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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G05B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  G05B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G05B
管理番号 1346759
異議申立番号 異議2018-700269  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-04-02 
確定日 2018-10-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6205757号発明「制御システム,制御装置,画像処理装置,および,制御方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第6205757号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔8,9〕について訂正することを認める。 特許第6205757号の請求項1ないし8及び10に係る特許を維持する。 特許第6205757号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第6205757号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は,平成25年3月7日に出願され,平成29年9月15日にその特許権の設定登録がされ,同年10月4日に特許掲載公報が発行された。その後,その特許について,平成30年4月2日に特許異議申立人,栗暢行(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,当審は,同年6月11日付けの取消理由通知書を同年同月13日に発送した。特許権者,オムロン株式会社(以下「特許権者」という。)は,その指定期間内である平成30年8月10日に意見書の提出及び訂正の請求を行い,当審は,申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが,申立人からは何らの応答もなかった。


第2 訂正の適否についての判断
1.訂正請求の趣旨及び訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は,特許第6205757号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項8及び9について訂正することを求める,というものであり,その訂正の内容は以下のとおりである(なお,下線は訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項8に
「・・・前記制御装置からの,前記画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定する特定情報に従って,取得した前記画像データを前記データベースへ送信する処理・・・」
とあるのを,
「・・・前記制御装置からの,前記画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定する特定情報に従って,取得した前記画像データを前記データ記憶領域へ送信する処理・・・」
に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項9を削除する。

2.訂正の目的の適否,新規事項の有無,特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び一群の請求項について
(1)訂正事項1の目的,新規事項及び特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項1は,訂正前の請求項8における「画像データ」の送信先を,「データベース」から「データ記憶領域」へ訂正するものであるところ,訂正前の請求項8は請求項1を引用しており,請求項1には,画像データがデータ記憶領域に格納されることが特定されているから,訂正前の請求項8において,画像データをデータベースに送信することの技術的な意味がない。また,訂正前の請求項8は,制御装置から特定情報が指示され,指示された特定情報に従って,画像データを送信することが特定されているから,これに対応する発明の詳細な説明の記載は,段落[0068]-[0083]の「実施の形態1」となるが,画像データの送信については,「・・・視覚センサ200は,予めPLC100から通知されている特定情報に従って,取得した画像データ50をデータ記憶領域360へ送信する・・・」(段落[0080])と記載されており,訂正前の請求項8に記載されているように,画像をデータベースへ送信していない。
これらを考慮すると,訂正前の請求項8の「データベース」との記載は「データ記憶領域」の誤記であることが明らかであるから,訂正事項1の訂正の目的は,特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」に該当する。
また,画像データをデータ記憶領域へ送信することは,上記のとおり願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の段落[0080]に記載されているから,訂正事項1は,本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(2)訂正事項2の目的,新規事項及び特許請求の範囲の拡張・変更
訂正事項2は,請求項9を削除するものであるから,その訂正の目的は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」に該当し,訂正事項2が本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものであり,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。

(3)一群の請求項
訂正前の請求項9は,請求項8を引用する関係にあるから,本件訂正請求は,一群の請求項〔8,9〕についてなされている。

3.小括
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第2項ただし書第1及び2号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
したがって,特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔8,9〕について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし10に係る発明(以下「本件特許発明」といい,各請求項に係る発明を「特許発明1」などという。)は,訂正特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システムであって,
対象物に対して実行される処理を制御する制御装置と,
前記制御装置と関連付けて配置され,前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行する画像処理装置とを備え,
前記画像処理装置が取得した画像データは,前記データ記憶領域へ格納されるように構成されており,
前記制御装置および前記画像処理装置は,いずれか単独でまたは互いに協働して,同一の対象物についての,前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と,当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを,互いに関連付けできるように前記データベースへ送信する,制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は,前記画像処理装置が取得する各画像データについての前記データ記憶領域に格納される際の識別情報および格納される位置を示す位置情報のうち少なくとも一方を,前記特定情報として前記画像処理装置へ提供し,
前記画像処理装置は,取得した各画像データを,前記制御装置からの対応する特定情報に従って前記データ記憶領域へ格納する,請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記画像処理装置は,取得した各画像データを,予め定められた規則に従って,前記データ記憶領域へ格納するとともに,格納した画像データ毎に対応する特定情報を前記制御装置へ提供する,請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は,前記制御装置が管理する情報および前記画像処理装置が管理する情報の少なくとも一方と,前記データ記憶領域に格納される画像データを特定するための特定情報とを併せて前記データベースへ送信する,請求項2または3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記画像処理装置は,取得した各画像データを前記データ記憶領域へ格納するとともに,当該画像データを格納したタイミングを示す時刻情報を前記制御装置へ提供する,請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は,前記制御装置が管理する情報および前記画像処理装置が管理する情報の少なくとも一方と,前記時刻情報とを併せて前記データベースへ送信し,
前記データベースにおいて,前記制御装置からの時刻情報に基づいて,対応する画像データとの関連付け処理が実行される,請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の制御システムを構成する制御装置であって,
制御部と,
ユーザプログラムの格納に用いられる記憶部とを備え,
前記制御部は,前記ユーザプログラムを実行することで対象物に対して実行する処理を制御し,
前記制御部は,
前記対象物に対応付けた前記制御についての加工データを前記記憶部に格納する処理と,
前記画像処理装置が画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定する特定情報を,前記画像処理装置に送信する処理と,
前記加工データおよび当該加工データに対応する対象物についての前記特定情報を前記データベースへ送信する処理とを実行可能に構成される,制御装置。
【請求項8】
請求項1?6のいずれか1項に記載の制御システムを構成する画像処理装置であって,
制御部と,
対象物を撮像して得られる画像データを取得するインターフェイスと,
前記画像データの格納に用いられる記憶部とを備え,
前記制御部は,
前記画像データに対する画像処理を実行する処理と,
前記画像処理によって生成される結果を前記制御装置へ送信する処理と,
前記制御装置からの,前記画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定する特定情報に従って,取得した前記画像データを前記データ記憶領域へ送信する処理とを実行可能に構成される,画像処理装置。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システムにおける制御方法であって,
制御装置が対象物に対して実行される処理を制御するステップと,
前記制御装置と関連付けて配置された画像処理装置が前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行するステップと,
前記画像処理装置が取得した画像データを前記データ記憶領域へ格納するステップと,
前記制御装置および前記画像処理装置は,いずれか単独でまたは互いに協働して,同一の対象物についての,前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と,当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを,互いに関連付けできるように前記データベースへ送信するステップとを含む,制御方法。」


