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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1346501
審判番号 不服2018-53  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-04 
確定日 2018-11-22 
事件の表示 特願2014-102356号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月7日出願公開、特開2015-217093号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月16日に出願したものであって、平成29年3月10日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月15日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年9月27日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、平成30年1月4日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
本件補正は特許請求の範囲の請求項1の記載の補正を含むものであり、本件補正前の平成29年5月15日にされた手続補正の特許請求の範囲の請求項3の記載と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである(下線部は補正箇所を示す。また、A?Dについては発明を分説するため当審で付与した。)。

(本件補正前)
「【請求項3】
A 主制御手段と、
B 前記主制御手段から一方向で情報が送信されるように前記主制御手段と電気的に接続された副制御手段と、を備え、
C 前記副制御手段は、
C1 計時する計時部と、
C2 制御情報を記憶する記憶部と、
C3 特定時刻又は特定時間の到来によって当該特定時刻又は特定時間において使用を禁止する制御情報を特定し、前記副制御手段の制御において使用許可の状態から使用禁止の状態とする禁止部と、
C4 使用許可の状態にある制御情報を用いて制御を行う制御部と、を有する
D 遊技機。」

(本件補正後)
「【請求項1】
A 主制御手段と、
B 前記主制御手段から一方向で情報が送信されるように前記主制御手段と電気的に接続された副制御手段と、を備え、
C 前記副制御手段は、
C1 計時する計時部と、
C2 制御情報を記憶する記憶部と、
C3 特定時刻又は特定時間の到来によって当該特定時刻又は特定時間において使用を禁止する制御情報を特定し、前記副制御手段の制御において使用許可の状態から使用禁止の状態とする禁止部と、
C4 特定時刻又は特定時間の到来によって使用許可の状態へ解禁されることで使用許可の状態にある制御情報を用いて制御を行う制御部と、を有する
D 遊技機。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項3に記載された発明特定事項であるC4の「使用許可の状態にある制御情報」について「特定時刻又は特定時間の到来によって使用許可の状態へ解禁されることで」使用許可の状態にあることを付加して限定したものである。
そして、補正前の請求項3に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である。
そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0066】及び【0101】などの記載に基づいており、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明は、前記1(本件補正後)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献に記載された事項
ア 原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-113701号公報(以下「引用文献」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。

「【0027】
実施の形態1.
まず、遊技機の一例であるパチンコ遊技機の全体の構成について説明する。図1はパチンコ遊技機を正面からみた正面図である。なお、以下の実施の形態では、パチンコ遊技機を例に説明を行うが、本発明による遊技機はパチンコ遊技機に限られず、スロット機などの他の遊技機に適用することもできる。
【0028】
パチンコ遊技機1は、縦長の方形状に形成された外枠(図示せず)と、外枠の内側に開閉可能に取り付けられた遊技枠とで構成される。また、パチンコ遊技機1は、遊技枠に開閉可能に設けられている額縁状に形成されたガラス扉枠2を有する。遊技枠は、外枠に対して開閉自在に設置される前面枠(図示せず)と、機構部品等が取り付けられる機構板と、それらに取り付けられる種々の部品(後述する遊技盤を除く。)とを含む構造体である。」

「【0055】
図2は、主基板31における回路構成の一例を示すブロック図である。なお、図2には、遊技機に搭載されている払出制御基板37、インタフェース基板66、中継基板77および演出制御基板80も示されている。主基板31には、プログラムに従ってパチンコ遊技機1を制御する基本回路(遊技制御手段に相当)53と、ゲートスイッチ32a、始動口スイッチ14a、カウントスイッチ23、および入賞口スイッチ29a,30a,33a,39aからの信号を基本回路53に与える入力ドライバ回路58と、可変入賞球装置15を開閉するソレノイド16、特別可変入賞球装置20を開閉するソレノイド21および大入賞口内の経路を切り換えるためのソレノイド21Aを基本回路53からの指令に従って駆動する出力回路59とが搭載されている。」

