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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1346573
審判番号 不服2017-15959  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-10-27 
確定日 2018-12-18 
事件の表示 特願2015-507097「車両の屋根に用いられる改善された光起電力モジュール及び/又はその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月24日国際公開、WO2013/158581、平成27年 7月 2日国内公表、特表2015-518661、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年4月16日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年4月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。

平成26年12月 1日:国際出願翻訳文提出書の提出
平成28年 3月24日:出願審査請求書の提出
平成29年 1月31日:拒絶理由通知(2月7日発送)
同年 5月 8日:手続補正書・意見書の提出
同年 6月22日:拒絶査定(6月27日送達)
同年10月27日:審判請求書・手続補正書の提出
平成30年 7月24日:拒絶理由通知(7月31日発送)
同年10月31日:手続補正書・意見書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年6月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

「【理由】(進歩性要件)
本願請求項1ないし16に係る発明は、以下の引用文献2ないし7に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
2 国際公開第2010/136166号
3 特開2004-186443号公報(周知技術を示す文献)
4 米国特許第05252139号明細書(周知技術を示す文献)
5 米国特許出願公開第2010/0248415号明細書(周知技術を示す文献)
6 特開昭62-005671号公報(周知技術を示す文献)
7 特開2005-317665号公報(周知技術を示す文献)」

第3 平成30年7月24日付け拒絶理由通知の概要
平成30年7月24日付け拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

1 【理由1】(明確性要件)
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

縦横比は、セル厚さや製造条件等に応じて変化することになり、「縦横比」のみで、「積層材に気泡が混入しないように塞ぐ」機能を必ずなすものとはいえないから、物の構造を特定することができない。

2 【理由2】(実施可能要件)
本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

積層材に気泡が混入するか否かは、スルーホールの形状だけではなく、セル厚さや製造条件等にも依存するものと解されるところ、「積層材に気泡が混入しないように塞ぐ」ために、どのような製造条件を設定すればよいのか理解できない。

3 【理由3】(進歩性要件)
本願請求項1ないし16に係る発明は、以下の引用文献に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
国際公開第2010/136166号(拒絶査定時の引用文献2)」

第4 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、平成30年10月31日付けの手続補正により補正された請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし本願発明9は、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
車両に用いられる光起電力(PV)モジュールの製造方法であって、
第1ガラス基板及び第2ガラス基板を供給する工程と、
予め決められた、太陽電池の厚さ、積層材の種類、及び積層プロセスを考慮して、流入される前記積層材に気泡が混入しないような細長い形状に形成された複数のスルーホールを有する前記太陽電池を供給する工程と、
前記第1ガラス基板及び前記第2ガラス基板と、それらの間に配置した前記太陽電池とを前記積層材を介して互いに積層する積層工程と、
を含み、
前記積層工程中、前記太陽電池の前記複数のスルーホールが前記積層材で少なくとも実質上塞がれ、
前記スルーホールが全体として、前記PVモジュールを通過する可視透過率が少なくとも選択された目標値を達成できるように選択された総面積を有する
光起電力(PV)モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記目標値が10%である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記太陽電池には、導電性材料の格子が設けられている、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記スルーホールは、前記格子から間隔を空けて配置される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記間隔は、少なくとも約1mmである、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スルーホールは、前記格子間の実質上中央にある、
請求項3?5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
複数のバスバーを前記太陽電池に接続する工程を更に含む、
請求項1?6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記各々のスルーホールは、丸角を有する、
請求項1?7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1?8のいずれか一項に記載の方法で製造された光起電力(PV)モジュールを供給する工程と、
前記PVモジュールを前記車両に組み込む工程と、を含む、
車両の製造方法。」

第5 当審の判断
1 【理由1】(明確性要件)について
(1)請求項1おいて、補正により「前記スルーホールが、前記積層材に気泡が混入しないように塞ぐことができる縦横比を有する」との記載は削除され、「予め決められた、太陽電池の厚さ、積層材の種類、及び積層プロセスを考慮して、流入される前記積層材に気泡が混入しないような細長い形状に形成された複数のスルーホール」との記載に補正された。