第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1.取消理由の概要
訂正前の請求項8及び9に係る特許に対して,当審が平成30年6月11日付けの取消理由通知書で特許権者に通知した取消理由の概要は,次のとおりである。
(1)請求項8について
請求項8には,画像データをデータベースへ送信する旨の事項が記載されているが,当該事項は,発明の詳細な説明に記載されていないから,請求項8に係る特許は,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。

(2)請求項9について
請求項9には,画像データをデータベースへ格納する旨の事項,画像データを格納したタイミングを示す時刻情報を制御装置へ提供する旨の事項が記載されているが,当該事項は,発明の詳細な説明に記載されていないから,請求項9に係る特許は,特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。

2.当審の判断
(1)請求項8について
上記第3に示すとおり,請求項8には,「・・・前記画像データを前記データ記憶領域へ送信する・・・」という事項が記載され,当該事項は本件明細書の発明の詳細な説明の段落[0080]に記載されているから,上記1.(1)に示す取消理由により,請求項8に係る特許を取り消すことはできない。

(2)請求項9について
上記第3に示すとおり,請求項9は削除され,取消理由の対象が存在しない。

3.小活
したがって,当審が通知した取消理由によって請求項8に係る特許を取り消すことはできない。
また,当審が通知した取消理由の対象である請求項9は存在しない。


第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
(1)甲1を主引用例とする特許法第29条第2項に係る理由
特許発明1ないし10は,甲第1号証(以下,各甲号証を「甲1」などという。)に記載された発明(以下「甲1発明」という。)及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり,請求項1ないし10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,取り消されるべきものである。

(2)甲5を主引用例とする特許法第29条第2項に係る理由
特許発明1ないし10は,甲5に記載された発明(以下「甲5発明」という。),甲6記載の事項及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであり,請求項1ないし10に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから,取り消されるべきものである。

(3)特許法第36条第4項第1号に係る理由
ア.本件明細書の段落[0078]の記載において,PLC100はデータベース350を参照していないから,ファイル名の数字を「¥data002」からインクリメントするのか,それとも「¥data003」からインクリメントするのか知ることができず,PLC100は,画像データをデータ記憶領域に格納する際の識別情報を得ることができない。
よって,発明の詳細な説明は,請求項2の「前記制御装置は,・・・(中略)・・・前記特定情報として前記画像処理装置へ提供し,」を実施できる程度に記載されていない。
したがって,発明の詳細な説明は,請求項2,4及び7ないし9に係る発明を実施できる程度に記載されていない。

イ.本件明細書の段落[0093]の記載において,視覚センサ200はデータベース350を参照していないから,ファイル名の数字を「¥data002」からインクリメントするのか,それとも「¥data003」からインクリメントするのか知ることができず,視覚センサ200は,ファイル名に含まれる数字をインクリメントすることができない。
よって,発明の詳細な説明は,請求項3の「前記画像処理装置は,・・・(中略)・・・特定情報を前記制御装置へ提供する,」を実施できる程度に記載されていない。
したがって,発明の詳細な説明は,請求項3,4及び7ないし9に係る発明を実施できる程度に記載されていない。

ウ.本件明細書の段落[0109]において,SQ324の「対象のクエリと関連付ける」とは,具体的に何をどうする処理であるのか不明であり,SQ326の「その関連付けに係る情報」とは,具体的にいかなる情報であるのか不明であるから,発明の詳細な説明は,請求項6の「前記データベースにおいて,前記制御装置からの時刻情報に基づいて,対応する画像データとの関連付け処理が実行される」を実施できる程度に記載されていない。
よって,発明の詳細な説明は,請求項6ないし9に係る発明を実施できる程度に記載されていない。

エ.したがって,発明の詳細な説明は,請求項2ないし4及び6ないし9に係る発明を実施できる程度に記載されていないので,請求項2ないし4及び6ないし9に係る特許は,特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。

(4)特許法第36条第6項第2号に係る理由
請求項6に「前記制御装置からの時刻情報に基づいて,対応する画像データとの関連付け処理が実行される」と記載されているが,「対応する画像データとの関連付け処理」とは,具体的に何をどうする処理であるのか明確でない。
よって,請求項6ないし9に係る発明は明確でないから,請求項6ないし9に係る特許は,特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものであり,取り消されるべきものである。

2.証拠
申立人が提出した証拠は以下のとおりである。
甲1:特許第2921718号公報
甲2:特開2011-253469号公報
甲3:特開2006-260300号公報
甲4:特開2007- 13574号公報
甲5:特開2008-171330号公報
甲6:特開2006-146706号公報

