• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1346631
審判番号 不服2017-10301  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-07-11 
確定日 2018-11-28 
事件の表示 特願2016-550462「ワイヤボンディングされたマルチダイスタックを有する集積回路パッケージ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月31日国際公開、WO2016/048363、平成28年11月10日国内公表、特表2016-535462〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成26年9月26日を国際出願日とする特許出願であって、平成28年10月13日付け拒絶理由通知に対して平成29年1月17日付けで手続補正がなされたが、同年3月6日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年7月11日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。


第2 平成29年7月11日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成29年7月11日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
平成29年7月11日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであり、請求項1については、
本件補正前に、
「【請求項1】
第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第1のダイであって、前記第1の封止層の第1の側部に配置される第1の複数のダイレベル相互接続構造を有する、第1のダイ;
前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記第1の封止層の前記第1の側部と前記第1の側部と反対側に配置される前記第1の封止層の第2の側部との間に電気信号を送るように構成される、複数の電気ルーティング機能部;及び
前記第1の封止層の前記第2の側部に配置され、第2の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第2のダイであって、前記第2のダイは、第2の複数のダイレベル相互接続構造を有し、前記第2の複数の相互接続構造は、ボンディングワイヤによって少なくとも前記複数の電気ルーティング機能部のサブセットと電気的に結合される、第2のダイ;を有し、
前記第1の複数のダイレベル相互接続構造は、前記第1の側部側の前記第1のダイの側部に設けられ、
前記第1のダイ及び前記複数の電気ルーティング機能部は、前記第1のダイの前記側部と前記第2の側部側との間で、前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる、
集積回路(IC)パッケージ。」
とあったところを、

「【請求項1】
第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第1のダイであって、前記第1の封止層の第1の側部に配置される第1の複数のダイレベル相互接続構造を有する、第1のダイ;
前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記第1の封止層の前記第1の側部と前記第1の側部と反対側に配置される前記第1の封止層の第2の側部との間に電気信号を送るように構成される、複数の電気ルーティング機能部;及び
前記第1の封止層の前記第2の側部に配置され、第2の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第2のダイであって、前記第2のダイは、第2の複数のダイレベル相互接続構造を有し、前記第2の複数の相互接続構造は、ボンディングワイヤによって少なくとも前記複数の電気ルーティング機能部のサブセットと電気的に結合される、第2のダイ;を有し、
前記第1の複数のダイレベル相互接続構造は、前記第1の側部側の前記第1のダイの側部に設けられ、
前記第1のダイ及び前記複数の電気ルーティング機能部は、前記第1のダイの前記側部と前記第2の側部側との間で、前記第1の側部側の前記第1のダイの前記側部のみ、並びに、前記第2の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部の一部及び前記第1の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部のみが露出するように、前記第1の封止層に部分的に埋め込まれる、
集積回路(IC)パッケージ。」
とするものである。なお、下線は補正箇所を示す。

2 補正の適否
審判請求人は、本件補正における請求項1の補正は「図1、3、5-7等」の記載に基づいて補正した旨を主張している(平成29年7月11日付け審判請求書の第2頁参照)。
確かに、指摘された図を参照すると(特に、図3の上から4番目のブロック208について説明した図を参照。)、「第1の側部側の第1のダイの側部」と「第2の側部側の複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部」とが露出するように第1の封止層に埋め込まれていることは確認できる。
しかしながら、複数の電気ルーティング機能部は、そもそも第1の封止層と別部材である絶縁材料にビアを形成してなるものであって、第2の側部側にしか第1の封止層は存在しないから、「第1の側部側の複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部」が露出するように第1の封止層に埋め込まれたものではない。なお、本願の発明の詳細な説明にも、その旨の記載や示唆は認められない。
よって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に、「前記第1の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部のみが露出するように、前記第1の封止層に部分的に埋め込まれる」ことが記載されているとはいえない。また、本願出願時の技術常識に照らしても、当初明細書等に記載されているのと同然であるということもできない。
したがって、本件補正における請求項1の補正は、当初明細書等に記載された事項、又は当初明細書等の記載から自明な事項であるとはいえないから、本件補正は、当初明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術事項を導入しないものであるとはいえず、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしておらず、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条1項の規定により却下すべきものである。

