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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1346537
審判番号 不服2017-18927  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-20 
確定日 2018-12-11 
事件の表示 特願2016-529025「光音響計測装置及び光音響計測用プローブ」拒絶査定不服審判事件〔平成27年12月30日国際公開、WO2015/198548、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2015年(平成27年)6月11日(優先権主張 平成26年6月26日)を国際出願日とする出願であって、平成28年12月15日に手続補正書が提出され、平成29年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月22日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月6日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対して、同年12月20日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成30年8月30日付けで最後の拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月3日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明

本願の請求項1ないし9に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成30年10月3日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、本願発明1及び9は以下のとおりである。

「 【請求項1】
光音響波の信号処理を行う信号処理部を有する装置本体と、
該装置本体に着脱自在なプローブであって、該プローブへ入射した測定光を被検体に向けて出射させるプローブと、
前記測定光の光強度を調整する強度調整部とを備え、
前記プローブは、前記測定光を導光する導光部と、前記測定光の前記導光部からの出射に応じて前記被検体内で発生した前記光音響波を検出する音響波検出部と、前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報を記憶した記憶部とを有し、前記装置本体に装着された状態で、前記音響波検出部により検出された前記光音響波の信号を前記信号処理部に送り、
前記装置本体は、前記記憶部から前記光量プロファイル情報を読み取る読取部を有し、
前記強度調整部は、前記読取部により読み取られた前記光量プロファイル情報を用いて、前記測定光が前記プローブに入射する以前に前記測定光の光強度を調整する光音響計測装置であって、
前記光量プロファイル情報は、前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報であり、
前記強度調整部は、ルックアップテーブルを参照しながら、該ルックアップテーブルによって前記光量プロファイル情報に対応付けられた調整条件を取得し、当該調整条件に従って前記測定光の光強度を調整するものである光音響計測装置。」

「 【請求項9】
光音響波の信号処理を行う信号処理部を有する装置本体と、
該装置本体に着脱自在なプローブであって、該プローブへ入射した測定光を被検体に向けて出射させるプローブと、
前記測定光の光強度を調整する強度調整部とを備え、
前記プローブは、前記測定光を導光する導光部と、前記測定光の前記導光部からの出射に応じて前記被検体内で発生した前記光音響波を検出する音響波検出部と、前記測定光の光強度の設定に関連する情報を記憶した記憶部とを有し、前記装置本体に装着された状態で、前記音響波検出部により検出された前記光音響波の信号を前記信号処理部に送り、
前記装置本体は、前記記憶部から前記情報を読み取る読取部を有し、
前記強度調整部は、前記読取部により読み取られた前記情報に基づいて、前記測定光が前記プローブに入射する以前に前記測定光の光強度を調整する光音響計測装置であって、
前記情報は、前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光量密度が異なるプローブの種類に応じた情報である、
光音響計測装置。」

なお、本願発明2ないし8の概要は以下のとおりである。
本願発明2ないし7は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明8は、本願発明1に係る光音響計測装置が備えるプローブに対応したプローブの発明である。


第3 引用文献の記載事項、引用発明

1 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である引用文献1(国際公開第2013/188707号)には、次の事項が記載されている(翻訳文は、引用文献1のファミリー文献である特表2015-519183号公報を参考にして、当審で作成した。また、翻訳文の下線は当審において付加した。)。

(引1-ア)「Optoacoustic System and Method
[00266] Returning to Figure 1, generally, device 100 provides an optoacoustic system that may also be employed as multimodality, combined optoacoustic and ultrasound system. In an embodiment, the device 100 includes a probe 102 connected via a light path 132 and an electrical path 108 to a system chassis 101. Within the system chassis 101 is housed a light subsystem 129 and a computing subsystem 128. The computing subsystem 128 includes one or more computing components for ultrasound control and analysis and optoacoustic control and analysis; these components may be separate, or integrated. In an embodiment, the computing subsystem comprises a relay system 110, an optoacoustic processing and overlay system 140 and an ultrasound instrument 150.
[00267] In an embodiment, the light system 129 is capable of producing pulses of light of at least two different wavelengths. In an embodiment, the light system 129 outputs should be capable of producing short pulses of light in each of those wavelengths, e.g., a pulse lasting less than about 100 ns, and potentially as short as about 5 ns. As will be apparent to one of ordinary skill in the art from this disclosure, the inventions disclosed herein may also be practiced using pulsed light comprising pulses lasting greater than 100 ns. In an embodiment, the light source 129 includes two separate lights 130, 131. The output of the light system 129 is delivered to the probe 102 via the optical path 132. In an embodiment, the lights 130, 131 are lasers producing light in the infrared, near-infrared, and/or visible spectrum. In an embodiment, light 130 and light 131 each produce light at a different wavelength in the infrared or near-infrared spectrum. In an embodiment, the optical path 132 used to deliver light from the light source 129 to the probe 102 is a fiber optic bundle comprising multiple strands of optical fiber. In an embodiment, the optical path 132 comprises sufficient optical fibers of sufficient size (diameter) to carry a short, high powered pulse of light to the distal end of the optical path 132. In an embodiment, the total pulse energy carried over the optical path 132 may be on the order of one or more millijoules. In an embodiment, the total energy per light pulse delivered from the optical path 132 is less than about 100 millijoules. In an embodiment, the total energy per light pulse carried over the optical path 132 is in the range of about 10-30 millijoules, and the optical path 132 comprises between about 1,000 and 2,000 optical fibers of between about 100 and 300 microns each. In an embodiment, a single fiber can be used as the optical path. In such embodiment, the fiber may be 1000-1500 microns in diameter. Of course, the diameter of such single fiber may be smaller, e.g., 400 microns. Given the required total pulse energy carried over the fiber, one skilled in the art can calculate the diameter required of the fiber accordingly.」
(当審訳:光音響システム及び方法
[00266] 図1を再度参照すると、一般に、装置100は、光音響及び超音波システムと組み合わされた、マルチモダリティとしても採用され得る、光音響システムを提供する。一実施形態では、装置100は、光路132及び電気路108を介して、システム筐体101に接続されたプローブ102を含む。システム筐体101内には、光サブシステム129及びコンピューティングサブシステム128が収納されている。コンピューティングサブシステム128は、超音波制御及び分析並びに光音響制御及び分析用の1つ又は複数のコンピューティング構成要素を含み、これらの構成要素は、別個であり得るか、又は統合され得る。一実施形態では、コンピューティングサブシステムは、中継システム110、光音響処理及びオーバーレイシステム140並びに超音波機器150を含む。
[00267] 一実施形態では、光システム129は、少なくとも2つの異なる波長の光のパルスを生成することができる。一実施形態では、光システム129の出力は、それらの波長の各々で短いパルスの光(例えば、約100ns未満、潜在的に約5nsの短さで持続するパルス)を発生できるものとする。本開示から当業者には明らかであるように、本明細書で開示された発明は、100nsを超えて持続するパルスを含むパルス光を使用しても実施され得る。一実施形態では、光源129は、2つの別個の光源130、131を含む。光システム129の出力は、光路132を経由してプローブ102に送られる。一実施形態では、光源130、131は、赤外線、近赤外線、及び/又は可視スペクトルで光を発生するレーザーである。一実施形態では、光源130及び光源131の各々は、赤外線又は近赤外線スペクトルで異なる波長で光を発生する。一実施形態では、光源129からプローブ102に光を送るために使用される光路132は、光ファイバーの複数の束を含む光ファイバー束である。一実施形態では、光路132は、短くて強力なパルスの光を光路132の遠位端に運ぶために十分なサイズ(直径)の十分な光ファイバーを含む。一実施形態では、光路132を通じて運ばれる総パルスエネルギーは、約1または数ミリジュールであり得る。一実施形態では、光路132から送られる光パルスごとの総エネルギーは、約100ミリジュール未満である。一実施形態では、光路132を通じて運ばれる光パルスごとの総エネルギーは、約10?30ミリジュールの範囲内であり、光路132は、各々が約100?300ミクロンの間の約1,000?2,000の間の光ファイバーを含む。一実施形態では、単一のファイバーが光路として使用できる。かかる実施形態では、ファイバーは直径1000?1500ミクロンであり得る。言うまでもなく、かかる単一ファイバーの直径は、例えば、400ミクロンより小さい可能性がある。ファイバーを通じて運ばれる必要な総パルスエネルギーを前提として、当業者は、それに応じて必要なファイバーの直径を計算できる。)