3.甲号証の記載及び甲号証記載の発明
(1)甲1の記載事項及び甲1発明
ア.甲1の記載事項
甲1には,以下の事項が記載されている(なお,下線は当審で付したものである。以下同じ。)。
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は,産業用ロボット等の視覚として利用されて物体認識を行う視覚センサにおける画像処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】視覚センサの利用として,製造ラインに視覚センサを組み入れ,該視覚センサで製造ライン上に順次送り込まれてくる検出対象物を順次検出し,その対象物の位置・姿勢データをロボット等の機械の座標系に変換し,補正データとしてロボット等の機械に送信し,ロボット等の機械ではこの補正データに基づいて動作補正を行わせることが行われている。」
「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は,検出対象物をカメラで撮影しフレームメモリに格納した画像データに,該画像データを特定するデータ,或いはその画像データに対する検出値,プログラム名,キャリブレーションデータ,補正データなど,関連するデータを付加して,補助記憶装置に転送し記憶できるようにし,さらにこれに加え,上記補助記憶装置に蓄積した画像データを,その後のデータ調査時に,上記補助記憶装置からフレームメモリに復元し,付加された関連データを利用しながら,復元した画像データの表示,画像処理処理プログラムを再現実行できるようにしたことによって,この問題点の解決を図ったものである。」
「【0010】
【実施例】図1は,本発明の方法を実施する視覚センサの要部ブロック図である。図中,11は主中央処理装置(以下,メインCPUという)で,このメインCPU11には,バス21を介して,データメモリ12,プログラムメモリ13,コンソールインタフェース14,モニタインタフェース15,フレームメモリ16,画像処理プロセッサ17,カメラインタフェース18,通信インタフェース19,SCSIインタフェース20が接続されて,全体として画像処理装置10を構成している。」
「【0012】フレームメモリ16には,カメラ22に撮影されグレイスケール画像として処理された対象物についての画素データ(センサ座標系)が格納される。画像処理プロセッサ17はフレームメモリ16に格納された画像を処理して,対象物の識別をしたり,その位置,姿勢を計測する。カメラインタフェース19には製造ライン上に順次送られてくる対象物を撮影するためのカメラ22が接続されている。通信インタフェース19にはロボット等の視覚センサシステムを利用するシステム(図示せず)が接続されている。」
「【0014】次に本実施例の動作を図2のフローチャートと共に説明する。通信インタフェース19を介して外部から画像処理起動指令が入力されると,メインCPU11はプログラムメモリ13に格納された画像処理プログラムを起動し,まずカメラ22に対して画像スナップ指令を出力する。カメラ22がとらえた像は,画像処理プロセッサ17でグレイスケール濃淡処理されてからフレームメモリ16に格納される(ステップS1)。次に,メインCPU11は,画像処理プロセッサ17に対して対象物検出指令を出す。すると画像処理プロセッサ17はこの指令に基づき,フレームメモリ16に格納された画像に対し予め求めておいた教示データを用いて画像処理を行って,対象物を認識し,その位置,姿勢の検出を実行する(ステップS2)。
【0015】こうして画像処理を実行した後は,検出した対象物の位置・姿勢を視覚センサの座標系からロボット座標系に変換し(ステップS3),かく変換した情報を補正データとして通信インタフェース19を介してロボットに送信する(ステップS4)。
【0016】一方,カメラがとらえフレームメモリ16に格納した画像データ(原画像データ)はその都度,SCSIインタフェース20を介して補助記憶装置25に逐次転送され,ここに記憶される(ステップS5)。なお,こうして原画像データが補助記憶装置25に保存される際には,その画像を処理したプログラムに関する情報,例えば画像処理プログラムの標識,日付け,シリアル番号,実際の検出値,補正データ,キャリブレーションデータ等が付加される。また,視覚センサが複数のカメラを使用したときは,その画像を取り込んだカメラ番号も付加される。さらに,検出不可等処理の失敗のものはその旨の表示が付加される。なお,これらの付加情報は,プログラムメモリ13に予め与えておいた処理プログラムにしたがって,メインCPU11により自動的にに原画像データに付加される。」

イ.甲1発明
上記ア.の記載事項を整理すると,甲1には次の発明が記載されているということができる。
「製造ラインに視覚センサを組み入れ,該視覚センサで製造ライン上に順次送り込まれてくる検出対象物を順次検出し,その対象物の位置・姿勢データをロボット等の機械の座標系に変換し,補正データとしてロボット等の機械に送信し,ロボット等の機械ではこの補正データに基づいて動作補正を行わせ,
前記検出対象物を前記視覚センサのカメラで撮影しフレームメモリに格納した画像データに,該画像データを特定するデータ,或いはその画像データに対する検出値,プログラム名,キャリブレーションデータ,補正データなど,関連するデータを付加して,補助記憶装置に転送し記憶できるようにしたシステムであって,
メインCPU11に,バス21を介して,データメモリ12,プログラムメモリ13,コンソールインタフェース14,モニタインタフェース15,フレ-ムメモリ16,画像処理プロセッサ17,カメラインタフェース18,通信インタフェース19,SCSIインタフェース20を接続して,全体として画像処理装置10を構成しており,
通信インタフェース19には,ロボット等のシステムが接続され,
ステップS1において,カメラ22がとらえた像を,画像処理プロセッサ17がグレイスケール濃淡処理してフレームメモリ16に格納し,
ステップS2において,画像処理プロセッサ17は,フレームメモリ16に格納された画像に対し予め求めておいた教示データを用いて画像処理を行って,対象物を認識し,その位置,姿勢の検出を実行し,
ステップS3において,検出した対象物の位置・姿勢を視覚センサの座標系からロボット座標系に変換し,
ステップS4において,ロボット座標系に変換後の情報を補正データとして通信インタフェース19を介してロボットに送信し,
ステップS5において,フレームメモリ16に格納した画像データは,その画像データに,画像データを特定するデータ,あるいは,ステップS2においてその画像を処理したプログラムに関する情報,例えば画像処理プログラムの標識,日付け,シリアル番号,実際の検出値,補正データ,キャリブレーションデータが付加され,さらに,検出不可等処理の失敗のものはその旨の表示が付加されて,その都度,SCSIインタフェース20を介して補助記憶装置25に逐次転送され記憶される,システム。」