3 予備的判断(独立特許要件)
仮に、上記「2」で判断した事項が新たな技術事項を導入しないものであるとすると、本件補正における請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、「前記第1の側部側の前記第1のダイの前記側部のみ」露出するように第1の封止層に埋め込まれたこと、および「前記第2の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部の一部及び前記第1の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部のみ」露出するように第1の封止層に埋め込まれたこと、を限定した補正事項を含むことになるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下検討しておく。

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許出願公開第2013/0075926号明細書(2013年(平成25年)3月28日公開。以下「引用文献」という。)には、「INTEGRATED CIRCUIT PACKAGING SYSTEM WITH PACKAGE STACKING AND METHOD OF MANUFACTURE THEREOF」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、仮和訳および該和訳の下線は、当審で付与した。

ア.[0037] Referring now to FIG. 1 , therein is shown a cross-sectional view of an integrated circuit packaging system 100 taken along a line 1 - 1 of FIG. 2 in a first embodiment of the present invention. The integrated circuit packaging system 100 can include a base package 102 , a system interconnect 104 , a stack device 105 , and a top integrated circuit package 106 .
[0038] The base package 102 can include a base substrate 108 , a base integrated circuit 110 , and a base encapsulation 134 for providing structural support and environmental protection for the package.
(図1を参照すると、本発明の第1の実施形態における図2の線1-1に沿って切断した集積回路パッケージシステム100の断面図が示されている。集積回路パッケージングシステム100は、ベースパッケージ102、システム相互接続104、スタック装置105、及びトップ集積回路パッケージ106を含むことができる。
ベースパッケージ102は、ベース基板108と、ベース集積回路110と、パッケージのための構造的支持及び環境からの保護を提供するために、ベース封止材134を含むことができる。)

イ.[0040] The base integrated circuit 110 is defined as an integrated circuit having active circuitry fabricated thereon. The base integrated circuit 110 can be mounted on the base substrate 108. For illustrative purposes, the base integrated circuit 110 is depicted as a flip-chip although the base integrated circuit 110 can also be a wire-bonded device. The base integrated circuit 110 can have a base active side 112 with active circuitry fabricated thereon and a base inactive side 114 opposite to the base active side 112.
(ベース集積回路110は、上に能動回路を有する集積回路として定義される。例示的に、ベース集積回路110は、フリップチップとして示されているが、ワイヤボンディングされたデバイスであってもよい。ベース集積回路110は、能動回路が形成されたベースアクティブ側112と、それに対向するベース非アクティブ側114とを有する。)

ウ.[0043] The base package 102 can include a base chip connector 116. The base chip connector 116 is defined as conductive structure for attaching and providing an electrical connection between an integrated circuit and a substrate. As an example, the base chip connector 116 can be solder balls, solder pillars, conductive bumps, or bond wire.
(ベースパッケージ102は、ベースチップコネクタ116を含むことができる。チップコネクタ116は、集積回路と基板との間の電気的接続を行うための導電性構造体と定義される。一例として、ベースチップコネクタ116は、はんだボール、はんだ柱、バンプ、又はボンドワイヤとすることができる。)

エ.[0045] The molded under-fill 118 can provide mechanical and environmental protection for the base package 102. The molded under-fill 118 can be formed on and the base substrate 108 and can encapsulate the base active side 112 of the base integrated circuit 110, the vertical sidewalls of the base integrated circuit 110, the base inactive side 114, and the base chip connector 116.
[0046] The molded under-fill 118 can include an under-fill top side 120, which is a side of the molded under-fill 118 opposite to the base substrate 108. Other components, encapsulations, and semiconductor devices can be attached to the under-fill top side 120.
[0047] The base package 102 can include a substrate contact extender 122, which is defined as a vertical electrical connector. The substrate contact extender 122 can be formed completely through the molded under-fill 118 for providing an electrical connection between the substrate component contact 111 of the base substrate 108 and the under-fill top side 120 of the molded under-fill 118.
(アンダーフィル118は、ベースパッケージ102に対して機械的及び環境からの保護を提供することができる。アンダーフィル118は、ベース基板108上に形成することができ、ベース集積回路110のベースアクティブ側112、側壁、ベース非アクティブ側114、及びベースチップコネクタ116を封入することができる。
アンダーフィル118は、ベース基板108とは反対側の上面120を含むことができる。他のコンポーネント、封止材及び半導体装置は、アンダーフィル上面120に取り付けることができる。
ベースパッケージ102は、垂直電気コネクタと定義される基板接点122を含むことができる。基板接点122は、ベース基板108の基板接点111と、アンダーフィル118の上面120との間の電気的接続を提供するために、アンダーフィル118を完全に貫通して形成することができる。)

