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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
管理番号 1346756
異議申立番号 異議2017-701043  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-11-09 
確定日 2018-10-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6126420号発明「レーザマーキング方法、及びレーザマーキングされた樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6126420号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の〔請求項1〕、〔請求項2〕について訂正することを認める。 特許第6126420号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続等の経緯
特許第6126420号の請求項1及び2に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての特許出願は、平成25年3月21日(優先権主張 平成24年3月21日)に出願され、平成29年4月14日に特許権の設定の登録がされた。
本件特許について、同年5月10日に特許掲載公報が発行されたところ、発行の日から6月以内である同年11月9日に、特許異議申立人 磯崎紀雄から本件特許に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

平成30年 1月11日付け:取消理由通知書
平成30年 3月19日付け:意見書(特許権者)
平成30年 4月25日付け:取消理由通知書(決定の予告)
平成30年 6月29日付け:意見書(特許権者)
平成30年 6月29日付け:訂正請求書
(この訂正請求書による訂正の請求を、以下、「本件訂正請求」という。)
平成30年 8月 9日付け:意見書(特許異議申立人)

第2 本件訂正請求について
1 訂正の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第6126420号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1及び2について訂正することを求める、というものである。

2 請求項1についての訂正
(1)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める請求項1についての訂正は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1において、
「前記表面層は、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなり、」
との記載を、
「前記表面層は、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなり、」
と訂正する。
訂正事項1による訂正は、〔請求項1〕に対して請求されたものである。

(2)訂正の適否
特許請求の範囲の請求項1についての、訂正事項1による訂正は、表面層の材質の選択肢から、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)を除外し、「延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)」に限定する訂正である。
したがって、訂正事項1による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項1による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。

3 請求項2についての訂正
(1)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める請求項2についての訂正は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。

ア 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2において、
「前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキによる100本以上の線数の凹凸からなり、」
との記載を、
「前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキによる100本以上の線数の凹凸からなり(但し、該印刷層の白インキ中の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であるものを除く)、」
と訂正する。
訂正事項2による訂正は、〔請求項2〕に対して請求されたものである。

(2)訂正の適否
ア 特許請求の範囲の請求項2についての、訂正事項2による訂正は、印刷層に、「(但し、該印刷層の白インキ中の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であるものを除く)」という限定を加える訂正である。
したがって、訂正事項2による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
イ 特許異議申立人は、平成30年8月9日付け意見書(3(1)キ)において、「訂正事項2で訂正しようとしている事項は、請求項2の発明における印刷層を、本件特許明細書及び図面の記載からも、また先行技術からも、導くことのできない、「酸化チタン系顔料の塗布量のみで印刷層を特定する」という新たな技術的事項を導入しようとするものであるということが言える」と主張する。
しかしながら、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項2に記載された発明から、「印刷層の白インキ中の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上である」という態様を除外するものである。そして、除外された後の発明について検討すると、訂正事項2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるとはいえないから、前記主張は採用できない。
ウ また、特許異議申立人は、平成30年8月9日付け意見書(3(2))において、訂正請求に付随して、特許法第36条第4項第1号並びに同第36条第6項第1号及び第2号違反が生じる旨主張する。
しかしながら、前記イのとおり、訂正事項2による訂正は、特許請求の範囲の請求項2に記載された発明から、「印刷層の白インキ中の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上である」という態様を除外するだけのものである。そして、除外された態様は明確であるから、除外された後の発明も明確である。また、発明の詳細な説明の記載からみて、除外された後の発明は、引き続き、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えないものと理解できる。加えて、発明の詳細な説明には、除外された後の発明について、明確に説明がされているとともに、それを作れるように、かつ、使用できるように記載されている。
そうしてみると、訂正請求に付随して、特許法36条4項1号並びに同36条6項1号及び2号違反が生じるということはできないから、前記主張は採用できない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正(訂正事項2による訂正)は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合する。

第3 当合議体が通知した取消の理由について
1 本件特許発明について
前記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められた。
したがって、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定されるとおりの、以下のものである。