(2)甲2の記載事項
「【0021】
・・・(前略)・・・したがって,各撮影カメラ21?23,14aにて撮影された画像データは連続的に画像記録装置31に記録されているが,識別データにより,当該画像データおよび画像データがどの製品に対するものであるかを特定することができる。勿論,画像記録装置31には,これら各データを互いに対応付けるためのデータ対応付け部が具備されている。また,この画像記録装置31には,動画および静止画を記録する画像記録領域と,各種データつまり文字データを記録する文字記録領域とが設けられている。・・・(後略)・・・」

(3)甲3の記載事項
「【0057】
・・・(前略)・・・尚,登録とは,一時的に外部記憶部230に格納した医用画像を画像記憶装置300に送信して記憶させ,記憶させた医用画像のレコードを画像データベースに加えて更新することである。・・・(後略)・・・」
「【0060】
画像データベース213は,画像記憶装置300に記憶されている医用画像のレコードをデータベースとして記憶する。・・・(後略)・・・」

(4)甲4の記載事項
「【請求項1】
画像データを保持したデータ記憶部に記憶されている画像データを再生する際に,
画像データに付与されているファイル形式に従って,再生対象の画像データ名を特定し,
特定された画像データの画像データ名を,再生データの一覧を保持するデータベースに登録し,
特定された画像データの画像データ名が含まれるアクセス先情報を,上記データベースにさらに登録し,
・・・(後略)・・・」

(5)甲5の記載事項及び甲5発明
ア.甲5の記載事項
「【0001】
本発明は,素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集方法,情報収集システム,及び情報収集用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば,表面実装方式の電子回路基板の製造は,回路を形成した素材としてのプリント
基板に印刷機によってクリーム半田を印刷し,ここに必要な電子部品を実装機により実装し,これをリフロー炉に通してリフロー半田付けを行い,最終的に半田付け不良等の検査を行う。これらの各工程で不具合があったために最終製品としての電子回路基板に不良が発生していた場合,その原因を早期に突き止めて工程改善に役立てることは,歩留まり改善のために重要である。」
「【0004】
しかしながら,この管理システムは,検査工程で取得されたデータと判定結果を記憶する一方で生産工程内の他工程のプロセス情報が記録されないため,記録された情報から問題原因を特定することはできず,過去の実績に基づいた推測とならざるを得なかった。不良原因を正しく調査するにはできるだけ多くのプロセス情報を記録しておくことが必要であり,また,不良品率が下がれば下がるほど良品に関するプロセス情報の割合が増加するため,もし仮に他工程のプロセス情報も含めて記録するシステムとしたとしても,不良原因特定に必要なデータは良品のデータ中に埋もれることになる。このため,仮に,この選別作業をコンピュータにさせるにしても,不要なデータが膨大な量になるため,検索に多大な時間を要し,迅速に不良原因の調査を開始することができないという問題があった。」
「【0013】
本発明の一実施形態について図面を用いて説明する。
図1は,本発明の情報収集システムが適用される部品実装ライン(本発明の「生産工程」の一例)を概略的に示している。この生産ラインは,例えば自動車用の電子回路基板を製造するものであり,ローダー(図示省略),印刷機1,印刷後検査機2,実装機3,実装後検査機4,リフロー炉5,リフロー後検査機6,及びアンローダー(図示省略)を一列に備え,これらを互いにコンベア7で連結した構成となっている。そして,コンベア7により素材としてのプリント基板(以下,単に基板という。)を搬送しながら,順次,半田ペースト印刷,部品実装,及びリフローの各処理を施すと共に,各検査機2,4,6により上記各処理後の基板を検査し,最終的に,必要な部品を実装した電子回路基板を製造する。
【0014】
各検査機2,4,6は,図示を省略するがCCDカメラ(本発明の「撮像装置」の一例)を搭載したヘッドとこのヘッドを平面的に移動させる駆動装置等を備えており,基板の被実装面を撮像することによりその画像データに基づいて各処理の検査,具体的には,印刷後検査機2では半田塗布量等の検査,実装後検査機4では部品の実装ずれ等の検査,リフロー後検査機6では半田塗布量及び部品の実装ずれ等の検査を実施する。
【0015】
上述の印刷機1,実装機3及びリフロー炉5(これらの装置を「処理機」ということがある)並びに印刷後検査機2,実装後検査機4及びリフロー後検査機6は,それぞれ制御装置が搭載された自律型の装置であって,各装置の動作が各自の制御装置により個別に駆動されるようになっている。さらに,この部品実装ラインでは,さらに上記の各処理機1,3,5及び検査機2,4,6に通信ケーブルを介してデータ管理装置8が接続されている。」
「【0023】
上述の15年保管義務データ,3ヶ月保管データ,1週間保管データ,及び品質改善データの具体的内容は,表1?表7に示す。表1は基板,電子部品及び半田等の材料組成についてのデータであり,これらは各処理機1,3,5における処理や各検査機2,4,6における検査が実際に実行される前に既知の情報であって予め記憶装置10に記録されている。表2は印刷工程を,表3は印刷検査工程を,表4は実装工程を,表5は実装検査工程を,表6はリフロー工程を,表7はリフロー後検査工程をそれぞれ実行した時に取得されるデータであり,各処理機1,3,5及び各検査機2,4,6から通信ケーブルを介してデータ管理装置8に伝送されて記憶装置10に記憶される。」
「【0027】
印刷後検査機2による検査が完了すると,実装工程に移行して実装機3によりクリーム半田が印刷された基板上の所定位置に部品が搭載される(S303)。この際,実装機3においては表4に示す画像情報を含む全てのデータが取得され,これらのデータと共に,表1に示すデータのうち実装工程に関係するデータが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。
【0028】
実装機3による部品搭載が完了すると,実装検査工程に移行して実装後検査機4により部品が搭載された基板の状態について検査が行われる(S304)。ここでは,実装後検査機4において,表5に示す画像データを含む全てのデータが取得され,これらの全てが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される。」

