の需要予測方式を用いることができる。また、これら複数の需要予測方式で需要予測式(パラメータ)を求め、その中で、需要予測誤差が小さい方式を選択してもよい。」

エ.
「【0064】
図13は、「翌日需要予測」画面(1301)を示す。ここでは、需要予測したい日にち(翌日の日にち),曜日、その日の予想最高気温と予想最低気温,風速など、需要に影響する条件を入力し、[OK]ボタンを押下する。すると、図5の「過去の需要データ学習による「最適需要予測方式分析」」メニューで図10の画面で指定して求めた、パターン分類・各時刻毎の最適な需要予測式を使って、翌日の各時刻の需要量を算出し、図のようなグラフ等で表示する。さらに、過去のデータにおける需要の変動(予測誤差の標準偏差分を上乗せ,下乗せした値など)も表示するとよい。この情報から、翌日の各時刻の需要量の予測値やその変動の範囲を知ることができる。ところで、ここでは、需要予測は各時刻毎に行う例で示したが、1時間毎以外にも、30分ごとに行うケースなどもよくある。」

したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「電力小売事業家が自分で保有する自家発電機と、他から購入した電力を合わせて顧客(需要家)に販売(供給)する場合に、需要をどのように見積もり、さらに、自家発電機と購入電力の量(割合)をどのように計画するのがよいか、評価・検討・最適化するためのシステムであって(【0001】)、
条件DB(気象・イベント・カレンダ等)から気温・イベントなど電力や蒸気などの需要量の変動にかかわる情報を、需要実績DB(212)から需要家の需要実績の情報を入力し、需要予測式の学習(更新)を行い、そして、今度は、需要予測式による需要を算出するものであり(【0031】)、
条件DB(気象・イベント・カレンダ等)の情報は、気温(最高気温,最低気温,平均気温など),風速,風向,湿度,天気などの気象情報や休日,祝日,曜日などのカレンダ情報など、需要の変動要因となる様々な条件データを使用することができ(【0032】)、
需要実績DBは、過去の需要実績値を保持するデータベースであり、過去の30分毎、あるいは、1時間毎などの需要実績を記憶しておくものであり(【0033】)、
需要予測式の学習(更新)の方法は、ニューラルネットワークを使って、気温,イベントなどの情報から電力需要を求める方法など、様々の需要予測方式を用いることができ(【0036】)、
需要予測したい日にち(翌日の日にち),曜日、その日の予想最高気温と予想最低気温,風速など、需要に影響する条件を入力し、[OK]ボタンを押下すると、最適な需要予測式を使って、翌日の各時刻の需要量を算出し、グラフ等で表示する(【0064】)、
システム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2の段落【0012】-【0025】の記載からみて、当該引用文献2には、電力需要者の需要パターンに基づいて電力需要量を予測するという技術的事項が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の「実施例」の記載からみて、当該引用文献3には、ニューラルネットワークを用いた予測装置において、複数種類のパラメータに対して重み係数による重み付けを行うという技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落【0016】の記載からみて、当該引用文献4には、予測モデルによる出力データと実際のデータとの誤差に基づいて最良の予測モデルを決定するという技術的事項が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の段落【0026】-【0035】の記載からみて、当該引用文献5には、電力の需要予測データに基づいて電力取引における入札データを作成するという技術的事項が記載されていると認められる。

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の第63頁の記載からみて、当該引用文献6には、発電事業者が発電計画及び需要計画を広域機関へ情報提供するという技術的事項が記載されていると認められる。

7.引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献7の段落【0025】の記載からみて、当該引用文献7には、電力需要を予測したい日の「1週間前」、「2日前」、「1日前」の実績を所定の重み係数で足して平均をとり、24時間分の単位時間毎の推移(基準データ)を求め、予測したい時刻の直近1時間前の電力量と、基準データの電力量との比率を、基準データに乗じて電力量の予測値を求めるという技術的事項が記載されていると認められる。

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。なお、下線は当審において付加したものである。

引用発明の「システム」は、「電力小売事業者が・・・需要をどのように見積もり、さらに、自家発電機と購入電力の量(割合)をどのように計画するのがよいか、評価・検討・最適化するためのシステム」であって、評価・検討・最適化するために「条件DB」から「情報」が「入力」されるものである。
ここで、前記「条件DB」から「入力」される「情報」には、「気温(最高気温,最低気温,平均気温など),風速,風向,湿度,天気などの気象情報」や「休日,祝日,曜日などのカレンダ情報」など、「需要の変動要因となる様々な条件データを使用することでき」ることから、引用発明の「休日,祝日,曜日などのカレンダ情報」は、本願発明1の「電力需要予測の対象日時に関する情報」に相当し、引用発明の「気温(最高気温,最低気温,平均気温など),風速,風向,湿度,天気などの気象情報」は、本願発明1の「前記対象日時の天候予想情報」に相当する。
そして、引用発明の「システム」は、「需要予測したい日にち(翌日の日にち),曜日、その日の予想最高気温と予想最低気温,風速など、需要に影響する条件を入力」すると「最適な需要予測式を使って、翌日の各時刻の需要量を算出し、グラフ等で表示する」ものであることから、引用発明の「休日,祝日,曜日などのカレンダ情報」(本願発明1の「電力需要予測の対象日時に関する情報」に相当)及び「気温(最高気温,最低気温,平均気温など),風速,風向,湿度,天気などの気象情報」(本願発明の「前記対象日時の天候予想情報」に相当)は、本願発明1の「説明変数」に相当する。
ここで、引用発明は、「需要予測式の学習(更新)の方法は、ニューラルネットワークを使って・・・電力需要を求める方法など、様々な需要予測式を用いることができる」ものであることから、引用発明の「休日,祝日,曜日などのカレンダ情報」及び「気温(最高気温,最低気温,平均気温など),風速,風向,湿度,天気などの気象情報」は、本願発明1の「ニューラルネットワークの説明変数」に相当する。
なお、引用発明では、本願発明1の「説明変数」に相当する「休日,祝日,曜日などのカレンダ情報」及び「気温(最高気温,最低気温,平均気温など),風速,風向,湿度,天気などの気象情報」が「入力」されることから、引用発明は、本願発明1の「説明変数取得手段」に相当する構成を備えている。
また、引用発明は、「需要予測したい日にち(翌日の日にち),曜日、その日の予想最高気温と予想最低気温,風速など、需要に影響する条件を入力し、[OK]ボタンを押下すると、最適な需要予測式を使って、翌日の各時刻の需要量を算出し、グラフ等で表示する」ものであって、前記「需要予測式」として「ニューラルネットワーク」を用いることができることから、引用発明は、本願発明1の「前記取得した説明変数を入力として用いて前記ニューラルネットワークを動作させ、前記対象日時の電力需要予測量を出力する電力需要予測手段」に相当する構成を備えている。
さらに、引用発明の「システム」は「需要予測式」によって「需要を算出する」ものであるから、引用発明の「システム」は本願発明1の「情報処理装置」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