「【請求項1】
少なくとも表面層、印刷層、シーラント層から構成されるフィルムに、レーザマーキングする方法において、
前記表面層は、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなり、
前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキが100本以上の線数の版を使用してグラビア印刷法あるいはフレキソ印刷法で印刷されてなり、
前記シーラント層は、熱溶融接着可能なポリオレフィンフィルムからなり、
前記印刷層の表面を覆う表面層と前記印刷層に裏面で接するシーラント層とで挟持された状態にある前記印刷層に、
前記表面層側からレーザ照射を行い、
前記表面層を通過した前記レーザが、前記印刷層を発熱させて前記印刷層の構成物を変色させてマーキングすることを特徴とするレーザマーキング方法。
【請求項2】
少なくとも表面層、印刷層、シーラント層から構成されるフィルムにおいて、
前記表面層は、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなり、
前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキによる100本以上の線数の凹凸からなり(但し、該印刷層の白インキ中の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であるものを除く)、
前記シーラント層は、熱溶融接着可能なポリオレフィンフィルムからなり、
前記印刷層と前記表面層との間にレーザ照射炭化物質からなる情報表示を有することを特徴とするフィルム。」

2 取消の理由の概要
平成30年4月25日付けで特許権者に通知した取消の理由(決定の予告、以下、「取消の理由」という。)は、概略、本件訂正請求による訂正前の請求項1及び請求項2に係る発明は、いずれも、その優先権主張の日前に頒布された刊行物である甲第1号証(特開2011-152735号公報)に記載された発明及び甲第3号証(近藤利昭外8名編集,「グラビア技術総覧」,株式会社加工技術研究会,1994年7月14日発行,p.124-134)に記載された技術事項に基づいて、本件特許の出願の優先権主張の日前にその発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、その特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであるから、本件特許は取り消されるべきものである、というものである。

3 当合議体の判断
(1)甲第1号証の記載
取消の理由で引用された甲第1号証(特開2011-152735号公報)には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、下線は当合議体が付した。以下、同じ。

ア 「【請求項1】
レーザの走査で色差に優れる印字ができ、かつ、外観に優れる包装材料であって、該包装材料は少なくとも基材と、該基材の1方の面へ白インキ層、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなり、前記基材側からレーザ光を走査することで模様を印字でき、該印字の色差ΔEが40以上であり、基材がポリエステル系樹脂フィルムで、レーザ光の走査を受けた後でも表面に変形が生じないことを特徴とする包装材料。
【請求項2】
走査する上記レーザ光のエネルギが2?5Wであり、
上記白インキ層が少なくとも酸化チタン系顔料とバインダからなり、酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であることを特徴とする請求項1記載の包装材料。」

イ 「【0011】
(包装材料)本願発明の包装材料10は、図1に示すように、基材11、該基材11の1方の面へ白インキ層13、及びポリオレフィン系樹脂層15が順に積層する。基材11側からレーザ光を走査することで模様を印字でき、該印字の色差ΔEを40以上とすることができる。しかも、基材11がポリエステル系樹脂フィルムは(当合議体注:「か」の誤記であると認める。)らなり、レーザ光の走査を受けた後でも表面に変形が生じないので、レーザ印字後でも外観に優れている。また、層間にはレーザ印字に影響のない範囲で他の層を設けてもよい。
(当合議体注:図1は以下のものである。

)
【0012】
(作用効果)本願発明によれば、走査するレーザ光のエネルギを2?5Wとし、白インキ層13を少なくとも酸化チタン系顔料とバインダから構成し、酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上とする。このようにすることで、白インキ層のみで、レーザ照射によって基材が劣化したり変色せず、レーザ印字の濃度差が大きく判読しやすく、少ない層構成で安価に製造できる包装材料を提供することができる。
【0013】
(基材)基材11としては、ポリエステル系樹脂を用い、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが例示できる。ポリエステル系樹脂としては、延伸、未延伸のどちらでもよいが、機械強度や寸法安定性を有するものが好ましいので、2軸延伸フィルムが好ましい。
【0014】
また、基材11には、加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度、その他等を改良、改質する目的で、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤なっどを添加してもよい。基材11の厚さとしては、特に制限を受けるものではないが、包装材料としての適性及び加工性を考慮すると、4.5?250μmであることが好ましく、より好ましくは12?100μmである。」

