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審決分類 審判 全部申し立て 1項2号公然実施  D06M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D06M
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D06M
審判 全部申し立て 2項進歩性  D06M
管理番号 1346766
異議申立番号 異議2018-700014  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-01-05 
確定日 2018-11-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6158178号発明「保液シート及びフェイスマスク」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6158178号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-18〕について訂正することを認める。 特許第6158178号の請求項1?3、5?15に係る特許を維持する。 特許第6158178号の請求項4、16?18に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6158178号の請求項1?18に係る特許についての出願は、平成25年6月11日(国内優先権主張 平成24年6月12日(以下「本件優先日」という。))を国際出願日とする特許出願であって、平成29年6月16日にその特許権の設定登録がされ、平成29年7月5日に特許掲載公報が発行された。平成30年1月5日に本件特許に対して特許異議申立人レンツィング アクチェンゲゼルシャフト(以下「申立人」という。)から特許異議の申立てがされ、当審は、同年3月27日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年5月25日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、同年8月7日に申立人から意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正事項(当審で、訂正箇所に下線を付した。)
平成30年5月25日になされた訂正(以下「本件訂正」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。
(1)訂正事項1
ア 請求項1の訂正全体
特許請求の範囲の請求項1に「液状成分を吸収可能な保液層を含み、前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成されている保液シートであって、下記に示す透明度が0.27以下であり、かつ前記透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレンービニルアルコール系繊維の少なくとも一方を含む短繊維である保液シート」と記載されているのを「液状成分を吸収可能な保液層を含み、前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成され、かつ80%以上の空隙率を有する保液シートであって、目付が200g/m^(2)以下であり、下記に示す透明度が0.27以下であり、
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m^(2))
かつシート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が15%以下であり、
前記透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維を含むか、又は溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレン-ビニルアルコール系繊維の両方を含む短繊維であるとともに、前記溶剤紡糸セルロース繊維の割合が、保液層全体に対して50質量%以上である保液シートで形成され、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたフェイスマスク。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?3及び5?15も同様に訂正する)。
ここで、訂正事項1は、下記訂正事項1-1?訂正事項1-4からなるものである。
イ 訂正事項1-1
訂正前の請求項1の末尾に「保液シート。」と記載されているのを、「保液シートで形成され、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたフェイスマスク。」と訂正する。
ウ 訂正事項1-2
訂正前の請求項1の冒頭に「液状成分を吸収可能な保液層を含み、前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成されている」と記載されているのを、「液状成分を吸収可能な保液層を含み、前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成され、かつ80%以上の空隙率を有する」と訂正する。
エ 訂正事項1-3
訂正前の請求項1に「下記に示す透明度が0.27以下であり、
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m^(2))」と記載されているのを「目付が200g/m^(2)以下であり、下記に示す透明度が0.27以下であり、
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m^(2))
かつシート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が15%以下であり、」と訂正する。
オ 訂正事項1-4
訂正前の請求項1に「前記透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレンービニルアルコール系繊維の少なくとも一方を含む短繊維である」と記載されているのを、「前記透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維を含むか、又は溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレン-ビニルアルコール系繊維の両方を含む短繊維であるとともに、前記溶剤紡糸セルロース繊維の割合が、保液層全体に対して50質量%以上である」と訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項10に「不織布集合体」と記載されているのを「不織繊維集合体」に訂正する(請求項10の記載を引用する請求項11?15も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項16を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項17を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項18を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項2、3、5?15の全ての末尾に「保液シート。」と記載されているのを全て「フェイスマスク。」と訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項5に「請求項1?4のいずれかに」と記載されていてるのを「請求項1?3のいずれかに」と訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項6に、「請求項1?5のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5のいずれかに」と訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1?6のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?6のいずれかに」と訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1?7のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?7のいずれかに」と訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項9に「請求項1?8のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?8のいずれかに」と訂正する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項10に「請求項1?9のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?9のいずれかに」と訂正する。
(14)訂正事項14
特許請求の範囲の請求項11に「請求項1?10のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?10のいずれかに」と訂正する。
(15)訂正事項15
特許請求の範囲の請求項12に「請求項1?11のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?11のいずれかに」と訂正する。
