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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01S
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1346705
審判番号 不服2018-463  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-15 
確定日 2018-11-29 
事件の表示 特願2013-182789「レーザ光源」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 3月16日出願公開、特開2015- 50404〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成25年9月4日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成29年 6月 1日:拒絶理由通知書
平成29年 7月31日:意見書・手続補正書
平成29年10月12日:拒絶査定
平成30年 1月15日:審判請求書・手続補正書

2 本願発明の認定
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年1月15日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。

「光共振器と、
所望の発振モードの周波数を選択的に透過させ、当該発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去する第1の光フィルタと
を備え、
前記光共振器は、第1の反射ミラーと、第2の反射ミラーと、利得部とを有し、
前記利得部と前記第1の反射ミラーの間には前記第1の光フィルタはなく、前記共振器の前記第1の反射ミラーから出射した光が前記第1の光フィルタに入射し、
前記第1の光フィルタは、前記光共振器の外部に設けられ、光共振器構造を構成せず、
前記共振器から前記第1の光フィルタに入射した前記光は、前記所望の発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去されて前記第1の光フィルタから出射し、当該レーザ光源の出力として出力されるレーザ光源。」

3 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2000-209162号公報に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、との理由を含むものである。

4 引用発明の認定
(1)原査定が引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-209162号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が記載されていると認められる(下線は当審が付した。)。
ア 「【従来の技術】」、
「このシステムの光源(レーザダイオード)には、単一縦モード発振分布帰還型レーザダイオードが用いられていた。」(【0003】)、
「図5は従来の光波長多重伝送システムに用いられるレーザダイオードの発光スペクトルを示す図である。同図において横軸は波長を示し、縦軸は相対光出力を示している。」(【0004】)、


「図2はマルチモード型レーザダイオードの発光スペクトルを示す図である。同図2において横軸は波長を示し、縦軸は相対光出力を示している。」(【0007】)、


イ 「【発明の実施の形態】」、
「以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。」(【0014】)、
「図1は本発明の光波長多重用光源を適用した光波長多重伝送システムのブロック図である。」(【0015】)、


「このシステムは、ファブリペロー型のレーザダイオード1aと、レーザダイオード(LD)1aに光ファイバ3aを介して接続された狭帯域光フィルタとしての導波路型のバンドパスフィルタ(B.P.F)2aとで構成された光源6aと、ファブリペロー型のLD1bと、LD1bに光ファイバ3aを介して接続された導波路型のB.P.F2bとで構成された光源6bと、ファブリペロー型のLD1nと、LD1nに光ファイバ3nを介して接続された導波路型のB.P.F2nとで構成された光源6nと、B.P.F2aとB.P.F2bとを接続する光カプラ4aと、B.P.F2aとB.P.F2nとを接続する光カプラ4nと、光ファイバケーブル3に接続された光受信器(O/E)5とで構成されている。各B.P.F2a、2b、2nの透過波長は全て異なっている。なお、図では光源6a?6nの数が3つであるが限定されるものではない。」(【0016】)、
「次に本システムの動作について述べる。」(【0017】)、
「図3は図1に示したシステムに用いられるバンドパスフィルタの透過特性を示す図であり、横軸が波長を示し、縦軸が相対透過量を示す。図4は図3に示したバンドパスフィルタ通過後のマルチモードレーザダイオードの発光スペクトルを示す図であり、横軸が波長を示し、縦軸が相対光出力を示す。」(【0018】)、


「各光源6a?6nのLD1a?1nから出力された光信号は、各B.P.F2a?2nを透過した後、光カプラを介して1本の光ファイバケーブル3に集められO/E5へ送られる。」(【0019】)、
「図4に示すように各B.P.F2a?2nへ入力したマルチモード光は、B.P.F2a?2nによって透過帯域外の波長の光が抑圧され、透過帯域内の波長(1波長)の光のみが選択されてB.P.F2a?2nから出力される。この結果、O/E5へは各光源6a?6nから単一モードの光信号が送られることになる。B.P.F2a?2nにて透過帯域外の不要波が抑圧されているため、干渉することがなく、波長多重伝送が可能となる。なお、光フィルタの透過波長を変えることにより容易に複数の光源を得ることができる。」


