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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01Q
管理番号 1346590
審判番号 不服2014-24729  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-11-15 
確定日 2018-11-20 
事件の表示 特願2010-122652「ゆとり発生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年12月 8日出願公開、特開2011-250257〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年5月28日の出願であって、主な経緯は以下のとおりである。
平成22年 5月28日 出願
平成24年12月28日付け 拒絶理由通知
平成25年 1月21日付け 手続補正書・意見書の提出
平成25年10月30日付け 拒絶理由通知
平成25年11月19日付け 手続補正書・意見書の提出
平成26年 4月16日付け 拒絶理由通知
平成26年 5月 9日付け 意見書の提出
平成26年 8月 7日付け 拒絶査定
平成26年11月15日 審判請求・手続補正
平成27年 3月13日付け 前置報告
平成27年 8月 3日付け 拒絶理由通知
平成27年 9月28日付け 手続補正書・意見書の提出
平成27年12月25日付け 拒絶理由通知(最後)
平成28年 3月 2日付け 手続補正書・意見書の提出
平成28年 4月28日付け 拒絶理由通知
平成28年 7月 5日付け 手続補正書・意見書の提出
平成28年10月 7日付け 拒絶理由通知
平成28年12月12日付け 手続補正書・意見書の提出


第2 本願の特許請求の範囲及び明細書の記載内容
1.本願の特許請求の範囲の記載内容
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年3月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載内容は以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
馬蹄形磁石の磁界の中に、フレミングの左手の法則が適用されるように、電流の流れるアルミニウムの導線を磁石に沿って巻き付け続けて据えると導線に力がはたらき、室内に置くだけで人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる無線通信の多量の電磁波に共振させ、送信された信号波の情報が人間自体にその信号波の情報通りには認識されない、ただの電磁波に変え、復調機能を持つテレビ、ラジオ、パソコン又はスマートフォン(携帯電話)等の家電の音声や画像等を楽しむことで、環境を変えることが出来るゆとり発生装置。」

2.本願の明細書の記載内容
平成26年11月15日、平成27年9月28日付け、平成28年3月2日付け、平成28年7月5日付け、及び平成28年12月12日付け手続補正書により補正された明細書の記載は、以下のとおりである。