(16)訂正事項16
特許請求の範囲の請求項14に「請求項1?13のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?13のいずれかに」と訂正する。
(17)訂正事項17
特許請求の範囲の請求項15に「請求項1?14のいずれかに」と記載されているのを「請求項1?3及び5?14のいずれかに」と訂正する。
2 訂正の理由
(1)一群の請求項についての検討
訂正前の請求項1?18について、請求項2?18はそれぞれ請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1?18は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
(2)訂正事項が全ての訂正要件に適合しているかの検討
ア 訂正事項1
訂正事項1は、次の訂正事項1-1?訂正事項1-4からなるため、順次検討する。
(ア)訂正事項1-1(用途)
a 訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る特許発明(以下「訂正前発明1」という。)では、用途について「保液シート」、すなわち、保液のために用いるシートに特定している。
これに対して、訂正後の請求項1に係る特許発明(以下「本件発明1」という。)では、用途を「保液シートで形成され、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたたフェイスマスク」に特定することにより、訂正前発明1における用途をより具体的に特定している。すなわち、この用途に係る訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としている。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
上記aの理由及び本件特許明細書段落【0154】の「保液シートは・・・スキンケアシート(例えば、フェイスマスク・・・などに使用できる。」という記載からも明らかなように、前記用途に係る訂正事項は、用途という発明特定事項を概念的により下位の「フェイスマスク」に限定する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 新規事項の追加の有無についての検討
前記用途に係る訂正事項は、特許掲載公報の明細書中の段落【0001】及び【0012】?【0014】に記載された事項であるため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(イ)訂正事項1-2(保液層)
a 訂正の目的について
訂正前発明1では、前記保液シートに含まれる保液層について「液状成分を吸収可能であり、透明繊維を含む不織繊維構造体で形成されている」ことのみ特定していた。
これに対して、本件発明1では、保液層の空隙率を80%以上に特定することにより、訂正前発明1における保液層の構造がより具体的に特定されている。すなわち、この保液層に係る訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
上記aの理由から明らかなように、前記保液層に係る訂正事項は、保液層の空隙率を80%以上に特定する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではないため、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 新規事項の追加の有無についての検討
前記保液層に係る訂正事項は、特許掲載公報の明細書中の段落【0058】に「記載された事項であるため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(ウ)訂正事項1-3(保液シート)
a 訂正の目的について
訂正前発明1では、保液シートについて「前記保液層を含み、・・・透明度が0.27以下である」ことのみ特定していた。
これに対して、本件発明1では、保液シートの特性について「目付が200g/m^(2)以下であり、かつシート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が15%以下である」ことを特定することにより、訂正前発明1における保液シートの特性をより具体的に特定している。すなわち、この保液シートに係る訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
上記aの理由から明らかなように、前記保液シートに係る訂正事項は、保液シートの目付及び白度をそれぞれ200g/m^(2)及び15%以下に特定する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではないため、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 新規事項の追加の有無についての検討
前記保液シートに係る訂正事項は、特許掲載公報の明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
目付に係る説明としては、段落【0094】に「本発明の保液シートの目付は、200g/m^(2)以下程度の範囲から選択でき」と記載されている。
白度に係る説明として、段落【0091】には「・・・(略)・・・フェイスマスクに適した高度な透明性が必要な場合、この白度は1?15%程度であってもよく、・・・(略)・・・本発明では、保液シート(特にフェイスマスク)に必要な透明性は、この白度で評価できる」と記載されており、フェイスマスクの白度の上限値として15%が記載されている。
そのため、前記保液シートに係る訂正事項は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(エ)訂正事項1-4(透明繊維)
a 訂正の目的について
訂正前発明1では、透明繊維を構成する短繊維は、溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレン-ビニルアルコール系繊維の少なくとも一方を含んでいた。すなわち、前記短繊維は、溶剤紡糸セルロース繊維を単独で含む態様、エチレン-ビニルアルコール系繊維を単独で含む態様、溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレン-ビニルアルコール系繊維の両方を含む態様のいずれかであった。
これに対して、本件発明1では、訂正前の請求項1に択一的に記載されていたエチレン-ビニルアルコール系繊維を単独で含む態様が削除され、かつ、溶剤紡糸セルロース繊維の含有量が限定されている。
したがって、透明繊維に係る訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
b 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
上記aの理由から明らかなように、前記透明繊維に係る訂正事項は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていたエチレン-ビニルアルコール系繊維を単独で含む態様を削除した訂正であり、この訂正により訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更する訂正ではなく、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、透明繊維に係る訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
c 新規事項の追加の有無についての検討
前記透明繊維に係る訂正事項は、訂正前の請求項1に択一的に記載されていたエチレン-ビニルアルコール系繊維を単独で含む態様を削除したことで、訂正前の請求項1の記載を減縮する訂正であるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
イ 訂正事項2及び4?6
(ア)訂正の目的について
訂正事項2及び4?6は、訂正前の請求項4及び16?18の記載を削除するものである。
したがって、訂正事項2及び4?6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
訂正事項2及び4?6は、訂正前の請求項4及び16?18の記載を削除するのみであるから、訂正前の請求項1の記載について、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものでもなく、かつ、訂正前の請求項1に記載された発明の対象や目的を変更するものとはならない。
したがって、訂正事項2及び4?6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないため、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項の追加の有無についての検討
訂正事項2及び4?6は、訂正前の請求項4及び16?18の記載を削除するものであるため、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項10に記載された「不織布集合体」は、従属する請求項1の記載と整合しておらず、かつ特許掲載公報の明細書中の発明の詳細な説明の段落の【0056】には「不織繊維集合体」との記載がある。よって、前記「不織布集合体」は「不織繊維集合体」の誤記である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものである。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
