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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1346550
審判番号 不服2017-13903  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-20 
確定日 2018-12-25 
事件の表示 特願2014-142986「偏光板,高輝度偏光板及びIPSモード液晶表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年2月1日出願公開,特開2016-18184,請求項の数(8)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2014-142986号(以下「本件出願」という。)は,平成26年7月11日を出願日とする特許出願であるところ,その手続等の経緯は,概略,以下のとおりである。
平成29年 4月14日付け:拒絶理由通知書
平成29年 6月14日付け:意見書
平成29年 6月14日付け:手続補正書
平成29年 6月16日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
平成29年 9月20日付け:審判請求書
平成29年 9月20日付け:手続補正書
平成30年 7月18日付け:拒絶理由通知書
平成30年 9月21日付け:意見書
平成30年 9月21日付け:手続補正書

2 本願発明
本件出願の請求項1?請求項8に係る発明は,平成30年9月21日付け手続補正書によって補正された,特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
第一の透明保護フィルム,偏光フィルム及び第二の透明保護フィルムがこの順に積層されてなるIPSモード液晶表示装置用の偏光板であって,
偏光フィルムの厚みが12μm以下であり,
第一の透明保護フィルムは,
波長590nmにおける面内レターデーションRe(590)が10nm以下であり,
波長590nmにおける厚み方向のレターデーションRth(590)の絶対値が10nm以下であり,
波長480?750nmにおける厚み方向のレターデーションRth(480-750)の絶対値が15nm以下であり,
厚みが,偏光フィルムの厚みの(23/12)倍?3.3倍である透明樹脂フィルムであり,
前記第一の透明保護フィルムと前記偏光フィルム,及び前記第二の透明保護フィルムと前記偏光フィルムが,いずれも接着剤を用いて一体化されており,
当該偏光板の第一の透明保護フィルムが配置される面とは反対側に粘着剤を介して輝度向上フィルムが積層された高輝度偏光板。

【請求項2】
前記第一の透明保護フィルムと前記偏光フィルムがポリビニルアルコール系樹脂およびエポキシ化合物を含有する水溶性接着剤によって接着されている請求項1に記載の高輝度偏光板。

【請求項3】
前記第一の透明保護フィルムと偏光フィルムが活性エネルギー線の照射または加熱により硬化するエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物からなる接着剤によって接着されている請求項1に記載の高輝度偏光板。

【請求項4】
前記エポキシ樹脂が,脂環式環に結合したエポキシ基を分子内に1個以上有する化合物を含有する請求項3に記載の高輝度偏光板。

【請求項5】
前記第二の透明保護フィルムが,メタクリル酸メチル系樹脂フィルム,ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムまたはセルロース系樹脂フィルムからなる請求項1?4のいずれかに記載の高輝度偏光板。

【請求項6】
前記高輝度偏光板は,携帯電話用又は携帯情報端末用である請求項1?5のいずれかに記載の高輝度偏光板。

【請求項7】
IPSモード液晶セルの少なくとも一方の面に,請求項1?6のいずれかに記載の高輝度偏光板が配置されてなるIPSモード液晶表示装置。

【請求項8】
IPSモード液晶表示装置が,中小型用である請求項7に記載のIPSモード液晶表示装置。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,概略,この出願の請求項1?請求項10に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用例1:特開2012-113124号公報
引用例2:韓国公開特許第10-2011-0108925号公報
引用例3:特開平6-265725号公報
引用例4:特開2014-126743号公報
なお,引用例1は主引用例,引用例2は副引用例,引用例3及び引用例4は周知技術を示す文献である。

4 当合議体の拒絶の理由
平成30年7月18日に通知された拒絶の理由(以下「当合議体の拒絶の理由」という。)は,概略,この出願の請求項1?請求項8に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2004-271846号公報
引用文献2:韓国公開特許第10-2011-0108925号公報
なお,引用文献1及び引用文献2は,いずれも,主引用例である。