(引1-イ)「[00285] In an embodiment, the connections between the probe 102 and the system chassis 101 may be formed into a flexible cable, which may consist of the light path 132, the control line(s) 109 and the electrical path 108. The flexible cable may be covered in a common outer jacket or sheath for convenience and ease of use. In an embodiment, a medial portion of the light path 132 forms the core of the single flexible cable, and medial portions of the electrical path 108 and/or control line(s) 109, if any, may be wrapped or braided about the medial portion of the light path 132. In an embodiment, a common outer jacket or sheathing encloses a fiber optic bundle forming a medial portion of the light path 132, a coaxial bundle forming a medial portion of the electrical path 108, and control line(s) 109, if any. In an embodiment, the fibers forming a medial portion of the light path, and the wires forming a medial portion of the electrical path 108, as well as control line(s) 109, if any, may be intertwined or intermingled with each other along the medial portion of the connections between the probe 102 and the system chassis 101.
[00286] In an embodiment, the distal end of the flexible cable(s) connecting the probe 102 and the system chassis 101 is associated with, and non-removably integrated as part of the probe 102. In an alternative embodiment, the distal end of the flexible cable(s) connecting the probe 102 and the system chassis 101 is removably associated with the probe 102. To removably associate the flexible cable(s) connecting the probe 102 and the system chassis 101 requires both optical fiber connection for the light path 102(当審注:「the light path 102」は「the light path 132」の誤記と認める。) and electrical connection for the electrical path 108 and control line(s) 109, if any.」
(当審訳:[00285] 一実施形態では、プローブ102とシステム筐体101との間の接続は、可撓ケーブルで形成され得、それは、光路132、制御線(複数可)109及び電気路108から成り得る。可撓ケーブルは、便宜及び使い易さのために、共通の外側ジャケット又はシース内に覆われ得る。一実施形態では、光路132の内側部は、単一の可撓ケーブルのコアを形成し、電気路108及び/又は制御線(複数可)109の内側部は、もしあれば、光路132の内側部の周囲に巻かれるか、又は編み組まれ得る。一実施形態では、共通の外側ジャケット又はシースは、光路132の内側部を形成する光ファイバー束、電気路108の内側部を形成する同軸束、及び、もしあれば、制御線(複数可)109を囲む。一実施形態では、光路の内側部を形成するファイバー、及び電気路108の内側部を形成するワイヤー、並びに、もしあれば、制御線(複数可)109は、プローブ102とシステム筐体101との間の接続の内側部に沿って、互いに縒り合されるか、又は混ぜ合わされ得る。
[00286] 一実施形態では、プローブ102及びシステム筐体101を接続する可撓ケーブル(複数可)の遠位端がプローブ102に関連付けられ、プローブ102の一部として取り外し不能に統合される。代替実施形態では、プローブ102及びシステム筐体101を接続する可撓ケーブル(複数可)の遠位端がプローブ102に取り外し可能に関連付けられる。プローブ102及びシステム筐体101を接続する可撓ケーブル(複数可)を取り外し可能に関連付けるために、光路102(当審注:「光路102」は「光路132」の誤記と認める。)に対する光ファイバー接続部並びに電気路108及び、もしあれば、制御線(複数可)109に対する電気的接続部の両方を必要とする。)

(引1-ウ)「[00294] Turning now to Figure 16, the probe 102 includes an array of ultrasound transducer elements forming an ultrasound transducer (not shown) covered by an acoustic lens 1605. In an embodiment the ultrasound transducer comprises an array of piezoelectric elements that can both transmit and receive acoustic energy. In an embodiment, at least some of the ultrasound transducer elements are capable of detecting ultrasound frequencies over a wide range. For example, ultrasound transducer elements may be capable of detecting ultrasound in the range from about 50 KHz to 20 MHz. This range can be achieved by applying a high impedance load (e.g., in the range of 5,000 to 50,000 ohms) to achieve a lower frequency response. The ultrasound transducer elements are capable of generating electrical energy in response to receiving ultrasound acoustic energy. The electrical energy generated by the ultrasound transducer elements receiving ultrasound is transmitted to the computing subsystem 128 via electrical path 108.
[00295] The probe 102 also includes one or more optical windows 1603 through which the light carried on optical path 132 can be transmitted to the surface of a three-dimensional volume 160. In an embodiment, it is desirable to locate one side of the optical window 1603 as close as practical to the acoustic lens 1605. The total area of an optical window 1603 is important to maximize energy for a given fluence incident on the surface of the volume 160.
[00296] In an embodiment, the multiple strands of optical fiber making up the optical path 132 are terminated in two light bars (not shown). In an embodiment, the ultrasound transducer elements (not shown) are arranged in an array that runs along a geometric plane and are generally spaced equidistant from each other. In an embodiment, the light bars (not shown) are oriented longitudinally, on each side of the planar array of ultrasound transducer elements. Preferably the ultrasound transducer elements generate electrical energy in response to both ultrasound acoustic energy received in response to stimulation caused by the pulsed light sources 130, 131 (i.e., the optoacoustic return signal) and to ultrasound acoustic energy received in response to acoustic output of the ultrasound transducer elements.」
(当審訳:[00294] ここで図16を参照すると、プローブ102は、音響レンズ1605によって覆われた超音波トランスデューサ(図示せず)を形成する超音波トランスデューサ要素の配列を含む。一実施形態では、超音波トランスデューサは、音響エネルギーを伝送すること及び受け取ることの両方を行うことができる圧電素子の配列を含む。一実施形態では、超音波トランスデューサ要素の少なくともいくつかが、広範囲にわたって超音波周波数を検出することが可能である。例えば、超音波トランスデューサ要素は、約50KHz?20MHzの範囲で超音波の検出が可能であり得る。この範囲は、低周波数応答を達成するために、高インピーダンス負荷(例えば、5,000?50,000オームの範囲で)を印加することにより達成できる。超音波トランスデューサ要素は、超音波音響エネルギーを受け取ることに応答して、電気エネルギーを生成することが可能である。超音波を受け取る超音波トランスデューサ要素によって生成される電気エネルギーは、電気路108を通ってコンピューティングサブシステム128に伝送される。
[00295] プローブ102は、光路132上で搬送される光がそれを通って3次元体積160の表面に伝導される、1つ又は複数の光学窓1603も含む。一実施形態では、光学窓1603の1つの側を音響レンズ1605に現実的に可能な限り近接して配置することが望ましい。光学窓1603の総面積は、体積160の表面に入射する所与のフルエンスに対するエネルギーを最大限にするために重要である。
[00296] 一実施形態では、光路132を構成する複数の束の光ファイバーは、2つのライトバー(図示せず)内で終端される。一実施形態では、超音波トランスデューサ要素(図示せず)は、幾何平面に沿って延びる配列内に配置され、一般に、相互に等距離の間隔を空けられている。一実施形態では、ライトバー(図示せず)が、超音波トランスデューサ要素の平面配列の各々の側面上に、縦方向に向けられる。好ましくは、超音波トランスデューサ要素は、パルス光源130、131によって生じた刺激(すなわち、光音響帰還信号)に応答して受け取られる超音波音響エネルギー及び超音波トランスデューサ要素の音響出力に応答して受け取られる超音波音響エネルギーの両方に応答して、電気エネルギーを生成する。)