ウ 「【0018】
上記のバインダ、及び酸化チタン系顔料、さらに、必要に応じて添加剤を添加し、溶媒、希釈剤等で分散、混練してインキ組成物とする。該インキ組成物を用いて、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、その他の従来の印刷方式で、基材11へ印刷し白インキ層13を形成すればよい。また、白インキ層13はレーザ印字する予定の所望個所に形成すればよく、全面に形成する必要はなく、他の絵柄と共用してもよい。
【0019】
包装材料10の基材11側からレーザ光を白インキ層13に照射することで、レーザ光の熱エネルギーによって変色させレーザ印字することができる。このため、使用する白インキ層13には、レーザ光吸収剤を配合したり、使用するバインダを特定してレーザ光吸収能を向上させてもよいが、従来公知の白インキ層13でもレーザ印字可能な包装材料を提供しうるもので、市販の白インクを使用することもできる。
【0020】
白インキ層13の厚さとしては、1?20μm程度、より好ましくは2?10μmである。しかしながら、白インキ層13の酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比を酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1と酸化チタン系顔料の含有量を多めに規制し、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上と多めにすることによって、初めて、白インキ層のみでレーザ印字での濃度差が大きく、判読しやすくなる。詳細は参考例、比較例、実施例で述べる。
【0021】
白インキ層13は1回印刷(1度刷り)でも、複数回の印刷(多色刷り)で形成してもよく、要は後述する酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比、及び、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上とすればよい。例えば、グラビア印刷で行う場合、グラビア印刷版の版深を15?40μmが好ましく、版深が15μm以下では印刷回数が1回では濃度不十分で多色刷りとなる欠点があり、版深が40μm以上では印刷時の乾燥性が悪く、印刷走行スピードが低下して好ましくない。また、インキ組成物中の酸化チタン系顔料の配合は25?50%が好ましく、25%以下場合にはインキが薄く、隠蔽性不足となり、50%以上の場合には無機成分(顔料)が多く、インキ被膜の凝集力が低下し、脱落したり、皮膜強度が低下する欠点がある。さらに、印刷回数は1?3回が好ましく、4回以上の場合ではコスト面で不利となる。」

エ 「【0022】
(ポリオレフィン系樹脂層)ポリオレフィン系樹脂層15は、熱によって溶融し相互に融着し得る各種の熱融着性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、・・・(中略)・・・等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0024】
(他の層)包装材料10の層間及び/又は基材面にはレーザ印字に影響のない範囲で、中間基材、デザイン印刷層などの他の層を設けてもよい。このような他の層としては、各他の層をドライラミネート積層法や溶融押出し法で積層したり、公知の印刷法で形成すればよい。
・・・(省略)・・・
【0026】
(デザイン印刷層)包装材料10には、基材11のレーザ印字領域以外の内側または外側に、デザイン印刷層を有していてもよい。デザイン印刷層はグラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷などの従来公知の印刷方式で形成することができる。デザイン印刷層は、白インキ層13の印刷時に多色刷り法で同時に行ってもよく、もちろん、白インキ層13のレーザ印字領域外へ、デザイン絵柄を同じ版を用いて印刷してもよい。」

オ 「【0027】
(印字法)レーザ印字方法は、基材11/白インキ層13/ポリオレフィン系樹脂層15からなる包装材料10の、基材11面よりにレーザ光を照射して、白インキ層13を変色させて印字する。レーザ光を照射すると白インキ層13がレーザ光のエネルギーを吸収して加熱変色し、印字される。この際、白インキ層13の質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上でないと、吸収エネルギーが強すぎるため下側にあるポリオレフィン系樹脂層15が溶融したり、シワやピンホールを形成する恐れもある。」