オ.[0050] The stack device 105 is defined as an integrated circuit die or integrated circuit package that is mounted over the molded under-fill 118 and electrically coupled to the substrate contact extender 122. For example, the stack device 105 can be an integrated circuit or a discrete integrated circuit package. The stack device 105 can include a stack top side 124 facing opposite to the base substrate 108. Components, interconnects, substrates, and devices can be mounted on the stack top side 124.
(スタック装置105は、アンダーフィル118の上に取り付けられ、基板接点122に電気的に結合された集積回路ダイまたは集積回路パッケージとして定義される。例えば、スタック装置105は、集積回路又は別の集積回路パッケージとすることができる。スタック装置105は、ベース基板108と反対側の積層部上面124を含むことができる。構成要素、相互接続、基板、及びデバイスは、積層部上面124上に取り付けることができる。)

カ.[0056] The base package 102 can include the coupling connector 132, which is defined as a conductive structure for providing an electrical connection. The coupling connector 132 can provide an electrical connection between the substrate contact extender 122 and the stack device 105. The coupling connector 132 can be a wire bond although the coupling connector 132 can also be solder balls, solder dots, solder bumps, solder balls, or other conductive structures.
(ベースパッケージ102は、電気的接続を行うための導電性構造体として定義される接続コネクタ132を含むことができる。接続コネクタ132は、基板接点122とスタック装置105との間の電気的接続を提供することができる。そして、接続コネクタ132は、ワイヤボンドであってもよいが、はんだボール、はんだドット、はんだバンプ、又は他の導電性構造体とすることもできる。)

キ.[0058] The base package 102 can include a base encapsulation 134. The base encapsulation 134 is defined as a cover for hermetically sealing components from the environment. The base encapsulation 134 can include an epoxy molding compound (EMC), polymide compound, or a wire-in-film (WIF) encapsulation. The base encapsulation 134 is different from the molded under-fill 118 because the base encapsulation 134 is not applied as a liquid at room temperature and then cured to form a solid. The base encapsulation 134 can encapsulate and be on the under-fill top side 120 of the molded under-fill 118, the coupling connector 132, the stack bond pad 130, and a portion of the stack top side 124 where the stack bond pad 130 is located.
(ベースパッケージ102は、ベース封止材134を含むことができる。ベース封止材134は、環境から構成要素を機密封止するためのカバーとして定義される。ベース封止材134は、エポキシモールディングコンパウンド(EMC)、ポリイミドコンパウンド、またはワイヤインフィルム(WIF)封止材を含むことができる。ベース封止材134は、室温で液体として適用し、次いで硬化して固体を形成するものではないので、アンダーフィル118とは異なっている。ベース封止材134は、アンダーフィル118の上面120、接続コネクタ132、スタック装置の上部のスタックボンドパッド130を封止することができる。)

上記アないしキ、および図1の記載から、引用文献の集積回路パッケージには以下の事項が記載されている。
上記アによれば、集積回路パッケージングシステム100は、ベースパッケージ102とスタック装置105を含むものである。そして、ベースパッケージ102は、ベース集積回路110とベース封止材134を含むものである。
上記イないしエによれば、アンダーフィル118は、ベース集積回路110のベースアクティブ側112、側壁、ベース非アクティブ側114、およびベース集積回路110とベース基板108との間の電気的接続を行うベースチップコネクタ116を封入するものである。なお、アンダーフィル118は、上記のとおりベース集積回路110の周囲に設けられているから(合わせて図1を参照。)、ベースパッケージ102に含まれるものである。
上記エによれば、基板接点122は、ベース基板108の基板接点111と、アンダーフィル118の上面120との間の電気的接続を提供するために、アンダーフィル118を完全に貫通して形成するものである。
上記オによれば、スタック装置105は、アンダーフィル118の上に取り付けられ、基板接点122に電気的に接続されたものである。
上記カによれば、ベースパッケージ102は、接続コネクタ132を含むものである。そして、接続コネクタ132は、基板接点122とスタック装置105との間の電気的接続をするワイヤボンドである。
上記キによれば、ベースパッケージ102は、ベース封止材134を含むものである。そして、ベース封止材134は、アンダーフィル118の上面120、接続コネクタ132、スタック装置の上部のスタックボンドパッド130を封止するものである。
以上のとおり、集積回路パッケージングシステム100は、ベースパッケージ102の構成要素を含むから、整理すると、「ベース集積回路110、アンダーフィル118、基板接点122、スタック装置105、接続コネクタ132、ベース封止材134」を含むものである。