「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゆとりを得ることを目的としたものである。
【背景技術】
【0002】
情報化時代の現在、テレビ、ラジオ、パソコン又はスマートフォン(携帯電話)等の家電を使用することで私宅に自然と音として人の目に見え、耳に聞こえるまでの情報を運ぶ電磁波が集まる。
【0003】
それと共に外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波で更に私室が埋め尽くされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】吉川 忠久著 3級・4級アマチュア無線技士試験 株式会社土屋書店 2008
【非特許文献2】山田 宏尚著 デジタル画像処理 株式会社ナツメ社 2006年10月26日発行
【非特許文献3】数研出版編集部著 改訂版視覚でとらえるフォトサイエンス化学図鑑 数研出版株式会社 2007年2月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこでこの発明は外から人が人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波をただの電磁波に変え、好みの環境に変え、ゆとりを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するためには、この発明は次のような技術的手段を講じている。電磁波とは電界と磁界が互いに直交し、一定の速度で伝播する電気的横波でしかないことから、外周から流れてくる人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波も、それがただの波であれば好みの環境に変え、ゆとりを得ることが出来る。
【0007】
大抵電磁波は情報化社会での通信で使うことから、搬送波の高周波に音声信号の低周波が乗った(変調した)高周波で、大抵はそのままでは音として聞くことはできない。
【0008】
また、音声はそのままでは遠くまで届くことはないことから、耳に聞こえる音声になるということは、変調され、増幅し、復調している音声を聞いていることになる。
【0009】
無線通信とは、電波を利用して行うすべての種類の記号・信号・文書・影像・音響または情報の送信・発射または受信をいい、人の声を送信するときの変調にはマイクロフォンを使用することが常であるから、公共放送以外の人の遠隔から人の耳に届く音声はマイクロフォンを使用している人の送信といえ、人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む人にとって感じ取りたくない電磁波はマイクロフォンなみの導線となっていることになり、どこから送信しているのかの特定は無線局を運用する場合においては、無線設備の設置場所・識別信号(呼出符号)・電波の型式および周波数は、免許状に記載されたところによらなければならず、周波数とは、1秒間に交流の繰り返しが何回行われるのかを表すものであり、無線で信号を送ろうとしているならば、周波数で区別されることになるが、判別不明の場合は、ただの電磁波の波に変えることで好みの環境に変わる。
【0010】
人の耳に聞こえる周波数は20ヘルツから20キロヘルツであるから、人の耳に聞こえるマイクロフォン使用の音声の周波数は、直に耳に聞こえていることから20ヘルツから20キロヘルツと考える。
【0011】
無線局で、送受信で用いられるアンテナは、導線の長さを変えて、使用する電波の周波数に最もよく周りの空気を振動させる(共振)ことを考えることから、電波(電磁波の一種)の速さは光(電磁波の一種)の速さと同じ秒速30万キロメートルなので、波長は1.5万メートルから1500万メートルとなるからその波長の長さにあわせた導線の長さを共振するのに要していることで、この発明には共振するまでの導線に対応できる材質と長さを必要とする。共振であるから増幅も目的としている。
【0012】
人が人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波(電波、光を含む)が私宅に届くには上記にあるように高周波と低周波の変調であるが、電磁波であり、電界と磁界が存在し、そのなんらかの材質が飛んできていることになり、その量は可聴、可視ができる程であるから上記のように音でいうならば1.5万メートルから1500万メートルほどの長さ分の量の電磁波が私宅に常に浮遊していることになるが、逆に少しでも電磁波量を減少させることが出来れば電磁波はただの電磁波になり、好みの環境となる。
【0013】
画像はデジタル化でおおよそ1677万色の色の数があり、原色は赤、緑、青の3色が混ざり合い人の目に見える光(電磁波の一種)の波長は約380ナノメートルから780ナノメートル(ナノメートルは100万分の1ミリメートル)の電磁波であり、標準的なパソコン画面の画素は横1024画素×縦768画素の約78万画素で必要なデータ量は78万画素×24ビットの約1887万ビットを要しているから上記同様少しでも電磁波量を減少させることが出来れば電磁波はただの電磁波になり、好みの環境となる。
【0014】
現在、人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波が私宅に届くには無線技術を駆使しているのであるから、画素であろうと走査線用あるいは特定の周波数に合わせればかなり既製の受信機で受信し、電磁波量を減少させることは当然可能であるが、人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波の送信者は数も多いことから、数多くの周波数帯域を要し、同様数の受信機を要することも考えられ、電磁波は電界と磁界が存在している為、受信し続ける時に不具合な環境になることも予想されるので、人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波に対しては平衡を崩す程度に受信機を使用すると良い。
【0015】
画像はフーリエ変換、逆フーリエ変換から曲線の重ね合わせであるから、直線にすることで、人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波による画像は画像とならず、ただの電磁波となり好みの環境に変え、ゆとりを得ることができる。
【0016】
上記のように電磁波には電界と磁界が存在しているから、いかに平衡状態を崩せるかで電磁波による環境を好みに変え、ゆとりを得ることが出来る。そのために共振に必要な導線に対応する量、長さが必要で、この発明の材質には家庭用アルミニウムはくを使用した。
【0017】
アルミニウムは電気をよく通す性質を持った導体の金属で軽くて、表面が負に帯電し、自由電子が多く存在している。
【0018】
好みの太さで細長くしたアルミニウムはくを、馬蹄形磁石の磁界の中に、フレミングの左手の法則が適用されるように、馬蹄形磁石に沿って電流の流れるアルミニウムの導線を巻き付け続けて据えると導線に力がはたらき、アンテナは波長の2倍、3倍、4倍…でも共振し、この導線に高周波電流が流れると、そこで電界や磁界が発生し、人の生活状況の情報収集の為に送信された信号波の情報が、人間自体にその信号波の情報通りには認識されなくなり、復調機能を持つテレビ、ラジオ、パソコン又はスマートフォン(携帯電話)等の家電の音声や画像等を楽しむことで、ゆとりを得ることが出来る。
【発明の効果】
【0019】
本発明品を電気的に接続することなく、室内に置くだけで、必要な情報を運ぶだけの電磁波となり、人の生活状況情報収集の為に注ぎ込まれる電磁波を好みの環境に変え、ゆとりを得ることが出来る。
【0020】
ただし、人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波送信者がこの発明品を使用すると、一旦は自らが安易に送信した分の被害が生ずる恐れがある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の形態は直線螺旋構造の共振量であれば自由である。」


第3 当審の拒絶理由
当審において、平成28年10月7日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。

