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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1346673 |
審判番号 | 不服2018-6933 |
総通号数 | 229 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-01-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-05-22 |
確定日 | 2018-11-26 |
事件の表示 | 特願2017-224391「基板加工装置及び基板加工方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開,特開2018- 46291〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成22年11月16日に出願された特願2010-256217号の一部を平成28年4月26日に新たな特許出願とした特願2016-087866号の一部を平成28年11月14日に新たな特許出願とした特願2016-221841号の一部を平成29年2月21日に新たな特許出願とした特願2017-030265号の一部を平成29年11月22日に新たな特許出願とした特願2017-224391号であり,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。 平成29年12月18日:上申書 平成29年12月28日:手続補正書 平成30年 1月10日:拒絶理由通知(起案日) 平成30年 2月13日:意見書 平成30年 2月21日:拒絶査定(起案日) 平成30年 5月22日:審判請求 平成30年 6月13日:拒絶理由通知(起案日) 平成30年 7月 6日:意見書 平成30年 7月 6日:手続補正書(以下,この手続補正書による手続補正を「本件補正」という。) 第2 本願発明 本件補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に係る発明(以下「本願発明1」及び「本願発明2」という。また,これらを併せて「本願発明」ということがある。)は,以下のとおりである。 「【請求項1】 切断ラインに沿って内部にレーザ改質領域が形成された基板の略全面を真空吸着させるチャックに保持した状態で所定角度ごとに回転するインデックステーブルを備え, 前記インデックステーブルは,前記基板を,前記チャックにロードするロード位置と,前記基板を研削して前記レーザ改質領域を除去するレーザ改質領域除去位置と,前記レーザ改質領域が除去された前記基板に残存する加工歪を除去する加工歪除去位置とに順次移動させる, 基板加工装置。 【請求項2】 インデックステーブルのチャックに対し,ロード位置で,切断ラインに沿って内部にレーザ改質領域が形成された基板をロードし,前記基板の略全面を真空吸着するステップと, 前記ロード位置でロードした前記基板を前記インデックステーブルの回転によりレーザ改質領域除去位置へ移動し,前記基板を研削して前記レーザ改質領域を除去するステップと, 前記レーザ改質領域除去位置で前記レーザ改質領域を除去した基板を前記インデックステーブルの回転により加工歪除去位置を移動し,前記基板に残存する加工歪を除去するステップと, を備える,基板加工方法。」 第3 拒絶の理由 平成30年6月13日に当審が通知した拒絶理由のうちの理由2および3は,大略次のとおりのものである。 2(サポート要件)この出願は,特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載が,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきであるから,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3(進歩性)この出願の請求項1,2に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 1.国際公開第03/77295号 2.特開2009-290148号公報 3.特開2007-235069号公報 4.特開2000-254857号公報 5.特開昭60-76959号公報 6.特開2006-303329号公報 7.特開2007-260850号公報 8.特開2005-86161号公報 9.特開2006-12902号公報 第4 理由2(サポート要件)について (1)特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,明細書のサポート要件の存在は,出願人が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平成17年11月11日(平成17年(行ケ)10042号)「偏光フィルムの製造法」大合議判決を参照。) 。 以下,上記の観点に立って,本願のサポート要件について検討する。 (2)前提となる事実関係等 ア 本願の特許請求の範囲の記載 本願発明1は,前記第2の【請求項1】に記載したとおりのものである。 イ 本願発明の課題について 本願明細書の発明の詳細な説明には,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付した。以下同じ。) 「【背景技術】 【0002】 特許文献1には,裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザーを照射して基板内部に改質領域を形成し,半導体基板の裏面にエキスパンドテープを装着し,エキスパンドテープの上からナイフエッジを当てて改質領域を基点として基板を割ることで,半導体基板をチップに切断することが記載されている。 【0003】 また,特許文献1には,裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザーを照射して基板内部に改質領域を形成した後で基板を研削して薄くし,半導体基板の裏面にエキスパンドテープを装着し,エキスパンドテープを伸張させることで改質領域を基点として基板を割ることが記載されている。 【0004】 特許文献2には,裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザーを照射して基板内部に改質領域を形成することで半導体基板の厚さ方向に割れを発生させ,基板の裏面を研削及びケミカルエッチングすることで割れを裏面に露出させることで,半導体基板をチップに切断することが記載されている。そして,特許文献2には,自然に或いは比較的小さな力,例えば人為的な力や基板に温度差を与えることにより熱応力を発生させたりすることにより,改質領域から厚さ方向に割れが発生することが記載されている。 <途中省略> 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 特許文献1に記載の発明では,ナイフエッジにより局所的に外力を印加することで基板を割るが,この局所的に外力を印加するために曲げ応力やせん断応力を基板に付与させることになる。しかし,曲げ応力やせん断応力は基板全面に一様に分布させることは難しい。例えば,曲げ応力やせん断応力を基板にかける場合,どこか弱い点に応力が集中することになり,効率的に所望の部分に対して必要最低限の応力を一様に付与できない。 【0007】 したがって,基板の割れにばらつきが生じ,割れが緩やかに進行しなかった場合には基板がチップ内においても破壊するという問題がある。また,基板を切断する部分に対して,局所的に順番に応力を与えて切断していく場合,例えば一枚の基板から多数のチップを収集する場合などでは,多数の切断ラインが存在するため,生産性が非常に低下するという問題がある。 【0008】 また,外力を印加して基盤を割る場合に,基板を薄く加工していない場合には,ウェハを割る際に非常に大きい応力を必要とするという問題がある。 【0009】 特にレーザー加工の改質深さ幅に対して,基板厚みが充分厚い場合は,外力を印加しても,急激な外力の影響によって,基板に対してきれいに垂直に割断できるとは限らない。そのため,いくつかレーザーパルスを基板の厚み方向に多段に照射するなどが必要な場合がある。 【0010】 また,特許文献1,2に記載の発明では,レーザーの照射により基板内部に形成された改質領域は,最終的にチップ断面に残ることとなる。そのため,チップ断面の改質領域の部分から発塵する場合がある。また,チップ断面部分が局所的に破砕した結果,その破砕した断面がきっかけとなって,チップが破断する場合もある。その結果,チップの抗折強度は小さくなるという問題点がある。 【0011】 特許文献2に記載の発明では,自然に改質領域から厚さ方向に割れが発生すると記載されているが,他方自然に割れる場合は必ずしも自然に割れない場合も存在する。割るという安定した効果を必然的に得るためには,時として恣意的な手段をとる必要があり,自然に割れる場合は恣意的な手段に該当しない。 【0012】 また,比較的小さな力として,温度差を与えることにより熱応力を発生させて,改質領域から厚さ方向に割れを発生させることも考えられる。この場合においては,基板の面内に一様な熱勾配をどのように与えるかという点が非常に難しいという問題がある。すなわち,人為的に熱勾配を与えたとしても熱伝導によって,一部熱勾配を緩和するように基板内に熱が分散していく。したがって,一定の基板を切断する程度の安定した熱勾配(安定した温度差)をどのように絶えずに形成するか,という点で極めて難しい問題がある。 【0013】 また,特許文献2に記載の発明では,半導体基板を研削後,裏面にケミカルエッチングするが,研削した後には,研削後の表面は固定砥粒による研削条痕が残り,付随して微小なクラックが形成され,加工変質層が残存している。その表面をケミカルエッチングした場合には,微小クラックなどの格子歪が大きい部分が選択的にエッチングされることになる。そのため,微小クラックはかえって助長され大きいクラックになる。そのため,切断起点領域だけではなく,時として,研削とエッチングによって形成された微小クラックから破断する場合もあり,安定した切断加工が難しいという問題がある。 【0014】 また,エッチングにより基板表面の凹凸が助長されるため,基板表面は鏡面化されていない。そのため,分割されたチップにも凹凸が残るため,凹凸の大きい部分,すなわち微小クラックから破壊することが十分に考えられ,チップの抗折強度は低くなるという問題がある。 【0015】 また,さらに,レーザー加工し,改質した部分にエッチング液が作用した場合,改質した部分は一度溶融して再結晶化して固まっているため,大きな粒界が形成されている。 【0016】 こうした粒界部分にエッチング液が作用すると,粒界からシリコン粒が剥げ落ちるようにエッチングが進行するため,さらに凹凸が助長されるようにエッチングされることになる。 【0017】 研磨工程としては,具体的には引用文献p.12_1行目において,研削工程と裏面にケミカルエッチングを施すことであると記載されている。ケミカルエッチングの場合,そのまま放置していても,クラック内にケミカルエッチング液が浸透し,クラック部分を溶かす作用がある。 【0018】 特に,クラックが基板の表面上にまで先走っている場合,エッチング液がチップとチップを接着しているフィルムの間に浸透し,チップをフィルムから剥離するという問題が発生する。 【0019】 また,クラックが基板の表面上にまで走っていなくても,クラックに沿ってエッチングは進行する。特に研削後に,薄くなった状態でエッチングを行う場合,クラックにエッチング液が毛細管現象によって浸透し,クラック先端を溶かしながら微小クラックをさらに深くするとともに,さらにそこへ新たなエッチング液が入り込むといった形となる。この場合,デバイス面の近傍にエッチング液が作用すると,デバイス面付近を溶かしてしまい,素子内部にまでエッチングが進行する場合がある。また,そのときに問題なくても,ウェハの壁面に残されたエッチング液がデバイス内部に入り込み,その後不良を起こすこともある。よって,ウェハ表面の加工歪を除去する一方で,それ以上にクラックを助長し,それに伴う副次的な問題を誘発することになりかねない。 【0020】 また,こうした場合,結果的にクラックが表面上にまで先走って,一部チップとフィルムの間にエッチング液が入り込み,処理中にチップが剥がれる問題が発生することもある。特に,研削後が進行して基板が薄くなった場合,少しの外力でクラックが進行しやすく,クラックが表面に達することでチップ剥離が発生するため,基板が薄くなった場合には,クラックをそれ以上進行させないように処理をしなければならない。 【0021】 特許文献2には,基板の裏面を研削することにより改質領域から割れが発生することが記載されているが,特許文献2には基板を研削する時の基板の固定方法が記載されていない。