(引1-エ)「[00303] In an embodiment, the ultrasound instrument 150 processes ultrasound-induced acoustic signals to produce ultrasound images and the optoacoustic processing and overlay system 140 processes light-induced acoustic signals to produce optoacoustic images. In an embodiment, the ultrasound instrument 150 and optoacoustic processing and overlay system 140 can be combined into an integrated system performing the combined functions of both. As discussed above, in an embodiment, electrical signals representative of ultrasound detected by the probe 102 and delivered to the computing subsystem 128 via electrical path 108 is switched between the ultrasound instrument 150 and the optoacoustic instrument 140 via relay system 110 in accordance with whether the signal results from ultrasound stimulation or light stimulation.」
(当審訳:[00303] 一実施形態では、超音波機器150が、超音波誘起音響信号を処理して、超音波画像を生成し、光音響処理及びオーバーレイシステム140が、光誘起音響信号を処理して、光音響画像を生成する。一実施形態では、超音波機器150並びに光音響処理及びオーバーレイシステム140が、両方が組み合わされた機能を実行する統合システムに結合できる。前述のように、一実施形態では、プローブ102によって検出され、電気路108を経由してコンピューティングサブシステム128に送られる超音波を表す電気信号は、信号が超音波刺激又は光刺激に起因するかどうかに従い、中継システム110によって、超音波機器150と光音響機器140との間で切り替えられる。)

(引1-オ)「[00312] Figure 17 shows an exploded view of an embodiment of the probe 102 shown in Figure 16. Shells 1702, 1704 are separated to show the components within the probe 102. The shells 1702, 1704 may be made from plastic or any other suitable material. The surfaces of the shells 1702, 1704 that may be exposed to light, and especially light generated by the light subsystem 129, are preferably both reflective (i.e., light colored) material and light scattering (i.e., having a scattering coefficient between 1 and 10). In an embodiment, the surfaces of the shells 1702, 1704 are highly reflective, i.e., more than 75% reflective. In an embodiment, the surfaces of the shells 1702, 1704 are very highly reflective, i.e., more than about 90% reflective. In an embodiment, the surfaces of the shells 1702, 1704 have low optical absorption, i.e., less than 25% absorptive. In an embodiment, the surfaces of the shells 1702, 1704 have very low optical absorption, i.e., less than about 10% absorptive. In addition, the material forming the shells 1702, 1704 should be acoustically absorbent to absorb, rather than reflect or transmit acoustic energy. In an embodiment, white plastic shells 1702, 1704 are used.」
(当審訳:[00312] 図17は、図16に示されるプローブ102の実施形態の分解図を示す。シェル1702、1704が、プローブ102内の構成要素を示すために分離されている。シェル1702、1704は、プラスチック又は他の適切な材料から作成され得る。光、及び特に、光サブシステム129によって発生される光にさらされ得るシェル1702、1704の表面は、好ましくは、両方とも、反射する(例えば、明るい色の)材料で、かつ光を散乱(すなわち、1?10の間の散乱係数を有する)し得る。一実施形態では、シェル1702、1704の表面は、高度に反射的、すなわち、75%を超える反射である。一実施形態では、シェル1702、1704の表面は、高度に反射的、すなわち、90%を超える反射である。一実施形態では、シェル1702、1704の表面は、低光吸収、すなわち、25%未満の吸収性を有する。一実施形態では、シェル1702、1704の表面は、超低光吸収、すなわち、10%未満の吸収性を有する。さらに、シェル1702、1704を形成する材料は、音響エネルギーを反射又は伝達するのではなく、吸収するために、音響的に吸収性にすべきである。一実施形態では、白いプラスチックシェル1702、1704が使用される。)

(引1-カ)「[00355] In an embodiment, an optical detector (not shown) may be located in the probe 102 to take a measurement from which output energy can be estimated or deduced. In an embodiment, the optical detector will measure reflected energy such as energy reflected by the beam expander or optical window. In an embodiment, the optical detector will measure scattered energy such as energy scattered by the materials surrounding the gap 1802. The measurement of the optical detector can be transmitted to the system chassis 101 via control signal line 109, where it can be analyzed to deduce or estimate the light output of the probe 102. In an embodiment, control functionality in the system chassis 101 can control or regulate the light output of the light system 129, and thus the light output of the probe 102 based on a measurement made by the optical detector. In an embodiment, control functionality in the system chassis 101 can control or regulate the gain in the transducer receivers to compensate for variation of the light output of the probe 102 based on a measurement made by the optical detector. In an embodiment, the computing subsystem 128 can trigger differing activity from light system 129 over control signal line 106 based on a measurement made by the optical detector. In an embodiment, a measurement made by the optical detector can be used to control for variations in the electrical system or the power to the device 101. Similarly, in an embodiment, a measurement made by the optical detector can be used to control for variations in the optical path 132 or other optical elements of the device 100. In an embodiment, the optical detector can be used to cause the fluence of light output by the probe 102 to remain close to, but below, safe limits by accommodating for variations in electrical or optical characteristics that might otherwise cause the fluence of light output by the probe 102 to exceed or fall far below the safe limit.」
(当審訳:[00355] 一実施形態では、出力エネルギーがそこから推定又は推測できる測定値を取得するために、光学検出器(図示せず)がプローブ102内に配置され得る。一実施形態では、光学検出器は、ビーム拡大器又は光学窓によって反射されたエネルギーなどの、反射エネルギーを測定する。一実施形態では、光学検出器は、ギャップ1802を取り囲んでいる材料によって散乱されたエネルギーなどの、散乱エネルギーを測定する。光学検出器の測定値は、制御信号線109を経由してシステム筐体101に伝達でき、そこで、それは、プローブ102の光出力を推測又は推定するために分析できる。一実施形態では、システム筐体101内の制御機能が、光システム129の光出力、従って、プローブ102の光出力を光学検出器によって得られた測定値に基づいて制御又は調整できる。一実施形態では、システム筐体101内の制御機能が、光学検出器によって行われた測定値に基づきプローブ102の光出力の変動を補正するために、トランスデューサ受信器内の利得を制御又は調整できる。一実施形態では、コンピューティングシステム128は、光学検出器によって行われた測定値に基づき、異なる活動を、制御信号線106を通じて光システム129からトリガーできる。一実施形態では、光学検出器によって出された測定値が、装置101に対する電気システム又は電力における変動を制御するために使用できる。同様に、一実施形態では、光学検出器によって作成された測定値が、装置100の光路132又は他の光学要素における変動を制御するために使用できる。一実施形態では、光学検出器は、プローブ102によって出力された光のフルエンスを、そうでなければ、プローブ102によって出力された光のフルエンスが安全限界を超えるか、又ははるかに下回る、電気的又は光学的特性における変動に対応することにより、安全限界に近接してはいるが下回らせるために使用できる。)