上記(ア)から明らかなように、訂正事項3は、単に請求項10中の誤記を訂正するためのものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項の追加の有無についての検討
訂正事項3は、請求項1や明細書の段落【0056】に記載されている「不織繊維集合体」という正しい記載に基づいて誤記を訂正するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 訂正事項7
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項2、3、5?15に係る特許発明(以下「訂正前発明2」などという。)では、用途について「保液シート」、すなわち、保液のために用いるシートに特定している。
これに対して、訂正後の請求項2、3、5?15に係る特許発明(以下「本件発明2」などという。)では、用途を「保液シートで形成されたフェイスマスク」に特定することにより、訂正前発明1における用途をより具体的に特定している。すなわち、この用途に係る訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的としている。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
上記(ア)の理由及び本件特許明細書段落【0154】の「保液シートは・・・スキンケアシート(例えば、フェイスマスク・・・などに使用できる。」という記載からも明らかなように、前記用途に係る訂正事項は、用途という発明特定事項を概念的により下位の「フェイスマスク」に限定する訂正であり、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項の追加の有無についての検討
前記用途に係る訂正事項は、特許掲載公報の明細書中の段落【0001】及び【0012】?【0014】に記載された事項であるため、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
オ 訂正事項8?17
(ア)訂正の目的について
これらの訂正の目的は、いずれも上記1(2)の訂正事項2により、削除された請求項4を引用する請求項から除外するためのものである。訂正事項8?17は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的としている。
(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正か否かの検討
上記(ア)の理由より、訂正事項8?17は、引用する請求項から請求項4を除外する訂正であるから、カテゴリーや対象、目的を変更する訂正ではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
(ウ)新規事項の追加の有無についての検討
上記(ア)の理由より、訂正事項8?17は、引用する請求項から請求項4を除外する訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
3 訂正についての小括
以上のとおり、訂正事項1?17を含む本件訂正は、適法であるから、請求項〔1-18〕について、本件訂正を認める。

第3 本件発明について
1 本件発明1?3、5?15
本件発明1?3、5?15は以下のとおりである。
「【請求項1】
液状成分を吸収可能な保液層を含み、前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成され、かつ80%以上の空隙率を有する保液シートであって、目付が200g/m^(2)以下であり、下記に示す透明度が0.27以下であり、
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m^(2))
かつシート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が15%以下であり、
前記透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維を含むか、又は溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレンービニルアルコール系繊維の両方を含む短繊維であるとともに、前記溶剤紡糸セルロース繊維の割合が、保液層全体に対して50質量%以上である保液シートで形成され、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたフェイスマスク。
【請求項2】
溶剤紡糸セルロース繊維がカルボキシル基を実質的に含まないセルロース系繊維である請求項1記載のフェイスマスク。
【請求項3】
透明繊維がさらにレーヨン繊維を含む請求項1又は2記載のフェイスマスク。
【請求項5】
透明繊維が、着色剤の含有量0.01質量%以下の短繊維である請求項1?3のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項6】
着色剤が酸化チタンである請求項1?3及び5のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項7】
不織繊維集合体を形成する繊維が平均繊維径1?15μmの短繊維である請求項1?3及び5?6のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項8】
短繊維の平均繊維長が20?70mmであるとともに、不織繊維集合体の見掛密度が0.08?0.15g/cm^(3)であり、かつ空隙率が90?95%である請求項1?3及び5?7のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項9】
不織繊維集合体が、セミランダムウェブ、パラレルウェブ又はクロスウェブを水流絡合させたスパンレース不織布である請求項1?3及び5?8のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項10】
不織繊維集合体の目付が30?100g/m^(2)である請求項1?3及び5?9のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項11】
保液層の一方の面に、透明樹脂で形成された非多孔性の透明層が積層されている請求項1?3及び5?10のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項12】
保液層の少なくとも一方の面に、メルトブローン不織布で形成された密着層が積層されている請求項1?3及び5?11のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項13】
メルトブローン不織布が、着色剤の含有量0.1質量%以下の透明繊維で形成されている請求項12記載の保液シート。
【請求項14】
JIS L1913に準拠した湿潤時の30%伸長時応力が、少なくとも一方向において1.5N/5cm以上である請求項1?3及び5?13のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項15】
シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が1?10%である請求項1?3及び5?14のいずれかに記載のフェイスマスク。」
2 本件発明における透明度及び白度について
(1)ここで、本件発明1において規定された「透明度」及び「白度(%)」について、検討する。
(2)白度について
本件特許明細書の段落【0111】、【0113】には以下のように記載されている。
「[白度及び透明度]
白度及び透明度は、次の手順で測定した。
(1)測定試料を10×10cmに裁断し重量、厚みを測定する。
(2)黒色のアクリル板(メタクリル樹脂押出板、(株)クラレ製「コモグラス」、12.5cm×12.5cm、厚み3mm)の白度(WI値)を色差計(コニカミノルタ(株)製「色彩色差計CR-410」)で測定する。
(3)(2)の黒色のアクリル板の上に試料を載置し・・・
(4)試料にスプレーでイオン交換水を含浸させ、700%含水率になるまで水分調整を行う。
(5)試料をハンドローラー(幅4cm×重量280g、線圧70g/cm)で押さえ、試料と黒色のアクリル板との間に溜まった空気を抜き出すとともに、試料を黒色のアクリル板に密着させる。
(6)湿潤状態で黒色のアクリル板に密着した試料の白度(WI値)を色差計で測定する。
・・・
なお、シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)は、黒色のアクリル板のWI値(W_(0))と、試料にイオン交換水を700質量%含浸させ、黒色のアクリル板に密着させたときのWI値(W_(1))との差(W_(1)-W_(0))として求めることができる。W0は6.67であった。」
(3)透明度について
本件明細書の段落【0112】、【0113】には、次のように記載されている。
「得られた白度(WI値)に基づいて、以下の式に従って透明度を算出した。
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m^(2))」
(4)白度及び透明度についての当審の理解
ア 上記より、白度とは、保水層がどの程度透きとおっているかの指標であって、完全に透きとおっている場合には黒色のアクリル板と同じ白度になるから、0%となり、透きとおる度合いが低くなるにつれて、繊維そのものの白度に近づくため100%に向けて上昇することになる。
