• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B60R
管理番号 1346758
異議申立番号 異議2017-700425  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-04-27 
確定日 2018-10-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6018658号発明「インフレータを製造する方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6018658号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9?14〕、〔15、17〕、16、18?24について訂正することを認める。 特許第6018658号の請求項1?8、15、17に係る特許を取り消す。  
理由 第1 手続の経緯
特許第6018658号の請求項1?17に係る特許についての出願は、平成28年10月7日に特許権の設定登録がされ、その後、平成29年4月27日に、特許異議申立人松本征二(以下「特許異議申立人」という。)より、請求項1?8、15、17に係る特許について特許異議の申立てがなされ、平成29年7月24日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年10月24日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年11月6日付で訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、平成30年1月26日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者からは応答がなかったものである。

第2 訂正の内容及び訂正の適否
1 訂正の内容
平成29年10月24日になされた訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(なお、下線部は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、」と記載されているのを、
「前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に、事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接着する工程を有し、」に訂正する(請求項1を直接または間接に引用する請求項2?8も同様に訂正する。)。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」に訂正する(請求項9を直接または間接に引用する請求項10?14も同様に訂正する。)。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、金属、セラミックおよび/またはプラスチック材料で作製され、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と改め、新たに請求項18とする。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、インフレータハウジングであり、またはインフレータハウジングの部分的な要素を形成し、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と改め、新たに請求項19とする。

(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9に
請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第2の構成要素(114)が、前記外側に対して閉じられる事前製造した点火器であり、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と改め、新たに請求項20とする。

(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、前記第2の構成要素(114)を受け入れて取り付ける孔(120)を有し、前記孔(120)の縁部(122)が、射出成形中に前記プラスチック基体(116)に埋め込まれ、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と改め、新たに請求項21とする。

(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部の部品だけを覆い、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と改め、新たに請求項22とする。

(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の全部分を覆い、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と改め、新たに請求項23とする。

(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項1から8のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と記載されているのを、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部から突出し、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。」と改め、新たに請求項24とする。

(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項15に
「接着剤膜(142)を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に施すステップと、」と記載されているのを、
「事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に接着するステップと、」に訂正する(請求項15を引用する請求項17も同様に訂正する。)。

(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項16に
「請求項15に記載の方法において、前記プラスチック基体(116)の射出成形中に、前記接着剤膜(142)のプラスチック膜(144)の材料が、前記プラスチック基体(116)の材料に溶け込むことを特徴とする方法。」と記載されているのを、
「特に車両乗員拘束システムのためのインフレータ(10)を製造する方法において、
金属および/またはプラスチック材料および/またはセラミック材料を含む第1の構成要素(112)を用意するステップと、
前記第1の構成要素(112)に接続される第2の構成要素(114)を用意するステップと、
接着剤膜(142)を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に施すステップと、
前記第1の構成要素(112)に対して前記第2の構成要素(114)を配置するステップと、
射出成形によって前記第1および第2の構成要素(112、114)を少なくとも部分的に一緒に囲み、それによって前記構成要素(112、114)を接続するプラスチック基体(116)を形成するステップとを有し、前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、前記接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であること
を特徴とし、
前記プラスチック基体(116)の射出成形中に、前記接着剤膜(142)のプラスチック膜(144)の材料が、前記プラスチック基体(116)の材料に溶け込むことを特徴とする方法。」に訂正する。

(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項17に
「請求項15または16に記載の方法において、前記接着剤膜(142)を施している最中または後に、前記接着剤膜(142)の接着剤が、加圧または加熱によって活性化されることを特徴とする方法。」と記載されているのを、
「請求項15に記載の方法において、前記接着剤膜(142)を施している最中または後に、前記接着剤膜(142)の接着剤が、加圧または加熱によって活性化されることを特徴とする方法。」に訂正する。

2 訂正の適否
2-1 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程」について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0194】及び段落【0198】の記載を根拠に、それが「前記第1の構成要素(112)に、事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接着する工程」であることを限定するものである。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書に記載された事項の範囲内において、「前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2?9について
訂正事項2は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであり、
訂正事項3は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用する請求項2を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであり、
訂正事項4は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用する請求項3を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであり、
訂正事項5は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用する請求項4を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであり、
訂正事項6は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用する請求項5を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであり、
訂正事項7は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用する請求項6を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであり、
訂正事項8は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用する請求項7を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであり、
訂正事項9は、訂正前の請求項9が請求項1?8のいずれかの記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少するとともに、請求項1を引用する請求項8を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、
上記訂正事項2?9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に規定する「特許請求の範囲の減縮」及び「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項10について
訂正事項10による訂正は、訂正前の請求項15に記載した発明を特定するために必要な事項である「接着剤膜(142)を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に施すステップ」について、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落【0194】及び段落【0198】の記載を根拠に、それが「事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に接着するステップ」であることを限定するものである。
したがって、訂正事項10による訂正は、本件明細書に記載された事項の範囲内において、「接着剤膜(142)を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に施すステップ」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(4)訂正事項11について
訂正事項11は、訂正前の請求項16が請求項15の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