(2)引用発明
甲第1号証には請求項1の記載を引用して記載された請求項2に係る発明が記載されている(以下、「請求項2発明」という。)。
ここで、請求項2発明の「包装材料」に関して、甲第1号証の【0011】には、「本願発明の包装材料10は、図1に示すように、基材11、該基材11の1方の面へ白インキ層13、及びポリオレフィン系樹脂層15が順に積層する。」と記載されている。また、請求項2発明の「ポリエステル系樹脂フィルム」に関して、甲第1号証の【0013】には、「基材11としては、ポリエステル系樹脂を用い、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などが例示できる。ポリエステル系樹脂としては、延伸、未延伸のどちらでもよい」と記載されている。さらに、請求項2発明の「白インキ層」に関して、甲第1号証の【0020】には、「白インキ層13の厚さとしては、1?20μm程度」と、【0018】には、「該インキ組成物を用いて、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、その他の従来の印刷方式で、基材11へ印刷し白インキ層13を形成すればよい」と、【0021】には、「グラビア印刷で行う場合、グラビア印刷版の版深を15?40μmが好ましく」と記載されている。その上、請求項2発明の「ポリオレフィン系樹脂層」に関して、甲第1号証の【0022】には、「ポリオレフィン系樹脂層15は、熱によって溶融し相互に融着し得る各種の熱融着性を有するポリオレフィン系樹脂等を使用することができる。具体的には、・・・(中略)・・・等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる」と記載されている。
以上勘案すると、甲第1号証には以下の2つの発明が記載されている。

ア 引用発明1
「 包装材料の基材側からレーザ光を白インキ層に照射することで、レーザ光の熱エネルギーによって包装材料を変色させレーザ印字する、レーザ印字方法であって、
前記包装材料は、レーザ光のエネルギが2?5Wであるレーザの走査で色差に優れる印字ができ、かつ、外観に優れ、レーザ光の走査を受けた後でも表面に変形が生じない包装材料であって、該包装材料は基材と、該基材の1方の面へ白インキ層(厚さ1?20μm程度)、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなり、前記基材側からレーザ光を走査することで、レーザ光の熱エネルギーによって変色させて模様を印字でき、該印字の色差ΔEが40以上であり、基材が、延伸又は未延伸の、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂フィルムであり、
上記ポリオレフィン系樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得る熱融着性を有する樹脂からなるフィルムであり、
上記白インキ層が少なくとも酸化チタン系顔料とバインダからなり、酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であり、白インキ層はグラビア印刷又はフレキソ印刷方式で形成されており、グラビア印刷で行う場合、グラビア印刷版の版深は15?40μmが好ましい、レーザ印字方法。」(以下、「引用発明1」という。)

イ 引用発明2
「 レーザ光のエネルギが2?5Wであるレーザの走査で色差に優れる印字ができ、かつ、外観に優れ、レーザ光の走査を受けた後でも表面に変形が生じない包装材料であって、該包装材料は基材と、該基材の1方の面へ白インキ層(厚さ1?20μm程度)、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなり、前記基材側からレーザ光を走査することで、レーザ光の熱エネルギーによって変色させて模様を印字でき、該印字の色差ΔEが40以上であり、基材が、延伸又は未延伸の、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂フィルムであり、
上記ポリオレフィン系樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得る熱融着性を有する樹脂からなるフィルムであり、
上記白インキ層が少なくとも酸化チタン系顔料とバインダからなり、酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であり、白インキ層はグラビア印刷又はフレキソ印刷方式で形成されており、グラビア印刷で行う場合、グラビア印刷版の版深は15?40μmが好ましい、包装材料。」(以下、「引用発明2」という。)

(3)甲第3号証の記載
取消の理由で引用された甲第3号証(近藤利昭外8名編集,「グラビア技術総覧」,株式会社加工技術研究会,1994年7月14日発行,p.124-134)には、次の事項が記載されている。

ア 「1-1 標準的な従来のスクリーン
従来から使用されているグラビア用白線スクリーンで、通常100?250線までのものが使用されている。表1にその寸法と標準深度などを示す。


」(第124頁左欄第17行?右欄第2行)

イ 「包装や出版分野の通常のグラビア製版では、上記のうちで150?200線が用いられる」(第124頁右欄第13行?第14行)

ウ 「100線スクリーンは通常60μ程度まで腐食が可能であり、パートコートなど高粘度の接着剤などの塗工や、不織布など粗面で吸油性が高く、繊維の間にインキが浸み込んでしまい表面のインキ濃度が出にくく、たっぷりとインキを転移させなければならないような場合に使用される。」(第125頁左欄第2行?第7行)

エ 「133線スクリーンは、100線では粗すぎて文字や画線の端のビビリが目立つが、しかし150線ではどうしても濃度が不足するような場合に使用される。」(第125頁左欄第8行?第10行)