イ 透明度は、その値を目付量で割ったものであるから、同じ目付量のシートを比較する場合には、白度についての上記アの理解と同じである。

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
当審が取消理由として通知した理由は、次の1?3である。
1 取消理由1
甲第1号証(以下「甲1」などという。)または甲2からの新規性進歩性
(1)特許法第29条第1項第3号(新規性)について
ア 対象請求項
請求項1、2、5?7、10、15
イ 引用例
甲2
(2)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 対象請求項
請求項1?3、5?15
イ 引用例
甲1?11
2 取消理由2(サポート要件違背)
本件特許に係る出願は、特許請求の範囲の記載が下記(1)(2)の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(1)取消理由2-1
本件発明1の「透明度」が所定値(0.27)以下との規定されているが、目付量の上限を定めていないとすると、目付量が極端に大きくなると、白度が100%のものも透明度が所定値以下となってしまうが、このような場合には、本件発明の課題を解決できるとはいえず、サポート要件を充足しない。
(2)取消理由2-2
本件発明1?3及び4?15に係る保液シートが液体成分によって含浸されない用途で使用された場合、「使用時に肌に密着しているか否かを視覚で判断することを容易とする湿潤状態での透明性を得る」という発明の課題が解決されないため、サポート要件を充足しない。
3 取消理由3(公然実施)
(1)特許法第29条第1項第2号(公然実施)について
ア 対象請求項
請求項1、2、5、6
イ 引用例
オオサキメディカル株式会社製のクロスガーゼRの品番23800(以下「甲13発明」という。)
(2)特許法第29条第2号(進歩性)について
ア 対象請求項
請求項1?3、5?15
イ 引用例
甲13発明及び甲1?4、6、7、10、11
4 証拠の一覧
(1)特許異議申立書において、申立人が提示した証拠は以下のとおりである。
甲1:米国特許出願公開第2011/0152795号明細書
甲2:特開2006-34507号公報
甲3:特表2006-514867号公報
甲4:特開平10-216215号公報
甲5:特開2000-319160号公報
甲6:Lenzinger Berichte 2005,Vol.84,36?41頁
甲7:国際公開第01/88266号
甲8:特開2006-57211号公報
甲9:特開2009-287158号公報
甲10:特開平9-101422号公報
甲11:国際公開第2011/004834号
甲12:本件特許に係る出願の審査段階において、平成28年8月8日に特許権者が特許庁に提出した意見書
甲13:オオサキメディカル株式会社発行の製品カタログの第19頁の「クロスガーゼR」の項及び裏表紙
なお、合議体は、甲13について原本確認を行った。
甲14:シンワ株式会社作成に係るオオサキメディカル株式会社への納品書控え
なお、合議体は甲14について原本確認を行った。
甲15:オーストリア公証人であるリヒャルト ロイドゥル博士により公証された実験結果証明書及びその翻訳文
なお、合議体は、原本を確認した。
甲16:クロスガーゼRの梱包写真2枚
甲17:2006年1月30日に改訂された品名クロスガーゼRの規格書
甲18:品質記録FM440-1と題する原料使用記録
甲19:7122A-P25リヨセルの2012年1月18日の製造日誌
甲20:「指定外繊維とは?リヨセル・テンセルについて」と題する東京都クリーニング生活衛生同業組合作成のウェブサイトを印刷したもの
(2)平成30年8月7日提出の意見書(以下「申立人意見書」という。)により提出された資料
参考資料1:特開2008-261067号公報
参考資料2:国際公開第2012/046694号
参考資料3:特開2010-195735号公報
参考資料4:特開2011-105664号公報
参考資料5:特開2010-18553号公報
参考資料6:特開2006-316002号公報
参考資料7:米国特許出願公開第2012/0070544号明細書
参考資料8:欧州特許出願公開第2177351号明細書
参考資料9:J.Robertson, M.Grieve ed.,"Forensic Examination of Fibres",Second Edition, Taylor & Francis, 2003, p.401-402、発行日:2003年
参考資料10:特開2001-261527号公報
参考資料11:特開2008-289760号公報
5 前記取消理由1について
(1)甲1の記載事項
本件優先日前に頒布された甲1には、次の記載がある(当審訳を付した)。
ア 特許請求の範囲の記載
(ア)請求項1
「A facial mask for treating skin, comprising a water-insoluble, nonwoven substrate sized and shaped to lie against a face of a human user, wherein at least a portion of said water-insoluble substrate has an Average Wet Transparency Percentage of at least about 25%. 」
「人ユーザーの顔に載るサイズと形状の水不溶性不織布基材を含む肌トリートメント用マスクであって、前記水不溶性基材の少なくとも一部は、少なくとも約25%の平均湿潤透明パーセントを有するフェイスマスク。」
(イ)請求項2
「The facial mask according to claim 1, wherein said water-insoluble substrate comprises hydro-entangled nonwoven web, thermal bond nonwoven web, chemically-bonded dry-formed nonwoven web, or combinations thereof. 」
「前記水不溶性基材は、水流交絡不織布、サーマルボンド不織ウェブは、化学結合された乾式成形された不織ウェブ、またはそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載のフェイスマスク。」
(ウ)請求項4
「The facial mask according to claim 1, wherein said wetting agent is an oil-in-water emulsion.」
「前記湿潤剤は、水中油型エマルジョンである、請求項1に記載のマスク」
(エ)請求項5
「The facial mask according to claim 4, wherein said emulsion is combined with said water-insoluble substrate in an amount of about 50% to about 5000% by weight based on the weight of said water-insoluble substrate alone.」
「前記エマルジョンは、前記水不溶性基材の重量に対して約20重量%?約5000質量%の量で、前記水不溶性基材と組み合わさせる、請求項4のフェイスマスク。」
(オ)請求項6
「The facial mask according to claim 1, wherein said water-insoluble substrate has a basis weight of about 10 gsm to about 200 gsm.」
「前記水不溶性基材は、約10g/m^(2)?約200g/m^(2)の目付を有する請求項に記載のフェイスマスク。」
(カ)請求項8
「The facial mask of claim 1, wherein said water-insoluble substrate and said wetting agent are packaged together.」
「前記水不溶性基材及び前記湿潤剤は一緒に梱包されている、請求項1に記載のフェイスマスク。」
イ 明細書の記載
(ア)段落[0001]
「The present invention relates to a facial mask, and more particularly, to a facial mask having a level of transparency when exposed to a wetting agent.」
「本発明はフェイスマスクに関し、より具体的には、湿潤剤に曝されたときにある特定レベルの透明性を有するフェイスマスクに関する。」
(イ)段落[0003]
「A conventional facial mask spread out fully on a face will completely block the user's view of the skin. This is problematic especially for users who want to see their skin through the mask to ensure that the mask has made complete contact with the skin. Non-transparent masks do not allow a user to know whether there are voids or bubbles between the mask and the skin.