「【理由1】
本件出願は、明細書の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



1.委任省令違反について
特許請求の範囲に記載された発明に関し、発明の詳細な説明の【0002】?【0005】段落によれば、本願発明は、テレビ、ラジオ等の家電の電磁波と共に、外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波で更に私室が埋め尽くされるため、これをただの電磁波に変え、好みの環境に変え、ゆとりを得ることを課題としていると記載されている。
しかしながら、次の(1)?(3)の理由により、本願発明が解決しようとする課題が理解できない。
(1)「外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波」が、人間自体に直接認識できることを前提としていると解される(例えば【0012】段落に「可視、可聴」である旨示唆されている。)が、技術常識に従えば、人間は電磁波(光を除く)を直接認識できないから、本願発明が解決しようとする課題の前提が理解できない。
(上記に関して、請求人は平成26年5月9日付け意見書において、「電流や電磁波そのものは直接目で見たり耳で聞いたりできないのに、人間が感じるのが現状で、・・・、人間自体では感じない様にする好みの環境で、ゆとりを得る」と述べていることからも、請求人は「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」を人間が感じ取るとしているが、当該事項は電磁波(光を除く)は人間に直接認識されないという技術常識に鑑み理解できない。)
(2)「ただの電磁波」について、特許請求の範囲に「送信された信号波の情報が人間自体にその信号波の情報通りには認識されない、ただの電磁波」と記載されていることから、「ただの電磁波」は人間に認識されないと解釈しうるが、仮に「外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波」と「ただの電磁波」とで人間に認識されるか否かについて差異があるとすれば、それがどのような原理(電磁波のどのような性質)に基づくものであるのか、発明の詳細な説明の記載からは理解できない。
(請求人は、平成25年11月19日付け意見書において、「「ただの電磁波」とは電磁波そのまま。「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」とは高周波と低周波の変調」と述べていることから、「ただの電磁波」とは無変調の電磁波のことを指し、「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」とは低周波により変調された高周波の電磁波を示しているということかもしれないが、仮にそうであったとしても、「無変調の電磁波」と「低周波により変調された高周波の電磁波」とで人間に認識されるか否かについてどのような差異があり、それがどのような原理に基づくのか、発明の詳細な説明の記載からは理解できない。また、仮に、本願装置が「低周波により変調された高周波の電磁波」を「無変調の電磁波」に変えるものであるとすると、楽しむために必要なテレビやラジオなどの電磁波も本願装置によってただの電磁波に変えられてしまい、楽しむことができなくなり、特許請求の範囲の「復調機能を持つテレビ、ラジオ、パソコン又はスマートフォン(携帯電話)等の家電の音声や画像等を楽しむ」との記載と矛盾する。
また、平成27年9月28日付け意見書において「「ただの電磁波」とは、ラジオを例にすると、ラジオのスイッチを入れると音声が聞こえるが、スイッチを切ると音声が聞こえないことから、空中には常にラジオの音声信号の低周波と高周波が漂い、人間自体には感じない状況で、本発明品の場合は、信号波の情報が、減少された電磁波あるいは減少されて電磁波がなくなって、人間自体にその信号波の情報通りには認識されなくなる状況であること」と述べているが、技術的に理解できない。)
(3)上記(1)(2)が理解できないため、「好みの環境に変え、ゆとりを得ること」の「好みの環境」とは、どのような環境で、どのようにして「ゆとりを得ること」ができるのか理解できない。
更に、
(4)人間が直接認識できる電磁波を認識できない電磁波に変えるという本件発明の課題に対応する解決手段も不明であるから、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が、発明の詳細な説明に記載されているということはできない。