第2 当合議体の判断
1 引用文献等の記載事項及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
当合議体の拒絶の理由に引用され,本件出願の出願前に頒布された刊行物である上記引用文献1には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明等の認定に活用した箇所を示す。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,偏光板と輝度向上フィルムを積層した高輝度偏光板に関する。
…(省略)…
【0002】
【従来の技術】
従来,液晶表示装置に用いられていたバックライトから出射された自然光は,自然光のまま液晶セルに入射されていた。最近では,液晶表示装置の大型化,高精細化によりバックライトの輝度を向上させる必要があった。また,バックライトからの光を偏光化する技術も多く採用されようとしている。
【0003】
たとえば,液晶セルの裏側サイドには,偏光板と輝度向上フィルムとを貼り合わせた高輝度偏光板が設けられている。
…(省略)…
【0007】
これらの輝度向上フィルムを用いる場合には,これまでカラーシフト量が問題になっていた。
…(省略)…
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は,偏光板と輝度向上フィルムとを貼り合わせた高輝度偏光板であって,カラーシフト量が少ないものを提供することを目的とする。
…(省略)…
【0016】
【課題を解決するための手段】
…(省略)…
【0017】
1.偏光子の片面または両面に保護フィルムが設けられている偏光板と,輝度向上フィルムとが,前記保護フィルムを挟んで粘着剤層を介して積層されている高輝度偏光板において,
前記保護フィルムが,面内屈折率が最大となる方向をX軸,X軸に垂直な方向をY軸,フィルムの厚さ方向をZ軸とし,それぞれの軸方向の屈折率をnx,ny,nz,透明フィルムの厚さをd(nm)とした場合に,
面内位相差Re=(nx-ny)×dが,0?10nmであり,
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2-nz)×d)が,-30?10nmであることを特徴とする複合偏光フィルム。
…(省略)…
【0034】
…(省略)…前記面内位相差Reは概0nmであるのが好ましく,10nm以下,さらに好ましくは5nm以下である。また厚み方向位相差Rthは,好ましくは-10nm?10nm,より好ましくは-5?5nm,さらに好ましくは-3?3nmである。
【0035】
また本発明の高輝度偏光板では偏光板と輝度向上フィルムが接着剤により貼り合わされている。…(省略)…本発明では,偏光子と輝度向上フィルムの間に介在する前記保護フィルムを用いることにより,接着剤層により界面での反射を防止することで,白表示時の輝度を向上し,しかもカラーシフト量の低減を両立させることができる。」

イ 「【0038】
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しながら本発明を説明する。図1は高輝度偏光板の断面図であり,偏光子(1a)の片面に保護フィルム(1b),もう一方に片面に保護フィルム(1b′)が設けられている偏光板(1)と,輝度向上フィルム(2)とが,前記保護フィルム(1b)を挟んで粘着剤層(A)を介して積層されている。保護フィルム(1b)は,面内位相差Reが,10nm以下,厚み方向位相差Rthが,-30?10nmを満足するものである。
(当合議体注:図1は以下の図である。

)
…(省略)…
【0039】
図3は,液晶セル(C)の出射側に偏光板(1′),入射側に偏光板(1)と輝度向上フィルム(2)からなる高輝度偏光板が設けられ,さらにバックライト(B),拡散板(D),反射板(E)が配置されている液晶表示装置の断面図である。
(当合議体注:図3は以下の図である。

)
…(省略)…
【0040】
偏光子(1a)は,特に制限されず,各種のものを使用できる。…(省略)…これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムを延伸して二色性色素(ヨウ素,染料)を吸着・配向したものが好適に用いられる。偏光子の厚さも特に制限されないが,5?80μm程度が一般的である。
…(省略)…
【0044】
偏光子の作製方法は,厚みバラツキの少ないポリビニルアルコール系フィルム原反を用いるのが好ましい。…(省略)…得られた延伸フィルムの幅はx倍延伸した際には厚み,フィルム幅ともに1/√x倍が望ましい。
…(省略)…
【0064】
また保護フィルムを形成する材料としては,ノルボルネン系樹脂などの光弾性係数の低いものがあげられる。…(省略)…熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂としては,日本ゼオン(株)製のゼオネックス,ゼオノア,JSR(株)製のアートン等があげられる。
【0065】
また前記保護フィルムは,延伸処理されたフィルムとして用いることができる。
…(省略)…
【0071】
前記偏光子と保護フィルムとの接着処理には,イソシアネート系接着剤,ポリビニルアルコール系接着剤,ゼラチン系接着剤,ビニル系ラテックス系,水系ポリエステル等が用いられる。
…(省略)…
【0072】
輝度向上フィルムとしては,光源(バックライト)からの出射光を透過偏光と反射偏光または散乱偏光に分離するような機能を有する偏光変換素子が用いられる。かかる輝度向上フィルムは,反射偏光または散乱偏光のバックライトからの再帰光を利用して,直線偏光の出射効率を向上できる。
…(省略)…
【0076】
偏光板と輝度向上フィルムとは貼り合わせる接着剤としては特に制限されない。
…(省略)…
【0098】
本発明の高輝度偏光板は液晶表示装置等の各種装置の形成などに好ましく用いることができる。」