(2)上記補正により、その意味するところは明確になったものと認められることから、上記「【理由1】(明確性要件)」は解消された。

2 【理由2】(実施可能要件)について
(1)補正により、補正前の請求項1に係る発明における「太陽電池を供給する工程」が、「予め決められた、太陽電池の厚さ、積層材の種類、及び積層プロセスを考慮して、流入される前記積層材に気泡が混入しないような細長い形状に形成された複数のスルーホールを有する太陽電池を供給する工程」となった。

(2)そして、本願明細書の【0087】の「驚くべきことに、そして予想外にも、前記状況及び特定の実施例を考慮すると、PVサンルーフ積層体並びにサンルーフ以外のガラス積層体(フロントガラスなど)を構成するための積層方法を変更することが望ましくないことが分かった。すなわち、前記状況及び特定の実施例を考慮すると、PVサンルーフ積層体は、サンルーフ以外のガラス積層体に比べると、接着剤の種類並びに温度、圧力、時間サイクル及びその他の関連するプロセス条件をカスタマイズするのは好ましくないことが分かった。」等の記載を見れば、
補正後の「細長い形状」とは、従来からのプロセス条件を変更することなく、積層材に気泡が混入しないようにできる形状であることが理解できる。

(3)よって、上記「【理由2】(実施可能要件)」は解消された。

3 【理由3】(進歩性要件)について
(1)引用文献
当審拒絶理由で引用した国際公開第2010/136166号(2010年12月2日国際公開。以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の記載がある(日本語訳は、当審が作成した。)。

ア 「(57)Abstract The aim of the invention is to provide transparent and partially transparent flexible thin film solar cells. The aim is achieved in that flexible thin film solar cells are processed using a tool, such that the entire cell structure is pierced, the transparency is ensured by the openings thus created, and the energy conversion yield remains high. An example is a flexible thin film solar cell according to the figure.」(フロントページ)
(日本語訳
(57)要約 本開示は、透明および半透明の可撓性薄膜太陽電池を提供する。この目的は、可撓性薄膜太陽電池は、ツールを使用して処理されることにより達成される、全体のセル構造は穿孔されるように、透明性は、こうして作成された開口部によって保証され、エネルギー変換収率は高いままである。)

イ 「

」(第7頁ないし8頁)
(日本語訳
1.可撓性薄膜太陽電池は、キャリア箔、パターン、パターンを可撓性薄膜太陽電池の機械的安定性ならびにエネルギーの変換、例えば、光学的透明性の効率度を確実に貫通するように工具を用いて加工されていることを特徴とする、部分的に透明な薄膜太陽電池の製造方法。
2. 可撓性薄膜太陽電池を除去し、残りの領域との間の比は、5:1と1:60との間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
3. この比は、1:8であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
4. 前記パターンが規則的に配置され、円形の打抜き成形部を形成することからなることを特徴とする、請求項1ないし3に記載の方法。
5. ……(略)……
6. ……(略)……
7.……(略)……
8.……(略)……
9.……(略)……
10.……(略)…… )

ウ 「

」(第1頁上段)
(日本語訳
本発明は、自動車産業だけではなく建築にも使用できる、部分的に透明な可撓性薄膜太陽電池を製造する方法に関する。)