This could give rise to uneven treatment of the face by the skin care composition contained in the mask. Such uneven treatment is especially problematic for facial masks designed to lighten or even the tone of the skin. Furthermore, conventional opaque facial masks provide undesirable aesthetics to a user who would like to be seen through the mask.」
「顔全体に広がる従来の顔用マスクは、使用者が皮膚を見るのを完全に妨げるであろう。これは、特に、マスクが皮膚と完全に接触したことを確実にするために、マスクを通してその皮膚を見たい使用者にとって問題である。不透明マスクは、マスクと皮膚との間に空間または気泡が存在するかどうかを知ることはできない。この結果、マスク中に含まれるスキンケア組成物による顔の不均一な手入れを生じさせることができる。このような不均一な手入れは、肌の色調を淡色化又は均一化するよう設計されたフェイスマスクにとっては特に問題となる。さらに、従来の不透明なフェイスマスクは、マスクを通して見られたいと思う使用者に望ましくない美観を提供する。」
(ウ)段落[0011]
「According to the present invention, a transparent facial mask is provided. In particular, the facial mask of the present invention comprises a water-insoluble, nonwoven substrate. In one embodiment of the invention, the facial mask has an Average Wet Transparency Percentage of at least about 25% when exposed to a wetting agent. In another embodiment of the invention, the facial mask has a Percent Increase in Transparency of at least about 50%. This improved facial mask allows the user to view the surface contact between the skin and the facial mask, providing better performance by the facial mask and improved aesthetics to the user.」
「本発明によれば、透明なフェイスマスクが提供される。特に、本発明のフェイスマスクは、水不溶性の不織基材を含む。本発明の1つの実施形態において、フェイスマスクは、湿潤剤に曝されたときに、少なくとも約25%の平均湿潤透明度を有している。本発明の別の実施例において、フェイスマスクは、少なくとも約50%の透明度増加パーセントを有する。この改良された顔面マスクは、ユーザが皮膚と顔マスクとの間の表面接触を見るために、ユーザに、フェイスマスク及び審美性の向上によって、より良好な性能を提供する。」
(エ)水不溶性基材の説明
a 段落[0015]
「The facial mask comprises a water-insoluble, nonwoven substrate. As used herein, "water-insoluble" means the substrate, upon immersion in distilled water at 25℃., does not readily dissolve or readily break apart. While portions of the substrate may be leachable or readily soluble in the distilled water, at least one portion of the water-insoluble substrate remains intact. For example, the intact portion may be readily manipulated, such as picked up and transported as an interconnected cohesive unit, by a user.」
「フェイスマスクは、水不溶性不織基材を含んでいる。本明細書で使用される、「水不溶性」とは、25℃で蒸留水に浸漬したときに、基板は、容易に溶解あるいは容易に分解しないことを意味する。基板の一部が蒸留水中で浸出性または易溶性を示してもよいが、水不溶性基材の少なくとも一部は、そのまま残るものである。そのまま残った部分は、例えば、相互接続された凝集性ユニットとして取り上げたり輸送されるよう、使用者により容易に操作することができる。」
b 段落[0016]
「The water-insoluble substrate is formed to receive or preferably retain a wetting agent (such as by absorbing the wetting agent among, along, and/or between fibers comprising the water-insoluble substrate). Preferably, the water-insoluble substrate is capable of retaining the wetting agent from the time the product is manufactured to when the product is used by a consumer (i.e., a shelf storage period).・・(省略)・・」
「水不溶性基材は、湿潤剤を受容する又は好ましくは保持する(例えば、繊維の間又は繊維に沿って湿潤剤を吸収することによって)ように形成されている。前記水不溶性基材は、製造時から使用者によって使用される時まで(すなわち保存期間)の間、湿潤剤を保持できることが望ましい。・・(省略)・・」
(オ)段落[0026]
「The water-insoluble substrate comprises a nonwoven material. As used herein, "non-woven" means that the substrate, or a layer of the substrate, is comprised of fibers that are not woven into a fabric but rather are formed into a sheet, mat, or pad layer. The fibers can either be random (i.e., randomly aligned) or they can be carded (i.e., combed to be oriented in primarily one direction). Furthermore, the water-insoluble substrate can be composed of a combination of layers of random and carded fibers.」
「水不溶性基材が不織布材料を含む。本明細書で使用される、「不織」とは、基材又は基材の層が布に織られておらずシート、マット、又はパッド層に形成されている繊維により形成されていることを意味する。繊維はランダムに(すなわち、ランダムに配置される)することもでき又はそれらを梳くこと(即ち、主に一方向に向くように梳かれる)もできる。さらに、水不溶性基材は、ランダム繊維の層と梳いた繊維の層とを組合せて構成することもできる。」