(5)訂正事項12について
訂正事項12は、訂正前の請求項17が請求項15または16の記載を引用する記載であるところ、多数項引用形式の請求項の引用請求項数を減少し、請求項15のみを引用するものに訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

2-2 一群の請求項
(1)訂正事項1?9に係る訂正前の請求項1?14について、請求項2?14は直接又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?14に対応する訂正後の請求項1?14、18?24は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項10?12に係る訂正前の請求項15?17について、請求項16及び17は直接又は間接的に請求項15を引用しているものであって、訂正事項10によって記載が訂正される請求項15に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項15?17に対応する訂正後の請求項15?17は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2-3 独立特許要件
(1)本件において、訂正前の請求項1?8、15、17について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1?8、15、17に係る訂正事項1、10、12に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定される独立特許要件は課されない。
また、訂正事項11は、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項16について、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定される他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とする訂正であるから、上記独立特許要件は課されない。
(2)他方、訂正事項2?9は、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項9?14について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。したがって、かかる訂正により訂正された請求項9?14、18?24に係る発明については、上記独立特許要件について検討する必要があるので、以下検討する。
ア 訂正後の請求項9に係る発明について
訂正後の請求項9に係る発明は、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項9について、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めたものであって、後記第3の【請求項9】に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、上記訂正後の請求項9に係る発明は、少なくとも「前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えること」(以下「事項A」という。)を発明特定事項として具備するものであるところ、上記事項Aが当業者にとって容易想到であると解すべき合理的な理由はないし、また、他に訂正後の請求項9に係る発明が特許を受けることができないとする理由も発見しない。
したがって、訂正後の請求項9に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

イ 訂正後の請求項10?14に係る発明について
訂正後の請求項10?14に係る発明は、後記第3の【請求項10】?【請求項14】に記載された事項により特定されるとおりのものであり、訂正後の請求項9を直接又は間接的に引用するものであって、訂正後の請求項9に係る発明をさらに減縮するものであるから、上記アで述べた訂正後の請求項9に係る発明と同様に、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

ウ 訂正後の請求項18?24に係る発明について
訂正後の請求項18?24に係る発明は、特許異議の申立てがされていない訂正前の請求項9について、請求項1及び2を引用するもの、請求項1及び3を引用するもの、請求項1及び4を引用するもの、請求項1及び5を引用するもの、請求項1及び6を引用するもの、請求項1及び7を引用するもの、請求項1及び8を引用するもののそれぞれについて請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めたものであって、後記第3の【請求項18】?【請求項24】に記載された事項により特定されるとおりのものである。
したがって、訂正後の請求項18?24に係る発明は、上記訂正後の請求項9に係る発明をさらに減縮するものといえるから、上記アで述べた訂正後の請求項9に係る発明と同様に、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

2-4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項、第6項及び第7項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1?8〕、〔9?14〕、〔15、17〕、16、18?24について請求項ごとに訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?24に係る発明(以下「本件発明1?24」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に、事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接着する工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能である
ことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインフレータを製造する方法において、前記第1の構成要素(112)が、金属、セラミックおよび/またはプラスチック材料で作製されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインフレータを製造する方法において、前記第1の構成要素(112)が、インフレータハウジングであり、またはインフレータハウジングの部分的な要素を形成することを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記第2の構成要素(114)が、前記外側に対して閉じられる事前製造した点火器であることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記第1の構成要素(112)が、前記第2の構成要素(114)を受け入れて取り付ける孔(120)を有し、前記孔(120)の縁部(122)が、射出成形中に前記プラスチック基体(116)に埋め込まれることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部の部品だけを覆うことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の全部分を覆うことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部から突出することを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項9】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項10】
請求項9に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)が、前記プラスチック基体(116)の材料と同じ材料で作製されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項11】
請求項9に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)が、前記プラスチック基体(116)の材料との接続を確立するのに適している材料で作製されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤層(146)の接着剤が、所定の接触圧または熱的影響によって活性化できることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)の材料および前記プラスチック基体(116)の材料が、前記プラスチック基体(116)の射出成形中に、前記プラスチック膜(144)が、前記プラスチック基体(116)と少なくとも部分的に溶けるように選択されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項14】
前記請求項9から13のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)が、熱可塑性エラストマを含むことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項15】
特に車両乗員拘束システムのためのインフレータ(10)を製造する方法において、
金属および/またはプラスチック材料および/またはセラミック材料を含む第1の構成要素(112)を用意するステップと、
前記第1の構成要素(112)に接続される第2の構成要素(114)を用意するステップと、
事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に接着するステップと、
前記第1の構成要素(112)に対して前記第2の構成要素(114)を配置するステップと、
射出成形によって前記第1および第2の構成要素(112、114)を少なくとも部分的に一緒に囲み、それによって前記構成要素(112、114)を接続するプラスチック基体(116)を形成するステップとを有し、前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、前記接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であること
を特徴とする方法。
【請求項16】
特に車両乗員拘束システムのためのインフレータ(10)を製造する方法において、
金属および/またはプラスチック材料および/またはセラミック材料を含む第1の構成要素(112)を用意するステップと、
前記第1の構成要素(112)に接続される第2の構成要素(114)を用意するステップと、
接着剤膜(142)を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に施すステップと、
前記第1の構成要素(112)に対して前記第2の構成要素(114)を配置するステップと、
射出成形によって前記第1および第2の構成要素(112、114)を少なくとも部分的に一緒に囲み、それによって前記構成要素(112、114)を接続するプラスチック基体(116)を形成するステップとを有し、前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、前記接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であること
を特徴とし、
前記プラスチック基体(116)の射出成形中に、前記接着剤膜(142)のプラスチック膜(144)の材料が、前記プラスチック基体(116)の材料に溶け込むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、前記接着剤膜(142)を施している最中または後に、前記接着剤膜(142)の接着剤が、加圧または加熱によって活性化されることを特徴とする方法。」
【請求項18】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、金属、セラミックおよび/またはプラスチック材料で作製され、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項19】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、インフレータハウジングであり、またはインフレータハウジングの部分的な要素を形成し、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項20】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第2の構成要素(114)が、前記外側に対して閉じられる事前製造した点火器であり、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項21】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112 、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、前記第2の構成要素(114)を受け入れて取り付ける孔(120)を有し、前記孔(120)の縁部(122)が、射出成形中に前記プラスチック基体(116)に埋め込まれ、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項22】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部の部品だけを覆い、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項23】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の全部分を覆い、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項24】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部から突出し、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1?8、15及び17に係る特許に対して、平成29年7月24日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