イ.甲5発明
上記ア.の記載事項を整理すると,甲5には次の発明が記載されているということができる。
「素材に対して所定の処理を実行して製品を生産する生産工程における情報収集システムであって,
前記情報収集システムが適用される部品実装ラインは,実装機3及び実装後検査機4を一列に備え,これらを互いにコンベア7で連結した構成となっており,コンベア7により素材としてのプリント基板を搬送しながら,順次,部品実装の処理を施すと共に,検査機4により上記処理後の基板を検査し,最終的に,必要な部品を実装した電子回路基板を製造するラインであり,
実装後検査機4は,CCDカメラを搭載したヘッドとこのヘッドを平面的に移動させる駆動装置等を備えており,基板の被実装面を撮像することによりその画像データに基づいて,部品の実装ずれ等の検査を実施し,
上述の実装機3及び実装後検査機4は,それぞれ制御装置が搭載された自律型の装置であって,各装置の動作が各自の制御装置により個別に駆動されるようになっており,
実装機3においては実装工程を実行した時に取得される画像情報を含む全てのデータが取得され,これらのデータと共に,基板,電子部品及び半田等の材料組成についてのデータのうち実装工程に関係するデータが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶され,
実装後検査機4において,実装検査工程を実行した時に取得される画像データを含む全てのデータが取得され,これらの全てが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶される,情報収集システム。」

(6)甲6の記載事項
「【0021】
画像処理部102は,受信部101が受信した電子メール本文及び添付されている動画の画像データに基づいて,その電子メールを携帯電話機25へ転送する処理を行う部分である。より具体的には,画像処理部102は,動画の画像データを画像情報格納部200に格納する。画像情報格納部200に格納されている情報の例を図4に示す。図4に示すように,画像情報格納部200には,「格納位置」「格納時刻」「動画データ」「連続静止画データ」「アクセス回数」を格納する領域がそれぞれ関連付けられている。図4を参照しながら画像処理部102の動作を説明する。
【0022】
画像処理部102は,動画の画像データを格納した位置を特定するための情報と,格納した動画の画像データを関連付けて図4に示すように格納する。画像処理部102は,格納した位置の情報(図4では「001」)と,格納時刻(例えば,「23時15分20秒」)とに基づいて動画ID(例えば,「IDA001」)を生成する。」

4.甲1を主引用例とする特許法第29条第2項に係る理由について
(1)特許発明1について
ア.特許発明1と甲1発明の対比
(ア)特許発明1と甲1発明を対比すると,甲1発明の「システム」は,「補助記憶装置記憶装置」を備えて,「ロボット等の機械ではこの補正データに基づいて動作補正を行わせ」るもの,すなわちロボットを制御するシステムであるから,特許発明1の「データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システム」と対比すると,「記憶装置を利用可能に構成された制御システム」という点で一致する。
(イ)また,甲1発明の「対象物」が特許発明1の「対象物」に相当することは明らかであり,甲1発明において「ロボット等の機械ではこの補正データに基づいて動作補正を行わせ」ることは,対象物に対する動作を意味することが明らかであるし,その動作のための制御装置を有することも明らかであるから,特許発明1の「対象物に対して実行される処理を制御する制御装置」に相当する。
(ウ)また,甲1発明の「画像処理装置10」は,「通信インタフェース19」を介して「ロボット等のシステム」と接続されており,ステップ2において「画像処理プロセッサ17」により対象物の画像の処理を行うから,特許発明1の「前記制御装置と関連付けて配置され,前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行する画像処理装置」に相当する。
(エ)また,甲1発明の「画像処理装置10」の「画像処理プロセッサ17」は,ステップ2で処理した画像を,ステップ5で「補助記憶装置25」に記憶させているから,特許発明1の「前記画像処理装置が取得した画像データは,前記データ記憶領域へ格納されるように構成」されていることと対比すると,「前記画像処理装置が取得した画像データは,前記記憶装置へ格納されるように構成」されていることと一致する。
(オ)また,甲1発明の「画像処理装置10」の「画像処理プロセッサ17」は,ステップ5において,「画像データ」に「補正データ」を付加して,「補助記憶装置25」に記憶させているが,この「補正データは」,ステップ2及び3において,画像データに基づいて,対象物の位置,姿勢を検出して,ロボット座標系に変換するという処理を行った結果にほかならないから,特許発明1の「前記制御装置および前記画像処理装置は,いずれか単独でまたは互いに協働して,同一の対象物についての,前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と,当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを,互いに関連付けできるように前記データベースへ送信」することと対比すると,「前記画像処理装置は,単独で,同一の対象物についての,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報と,当該対象物を撮像して得られた画像データを,互いに関連付けできるように前記記憶装置へ送信する」という点で一致する。
(カ)以上から,特許発明1と甲1発明は,以下の点で一致及び相違する。
<一致点A>
「記憶装置を利用可能に構成された制御システムであって,
対象物に対して実行される処理を制御する制御装置と,
前記制御装置と関連付けて配置され,前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行する画像処理装置とを備え,
前記画像処理装置が取得した画像データは,前記記憶装置へ格納されるように構成されており,
前記画像処理装置は,単独で,同一の対象物についての,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報と,当該対象物を撮像して得られた画像データを,互いに関連付けできるように前記記憶装置へ送信する,制御システム。」

<相違点1>
特許発明1の制御システムは,「データベースおよびデータ記憶領域」で構成されているのに対して,甲1発明は「補助記憶装置」で構成される点。

<相違点2>
特許発明1の画像データは,「データ記憶領域」へ格納されるのに対して,甲1発明の画像データは「補助記憶装置」へ格納される点。

<相違点3>
特許発明1は,「前記制御装置および前記画像処理装置は,いずれか単独でまたは互いに協働して,同一の対象物についての,前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と,当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを,互いに関連付けできるように前記データベースへ送信する」ものであるのに対して,甲1発明は,「画像処理装置10」の「画像処理プロセッサ17」が,単独で,「画像データ」に「補正データ」を付加して,「補助記憶装置25」に記憶させている点。