ウ 「【0108】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例をあげて具体的に説明する。なお,各例中%は重量%である。
【0109】
(偏光子の作製)
面内の100mmの範囲内において,厚みバラツキの極大値と極小値との差の最大値が1.2μmのポリビニルアルコール系フィルム原反((株)クラレ製,ビニロンフィルムVF-9P75RS)を用いた。…(省略)…トータルの延伸倍率が6.1倍になるように延伸しながら行った。次いで,水分率が20%になるように制御しながら乾燥した。得られた延伸フィルム(偏光子)は,原反に対し,42%,厚みは39%であった。
【0110】
(保護フィルムA)
イソブテンおよびN-メチルマレイミドからなる交互共重合体(N-メチルマレイミド含量50モル%,ガラス転移温度157℃)100重量部(60重量%)と,アクリロニトリルおよびスチレンの含量がそれぞれ27重量%および73重量%であるスチレンおよびアクリルニトリルからなる熱可塑性共重合体67重量部(40重量%)とを溶融混練してペレットを作製した。Tダイを備えた溶融押出機にこのペレットを供給して,厚さ100μmの原反フィルムを得た。この原反フィルムを延伸速度100cm/分,延伸倍率1.45倍,延伸温度162℃の条件で自由端縦一軸で延伸し,次いで同様の延伸条件で先の延伸方法とは直交する方向に自由端一軸延伸を行って厚さ49μmの延伸フィルム(保護フィルムA)を得た。保護フィルムAの面内位相差Reは1.1nm,厚み方向位相差Rthは-2.8nmであった。なお,保護フィルムの面内位相差Re,厚み方向位相差Rthは,590nmにおける屈折率nx,ny,nzを自動複屈折測定装置(王子計測機器株式会社製,自動複屈折計KOBRA21ADH)により計測した値から算出した。
…(省略)…
【0114】
(輝度向上フィルムA)
3M社製のDBEF(異方性多重薄膜)を用いた。
…(省略)…
【0116】
実施例1
上記偏光子の両面に保護フィルムAを,ポリビニルアルコール(日本合成化学社製,NH-18)75部とグリオキザール25部を含有する濃度5%水溶液により貼合し,50℃5分間乾燥させて偏光板を得た。当該偏光板と輝度向上フィルムAとを,アクリル系の透明粘着剤で貼合わせ,図1に示す高輝度偏光板を得た。」

(2) 引用発明
引用文献1の【0017】に記載された高輝度偏光板(複合偏光フィルム)の「面内位相差Re」及び「厚み方向位相差Rth」に関して,【0034】には,それぞれ「さらに好ましくは5nm以下」及び「さらに好ましくは-3?3nm」と記載されている。また,偏光子の両面に,接着剤を用いて保護フィルムを接着することは,技術常識である。
そうしてみると,引用文献1には,「さらに好ましくは」とされる「面内位相差Re」及び「厚み方向位相差Rth」を具備する,次の「高輝度偏光板」が記載されている(以下「引用発明」という。)。
「 偏光子の両面に接着剤を用いて保護フィルムが接着されている偏光板と,輝度向上フィルムとが,前記保護フィルムを挟んで粘着剤層を介して積層されている高輝度偏光板において,
前記保護フィルムが,面内屈折率が最大となる方向をX軸,X軸に垂直な方向をY軸,フィルムの厚さ方向をZ軸とし,それぞれの軸方向の屈折率をnx,ny,nz,透明フィルムの厚さをd(nm)とした場合に,
面内位相差Re=(nx-ny)×dが,5nm以下であり,
かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2-nz)×d)が,-3?3nmである,
高輝度偏光板。」