(引1-キ)「[00400] Each transducer in probe 102 may exhibit slight variations in operation. Accordingly, in an embodiment, once completed, probe 102 is tested in connection with one or more known test subjects such phantoms (see Figures 7-9) and the probe's measured response from the test subject is recorded. In an embodiment, the test subjects will produce a known optoacoustic return signal, either in response to a known optoacoustic event, or, by active control of the phantom. Variation from the known/expected optoacoustic return signal can be identified, and associated with each specific channel (e.g., transducer) comprising the variation. In this manner, the probe's own response characteristics - to the extent they may differ from probe to probe - can be accounted for, and may be normalized in later processing. Thus, if a particular transducer produces a signal that differs from the expected signal, that difference can be accounted for, and then later normalized.
[00401] In an embodiment, information associated with a probe's own response characteristics may be stored within the probe itself, and can be reported to the optoacoustic processing and overlay system 140 via power and control signal lines 109. In an alternative embodiment, information associated with a probe's own response characteristics may be stored outside the probe, and can be associated with a serial number or other identifier of the probe. The optoacoustic processing and overlay system 140 can obtain the probe response characteristics after identifying the probe for use. In an embodiment, the probe response characteristics may be stored in an network accessible location, either on a local disk, network, or on the Internet, and are made accessible to the optoacoustic processing and overlay system 140 via a connection (not shown) to that disk, network or the Internet. In an embodiment, the optoacoustic processing and overlay system 140 would obtain a unique identifier from the probe, and would thereafter query a database on the local device, network, or over the Internet, to obtain response characteristics for the probe associated with the unique identifier. Probe response characteristics may be recorded and stored at or near the time the probe is manufactured. In an embodiment, probe response characteristics may be updated by running a specialized test on the probe - the test having a known/expected response.
[00402] The probe identifier may be obtained by the optoacoustic processing and overlay system 140 after machine startup, but before engaging the light output. In an embodiment, the probe identifier is recorded on a bar code on the probe, and the bar code is scanned prior to the device causing light output. In an embodiment, the probe identifier is recorded on a computer- readable memory in the probe, and is queried by, or reported to the optoacoustic processing and overlay system 140 after startup, but prior to engaging the light output.
[00403] Because the probe identifier is known, the device can maintain statistics of probe usage. For example, in an embodiment, the device may maintain statistics of the operation of the probe in optoacoustic mode, including, e.g., the number and type of light output events that have occurred, and the number of ultrasound events that have occurred. Statistics can also be maintained concerning total light energy output from the probe (which may be deduced from an internal optical sensor, not shown). In an embodiment, the response characteristics of the probe and the probe statistics can be available to any device 100 on which the probe 102 is mounted. Thus, for example, such characteristics and statistics can be stored in a manner that they are accessible over the Internet. In an embodiment, a VPN is used for security on the Internet.
[00404] In an embodiment where the light path 132 is fixedly attached to the probe 102, the probe usage statistics may also be relevant to the fiber optics. For example, the fibers in the light path 132 may degrade with time and/or use resulting in some loss of transmission, e.g., broken or burned fibers. Accordingly, in an embodiment, the device can maintain statistics relevant to total light energy, peak light energy and the number of pulses passed through a light path 132. In an embodiment, sensors in the probe can detect information about the energy output of the light path, and sensors in the light subsystem 129 can detect information about the energy output of the light subsystem 129. By detecting variation in the sensors at the two ends over time, maintenance issues can be identified. For example, seeing a decrease at the probe-side sensors relative to the light subsystem-side sensors may indicate that the light path 132 is degrading and needs replacement. Moreover, a specific difference between the probe-side sensors and the light subsystem-side sensors may result in a condition that causes the device 100 to indicate that it is in need of maintenance. In an embodiment, where the difference is greater than a specific safety threshold, the device 100 may fail to continue to emit light events. In an embodiment, the information reported by these sensors may be stored with the usage statistics.」
(当審訳:[00400] プローブ102内の各トランスデューサは、動作中にわずかな変動を示し得る。その結果、一実施形態では、一旦完成すると、プローブ102は、ファントム(図7?図9を参照)など1つ又は複数の既知の試験対象に関連して検査され、試験対象からのプローブの測定された応答が記録される。一実施形態では、試験対象は、既知の光音響事象に応答して、又はファントムのアクティブ制御によってのいずれかで、既知の光音響帰還信号を生成することになる。既知/予期される光音響帰還信号からの変動が識別されて、その変動を含む各特定のチャネル(例えば、トランスデューサ)に関連付けられ得る。このようにして、プローブ独自の応答特性が、プローブごとに異なる範囲で、吸収でき、後の処理で正規化され得る。従って、特定のトランスデューサが、予期された信号と異なる信号を生成する場合、その差異が吸収でき、次いで、後に正規化される。
[00401] 一実施形態では、プローブ独自の応答特性に関連する情報が、プローブ自身内に格納され得、電力及び制御信号線109を介して、光音響処理及びオーバーレイシステム140に報告できる。代替実施形態では、プローブ独自の応答特性に関連する情報が、プローブの外部に格納され得、プローブのシリアル番号又は他の識別子で関連付けられ得る。光音響処理及びオーバーレイシステム140は、使用のためにプローブを識別した後、プローブ応答特性を取得できる。一実施形態では、プローブ応答特性が、ローカルディスク、ネットワーク、又はインターネット上のいずれかの、ネットワークアクセス可能な位置に格納され得、そのディスク、ネットワーク、又はインターネットへの接続(図示せず)を経由して、光音響処理及びオーバーレイシステム140にアクセス可能にされる。一実施形態では、光音響処理及びオーバーレイシステム140は、プローブから一意の識別子を取得し、その後、ローカル装置、ネットワーク上のデータベース又はインターネットを介して問合せを行い、その一意の識別子に関連付けられたプローブに対する応答特性を取得する。プローブ応答特性は、プローブが製造される時又はそれに近い時間に記録されて格納され得る。一実施形態では、プローブ応答特性は、プローブ上で特殊な検査(既知/予期される応答を有する検査)を実行することにより更新され得る。
[00402] プローブ識別子は、マシンの起動後であるが、光出力を行う前に、光音響処理及びオーバーレイシステム140によって取得され得る。一実施形態では、プローブ識別子が、プローブ上のバーコード上に記録され、そのバーコードが、装置が光出力を生じる前にスキャンされる。一実施形態では、プローブ識別子が、プローブ内のコンピュータ可読メモリ上に記録され、起動後であるが、光出力を行う前に、光音響処理及びオーバーレイシステム140によって、問合せを行われるか、又はそれに対して報告される。
[00403] プローブ識別子が既知であるので、装置は、プローブ使用の統計情報を保持できる。例えば、一実施形態では、装置は、例えば、生じた光出力事象の数及びタイプ、並びに生じた超音波事象の数を含め、光音響モードにおけるプローブの操作の統計情報を保持し得る。(図示されていない、内部光学センサーから推定され得る)プローブからの総光エネルギー出力に関する統計情報も保持できる。一実施形態では、プローブの応答特性及びプローブ統計情報が、プローブ102がその上に取り付けられている任意の装置100に対して利用可能にできる。従って、例えば、かかる特性及び統計情報が、インターネットを介してアクセス可能な方法で格納できる。一実施形態では、VPNが、インターネット上でセキュリティのために使用される。
[00404] 光路132がプローブ102に固定して取り付けられている実施形態では、プローブ使用統計情報は、光ファイバーにも関連し得る。例えば、光路132内のファイバーは、例えば、損傷したか、又は燃えたファイバーなど、何らかの透過率の低下をもたらす、時間及び/又は使用に伴い劣化し得る。その結果、一実施形態では、装置は、総光エネルギー、ピーク光エネルギー、及び光路132を通過したパルス数に関連した統計情報を保持できる。一実施形態では、プローブ内のセンサーは、光路のエネルギー出力に関する情報を検出でき、光サブシステム129内のセンサーは、光サブシステム129のエネルギー出力に関する情報を検出できる。2つの端部でのセンサーにおける経時的な変動を検出することにより、保守問題が特定できる。例えば、光サブシステム側センサーと比較して、プローブ側センサーでの減少を見ると、光路132が劣化していて、交換が必要であることを示し得る。さらに、プローブ側センサーと光サブシステム側センサーとの間の特定の差異は、装置100に、それが保守を必要としていることを示させるという結果となり得る。一実施形態では、差異が特定の安全閾値よりも大きい場合、装置100は、継続して光事象を放出し得ない。一実施形態では、これらのセンサーによって報告された情報が、使用統計情報とともに格納され得る。)