エ 「

」(第2頁上段ないし中段)
(日本語訳
このタスクは、第1の可撓性薄膜太陽電池は可撓性キャリア上に層構造による既知の方法で製造されることによって解決される。可撓性キャリアは、ポリイミド、金属箔、薄いセラミック材料、織物等のようなプラスチックとすることができる。薄膜太陽電池の層構成の場合には、CuInSe_(2)(CIS)、Cu(In,Ga)Se_(2)(CIGS)、Cu(In,Ga)(Se,S)_(2)(CIGSS)又はCuGaSe_(2)(CGS)の、又は同程度の薄膜太陽電池を得ることができる。
本発明によれば、可撓性薄膜太陽電池は、可撓性支持体を含むセル全体が貫通されるように工具を用いて加工することができる。例えば、セルをパターンとして開口を生成する穴あけ工具がこれに適している。開口部は、透明性を確保し、それらは光に対する窓として作用する薄膜太陽電池の構造は、それらの安定性を確保することができる。
特に適したツールでとして、……又はレーザビーム装置だけではなく、回転加工工具が挙げられる。
除去された部分と残りの薄膜太陽電池との間の面積比は、5:1?1:60である。1:8の比が好ましい。これは、安定性、並びに透明性を確保するとともに、エネルギー変換能力の損失を制限する。
上述した面の状態は、図1に示されている。)

オ 「

(第5頁下段ないし第6頁上段)
(実施例3
可撓性薄膜太陽電池は、固定され、2枚の透明剛性支持面、即ち、ガラス板に接触する。あるいは、薄膜太陽電池は、2枚の透明な可撓性支持面、即ち、プラスチックフォイルとの間に固定されて接触される。)

カ 図1(平面図)は、以下のものである。


(2)引用文献に記載された発明
ア 上記(1)アの要約及び図1(平面図)からして、引用文献には、
「セル構造をツールにより穿孔して形成した複数の『開口部』を有する可撓性薄膜太陽電池」、すなわち、シースルー型と呼ばれる太陽電池が記載されているものと認められる(必要ならば、例えば、下記の文献を参照。以下「シースルー型太陽電池に関する技術」という。)。

特開2012-74619号公報(【0001】及び図5)
特開2010-109207号公報(【要約】及び図3)
特開2002-299663号公報(【要約】、図1及び図2)
特開2002-124690号公報(【要約】及び図2)

イ 上記(1)イの記載からして、
上記アの「開口部」は、「円形」であってもよいこと。

ウ 上記(1)ウの記載からして、
上記アの「可撓性薄膜太陽電池」は、「自動車用」として用いられることが理解できる。

エ 上記(1)エの記載からして、
上記アの「可撓性薄膜太陽電池」は、
ポリイミド、金属箔、薄いセラミック材料等可撓性支持体上に、CuInSe_(2)(CIS)、Cu(In,Ga)Se_(2)(CIGS)、Cu(In,Ga)(Se,S)_(2)(CIGSS)又はCuGaSe_(2)(CGS)などの層構造として形成され、
開口部は、前記可撓性支持体を含むセル全体が貫通されるように工具を用いて加工され、前記開口部と残りの部分との面積比は、安定性、並びに透明性を確保するとともに、エネルギー変換能力の損失を制限する観点から「1:8」が好ましいことが理解できる。

オ 上記アないしエより、引用文献には、次の「可撓性薄膜太陽電池」が記載されているものと認められる。

「セル構造をツールにより穿孔して形成した複数の開口部を有する自動車用として用いられる可撓性薄膜太陽電池であって、
ポリイミドの可撓性支持体上に、CuInSe_(2)(CIS)の層構造として形成され、
前記開口部は、円形であり、
前記開口部と残りの部分との面積比は、安定性、並びに透明性を確保するとともに、エネルギー変換能力の損失を制限する観点から1:8である、
可撓性薄膜太陽電池。」

カ また、上記(1)オの実施例3に関する記載からして、
上記エの「可撓性薄膜太陽電池」を、「2枚のガラス板の間に固定して接触した状態」で用いてもよいことが理解できる。

キ 上記オ及びカからして、
引用文献には、上記エの「可撓性薄膜太陽電池」を「2枚のガラス板の間に固定して接触した状態」とすることにより、以下のような「自動車用太陽電池」を製造する方法(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ポリイミドの可撓性支持体上に、CuInSe_(2)(CIS)を積層してセル構造を形成する工程と、
前記セル構造をツールにより穿孔して複数の円形の開口部を形成する工程であって、前記開口部と残りの部分との面積比は、安定性、並びに透明性を確保するとともに、エネルギー変換能力の損失を制限する観点から1:8である工程と、
前記セル構造を2枚のガラス板の間に固定して接触した状態とする工程を含む、
自動車用太陽電池の製造方法。」