2 当合議体の判断
(1) 対比
本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)と引用発明を対比すると,以下のとおりである。
ア 偏光板
引用発明の「高輝度偏光板」は,「偏光子の両面に接着剤を用いて保護フィルムが接着されている偏光板と,輝度向上フィルムとが,前記保護フィルムを挟んで粘着剤層を介して積層されている」ものである。ここで,引用発明の「偏光子」等は,その文言が意味するとおりの機能を奏する部材と解するのが自然である。また,引用発明の「偏光子」がフィルム状のものであること,及び引用発明の「保護フィルム」が透明のものであることは,技術的にみて明らかである。
そうしてみると,引用発明の「偏光子」,「接着剤」,「偏光板」,「輝度向上フィルム」,「粘着剤層」及び「高輝度偏光板」は,それぞれ,本願発明1の「偏光フィルム」,「接着剤」,「偏光板」,「輝度向上フィルム」,「粘着剤」及び「高輝度偏光板」に相当する。また,引用発明の「保護フィルム」のうち,一方の「保護フィルム」(偏光子と輝度向上フィルムの間に挟まれたもの),及び他方の「保護フィルム」は,それぞれ,本願発明1の「第一の透明保護フィルム」及び「第二の透明保護フィルム」に相当する。
加えて,引用発明の「高輝度偏光板」と本願発明1の「高輝度偏光板」は,「第一の透明保護フィルム,偏光フィルム及び第二の透明保護フィルムがこの順に積層されてなる」「偏光板であって」,「当該偏光板の第一の透明保護フィルムが配置される面とは反対側に粘着剤を介して輝度向上フィルムが積層された」ものである点で,共通する。

イ レターデーション
引用発明の「保護フィルム」は,「面内位相差Re=(nx-ny)×dが,5nm以下であり」,「かつ厚み方向位相差Rth={(nx+ny)/2-nz)×d)が,-3?3nmである」。
ここで,引用発明の位相差値は,測定波長を特定したものではない。しかしながら,その値の小ささを勘案すると,引用発明の(一方の)「保護フィルム」が,本願発明1の「第一の透明保護フィルム」における,「波長590nmにおける面内レターデーションRe(590)が10nm以下であり」,「波長590nmにおける厚み方向のレターデーションRth(590)の絶対値が10nm以下であり」という要件を満たすことは,技術的にみて明らかである。
(当合議体注:なお,引用文献1の【0110】には,波長590nmで測定した例が記載されているところでもある。)

ウ 一体化
引用発明の「偏光板」は,「偏光子の両面に接着剤を用いて保護フィルムが接着されている」ものであるから,偏光子とその両面の保護フィルムは,接着剤を用いて一体化されたものといえる。
そうしてみると,引用発明の「高輝度偏光板」は,本願発明1の「高輝度偏光板」における,「前記第一の透明保護フィルムと前記偏光フィルム,及び前記第二の透明保護フィルムと前記偏光フィルムが,いずれも接着剤を用いて一体化されており」という要件を満たすものである。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明1と引用発明は,次の構成で一致する。
「 第一の透明保護フィルム,偏光フィルム及び第二の透明保護フィルムがこの順に積層されてなる偏光板であって,
第一の透明保護フィルムは,
波長590nmにおける面内レターデーションRe(590)が10nm以下であり,
波長590nmにおける厚み方向のレターデーションRth(590)の絶対値が10nm以下であり,
前記第一の透明保護フィルムと前記偏光フィルム,及び前記第二の透明保護フィルムと前記偏光フィルムが,いずれも接着剤を用いて一体化されており,
当該偏光板の第一の透明保護フィルムが配置される面とは反対側に粘着剤を介して輝度向上フィルムが積層された高輝度偏光板。」

イ 相違点
本願発明1と引用発明は,以下の点で相違する。
(相違点1)
「偏光板」について,本願発明1は,「IPSモード液晶表示装置用」であるのに対して,引用発明は,これが明らかではない点。

(相違点2)
「偏光フィルム」について,本願発明1は,「厚みが12μm以下」であるのに対して,引用発明は,このように特定されたものではない点。

(相違点3)
「第一の透明保護フィルム」について,本願発明1は,「波長480?750nmにおける厚み方向のレターデーションRth(480-750)の絶対値が15nm以下」であるのに対して,引用発明は,これが明らかではない点。

(相違点4)
「第一の透明保護フィルム」について,本願発明1は,「厚みが,偏光フィルムの厚みの(23/12)倍?3.3倍である」のに対して,引用発明は,このように特定されたものではない点。