イ.相違点の検討
(ア)相違点1について
一般に,画像ファイル装置において,記憶装置を,画像データを格納する画像記憶領域と,画像データ名やアクセス先情報等の文字データを記憶するデータベースに分けて構成することは,甲2ないし4に示すように周知の技術であるが,甲1発明に当該周知の技術を適用する動機がない。
甲1発明の「補助記憶装置」は,「画像データ」に「補正データ」を付加して記憶するもの,すなわち,文字データと画像データを一緒に記憶しているのであるから,わざわざ文字データと画像データを別にして記憶するなどという複雑な構成を採用するべき必要性がない。
甲2ないし4を参照しても,文字データと画像データを一緒に記憶する構成を,文字データと画像データを別にして,文字データを記憶するデータベースと,画像データを格納する画像記憶領域を,それぞれ設ける構成へと変更することが周知の技術であるとはいえない。
したがって,相違点1に係る構成は,甲1発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。

ウ.小活
以上から,相違点2及び3について検討するまでもなく,特許発明1は,甲1発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(2)特許発明2ないし9について
特許発明2ないし8は,特許発明1を引用し,特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であるところ,特許発明1が,甲1発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない以上,特許発明2ないし8は,甲1発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。
また,請求項9は削除され,申立ての対象が存在しない。

(3)特許発明10について
特許発明10は,制御システムにおける制御方法の発明であるが,当該制御システムは,特許発明1に係る制御システムと同様に,「データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システム」であるから,上記(1)に示す理由と同様の理由により,特許発明10は,甲1発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。

5.甲5を主引用例とする特許法第29条第2項に係る理由について
(1)特許発明1について
ア.特許発明1と甲5発明の対比
(ア)特許発明1と甲5発明を対比すると,甲5発明の「情報収集システム」は,「実装機3及び実装後検査機4を一列に備」えており,「上述の実装機3及び実装後検査機4は,それぞれ制御装置が搭載された自律型の装置であって,各装置の動作が各自の制御装置により個別に駆動」されるから,制御システムであるといえる。また,当該「情報収集システム」は,「実装機3においては実装工程を実行した時に取得される画像情報を含む全てのデータが取得され,これらのデータと共に,基板,電子部品及び半田等の材料組成についてのデータのうち実装工程に関係するデータが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶」しており,「記憶装置10」を備えている。しがたって,甲5発明の「情報収集システム」は,特許発明1の「データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システム」と対比すると,「記憶装置を利用可能に構成された制御システム」という点で一致する。
(イ)また,甲5発明の「基板」が特許発明1の「対象物」に相当することは明らかであり,甲5発明の「実装機3」は基板に「実装」という処理を行い,「実装機3」に対応する「各自の制御装置」は,その処理を制御するから,甲5発明の「実装機3」に対応する「各自の制御装置」は,特許発明1の「対象物に対して実行される処理を制御する制御装置」に相当する。
(ウ)また,甲5発明の「実装後検査機4」は,実装機3の直後に配置され,「基板の被実装面を撮像することによりその画像データに基づいて,部品の実装ずれ等の検査を実施」するから,特許発明1の「前記制御装置と関連付けて配置され,前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行する画像処理装置」に相当する。
(エ)また,甲5発明において,「実装後検査機4において,実装検査工程を実行した時に取得される画像データを含む全てのデータが取得され,これらの全てが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶」させることは,実装後検査機4が取得した画像データを記憶装置10に記憶させているから,特許発明1において「前記画像処理装置が取得した画像データは,前記データ記憶領域へ格納されるように構成」されていることと対比すると,「前記画像処理装置が取得した画像データは,前記記憶装置へ格納されるように構成」されている点で一致する。
(オ)また,甲5発明の「実装後検査機4」は,「実装検査工程を実行した時に取得される画像データを含む全てのデータが取得され,これらの全てが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶」させているが,この「実装検査工程を実行した時に取得される画像データを含む全てのデータ」は,特許発明1の「対象物を撮像して得られた画像データ」及び「前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報」に相当する。また,甲5発明の「製品ID」は,「実装機3」が「実装工程に関係するデータ」を「製品ID」と対応させて「記憶装置10」に記憶させているものであり,甲5発明の「実装工程に関係するデータ」は,特許発明1の「制御装置が管理する属性値」に相当する。
(カ)そうすると,甲5発明において,「実装後検査機4において,実装検査工程を実行した時に取得される画像データを含む全てのデータが取得され,これらの全てが製品IDと対応させて記憶装置10に記憶」させることは,特許発明1において,「前記制御装置および前記画像処理装置は,いずれか単独でまたは互いに協働して,同一の対象物についての,前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と,当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを,互いに関連付けできるように前記データベースへ送信」することと対比すると,「前記画像処理装置は,単独で,同一の対象物についての,前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報と,当該対象物を撮像して得られた画像データとを,互いに関連付けできるように前記記憶装置へ送信」する点で一致する。
(キ)以上から,特許発明1と甲5発明は,以下の点で一致及び相違する。
<一致点B>
「記憶装置を利用可能に構成された制御システムであって,
対象物に対して実行される処理を制御する制御装置と,
前記制御装置と関連付けて配置され,前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行する画像処理装置とを備え,
前記画像処理装置が取得した画像データは,前記記憶装置へ格納されるように構成されており,
前記画像処理装置は,単独で,同一の対象物についての,前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報と,当該対象物を撮像して得られた画像データとを,互いに関連付けできるように前記記憶装置へ送信する,制御システム。」