(カ)段落[0027]
「Non-woven substrates may be comprised of a variety of natural and/or synthetic materials. By "natural" it is meant that the materials are derived from plants, animals, insects, or byproducts of plants, animals, and insects. By "synthetic" it is meant that the materials are obtained primarily from various man-made materials or from natural materials, which have been further altered. Non-limiting examples of natural materials useful in the present invention are silk fibers, keratin fibers (such as wool fibers, camel hair fibers) and cellulosic fibers (such as wood pulp fibers, cotton fibers, hemp fibers, jute fibers, and flax fibers).」
「不織布基質は、種々の天然および/または合成材料で構成してもよい。「天然」とは、材料が植物、動物、昆虫、又は植物、動物、及び昆虫の副産物由来であることを意味する。「合成」とは、材料が主として様々な人工材料から得られること、又は天然材料をさらに変化されたから得られることを意味する。本発明において有用な天然材料の非限定的な例は、絹繊維、ケラチン繊維(ウール繊維、ラクダの毛の繊維等)およびセルロース繊維(木材パルプ繊維、綿繊維、麻繊維、黄麻繊維、及び亜麻繊維など)である。」
(キ)段落[0028]
「Examples of synthetic materials include, but are not limited to, those selected from the group containing acetate fibers, acrylic fibers, cellulose ester fibers, cotton fibers, modacrylic fibers, polyamide fibers, polyester fibers, polyolefin fibers, polyvinyl alcohol fibers, rayon fibers, polyurethane foam, and mixtures thereof.」
「合成材料の例としては、限定するものではないが、アセテート繊維を含む群から選択されるもの、例えば、アクリル繊維、セルロースエステル繊維、綿繊維、モダクリル繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、レーヨン繊維、ポリウレタンフォーム、及びこれらの混合物が挙げられる。」
(ク)透明性についての説明
a 段落[0049]
「According to one embodiment of the invention, at least a portion of the water-insoluble substrate has an Average Wet Transparency Percentage of at least about 25%, such as at least about 30% or preferably at least about 40%. Average Wet Transparency Percentage indicates the level of transparency of the substrate when exposed to a wetting agent.」
「本発明の一実施形態によれば、水不溶性基材の少なくとも一部は、少なくとも約25%の平均湿潤透明パーセント、少なくとも約30%、または好ましくは少なくとも約40%である。平均湿潤透明パーセントは湿潤剤に暴露された場合の基材の透明性のレベルを示す。」
b 段落[0052]
「Average Wet Transparency Percentage and Percent Increase in Transparency may be measured using a SwissTester Transparency Measuring Device. The device has the following parts: a light sensor, a light source, a digital output and a calibration control means. The light sensor and the light source are magnetic and can be coupled to form a tight seal. The device is calibrated prior to use to read 100% transparency. The light sensor portion of the device is placed on a flat surface. A sample of material is then placed over the light sensor. The light source portion of the device is then placed on top of the sample and the transparency percentage value is read. Four readings are taken for each sample, each time repositioning a different area of the sample over the sensor. The average value is then calculated.」
「平均湿潤透明パーセント及び上昇パーセントはスイステスター透明性測定装置を用いて測定することができる。このデバイスは、以下の部品を有する:光センサ、光源、デジタル出力とキャリブレーション制御手段。光源及び光センサーが磁性であり、及び気密シールを形成するように結合することができる。装置は、100%の透明度を読み出すために使用する前に較正される。装置の光センサ部は、平坦な表面上に配置される。材料の試料を次に光センサの上に配置される。装置の光源部は、その後、サンプルの上に配置され、透過率値が読み取られる。各試料について、各時間は、センサの上にサンプルの異なる領域を再配置して4回読む。平均値が計算される。」
(ケ)Example2(実施例2)について
a 段落[0075]
「A series of substrates were measured for Average Wet Transparency Percentage and Percent Increase in Transparency using the method described above as follows.」
「一連の基材について、上記のような方法を用いて平均湿潤透明パーセント及び透明性増加パーセントを測定した。」
b 段落[0076]