[取消理由1]本件特許の請求項1?5、15及び17に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
[取消理由2]本件特許の請求項1?8、15及び17に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。


刊行物1:特開平5-234638号公報
(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開2001-124498号公報
(同甲第7号証)
刊行物3:米国特許出願公開第2008/22880号明細書
(同甲第6号証)

第5 当審の判断
1 刊行物の記載事項等
(1)刊行物1の記載事項等
ア 刊行物1には次の記載がある(なお、下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電気コネクタ結合用装置に関する。本発明は、特に衝突又はこれに類する最中に電気コネクタを介する電気信号の受信に応答し、エアバッグを膨張させるガスを放出して車両搭乗者を保護するインフレータに関する。」
(1b)「【0023】インフレータ10は、起爆器組立体140を含んでいる。起爆器組立体140は、室カバー46内の開口84を通ってキャニスタ90の中央凹部104内に突出している。起爆器組立体140は、連続溶接好ましくはレーザ溶接により、円周状の溶接位置143にて室カバー46の中心部分80に溶接されている。
【0024】起爆器組立体140は、点火器すなわち起爆器142を含んでいる。点火器142は、適したものならいかなる公知の構造であってもよい。点火器142は、一対の金属端子144(図2,4に示す)及び146(図2,3に示す)を有している。端子144と146は、コネクタ(図3,4)により減速センサ(図示せず)に接続可能である。端子144と146はまた、点火器142内の点火材料に埋め込まれた抵抗線に接続される。
・・・
【0033】係止ピン160はアダプタ150(図2?4)に当接係合している。アダプタ150は、点火器142をインフレータ10のハウジングに取り付けている。アダプタ150は、好ましくは冷間成型に適した溶接可能な金属、例えばUNSS30430ステンレス鋼がよい。
【0034】アダプタ150は、管状ソケット部210とソケット部一端の環状フランジ部212とを含む。ソケット部210は筒状の外周面214と筒状の内周面216とを有する。環状の肩部218が、フランジ部212とは反対側のソケット部210の一端に隣接する内面216から内周側に延びている。肩部218の内周面により画定された開口は、係止ピン160の頭部162よりも径が若干大きいが、係止ピンの本体部170よりも小さな径とされている。・・・
【0035】プラスチック材料230のボディが、アダプタ150と係止ピン160と点火器142に密着してそれらをすっぽりと覆っており、これらの3部品を互いに結び付けている。好ましい実施例では、プラスチック材料230のボディは、射出成型される。・・・
【0036】点火器142と係止ピン160とをアダプタ150に固着するため、3個の部品はアダプタ150を核に配置され、3個の部品はダイ(図示せず)内に相互に関連付けて位置決めされる。端子144と146は、係止ピン160内の対応する開口を貫通して延びている。溶解状態のプラスチック材料230がダイ内に射出される。プラスチック材料230は、円錐座220並びにアダプタ150の肩部218に接着される。プラスチック材料230はまた、点火器142と点火器端子144,146と係止ピン160とに接着される。図示はしていないが、プラスチック材料230とアダプタ150のごときしかるべき金属部品との間にエポキシ接着剤の薄い層を設け、気密シール性を保証する手助けとするのもよい。・・・」
(1c)刊行物1には、以下の図2及び図3が示されている。