(引1-ク) FIG.1




(引1-ケ) FIG.17




2 上記(引1-ウ)の段落[00296]に「一実施形態では、光路132を構成する複数の束の光ファイバーは、2つのライトバー(図示せず)内で終端される。」と記載されているが、上記(引1-イ)の段落[00286]に記載されている「プローブ102及びシステム筐体101を接続する可撓ケーブル(複数可)の遠位端がプローブ102に取り外し可能に関連付けられる」場合には、「光路132に対する光ファイバー接続部」に接続された「複数の束の光ファイバー」が「2つのライトバー内で終端される」ものと解される。
また、(引1-カ)の段落[00355]に記載された「システム筐体101内の制御機能が、光システム129の光出力、従って、光学検出器によって行われた測定値に基づくプローブ102の光出力を制御又は調整できる」における「制御機能」は、「コンピューティングシステム128は、光学検出器によって行われた測定値に基づき、異なる活動を、制御信号線106を通じて光システム129からトリガーできる」との記載に照らせば、「コンピューティングシステム128」を指すものと解される。
さらに、上記(引1-キ)には、「プローブ独自の応答特性に関連する情報が、プローブ自身内に格納され」る場合に、「プローブ独自の応答特性に関連する情報」をどのように「格納」するのかは明記されていないが、段落[00402]の「プローブ識別子が、プローブ内のコンピュータ可読メモリ上に記録され」との記載に照らせば、「プローブ独自の応答特性に関連する情報が、プローブ内のコンピュータ可読メモリ上に記録され」るものと解される。
ここで、上記(引1-ア)ないし(引1-ケ)では、「a(the) light subsystem 129」(光サブシステム129)、「the light system 129」(光システム129)及び「the light source 129」(光源129)と、符号「129」で示す構成要素に対して3種類の名称が用いられているが、以下では「a(the) light subsystem 129」(光サブシステム129)を採用することとする。

そうすると、上記(引1-ア)ないし(引1-ケ)の記載から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 光サブシステム129及びコンピューティングサブシステム128が収納されているシステム筐体101と、
光路132、制御線109及び電気路108から成る可撓ケーブルを介して、前記システム筐体101に接続されたプローブ102と
を含む光音響システムである装置100であって、
前記可撓ケーブルの遠位端が前記プローブ102に取り外し可能に関連付けられており、そのため、前記プローブ102は前記光路132に対する光ファイバー接続部並びに前記制御線109及び電気路108に対する電気的接続部を備え、
前記光サブシステム129は、2つの別個の光源130、131を含み、前記コンピューティングサブシステム128は、中継システム110、光音響処理及びオーバーレイシステム140並びに超音波機器150を含み、
前記プローブ102は、音響レンズ1605によって覆われた超音波トランスデューサを形成する超音波トランスデューサ要素の配列と、前記光路132上で搬送される光がそれを通って3次元体積160の表面に伝導される、1つまたは複数の光学窓1603とを含み、前記光路132に対する光ファイバー接続部に接続された複数の束の光ファイバーは、2つのライトバー内で終端され、前記ライトバーが、前記超音波トランスデューサ要素の平面配列の各々の側面上に、縦方向に向けられ、
前記超音波トランスデューサ要素は、前記光源130、131によって生じた刺激、すなわち、光音響帰還信号に応答して受け取られる超音波音響エネルギーに応答して電気エネルギーを生成し、生成された電気エネルギーは、前記電気路108を通って前記コンピューティングサブシステム128に伝送され、光音響処理及びオーバーレイシステム140が、光誘起音響信号を処理して、光音響画像を生成し、
前記プローブ102は、完成後、既知の試験対象に関連して検査され、前記試験対象からの前記プローブ102の測定された応答が記録され、既知/予期される光音響帰還信号からの変動が識別されて、その変動を含む各特定のチャネルに関連付けられた、前記プローブ102独自の応答特性に関連する情報が、前記プローブ102内のコンピュータ可読メモリ上に記録されており、前記制御線109を介して、前記光音響処理及びオーバーレイシステム140に報告でき、
出力エネルギーがそこから推定又は推測できる測定値を取得するために、光学検出器が前記プローブ102内に配置されており、前記光学検出器の測定値は、前記制御線109を経由して前記システム筐体101に伝達され、前記システム筐体101内の前記コンピューティングシステム128が、前記光サブシステムの光出力、従って、前記プローブ102の光出力を前記光学検出器によって得られた測定値に基づいて制御又は調整して、前記プローブ102によって出力された光のフルエンスを、そうでなければ、前記プローブ102によって出力された光のフルエンスが安全限界を超えるか、又ははるかに下回る、電気的又は光学的特性における変動に対応することにより、安全限界に近接してはいるが下回らせるようにすることができる、
光音響システムである装置100。」

3 引用文献2ないし5について

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2007-111338号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。引用文献の記載事項について、以下同様。)。

(引2-ア)「【0001】
本発明は、光量制御可能な内視鏡装置に関する。」

(引2-イ)「【0018】
なお、スコープ20内には、スコープ20全体を制御するスコープ制御部(図示せず)と、スコープ20の特性や信号処理に関するデータがあらかじめ記憶されたROM28等が設けられている。これらのデータは、スコープ制御部によってROM28から読み出され、使用される。
【0019】
ROM28には、プロセッサ30に接続されているスコープを識別するためのスコープ識別情報も格納されている。このスコープ識別情報は、例えば、プロセッサ30に接続可能なスコープごとの型式番号であり、プロセッサ30側のCPU36によって読み出される。そして、スコープ識別情報を読み出したCPU36により、このときプロセッサ30に接続されているスコープがスコープ20であると識別され、さらにスコープ20にて使用されているライトガイドの種類がライトガイド34であると特定される。プロセッサ30においては、以下に述べるように、使用されているライトガイドの種類に応じて、ライトガイド34に入射する照明光の光量が調整される。」

(引2-ウ)「【0023】
CPU36には、データメモリ37が設けられている。データメモリ37には、スコープ20のライトガイド34を始めとする、プロセッサ30とともに使用可能な全てのスコープの光量調整データが、スコープごとにテーブルデータ化されて格納されている。光量調整データは、照明光の光量調整に使用されるデータであり、本実施形態においては後述するように、絞り38の最大開口径を設定するための絞り駆動モータ46の設定用電圧値Vsと、補正係数αとで構成されている。
【0024】
なお、この光量調整データは、各ライトガイドの光伝達特性、すなわちライトガイドを構成するファイバの本数、太さ、長さ、材質や、スコープ20の先端における照明光の配光角などに基づいて、適当な光量調整が可能であるように、予めデータテーブル化されている。」

(引2-エ)「【0052】
以上のように、本実施形態の内視鏡装置10においては、スコープ20のROM28にスコープ識別情報を格納させ、使用されているライトガイド34の光伝達特性に基づく光量調整データを用いて、ライトガイド34への入射光の光量を制御することにより、照明光の光量を適当なものに調整できる。このため、例えば過剰な照明光が集光されたことによるライトガイド34の高温化、破損等が防止できる。
【0053】
スコープ識別情報は、プロセッサ30に接続されたキーボード等により入力可能であっても良い。また、スコープ識別情報をROM28に格納させておく代わりに、プロセッサ30に接続可能な全てのスコープにおけるライトガイドの光量調整データをスコープ20に格納させておき、スコープ20がプロセッサ30に接続される度に、CPU36が光量調整データを読み出しても良い。
【0054】
また、テーブルデータ化された光量調整データを用いるのではなく、ライトガイドの光伝達特性そのものを示すライトガイドデータに基づいて、ライトガイドへの照明光の光量を調整しても良い。
【0055】
この場合まず、ライトガイドデータが示すライトガイドの太さ(ライトガイドを構成する光ファイバの本数、あるいは光ファイバの径)や、減衰率を左右するライトガイドの長さなどに基づいて、CPU36が、ライトガイドへの入射光量を低下させるべきか否かを判断する。そして、照明光の光量を低下させる必要があると判断されると、ライトガイドへの照明光の実際の入射光量は、オート調光回路部40あるいはマニュアル調光回路部42において適当であると判断された入射光量よりも低い適当な量となるように制御される。」