「Each sample of substrate was cut to have outer dimensions of about 6.35 cm×7.32 cm. Where a wetting agent was used, the substrate sample was placed in a weigh boat filled with 100 grams of wetting agent for thirty seconds to saturate. Each substrate was tested under four conditions: (1) in a dry state, (2) using water as a wetting agent, (3) using the liquid from a commercially available Neutrogena^((R)) Deep Hydrating Mask as the wetting agent, and (4) using the wetting agent of Table 1. The results are shown in Table 2.」
「基材の各サンプルは、約6.35cm×7.32cmの外形寸法を有するように切断された。湿潤剤を用いた場合、基板サンプルを30秒間湿潤剤100gで満たされた秤量容器に入れて飽和させた。各基材は、(1)乾燥した状態(2)湿潤剤として水を使用した条件(3)市販されているニュートロジーナ(登録商標)高水和マスクからの液体を湿潤剤として用いた条件(4)表1の湿潤剤を使用する場合、の4種類の条件下で試験した。結果を表2に示す。」
c 表2の1
[当審訳:SUBSTRATE(基材)、WETTING AGENT(湿潤剤)、Trial 1-4(1?4回目の測定)、AVERAGE WET TRANSPARENCY PERCENTAGE(平均湿潤透明パーセント)、PERCENT INCREASE IN TRANSPARENCY(透明性上昇パーセント)、GSM(目付(g/m^(2)))、Polypropylen(ポリプロピレン)、Plup(パルプ)、PET(ポリブチレンテレフタレート)]



d 表2の2
[当審訳:Rayon(レーヨン)、Airlaid(エアレイド)、microcreped(微細なクレープ加工がされた)、Spunlace(スパンレース)、Viscose(ビスコース)]



e 表2の3
[当審訳:RAYON(レーヨン)、hydroembossed(水流エンボス加工された)]



(2)甲2の記載事項
甲2には次の事項が記載されている。
ア 明細書の段落【0006】
「本発明は、手術の際にも使用できるガーゼであって、切り出しの際や使用の際に糸屑の発生等が少なく、また、使用時の摩擦や吸液状態での摩擦等による形態変化が少ない形態保持性に優れた、取扱い性の良好なガーゼを提供することにある。」
イ 同段落【0007】、【0008】
「本発明者等は、前記課題を達成するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、主として溶剤紡糸セルロース繊維により構成された繊維シートからなるガーゼであって、該繊維シートは、溶剤紡糸セルロース繊維相互が交絡することにより全体として一体化しており、繊維シート中にはX線造影糸が存在し、該X線造影糸は、繊維シートを構成する溶剤紡糸セルロース繊維が絡み付くことにより、繊維シート中に固定されていることを特徴とするガーゼを要旨とするものである。」
ウ 同段落【0009】
「また、本発明は、主として溶剤紡糸セルロース繊維が堆積してなる繊維ウェブ上に、X線造影糸を適宜の間隔で配列させ、さらにその上に主として溶剤紡糸セルロース繊維が堆積してなる繊維ウェブを堆積させた積層物に、水流交絡処理を施すことを特徴とするガーゼの製造方法を要旨とするものである。」
エ 同段落【0011】
「本発明における繊維シートは、主として溶剤紡糸セルロース繊維により構成されている。溶剤紡糸セルロース繊維とは、従来のビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨン(キュプラレーヨン)とは、基本的にその製造方法が異なり、得られる繊維の性能も異なるものである。すなわち、ビスコースレーヨン等は、セルロース原料を化学的に変化させて、それを分散溶解させた原液を紡糸して得られるものであるのに対し、溶剤紡糸セルロース繊維は、セルロース原料を化学的に変化させずに、特殊な有機溶媒に溶解させた原液或いはこの原液を乾燥させたチップを紡糸して得られるものである。これは、溶剤法によるセルロース繊維とも呼ばれ、高結晶性で高配向性であり、湿潤時における初期ヤング率、強度の高いものである。例えば、レンチング社(Lenzing AG;オーストリア)から「レンチング・リヨセル(Lenzing・Lyocell)」なる商標で販売されている。また、繊維シートを構成する繊維のすべてが溶剤紡糸セルロース繊維からなるものであってもよいが、本発明の目的が損なわれない範囲で他の繊維が混合されていてもよい。」
オ 同段落【0012】
「本発明における繊維シートを構成する繊維の単糸繊度は、0.9?3.3デシテックスの範囲が好ましく、より好ましくは、1.3?2.2デシテックスである。0.9デシテックス未満であると、繊維ウェブを作成するカード工程において、カード通過性に劣る傾向となり、一方、3.3デシテックスを超えると、繊維同士の交絡が強固なものとなりにくく、交絡点における交絡度合いが低下する傾向となる。」
カ 同段落【0013】
「繊維の繊維長は、25?80mmの範囲である短繊維であることが好ましく、より好ましくは、30?60mmである。25mm未満あるいは80mmを超えると、繊維ウェブを作成するカード工程において、カード通過性に劣る傾向となる。」
キ 同段落【0027】
「本発明のガーゼは、主として溶剤紡糸セルロース繊維同士が交絡することにより、一体化してなる繊維シートからなるものであり、溶剤紡糸セルロース繊維は、湿潤時(吸液時)に繊維が膨張し、繊維の交絡度合いがより強固となる。したがって、本発明のガーゼは、手術中に体液や血液を吸液した際の湿潤状態において、繊維シートの形態保持性に優れており、従来の織物の綿ガーゼのように吸液時にその形態を維持することが難しく、取扱いにくいということはない。」
ク 実施例1
(ア)同段落【0033】
「・・・
溶剤紡糸セルロース繊維(単糸繊度1.7デシテックス 繊維長38mm、レンチング社製 登録商標「レンチング・リヨセル」)をランダムカードにて開繊し、約15g/m^(2)の繊維ウェブを得た。この繊維ウェブの上にX線造影糸(アコーディス スペシャリティ ファイバーズ社製「マイクロペイク(Micropake)」 2750デニール/50フィラメント)を100mm間隔で直線状に配列するように流れ方向(縦方向)に配置させ、その上に上記で得たのと同様の約15g/m^(2)の繊維ウェブを堆積して積層物を得た。」
(イ)同段落【0034】
「得られた積層物を100メッシュのメッシュ状支持体上に載置し、ノズル孔径0.1mmの噴射孔が孔間隔0.6mmで横方向に一列に配置された噴射装置を用い、噴射圧力6.9MPaで2回処理し、次に反転させて反対面より噴射圧力9.8MPaで2回処理し、さらに反転して25メッシュのメッシュ状支持体に載置して、噴射圧力9.8MPaで2回処理し、本発明の繊維シートからなるガーゼを得た。」
(ウ)同段落【0035】
「得られたガーゼは、表面平滑であり開孔を有するものであった。また、ガーゼの目付は33g/m^(2)、吸水性は98mm/10分であった。湿潤時の形態保持性を評価したところ、10洗後であっても、評価する前(1洗を行う前)と比較して、構成繊維の脱落や繊維の移動等がほとんどなく、目視による形態変化はほとんどなかった。したがって、湿潤状態での形態保持性に極めて優れるものであった。」
(3)甲3?11の記載事項
ア 甲3には、次の記載がある。
(ア)技術分野、段落【0001】
「本発明は創傷用包帯、さらに詳しくは、限定的ではないが、術後創傷の包帯として使用され、創傷治癒の視覚診査を可能ならしめる創傷用包帯に関する。」
(イ)段落【0003】
「多少の滲出液を出す創傷の場合、術後創傷用包帯は、薄ポリマーフィルムおよび低付着性の吸収パッドから成るタイプのものであってよい。かかる包帯は、スミス・アンド・ネフュウにより商品名OpSite Ppst-Op(登録商標)で市販されている。かかる包帯の欠点は、該吸収パッドが概して非付着性とはいえ、透明でないことであり、このことは、包帯を通して創傷を見ることができないことを意味する。創傷が見えることは重要で、こ
れによって看護および外科スタッフは、治癒経過をチェックしたり、創傷の感染あるいは包帯の交換の必要を評定することができる。」