イ 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、摘示(1a)のとおり、エアバッグを膨張させるガスを放出して車両搭乗者を保護するインフレータに関する技術について開示されているところ、摘示(1b)及び摘示(1c)によれば、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「インフレータ10を製造する方法であって、
インフレータ10は、プラスチック材料230、アダプタ150、係止ピン160及び点火器142を含み、
プラスチック材料230のボディが、アダプタ150と係止ピン160と点火器142に密着してそれらをすっぽりと覆っており、
点火器142と係止ピン160とをアダプタ150に固着するため、点火器142、係止ピン160及びアダプタ150は、ダイ内に相互に関連付けて位置決めされるとともに、溶解状態のプラスチック材料230がダイ内に射出され、
前記プラスチック材料230とアダプタ150との間には、エポキシ接着剤の薄い層が設けられ、気密シール性を保証する手助けとする、
インフレータ10を製造する方法。」

(2)刊行物2の記載事項
刊行物2には次の記載がある。
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車のシートベルトプリテンショナーやエアバッグを作動させるガス発生器に用いうるスクイブに関する。」
(2b)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のスクイブでは、塞栓をプラスチック樹脂にて形成され、各電極ピンを金属棒材にて形成されているので、その構造上、塞栓(プラスチック樹脂)と各電極ピン(金属棒材)との間(界面)には、結合性(接着性)がない。従って、プラスチック樹脂と、金属棒材との熱収縮(熱膨張)の相異により変形が生じると、塞栓のプラスチック樹脂が各電極ピンから剥離して、隙間を発生させる恐れがある。この隙間の発生は、水や空気等を管体内に侵入(リーク)させることになり、管体内に封じた着火薬や電橋線等を劣化させる。」
(2c)「【0019】シール層8は、塞栓4と、各電極ピン5,6との間に位置し、各電極ピン5,6の外周にわたって形成されている。又、シール層8は、軸体12の先端から各電極ピン5,6に沿って、塞栓4内を貫通する如く形成されている。このシール層8としては、樹脂と金属とを結合(一体化)するのに優れた接着剤が用いられる。本発明において用いることができる接着剤としては、金属との接着力が強いものがよく、具体例として、セルロース樹脂やアルキド樹脂、アクリルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂やシアノアクリレート樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、トリアジンチオールなどの化学メッキ剤を挙げることができる。これらのうち好ましいものは熱硬化性樹脂であり、より好ましくはエポキシ樹脂である。これで、シール層8は、接着剤によって、塞栓4の樹脂との界面S1にて接着し、各電極ピン5,6の金属棒材との界面S2にて密着することになり、塞栓4と各電極ピン5,6とを結合(一体化)して、これらの間をシールする。シール層8は塞栓4と各電極ピン5,6との間において、環状に形成されていればよいが、密着性を高めるために塞栓4と各電極ピン5,6との間全域に亘って形成されるものが好ましい。
【0020】又、シール層8による結合力(接着力)は、i)塞栓4の樹脂と、各電極ピン5,6の金属棒材との熱収縮(又は熱膨張)の相異にて、シール層8が塞栓4や各電極ピン5,6から剥離することなく、ii)スクイブ1をガス発生器〔図6参照〕に装着(カシメ)するときに作用する力によっても、シール層8が塞栓4や各電極ピン5,6から剥離することなく、塞栓4と各電極ピン5,6との結合(一体化)を維持できるものとする。これで、熱収縮等に起因して、塞栓4と各電極ピン5,6間に隙間を発生させることなく、シール性を高める構造となしている。
・・・
【0024】2(当審注:「2」は丸2として示されている。)シール層8を形成する工程:電極ピン5,6の形成した金属棒材20を、U字状側21から接着剤内に浸漬し、引き上げることで、各電極ピン5,6に対してシール層8を形成(接着剤をコーティング)する〔図3(b)参照〕。このとき、シール層8は、U字状側21と反対側であって、各電極ピン5,6の先端部を除く、金属棒材20の全部分に対して形成する。これで、シール層8は、各電極ピン5,6との界面S2において密着する状態となる〔図3(c)参照〕。尚、シール層8は、各電極ピン5,6に対して接着剤を射出し、又は塗布することで形成することもできる。
【0025】3(当審注:「3」は丸3として示されている。)塞栓4の形成と、各電極ピン5,6と結合する工程:シール層8の形成された金属棒材20を、2つ割りモールド22,23内に装着する。続いて、溶融状態の樹脂を各モールド22,23内に射出して、各電極ピン5,6のシール層8間、及びそれら外周等に充填する。これで、射出された樹脂は、シール層8と接触し、溶融した樹脂の熱、成形圧等によってシール層8との界面S1において接着する状態となる〔図4(a)及び(b)参照〕。又、樹脂としては、例えば、PBT、PET、PA6、PA66、PPS、PPO等の樹脂にガラス繊維等の補強材を含有させたものを用いる。そして、各モールド22,23内の樹脂、シール層8(接着剤)を熱硬化することで、塞栓4を形成する。又、熱硬化の過程にて、シール層8は、塞栓4の樹脂、各電極ピン5,6の金属棒材との界面S1,S2において接着、密着されて、塞栓4(樹脂)と各電極ピン5,6(金属棒材)とを結合(一体化)して、シールする。続いて、各モールド22,23内から樹脂、金属棒材20等を引き剥がすことで、電極ピン5,6、塞栓4からなる成形体を得る〔図4(c)参照〕。」