そうすると、上記摘示事項、図1に記載された実施形態を勘案すると、引用文献の「集積回路パッケージングシステム」には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「ベース集積回路110、
ベース集積回路110とベース基板108との間の電気的接続を行うベースチップコネクタ116、
ベース集積回路110のベースアクティブ側112、側壁、ベース非アクティブ側114、およびベースチップコネクタ116を封入するアンダーフィル118、
ベース基板108の基板接点111と、アンダーフィル118の上面120との間の電気的接続を提供するために、アンダーフィル118を完全に貫通した基板接点122、
アンダーフィル118の上に取り付けられ、基板接点122に電気的に接続されたスタック装置105、
基板接点122とスタック装置105との間の電気的接続をするワイヤボンドである接続コネクタ132、
アンダーフィル118の上面120、接続コネクタ132、スタック装置の上部のスタックボンドパッド130を封止するベース封止材134、
を含む集積回路パッケージングシステム100。」

(2)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

a.本願補正発明の「第1の複数のダイレベル相互接続構造」は、第1のダイと他の構成要素とを電気的に接続するものと認められるところ、具体的な構成は「第1のダイの側部」に設けたとしているだけで、ダイと面一にあるのか、ダイから突出しているのかは何も特定されていない。そうすると、引用発明の「ベースチップコネクタ116」は、ベース集積回路110と他の構成要素とを電気的に接続するものであって、ベース集積回路110の下面(側部)に設けられているから、本願補正発明の「第1の複数のダイレベル相互接続構造」に相当する。
そして、本願補正発明の「第1のダイ」は「第1の複数のダイレベル相互接続構造」を一構成要素としているから、引用発明の「ベース集積回路110」および「ベース集積回路110とベース基板108との間の電気的接続を行うベースチップコネクタ116」は、本願補正発明の「第1のダイ」に相当する。
また、本願補正発明の「第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第1のダイ」とは、第1の封止層に第1のダイが一部分以上埋め込まれていれば足りるから、ベース集積回路110のベースアクティブ側112、側壁およびベース非アクティブ側114を少なくとも封入する引用発明の「アンダーフィル118」は、本願補正発明の「第1の封止層」に相当する。
更に、引用発明の「ベースチップコネクタ116」は、その一部が電気的接続のためにアンダーフィル118から露出することは自明であるから(引用文献の図1も合わせて参照。)、本願補正発明の「第1の封止層の第1の側部に配置される」構成を備えたものである。
よって、引用発明の「ベース集積回路110」、「ベース集積回路110とベース基板108との間の電気的接続を行うベースチップコネクタ116」および「ベース集積回路110のベースアクティブ側112、側壁、ベース非アクティブ側114、およびベースチップコネクタ116を封入するアンダーフィル118」は、本願補正発明の「第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第1のダイであって、前記第1の封止層の第1の側部に配置される第1の複数のダイレベル相互接続構造を有する、第1のダイ」、および「前記第1の複数のダイレベル相互接続構造は、前記第1の側部側の前記第1のダイの側部に設けられ」に相当する構成を備えている。

b.引用発明の「ベース基板108の基板接点111」の位置する部分は、アンダーフィルの下面に相当するから、本願補正発明の「第1の封止層の第1の側部」に相当する。また、引用発明の「アンダーフィル118の上面120」は、本願補正発明の「第1の封止層の第2の側部」に相当する。
そして、引用発明の「基板接点122」は、複数形成されており(引用文献の図2の断面図である図1を参照すると、ベース集積回路110の両端に形成されているので、少なくとも2つ以上形成されている。)、アンダーフィル118の下面側と上面側とを電気的に接続するものであって、当然に基板接点の下面と上面はアンダーフィルから露出するものであるから、本願補正発明の「前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれ」た「複数の電気ルーティング機能部」に相当する。
よって、引用発明の「ベース基板108の基板接点111と、アンダーフィル118の上面120との間の電気的接続を提供するために、アンダーフィル118を完全に貫通した基板接点122」は、本願補正発明の「前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記第1の封止層の前記第1の側部と前記第1の側部と反対側に配置される前記第1の封止層の第2の側部との間に電気信号を送るように構成される、複数の電気ルーティング機能部」に相当する構成を備えている。