(3) 判断
事案に鑑みて,相違点2及び相違点4について検討する。
引用文献1には,「偏光子」及び「保護フィルム」の厚み,及び両者の倍率について,記載がなく,また,示唆もない。
また,引用文献1の実施例について検討すると,引用文献1の【0110】には,保護フィルムの厚みが「49μm」と記載されており,この厚みでは,相違点2及び相違点4に係る本願発明1の要件を,同時に満たすことができない。すなわち,保護フィルムの厚みが49μmでは,相違点4に係る本願発明1の要件を満たす偏光子の厚みは15?26μmと計算され,相違点2に係る本願発明1の要件(12μm以下)を満たすことができない。
なお,引用文献1の【0109】には,偏光子の厚みが明記されていないが,ポリビニルアルコール系フィルム原反の型番,及び延伸倍率から推察される偏光子の厚みは,30μm程度と考えられる。すなわち,ポリビニルアルコール系フィルム原反の型番「VF-9P75RS」及び特開2000-249832号公報の【0049】の記載からみて,原反の厚みは75μmと推定される。また,トータルの延伸倍率は6.1倍であり,引用文献1の【0044】の記載に基づいて延伸後の厚みを推定すると,75/√6.1≒30μmと計算される。

さらにすすんで検討すると,液晶表示装置用の偏光板に薄型化が求められることは,本件出願前の当業者における技術常識である。しかしながら,引用文献1の【0109】に開示された製造方法によって,相違点1に係る本願発明1の要件を満たす厚みが12μm以下の偏光子を得ることは,困難である。
ところで,例えば,特許第4691205号に記載された製造方法によると,偏光子の厚みを3?5μm程度まで薄くすることができ,相違点2に係る本願発明1の要件を満たす偏光子が得られる。
しかしながら,このように薄い偏光子を前提にして,相違点4に係る本願発明1の要件を満たす保護フィルムの厚さを計算すると,厚いものでも約17μmと計算される。そして,液晶表示装置用の偏光板には,薄いことのみならず,寸法安定性等も要求されるから,当業者が,ここまで薄い保護フィルムを採用するとは,いいがたい。

したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者が,引用発明に基づいて容易に発明することができたものであるということができない。

(4) 請求項2?請求項8について
本件出願の請求項2?請求項6に係る発明は,いずれも,上記相違点2及び相違点4に係る本願発明1の構成を具備する,高輝度偏光板である。また,本件出願の請求項7及び請求項8に係る発明は,いずれも,上記相違点2及び相違点4に係る本願発明1の構成を具備する高輝度偏光板が配置されてなる,IPSモード液晶表示装置である。
したがって,上記(3)で述べたのと同じ理由により,本件出願の請求項2?請求項8に係る発明は,いずれも,当業者が,引用発明に基づいて容易に発明することができたものであるということができない。

3 引用文献2について
引用文献2に記載された発明に基づいて検討しても,同様である。
すなわち,引用文献2には,「偏光フィルムの厚みが12μm以下」かつ「厚みが,偏光フィルムの厚みの(23/12)倍?3.3倍である透明樹脂フィルム」の要件をともに満たす偏光板は,記載も示唆もされていない。
したがって,本件出願の請求項1?請求項8に係る発明は,いずれも,当業者が,引用文献2に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるということができない。

4 原査定について
引用例1に記載された発明に基づいて検討しても,同様である。
すなわち,引用例1には,「偏光フィルムの厚みが12μm以下」かつ「厚みが,偏光フィルムの厚みの(23/12)倍?3.3倍である透明樹脂フィルム」の要件をともに満たす偏光板は,記載も示唆もされていない。
したがって,本件出願の請求項1?請求項8に係る発明は,いずれも,当業者が,引用例1に記載された発明に基づいて容易に発明することができたものであるということができない。

第3 むすび
以上のとおり,原査定の拒絶の理由によって,本件出願を拒絶することはできない。また,当合議体の拒絶の理由によっても本件出願を拒絶することはできず,他に本件出願を拒絶すべき理由も発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-10 
出願番号 特願2014-142986(P2014-142986)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 樋口 信宏
宮澤 浩
発明の名称 偏光板、高輝度偏光板及びIPSモード液晶表示装置  
代理人 中山 亨  
代理人 坂元 徹  
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