(3)刊行物3の記載事項
刊行物3には次の記載がある。
なお、翻訳文は、異議申立人が提出した甲第6号証の抄訳を参照して合議体が作成した。
(3a)「【0013】FIG. 1 shows a pyrotechnical gas generator that has a two-shell outer housing 10 being constituted of a pot-shaped upper part 12 and a pot-shaped lower part 14 . ・・・ In order to ignite the propellant 18 , a prefabricated igniter unit 22 is used, ・・・」
「図1は、有底筒上側部品12及び有底筒状下側部品14からなる2シェル外側ハウジング19を有する火工ガス発生器を示している。・・・推進薬18を点火するために、事前製造された点火器ユニット22が燃焼室20の中央に配置される・・・」
(3b)「【0015】The igniter unit 22 is connected to the holder 14 through encapsulation by injection molding or foaming in that these two parts are placed into an injection molding or foaming tool.・・・」
「点火器ユニット22は、当該点火器ユニット22及びホルダ14の2つの部品が射出成形ツールまたは成形ツールに配置されて射出成形または成形によって包摂されることでホルダ14に接続される。・・・」
(3c)刊行物3には、以下の図1が示されている。


(3)対比・判断
(3-1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「インフレータ10」、「アダプタ150」、「点火器142」、「プラスチック材料230」及び「インフレータ10を製造する方法」は、本件発明1の「インフレータ」、「第1の構成要素(112)」、「第2の構成要素(114)」、「プラスチック基体(116)」及び「インフレータを製造する方法」に、それぞれ相当する。
(イ)引用発明は、「点火器142と係止ピン160とをアダプタ150に固着するため、点火器142、係止ピン160及びアダプタ150は、ダイ内に相互に関連付けて位置決めされるとともに、溶解状態のプラスチック材料230がダイ内に射出され」るものであるから、射出されたプラスチック材料230によってアダプタ150と点火器142が接続されることは明らかである。
さらに、引用発明は、「プラスチック材料230のボディが、アダプタ150と係止ピン160と点火器142に密着してそれらをすっぽりと覆って」構成されるものであるから、射出成形によってアダプタ150と点火器142とが少なくとも部分的に囲まれることも明らかである。
してみると、引用発明の「点火器142」は、上記(ア)をも踏まえると、本件発明1の「第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)」に相当するものといえる。
(ウ)引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」と本件発明1の「事前製造された構成要素である接着剤膜(142)」とは、「接着剤膜」の限度で共通するものといえる。
また、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」は、「前記プラスチック材料230とアダプタ150との間」に「設けられ」るものであるから、上記「エポキシ接着剤の薄い層」が、プラスチック材料230との接触領域内において、プラスチック材料230で射出成形する前に施されることは明らかである。
してみると、引用発明の「前記プラスチック材料230とアダプタ150との間には、エポキシ接着剤の薄い層が設けられ」という構成は、本件発明1の「前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に、事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接着する工程を有し」という構成と、「前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し」という構成の限度で共通するものといえる。

したがって、本件発明1と引用発明とは、
「インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素と、
第2の構成要素であって、射出成形によって両構成要素を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体によって前記第1の構成要素に接続された第2の構成要素と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体との接触領域内において前記プラスチック基体で射出成形する前に、前記第1の構成要素に接着剤膜を施す工程を有する、
インフレータを製造する方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
「接着剤膜」及び「接着剤膜を施す工程」について、
本件発明1は、接着剤膜が、「前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であ」り、接着剤膜を施す工程が、「前記第1の構成要素(112)に、事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接着する工程」であるのに対し、
引用発明は、接着剤膜(エポキシ接着剤の薄い層)が、「前記プラスチック材料230とアダプタ150との間に」「設けられ」「気密シール性を保証する手助けとする」ものであるものの、接着剤膜を施す工程の具体的構成が特定されていない点。