「【0067】
演出制御基板80は、演出制御用CPU101、ROM84、RAM85およびI/Oポート87を含む演出制御用マイクロコンピュータ100を搭載している。なお、RAM85は外付けであってもよい。演出制御基板80において、演出制御用マイクロコンピュータ100は、内蔵または外付けのROM84に格納されたプログラムに従って動作し、中継基板77を介して入力される主基板31からのストローブ信号(演出制御INT信号)に応じて、入力ドライバ102および入力ポート103を介して演出制御コマンドを受信する。また、演出制御用マイクロコンピュータ100は、演出制御コマンドにもとづいて、VDP(ビデオディスプレイプロセッサ)109に、LCDを用いた可変表示装置9の表示制御を行わせる。
【0068】
演出制御コマンドおよび演出制御INT信号は、演出制御基板80において、まず、入力ドライバ102に入力する。入力ドライバ102は、中継基板77から入力された信号を演出制御基板80の内部に向かう方向にしか通過させない(演出制御基板80の内部から中継基板77への方向には信号を通過させない)信号方向規制手段としての単方向性回路でもある。
【0069】
中継基板77には、主基板31から入力された信号を演出制御基板80に向かう方向にしか通過させない(演出制御基板80から中継基板77への方向には信号を通過させない)信号方向規制手段としての単方向性回路が搭載されている。単方向性回路として、例えばダイオードやトランジスタが使用される。図3には、ダイオードが例示されている。また、単方向性回路は、各信号毎に設けられる。」

「【0073】
演出制御用マイクロコンピュータ100は、受信した演出制御コマンドに従ってキャラクタROM89から必要なデータを読み出す。キャラクタROM89は、可変表示装置9に表示される画像の中でも使用頻度の高いキャラクタ画像データ、具体的には、人物、文字、図形または記号等(飾り図柄を含む)をあらかじめ格納しておくためのものである。演出制御用マイクロコンピュータ100は、キャラクタROM89から読み出したデータをVDP109に出力する。VDP109は、演出制御用マイクロコンピュータ100から入力されたデータにもとづいて可変表示装置9の表示制御を実行する。」

「【0075】
また、この実施の形態では、ランプドライバ基板35には、現在時刻を出力するリアルタイムクロック(RTC)353が搭載されている。演出制御用マイクロコンピュータ100は、リアルタイムクロック353から現在の日付(年、月、日、曜日)を示す日付信号や現在の時刻(時、分、秒)を示す時刻信号を入力し、現在の日時にもとづいて各種処理を実行する。リアルタイムクロック353は、通常、遊技機に電源が供給されているときには遊技機からの電源によって動作し、遊技機の電源が切られているときには、ランプドライバ35に搭載されたバックアップ電源回路355(例えば、バッテリ)から供給される電源によって動作する。従って、リアルタイムクロック353は、遊技機の電源が切られている場合であっても現在の日時を計時することができる。なお、リアルタイムクロック353は、遊技機に電源が供給されているときであったもバックアップ電源回路355から供給される電源によって動作するようにしてもよい。」

「【0077】
なお、リアルタイムクロック353をランプドライバ基板35ではなく、演出制御基板80や音声出力基板70に搭載してもよい。また、リアルタイムクロック353を主基板31に搭載するようにしてもよい。また、リアルタイムクロック353を設けずに、バックアップRAM356に設けたカウンタをカウントアップする(例えば、遊技機の電源をオンしてからの始動入賞回数をカウントアップする)ことによって計時してもよい。そして、演出制御用マイクロコンピュータ100は、バックアップRAM356に設けたカウンタのカウント値にもとづいて各種処理を実行してもよい。」

「【0216】
この実施の形態では、飾り図柄の変動表示を行う場合に、「1」から「9」までの図柄を用いた通常の飾り図柄変動と、「1」から「9」までの図柄に加えて所定のオールマイティー図柄を用いた特別の飾り図柄変動とのいずれかを実行する。オールマイティー図柄とは、通常の飾り図柄変動に用いられる全ての図柄(例えば「1」から「9」までの図柄)と等価的に用いられる図柄である。例えば、オールマイティー図柄を用いた特別の飾り図柄変動を行うときに、可変表示装置9における左、右の表示領域のうちいずれか一方がオールマイティー図柄で停止表示された場合、他方が「1」から「9」までのいずれの図柄で停止表示されたとしてもリーチ状態となる。この場合、例えば、左の表示領域が図柄「7」で停止表示され、右の表示領域がオールマイティー図柄で停止表示されたことによってリーチ態様となった場合、最終的に中の表示領域が図柄「7」で停止表示されれば大当り図柄の表示となる。また、例えば、オールマイティー図柄を用いた特別の飾り図柄変動を行うときに、可変表示装置9における左、右の表示領域がともにオールマイティー図柄で停止表示された場合もリーチ状態となる。この場合、最終的に中の表示領域がいずれの図柄(「1」から「9」)で停止表示されたとしても大当り図柄の表示となる。
【0217】
現時刻が所定の図柄変更期間であれば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして、オールマイティー図柄を含む通常時大当り図柄決定用テーブルを選択し(ステップS1811)、オールマイティー図柄を含む飾り図柄変動を選択したことを示すオールマイティー選択フラグをセットする(ステップS1812)。」