<相違点4>
特許発明1の制御システムは,「データベースおよびデータ記憶領域」で構成されているのに対して,甲5発明は「記憶装置10」で構成される点。

<相違点5>
特許発明1の画像データは,「データ記憶領域」へ格納されるのに対して,甲5発明の画像データは「記憶装置10」へ格納される点。

<相違点6>
特許発明1は,「前記制御装置および前記画像処理装置は,いずれか単独でまたは互いに協働して,同一の対象物についての,前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値,および,前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と,当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを,互いに関連付けできるように前記データベースへ送信する」ものであるのに対して,甲5発明は,「実装後検査機4」が,単独で,「画像データを含む全てのデータ」を「製品ID」と対応させて,「記憶装置10」に記憶させている点。

イ.相違点4について
上記4.(1)イ.(ア)に示す周知の技術を前提としても,甲5発明に当該周知の技術を適用する動機がない。
甲5発明は,「画像データを含む全てのデータ」を「製品ID」と対応させて,「記憶装置10」に記憶させているが,「画像データを含む全てのデータ」には,画像データだけでなく,実装後検査機4による部品の実装ずれ等の検査の結果が含まれることは明らかであるから,甲5発明の記憶装置10には,画像データと文字データが一緒に記憶されているというほかなく,そのように一緒に記憶されている画像データと文字データを,わざわざ別の記憶装置に記憶させるという複雑な構成を採用するべき必要性がない。
また,甲2ないし4を参照しても,文字データと画像データを一緒に記憶する構成を,文字データと画像データを別にして,文字データを記憶するデータベースと,画像データを格納する画像記憶領域を,それぞれ設ける構成へと変更することが周知の技術であるとはいえない。
したがって,相違点4に係る構成は,甲5発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。

ウ.小活
以上から,相違点5及び6について検討するまでもなく,特許発明1は,甲5発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。

(2)特許発明2ないし9について
特許発明2ないし8は,特許発明1を引用し,特許発明1の発明特定事項を全て含む発明であるところ,特許発明1が,甲5発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない以上,特許発明2ないし8は,甲5発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。
また,請求項9は削除され,申立ての対象が存在しない。

(3)特許発明10について
特許発明10は,制御システムにおける制御方法の発明であるが,当該制御システムは,特許発明1に係る制御システムと同様に,「データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システム」であるから,上記(1)に示す理由と同様の理由により,特許発明10は,甲5発明及び甲2ないし4に示す周知の技術に基づいて,当業者が容易に想到できたものとはいえない。

6.特許法第36条第4項第1号に係る理由について
(1)段落[0078]の記載について
本件明細書には,段落[0068]ないし[0083]において「実施の形態1」が説明されているが,申立人は,そのうちの段落[0078]において,PLC100はデータベース350を参照していないから,数字で構成されたファイル名をインクリメントする際に,元の数字がわからず,PLC100は,画像データをデータ記憶領域に格納する際の識別情報を得ることができない旨を主張している。
しかし,段落[0068]に「実施の形態1として,PLC100が主体的に機能し,対象物であるワーク4を撮像して得られる画像データ50の格納位置を視覚センサ200へ指示する構成について説明する・・・(後略)」と記載されているように,実施の形態1において,画像データをデータ記憶領域に格納する際の識別情報は,PLC100が主体的に機能して指示するのであるから,例えば数字で構成されたファイル名は,PLC100が指示して順次インクリメントすれば十分であり,データベース350に格納されているファイル名を参照する必要はない。
したがって,段落[0078]の記載は,請求項2,4,7及び8に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
また,請求項9は削除され,申立ての対象が存在しない。

(2)段落[0093]の記載について
本件明細書には,段落[0084]ないし[0097]において「実施の形態2」が説明されているが,申立人は,そのうちの段落[0093]において,視覚センサ200はデータベース350を参照していないから,数字で構成されたファイル名をインクリメントする際に,元の数字がわからず,視覚センサ200は,画像データをデータ記憶領域に格納する際の識別情報を得ることができない旨を主張している。
しかし,段落[0084]に「実施の形態2として,格納した画像データ50を特定する情報を視覚センサ200がPLC100へ通知することで,PLC100が送信する情報との関連付けを実現する構成について説明する・・・(後略)」と記載されているように,実施の形態1ではPLC100が主体となって指示していた識別情報を,実施の形態2では視覚センサ200が主体となって指示するものであることは明らかであるから,例えば数字で構成されたファイル名は,視覚センサ200が指示して順次インクリメントすれば十分であり,データベース350に格納されているファイル名を参照する必要はない。
したがって,段落[0093]の記載は,請求項3,4,7及び8に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
また,請求項9は削除され,申立ての対象が存在しない。

(3)段落[0109]の記載について
ア.本件明細書には,段落[0098]ないし[0110]において「実施の形態3」が説明されているが,申立人は,そのうちの段落[0109]において,SQ324の「対象のクエリと関連付ける」という記載及びSQ326の「その関連付けに係る情報」という記載が不明である旨を主張している。
イ.実施の形態3は,視覚センサ200が画像データ50をデータ記憶領域360へ格納したタイミングを示す時刻情報をPLC100へ通知しておき,PLC100が送信する情報にこの時刻情報を含めておくことで,データベース350において関連付ける処理を実行するものであり,具体的には,視覚センサ200が画像データ50を記憶領域360に送信して(SQ312),記憶領域360が当該画像データ50を格納し(SQ314),記憶領域360が画像データ50を格納した時刻情報及び検査データを,視覚センサ200がPLC100に送信し(SQ316,SQ318),PLC100は,加工データ及び検査データと時刻情報を用いてクエリを生成してデータベース350に送信する。そして,データベースは,クエリに含まれる時刻情報に基づいて,データ記憶領域360を参照して,当該時刻に格納された画像データ50を特定し,「対象のクエリと関連付ける」(SQ324)というものであるから,当該「対象のクエリと関連付ける」という記載の意味は,クエリに含まれる加工データ及び検査データと,時刻情報により特定された画像データが,同一の対象物に関するデータであると認識させることを意味すると解することができる。
ウ.さらに,データベース350は,「その関連付けに係る情報」を含むようにデータデースを更新する(SQ326)のであるから,当該「その関連付けに係る情報」という記載は,クエリに含まれる加工データ及び検査データと,時刻情報により特定された画像データが,同一の対象物に関するデータであると認識させるための情報を意味すると解することができる。
したがって,段落[0109]の記載は,請求項6ないし8に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
また,請求項9は削除され,申立ての対象が存在しない。