イ 判断
(ア)「接着剤膜」について、
a 本件明細書の記載によれば、本件発明1の「接着剤膜(142)」は、プラスチック基体と第1の構成要素の間の気密接続を図ることに意義があり(段落【0107】)、それによって、各材料の異なる膨張力による温度の変化に基づいて生じる張力およびせん断力を補償する、というものである(段落【0119】)。
b 他方、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」は、「前記プラスチック材料230とアダプタ150との間に」「設けられ」「気密シール性を保証する手助けとする」ものであるから、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」と本件発明1の「接着剤膜(142)」とは、プラスチック基体(プラスチック材料230)と第1の構成要素(アダプタ150)の間の気密接続(気密シール性)を図る点で同義といえる。さらに、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」はエポキシ接着剤にて構成されるものであるから、それがプラスチック材料230とアダプタ150とを接着し接合する接合ブリッジを構成することも技術的に明らかである。
c また、引用発明の「アダプタ150」は、冷間成型に適した溶接可能な金属で構成することが好ましいものとされているから(摘示(1b)【0033】)、プラスチック材料230とは異なる材料で構成されることが当然に想定されるものである。ここで、刊行物2には、「エアバッグを作動させるガス発生器に用いうるスクイブ」に関する技術について(摘示(2a))、樹脂と金属との熱収縮や熱膨張の相異による結合性(接着性)の問題を解決するために(摘示(2b))、樹脂と金属とを結合(一体化)するのに優れたエポキシ樹脂等の接着剤を用いてシール層を形成することが記載されているから(摘示(2c))、かかる技術事項をも参考とすれば、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」においても、アダプタ150とプラスチック材料230に生ずることが想定される熱収縮や熱膨張等をも考慮して、気密シール性が保証されるように構成すべきことも当業者には明らかである。
d そして、接着剤等に用いられるエポキシ樹脂が、弾性変形や塑性変形といった変形特性を有することは技術常識であるから(必要ならば、異議申立人が提出した甲第2号証:C.Kanchanomai, S.Rattanaron, M.Soni,“Effects of loading rate on fracture behavior and mechanism of thermoset epoxy resin”, Polymer Testing 24 (2005) の 887頁左欄下から18?16行、888頁左欄下から14?5行頁、同甲第4号証:日座操 “弾性エポキシ樹脂の合成と応用”高分子加工、34巻7号(1985年)の35(347)頁「2.」の欄、など参照。)、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」は、弾性変形や塑性変形といった変形特性を有するものと解することもできる。
e してみると、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」を、第1の構成要素(アダプタ150)とプラスチック基体(プラスチック材料230)の間に介在する接合ブリッジを形成するものであって、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能に構成されたものとすることは当業者にとって格別困難なことではない。
(イ)「接着剤膜を施す工程」について
引用発明は、接着剤膜(エポキシ接着剤の薄い層)を施す工程について特定されていないが、機械、電気・電子分野において、金属部品、高分子材料の組み立てにエポキシ樹脂系の熱硬化性接着剤が多く使用され、なかでもシート状接着剤が、取り扱いの容易さからその使用例がますます増えていることは、当業者の技術常識である(必要ならば、特開2003-183352号公報の段落【0002】、段落【0016】?段落【0018】など参照。)。
したがって、引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」として、事前製造された構成要素としてのシート状接着剤を採用し、かかるシート状接着剤の必要数をアダプタ150に接着するように構成することは、当業者が適宜設定する設計事項にすぎないものといえる。
(ウ)小活
以上のとおりであるから、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、引用発明、刊行物2に記載された技術事項及び技術常識に基づいて、当業者が容易に想到し得るものといえ、また、本件発明1が奏する作用効果も、引用発明、刊行物2に記載された技術事項及び技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。
したがって、本件発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(3-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに、本件発明1の「第1の構成要素(112)」を「金属、セラミックおよび/またはプラスチック材料で作製される」ものと限定して発明を特定するものであるが、刊行物1には、「アダプタ150は、好ましくは冷間成型に適した溶接可能な金属、例えばUNSS30430ステンレス鋼がよい。」(摘示(1b)【0033】)と記載されており、引用発明のアダプタ150を金属で構成することも、あるいは、それ以外の素材で構成することも想定されている。
したがって、本件発明2は、引用発明、刊行物2に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(3-3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1又は2の発明特定事項を全て含み、さらに、本件発明1又は2の「第1の構成要素(112)」を「インフレータハウジングであり、またはインフレータハウジングの部分的な要素を形成する」ものと限定して発明を特定するものであるが、刊行物1には、「アダプタ150は、点火器142をインフレータ10のハウジングに取り付けている。」(摘示(1b)【0033】)と記載されており、引用発明のアダプタ150をインフレータ10のハウジングの部分的な要素とすることも示唆されている。