図17に示すように基板をリテーナ等に嵌め込むことで基板の外周を支持する場合や,図18に示すように基板の一部のみを吸着する場合には,基板が全面的に一様に拘束されないため,このような場合には基板の裏面を研削したとしても改質領域から割れが発生しない。 【0022】 本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,安定した品質のチップを効率よく得ることができるウェハ加工装置及びウェハ加工方法を提供することを目的とする。」 ウ 本願発明の課題 明細書の記載(前記イ)から,本願発明の課題は,以下の(ア)ないし(オ)にあると理解される。 (ア)裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザーを照射して基板内部に改質領域を形成し,半導体基板の裏面にエキスパンドテープを装着し,エキスパンドテープの上からナイフエッジを当てて改質領域を基点として基板を割ることで,半導体基板をチップに切断する特許文献1に記載された方法では,基板の割れにばらつきが生じ,割れが緩やかに進行しなかった場合には基板がチップ内においても破壊し,また,基板を切断する部分に対して,局所的に順番に応力を与えて切断していく場合,例えば一枚の基板から多数のチップを収集する場合などでは,多数の切断ラインが存在するため,生産性が非常に低下し,さらに,外力を印加して基盤を割る場合に,基板を薄く加工していない場合には,ウェハを割る際に非常に大きい応力を必要とするという問題があること。 (イ)裏面を上向きにして載置された半導体基板にレーザーを照射して基板内部に改質領域を形成することで半導体基板の厚さ方向に割れを発生させ,基板の裏面を研削及びケミカルエッチングすることで割れを裏面に露出させることで,半導体基板をチップに切断する特許文献2に記載された方法,及び,上記特許文献1に記載された方法では,レーザーの照射により基板内部に形成された改質領域は,最終的にチップ断面に残ることとなり,チップ断面の改質領域の部分から発塵し,また,チップ断面部分が局所的に破砕した結果,その破砕した断面がきっかけとなって,チップが破断する場合があることから,チップの抗折強度は小さくなるという問題点があること。 (ウ)特許文献2に記載の発明では,一定の基板を切断する程度の安定した熱勾配(安定した温度差)をどのように絶えずに形成するか,という点で極めて難しい問題があること。 (エ)特許文献2に記載の発明で,研削後の表面に残存する加工変質層を,ケミカルエッチングした場合には,微小クラックはかえって助長され大きいクラックになり,時として,研削とエッチングによって形成された微小クラックから破断する場合もあり,安定した切断加工が難しく,また,エッチングにより基板表面の凹凸が助長されるため,凹凸の大きい部分,すなわち微小クラックから破壊することが十分に考えられ,チップの抗折強度は低くなるという問題があること。 (オ)特許文献2には,基板を研削する時の基板の固定方法が記載されておらず,基板をリテーナ等に嵌め込むことで基板の外周を支持する場合や,基板の一部のみを吸着する場合には,基板が全面的に一様に拘束されないため,このような場合には基板の裏面を研削したとしても改質領域から割れが発生しないこと。 (3)検討 ア 発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 「【課題を解決するための手段】 【0023】 本発明の目的を達成するためのウェハ加工装置は,内部にレーザ光で改質領域を形成したウェハを加工するウェハ加工装置において,ウェハの表面を吸着した状態でウェハの裏面を研削砥石で研削し,改質領域から延びる微小亀裂を残して改質領域を除去する研削部と,研削後,ウェハの裏面を研磨布で研磨する研磨部と,を備える。 【0024】 この装置によれば,研削によって生じた研削熱により,研削しているウェハ表面と共に半径方向に熱膨張して広がろうとする。しかし,一方でウェハは熱容量の大きいウェハ真空チャックによって,その膨張による広がりを阻止しようとする。 【0025】 その結果,ウェハ裏面は熱膨張で拡大する一方,チャックされているウェハ表面は真空チャックにより膨張せず,そのままの状態を維持しようとする。その結果,ウェハ内部に形成された改質領域は,そのウェハ表面と裏面の膨張の違いに応じて,改質領域がさらに拡大するように作用し,さらに亀裂が進展するようになる。改質領域は,レーザー光が照射され,一度溶融状態になって再結晶した部分もあるため,結晶粒が大きくもろい。こうした改質領域が将来的なチップの側面に現れた場合,チップ側面から発塵するほか,チップ側面から大きな結晶粒が欠けたりすることもある。しかし,改質領域から進展した微小亀裂部分は,純粋な結晶面であるため,将来的なチップ側面にこの面が現れたとしても,チップ側面から発塵したり,大きな結晶粒となって欠けたりということは無い。 【0026】 こうして,研削工程によってウェハを削りながら除去するとともに,微小空孔をウェハの厚み方向に進展させ改質領域を除去する。次に,研削により形成された加工変質層と,進展した微小空孔とを,際立たせるために,ウェハ全面に対して化学機械研磨を施して(後に詳細記載),加工変質層を完全に除去する。その結果,微小空孔のみが表面に残り,その残りの領域は加工歪も残らない完全な鏡面となる。 【0027】 その後,まだ割れていないウェハに対して,ウェハを割断する機構に載せて,ウェハに曲げ応力を加えてウェハを割断して,その後,エキスパンドフィルムを引っ張ってチップ同士を離間する。これにより,チップの断面にレーザー光により形成された改質領域が残らないようにすることができる。そのため,チップが割れたり,チップ断面から発塵したりとするという不具合を防ぎ,安定した品質のチップを効率よく得ることができる。 【0028】 また,研削されたウェハの裏面を化学機械研磨してからウェハを分割するので,チップの抗折強度を高くすることができる。ここで,化学機械研磨においては,引用文献2に示す研磨工程におけるエッチング処理とは大きく区別される。 【0029】 まず,本願における化学液は,引用文献2のエッチング液は異なる。引用文献2におけるエッチング液は,基板表面に液が作用することで基板を自然に溶かす,すなわちエッチングする作用を有する。それにより,クラックが発生した部分においても,エッチング液が浸透して周囲を自然とエッチングするため,レーザーによって形成された改質層をさらに大きくするという作用がある。また,従来のエッチング液の場合,先にも述べた通り,エッチング液がクラック内を浸透しすぎてクラックを進展させ,最終的にチップとフィルムの間の部分にまで浸透する。それにより,チップ表面までエッチング液が回り込み,チップ表面がエッチング液により浸食されて,それぞれのチップデバイスが機能しなくなる場合もある。 【0030】 これに対して本願の化学機械研磨において使用する研磨剤(スラリー)は,静的な状況下ではエッチング作用は無い。すなわち,ウェハに対して研磨剤のみを供給したとしても,全くエッチングが進行せず,単にウェハ表面を改質するだけである。そのため,たとえ,研磨剤がウェハの切断予定ラインにあるクラック内に入り込んだとしても,周りのシリコンを溶かすことは無いため,それ以上クラックが進展することは無い。 【0031】 結果的に,引用文献2における研磨工程すなわちエッチング工程ではクラックが進展するかもしれないが,本願の研磨工程では,研磨剤を入れて放置しても全くウェハはエッチングされないため,クラックはほとんど進展しない。その結果,研磨剤が浸透して勝手にチップをフィルムから剥離するようなことやチップ表面の方に研磨剤が回り込んでチップを侵食し,チップデバイスが機能しなくなるという従来の問題が起こることは無い。」 「【0071】 この状態でXYZθテーブル12がダイシング方向であるX方向に加工送りされるとともに,レーザーヘッド40に設けられたリニア微動手段PZ1,PZ2によってコンデンスレンズ24が往復微小移動され,レーザー光LがウェハWと平行にX方向,又は任意のXY方向に振動され,レーザー光Lの集光点がウェハ内部で微小振動しながら改質領域Pを形成してゆく。これにより,ウェハWの切断ラインに沿って,ウェハW内部に多光子吸収による改質領域Pが1ライン形成される。」 「【0095】 吸着孔132cは,図2(a),(b)に示すように,載置台132aの略全域を覆うように配置されている。吸着孔132cには,図示しない流体継手が連結され,この流体継手に連結された図示しないサクションポンプが空気を吸引する。したがって,ウェハWの略全面が載置台132aの表面にしっかりと真空吸着される。これにより,位置ずれを起こすことなく,ウェハWと載置台132aとを面で密着させることができる。」 「【0124】 <半導体基板の切断方法> 次に,半導体基板の切断方法について説明する。図9は,半導体基板の切断方法の処理の流れを示すフローチャートである。 【0125】 (1)レーザー改質工程(ステップS10) 表面にBGテープBが貼付されたウェハWが,裏面が上向きとなるようにレーザーダイシング装置1の吸着ステージ13に載置される。以下の処理はレーザーダイシング装置1で行われ,制御部50により制御される。 【0126】 レーザー発振器21からレーザー光Lが出射されると,レーザー光Lはコリメートレンズ22,ハーフミラー23,コンデンスレンズ24等の光学系を経由してウェハWの内部に照射され,ウェハWの内部に改質領域Pが形成される。 【0127】 本実施の形態では,最終的に生成されるチップの厚さが略50μmであるため,図10に示すように,ウェハWの表面から略60μm?略80μmの深さにレーザー光を照射する。ウェハWの表面(デバイス面)を効率的に破断するためには,ウェハW表面からチップTの厚み分だけ裏面側に位置する面である基準面に近い比較的深い位置にレーザ改質領域を形成する必要があるからである。 【0128】 制御部50は,パルス状の加工用のレーザー光LをウェハWの表面に平行に走査して,ウェハW内部に複数の不連続な改質領域P,P,…を並べて形成する。改質領域Pの内部には,微小空孔(以下,クラックという)Kが形成される。以下,複数の不連続な改質領域P,P,…が並べて形成された領域を改質層という。 【0129】 図11に示す切断ラインLのすべてに沿って改質層が形成されたら,ステップS10の処理を終了する。」 「【0130】 (2)研削除去工程(ステップS12) レーザー改質工程(ステップS10)により切断ラインLに沿って改質領域が形成されたら,搬送装置(図示せず)によりウェハWをレーザーダイシング装置1から研削装置2へ搬送する。以下の処理は研削装置2で行われ,制御部100により制御される。 【0131】 搬送されたウェハWの裏面を上側,すなわちウェハWの表面に貼付されたBGテープBを下側にしてチャック132(例示,チャック136,148,140でも可)に載置させ,ウェハWの略全面をチャック132に真空吸着させる。 【0132】 インデックステーブル134を回転軸135を中心に回転させてチャック132を粗研削ステージ118に搬入し,ウェハWを粗研削する。 【0133】 粗研削は,チャック132を回転させるとともにカップ型砥石146を回転させることにより行う。本実施の形態では,カップ型砥石146として例えば,東京精密製ビトリファイド♯325を用い,カップ型砥石146の回転数は略3000rpmである。 【0134】 粗研削後,インデックステーブル134を回転軸135を中心に回転させてチャック132を精研削ステージ120に搬入し,チャック132を回転させるとともにカップ型砥石154を回転させてウェハWを精研削する。本実施の形態では,カップ型砥石154として例えば,東京精密製レジン♯2000を用い,カップ型砥石154の回転数は略2400rpmである。 【0135】 本実施の形態では,図12に示すように,粗研削と精研削とをあわせて目標面まで,すなわちウェハWの表面から略50μmの深さまで研削を行う。本実施の形態では,粗研削で略700μmの研削を行い,精研削で略30?40μmの研削を行うが,厳密に決まっているわけではなく,粗研削と精研削との時間が略同一となるように研削量を決定してもよい。 【0136】 したがって,図12に示すように,改質層は研削工程で除去され,最終的な製品であるチップT断面にはレーザー光による改質領域Pは残らない。そのため,チップ断面から改質層が破砕し,破砕した部分からチップTが割れたり,また破砕した部分から発塵したりということをなくすことができる。 【0137】 また,本実施の形態においては,この研削除去工程において,改質層内のクラックをウェハWの厚み方向に進展させる亀裂進展工程が含まれる。図13は,クラックが進展する仕組みを説明する図であり,(a)は研削時の概略図,(b)はウェハW裏面の様子,(c)はウェハW表面の様子,(d)は研削時のウェハWの断面図である。 