2.実施可能要件違反について
本願発明の課題に対する解決手段は、特許請求の範囲の記載によれば「馬蹄形磁石の磁界の中に、フレミングの左手の法則が適用されるように、電流の流れるアルミニウムの導線を磁石に沿って巻き付け続けて据え」、それにより「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる無線通信の多量の電磁波に共振させ、・・・ただの電磁波に変える」ものである。しかしながら、
(1)本願発明における「共振」とはどのような物理的現象で、どのような原理に基づいて生じるのか、発明の詳細な説明の記載、及び、技術常識を考慮しても明らかではない(後述するように、請求人は「共振は周りの空気を振動させること」と述べている)。仮に「共振」が電磁波の電気的共振である場合、【0011】段落を参照すると、巻き付けるアルミニウムの導線の長さは1.5万メートルから1500万メートルの波長に合わせたものとなり、これは一般的に搬送波として使われる高周波の波長とは異なり、非常に長いものであるから、「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」に電気的に共振させることは技術常識に反することになる。さらに、特許請求の範囲の「復調機能を持つテレビ、ラジオ、パソコン又はスマートフォン(携帯電話)等の家電の音声や画像等を楽しむことで」の記載からすると、テレビ、ラジオ等の電磁波は「共振」しないと解し得るが、「馬蹄形磁石の磁界の中に、フレミングの左手の法則が適用されるように、電流の流れるアルミニウムの導線を磁石に沿って巻き付け続けて据え」る構成によって、ラジオやテレビ等の電磁波に係る特定の波長には共振せず、「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」の「数多くの周波数帯域」の波長のみに共振する合理的な理由も不明である。
(2)本願発明の課題に対する解決手段は、「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」を「ただの電磁波」に「変える」ものといえるが、上述してきたように、そもそもこれらの電磁波が、それぞれどのような物理的性質を有する電磁波であるのか、明細書の記載及び技術常識を考慮しても当業者がわかるように記載されていない。
(3)本願発明の課題に対する解決手段は、「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」を「ただの電磁波」に「変える」ものであるが、どのようして「ただの電磁波」に「変える」ことができるのか、明細書の記載及び技術常識を考慮しても理解できない。例えば、【0018】段落に「・・・アルミニウムはくを、馬蹄形磁石の磁界の中に、フレミングの左手の法則が適用されるように、馬蹄形磁石に沿って電流の流れるアルミニウムの導線を巻き付け続けて据えると導線に力がはたらき、・・・共振し、この導線に高周波電流が流れると、そこで電界や磁界が発生し」と記載されているが、当該記載によっても「ただの電磁波」にどのようにして変えることができるのか技術常識を参酌しても不明である。また、【0012】及び【0014】段落に、人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波に対して「平衡(状態)を崩す」と良いと記載されているが、「平衡を崩す」とは具体的に何をどうすることなのか技術常識を踏まえてもわかるように記載されておらず不明である。
よって、発明の詳細な説明は実施可能要件を満たさない。
なお、請求人は「この場合の「共振」は周りの空気を振動させること」(平成25年11月19日付け意見書、及び明細書【0011】段落。)と述べているが、技術常識に鑑み、電磁波の共振は空気を振動させるものではない。また、請求人は審判請求書において、「本発明品には復調機能がないから、・・・共振しても、人間自体に感じ取ることのできない「ただの電磁波」となると述べているが、復調機能がないことが、なぜ「ただの電磁波」に変わる理由となるのか不明である。


【理由2】
この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。


上記【理由1】において述べたように、請求項1に記載された本願発明は、その技術内容が不明確であり、課題を解決することが可能であるとは考えられないから、発明該当性の要件に違反するものと認められる。 」


第4 判断
1.委任省令違反について(【理由1】)
特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題や、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、明細書の発明の詳細な説明に記載することが規定されている。
本願の発明の詳細な説明の【0002】?【0005】段落によれば、本願発明は、テレビ、ラジオ等の家電を使用することにより集まる電磁波と共に、外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波で更に私室が埋め尽くされるため、これをただの電磁波に変え、好みの環境に変え、ゆとりを得ることを課題としていると記載されている。
しかしながら、当審拒絶理由の「1.委任省令違反について」の項において指摘したように、(1)「外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波」が、人間自体に直接認識できることを前提としていると解されるが、これは技術常識に反するから、本願発明が解決しようとする課題の前提が理解できず、また、(2)「ただの電磁波」は人間に認識されないものと解釈できるが、そうした場合「外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波」と「ただの電磁波」とで人間に認識されるか否かについて差異があるとすれば、それがどのような原理に基づくものであるのか、発明の詳細な説明の記載から理解することができない。(3)これら(1)(2)が理解できないため、「好みの環境」がどのような環境であり、どのようにして「ゆとりを得ること」ができるのか理解することができない。よって、本願発明が解決する課題が理解できない。
また、人間が直接認識できる電磁波を認識できない電磁波に変えるという本願発明の課題に対応する解決手段も不明である。
したがって、発明が解決しようとする課題や、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」が、理解できるように記載されていないから、発明の詳細な説明の記載は、特許法36条4項1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則24条の2)で定めるところにより記載されたものとはいえない。
なお、請求人は、平成28年12月12日付け意見書において、
「・・・可聴・可視は、光、音などを感じ取る感覚器官で外界の様子を知る働きからくるもので、【0010】【0013】より可聴・可視できる電磁波量は既知であり、【0012】より人が人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込む電磁波(電波、光を含む)が私宅に届いた量が【0002】【0003】より可聴・可視できる位になっているという状況からゆとりを得ることが目的で、「ただの電磁波」はラジオの例でいえば、ラジオのスイッチを切ったままの状態で、周波数とは1秒間に交流の繰り返しが何回行われるのかを表すものだから、【0018】の「この導線に高周波電流が流れると、そこで電界や磁界が発生」ということは、交流の周期、周波数と一致することになり、平衡状態とは「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」でもあり、本願発明品によって、波長の同調、共振することで平衡が崩れ、「ただの電磁波」が【0007】【0008】より復調機能によって、テレビ、ラジオ等の家電の音声や画像には戻りやすい。そのことがゆとりを得ることにつながる。」と述べているが、当該主張を参酌しても、上記指摘した点は依然として理解することができない。