また、刊行物3には、点火ユニット22及びホルダ14の2つの部品が射出成形ツールまたは成形ツールに配置されて射出成形または成形によって包摂されることでホルダ14に接続されることが記載されている(摘示(3b))。
したがって、引用発明、刊行物2、3に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(3-4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1?3のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに、本件発明1?3のいずれかの「第2の構成要素(114)」を「前記外側に対して閉じられる事前製造した点火器である」ものと限定して発明を特定するものであるが、刊行物1には、「点火器142は、適したものならいかなる公知の構造であってもよい。」(摘示(1b)【0024】)と記載されており、引用発明の「点火器142」を事前製造した点火器とすることも示唆されている。
また、刊行物3には、事前製造された点火器ユニット22を燃焼室20の中央に配置することが記載されている(摘示(3a))。
したがって、本件発明4は、引用発明、刊行物2、3に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(3-5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1?4のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに、本件発明1?4のいずれかの「第1の構成要素(112)」が、「前記第2の構成要素(114)を受け入れて取り付ける孔(120)を有し、前記孔(120)の縁部(122)が、射出成形中に前記プラスチック基体(116)に埋め込まれる」ものと限定して発明を特定するものであるが、刊行物1には、アダプタ105の肩部218の内周面に開口を設けることが記載されており(摘示(1b)【0034】)、また、かかる開口に点火器142が受け入れられ、プラスチック材料230が埋め込まれることも図2、3(摘示(1c))より看取できる。
また、刊行物3の図1(摘示(3c))にも、上記限定する事項と同様な配設構造が記載されている。
したがって、本件発明5は、引用発明、刊行物2、3に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(3-6)本件発明6?8について
本件発明6は、本件発明1?5のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに、本件発明1?5のいずれかの「接着剤膜(142)」を「射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部の部品だけを覆う」ものと限定して発明を特定し、
本件発明7は、本件発明1?6のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに、本件発明1?6のいずれかの「接着剤膜(142)」を「射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の全部分を覆う」ものと限定して発明を特定し、
本件発明8は、本件発明1?7のいずれかの発明特定事項を全て含み、さらに、本件発明1?7のいずれかの「接着剤膜(142)」を「射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部から突出する」ものと限定して発明を特定するものであるが、
引用発明の「エポキシ接着剤の薄い層」は、「プラスチック材料230とアダプタ150との間」に、「気密シール性を保証する手助け」となるように配設されれば足り、その配設域は当業者が適宜設定する設計事項にすぎない(刊行物2の「シール層8は・・・密着性を高めるために塞栓4と各電極ピン5,6との間全域に亘って形成されるものが好ましい。」(摘示(2c)【0019】)との記載からも裏付けられる。)。
したがって、本件発明6?8は、引用発明、刊行物2、3に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(3-7)本件発明15について
ア 対比
上記「(3-1)ア」を踏まえて、本件発明15と引用発明とを対比すると、両者は、
「特に車両乗員拘束システムのためのインフレータを製造する方法において、
第1の構成要素を用意するステップと、
前記第1の構成要素に接続される第2の構成要素を用意するステップと、
接着剤膜を接続領域内の前記第1の構成要素に施すステップと、
前記第1の構成要素に対して前記第2の構成要素を配置するステップと、
射出成形によって前記第1および第2の構成要素を少なくとも部分的に一緒に囲み、それによって前記構成要素を接続するプラスチック基体を形成するステップとを有する、
方法。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
「第1の構成要素」について、本件発明15は、「金属および/またはプラスチック材料および/またはセラミック材料を含む」ものとして特定されているのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点B>
「接着剤膜」及び「接着剤膜を接続領域内の前記第1の構成要素に施すステップ」について、
本件発明15は、接着剤膜が、「前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、前記接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であ」り、接着剤膜を接続領域内の前記第1の構成要素に施すステップが、「事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に接着するステップ」であるのに対し、
引用発明は、接着剤膜(エポキシ接着剤の薄い層)が、「前記プラスチック材料230とアダプタ150との間に」「設けられ」るものであって、「気密シール性を保証する手助けとする」ものであるものの、接着剤膜を接続領域内の前記第1の構成要素に施すステップの具体的構成が特定されていない点。