【0138】 研削によって,図13(a)に示す研削面,すなわちウェハW裏面は,図13(b)に示すように研削熱によって膨張する。それに対し,研削面の反対側の面,すなわちウェハW表面は,図13(c)に示すように真空チャックにより略全面が減圧吸着されており,熱膨張による位置ずれが生じないように横方向への変位に対して物理的に拘束されている。 【0139】 すなわち,図13(d)に示すように,ウェハWの裏面(研削面)は熱膨張によって円盤状の場合外周方向に広がろうとする(熱膨張による変位)のに対し,ウェハWの表面(吸着面)はその広がろうとするウェハ面内の各点各点を物理的に位置ずれしないように拘束されている。そのため,ウェハ内部に歪が生じ,この内部歪によりクラックがウェハWの厚み方向に進展する。この内部歪は,熱膨張により膨張する部分と,物理拘束されるウェハ面内各点との間に均等に働く。内部歪による亀裂進展は,最も研削量が大きく,摩擦力も大きくなる,すなわち摩擦熱も大きくできる研削初期,すなわち粗研削時が最も効率良い。 【0140】 レーザ改質領域は,チップの厚みに近い比較的深い位置に形成される。したがって,研削初期では研削表面からレーザ改質層までの距離は比較的遠くなるが,改質層から目標面は,亀裂進展させる程度に比較的近い位置にある。そのため,亀裂進展のためには,粗研削の初期に研削熱によってウェハWの熱膨張を促すとよい。 【0141】 ウェハWを熱膨張させる条件,すなわち摩擦熱をよい多く発生させるための条件(例えば,研削液を少なくする等)で研削を行ったとしても,研削のせん断応力がすぐに改質層におよぼされるものでもない。本実施の形態では,研削によるせん断応力によって亀裂が進展するのではなく,研削熱による熱膨張が亀裂進展の支配的要素である。 【0142】 内部歪によりクラックを進展させる場合には,ウェハW面内の剛性ばらつきなどに起因することなく,どのようなウェハWであってもウェハW面内各点一様にクラックを進展させることができる。したがって,人為的な応力を付与する場合のように,ウェハW面内の欠陥の存在などに起因する剛性の弱い部分に応力が集中する事を防ぐことができる。 【0143】 また,人為的に外力を与えた場合においては,材料の弱い部分に応力が集中するため,クラックを一様に緩やかに進展させるという制御は困難であり,完全にウェハが割断される。それに対し,本実施の形態における内部歪によるクラックの進展の場合,熱膨張の度合いよる内部歪であることから,クラックを微妙に進展させることが可能となる。すなわち,目標面とウェハWの表面との間にまでクラックを進展させることができる。したがって,後に説明する分割・離間工程(ステップS18)で効率よく分割することが可能となる。 【0144】 なお,ウェハWの熱膨張による内部歪は,温度差に起因するいわゆる熱応力とは区別される。熱応力は温度勾配に比例して発生するが,本実施の形態では発生した熱はチャック132,136,138,140へ逃げていくため,熱応力は発生しない。」 「【0145】 (3)化学機械研磨工程(ステップS14) この工程は研削装置2で行われ,制御部100により制御される。 【0146】 精研削後,インデックステーブル134を回転軸135を中心に回転させてチャック132を研磨ステージ122に搬入し,研磨ステージ122の研磨布156によって化学機械研磨が行われ,研削除去工程(ステップS12)においてウェハWの裏面に形成された加工変質層が除去され,ウェハW裏面が鏡面加工される。 【0147】 本実施の形態では,研磨布156としてポリウレタン含浸不繊布(例えば,東京精密製TS200L)を用い,スラリーとしてコロイダルシリカを用い,研磨布156の回転数は略300rpmである。 【0148】 研削除去工程(ステップS12)により,ウェハWの裏面は,図14に示すような凹凸が多数形成されている。化学エッチングにより研磨を行う場合には,表面形状がそのまま保たれるため,凹部から割れが発生する恐れがあるし,表面が鏡面化されない。それに対し,本実施の形態では,化学機械研磨であるため,加工により生じた加工歪を除去され,表面の凹凸が除去されて鏡面化される。 【0149】 すなわち,最終製品であるチップTの品質向上のためには,砥石を用いた研削除去工程と,研磨布を使用した化学液を含んだ遊離砥粒による化学機械研磨工程の二つが必要不可欠となる。」 「【0152】 (5)分割・離間工程(ステップS18) エキスパンドテープ貼付工程(ステップS16)でエキスパンドテープFが裏面に貼付されたウェハWを,図15に示すように分割装置にウェハWの表面を上に載置する。研削除去工程(ステップS12)においてクラックが目標面より表面側へ進展しているため,図15に示すように,ウェハWのエキスパンドテープFが貼付されている側には進展したクラックが形成されている。 【0153】 その後,図16に示すように,エキスパンドテープFを外側へ拡張する(エキスパンド)と,進展したクラックをもとにウェハWが破断される。すなわち,ウェハWが切断ラインで破断され,複数のチップTに分割される。その後,エキスパンドテープFをさらに拡張すると個々のチップTが離間する。 【0154】 本実施の形態では,研削除去工程(ステップS12)において,クラックを目標面より下側に進展させることによって,この分割・離間工程においてエキスパンドテープFを引っ張るだけで,効率よくウェハWをチップTに分割することが可能となる。また,クラックを進展させるときに完全にウェハを割断しないため,作業効率がよい。」 「【0156】 <<研削による亀裂進展評価>> 次に,上記研削除去工程(ステップS12)における研削による亀裂進展評価について図19,図20を参照して説明する。研削方法,分割離間方法,それらの条件等は基本的に上記ステップS10からS18の通りである。図19は,亀裂進展評価の条件について示した図であり,図20は,亀裂進展評価の評価結果を示した図である。 【0157】 図19の(A),(B),(C)において,横軸は共通し,各位置が互いに対応しており,研削時間(s)を示す。図19の(A)の縦軸は,切り込み速度(研削速度)(μm/s)を示し,(B)の縦軸は,研磨中の砥石への給水のON,OFFを示し,(C)の縦軸は,研削中のウェハW裏面の温度(℃)を示す。 【0158】 図19の(A)に示すように,研削速度を変えながら粗研削を合計710μm行い,その後,精研削を13μm(図示せず)行い,さらに化学機械研磨(図示せず)を2μm行った。ウェハの際,図19の(B)に示すように,粗研削の途中に砥石又はウェハへの給水の中断期間を設けた。研削開始後t1秒経過後に給水を中止し,研削開始後t2秒経過後に給水を再開した。給水は,10L/minの流量で行った。その後,上記ステップS16,S18工程を行って,ウェハを割断し,その割断状態を観察して評価した。チップが割れたり,発塵したりせず良好に割れた場合を○とし,チップが割れたり発塵したものは×として,図20に結果をまとめた。 【0159】 図19の(C)に示すように,ウェハWの裏面温度は,給水が中止された研削開始後t1秒経過後に急に上昇を初め,給水が再開された研削開始後t2秒経過直後に下降し始めた。 【0160】 図20に示すように,研削によりウェハWの裏面温度が70℃以上になった場合,良好にウェハの割断が行われた。これは,研削の熱によりレーザーによって形成されたクラックが進展したためと考えられる。 【0161】 よって,本発明に係る研削装置は,ウェハの温度測定する手段と,研削中に砥石又はウェハへの給水をON,OFFする手段と,研削開始から所定の時間経過後にウェハ温度が所定の値になるまでウェハへの給水をOFFするように制御する手段とを備えることができる。これにより,レーザーによって形成されたクラックを進展させ,ウェハの割断を良好に行うことができる。 【0162】 以上,説明したように,本実施の形態によれば,研削によりレーザー光により形成された改質領域内のクラックを進展させることができるため,チップTの断面にレーザー光により形成された改質領域が残らないようにすることができる。そのため,チップTが割れたり,チップT断面から発塵したりとするという不具合を防ぐことができる。したがって,安定した品質のチップを効率よく得ることができる。」 図20は,亀裂進展評価の評価結果を示した図であって, t1(s):10,t2(s):30,T(℃):39の比較例1の亀裂進展による割断が「×」, t1(s):10,t2(s):45,T(℃):58の比較例2の亀裂進展による割断が「×」, t1(s):10,t2(s):60,T(℃):92の実施例1の亀裂進展による割断が「○」, t1(s):20,t2(s):60,T(℃):70の実施例2の亀裂進展による割断が「○」,であることが示されている。 イ 上記アから,本願の明細書には,基本的に上記ステップS10からS18の通りである研削方法,分割離間方法,それらの条件等によって行われた基板加工において,上記研削除去工程(ステップS12)における研削による亀裂進展評価の評価結果が「○」である実施例1,2で用いられた「基板加工装置」,すなわち,「レーザーによって形成されたクラックが進展し」て,「良好にウェハの割断が行われ」る「基板加工装置」として,以下の発明が記載されていることが理解される。 「ウェハ切断ラインに沿って,内部にレーザ改質領域が形成されたウェハの略全面を,前記ウェハをチャックに保持した状態で所定角度ごとに回転するインデックステーブルの前記チャックに真空吸着させる工程と, 前記真空吸着させる工程に続く,インデックステーブルを回転軸を中心に回転させて前記チャックを研削ステージに搬入し,前記レーザ改質層を除去する研削除去工程であって, 前記研削除去工程は,研削の途中に砥石又はウェハへの給水の中断期間を設け,研削熱によりウェハの裏面温度が70℃以上となるものとすることで,研削面が研削熱によって膨張し,研削面の反対側の面は真空チャックにより略全面が減圧吸着されて熱膨張による位置ずれが生じないように横方向への変位に対して物理的に拘束され,これによってウェハ内部に歪が生じ,この内部の歪により,前記レーザ改質層内のクラックをウェハの厚み方向に進展させて,ウェハ面内の剛性ばらつきなどに起因することなく,どのようなウェハであってもウェハ面内各点一様にクラックを進展させることができ,したがって,人為的な応力を付与する場合のように,ウェハ面内の欠陥の存在などに起因する剛性の弱い部分に応力が集中する事を防ぐことができ,したがって,後の分割・離間工程で効率よく分割することが可能となる研削除去工程と, 前記研削除去工程に続く,インデックステーブルを回転軸を中心に回転させて前記チャックを研磨ステージに搬入し,化学機械研磨を行い,研削工程においてウェハの裏面に形成された加工変質層を除去し,ウェハ裏面を鏡面加工する研磨工程と, 前記研磨工程に続く,前記進展したクラックをもとに,ウェハを前記ウェハ切断ラインで破断し,複数のチップに分割し,その後,個々のチップを離間する分割・離間工程と, を備える,基板加工装置。」 ウ すなわち,発明の詳細な説明に記載された発明は, (ア)ウェハには,ウェハ切断ラインに沿って,内部にレーザ改質領域が形成されていること。 (イ)ウェハの略全面が,チャックに真空吸着されていること。 (ウ)研削除去工程では,研削の途中に砥石又はウェハへの給水の中断期間を設け,研削熱によりウェハの裏面温度を70℃以上とするとともに,研削面の反対側の面は真空チャックにより略全面が減圧吸着されて熱膨張による位置ずれが生じないように横方向への変位に対して物理的に拘束し,これによってウェハ内部に歪を生じさせて,前記レーザ改質層内のクラックをウェハの厚み方向に進展させること。 (エ)化学機械研磨を行い,研削工程においてウェハの裏面に形成された加工変質層を除去し,ウェハ裏面を鏡面加工すること。 (オ)前記進展したクラックをもとに,ウェハを前記ウェハ切断ラインで破断し,複数のチップに分割すること。 という技術的事項を備える「基板加工装置」が,研削による亀裂進展評価において,「○」である,すなわち,「レーザーによって形成されたクラックが進展し」て,「良好にウェハの割断が行われ」るという効果を奏するものと理解される。 エ 他方,発明の詳細な説明に記載された比較例1,2は,粗研削の途中における砥石又はウェハへの給水を中止及び再開する時期を上記実施例1,2と異ならせることで,ウェハWの裏面温度の上昇量を異ならせたほかは,上記実施例1,2と同様の研削方法,分割離間方法,それらの条件等によって行われるものであって,上記実施例1,2と同様に,「搬送されたウェハWの裏面を上側,すなわちウェハWの表面に貼付されたBGテープBを下側にしてチャック132(例示,チャック136,148,140でも可)に載置させ,ウェハWの略全面をチャック132に真空吸着させる」基板加工である。 