オ 「175線は最も一般的に使用されるスクリーンで、パッケージや出版に広く用いられる標準線数である。」(第125頁左欄第14行?第15行)

(4)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1において、「包装材料は基材と、該基材の1方の面へ白インキ層(厚さ1?20μm程度)、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなり」、また、「基材」、「ポリオレフィン系樹脂層」が「フィルム」であることは、技術的にみて明らかである。そして、引用発明1の「白インキ層」の厚さは1?20μm程度であるから、引用発明1の「包装材料」は、少なくとも「基材」、「白インキ層」及び「ポリオレフィン系樹脂層」から構成されるフィルムであるといえる。

(イ)引用発明1において、「基材」は、「延伸、未延伸の、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂フィルム」であり、その「1方の面へ白インキ層(厚さ1?20μm程度)、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層され」ているから、「基材」は「包装材料」の表面の層であるといえる。
そうしてみると、引用発明1の「基材」と、本件特許発明1の「非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからな」る「表面層」とは、「表面層」である点で共通する。

(ウ)引用発明1では、「基材の1方の面へ白インキ層(厚さ1?20μm程度)、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなり」、また、「ポリオレフィン系樹脂層は、熱によって溶融し相互に融着し得る熱融着性を有するフィルム」で、包装材料に設けられている。
そうしてみると、引用発明1の「ポリオレフィン系樹脂層」は、本件特許発明1の「熱溶融接着可能なポリオレフィンフィルムからな」る「シーラント層」に相当する。

(エ)引用発明1では、「基材の1方の面へ白インキ層(厚さ1?20μm程度)、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層されて」いるから、「白インキ層」は、白インキ層を覆う基材と白インキ層と基材と反対側で接するポリオレフィン系樹脂層とで挟持された状態にあるといえる。ここで、「基材」は「表面層」なので、前記「反対側」は裏面であるといえる。また、引用発明1の「白インキ層」は、「少なくとも酸化チタン系顔料とバインダからなり、酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であり」、「グラビア印刷又はフレキソ印刷方式で形成されて」いる。
そうしてみると、引用発明1の「白インキ層」は、印刷層であり、引用発明1の「白インキ層」と、本件特許発明1の「白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキが100本以上の線数の版を使用してグラビア印刷法あるいはフレキソ印刷法で印刷されてなり、」「前記印刷層の表面を覆う表面層と前記印刷層に裏面で接するシーラント層とで挟持された状態にある」「印刷層」とは、「白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキがグラビア印刷法あるいはフレキソ印刷法で印刷されてなり、」「前記印刷層の表面を覆う表面層と前記印刷層に裏面で接するシーラント層とで挟持された状態にある」「印刷層」である点で共通する。

(オ)引用発明1の「レーザ印字方法」では、「包装材料の基材側からレーザ光を白インキ層に照射することで、レーザ光の熱エネルギーによって包装材料を変色させ」るから、基材を通過したレーザが白インキ層を発熱させて白インキ層の構成物を変色させて(マーキングである)印字をしているといえる。
そうしてみると、引用発明1の「包装材料の基材側からレーザ光を白インキ層に照射することで、レーザ光の熱エネルギーによって包装材料を変色させレーザ印字する、レーザ印字方法」は、本件特許発明1の「前記印刷層に、前記表面層側からレーザ照射を行い、前記表面層を通過した前記レーザが、前記印刷層を発熱させて前記印刷層の構成物を変色させてマーキングする」「レーザマーキング方法」に相当する。

イ 一致点及び相違点
(ア)一致点
本件特許発明1と引用発明1は、次の構成で一致する。

「少なくとも表面層、印刷層、シーラント層から構成されるフィルムに、レーザマーキングする方法において、
前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキがグラビア印刷法あるいはフレキソ印刷法で印刷されてなり、
前記シーラント層は、熱溶融接着可能なポリオレフィンフィルムからなり、
前記印刷層の表面を覆う表面層と前記印刷層に裏面で接するシーラント層とで挟持された状態にある前記印刷層に、
前記表面層側からレーザ照射を行い、
前記表面層を通過した前記レーザが、前記印刷層を発熱させて前記印刷層の構成物を変色させてマーキングするレーザマーキング方法。」