「【0219】
現時刻が所定の図柄変更期間でなければ、演出制御用マイクロコンピュータ100は、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして通常時大当り図柄決定用テーブルを選択する(ステップS1813)。なお、ステップS1810で現時刻が所定の図柄変更期間でないと判定した場合、演出制御用マイクロコンピュータ100は、オールマイティー選択フラグが既にセットされていれば、そのオールマイティー選択フラグをリセットしてステップS1813に移行する。
【0220】
受信した変動パターンコマンドが通常大当り指定でなければ、演出制御用マイクロコンピュータ100は、確変大当り指定であるか否かを確認する(ステップS1814)。確変大当り指定であれば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、確変大当りが指定されたことを示す確変大当り演出フラグをセットする(ステップS1815)。次いで、演出制御用マイクロコンピュータ100は、ステップS1807で入力した現時刻信号にもとづいて、現時刻が所定の図柄変更期間(例えば、昼の12:00から13:00の間)であるか否かを確認する(ステップS1816)。
【0221】
現時刻が所定の図柄変更期間であれば、演出制御用マイクロコンピュータ100は、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして、オールマイティー図柄を含む確変時大当り図柄決定用テーブルを選択し(ステップS1817)、オールマイティー選択フラグをセットする(ステップS1818)。」

「【0223】
現時刻が所定の図柄変更期間でなければ、演出制御用マイクロコンピュータ100は、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして確変時大当り図柄決定用テーブルを選択する(ステップS1819)。なお、ステップS1816で現時刻が所定の図柄変更期間でないと判定した場合、演出制御用マイクロコンピュータ100は、オールマイティー選択フラグが既にセットされていれば、そのオールマイティー選択フラグをリセットしてステップS1819に移行する。」

【図3】から、演出制御基板がキャラクタROM89を有することが見て取れる。

上記記載事項を総合すれば、引用文献には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(a?dについては本願補正発明のA?Dに対応させて付与した。)。

「a 主基板31と(【0055】)、
b 主基板31からの演出制御コマンドを、主基板31から入力された信号を演出制御基板80に向かう方向にしか通過させない(演出制御基板80から中継基板77への方向には信号を通過させない)中継基板77及び中継基板77から入力された信号を演出制御基板80の内部に向かう方向にしか通過させない(演出制御基板80の内部から中継基板77への方向には信号を通過させない)入力ドライバ102を介して受信する演出制御基板80と(【0067】?【0069】)、を備え、
c 前記演出制御基板80は、
c1 現在の日時を計時するリアルタイムクロック353と(【0075】、【0077】)、
c2 可変表示装置9に表示される画像の中でも使用頻度の高いキャラクタ画像データ、具体的には、人物、文字、図形または記号等(飾り図柄を含む)をあらかじめ格納しておくキャラクタROM89と(【0073】、【図3】)、
c3 現時刻が所定の図柄変更期間でなければ、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして通常時大当り図柄決定用テーブルまたは確変時大当り図柄決定用テーブルを選択する演出制御用マイクロコンピュータ100と(【0219】、【0223】)、
c4 現時刻が所定の図柄変更期間であれば、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして、オールマイティー図柄を含む通常時大当り図柄決定用テーブルまたはオールマイティー図柄を含む確変時大当り図柄決定用テーブルを選択し、キャラクタROM89から読み出したデータをVDP109に出力する演出制御用マイクロコンピュータ100と(【0073】、【0217】、【0221】)、演出制御用マイクロコンピュータ100から入力されたデータにもとづいて可変表示装置9において、「1」から「9」までの図柄に加えて所定のオールマイティー図柄を用いた特別の飾り図柄変動の表示制御を実行するVDP109と(【0073】、【0216】)、を有する
d パチンコ遊技機1(【0028】)。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、見出し(a)?(d)は、本願補正発明のA?Dに対応させている。