c.引用発明の「ベース基板108の基板接点111」の位置する部分は、電気的接続をするベースチップコネクタ116も位置する部分であるから(引用文献の図1も合わせて参照。)、本願補正発明の「第1のダイの側部」といえる。
そして、引用発明の「基板接点122」は、アンダーフィル118を完全に貫通するから、下面および上面はアンダーフィルから「少なくとも」露出したものであり(また、電気的な接続を行う観点から露出されるのは自明。)、本願補正発明の「前記第2の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部の一部及び前記第1の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部のみが露出する」構成を備えているといえる。
よって、引用発明の「ベース集積回路110とベース基板108との間の電気的接続を行うベースチップコネクタ116」および「ベース基板108の基板接点111と、アンダーフィル118の上面120との間の電気的接続を提供するために、アンダーフィル118を完全に貫通した基板接点122」は、本願補正発明の「前記第1のダイ及び前記複数の電気ルーティング機能部は、前記第1のダイの前記側部と前記第2の側部側との間で、前記第2の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部の一部及び前記第1の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部のみが露出するように、前記第1の封止層に部分的に埋め込まれる」に相当する構成を備えている。
但し、第1封止層に埋め込まれる第1のダイが、本願補正発明は「前記第1の側部側の前記第1のダイの前記側部のみ」が露出するのに対し、引用発明はその旨の具体的な特定がされていない点で一応相違する。

d.引用発明の「スタック装置105」は、アンダーフィル118の上に取り付けられているから、本願補正発明の「前記第1の封止層の前記第2の側部に配置され」た「第2のダイ」に相当する。そして、引用発明の「スタック装置の上部のスタックボンドパッド130」は、本願補正発明の「第2の複数のダイレベル相互接続構造」に相当する。
また、引用発明の「接続コネクタ132」は、基板接点122とスタック装置105(スタックボンドパッド130)とを電気的に接続するワイヤボンドであるから、本願補正発明の「ボンディングワイヤ」に相当する。
更に、引用発明の「ベース封止材134」は、アンダーフィル118の上面120にあって、スタック装置の上部の(接続コネクタ132と接続された)スタックボンドパッド130を封止するものであるから、本願補正発明の「第2の封止層」に相当する。
よって、引用発明の「アンダーフィル118の上に取り付けられ、基板接点122に電気的に接続されたスタック装置105」、「基板接点122とスタック装置105との間の電気的接続をするワイヤボンドである接続コネクタ132」および「アンダーフィル118の上面120、接続コネクタ132、スタック装置の上部のスタックボンドパッド130を封止するベース封止材134」は、本願補正発明の「前記第1の封止層の前記第2の側部に配置され、第2の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第2のダイであって、前記第2のダイは、第2の複数のダイレベル相互接続構造を有し、前記第2の複数の相互接続構造は、ボンディングワイヤによって少なくとも前記複数の電気ルーティング機能部のサブセットと電気的に結合される、第2のダイ」に相当する構成を備えている。

e.引用発明の「集積回路パッケージングシステム100」は、上記aないしdに記載したとおり、本願補正発明の構成要素を備えているから、本願補正発明の「集積回路(IC)パッケージ」に相当する構成を備えている。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第1のダイであって、前記第1の封止層の第1の側部に配置される第1の複数のダイレベル相互接続構造を有する、第1のダイ;
前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記第1の封止層の前記第1の側部と前記第1の側部と反対側に配置される前記第1の封止層の第2の側部との間に電気信号を送るように構成される、複数の電気ルーティング機能部;及び
前記第1の封止層の前記第2の側部に配置され、第2の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第2のダイであって、前記第2のダイは、第2の複数のダイレベル相互接続構造を有し、前記第2の複数の相互接続構造は、ボンディングワイヤによって少なくとも前記複数の電気ルーティング機能部のサブセットと電気的に結合される、第2のダイ;を有し、
前記第1の複数のダイレベル相互接続構造は、前記第1の側部側の前記第1のダイの側部に設けられ、
前記第1のダイ及び前記複数の電気ルーティング機能部は、前記第1のダイの前記側部と前記第2の側部側との間で、前記第2の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部の一部及び前記第1の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部のみが露出するように、前記第1の封止層に部分的に埋め込まれる、
集積回路(IC)パッケージ。」

<相違点>
第1封止層に埋め込まれる第1のダイが、本願補正発明は「前記第1の側部側の前記第1のダイの前記側部のみ」が露出するのに対し、引用発明はその旨の具体的な特定がされていない