(イ)相違点
本件特許発明1と引用発明1は、次の点で相違する。

(相違点1)
本件特許発明1では、「前記表面層は、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからな」るのに対し、引用発明1では、「基材が、延伸、未延伸の、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂フィルムで」ある点。

(相違点2)
本件特許発明1では、印刷層が、「100本以上の線数の版を使用して」グラビア印刷法あるいはフレキソ印刷法で印刷されてなるのに対し、引用発明1では、白インキ層がグラビア印刷又はフレキソ印刷方式で形成される際に使用する版の線数について特定がない点。

ウ 判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。
甲第1号証の【0011】の記載から、包装材料の表面をなす基材をポリエステル系樹脂フィルムとすれば、表面に変形が生じないので、レーザ印字後でも外観に優れるということを理解することができる。そうすると、引用発明1では「基材」が表面層であるといえる。そして、引用発明1の「基材」は、「延伸、未延伸の、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル系樹脂フィルムで」あるところ、基材がポリエステル系樹脂フィルムからなることにより、レーザ光の走査を受けた後でも表面に変形が生じないので、レーザ印字後でも外観に優れている。
また、甲第1号証の請求項1の「該包装材料は少なくとも基材と、該基材の1方の面へ白インキ層、及びポリオレフィン系樹脂層が順に積層されてなり」という記載からみて、甲第1号証には、基材が表面層とはならない場合の発明も、示唆されているように解される。ここで、甲第1号証の【0024】には、他の層を設けても良いことが記載されている。しかしながら、甲第1号証の【0026】の記載からみて、基材面に設けられる他の層は、高々デザイン印刷層であり、「延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれか」からなる層を設けることは記載も示唆もされていない。かえって、甲第1号証の【0011】の記載からみて、甲第1号証には、事実上、表面層がポリエステル系樹脂フィルムからなる基材である発明のみが開示されているといえる。なお、甲第1号証の【0014】の記載からみて、甲第1号証においては、ポリエステル系樹脂を実質的に「延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)」とみなし得るようなものとする添加剤は開示されていない。
そうしてみると、引用発明1において、表面層としての基材をポリエステル系樹脂フィルム以外のものとすることは想定されていないから、ポリエステル系樹脂フィルム以外の基材が周知のものであるとしても、引用発明1の基材を、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなるものとし、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、引用発明1及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ なお、特許異議申立人は、平成30年8月9日付け意見書(3(3)ア(エ))において、「甲第1号証に記載された発明において基材層(表面層)として、甲第1号証に具体的に記載されたポリエステル系樹脂に代えて、包装材料の表面層として周知であり、レーザーマーキングの対象の表面層としても知られている「延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれか」を選択して使用することは、当業者が容易になし得ることに過ぎない。」と主張する。
しかしながら、前記ウで検討したとおり、引用発明1において、表面層としての基材をポリエステル系樹脂フィルム以外のものとすることは想定されていないから、引用発明1の基材を、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなるものとすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえず、前記主張は採用できない。

(5)本件特許発明2について
ア 一致点及び相違点
(ア)一致点
前記(4)アの場合と同様にして、本件特許発明2と引用発明2とを対比すると、両者は、次の構成で一致する。

「少なくとも表面層、印刷層、シーラント層から構成されるフィルムにおいて、
前記表面層は、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなり、
前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキによりなり、
前記シーラント層は、熱溶融接着可能なポリオレフィンフィルムからなり、
前記印刷層と前記表面層との間にレーザ照射炭化物質からなる情報表示を有することを特徴とするフィルム。」

(イ)相違点
本件特許発明2と引用発明2は、次の点で相違する。

(相違点3)
本件特許発明2は、「前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキによる100本以上の線数の凹凸からなり(但し、該印刷層の白インキ中の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であるものを除く)」という構成を具備するのに対し、引用発明2は、白インキ層の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であり、また、白インキ層の凹凸の線数について特定がない点。