(a)引用発明の「a 主基板31」は、本願補正発明の「A 主制御手段」に相当する。

(b)引用発明の「b 主基板31からの演出制御コマンドを、主基板31から入力された信号を演出制御基板80に向かう方向にしか通過させない(演出制御基板80から中継基板77への方向には信号を通過させない)中継基板77及び中継基板77から入力された信号を演出制御基板80の内部に向かう方向にしか通過させない(演出制御基板80の内部から中継基板77への方向には信号を通過させない)入力ドライバ102を介して受信する演出制御基板80」は、本願補正発明の「B 前記主制御手段から一方向で情報が送信されるように前記主制御手段と電気的に接続された副制御手段」に相当する。

(c1)引用発明の「c 前記演出制御基板80」が有する「c1 現在の日時を計時するリアルタイムクロック353」は、本願補正発明の「C 前記副制御手段」が有する「C1 計時する計時部」に相当する。

(c2)引用発明の「c 前記演出制御基板80」が有する「c2 可変表示装置9に表示される画像の中でも使用頻度の高いキャラクタ画像データ、具体的には、人物、文字、図形または記号等(飾り図柄を含む)をあらかじめ格納しておくキャラクタROM89」は、本願補正発明の「C 前記副制御手段」が有する「C2 制御情報を記憶する記憶部」に相当する。

(c3)引用発明の「c 前記演出制御基板80」が有する「c3 現時刻が所定の図柄変更期間でなければ、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして通常時大当り図柄決定用テーブルまたは確変時大当り図柄決定用テーブルを選択する演出制御用マイクロコンピュータ100」は、現時刻が所定の図柄変更期間でなくなるときの到来によって当該所定の図柄変更期間でないときにおいて仕様を禁止する制御情報としてオールマイティー図柄を特定し、前記演出制御基板の制御において使用許可の状態から使用禁止の状態とするものといえるから、本願補正発明の「C 前記副制御手段」が有する「C3 特定時刻又は特定時間の到来によって当該特定時刻又は特定時間において使用を禁止する制御情報を特定し、前記副制御手段の制御において使用許可の状態から使用禁止の状態とする禁止部」に相当する機能を有する。

(c4)引用発明の「c 前記演出制御基板80」が有する「c4 現時刻が所定の図柄変更期間であれば、飾り図柄の大当り図柄を決定するために用いる図柄決定用テーブルとして、オールマイティー図柄を含む通常時大当り図柄決定用テーブルまたはオールマイティー図柄を含む確変時大当り図柄決定用テーブルを選択し、キャラクタROM89から読み出したデータをVDP109に出力する演出制御用マイクロコンピュータ100と、演出制御用マイクロコンピュータ100から入力されたデータにもとづいて可変表示装置9において、「1」から「9」までの図柄に加えて所定のオールマイティー図柄を用いた特別の飾り図柄変動の表示制御を実行するVDP109」は、所定の図柄変更期間の到来によってオールマイティー図柄が使用許可の状態へ解禁されることで使用許可の状態にある制御情報であるオールマイティー図柄を用いて制御を行うものといえるから、本願補正発明の「C 前記副制御手段」が有する「C4 特定時刻又は特定時間の到来によって使用許可の状態へ解禁されることで使用許可の状態にある制御情報を用いて制御を行う制御部」に相当する。

(d)引用発明の「d パチンコ遊技機1」は、本願補正発明の「D 遊技機」に相当する。


そうすると、両者は、
「A 主制御手段と、
B 前記主制御手段から一方向で情報が送信されるように前記主制御手段と電気的に接続された副制御手段と、を備え、
C 前記副制御手段は、
C1 計時する計時部と、
C2 制御情報を記憶する記憶部と、
C3 特定時刻又は特定時間の到来によって当該特定時刻又は特定時間において使用を禁止する制御情報を特定し、前記副制御手段の制御において使用許可の状態から使用禁止の状態とする禁止部と、
C4 特定時刻又は特定時間の到来によって使用許可の状態へ解禁されることで使用許可の状態にある制御情報を用いて制御を行う制御部と、を有する
D 遊技機。」
である点で一致し、相違点はない。