<一致点>
「ニューラルネットワークの説明変数として、少なくとも、電力需要予測の対象日時に関する情報と、前記対象日時の天候予想情報と、を取得する説明変数取得手段と、
前記取得した説明変数を入力として用いて前記ニューラルネットワークを動作させ、前記対象日時の電力需要予測量を出力する電力需要予測手段と、
を備える情報処理装置。」

<相違点>
<相違点1>
本願発明1の「ニューラルネットワーク」は「順伝播型」であるのに対し、引用発明のニューラルネットワークは「順伝播型」であるのか示されていない点。
<相違点2>
本願発明1は、「説明変数」として「対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報」を用いるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
<相違点3>
本願発明1の上記「対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報」は、さらに「曜日別の電力需要傾向および電力需要の季節変動を反映させるために、1週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、2週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、3週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、を含む」のに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
<相違点4>
本願発明1の「説明変数」として「電力需要予測を行なう予測日時までの各電力需要者の需要実績情報」を用いるのに対し、引用発明はそのような構成を備えていない点。
<相違点5>
本願発明1は、出力される電力需要予測量が「各電力需要者の」電力需要予測量であるのに対し、引用発明において出力される電力需要予測量は「システム」を利用する「電力小売事業家」における電力需要予測量であって、「各電力需要者の」電力需要予測量ではない点。

(2)相違点についての判断
ア.上記相違点2及び相違点3について検討すると、相違点2に係る本願発明1の「説明変数」として「対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報」を用いるという構成、相違点3に係る前記「需要実績情報」がさらに「曜日別の電力需要傾向および電力需要の季節変動を反映させるために、1週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、2週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、3週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、を含む」という構成が、上記「第4」の引用文献2-7にも記載されていない。また、当該構成は周知技術であるともいえない。

イ.上記相違点4について検討すると、相違点4に係る本願発明1の「説明変数」として「電力需要予測を行なう予測日時までの各電力需要者の需要実績情報」を用いるという構成は、上記「第4」の引用文献2-7にも記載されていない。また、当該構成は周知技術であるともいえない。

ウ.上記ア.及びイ.のとおり、本願発明1は、上記相違点1及び相違点5について判断するまでもなく、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-6、9について
本願発明2-6、9も、本願発明1の「説明変数として・・・対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報・・・を取得する」、「説明変数として・・・電力需要予測を行なう予測日時までの各電力需要者の需要実績情報・・・を取得する」、「前記対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報は、曜日別の電力需要傾向および電力需要の季節変動を反映させるために、1週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、2週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、3週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、を含む」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

3.本願発明7-8について
本願発明7-8は、それぞれ本願発明1に対応する方法、プログラムの発明であるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-7に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
1.理由1(特許法第29条第2項)について
審判請求時の補正により、本願発明1-6,9は、「説明変数」として「対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報」及び「電力需要予測を行なう予測日時までの各電力需要者の需要実績情報」を用い、さらに上記「対象日時と同じ曜日における同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報」は、「曜日別の電力需要傾向および電力需要の季節変動を反映させるために、1週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、2週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、3週間前の同じ時刻の各電力需要者の需要実績情報と、を含む」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-7に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
また、審判請求時の補正により、本願発明1に対する方法、プログラムの発明である本願発明7-8は、上記事項に対応する構成を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用文献1-7に基づいて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由1を維持することはできない。

2.理由2(特許法第36条第6項第2号)について
審判請求時の補正により、補正前の
「前記各電力需要者の将来の電力需要予測量に基づいて、新電力事業者が運営する新電力会社に参加する電力需要者に対する将来の電力調達を、電力取引市場および他の電力源に適切に配分する電力調達配分手段」という記載は、
「新電力事業者が運営する新電力会社に参加する電力需要者の前記電力需要予測量を加算して前記新電力会社の電力需要予測量を生成し、前記新電力会社の電力需要予測量に対応した将来の電力調達量を電力取引市場からの電力調達量と他の電力源からの電力調達量とに配分する電力調達配分手段」
に補正されている。
すなわち、補正前の「適切に配分する」という文言が「配分する」に補正されるとともに、「電力調達配分手段」が実行する情報処理が技術的に特定されているので、原査定の理由2を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2016-217330(P2016-217330)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06Q)
P 1 8・ 537- WY (G06Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 阿部 潤  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 金子 幸一
田中 秀樹
発明の名称 電力需要調達支援システム、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム  
代理人 加藤 卓士  

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