イ 判断
相違点3について検討する。
引用発明2の「白インキ層が少なくとも酸化チタン系顔料とバインダからなり、酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であ」るという構成に関して、甲第1号証の【0020】には、「白インキ層13の酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比を酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1と酸化チタン系顔料の含有量を多めに規制し、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上と多めにすることによって、初めて、白インキ層のみでレーザ印字での濃度差が大きく、判読しやすくなる。」と記載されている。
また、甲第1号証の【請求項1】及び【請求項2】の関係からみて、甲第1号証には、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上とは限らない発明も、形式的には開示されているように解される。しかしながら、本件特許発明2の「印刷層」は、「酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキ」からなる。したがって、引用発明2としては、「白インキ層」が「少なくとも酸化チタン系顔料とバインダ」からなると特定されたものを認定するのが妥当である。そして、「白インキ層」が「少なくとも酸化チタン系顔料とバインダ」からなる場合の発明に関して、甲第1号証の【0012】には、「白インキ層13を少なくとも酸化チタン系顔料とバインダから構成し、酸化チタン系顔料とバインダの質量配合比が酸化チタン系顔料:バインダ=2?10:1で、かつ、酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上とする」と記載されている。そうしてみると、甲第1号証には、「白インキ層」が「少なくとも酸化チタン系顔料とバインダ」からなる場合においては、もっぱら「酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上である」発明のみが開示されていると解するのが妥当である。したがって、甲第1号証には、白インキ層の酸化チタン系顔料の塗布量を2.5g/m^(2)以上としない発明は記載も示唆もされていないといえる。
そうしてみると、引用発明2において、白インキ層の酸化チタン系顔料の塗布量を2.5g/m^(2)以上としないことは想定されていないから、引用発明2において、白インキ層の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上である場合を除いて、相違点3に係る本件特許発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明2は、引用発明2及び甲第3号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

エ なお、特許異議申立人は、平成30年8月9日付け意見書(3(3)イ(キ))において、「訂正によって、上記の範囲を除外することには何らの技術的意義がなく、訂正に係る請求項2の発明は、甲第1号証に記載された発明と甲第3?4号証に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものである。」と主張する。
しかしながら、前記ウで検討したとおり、引用発明2において、白インキ層の酸化チタン系顔料の塗布量を2.5g/m^(2)以上としないことは想定されていないから、引用発明2において、白インキ層の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上である場合を除くことは、当業者が容易になし得たことであるとはいえず、前記主張は採用できない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、決定の予告で通知した取消の理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面層、印刷層、シーラント層から構成されるフィルムに、レーザマーキングする方法において、
前記表面層は、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなり、
前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキが100本以上の線数の版を使用してグラビア印刷法あるいはフレキソ印刷法で印刷されてなり、
前記シーラント層は、熱溶融接着可能なポリオレフィンフィルムからなり、
前記印刷層の表面を覆う表面層と前記印刷層に裏面で接するシーラント層とで挟持された状態にある前記印刷層に、
前記表面層側からレーザ照射を行い、
前記表面層を通過した前記レーザが、前記印刷層を発熱させて前記印刷層の構成物を変色させてマーキングすることを特徴とするレーザマーキング方法。
【請求項2】
少なくとも表面層、印刷層、シーラント層から構成されるフィルムにおいて、
前記表面層は、非晶質無延伸PET(APET)、延伸PET(OPET)、結晶性PET(CPET)、延伸PP(OPP)、無延伸PP(CPP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、延伸Ny(ONy)、無延伸Ny(CNy)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、延伸PS(OPS)のうちのいずれかからなり、
前記印刷層は、白色で、酸化チタンを含有するグラビア用白インキあるいはフレキソ用白インキによる100本以上の線数の凹凸からなり(但し、該印刷層の白インキ中の酸化チタン系顔料の塗布量が2.5g/m^(2)以上であるものを除く)、
前記シーラント層は、熱溶融接着可能なポリオレフィンフィルムからなり、
前記印刷層と前記表面層との間にレーザ照射炭化物質からなる情報表示を有することを特徴とするフィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-10-19 
出願番号 特願2013-57906(P2013-57906)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B41M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮澤 浩  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 川村 大輔
関根 洋之
登録日 2017-04-14 
登録番号 特許第6126420号(P6126420)
権利者 キユーピー株式会社
発明の名称 レーザマーキング方法、及びレーザマーキングされた樹脂組成物  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  
代理人 小島 一真  
代理人 中村 行孝  
代理人 砂山 麗  
代理人 永井 浩之  
代理人 砂山 麗  
代理人 柏 延之  
代理人 柏 延之  
代理人 小島 一真  
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