上記相違点について判断する。
まず、本願補正発明の「前記第1のダイの前記側部」の解釈であるが、「側部全て」とは特定されていないので、第1のダイの「側部の一部」であっても足りるものと認められる。
上記aおよびcで判断したように、引用発明の「ベースチップコネクタ116」(本願補正発明の「第1のダイレベル相互接続構造」に相当。)は、ベース集積回路110(本願補正発明の「第1のダイ」に相当。)の一構成要素であるところ、ベース基板108等と電気的な接続を行うためにアンダーフィル118(本願補正発明の「第1の封止層」に相当。)から少なくとも露出しているものである。そうすると、引用発明は、ベース集積回路110がアンダーフィル118から露出しているといえ、上記相違点の構成を備えているものである。
よって、上記相違点は実質的な相違とはいえず、本願補正発明は、引用発明と実質的に同一である。

なお仮に、本願補正発明の「前記第1のダイの前記側部」が、第1のダイの「側部全て」とした場合の判断を一応追記する。
引用発明の「ベース集積回路110」の下面側全てがアンダーフィル118から露出されていないので、上記相違点のとおり、本願補正発明と引用発明とは相違する。
しかしながら、上記の相違は、ダイから突出した電気的接続手段を備えたダイを選択するか、下面と面一に設けられた電気的接続手段を備えたダイを選択するかであるところ、後者のダイを選択すること、即ち、封止樹脂からダイの側部全てを露出させることは、例えば特開2010-219121号公報(従来の技術を説明した段落【0004】?【0006】、図1を参照。また、図4、図7および図18も参照。)に記載されているように周知の技術事項である。
よって、引用発明の「ベース集積回路110」および「ベースチップコネクタ116」の構成に代えて周知の技術事項を採用して相違点の構成にすることは、当業者が容易になし得た事項である。

したがって、本願補正発明は、引用発明と実質同一であるか、引用発明および周知の技術事項により当業者が容易になし得たものであるから、 特許法第29条第1項3号に該当し、または同条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正の却下の決定についてのむすび
上記2のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条1項の規定により却下すべきものである。
仮に、本件補正における請求項1についての補正が、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たし、かつ特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項を目的とするものであったとしても、上記3のとおり、本件補正における請求項1についての補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
平成29年7月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし21に係る発明は、平成29年1月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された事項により特定されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「【請求項1】
第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第1のダイであって、前記第1の封止層の第1の側部に配置される第1の複数のダイレベル相互接続構造を有する、第1のダイ;
前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれ、前記第1の封止層の前記第1の側部と前記第1の側部と反対側に配置される前記第1の封止層の第2の側部との間に電気信号を送るように構成される、複数の電気ルーティング機能部;及び
前記第1の封止層の前記第2の側部に配置され、第2の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる第2のダイであって、前記第2のダイは、第2の複数のダイレベル相互接続構造を有し、前記第2の複数の相互接続構造は、ボンディングワイヤによって少なくとも前記複数の電気ルーティング機能部のサブセットと電気的に結合される、第2のダイ;を有し、
前記第1の複数のダイレベル相互接続構造は、前記第1の側部側の前記第1のダイの側部に設けられ、
前記第1のダイ及び前記複数の電気ルーティング機能部は、前記第1のダイの前記側部と前記第2の側部側との間で、前記第1の封止層に少なくとも部分的に埋め込まれる、
集積回路(IC)パッケージ。」

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献の記載事項は、上記「第2 [理由]3(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 [理由]3(2)」で検討した本願補正発明の「前記第1の側部側の前記第1のダイの前記側部のみ」露出するように第1の封止層に埋め込まれたこと(上記相違点に対応。)、および「前記第2の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部の一部及び前記第1の側部側の前記複数の電気ルーティング機能部のそれぞれの側部のみ」露出するように第1の封止層に埋め込まれたこと、を削除したものである。
そうすると、本願発明の特定事項は、上記「第2 [理由]3(2)」に記載したとおり、引用文献に記載された発明と全て一致し相違する点はないので、引用文献に記載された発明と実質同一である。

4 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-06-26 
結審通知日 2018-07-03 
審決日 2018-07-18 
出願番号 特願2016-550462(P2016-550462)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 561- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋山 直人  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 関谷 隆一
酒井 朋広
発明の名称 ワイヤボンディングされたマルチダイスタックを有する集積回路パッケージ  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