そして,比較例1,2においては,上記実施例1,2とは異なり,研削による亀裂進展評価における評価は「×」であり,チップが割れたり発塵するものであることから,比較例1,2の研削が,「レーザーによって形成されたクラック」を「進展」させるものであると認識することはできない。 オ すなわち,「基板加工装置」が,「基板の略全面を真空吸着させるチャックに保持」するという構造を備えていても,比較例1,2におけるように,基板の裏面の研削において「レーザーによって形成されたクラック」を「進展」させるとは認めることができない場合があることが発明の詳細な説明に記載されている。 そして,本願の請求項1に記載された発明は,発明特定事項として,粗研削の途中における砥石又はウェハへの給水を中止及び再開する時期を含まないから,比較例1,2のように,「レーザーによって形成されたクラック」を「進展」させるとは認めることができない基板加工装置を含むものである。 してみれば,本願の請求項1に記載された発明は,上記(2)ウ(オ)の「『特許文献2』の『場合には基板の裏面を研削したとしても改質領域から割れが発生しない』」という課題を解決して,改質領域から割れを発生させるものであると認識できる範囲のものであるとは認められない。 さらに,上記のように,本願の請求項1に記載された発明は,改質領域から割れを発生させるものであると認識できる範囲のものであるといえないことから,本願の請求項1に記載された発明は,上記(2)ウ(ア)ないし(エ)のいずれの課題についても,その課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできない。 (4)審判請求人の主張について ア 審判請求人は,平成30年7月6日に提出した意見書において,「本願明細書の発明の詳細な説明の記載から把握できる本願発明の課題の1つとして,『特許文献2には,基板を研削する時の基板の固定方法が記載されておらず,基板をリテーナ等に嵌め込むことで基板の外周を支持する場合や,基板の一部のみを吸着する場合には,基板が全面的に一様に拘束されないため,このような場合には基板の裏面を研削したとしても改質領域から割れが発生しないこと。』が含まれることは,上記拒絶理由通知書でも認められるとおりであり,発明の詳細な説明の記載から,『(イ)ウェハの略全面が,チャックに真空吸着されていること。』という本願発明の構成を採用することにより本願発明の課題が解決できると当業者は認識できるものである。してみると,発明の詳細な説明は,本願請求項1,2に記載された発明について,その発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものとして記載されているということができるものであることから,本願の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たすものである。」と主張する。 イ そこで,上記主張について検討すると,発明の詳細な説明には,本願発明の効果に係る作用機序について,以下のように説明がされている。 「【0024】この装置によれば,研削によって生じた研削熱により,研削しているウェハ表面と共に半径方向に熱膨張して広がろうとする。しかし,一方でウェハは熱容量の大きいウェハ真空チャックによって,その膨張による広がりを阻止しようとする。 【0025】その結果,ウェハ裏面は熱膨張で拡大する一方,チャックされているウェハ表面は真空チャックにより膨張せず,そのままの状態を維持しようとする。その結果,ウェハ内部に形成された改質領域は,そのウェハ表面と裏面の膨張の違いに応じて,改質領域がさらに拡大するように作用し,さらに亀裂が進展するようになる。」 「【0137】また,本実施の形態においては,この研削除去工程において,改質層内のクラックをウェハWの厚み方向に進展させる亀裂進展工程が含まれる。図13は,クラックが進展する仕組みを説明する図であり,(a)は研削時の概略図,(b)はウェハW裏面の様子,(c)はウェハW表面の様子,(d)は研削時のウェハWの断面図である。 【0138】研削によって,図13(a)に示す研削面,すなわちウェハW裏面は,図13(b)に示すように研削熱によって膨張する。それに対し,研削面の反対側の面,すなわちウェハW表面は,図13(c)に示すように真空チャックにより略全面が減圧吸着されており,熱膨張による位置ずれが生じないように横方向への変位に対して物理的に拘束されている。 【0139】すなわち,図13(d)に示すように,ウェハWの裏面(研削面)は熱膨張によって円盤状の場合外周方向に広がろうとする(熱膨張による変位)のに対し,ウェハWの表面(吸着面)はその広がろうとするウェハ面内の各点各点を物理的に位置ずれしないように拘束されている。そのため,ウェハ内部に歪が生じ,この内部歪によりクラックがウェハWの厚み方向に進展する。この内部歪は,熱膨張により膨張する部分と,物理拘束されるウェハ面内各点との間に均等に働く。内部歪による亀裂進展は,最も研削量が大きく,摩擦力も大きくなる,すなわち摩擦熱も大きくできる研削初期,すなわち粗研削時が最も効率良い。 【0140】レーザ改質領域は,チップの厚みに近い比較的深い位置に形成される。したがって,研削初期では研削表面からレーザ改質層までの距離は比較的遠くなるが,改質層から目標面は,亀裂進展させる程度に比較的近い位置にある。そのため,亀裂進展のためには,粗研削の初期に研削熱によってウェハWの熱膨張を促すとよい。 【0141】ウェハWを熱膨張させる条件,すなわち摩擦熱をよい多く発生させるための条件(例えば,研削液を少なくする等)で研削を行ったとしても,研削のせん断応力がすぐに改質層におよぼされるものでもない。本実施の形態では,研削によるせん断応力によって亀裂が進展するのではなく,研削熱による熱膨張が亀裂進展の支配的要素である。 【0142】内部歪によりクラックを進展させる場合には,ウェハW面内の剛性ばらつきなどに起因することなく,どのようなウェハWであってもウェハW面内各点一様にクラックを進展させることができる。したがって,人為的な応力を付与する場合のように,ウェハW面内の欠陥の存在などに起因する剛性の弱い部分に応力が集中する事を防ぐことができる。 【0143】また,人為的に外力を与えた場合においては,材料の弱い部分に応力が集中するため,クラックを一様に緩やかに進展させるという制御は困難であり,完全にウェハが割断される。それに対し,本実施の形態における内部歪によるクラックの進展の場合,熱膨張の度合いよる内部歪であることから,クラックを微妙に進展させることが可能となる。すなわち,目標面とウェハWの表面との間にまでクラックを進展させることができる。したがって,後に説明する分割・離間工程(ステップS18)で効率よく分割することが可能となる。」 ウ そうすると,上記の説明に照らして,基板の裏面を研削した際に,「改質領域」から割れが発生する作用機序には,「研削によって生じた研削熱により,研削しているウェハ表面と共に半径方向に熱膨張して広がろうとする」作用と,「ウェハは熱容量の大きいウェハ真空チャックによって,その膨張による広がりを阻止しようとする」という作用の,両者がともに関係しており,これらが同時にウェハに作用することによって,ウェハ内部に形成された改質領域に,そのウェハ表面と裏面の膨張の違いに応じて,改質領域がさらに拡大するように歪が生じ,さらに亀裂が進展するものであって,このようにして内部歪によりクラックを進展させることによって,ウェハW面内の剛性ばらつきなどに起因することなく,どのようなウェハWであってもウェハW面内各点一様にクラックを進展させることができるという効果が奏されるものと理解される。 エ してみれば,「(イ)ウェハの略全面が,チャックに真空吸着されていること。」という構成を採用することのみによって,本願発明の課題が解決できるとする審判請求人の前記主張は,発明の詳細な説明に記載された本願発明の作用機序と整合しないから,採用することはできない。 (5)小括 したがって,本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきである。 第5 理由3(進歩性)について 1 引用文献の記載及び引用発明 (1)引用文献1の記載 引用文献1には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「1.基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し,前記基板の内部に多光子吸収による改質領域を形成し,この改質領域によって,前記基板の切断予定ラインに沿って前記基板のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と, 前記切断起点領域を形成する工程後,前記基板が所定の厚さとなるよう前記基板を研磨する工程と, を備えることを特徴とする基板の分割方法。」(請求の範囲) 「技術分野 本発明は,半導体デバイスの製造工程等において半導体基板等の基板を分割するために使用される基板の分割方法に関する。 背景技術 近年の半導体デバイスの小型化に伴い,半導体デバイスの製造工程において,半導体基板が数10μm程度の厚さにまで薄型化されることがある。このように薄型化された半導体基板をブレードにより切断し分割すると,半導体基板が厚い場合に比べてチッピングやクラッキングの発生が増加し,半導体基板を分割することで得られる半導体チップの歩留まりが低下するという問題がある。 このような問題を解決し得る半導体基板の分割方法として,特開昭64-38209号公報や特開昭62-4341号公報に記載された方法が知られている。 すなわち,これらの公報に記載された方法は,表面に機能素子が形成されている半導体基板に対して当該表面側からブレードにより溝を形成し,その後に,当該表面に粘着シートを貼り付けて半導体基板を保持し,予め形成された溝に達するまで半導体基板の裏面を研磨することで,半導体基板を薄型化する共に半導体基板を分割するというものである。 発明の開示 しかしながら,上記公報に記載された方法にあっては,半導体基板の裏面の研磨を平面研削により行うと,平面研削面が,半導体基板に予め形成された溝に達した際に,当該溝の側面でチッピングやクラッキングが発生するおそれがある。 そこで,本発明は,このような事情に鑑みてなされたものであり,チッピングやクラッキングの発生を防止して,基板を薄型化し且つ基板を分割することのできる基板の分割方法を提供することを目的とする。 上記目的を達成するために,本発明に係る基板の分割方法は,基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し,基板の内部に多光子吸収による改質領域を形成し,この改質領域によって,基板の切断予定ラインに沿って基板のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と,切断起点領域を形成する工程後,基板が所定の厚さとなるよう基板を研磨する工程とを備えることを特徴とする。 この基板の分割方法によれば,切断起点領域を形成する工程においては,基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し,基板の内部に多光子吸収という現象を発生させて改質領域を形成するため,この改質領域でもって,基板を切断すべき所望の切断予定ラインに沿うよう基板の内部に切断起点領域を形成することができる。基板の内部に切断起点領域が形成されると,自然に或いは比較的小さな力によって,切断起点領域を起点として基板の厚さ方向に割れが発生する。 そして,基板を研磨する工程においては,基板の内部に切断起点領域を形成した後に,基板が所定の厚さとなるよう基板を研磨するが,このとき,研磨面が,切断起点領域を起点として発生した割れに達しても,この割れにより切断された基板の切断面は互いに密着した状態であるため,研磨による基板のチッピングやクラッキングを防止することができる。 したがって,チッピングやクラッキングの発生を防止して,基板を薄型化し且つ基板を分割することが可能となる。 ここで,集光点とは,レーザ光が集光した箇所のことである。また,研磨とは,切削,研削及びケミカルエッチング等を含む意味である。さらに,切断起点領域とは,基板が切断される際に切断の起点となる領域を意味する。したがって,切断起点領域は,基板において切断が予定される切断予定部である。そして,切断起点領域は,改質領域が連続的に形成されることで形成される場合もあるし,改質領域が断続的に形成されることで形成される場合もある。 また,基板としては,シリコン基板やGaAs基板等の半導体基板や,サファイア基板やAlN基板等の絶縁基板がある。そして,基板が半導体基板の場合の改質領域としては,例えば溶融処理した領域がある。 また,基板の表面には機能素子が形成されており,基板を研磨する工程では基板の裏面を研磨することが好ましい。機能素子の形成後に基板を研磨することができるため,例えば半導体デバイスの小型化に対応するよう,薄型化されたチップを得ることが可能となる。