2.実施可能要件違反について(【理由1】)
発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載することを要する。
しかしながら、当審拒絶理由の「2.実施可能要件違反について」の項において指摘したとおり、発明の詳細な説明の記載からは「馬蹄形磁石の磁界の中に、フレミングの左手の法則が適用されるように、電流の流れるアルミニウムの導線を磁石に沿って巻き付け続けて据え」ただけで、どのようにして「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」の「数多くの周波数帯域」の波長のみに共振させられるのか、理解できる程度に記載されているとはいえない。
また、「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」及び「ただの電磁波」とは、そもそもどのような電磁波であり、上述した構成により「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」を「ただの電磁波」にどのように「変える」ことができるのか、技術常識を考慮しても理解できる程度に記載されていない。
明細書の【0018】段落には、「好みの太さで細長くしたアルミニウムはくを、馬蹄形磁石の磁界の中に、フレミングの左手の法則が適用されるように、馬蹄形磁石に沿って電流の流れるアルミニウムの導線を巻き付け続けて据えると導線に力がはたらき、アンテナは波長の2倍、3倍、4倍…でも共振し、この導線に高周波電流が流れると、そこで電界や磁界が発生し、人の生活状況の情報収集の為に送信された信号波の情報が、人間自体にその信号波の情報通りには認識されなくなり・・・」と記載されているが、当該記載を参照してもどのようにして電界や磁界が発生し、どのように人の生活状況の情報収集の為に送信された信号波の情報が、人間自体にその信号波の情報通りには認識されなくなるのか明細書の記載から明らかとは言えない。
したがって、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第6項第4号実施可能要件に規定する要件を満たしていない。
なお、請求人は平成28年12月12日付け意見書において、
「また、【0004】【0011】よりテレビ、ラジオで目的の周波数に合わせることを同調、共振といい、音とは空気を伝わって耳にきこえるもののひびきだから、その波長の同調、その音の大小のぐあいを同じにすることも同調、共振という。
アンテナは波長の2、3、4倍…でも共振することから、1.5万メートルから1500万メートル分もの導線があれば、多量の電磁波の波長に共振することはできる。」
と述べているが、当該主張では、ラジオやテレビ等の電磁波に係る特定の波長には共振せず、「人の生活状況の情報収集の為に注ぎ込まれる多量の電磁波」の「数多くの周波数帯域」の波長のみに共振する理由は依然として不明であり、採用することはできない。


3.発明該当性について(【理由2】)
上記「1.委任省令違反について」及び「2.実施可能要件違反について」で述べたように、請求項1に記載された本願発明は、その技術内容が不明確であり、開示された手段によって、「テレビ、ラジオ等の家電を使用することにより集まる電磁波と共に、外部から個人の生活状況を知ろうとする目的で遠隔から情報収集が可能で情報を運ぶことの出来る電磁波で更に私室が埋め尽くされるため、これをただの電磁波に変え、好みの環境に変え、ゆとりを得る」という課題を解決することが可能であるとは考えられない。
したがって、本願発明は、特許法第29条第1項柱書(発明該当性)の要件に違反するものである。


第5 むすび
以上のとおり、この出願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさず、また特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができないものである。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-04-12 
結審通知日 2017-04-18 
審決日 2017-05-01 
出願番号 特願2010-122652(P2010-122652)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (H01Q)
P 1 8・ 14- WZ (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤穂 美香富澤 哲生  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 山中 実
山本 章裕
発明の名称 ゆとり発生装置  
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