(引2-オ)第1図




上記(引2-ア)ないし(引2-オ)の記載から、上記引用文献2には、「内視鏡装置において、スコープ20内に、スコープ20の特性や信号処理に関するデータ、プロセッサ30に接続されているスコープを識別するためのスコープ識別情報があらかじめ記憶されたROM28を設け、プロセッサ30側のCPU36によってスコープ識別情報を読み出し、使用されているライトガイドの種類に応じて、ライトガイド34に入射する照明光の光量を調整することにより、ライトガイド34の高温化、破損等を防止する」という技術的事項が記載されている。

(2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献3(特開2013-99566号公報)には、次の事項が記載されている。

(引3-ア)「【0001】
本発明は、光音響効果を利用した計測装置に関し、特に生体等の拡散物体中における近赤外光に対する吸収係数の空間分布情報を高精度に取得するための技術に関するものである。」

(引3-イ)「【0016】
光量の調整に関して簡単な例を以下に説明する。
図1(b)は、図1(a)とは異なる厚みに被測定物101である乳房が圧迫された状態を示している。
圧迫の量により照明領域141、142の照明手段104b、104cからの光量が異なる場合、これを補正することが必要となる。
例えば、被測定物101がない状態で、圧迫プレート103と走査ユニット106の位置に関係する照明アリア(当審注:「アリア」は「エリア」の誤記と認める。)141(図3参照)の光量分布を測定しておく。そして、制御手段中に参照テーブル等で記憶しておくことで、それぞれの位置に応じた最適な光量となるように、光量調整手段116,119により照明手段からの照明光量を制御する。」

(引3-ウ)「【0024】
本実施例に説明したように、被測定物101を測定する際、圧迫プレート103の位置あるいは走査ユニット106の位置などの変化に伴い、被測定物101を照明する照明手段の位置等の条件が変化する。
このような変化に対して、圧迫プレート103の位置および走査ユニット106の位置などの変化による照明光量の変化をあらかじめ測定し、それらを制御手段中の参照テーブルに記憶しておく。
そして、そのデータに基づいて被測定物を測定することで、被測定物表面の光量を所定の値以下に抑え、最適な照明条件を設定することが可能となる。」

(引3-エ)【第1図】




上記(引3-ア)ないし(引3-エ)の記載から、上記引用文献3には、「光音響効果を利用した計測装置において、被測定物101がない状態で、圧迫プレート103と走査ユニット106の位置に関係する照明エリア141の光量分布を測定し、制御手段中に参照テーブルで記憶しておき、被測定物101を測定する際、圧迫プレート103の位置あるいは走査ユニット106の位置などの変化に伴い、被測定物101を照明する照明手段の位置等の条件が変化する場合、参照テーブルに記憶したデータに基づいて光量調整手段116,119により照明手段からの照明光量を制御して被測定物101を測定することで、被測定物101表面の光量を所定の値以下に抑え、最適な照明条件の設定を可能にする」という技術的事項が記載されている。

(3)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献4(特開2013-27482号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(引4-ア)「【0001】
本発明は、光音響イメージングに使用されるカテーテル型の光音響プローブおよびそれを備えた光音響撮像装置に関するものである。」

(引4-イ)「【0039】
本実施形態の光音響プローブ1では、ビーム径制御手段45が、集光レンズ43の位置を光軸方向に沿って変化させることにより、ダブルコア光ファイバ5の出射端面5bから出射したレーザ光Lの出射角度が制御される。より具体的には、ビーム径制御手段45が、集光レンズ43の位置を光軸方向に沿って変化させると、ダブルコア光ファイバ5の入射端面5aに入射する際のレーザ光Lのビーム径が光軸を中心として変化する。これにより、レーザ光Lが第1のコア50のみに入射する場合と第2のコア(第1のコア50および第1のクラッド51)に入射する場合とで切り換えることができる。そして、レーザ光が第1のコア50のみに入射した場合(図4A)には、そのレーザ光Lは第1のコア50のみを伝搬し、ダブルコア光ファイバ5の出射端面5bのうち第1のコア50の部分のみから出射することになる(図5A)。一方、レーザ光Lが第2のコア50および51に入射した場合(図4B)には、そのレーザ光Lは第2のコア50および51を伝搬し、ダブルコア光ファイバ5の出射端面5bのうち第2のコア50および51の部分から出射することになる(図5B)。一般に、光ファイバの出射端面から出射したレーザ光の出射角度は、実際にレーザ光が出射した出射端面の面積と反比例の関係を有する(エタンデュの保存則)。したがって、レーザ光Lが第1のコア50のみに入射した場合におけるレーザ光Lwの出射角度θ1は、レーザ光Lが第2のコア50および51に入射した場合におけるレーザ光Lnの出射角度θ2に比べて大きい。この結果、図6に示されるように、光音響イメージング用のカテーテル装置や内視鏡において、カテーテル装置や内視鏡の先端部に複雑な構造の光学系を設けることなく、レーザ光の出射時における開口数(NA)を切り換えることが可能となり、測定光の照射範囲の制御が可能となる。」

上記(引4-ア)及び(引4-イ)の記載から、上記引用文献4には、「光音響イメージングに使用されるカテーテル型の光音響プローブにおいて、ビーム径制御手段45が、集光レンズ43の位置を光軸方向に沿って変化させることにより、ダブルコア光ファイバ5の出射端面5bから出射するレーザ光Lの出射角度を制御することで、レーザ光の出射時における開口数(NA)を切り換えることを可能とし、測定光の照射範囲の制御を可能とする」という技術的事項が記載されている。

(4)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である引用文献5(特開2010-264044号公報)には、次の事項が記載されている。

(引5-ア)「【0001】
本発明は、プローブを介して被検体内に超音波を照射しその反射波(エコー)を信号処理して、臓器の断層像や血流速度といった被検体内の情報を得る超音波診断装置及びそのアダプタ装置に関するものである。」

(引5-イ)「【0025】
プローブ20(20A,20B,20C)は、観察対象となる関心領域に応じて、形状、超音波振動子の配列、スキャン方式等を最適化した複数の型式が準備されて、適宜選択できるようになっている(図では3つ例示)。さらに、プローブ20は、そのような型式に固有のID番号を有し、ケーブル21,32内の信号線(図示略)により、装置本体40においていずれの型式であるかが自動認識されるようになっている(後に詳述)。
【0026】
そして、プローブ20(20A,20B,20C)は、第1ケーブル21(21A,21B,21C)の先端に設けられ、この第1ケーブル21の終端にはコネクタ23が設けられている。
【0027】
これにより複数のプローブ20は、アダプタ30を介して装置本体40に着脱自在に連結され、診断目的に応じて連結されている複数のプローブ20のうち任意のものを選択して使用することができる。」

(引5-ウ)「【0065】
制御部48は、他の演算回路とともにCPU(Central Processing Unit)等のマイクロプロセッサで構成され、インストールされているプログラムに基づいて超音波診断装置10の各構成部を全般にわたり制御するものである。ここでは、制御部48における、アダプタ30の機能、及びその周辺機能に関連する機能に絞って説明する。
【0066】
まず、制御部48は、オペレータが使用するプローブ20の繋がれるポート31Bが入力部11で選択されると、切換部34を動作させ、このポート31Bに連結する第1ケーブル21と第2ケーブル32とを電気的に接続する。
【0067】
すると、ID認識部45は、切換部34が選択したポート31Bに連結するプローブ20のプローブIDを認識し、その結果を制御部48にフィードバックする。
【0068】
選択されたプローブ20の型式を認識した制御部48は、その他の入力条件も反映させて、調整回路33のインダクタンス及びキャパシタンスを所定値に設定変更する。なお、この設定変更は、選択されたプローブ20及びその他設定条件と、設定されるインダクタンス及びキャパシタンスの所定値と、の関係をデータベース化した情報に基づいて行われる。
【0069】
このような制御部48の機能に基づいて、型式の異なる複数のプローブ20を常時に装置本体40に連結させておくことができる。これにより、通常の医療診断において、適時、入力部11においてポート31A,31B,31Cのいずれかを指定するだけで、使用するプローブ20の変更をすることができる。さらに、そのようなプローブ20の変更を行った場合であっても、自動的に伝送線路特性の最適化が行なわれる。」