したがって、本願補正発明は、引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
また、仮に、本願補正発明と引用発明との間に相違点があったとしても、本願補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)請求人の主張について
ア 審判請求書における主張
請求人は、審判請求書において、引用文献における図柄決定テーブルの変更に係る制御は、一方の図柄決定テーブルを使用している時には他方の図柄決定テーブルの使用を禁止しているに過ぎず、この使用の禁止は一時的な禁止、つまり、他方の図柄決定テーブルは、当該図柄決定テーブルを使用する契機(時刻)が到来すれば、再び使用可能な状態に戻ることになるため、引用文献では、一方の図柄決定テーブルの使用中は他方の図柄決定テーブルによる演出は出現しなくなるが、時間の経過によって他方の図柄決定テーブルによる演出は再び出現することになるので、演出の出現を永久的に禁止する場合に比してその演出の希少性は低い、つまり、図柄決定テーブルが変化する時刻を図って遊技を行えば、所望の図柄決定テーブルによる演出を出現させることが可能であるとともに、仮に当該演出を出現させることができなくても、時間の経過によって当該演出を出現するチャンスを再び得ることができるものであり、このため、本願補正発明と引用文献とでは、制御情報を禁止させる点で共通性を見いだすことはできるが、その禁止の概念自体が全く異なる、つまり、引用文献では、演出の出現を永久的に禁止することによって生じ得る本願補正発明の作用効果は得られず、したがって、本願補正発明は、本願補正発明の特徴的構成を備えていない引用文献に記載された発明と同一ではなく、また引用文献に基づき当業者が容易に想到し得るものではなく、そして、本願補正発明によってもたらされる作用効果は格別なものではない旨主張する。

しかしながら、「演出の出現を永久的に禁止する」ことは本願補正発明として特定されておらず、本願の発明の詳細な説明を参酌すると、
「【0101】
・演出を解禁したり、あるいは禁止したりする場合、その解禁期間や禁止期間は任意に変更することができる。例えば、実施形態のように一度解禁された演出は、永久的に解禁状態とされても良い。または、所定時間の間、解禁されても良い。例えば、午前あるいは午後のみ解禁されていても良い。また、特定の曜日のみ解禁されても良い。つまり、解禁には、一時的な解禁と永久的な解禁とを含む。なお、上記記載事項は、禁止された演出についても同様であり、禁止には一時的な禁止と永久的な禁止とを含む。」
との記載があり(下線は当審で付した。)、本願補正発明の「禁止」には、一時的な禁止と永久的な禁止の両者を含むものと解するのが相当である。
したがって、請求人の主張は採用できない。

イ 平成30年7月18日の上申書における主張
請求人は、以下の補正案(下線は補正箇所を示し、A?Nは分説のため当審で付した。)

「【請求項1】
A 主制御手段と、
B 前記主制御手段から一方向で情報が送信されるように前記主制御手段と電気的に接続された副制御手段と、を備え、
C 前記副制御手段は、
C1 計時する計時部と、
C2 制御情報を記憶する記憶部と、
C3 特定時刻又は特定時間の到来によって当該特定時刻又は特定時間において使用を禁止する制御情報を特定し、前記副制御手段の制御において使用許可の状態から永久的に使用禁止の状態とする禁止部と、
C4 特定時刻又は特定時間の到来によって使用許可の状態へ永久的に解禁されることで使用許可の状態にある制御情報を用いて制御を行う制御部と、
C5 前記遊技機の電源遮断後も前記副制御手段の記憶部に電力を供給するバックアップ電源と、を有し、
D 前記記憶部には、使用許可の状態である制御情報を特定可能な使用許可情報が記憶され、
E 前記使用許可情報は、遊技機の電源遮断後も記憶保持されており、
F 前記制御情報には、表示装置の表示パターン情報と、音声出力装置の音声パターン情報と、発光装置の発光パターン情報と、可動装置の動作パターン情報と、を含み、
G 前記制御部は、使用許可の状態にある前記表示パターン情報、前記音声パターン情報、前記発光パターン情報、及び前記動作パターン情報のうち少なくとも何れかの情報を用いて制御を行い、
H 前記可動装置は、振動する操作ボタンであり、
I 前記動作パターン情報は、前記特定時刻又は前記特定時間が到来することによる解禁条件の成立によって使用許可の状態に永久的に解禁され、遊技機の電源を最初に投入した時点で使用許可の状態とされた前記動作パターン情報に加えて前記解禁条件の成立によって新たな前記動作パターン情報が使用許可の状態に永久的に解禁される
N 遊技機。」