ここで,機能素子とは,フォトダイオード等の受光素子やレーザダイオード等の発光素子,或いは回路として形成された回路素子等を意味する。」(明細書第1ページ第3行-第3ページ第7行) 「一方,半導体基板を研磨する工程においては,半導体基板1の内部に切断起点領域を形成した後に半導体基板1が所定の厚さとなるよう半導体基板1の裏面21を平面研削する・・・」(明細書第20ページ第24-26行) 「図24A及び図24Bに示すように,溶融処理領域13が切断面内に残存しない半導体チップ25は,溶融処理領域13が半導体デバイスに好影響を与えないような場合に有効である。」(明細書第22ページ第7-9行) (2)引用発明1 上記(1)からみて,引用文献1には,以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「基板の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射し,前記基板の内部に多光子吸収による改質領域を形成し,この改質領域によって,前記基板の切断予定ラインに沿って前記基板のレーザ光入射面から所定距離内側に切断起点領域を形成する工程と, 前記切断起点領域を形成する工程後,前記基板が所定の厚さとなるよう前記基板を研磨する工程と, を備える基板の分割方法であって, 前記基板が,半導体基板であり, 前記改質領域が,溶融処理した領域であり, 前記基板の表面には,レーザダイオード等の発光素子,或いは回路として形成された回路素子等を意味する機能素子が形成されており, 前記半導体基板を研磨する工程は,半導体基板の内部に前記切断起点領域を形成した後に半導体基板が所定の厚さとなるよう半導体基板の裏面を平面研削するものであり, 前記溶融処理した領域が半導体デバイスに好影響を与えないような場合には,当該溶融処理した領域が,半導体チップ切断面内に残存しないようにすることが有効である, 基板の分割方法。」 (3)引用文献2の記載 引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 基板の表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されているとともに該ストリートの表面に膜が被覆されているウエーハを,該ストリートに沿って個々のデバイスに分割するウエーハの分割方法であって, 該基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの表面側から該基板の内部に集光点を位置付けて該ストリートに沿って照射し,該基板の内部にストリートに沿って変質層を形成する変質層形成工程と, 該膜に対して吸収性を有する波長のレーザー光線をウエーハの表面側から該ストリートに沿って該膜に照射してレーザー加工溝を形成し,該膜を該ストリートに沿って分断する膜分断工程と, ウエーハを構成する該基板の裏面を研削し,ウエーハを所定の厚さに形成する裏面研削工程と, 該裏面研削工程が実施されたウエーハの裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着するウエーハ支持工程と, 環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面にウエーハの裏面を貼着した状態で該ダイシングテープを拡張することによりウエーハに外力を付与し,ウエーハを該ストリートに沿って破断するウエーハ破断工程と,を含む, ことを特徴とするウエーハの分割方法。」 「【0026】 裏面研削工程は,図10の(a)に示す研削装置5を用いて実施する。図10の(a)に示す研削装置5は,被加工物を保持するチャックテーブル51と,該チャックテーブル51に保持された被加工物を研削するための研削砥石52を備えた研削手段53を具備している。この研削装置5を用いて上記裏面研削工程を実施するには,チャックテーブル51上にウエーハ2の保護テープ4側を載置し,図示しない吸引手段を作動することによりウエーハ2をチャックテーブル51上に保持する。従って,チャックテーブル51に保持されたウエーハ2は,裏面21bが上側となる。このようにして,チャックテーブル51上にウエーハ2を保持したならば,チャックテーブル51を矢印51aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ,研削手段53の研削砥石52を矢印52aで示す方向に例えば6000rpmで回転しつつ半導体ウエーハ2の裏面2bに接触せしめて研削することにより,図10の(b)に示すように所定の厚さ(例えば100μm)に形成する。なお,上記変質層形成工程において形成される変質層210をウエーハ2の表面2aから例えば100μm以内の位置に形成すれば上記裏面研削工程を実施した後にも変質層210は残るが,上記変質層形成工程において形成される変質層210をウエーハ2の表面2aから例えば100μmの位置より裏面2bに形成することにより,上記裏面研削工程を実施することにより変質層210が形成された位置まで研削され,変質層210は除去される。従って,ウエーハ2の基板21には,図10の(b)に示すようにストリート22に沿って形成されたクラック211が残される。」 「【0031】 上述した実施形態においては,上記裏面研削工程でウエーハ2の基板21の裏面を研削して変質層210が除去されており,ウエーハ2は基板21に形成されたクラック211に沿って破断される。従って,個々の分割されたデバイス23の破断面には変質層210が残存しないため,デバイス23の抗折強度が向上する。」 (4)引用発明2 上記(3)からみて,引用文献2には,以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「基板の表面に格子状に形成された複数のストリートによって区画された複数の領域にデバイスが形成されているとともに該ストリートの表面に膜が被覆されているウエーハを,該ストリートに沿って個々のデバイスに分割するウエーハの分割方法であって, 該基板に対して透過性を有する波長のレーザー光線をウエーハの表面側から該基板の内部に集光点を位置付けて該ストリートに沿って照射し,該基板の内部にストリートに沿って変質層を形成する変質層形成工程と, 該膜に対して吸収性を有する波長のレーザー光線をウエーハの表面側から該ストリートに沿って該膜に照射してレーザー加工溝を形成し,該膜を該ストリートに沿って分断する膜分断工程と, ウエーハを構成する該基板の裏面を研削し,ウエーハを所定の厚さに形成する裏面研削工程と, 該裏面研削工程が実施されたウエーハの裏面を環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面に貼着するウエーハ支持工程と, 環状のフレームに装着されたダイシングテープの表面にウエーハの裏面を貼着した状態で該ダイシングテープを拡張することによりウエーハに外力を付与し,ウエーハを該ストリートに沿って破断するウエーハ破断工程と,を含み, 該変質層形成工程において形成される変質層をウエーハの表面から例えば100μmの位置より裏面に形成することにより,上記裏面研削工程を実施することにより変質層が形成された位置まで研削され,該変質層が除去されることで,ウエーハは基板に形成されたクラックに沿って破断され,従って,個々の分割されたデバイスの破断面には変質層が残存しないため,デバイスの抗折強度が向上する, ウエーハの分割方法。」 (5)引用文献3の記載 引用文献3には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は,ウェーハ加工方法に係り,特に,半導体ウェーハの平面加工からチップサイズに切断されたウェーハのマウントまでを欠陥なく行うのに好適なウェーハ加工方法に関する。」 「【0025】 このように,ウェーハは,装置内の少ない移動距離で,裏面の研削加工から始まって,UV光照射,フレームへのマウント,保護シート剥離,及びエキスパンドまでの各ステップ(工程)を終了することが可能となる。したがって,搬送中や各工程の作業中にチップへダメージを与える可能性が最小限に抑えられる。」 「【0043】 アライメントステージ116は,カセット126から搬送されたウェーハWを所定の位置に位置合わせするステージである。このアライメントステージ116で位置合わせされたウェーハWは,搬送用ロボット130のハンド131に再度吸着保持された後,空のチャック132に向けて搬送され,このチャック132の吸着面に吸着保持される。 【0044】 チャック132は,インデックステーブル134に設置され,また,同機能を備えたチャック136,138,140が,インデックステーブル134の図3の破線で示される回転軸135を中心とする円周上に90度の間隔をもって設置されている。 【0045】 また,回転軸135には,図3に破線で示されるモータ(移動手段に相当)137のスピンドル(不図示)が連結されている。チャック136は,粗研削ステージ118に位置されており,吸着したウェーハWがここで粗研削される。 【0046】 また,チャック138は,精研削ステージ120に位置され,吸着したウェーハWがここで仕上げ研削(精研削,スパークアウト)される。更に,チャック140は,研磨ステージ122に位置され,吸着したウェーハWがここで研磨され,研削で生じた加工変質層,及びウェーハWの厚さのバラツキ分が除去される。 【0047】 チャック132,136,138,140は,図4の如くその下面にスピンドル194と回転用モータ192が各々連結され,これらのモータ192の駆動力によって回転される。モータ192は,支持部材193を介してインデックステーブル134に支持されている。 【0048】 したがって,本実施の形態の平面加工装置10A(10C)は,モータ192とスピンドル194がチャック132,136,138,140に連結された状態で,チャック132,136,138,140がモータ137によって移動される装置である。 【0049】 これにより,チャック132,136,138,140をモータ137で移動させる毎に,スピンドル194をチャック132,136,138,140から切り離したり,次の移動位置に設置されたスピンドル194にチャック132,136,138,140を連結したりする手間を省くことができる。 【0050】 本実施の形態のチャック132,136,138,140は,その吸着面がセラミックス等の焼結体からなるポーラス材で形成されている。これによってウェーハWがポーラス材の表面にしっかりと吸着保持される。」 「【0069】 研磨終了したウェーハWは,加工変質層が除去されているので,容易に破損することはなく,よって,ロボット196による搬送時,及びウェーハ洗浄ステージ124における洗浄時において破損しない。」 上記記載から,引用文献3には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 「ウェーハWが,インデックステーブルの回転軸を中心とする円周上に90度の間隔をもって設置されているチャック132,136,138,140のセラミックス等の焼結体からなるポーラス材で形成されている吸着面の表面にしっかりと吸着保持され, 前記回転軸には,モータ(移動手段に相当)137のスピンドルが連結されており, 搬送用ロボットのハンドに吸着保持されて搬送されたウェーハWは,空のチャック132の吸着面に吸着保持されるものであり, チャック136は,粗研削ステージに位置されており,吸着したウェーハWがここで粗研削され, チャック138は,精研削ステージに位置され,吸着したウェーハWがここで仕上げ研削(精研削,スパークアウト)され, チャック140は,研磨ステージに位置され,吸着したウェーハWがここで研磨され,研削で生じた加工変質層,及びウェーハWの厚さのバラツキ分が除去されるものであり, チャック132,136,138,140がモータ137によって移動させる, 平面加工装置10C。」 イ ウェーハを,装置内の少ない移動距離で,裏面の研削加工から始まって,UV光照射,フレームへのマウント,保護シート剥離,及びエキスパンドまでの各ステップ(工程)を終了することで,搬送中や各工程の作業中にチップへダメージを与える可能性が最小限に抑えられること。 ウ 粗研削・仕上げ研削によって,加工変質層が生じること,及び,前記研削で生じた加工変質層を,研磨ステージでの研磨によって除去すること,並びに,前記加工変質層が除去されたウェーハは,容易に破損することはなく,よって,ロボットによる搬送時,及び洗浄時において破損しないこと。 (6)引用文献4の記載 引用文献4には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【請求項10】 ワークを保持する保持手段と, 該保持手段で保持されたワークを粗研削する粗研削手段と, 該粗研削手段で粗研削されたワークを,前記保持手段で保持したまま精研削する精研削手段と, 該精研削手段で精研削されたワークを,前記保持手段で保持したまま研磨する研磨手段と, 前記保持手段を粗研削手段による粗研削位置,精研削手段による精研削位置, 及び研磨手段による研磨位置に移動させる移動手段と, を備えたことを特徴とする平面加工装置。」