(引5-エ)【図1】




上記(引5-ア)及び(引5-エ)の記載から、上記引用文献5には、「超音波診断装置において、観察対象となる関心領域に応じて、形状、超音波振動子の配列、スキャン方式等を最適化した複数の型式のプローブ20を準備し、プローブ20は、そのような型式に固有のID番号を有しており、プローブ20のプローブIDを認識して調整回路33のインダクタンス及びキャパシタンスを所定値に設定変更し、自動的に伝送線路特性の最適化を行う」という技術的事項が記載されている。


第4 対比・判断

1 本願発明1について

(1)本願発明1と引用発明とを対比する。


(ア)引用発明の「光誘起音響信号を処理」する「光音響処理及びオーバーレイシステム140」は、本願発明1の「光音響波の信号処理を行う信号処理部」に相当する。

(イ)引用発明の「システム筐体101」並びにそれに「収納され」た「光サブシステム129」並びに「中継システム110、光音響処理及びオーバーレイシステム140並びに超音波機器150を含」む「コンピューティングサブシステム128」は、本願発明1の「装置本体」に相当する。


(ア)引用発明の「取り外し可能に関連付けられて」いることは、本願発明1の「着脱自在」であることに相当する。

(イ)引用発明の「光」は、本願発明1の「測定光」に相当する。

(ウ)引用発明の「3次元体積160」は、本願発明1の「被検体」に相当する。

(エ)引用発明の「プローブ102」及び「可撓ケーブル」は、本願発明1の「プローブ」に相当する。

(オ)上記(ア)ないし(エ)の対比を踏まえると、引用発明の「プローブ102」が「可撓ケーブルを介して、前記システム筐体101に接続され」、「前記可撓ケーブルの遠位端が前記プローブ102に取り外し可能に関連付けられており」、「前記可撓ケーブルの」「光路132上で搬送される光がそれを通って3次元体積160の表面に伝導される、1つまたは複数の光学窓1603」「を含」む「プローブ102」及び「可撓ケーブル」と、本願発明1の「該装置本体に着脱自在なプローブであって、該プローブへ入射した測定光を被検体に向けて出射させるプローブ」とは、「該装置本体に対する接続が着脱自在な部分を有するプローブであって、該プローブへ入射した測定光を被検体に向けて出射させるプローブ」の点で共通する。

ウ 引用発明の「前記光サブシステムの光出力、従って、前記光学検出器によって行われた測定値に基づく前記プローブ102の光出力を制御又は調整」する「コンピューティングシステム128」は、本願発明1の「前記測定光の光強度を調整する強度調整部」に相当する。


(ア)
a 引用発明の、「光路132」、「光ファイバー接続部」、「複数の束の光ファイバー」、「2つのライトバー」及び「1つまたは複数の光学窓1603」は、本願発明1の「前記測定光を導光する導光部」に相当する。

b よって、引用発明の、「可撓ケーブル」が「光路132」を含み、「前記プローブ102は前記光路132に対する光ファイバー接続部」「を備え」、「前記光路132に対する光ファイバー接続部に接続された複数の束の光ファイバーは、2つのライトバー内で終端され」、「前記光路132上で搬送される光がそれを通って3次元体積160の表面に伝導される、1つまたは複数の光学窓1603とを含」んでいることは、本願発明1の「前記プローブは、前記測定光を導光する導光部」を「有し」ていることに相当する。

(イ)
a 引用発明の「光音響帰還信号」は、本願発明1の「光音響波」に相当する。

b 引用発明の「超音波トランスデューサ要素の配列」で「形成」される「超音波トランスデューサ」は、本願発明1の「音響波検出部」に相当する。

c 上記(ア)並びに上記a及びbの対比を踏まえると、引用発明の「前記プローブ102は、」「前記光路132上で搬送され」「1つまたは複数の光学窓1603」「を通って3次元体積160の表面に伝導され」た「光」「によって生じた」「光音響帰還信号に応答して受け取られる超音波音響エネルギーに応答して電気エネルギーを生成」する「超音波トランスデューサ要素」「の配列」で「形成」される「超音波トランスデューサ」「を含」んでいることは、本願発明1の「前記プローブは、」「前記測定光の前記導光部からの出射に応じて前記被検体内で発生した前記光音響波を検出する音響波検出部」を「有し」ていることに相当する。

(ウ)
a 引用発明の「完成後、既知の試験対象に関連して検査され、前記試験対象からの前記プローブ102の測定された応答が記録され、既知/予期される光音響帰還信号からの変動が識別されて、その変動を含む各特定のチャネルに関連付けられた、前記プローブ102独自の応答特性に関連する情報」と、本願発明1の「前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報」であって、「前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報であ」る「光量プロファイル情報」とは、「プローブの特性を示す情報」の点で共通する。

b 引用発明の「コンピュータ可読メモリ」は、本願発明1の「記憶部」に相当する。

c 上記a及びbの対比を踏まえると、引用発明の「完成後、既知の試験対象に関連して検査され、前記試験対象からの前記プローブ102の測定された応答が記録され、既知/予期される光音響帰還信号からの変動が識別されて、その変動を含む各特定のチャネルに関連付けられた、前記プローブ102独自の応答特性に関連する情報が」「記録され」た「コンピュータ可読メモリ」が「前記プローブ102内」にあることと、本願発明1の「前記プローブは、」「前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報」であって、「前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報であ」る「光量プロファイル情報」「を記憶した記憶部」を「有し」ていることとは、「前記プローブは、プローブの特性を示す情報を記憶した記憶部を有し」ている点で共通する。

(エ)引用発明において、「前記超音波トランスデューサ要素」により「生成された電気エネルギー」は、「可撓ケーブル」の「前記電気路108を通って前記コンピューティングサブシステム128に伝送され」るのであるから、引用発明の「プローブ102」及び「可撓ケーブル」が、「プローブ102」が「可撓ケーブルを介して、前記システム筐体101に接続された」状態で、「前記超音波トランスデューサ要素」が「光音響帰還信号に応答して受け取られる超音波音響エネルギーに応答して」「生成し」た「電気エネルギー」を、「前記電気路108を通」して「前記コンピューティングサブシステム128に伝送」することは明らかである。


(ア)引用発明は、「コンピュータ可読メモリ上に記録されて」いる「前記プローブ102独自の応答特性に関連する情報」を「前記光音響処理及びオーバーレイシステム140に報告でき」ることから、引用発明の「コンピューティングサブシステム128」は、「コンピュータ可読メモリ上に記録されて」いる「前記プローブ102独自の応答特性に関連する情報」を「前記光音響処理及びオーバーレイシステム140」に転送する手段を備えているといえる。

(イ)そうすると、引用発明の「コンピュータ可読メモリ上に記録されて」いる「前記プローブ102独自の応答特性に関連する情報」を「前記光音響処理及びオーバーレイシステム140に報告でき」ることと、本願発明1の「前記装置本体は、前記記憶部から前記光量プロファイル情報を読み取る読取部を有し」ていることとは、「前記装置本体は、前記記憶部から前記プローブの特性を示す情報を読み取る読取部を有し」ている点で共通する。


(ア)引用発明の「前記光学検出器によって得られた測定値」と、本願発明1の「光量プロファイル情報」とは、「測定光がプローブから出射した時の光量に関連する情報」の点で共通する。