のように本願補正発明を補正する用意があり、
(ア)引用文献における図柄決定テーブルの変更に係る制御は、一方の図柄決定テーブルを使用している時には他方の図柄決定テーブルの使用を禁止しているに過ぎず、この使用の禁止は一時的な禁止、つまり、引用文献では、時間の経過によって使用を一時的に禁止させていた図柄決定テーブルによる演出が再び出現することになるので、演出の出現を永久的に禁止する場合に比してその演出の希少性は低く、このため、引用文献では、演出の出現を永久的に禁止することによって生じ得る補正案の請求項1の作用効果は得られない、
(イ)引用文献では、制御情報に可動装置の動作パターンが含まれているか不明であるから、可動装置の動作パターン情報を解禁させる構成について何ら開示及び示唆されていない、
(ウ)引用文献2(特開2013-48859号公報)には、制御情報に基づいて動作する可動装置を有する遊技機について開示されているに過ぎず、補正案の請求項1における動作パターンの解禁及び禁止に係る構成については何ら開示及び示唆されていない、
(エ)引用文献3(特開2012-205753号公報)には、遊技機における電源電圧の供給が停止しても、不揮発性の記憶手段で構成されるサブRAMに記憶された情報を保持する構成について開示されているに過ぎず、補正案の請求項1における動作パターンの解禁及び禁止に係る構成については何ら開示及び示唆されていない、
のであり、以上を踏まえると、補正案の請求項1は、引用文献に記載された発明と同一ではなく、また引用文献に基づき当業者が容易に想到し得るものではなく、さらに、補正案の請求項1は、引用文献に、引用文献2の技術事項又は引用文献3の技術事項を適用したとしても、当業者が容易に想到し得るものではない旨主張する。

しかしながら、上記(ア)については、引用文献には、実施の形態3として、引用発明の構成に加えて、遊技機1を最初に遊技店に導入したホール導入日時を記録できるようにし、ホール導入日時から所定期間が経過したときに可変表示装置9における表示態様を変更できることが記載されており(段落【0386】以下、参照。)、このようにして、ホール導入日時から所定期間までの表示態様を、所定期間が経過した以降、永久的に禁止することによって、補正案のように構成することに当業者にとって格別の困難性はなく容易になし得たことであるから、請求人の主張は採用できない。
また、上記(イ)?(エ)については、制御情報に基づいて動作する可動装置を有する遊技機は、例えば、引用文献2の段落【0235】?【0236】、【図15】?【図17】に記載されているように周知であるから、引用発明において、遊技の興趣向上のために、所定の期間によって変更される飾り図柄に代えて、あるいは、それに加えて、所定の期間によって変更される可動装置を適用することに当業者にとって格別の困難性はなく容易になし得たことであるから、請求人の主張は採用できない。
さらに、詳述は省略するが、補正案の請求項1の、C3、C4及びIの「永久的に」についての構成は引用発明に引用文献の実施形態3として記載される技術事項を適用し、C5、DおよびEの構成については、引用発明に引用文献3の技術事項を適用し、F、G、H及びI(永久的にを除く)の構成は引用発明に引用文献2に記載されるような周知技術を適用して、当業者が容易に想到し得たものである。
よって、請求人の主張は採用できない。

(5)本件補正についてのむすび
以上より、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明は、平成29年5月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2[理由]1の(本件補正前)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶理由
原査定の請求項3に係る発明の拒絶の理由は、
(1)(新規性)この出願の請求項3に係る発明は、その出願前に頒布された以下の引用文献に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)(進歩性)この出願の請求項3に係る発明は、その出願前に頒布された以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、
というものである。

引用文献:特開2008-113701号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、前記第2[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本願補正発明から、C4の「使用許可の状態にある制御情報」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の[理由]2(3)に記載したとおり、引用文献に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用文献に記載された発明であるか、仮にそうでないとしても、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、仮にそうでないとしてもか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-20 
結審通知日 2018-09-25 
審決日 2018-10-09 
出願番号 特願2014-102356(P2014-102356)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 113- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞壁 隆一  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 藤田 年彦
蔵野 いづみ
発明の名称 遊技機  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  
代理人 山本 実  

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