7.特許法第36条第6項第2号に係る理由について
申立人は,請求項6に「前記制御装置からの時刻情報に基づいて,対応する画像データとの関連付け処理が実行される」と記載されているが,「対応する画像データとの関連付け処理」とは,具体的に何をどうする処理であるのか明確でない旨を主張している。
しかし,上記6.(3)イ及びウ.で説示するように,発明の詳細な説明を参照すれば,「関連付け」とは,画像データと他の情報が,同一の対象物に関するものであると認識させることを意味することは明らかであるから,「関連付け処理」は,画像データと他の情報が,同一の対象物に関するものであると認識させるようにデータベースを更新することといえる。
したがって,請求項6ないし8に係る発明は明確である。
また,請求項9は削除され,申立ての対象が存在しない。

8.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし8及び10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1ないし8及び10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして,請求項9に係る特許は,訂正により削除された。これにより,請求項9に係る特許異議の申立ては,申立ての対象が存在しないものとなったため,特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システムであって、
対象物に対して実行される処理を制御する制御装置と、
前記制御装置と関連付けて配置され、前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置が取得した画像データは、前記データ記憶領域へ格納されるように構成されており、
前記制御装置および前記画像処理装置は、いずれか単独でまたは互いに協働して、同一の対象物についての、前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値、および、前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と、当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを、互いに関連付けできるように前記データベースへ送信する、制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記画像処理装置が取得する各画像データについての前記データ記憶領域に格納される際の識別情報および格納される位置を示す位置情報のうち少なくとも一方を、前記特定情報として前記画像処理装置へ提供し、
前記画像処理装置は、取得した各画像データを、前記制御装置からの対応する特定情報に従って前記データ記憶領域へ格納する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記画像処理装置は、取得した各画像データを、予め定められた規則に従って、前記データ記憶領域へ格納するとともに、格納した画像データ毎に対応する特定情報を前記制御装置へ提供する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記制御装置が管理する情報および前記画像処理装置が管理する情報の少なくとも一方と、前記データ記憶領域に格納される画像データを特定するための特定情報とを併せて前記データベースへ送信する、請求項2または3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記画像処理装置は、取得した各画像データを前記データ記憶領域へ格納するとともに、当該画像データを格納したタイミングを示す時刻情報を前記制御装置へ提供する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記制御装置が管理する情報および前記画像処理装置が管理する情報の少なくとも一方と、前記時刻情報とを併せて前記データベースへ送信し、
前記データベースにおいて、前記制御装置からの時刻情報に基づいて、対応する画像データとの関連付け処理が実行される、請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
請求項1?6のいずれか1項に記載の制御システムを構成する制御装置であって、
制御部と、
ユーザプログラムの格納に用いられる記憶部とを備え、
前記制御部は、前記ユーザプログラムを実行することで対象物に対して実行する処理を制御し、
前記制御部は、
前記対象物に対応付けた前記制御についての加工データを前記記憶部に格納する処理と、
前記画像処理装置が画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定する特定情報を、前記画像処理装置に送信する処理と、
前記加工データおよび当該加工データに対応する対象物についての前記特定情報を前記データベースへ送信する処理とを実行可能に構成される、制御装置。
【請求項8】
請求項1?6のいずれか1項に記載の制御システムを構成する画像処理装置であって、
制御部と、
対象物を撮像して得られる画像データを取得するインターフェイスと、
前記画像データの格納に用いられる記憶部とを備え、
前記制御部は、
前記画像データに対する画像処理を実行する処理と、
前記画像処理によって生成される結果を前記制御装置へ送信する処理と、
前記制御装置からの、前記画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定する特定情報に従って、取得した前記画像データを前記データ記憶領域へ送信する処理とを実行可能に構成される、画像処理装置。
【請求項9】
(削除)
【請求項10】
データベースおよびデータ記憶領域を利用可能に構成された制御システムにおける制御方法であって、
制御装置が対象物に対して実行される処理を制御するステップと、
前記制御装置と関連付けて配置された画像処理装置が前記対象物を撮像して得られる画像データに対する処理を実行するステップと、
前記画像処理装置が取得した画像データを前記データ記憶領域へ格納するステップと、
前記制御装置および前記画像処理装置は、いずれか単独でまたは互いに協働して、同一の対象物についての、前記データベースに定義されているいずれかの属性に対応する前記制御装置が管理する属性値、および、前記画像処理装置による処理結果を示す結果情報のうち少なくとも一方と、当該対象物を撮像して得られた画像データの前記データ記憶領域における格納先を特定するための特定情報とを、互いに関連付けできるように前記データベースへ送信するステップとを含む、制御方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-10-17 
出願番号 特願2013-46013(P2013-46013)
審決分類 P 1 651・ 536- YAA (G05B)
P 1 651・ 537- YAA (G05B)
P 1 651・ 121- YAA (G05B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 西村 泰英
特許庁審判官 篠原 将之
刈間 宏信
登録日 2017-09-15 
登録番号 特許第6205757号(P6205757)
権利者 オムロン株式会社
発明の名称 制御システム、制御装置、画像処理装置、および、制御方法  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  
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