(イ)そうすると、引用発明の「前記コンピューティングシステム128が、前記光サブシステムの光出力、従って、前記プローブ102の光出力を前記光学検出器によって行われた測定に基づいて制御又は調整して、前記プローブ102によって出力された光のフルエンスを、そうでなければ、前記プローブ102によって出力された光のフルエンスが安全限界を超えるか、又ははるかに下回る、電気的又は光学的特性における変動に対応することにより、安全限界に近接してはいるが下回らせるようにする」ことと、本願発明1の「前記強度調整部は、前記読取部により読み取られた前記光量プロファイル情報を用いて、前記測定光が前記プローブに入射する以前に前記測定光の光強度を調整」し、「ルックアップテーブルを参照しながら、該ルックアップテーブルによって前記光量プロファイル情報に対応付けられた調整条件を取得し、当該調整条件に従って前記測定光の光強度を調整する」こととは、「前記強度調整部は、測定光がプローブから出射した時の光量に関連する情報を用いて、前記測定光の光強度を調整する」点で共通する。

キ 引用発明の「光音響システムである装置100」は、本願発明1の「光音響計測装置」に相当する。

(2)よって、本願発明1と引用発明とは、

「 光音響波の信号処理を行う信号処理部を有する装置本体と、
該装置本体に対する接続が着脱自在な部分を有するプローブであって、該プローブへ入射した測定光を被検体に向けて出射させるプローブと、
前記測定光の光強度を調整する強度調整部とを備え、
前記プローブは、前記測定光を導光する導光部と、前記測定光の前記導光部からの出射に応じて前記被検体内で発生した前記光音響波を検出する音響波検出部と、プローブの特性を示す情報を記憶した記憶部とを有し、前記装置本体に装着された状態で、前記音響波検出部により検出された前記光音響波の信号を前記信号処理部に送り、
前記装置本体は、前記記憶部から前記プローブの特性を示す情報を読み取る読取部を有し、
前記強度調整部は、測定光がプローブから出射した時の光量に関連する情報を用いて、前記測定光の光強度を調整する、
光音響計測装置。」

の発明である点で一致し、次の3点で相違する。

(相違点1)
プローブが装置本体に対する接続が着脱自在な部分を有することに関して、本願発明1は「プローブ」が「装置本体に着脱自在」であるのに対し、引用発明は「前記可撓ケーブルの遠位端が前記プローブ102に取り外し可能に関連付けられて」いる点。

(相違点2)
プローブが有する記憶部が記憶し、装置本体が有する読取部が読み取る「プローブの特性を示す情報」が、本願発明1は「前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報」であって、「前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報である」「光量プロファイル情報」のに対し、引用発明は「完成後、既知の試験対象に関連して検査され、前記試験対象からの前記プローブ102の測定された応答が記録され、既知/予期される光音響帰還信号からの変動が識別されて、その変動を含む各特定のチャネルに関連付けられた、前記プローブ102独自の応答特性に関連する情報」である点。

(相違点3)
強度調整部が行う、「測定光がプローブから出射した時の光量に関連する情報」を用いた測定光の光強度の調整に関して、本願発明1は「前記読取部により読み取られた前記光量プロファイル情報を用いて、前記測定光が前記プローブに入射する以前に前記測定光の光強度を調整する」ことであって、「ルックアップテーブルを参照しながら、該ルックアップテーブルによって前記光量プロファイル情報に対応付けられた調整条件を取得し、当該調整条件に従って前記測定光の光強度を調整する」ことであるのに対し、引用発明は「前記光サブシステムの光出力、従って、前記プローブ102の光出力を前記光学検出器によって行われた測定に基づいて制御又は調整して、前記プローブ102によって出力された光のフルエンスを、そうでなければ、前記プローブ102によって出力された光のフルエンスが安全限界を超えるか、又ははるかに下回る、電気的又は光学的特性における変動に対応することにより、安全限界に近接してはいるが下回らせるようにする」ことである点。

(3)相違点についての判断

ア 事案に鑑み、最初に上記相違点2について検討する。

上記相違点2に係る本願発明1の「前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報」であって、「前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報である」「光量プロファイル情報」は、上記相違点3に関係するが、「強度調整部」が「前記測定光が前記プローブに入射する以前に前記測定光の光強度を調整する」ために用いるものである。

引用文献2に記載された技術的事項は、スコープ内に設けたROMにスコープの特性やスコープ識別情報を記憶しておき、ライトガイドに入射する照明光の光量調整に利用するものであるが、「内視鏡装置の照明光の光量調整」に関するものであって、光音響システムのプローブが有する記憶部に、「導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報を記憶」させておくという技術思想を開示するものではない。
また、引用文献3ないし5も、上記技術思想を開示するものではない。

そして、引用発明は、「光学検出器が前記プローブ102内に配置され」、「前記プローブ102の光出力を前記光学検出器によって得られた測定値に基づいて制御又は調整」するものであることから、「前記プローブ102内のコンピュータ可読メモリ上に」「前記プローブ102の光出力」の「制御又は調整」の基となる情報を記録させておく動機付けがあるとはいえない。

したがって、引用文献1ないし5に接した当業者といえども、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を、容易に想起し得たとはいえない。

イ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2 本願発明2ないし8について

本願発明2ないし8は、本願発明1の「プローブは」、「前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報を記憶した記憶部」「を有し」、「前記光量プロファイル情報は、前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報であ」るとの特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明9について

本願発明9のプローブが有する記憶部が記憶した「前記測定光の光強度の設定に関連する情報」について、本願発明1の「前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報」という特定はない。
しかしながら、本願発明9に係る上記「情報」は、本願発明1の「光量プロファイル情報」と同様に、「前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報」である。
そして、引用文献1なしい5が、光音響システムのプローブが有する記憶部に、「導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報を記憶」させておくという技術思想を開示するものではないことは、上記1(3)アで示したとおりである。
したがって、本願発明9は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


第5 原査定の概要及び原査定についての判断

原査定の理由は、請求項1ないし9に係る発明は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2ないし5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかしながら、本願発明1ないし8は、「前記測定光が前記プローブから出射した時の光量プロファイルを示す光量プロファイル情報を記憶した記憶部」を有した「プローブ」であって、「前記光量プロファイル情報は、前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報であ」るとの特定事項を、本願発明9は、「前記測定光の光強度の設定に関連する情報を記憶した記憶部」を有した「プローブ」であって、「前記情報は、前記導光部の測定光を導光するための光学的構造によって、被写体に照射される時の測定光の光強度の調整条件が異なるプローブの種類に応じた情報であ」るとの特定事項をそれぞれ有するものであり、上記第4で検討したとおり、当該特定事項を有する本願発明1ないし9は、上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献2なしい5に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。


第6 当審拒絶理由について

当審拒絶理由は特許法第36条第6項第2号に係る拒絶理由である。

当審では、請求項2の「前記強度調整部は、前記光量プロファイル情報に基づいて算出された算出値を前記測定光の光強度の目標値に設定して光強度を調整するものである」という記載は、引用する請求項1の「前記強度調整部は、ルックアップテーブルを参照しながら、該ルックアップテーブルによって前記光量プロファイル情報に対応付けられた調整条件を取得し、当該調整条件に従って前記測定光の光強度を調整するものである」という記載との関係において明確でないとの拒絶の理由を通知しているが、平成30年10月3日になされた手続補正により、請求項2において「前記調整条件は、前記測定光の光強度の目標値を指定し、前記強度調整部は、前記測定光の光強度の目標値になるように光強度を調整するものである」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。


第7 むすび

以上のとおり、本願発明1ないし9は、引用発明及び引用文献2ないし5に記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本願発明2ないし7が明確でないとはいえない。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-11-27 
出願番号 特願2016-529025(P2016-529025)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樋熊 政一  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 伊藤 昌哉
渡戸 正義
発明の名称 光音響計測装置及び光音響計測用プローブ  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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