(3)本願発明1について
ア 対比
(ア)引用発明の「ポリイミドの可撓性支持体上に、CuInSe_(2)(CIS)を積層してセル構造を形成する工程」は、「可撓性薄膜太陽電池」を形成する工程であることは明らかである。
また、引用発明の「セル構造を2枚のガラス板の間に固定して接触した状態とする工程」は、上記「可撓性薄膜太陽電池」を「2枚のガラス板の間に固定して接触した状態とする工程」であることは明らかである。

(イ)上記(ア)から、
本願発明1と引用発明とは、
「第1ガラス基板及び第2ガラス基板を供給する工程と、
太陽電池を供給する工程と、
前記第1ガラス基板及び前記第2ガラス基板と、それらの間に配置した前記太陽電池とを互いに積層する積層工程と、を含む」点で一致する。

(ウ)引用発明の「開口部」は、本願発明1の「スルーホール」に相当し、引用発明の「セル構造をツールにより穿孔して複数の円形の開口部を形成する工程」にける、「開口部と残りの部分との面積比」は、1:8であるから、引用発明の「複数の円形の開口部」の層面積は、「スルーホールが全体として、自動車用太陽電池を透過する可視透過率が少なくとも選択された目標値を達成できるように選択された総面積を有する」ものであるといえる。

(エ)引用発明の「自動車用太陽電池の製造方法」と本願発明1の「車両に用いられる光起電力(PV)モジュールの製造方法」とは、
「車両に用いられる光起電力(PV)装置の製造方法」である点で一致する。

(オ)上記(ア)ないし(エ)を整理すると、本願発明1と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「車両に用いられる光起電力(PV)装置の製造方法であって、
第1ガラス基板及び第2ガラス基板を供給する工程と、
太陽電池を供給する工程と、
前記第1ガラス基板及び前記第2ガラス基板と、それらの間に配置した前記太陽電池とを互いに積層する積層工程と、
を含み、
前記スルーホールが全体として、前記光起電力(PV)装置を通過する可視透過率が少なくとも選択された目標値を達成できるように選択された総面積を有する
光起電力(PV)装置の製造方法。」

(カ)一方、両者は、以下の点で相違する。
<相違点1>
「太陽電池を供給する工程」における「太陽電池」に関して、
本願発明1は、「予め決められた、太陽電池の厚さ、積層材の種類、及び積層プロセスを考慮して、流入される前記積層材に気泡が混入しないような細長い形状に形成された複数のスルーホールを有する太陽電池」であるのに対して、
引用発明は、そのようなものであるか否か不明である点。

<相違点2>
「積層工程」に関して、
本願発明1は、「第1ガラス基板及び第2ガラス基板と、それらの間に配置した太陽電池とを積層材を介して互いに積層する積層工程」であって、「積層工程中、太陽電池の複数のスルーホールが積層材で少なくとも実質上塞がれ」るのに対して、
引用発明は、上記構成を備えていない点。

<相違点3>
「光起電力(PV)装置」に関して、
本願発明1は、「光起電力(PV)モジュール」であるのに対して、
引用発明は、「光起電力(PV)モジュール」と呼べるものであるか否か不明である点。

イ 判断
(ア)上記<相違点1>について検討する。
a まず、上記<相違点1>に係る構成、つまり、「太陽電池を供給する工程」において、「予め決められた、……複数のスルーホールを有する太陽電池」を供給する技術的意義について、本願明細書の記載を参酌して検討する。