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は平面加工装置及び平面加工方法に係り,特に半導体ウェーハの製造工程で,チップが形成されていない半導体ウェーハの裏面を研削加工する平面加工装置及び平面加工方法に関する。」 「【0022】請求項10記載の発明によれば,平面加工装置に粗研削手段,精研削手段,及び研磨手段を設けたので,これらの手段によってワークを自動で粗研削,精研削,研磨することができる。更に,ワークの保持手段を粗研削位置,精研削位置,及び研磨位置に移動させる移動手段を設けたので,夫々単数又は複数の粗研削手段,精研削手段,及び研磨手段を組合わせ配置された構成であっても,夫々の加工手段の稼働率を落とすことなく,有効稼働させることができる。」 「【0027】 【発明の実施の形態】以下添付図面に従って本発明に係る平面加工装置及び平面加工方法の好ましい実施の形態について詳説する。図1は,本発明が適用された半導体ウェーハの平面加工装置の斜視図であり,図2は平面図である。 【0028】図1に示すように平面加工装置10の本体12には,カセット収納ステージ14,アライメントステージ16,粗研削ステージ18,精研削ステージ20,研磨ステージ22,研磨布洗浄ステージ23,研磨布ドレッシングステージ27,及びウェーハ洗浄ステージ24が設けられている。また,粗研削ステージ18,精研削ステージ20,研磨ステージ22は図2上二点鎖線で示す仕切板25によって仕切られ,各々のステージ18,20,22で使用する加工液が隣接するステージに飛散するのが防止されている。 【0029】仕切板25は図4,図5に示すようにインデックステーブル34に固定されるとともに,インデックステーブル34に設置された4台のチャック(保持手段に相当)32,36,38,40を仕切るように十字形状に形成されている。また,研磨ステージ22は,他のステージから隔離するために,天板100を有するケーシング102によって覆われている。このケーシング102の,前記仕切板25が通過する側面には,図6の如くブラシ104が取り付けられており,このブラシ104は,チャック40が加工位置に位置した時に,仕切板25の上面25A及び側面25Bに接触される。これにより,チャック40が加工位置に位置すると,ケーシング102,仕切板25,及びブラシ104によって研磨ステージ22が略気密状態に保持されるので,精研削ステージ20で使用される研削加工液や加工屑が研磨ステージ22に浸入するのを防止でき,また,研磨ステージ22で使用される研磨加工液が研磨ステージ22から飛散するのを防止できる。したがって,双方の加工液が混入することに起因する加工不具合を防止できる。本例の研磨ステージ22は,化学機械研磨を行うもので,研磨加工液に化学研磨剤が含有されているので,このような研磨加工液に研削加工液が混入すると,化学研磨剤の濃度が低下し,加工時間が長くなるという不具合が生じる。よって,仕切板25を設けることによって,前記不具合を解消できる。」 「【0032】前記アライメントステージ16は,カセット26から搬送されたウェーハ28を所定の位置に位置合わせするステージである。このアライメントステージ16で位置合わせされたウェーハ28は,前記搬送用ロボット30のハンド31に再度吸着保持された後,空のチャック32に向けて搬送され,このチャック32の吸着面に吸着保持される。 【0033】前記チャック32は,インデックステーブル34に設置され,また,同機能を備えたチャック36,38,40が,インデックステーブル34の図2上破線で示す回転軸35を中心とする円周上に90度の間隔をもって設置されている。また,回転軸35には,図2上破線で示すモータ(移動手段に相当)37のスピンドル(不図示)が連結されている。前記チャック36は,粗研削ステージ18に位置されており,吸着したウェーハ28がここで粗研削される。また,前記チャック38は,精研削ステージ20に位置され,吸着したウェーハ28がここで仕上げ研削(精研削,スパークアウト)される。更に,前記チャック40は,研磨ステージ22に位置され,吸着したウェーハ28がここで研磨され,研削で生じた加工変質層,及びウェーハ28の厚みのバラツキ分が除去される。」 「【0036】図7において,チャック32,36,38,40は,インデックステーブル34に形成された開口部114の段部116に載置されており,また,モータ92の下部には,シリンダ装置118のピストン120が連結されている。このピストン120が図8の如く伸長されると,連結部材112が前記開口部114を通過し,チャック32,36,38,40の下部に形成された凹部122に嵌入されて連結される。そして,チャック32,36,38,40は,ピストン120の継続する伸長動作によって,インデックステーブル34から上昇移動され,砥石46,54による研削位置に位置される。 【0037】本実施の形態のチャック32,36,38,40は,その吸着面がセラミックス等の焼結体からなるポーラス材124で形成されている。また,連結部材112が凹部122に連結されると,同時に図示しない流体継手が連結され,該流体継手に連結された図示しないサクションポンプの吸引力がエア通路126を介してポーラス材124に作用し,これによってウェーハ28がポーラス材の表面にしっかりと吸着保持される。また,連結部材112が切り離された時は,図示しない逆止弁により吸着力はそのまま保持される。」 「【0044】精研削ステージ20で裏面が精研削されたウェーハ28は,ウェーハ28からカップ型砥石54が退避移動した後,図10に示した同一構造の厚み測定ゲージによってその厚みが測定される。厚みが測定されたウェーハ28は,インデックステーブル34の同方向の90度の回動で研磨ステージ22に位置され,研磨ステージ22の図3に示す研磨布56と,研磨布56から供給されるスラリとによって研磨され,その裏面に生じている加工変質層が除去される。なお,前記測定ゲージによる厚み測定は,インラインで実施してもよい。」 「【0065】また,前記平面加工装置10によれば,ウェーハ28は同一のチャック32(36,38,40)に保持した状態で,インデックステーブル34の回動により,粗研削,精研削,研磨することができる。これにより,ウェーハの移し変えに起因するウェーハの破損を防止することができるとともに,ウェーハを精度良く加工することができる。これに対して,ウェーハをステージ毎に別のチャックに移し変えて加工すると,その移し変える時にウェーハが破損するという欠点がある。また,移し変えて加工すると,そのチャックの吸着面の精度がその都度変わり,その精度がウェーハの加工精度に影響を与えるので,精度良く加工することができない。したがって,本実施の形態の平面加工装置10では,その従来の欠点を解消することができる。」 「【0069】図13の平面加工装置152は,研磨ステージ22で研磨終了したウェーハ28をエッチング処理する装置である。研磨終了したウェーハ28は,インデックステーブル34の時計回り方向の90°の回転によってチャック32の位置に位置された時,ロボット97によって保持される。そして,ウェーハ28はロボット97によって洗浄ステージ24に搬送され,ここで洗浄された後,エッチング装置150に搬送される。この平面加工装置152は,チャックに保持されたままの状態でエッチング処理するものではないので,ロボット97による搬送時にウェーハ28が破損するという不安があるが,エッチング処理の前工程の研磨ステージ22で加工変質層が除去されているので,搬送時にウェーハ28が破損することはない。」 「【0080】 【発明の効果】以上説明したように本発明に係る平面加工装置によれば,ワークの研削手段が搭載された平面加工装置に研磨手段を搭載し,ワークの研削,及び研磨を同一の装置内で実施するようにしたので,ワークを破損させることなくスループットを向上させることができる。 【0081】また,本発明によれば,ワークを同一の保持手段で保持したままの状態で研削,及び研磨するので,ワークを損傷させることなくワークを精度良く加工することができる。」 ・図7,図8は,チャックとスピンドルとが流体継手を介して分離・連結される説明図であって,上記の記載を参酌すれば,これらの図から,ウェーハ28の略全面が,前記ウェーハ28と略同径のポーラス材124の表面に真空吸着されることによって,しっかりと吸着保持されることを見て取ることができる。 上記記載から,引用文献4には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 「半導体ウェーハの製造工程で,チップが形成されていない半導体ウェーハの裏面を研削加工する平面加工方法に適用される半導体ウェーハの平面加工装置であって, 当該平面加工装置の本体には,カセット収納ステージ,アライメントステージ,粗研削ステージ,精研削ステージ,研磨ステージ,研磨布洗浄ステージ,研磨布ドレッシングステージ,及びウェーハ洗浄ステージが設けられており, 保持手段に相当する4台のチャック32,36,38,40が,インデックステーブルの,移動手段に相当するモータのスピンドルに連結されている回転軸を中心とする円周上に90度の間隔をもって設置されており, アライメントステージで位置合わせされたウェーハは,搬送用ロボットのハンドに吸着保持された後,空のチャック32に向けて搬送され,このチャック32の吸着面に吸着保持され, チャック36は,粗研削ステージに位置されており,吸着したウェーハがここで粗研削され, チャック38は,精研削ステージに位置され,吸着したウェーハがここで仕上げ研削(精研削,スパークアウト)され, チャック40は,研磨ステージに位置され,吸着したウェーハがここで研磨され,研削で生じた加工変質層,及びウェーハの厚みのバラツキ分が除去され, ウェーハは同一のチャック32(36,38,40)に保持された状態で,インデックステーブルの回動により,粗研削,精研削,研磨することができるものであり, チャック32,36,38,40は,その吸着面がセラミックス等の焼結体からなるポーラス材で形成されており,ウェーハの略全面が,前記ウェーハと略同径のポーラス材の表面にしっかりと吸着保持される, 平面加工装置。」 イ 引用文献4に記載された前記平面加工装置によれば,ワークの保持手段を粗研削位置,精研削位置,及び研磨位置に移動させる移動手段を設けたので,夫々単数又は複数の粗研削手段,精研削手段,及び研磨手段を組合わせ配置された構成であっても,夫々の加工手段の稼働率を落とすことなく,有効稼働させることができ,また,ワークの研削手段が搭載された平面加工装置に研磨手段を搭載し,ワークの研削,及び研磨を同一の装置内で実施するようにしたので,ワークを破損させることなくスループットを向上させることができ,さらに,ワークを同一の保持手段で保持したままの状態で研削,及び研磨するので,ワークを損傷させることなくワークを精度良く加工することができること。 ウ 粗研削・仕上げ研削で加工変質層が生じること,及び,研磨ステージでの研磨によって,研削で生じた加工変質層が除去されること,並びに,研磨ステージで加工変質層を除去することで,ロボットによる搬送時にウェーハが破損することがなくなること。 (7)引用文献5の記載 引用文献5には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「2.特許請求の範囲 1つの回転台にウェハを保持するチャッキングテーブルを少なくとも1台配設し,1つのチャッキングテーブルに対して回転台の回転に伴うそれぞれ異なる位置でウェハのチャッキングテーブルへの取付け,研削,ポリッシュおよび取外しの各工程を順次行い,また上記各工程においてはチャッキングテーブルを回転して複数枚のウェハを順次処理することを含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。」(第1ページ左下欄第4-13行) 「研削は目の粗さを換えて数段階にわたって行い,厚さ600μmのウェハを400μmから200μmの均一な厚さまで削る。しかし研削後の面には研削材の自浄作用によりできる傷が残ることがあるため,バフと呼称される人造皮革に例えばアルミナ(Al_(2)O_(3))の粒を用いてポリッシュを行う。ポリッシュで1?2μm程度ウェハ背面を削ることにより平坦な鏡面が得られる。」(第2ページ左上欄第7-14行) 「(7)発明の効果 以上詳細に説明した如く本発明によれば,真空チャックを交換することなくウェハ背面の研削とポリッシュを連続して行うことができるため,真空チャック交換に伴うウェハの破損が防止でき,また上記連続工程の自動化が容易となり半導体装置製造における歩留りの向上に効果大である。」