イ 判断
(ア)相違点Aについて
刊行物1には、「アダプタ150は、好ましくは冷間成型に適した溶接可能な金属、例えばUNSS30430ステンレス鋼がよい。」(摘示(1b)【0033】)と記載されており、引用発明の「アダプタ150」を金属で構成することも、あるいは、それ以外の素材で構成することも想定されている。
したがって、上記相違点Aは実質的な相違点とはいえないか、上記相違点Aが実質的な相違点であるとしても、当業者が容易になし得るものといえる。
(イ)相違点Bについて
上記相違点Bは、上記「(3-1)ア」の相違点1と実質的に同じであるから、引用発明、刊行物2、3に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。
(ウ)したがって、本件発明15は、引用発明、刊行物2、3に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

(3-8)本件発明17について
本件発明17は、本件発明15の発明特定事項を全て含み、さらに、「前記接着剤膜(142)を施している最中または後に、前記接着剤膜(142)の接着剤が、加圧または加熱によって活性化される」ことを限定して発明を特定するものであるが、引用発明は、接着剤膜(エポキシ接着剤の薄い層)が、「前記プラスチック材料230とアダプタ150との間に」「設けられ」るように配設されれば足り、接着剤膜(エポキシ接着剤の薄い層)を施している最中または後に、接着剤が加圧または加熱によって活性化されることも想定の範囲である。
また、刊行物2(摘示(2c)【0024】【0025】)にも、シール層8が加熱によって活性化されることが記載されている。
したがって、本件発明17は、引用発明、刊行物2、3に記載された技術事項及び技術常識に基いて当業者が容易になし得るものといえる。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1?8、15、17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
別掲
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に、事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接着する工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能である
ことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載のインフレータを製造する方法において、前記第1の構成要素(112)が、金属、セラミックおよび/またはプラスチック材料で作製されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインフレータを製造する方法において、前記第1の構成要素(112)が、インフレータハウジングであり、またはインフレータハウジングの部分的な要素を形成することを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記第2の構成要素(114)が、前記外側に対して閉じられる事前製造した点火器であることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記第1の構成要素(112)が、前記第2の構成要素(114)を受け入れて取り付ける孔(120)を有し、前記孔(120)の縁部(122)が、射出成形中に前記プラスチック基体(116)に埋め込まれることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部の部品だけを覆うことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の全部分を覆うことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部から突出することを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項9】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項10】
請求項9に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)が、前記プラスチック基体(116)の材料と同じ材料で作製されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項11】
請求項9に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)が、前記プラスチック基体(116)の材料との接続を確立するのに適している材料で作製されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項12】
請求項9から11のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記接着剤層(146)の接着剤が、所定の接触圧または熱的影響によって活性化できることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)の材料および前記プラスチック基体(116)の材料が、前記プラスチック基体(116)の射出成形中に、前記プラスチック膜(144)が、前記プラスチック基体(116)と少なくとも部分的に溶けるように選択されることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項14】
前記請求項9から13のいずれか一項に記載のインフレータを製造する方法において、前記プラスチック膜(144)が、熱可塑性エラストマを含むことを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項15】
特に車両乗員拘束システムのためのインフレータ(10)を製造する方法において、
金属および/またはプラスチック材料および/またはセラミック材料を含む第1の構成要素(112)を用意するステップと、
前記第1の構成要素(112)に接続される第2の構成要素(114)を用意するステップと、
事前製造された構成要素である接着剤膜(142)の1又は複数枚を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に接着するステップと、
前記第1の構成要素(112)に対して前記第2の構成要素(114)を配置するステップと、
射出成形によって前記第1および第2の構成要素(112、114)を少なくとも部分的に一緒に囲み、それによって前記構成要素(112、114)を接続するプラスチック基体(116)を形成するステップとを有し、前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、前記接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であること
を特徴とする方法。
【請求項16】
特に車両乗員拘束システムのためのインフレータ(10)を製造する方法において、
金属および/またはプラスチック材料および/またはセラミック材料を含む第1の構成要素(112)を用意するステップと、
前記第1の構成要素(112)に接続される第2の構成要素(114)を用意するステップと、
接着剤膜(142)を接続領域内の前記第1の構成要素(112)に施すステップと、
前記第1の構成要素(112)に対して前記第2の構成要素(114)を配置するステップと、
射出成形によって前記第1および第2の構成要素(112、114)を少なくとも部分的に一緒に囲み、それによって前記構成要素(112、114)を接続するプラスチック基体(116)を形成するステップとを有し、前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、前記接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であること
を特徴とし、
前記プラスチック基体(116)の射出成形中に、前記接着剤膜(142)のプラスチック膜(144)の材料が、前記プラスチック基体(116)の材料に溶け込むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法において、前記接着剤膜(142)を施している最中または後に、前記接着剤膜(142)の接着剤が、加圧または加熱によって活性化されることを特徴とする方法。
【請求項18】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、金属、セラミックおよび/またはプラスチック材料で作製され、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項19】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、インフレータハウジングであり、またはインフレータハウジングの部分的な要素を形成し、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項20】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第2の構成要素(114)が、前記外側に対して閉じられる事前製造した点火器であり、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項21】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記第1の構成要素(112)が、前記第2の構成要素(114)を受け入れて取り付ける孔(120)を有し、前記孔(120)の縁部(122)が、射出成形中に前記プラスチック基体(116)に埋め込まれ、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項22】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部の部品だけを覆い、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項23】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の全部分を覆い、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
【請求項24】
インフレータを製造する方法であって、
第1の構成要素(112)と、
第2の構成要素(114)であって、射出成形によって両構成要素(112、114)を少なくとも部分的に囲むことにより、射出されたプラスチック基体(116)によって前記第1の構成要素(112)に接続された第2の構成要素(114)と
を備えるインフレータにおいて、
前記プラスチック基体(116)との接触領域(140)内において前記プラスチック基体(116)で射出成形する前に、前記第1の構成要素(112)に接着剤膜(142)を施す工程を有し、
前記接着剤膜(142)が、前記第1の構成要素(112)と前記プラスチック基体(116)の間に介在する接合ブリッジを形成し、該接合ブリッジが、塑性変形可能および/または弾力変形可能であり、
前記接着剤膜(142)が、射出成形によって囲まれる前記第1の構成要素(112)の一部から突出し、
前記接着剤膜(142)が、プラスチック膜(144)と、接着剤層(146)とを備えることを特徴とするインフレータを製造する方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-05-31 
出願番号 特願2015-37558(P2015-37558)
審決分類 P 1 652・ 121- ZAA (B60R)
最終処分 取消  
前審関与審査官 谷治 和文八木 誠  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
尾崎 和寛
登録日 2016-10-07 
登録番号 特許第6018658号(P6018658)
権利者 ティーアールダブリュー・エアバッグ・システムズ・ゲーエムベーハー
発明の名称 インフレータを製造する方法  
代理人 小野 新次郎  
代理人 小野 達己  
代理人 小野 達己  
代理人 星野 修  
代理人 小野 新次郎  
代理人 星野 修  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