本願明細書には、以下の記載がある。
「【0087】
驚くべきことに、そして予想外にも、前記状況及び特定の実施例を考慮すると、PVサンルーフ積層体並びにサンルーフ以外のガラス積層体(フロントガラスなど)を構成するための積層方法を変更することが望ましくないことが分かった。すなわち、前記状況及び特定の実施例を考慮すると、PVサンルーフ積層体は、サンルーフ以外のガラス積層体に比べると、接着剤の種類並びに温度、圧力、時間サイクル及びその他の関連するプロセス条件をカスタマイズするのは好ましくないことが分かった。
【0088】
それどころか、接着剤で開口部を塞ぐ又はほぼ塞ぐように穴に接着剤を流し込む条件を満足する非常に最適な穴の直径、縦横比及び間隔が存在しており、そうすることで、非散乱光が開口部から客室へ通過するとともに、車両内の搭乗者の視点から見たときにより均一な(審美上好ましい)外観が得られることも分かった。」

「【0101】
前記観点から、特定の実施態様例は、1つ以上の開口部を備えるPVモジュールに関することが分かるであろう。場合により、開口部の特徴は、光を透過させて車両の室内に影響を及ぼすと同時に、PVモジュールを組み込んだアセンブリの良好な審美的外観が確立されるように選択及び/又は調整する。さらに特定の実施態様例は、接着剤の性質及び積層プロセス(例えば温度、圧力、時間サイクルなどのようなプロセス条件を包む)に関する制限事項も踏まえており、所望量の光が穿孔を通じてうまく伝搬するのを確立するのに役立つ配置を選択する工程をも伴う。例えば、開口部を選択する場合、接着剤を開口部へ適切に流れ込ませるといった要望に応えるように寸法を調整してよい。そのため、特定の実施態様例は、例えば特定の接着剤及び一連のプロセス条件において積層後の接着剤の断面が実質上均一になる、開口部の形状及び寸法の一部に関する。」

b 上記記載からして、
「太陽電池を供給する工程」において、「予め決められた、……複数のスルーホールを有する太陽電池」を供給する技術的意義は、従来からのプロセス条件を変更することなく、つまり、従来のプロセス条件のままで、スルーホールに気泡が混入しなようにすることにあるもの認められる。

c 一方、引用発明の「自動車用太陽電池の製造方法」は、「(積層材を利用した)積層工程」を備えておらず、仮に、積層材を利用することが周知技術であるとしても、「開口部(の縦横比)」に合わせてプロセス条件を変更することが自然であり、従来からのプロセス条件を変更せずに、その開口部に気泡が混入しない形状を選択することまで、容易に着想し得たとすることはできない。

d してみると、引用発明において、上記<相違点1>に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。

(イ)よって、上記<相違点2>及び上記<相違点3>について検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本願発明2ないし本願発明9について
本願発明2ないし本願発明9の「光起電力(PV)モジュールの製造方法」は、本願発明1の「光起電力(PV)モジュールの製造方法」を、さらに、限定したものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)よって、上記「【理由3】(進歩性要件)」は解消された。

4 当審の判断ついてのまとめ
以上のとおりであるから、「【理由1】(明確性要件)」、「【理由2】(実施可能要件)」及び「【理由3】(進歩性要件)」は、いずれも解消された。

第6 原査定についての判断
1 審判請求時の補正(平成29年10月27日付手続補正)により、補正後の請求項1及び請求項10に係る発明は、「(細長い形状の)スルーホール」は、「積層材に気泡が混入しないように塞ぐことができる縦横比を有する」ものとなった。

2 しかしながら、原査定で引用された引用文献(当審拒絶理由で引用した引用文献と同じ)には、積層材を利用することは記載されておらず、仮に、積層材を採用することが適宜なし得たとしても、その積層工程におけるプロセス条件を変更せずに、気泡が混入しない「(細長い形状の)スルーホールの縦横比」を選択することが容易であるとまではいえない。

3 よって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明9は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-03 
出願番号 特願2015-507097(P2015-507097)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 536- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐竹 政彦河村 麻梨子  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 星野 浩一
野村 伸雄
発明の名称 車両の屋根に用いられる改善された光起電力モジュール及び/又はその製造方法  
代理人 金山 慎太郎  
代理人 折居 章  
代理人 金子 彩子  
代理人 中村 哲平  
代理人 大森 純一  
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