(第3ページ右上欄第12-18行) 上記記載から,引用文献5には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 「1つの回転台にウェハを保持するチャッキングテーブルを少なくとも1台配設し,1つのチャッキングテーブルに対して回転台の回転に伴うそれぞれ異なる位置でウェハのチャッキングテーブルへの取付け,研削,ポリッシュおよび取外しの各工程を順次行い,また上記各工程においてはチャッキングテーブルを回転して複数枚のウェハを順次処理することを含む半導体装置の製造方法。」 イ 研削後の面には傷が残ることがあること,及び,前記研削後に平坦な鏡面を得るためにポリッシュを行うこと。 ウ 真空チャックを交換することなくウェハ背面の研削とポリッシュを連続して行うと,真空チャック交換に伴うウェハの破損が防止でき,また連続工程の自動化が容易となり半導体装置製造における歩留りの向上に効果大であること。 (8)引用文献6の記載 引用文献6には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 100μmよりも厚いシリコン基板の一方の面を研削してシリコン基板の厚さを100μm以下にするにあたって, シリコン基板の一方の面を研削してシリコン基板を薄くする研削工程と, 前記シリコン基板の,前記研削工程により研削された面に対して,酸化セリウム砥粒を含む砥石を用いて研削を行う仕上げ工程と, を含むことを特徴とするシリコン基板の薄板加工方法。 【請求項2】 100μmよりも厚いシリコン基板の一方の面を研削する研削手段と,酸化セリウム砥粒を含む砥石を用いてシリコン基板の一方の面を研削する仕上げ手段と,シリコン基板を吸着する吸着チャックを有する加工装置を用い,前記吸着チャックにシリコン基板を吸着させ,その状態で前記吸着チャックと前記シリコン基板を前記研削手段まで移動させて前記研削工程を行った後,前記吸着チャックにシリコン基板を吸着させた状態のまま前記吸着チャックと前記シリコン基板を前記仕上げ手段まで移動させて前記仕上げ工程を行うことを特徴とする請求項1に記載のシリコン基板の薄板加工方法。」 「【0009】 この発明は,上述した従来技術による問題点を解消するため,基板表面に保護テ-プなどを貼らずに吸着チャックに半導体基板を吸着させた状態のまま,基板裏面に対して研削加工から加工歪の除去までの工程を同一装置によって連続して行うことにより,基板の割れや欠けを防ぐことができるシリコン基板の薄板加工方法およびそれに用いられる加工装置を提供することを目的とする。」 上記記載から,引用文献6には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 「100μmよりも厚いシリコン基板の一方の面を研削する研削手段と,酸化セリウム砥粒を含む砥石を用いてシリコン基板の一方の面を研削する仕上げ手段と,シリコン基板を吸着する吸着チャックを有する加工装置を用い,前記吸着チャックにシリコン基板を吸着させ,その状態で前記吸着チャックと前記シリコン基板を前記研削手段まで移動させて前記研削工程を行った後,前記吸着チャックにシリコン基板を吸着させた状態のまま前記吸着チャックと前記シリコン基板を前記仕上げ手段まで移動させて前記仕上げ工程を行うシリコン基板の薄板加工方法。」 イ 基板表面に保護テ-プなどを貼らずに吸着チャックに半導体基板を吸着させた状態のまま,基板裏面に対して研削加工から加工歪の除去までの工程を同一装置によって連続して行うことにより,基板の割れや欠けを防ぐことができること。 (9)引用文献7の記載 引用文献7には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【請求項2】 請求項1に記載の基板用平坦化装置を用い,次ぎの工程を経過して半導体基板裏面の平坦化を行うことを特徴とする,半導体基板裏面の薄肉化・平坦化方法。 1)基板収納ステ-ジの収納カセット内に保管されている基板を多関節型搬送ロボットの吸着パッドに吸着し,位置合わせ用仮置台上に搬送し,そこで基板のセンタリング位置調整を行う。 2)位置合わせされた基板上面を前記多関節型搬送ロボットの吸着パッドに吸着させ,ついで,第1インデックス型回転テ-ブルに設けられた基板ロ-ディング/アンロ-ディングステ-ジを構成する基板ホルダ-テ-ブル上に移送する。 3)第1インデックス型回転テ-ブルを時計廻り方向に120度回転させることにより,基板ロ-ディング/アンロ-ディングステ-ジ位置の基板ホルダ-テ-ブルに真空チャックされている基板を粗研削ステ-ジの基板ホルダ-テ-ブル位置へと移送する。 4)粗研削ステ-ジでダイヤモンドカップホイ-ル型砥石を用いて基板裏面を粗研削する。この間に,多関節型搬送ロボットを用い前記第1工程と第2工程が行われ,新たな基板が基板ロ-ディング/アンロ-ディングステ-ジ上に搬送される。 5)第1インデックス型回転テ-ブルを時計廻り方向に120度回転させることにより,粗研削された基板を仕上研削ステ-ジの基板ホルダ-テ-ブル位置へと移送するとともに,基板ロ-ディング/アンロ-ディングステ-ジ位置の基板ホルダ-テ-ブル上の基板を粗研削ステ-ジへと移送する。 6)仕上研削ステ-ジでカップホイ-ル型ダイヤモンド砥石を用い粗研削された基板裏面を仕上研削する。この間に,粗研削ステ-ジで基板裏面はカップホイ-ル型ダイヤモンド砥石を用いて粗研削されるとともに,多関節型搬送ロボットにより新たな基板が位置合わせ用仮置台を経由して基板ロ-ディング/アンロ-ディングステ-ジ位置の基板ホルダ-上に搬送される。 <以下省略>」 「【0009】 仕上研削加工された半導体基板28は,インデックス型回転テ-ブル34を時計回り方向へ90度回転させることにより研磨ステ-ジ22の基板ホルダ-(真空チャック)40位置へと移動され,そこで,回転する研磨パッド56を振子揺動(Oscillate)させることにより仕上研削された基板面が研磨されて研削ダメ-ジのある5?10μm厚み量が取り去られ,鏡面に仕上げられた後,研磨パッド56は半導体基板裏面より遠ざけられる。」 「【0032】 図3は,研削加工ステ-ジ20の第1インデックス型回転テ-ブル2に設けられた基板ホルダ-テ-ブル(真空チャック)30a,30cの構造と洗浄機器38の構造を示すものである。図中,3は第1インデックス型回転テ-ブル2の回転軸,5は回転軸3の駆動モ-タである。基板ホルダ-テ-ブル30a,30b,30cの各々は,第1インデックス型回転テ-ブル2に同一円周上に120度の等間隔で配置されている。 【0033】 基板ホルダ-テ-ブル(真空チャック)30は,ワ-クwの径と略同一径のポ-ラスセラミック製円板状載置台31を,上部に大小2段の環状空所32b,32cを有する非通気性材料製支持台32にポ-ラスセラミック製円板状載置台31の上面と非通気性材料製支持台32上面32aが面一となるよう載せ,この非通気性材料製支持台32を上面凹状支持枠34を介して中空スピンドル33に回転自在に軸承させるとともに,前記ポ-ラスセラミック製円板状載置台下面にある前記非通気性材料製支持台の環状空所32b,32cを減圧するバキュ-ム手段40を備える。 【0034】 前記ポ-ラスセラミック製円板状載置台31の外周壁面に接する非通気性材料製支持台32の環状側壁部の上面32aには,浅い深さを有する環状溝32dを設けている。非通気性材料製支持台32の下面は上面凹状支持枠34にボルトで固定され,上面凹状支持枠34下部を中空スピンドル33に軸承されている。中空スピンドル33の下部には,クラッチ機構50a,50bが設けられ,下部のクラッチ板50bには駆動モ-タ51が設置されている。クラッチ板50a,50bが接続されると駆動モ-タ51の回転力を受けて中空スピンドル33は回転し,その回転駆動力を受けてスピンドル軸に軸承されている凹状支持枠34,およびポ-ラスセラミック製円板状載置台31も回転する。 【0035】 前記バキュ-ム手段40は,図示されていない真空ポンプと,これに連結する配管41と切換バルブ42とロ-タリ-ジョイント43と,このロ-タリ-ジョイント43に連結する中空スピンドル33内に配される管44より構成される。切換バルブ42には純水を供給する管45が連結されている。 【0036】 また,中空スピンドル33内には,上面凹状支持枠34の凹部34aに通じる管46が配置され,ロ-タリ-ジョイント47,それに連結する管48を経由して冷却用の純水を供給するポンプPに接続されている。凹状支持枠34の凹部34aに供給された純水は非通気性材料製支持台32の底部を冷却する。 【0037】 前記バキュ-ム手段40を稼動させることによりポ-ラスセラミック製円板状載置台31上の載せられた半導体基板wは基板面を上方に向けてポ-ラスセラミック製円板状載置台31に減圧固定される。バキュ-ム手段40の真空を止めた後,切換バルブ42を純水供給側へ切り換えると加圧純水がポ-ラスセラミック製円板状載置台31を洗浄する。」 上記記載から,引用文献7には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 基板上面を搬送ロボットの吸着パッドに吸着させ,ついで,インデックス型回転テ-ブルに設けられた基板ロ-ディング/アンロ-ディングステ-ジを構成する基板ホルダ-テ-ブル上に移送し, インデックス型回転テ-ブルを時計廻り方向に120度回転させることにより,基板ロ-ディング/アンロ-ディングステ-ジ位置の基板ホルダ-テ-ブルに真空チャックされている基板を粗研削ステ-ジの基板ホルダ-テ-ブル位置へと移送し, 粗研削ステ-ジでダイヤモンドカップホイ-ル型砥石を用いて基板裏面を粗研削し, インデックス型回転テ-ブルを時計廻り方向に120度回転させることにより,粗研削された基板を仕上研削ステ-ジの基板ホルダ-テ-ブル位置へと移送し, 仕上研削ステ-ジでカップホイ-ル型ダイヤモンド砥石を用い粗研削された基板裏面を仕上研削する工程を含む半導体基板裏面の薄肉化・平坦化方法で用いられる基板用平坦化装置において, 前記インデックス型回転テ-ブルに設けられた前記基板ホルダ-テ-ブル(真空チャック)は,ワ-クwの径と略同一径のポ-ラスセラミック製円板状載置台を,上部に大小2段の環状空所32b,32cを有する非通気性材料製支持台にポ-ラスセラミック製円板状載置台の上面と非通気性材料製支持台上面が面一となるよう載せ,この非通気性材料製支持台を上面凹状支持枠を介して中空スピンドルに回転自在に軸承させるとともに,前記ポ-ラスセラミック製円板状載置台下面にある前記非通気性材料製支持台の環状空所を減圧するバキュ-ム手段を備えるものであって,バキュ-ム手段を稼動させることによりポ-ラスセラミック製円板状載置台上の載せられた半導体基板wは基板面を上方に向けてポ-ラスセラミック製円板状載置台に減圧固定させる機構が用いられていること。 (10)引用文献8の記載 引用文献8には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0008】 而して,ウエーハの分割すべき領域の内部に集光点を合わせてレーザー光線を照射し変質層を形成したものにおいては,変質した層が光デバイスの側面に残存し,光デバイスが発する光が変質した部分に吸収されて輝度が低下するという問題がある。」 上記記載から,引用文献8には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア ウエーハの分割すべき領域の内部に集光点を合わせてレーザー光線を照射し変質層を形成したものにおいては,変質した層が光デバイスの側面に残存していると,光デバイスが発する光が変質した部分に吸収されて輝度が低下するという問題があること。 (11)引用文献9の記載 引用文献9には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0033】 上述したように分割工程を実施したならば,個々のチップに分割されたウエーハの裏面を研削し,チップの仕上がり厚さに形成する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は,図14に示す研削装置8によって実施する。即ち,研削装置8のチャックテーブル81上に個々の半導体チップ20に分割された半導体ウエーハ2の保護テープ3側を載置し(従って,半導体ウエーハ2は裏面2bが上側となる),図示しない吸引手段によってチャックテーブル81上に半導体ウエーハ2を吸着保持する。そして,チャックテーブル81を例えば300rpmで回転し,研削砥石82を備えた研削工具83を例えば6000rpmで回転しつつ図14において下方に所定の速度で研削送りする。この研削送りは,図15に示すように半導体チップ20の仕上がり厚さSに達するまで実施する。この結果,半導体ウエーハ2に形成された変質層210は研削されて除去され,半導体ウエーハ2は半導体チップ20の仕上がり厚さSに形成される。