(【0020】)、
「ここで、本実施の形態では、狭帯域光フィルタとして、導波路型フィルタを用いたが、ファイバグレーティング型フィルタ、干渉膜型フィルタ、あるいはファブリペロー共振器型フィルタを用いてもよい。」(【0021】)

ウ 引用文献の【0003】・【0004】・【0007】・【0018】・【0020】・図2?図5からすると、引用文献でいう「マルチモード型レーザダイオード」(【0007】)、「マルチモードレーザダイオード」(【0018】等)、「マルチモード光」(【0020】)及び「単一モード」(【0020】)における「モード」との用語が、「縦モード」の意味で使用されていることが明らかである。

(2)上記(1)の各記載によれば、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる(なお、引用発明の認定に活用した上記(1)の記載を、参考までに括弧内に示してある。)。
「(【0016】) ファブリペロー型のレーザダイオード1aと、レーザダイオード(LD)1aに光ファイバ3aを介して接続された狭帯域光フィルタとしての導波路型のバンドパスフィルタ(B.P.F)2aとで構成された光源6aであって、
(【0020】、上記(1)ウ) B.P.F2aへ入力した複数の縦モードを含む光は、B.P.F2aによって透過帯域外の波長の光が抑圧され、透過帯域内の波長(1波長)の光のみが選択されてB.P.F2aから出力され、この結果、光源6aから単一の縦モードの光信号が送られることになる
光源6a。」

5 対比・判断
(1)本願発明と引用発明とを対比する。
ア 本願発明の「光共振器と、」及び「前記光共振器は、第1の反射ミラーと、第2の反射ミラーと、利得部とを有し、」について
引用発明は「ファブリペロー型のレーザダイオード1a」を備えている。そして、技術常識(例えば、岩波理化学辞典第4版(1989年12月15日)1023頁の「光共振器」の欄には、「レーザーでは、反転分布状態にある物質と、その準位間の遷移に対応する周波数の電磁波とを、密に結合してフィードバックを行うことが必要である。このために2つの反射面を対向しておき、高精度に軸合わせした共振器(ファブリ-ペロ共振器)を用い、反転分布物質はその間に入れられる。」と記載されている。)に照らせば、「ファブリペロー型のレーザ」とは、2つの反射面を対向させて構成した光共振器を用い、その中に利得部を有するものと認められる。よって、引用発明の「レーザダイオード1a」は、「光共振器」を備えるとともに、その「光共振器」が「第1の反射ミラー」と「第2の反射ミラー」と「利得部」を有すると認められる。
したがって、引用発明は、本願発明の「光共振器と、」という特定事項と「前記光共振器は、第1の反射ミラーと、第2の反射ミラーと、利得部とを有し、」という特定事項を備える。

イ 本願発明の「所望の発振モードの周波数を選択的に透過させ、当該発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去する第1の光フィルタと」について
(ア)引用発明の「狭帯域光フィルタとしての導波路型のバンドパスフィルタ(B.P.F)2a」は、本願発明の「第1の光フィルタ」に相当する。

(イ)引用発明の「狭帯域光フィルタとしての導波路型のバンドパスフィルタ(B.P.F)2a」は、「複数の縦モードを含む光」が「入力」されるものであるとともに、「透過帯域外の波長の光」を「抑圧」して、「透過帯域内の波長(1波長)の光のみ」を「選択」して「B.P.F2aから出力」し、「この結果、光源6aから単一の縦モードの光信号」を「送」るものである。すなわち、引用発明の「バンドパスフィルタ」は、複数の縦モードを含む光から、単一の縦モードの光信号のみを選択して送っている。そうすると、引用発明の「バンドパスフィルタ(B.P.F)2a」が行う作用は、本願発明でいう「所望の発振モードの周波数を選択的に透過させ、当該発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去する」ことと何ら変わるところはないと認められる。
したがって、引用発明の「狭帯域光フィルタとしての導波路型のバンドパスフィルタ(B.P.F)2a」は、本願発明でいう「所望の発振モードの周波数を選択的に透過させ、当該発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去する」ものである。