従って,図16に示すように半導体チップ20の側面には上記変質層形成工程によって形成された変質層が残留しないため,半導体チップ20の抗折強度が低下することはなく,1000MPa以上の抗折強度を確保することができる。 以上のようにして裏面研削工程が実施されたならば,個々の半導体チップ20に分割された半導体ウエーハ2は,半導体チップ20をピックアップするピックアップ工程に搬送される。」 上記記載から,引用文献9には,次の技術的事項が記載されているものと認められる。 ア 半導体チップの側面に変質層形成工程によって形成された変質層が残留していると半導体チップの抗折強度が低下すること。 2 引用文献1を主引例とした進歩性の検討 (1)対比 本願発明2と引用発明1を対比すると,以下のとおりとなる。 ア 引用発明1の「基板」及び「半導体基板」は,いずれも,本願発明2の「基板」に相当する。 イ 引用発明1の「『改質領域』『溶融処理した領域』」は,いずれも,本願発明2の「レーザ改質領域」に相当する。 ウ 基板の分割は,基板加工の一種であるといえる。 したがって,本願発明2と引用発明1とは,以下の<一致点>で一致し,<相違点>で相違する。 <一致点> 「切断ラインに沿って内部にレーザ改質領域が形成された基板を研削して前記レーザ改質領域を除去するステップを備える,基板加工方法。」 <相違点> 相違点1:基板加工方法が,本願発明2においては,「インデックステーブルのチャックに対し,ロード位置で,基板をロードし,前記基板の略全面を真空吸着するステップと,前記ロード位置でロードした前記基板を前記インデックステーブルの回転によりレーザ改質領域除去位置へ移動し,前記基板を研削して前記レーザ改質領域を除去するステップと,前記レーザ改質領域除去位置で前記レーザ改質領域を除去した基板を前記インデックステーブルの回転により加工歪除去位置を移動し,前記基板に残存する加工歪を除去するステップと,を備える」ものであるのに対して,引用発明1は,このような構成を備えていない点。 (2)判断 上記相違点について判断する。 ア 本願の発明の詳細な説明には,以下の記載がある。 「【0026】こうして,研削工程によってウェハを削りながら除去するとともに,微小空孔をウェハの厚み方向に進展させ改質領域を除去する。次に,研削により形成された加工変質層と,進展した微小空孔とを,際立たせるために,ウェハ全面に対して化学機械研磨を施して(後に詳細記載),加工変質層を完全に除去する。その結果,微小空孔のみが表面に残り,その残りの領域は加工歪も残らない完全な鏡面となる。」 「【0082】図7は,研磨ステージ122の構造図である。研磨ステージ122では,研磨布516と,研磨布156から供給されるスラリーとによって研磨され,粗研磨,精研磨によりウェハWの裏面に生じている加工変質層が除去される。加工変質層とは,研削によって生じた条痕や加工歪(結晶が変質している)等の総称である。」 イ すなわち,加工変質層とは,研削によって生じた条痕や加工歪等の総称であるから,本願発明2の「前記基板に残存する加工歪を除去するステップ」とは,レーザ改質領域を除去する研削によって生じた加工変質層を除去する工程であると理解される。 ウ 一方,引用文献3に記載された「粗研削・仕上げ研削によって,加工変質層が生じること,及び,前記研削で生じた加工変質層を,研磨ステージでの研磨によって除去すること,並びに,前記加工変質層が除去されたウェーハは,容易に破損することはなく,よって,ロボットによる搬送時,及び洗浄時において破損しないこと」という技術的事項,引用文献4に記載された「粗研削・仕上げ研削で加工変質層が生じること,及び,研磨ステージでの研磨によって,研削で生じた加工変質層が除去されること,並びに,研磨ステージで加工変質層を除去することで,ロボットによる搬送時にウェーハが破損することがなくなること」という技術的事項,引用文献5に記載された「研削後の面には傷が残ることがあること,及び,前記研削後に平坦な鏡面を得るためにポリッシュを行うこと」という技術的事項に照らして,基板加工において,破損等の抑制を目的として,基板を研削した後に,前記研削によって生じた加工変質層を除去する研磨工程を設けること,すなわち,基板を研削した後に,基板に残存する加工歪を除去するステップを設けることが普通に行われていたと理解できる。 エ また,引用文献3に記載された「ウェーハを,装置内の少ない移動距離で,裏面の研削加工から始まって,UV光照射,フレームへのマウント,保護シート剥離,及びエキスパンドまでの各ステップ(工程)を終了することで,搬送中や各工程の作業中にチップへダメージを与える可能性が最小限に抑えられる」という技術的事項,引用文献4に記載された「ワークの保持手段を粗研削位置,精研削位置,及び研磨位置に移動させる移動手段を設けたので,夫々単数又は複数の粗研削手段,精研削手段,及び研磨手段を組合わせ配置された構成であっても,夫々の加工手段の稼働率を落とすことなく,有効稼働させることができ,また,ワークの研削手段が搭載された平面加工装置に研磨手段を搭載し,ワークの研削,及び研磨を同一の装置内で実施するようにしたので,ワークを破損させることなくスループットを向上させることができ,さらに,ワークを同一の保持手段で保持したままの状態で研削,及び研磨するので,ワークを損傷させることなくワークを精度良く加工することができる」という技術的事項,引用文献5に記載された「真空チャックを交換することなくウェハ背面の研削とポリッシュを連続して行うと,真空チャック交換に伴うウェハの破損が防止でき,また連続工程の自動化が容易となり半導体装置製造における歩留りの向上に効果大である」という技術的事項,引用文献6に記載された「基板表面に保護テ-プなどを貼らずに吸着チャックに半導体基板を吸着させた状態のまま,基板裏面に対して研削加工から加工歪の除去までの工程を同一装置によって連続して行うことにより,基板の割れや欠けを防ぐことができる」という技術的事項に照らして,ワークの保持手段を粗研削位置,精研削位置,及び研磨位置に移動させることで,搬送中や各工程の作業中にチップへダメージを与える可能性が最小限に抑えられ,スループットを向上させ,ワークを精度良く加工することができ,連続工程の自動化が容易となる等の利点が得られることが知られていたことが理解される。 オ そして,レーザダイオード等の発光素子,或いは回路として形成された回路素子等を意味する機能素子が形成された基板を分割する方法に係る引用発明1において,基板の破損が望ましくないことは自明の課題であり,また,搬送中や各工程の作業中にチップへダメージを与える可能性が最小限に抑えられ,スループットを向上させ,ワークを精度良く加工することができ,連続工程の自動化が容易となることが望ましいことは,基板加工における一般的な課題であるといえるから,引用発明1において,これらの課題を解決しようとする動機が存在する。 カ 一方,引用文献3には,上記(5)アに記載した「平面加工装置10C」が記載されており,技術常識に照らして,「平面加工装置10C」の,「チャック132,136,138,140のセラミックス等の焼結体からなるポーラス材で形成されている吸着面の表面にしっかりと吸着保持され」との特定は,基板の略全面を真空吸着させるという構成を特定するものと理解される。 そして,引用文献3の「平面加工装置10C」の,搬送用ロボットのハンドに吸着保持されて搬送されたウェーハWを吸着保持するチャック132が存在する場所は,「ロード位置」といえる。 また,引用文献3の「平面加工装置10C」の,チャック136が位置する「粗研削ステージ」及びチャック138が位置する「精研削ステージ」は,いずれも「基板を研削」する位置といえる。 さらに,引用文献3の「平面加工装置10C」の,チャック140が位置する「研削で生じた加工変質層,及びウェーハWの厚さのバラツキ分が除去される」「研磨ステージ」は,「加工歪除去位置」にあたる。 そして,引用文献3の「平面加工装置10C」は,チャック132,136,138,140がモータ137によって移動するものであるから,ウェーハは,インデックステーブルの回転により移動するとえる。 そうすると,引用文献3には,「平面加工装置10C」を用いた,以下の基板加工方法が記載されていると理解される。 「インデックステーブルのチャックに対し,ロード位置で,基板をロードし,前記基板の略全面を真空吸着するステップと, 前記ロード位置でロードした前記基板を前記インデックステーブルの回転により基板を研削する位置へ移動し,前記基板を研削するステップと, 前記基板を研削する位置で研削した基板を前記インデックステーブルの回転により加工歪除去位置を移動し,前記基板に残存する加工歪を除去するステップと, を備える,基板加工方法。」 キ 同様に,引用文献4には,上記(6)アに記載した「平面加工装置」が記載されており,技術常識に照らして,引用文献4には,「平面加工装置」を用いた,以下の基板加工方法が記載されていると理解される。 「インデックステーブルのチャックに対し,ロード位置で,基板をロードし,前記基板の略全面を真空吸着するステップと, 前記ロード位置でロードした前記基板を前記インデックステーブルの回転により基板を研削する位置へ移動し,前記基板を研削するステップと, 前記基板を研削する位置で研削した基板を前記インデックステーブルの回転により加工歪除去位置を移動し,前記基板に残存する加工歪を除去するステップと, を備える,基板加工方法。」 ク そして,引用発明1において,上記オで検討した動機に基づいて,引用文献3,引用文献4に記載される周知の方法を適用すること,すなわち,上記相違点について本願発明2の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。 また,このような構成を採用したことによる効果も,引用文献1ないし9の記載,及び,技術常識に基づいて当業者が予測する範囲内のものといえる。 3 引用文献2を主引例とした進歩性の検討 (1)対比 本願発明2と引用発明2を対比すると,以下のとおりとなる。 ア 引用発明2の「基板」及び「ウエーハ」は,いずれも,本願発明2の「基板」に相当する。 イ 引用発明2の「変質層」は,本願発明2の「レーザ改質領域」に相当する。 ウ ウエーハの分割は,基板加工の一種であるといえる。 したがって,本願発明2と引用発明2とは,以下の<一致点>で一致し,<相違点>で相違する。 <一致点> 「切断ラインに沿って内部にレーザ改質領域が形成された基板を研削して前記レーザ改質領域を除去するステップを備える,基板加工方法。」 <相違点> 相違点1:基板加工方法が,本願発明2においては,「インデックステーブルのチャックに対し,ロード位置で,基板をロードし,前記基板の略全面を真空吸着するステップと,前記ロード位置でロードした前記基板を前記インデックステーブルの回転によりレーザ改質領域除去位置へ移動し,前記基板を研削して前記レーザ改質領域を除去するステップと,前記レーザ改質領域除去位置で前記レーザ改質領域を除去した基板を前記インデックステーブルの回転により加工歪除去位置を移動し,前記基板に残存する加工歪を除去するステップと,を備える」ものであるのに対して,引用発明2は,このような構成を備えていない点。 (2)判断 上記2(2)と同様の理由により,引用発明2において,上記2(2)オで検討した動機に基づいて,引用文献3,引用文献4に記載される周知の方法を適用すること,すなわち,上記相違点について本願発明2の構成を採用することは当業者が容易になし得たことである。 また,このような構成を採用したことによる効果も,引用文献1ないし9の記載,及び,技術常識に基づいて当業者が予測する範囲内のものといえる。 4 小括 この出願の請求項2に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1又は引用文献2に記載された発明及び引用文献1ないし引用文献9に記載された事項に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり,この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 また,この出願の請求項2に係る発明は,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2018-09-27 |
結審通知日 | 2018-09-28 |
審決日 | 2018-10-16 |
出願番号 | 特願2017-224391(P2017-224391) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
P 1 8・ 537- WZ (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中田 剛史 |
特許庁審判長 |
飯田 清司 |
特許庁審判官 |
河合 俊英 加藤 浩一 |
発明の名称 | 基板加工装置及び基板加工方法 |
代理人 | 松浦 憲三 |