(ウ)このように、引用発明は、本願発明の「所望の発振モードの周波数を選択的に透過させ、当該発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去する第1の光フィルタ」との特定事項を備える。

ウ 本願発明の「前記利得部と前記第1の反射ミラーの間には前記第1の光フィルタはなく、前記共振器の前記第1の反射ミラーから出射した光が前記第1の光フィルタに入射し、」について
引用発明の「狭帯域光フィルタとしての導波路型のバンドパスフィルタ(B.P.F)2a」は、「ファブリペロー型の」「レーザダイオード(LD)1aに光ファイバを介して接続された」ものである。すなわち、引用発明の「導波路型のバンドパスフィルタ(B.P.F)2a」(本願発明の「第1の光フィルタ」に相当。)は、「レーザダイオード(LD)1a」の内部に存在するのではなく、その外部に存在する。
そうすると、上記アにも照らせば、引用発明は、本願発明の「前記利得部と前記第1の反射ミラーの間には前記第1の光フィルタはなく、前記共振器の前記第1の反射ミラーから出射した光が前記第1の光フィルタに入射し、」との特定事項を備えているといえる。

エ 本願発明の「前記第1の光フィルタは、前記光共振器の外部に設けられ、光共振器構造を構成せず、」について
上記ウと同様の理由により、引用発明は、本願発明の「前記第1の光フィルタは、前記光共振器の外部に設けられ、光共振器構造を構成せず、」との特定事項を備えている。

オ 本願発明の「前記共振器から前記第1の光フィルタに入射した前記光は、前記所望の発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去されて前記第1の光フィルタから出射し、当該レーザ光源の出力として出力される」「レーザ光源」について
(ア)引用発明の「単一の縦モードの光信号が送られる」「光源6a」が本願発明の「レーザ光源」に相当することは、明らかである。

(イ)上記イ及びウにも照らせば、引用発明の「光源6a」は、本願発明の「前記共振器から前記第1の光フィルタに入射した前記光は、前記所望の発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去されて前記第1の光フィルタから出射し、当該レーザ光源の出力として出力される」との特定事項を備えているといえる。

(ウ)したがって、引用発明は、本願発明の「前記共振器から前記第1の光フィルタに入射した前記光は、前記所望の発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去されて前記第1の光フィルタから出射し、当該レーザ光源の出力として出力される」「レーザ光源」との特定事項を備える。

(2)上記(1)によれば、本願発明と引用発明とは、
「光共振器と、
所望の発振モードの周波数を選択的に透過させ、当該発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去する第1の光フィルタと
を備え、
前記光共振器は、第1の反射ミラーと、第2の反射ミラーと、利得部とを有し、
前記利得部と前記第1の反射ミラーの間には前記第1の光フィルタはなく、前記共振器の前記第1の反射ミラーから出射した光が前記第1の光フィルタに入射し、
前記第1の光フィルタは、前記光共振器の外部に設けられ、光共振器構造を構成せず、
前記共振器から前記第1の光フィルタに入射した前記光は、前記所望の発振モードに隣接する縦モードの周波数の光を除去されて前記第1の光フィルタから出射し、当該レーザ光源の出力として出力されるレーザ光源。」である点で一致し、相違点は存在しない。
したがって、本願発明は引用発明である。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-28 
結審通知日 2018-10-02 
審決日 2018-10-16 
出願番号 特願2013-182789(P2013-182789)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (H01S)
P 1 8・ 574- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小濱 健太  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 近藤 幸浩
山村 浩
発明の名称 レーザ光源  
代理人 速水 進治  

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