(ウ)段落【0006】
「そこで、我々は、吸収性と、包帯を通しての創傷を観察する可能性とを兼ねることにより、上述の問題を多少とも解決する、術後部位の創傷用包帯を創案するもので(該包帯は全体としての体裁に適合)、そして、本発明の第1の具体的態様により、(1)片面に接着剤を塗布した薄フィルム層および(2)該薄フィルム層の接着剤面に付着した吸収層から成る術後部位の創傷用包帯であって、上記吸収層は滲出液を吸収することができることにより、該包帯を通して創傷の観察を可能ならしめることを特徴とする創傷用包帯が提供される。」
イ 甲4には、次の記載がある。
(ア)段落【0001】
「【発明の属する技術分野】
本発明は火傷、創傷等により損傷した皮膚の治療を行うことを目的とする創傷被覆材において、湿潤保持性、寸法安定性等に優れたポリビニルアルコール創傷被覆材に関する。」
(イ)段落【0004】
「しかし、このようなウェット・ドレッシングタイプの欠点として、被覆シートが体内からの浸出液を内部に蓄え湿潤状態となるため、雑菌感染が極めて起こりやすくなることなどが挙げられる。このため、被覆シートに抗生物質等を含有させて抗菌性を付与する等の対策も行われているが、抗生物質が早期に溶出し創傷面が治癒するまでの間、抗菌性を長期間にわたって維持することは難しく、仮に抗生物質が被覆シート内に存在していても耐性菌が生殖するという問題点があった。また一方、治療時に於いて創傷部の治癒状態がシートの上から直接観察できる透明性を有する創傷被覆材が強く要請されていた。」
ウ 甲5には、次の記載がある。
(ア)段落【0001】
「【発明の属する技術分野】
本発明は、美白効果に優れ、かつ整肌効果と肌の熱りを冷ます効果にも優れたシート状美白用パック化粧料に関する。
さらに詳しくは、美白効果に優れた火棘抽出物を配合し、かつ経皮吸収性に優れるシート状の形状に加工することで、より美白効果等に優れたシート状美白用パック化粧料に関する。」
(イ)段落【0011】
「本発明で言うシート状美白用パック化粧料としては、1○(決定注:1は○の中にあるが、システム制限のため分けて表記をした。以下同様。)不織布、織布、紙、繊維などのシート状支持体にローション状、ジェル状、エマルジョン状、クリーム状の火棘抽出物を含む化粧料を含浸させた含浸タイプ、2○不織布、織布、紙、フイルムなどのシート支持体(透明な材質のものが好ましい)に、火棘抽出物を含み、ゲル体、合成高分子や天然高分子の樹脂などから選ばれる通常の粘着剤(透明性を有するものが好ましい)とからなる膏体を塗工してシート状にしたタイプ、または該膏体中の厚み方向に不織布、織布(開口率が十分に大きいものが好ましい)などを内在させシート状にしたタイプ、3○火棘抽出物を含む単層または複層のゲル単体をシート状にしたゲルシートタイプが挙げられる。また、シート状美白用パック化粧料の一方の表面が粘着性を有しており、一方の表面が支持体を積層するか、または後述の処理をすることによって、非粘着性であるか、または両表面の粘着度合いが異なるようにすることによって粘着度が高い面を肌に貼着でき、他の面は粘着性が少ないので使用性に優れ好ましい。上記の内、3○のゲルシートタイプが感触、経皮吸収促進性、外観、保冷効果に優れることから好ましい。そして、さらに好ましくは、3○のゲルシートタイプであって、シートの外観が透明であるものが顔面などの貼着位置をシート状パック料を通して鏡で確認し正確に貼着することができ、また肌の改善効果をシート状パック料を通して確認でき、美的に優れることから好ましい。また、ゲルシートタイプの内部に、開口率が十分に大きい織布または不織布を厚み方向に内在させることによって引き裂き強度が高まり、取り扱い性が良くなるので好ましい。なお、本発明で透明とは、シート状美白用パック化粧料を通して10ポイントの活字を判読できるものをいう。」
エ 甲6には、次の記載がある。(注:当審訳を付した。)
(ア)36頁左上欄Abstractの項
「Lyocell fibres are commercially supplied by Lenzing Fibers under the names Tencel^((R)) and Lenzing Lyocell^((R)). These constitute a family of fibre grades that are successfully used in a wide range of nonwovens product that require absorbency, purity, softness, strength and biodegradability. Perhaps best known for their use in carded and spunlaced nonwoven fabrics, additional lyocell fibre grade have been specifically developed for use in dry laid and wet laid applications where short fibre lengths typically bellow 20mm, are required.
This paper reviews the fibre characteristics of these short staple grades and the properties of the resulting fabric with specific emphasis on how these fibres can be used to engineer the key fabric attributes for high performance nonwoven products.」
「リヨセル繊維は、Lenzing Fibersによって、テンセル(Tencel、登録商標)及びLenzingリヨセル(Lyocell,登録商標)の商品名で商業的に供給されている。これらは、吸収性、純度、柔らかさ、強度及び生分解性を必要とする幅広い範囲の不織製品に成功裏に用いられている。おそらくその用途としては、カード処理及びスパンレース処理不織布が最も知られているが、典型的には20nm未満の短い繊維長が必要とされる乾式不織及び湿式不織用途のためにさらなるリヨセル繊維グレードが特に開発されてきた。この論文では、これらの短繊維グレードの繊維特性及び得られる布の性質を、高性能不織布製品をエンジニアが製造するために鍵となる特性をどのように発現させるかに力点を置いて解説する。」
(イ)36頁右欄下11行?37頁左欄2行
「Key areas of success for Tencel^((R)) are in wipes, medical & hygiene and filtration applications. Within these sectors, the strong growth of the spunlaced wipes market has been well documented over recent years but the development of short staple length fibre grades(typically below 20mm) specifically tailored for airlaid and wetlaid applications has also been an important area for business growth. Fibre grades are produced for a range of converting technologies including papermaking, wetlaying and airlaying as well as for use as reinforcing fibres in polymeric or inorganic matrices.」
「テンセル(登録商標)の重要な成功領域は、ワイプ、医療・衛生及びフィルターの用途である。これらの各領域の中で、近年におけるスパンレースワイプ市場の力強い成長は幅広く報告されているが、特にエアーレイド及びウェットレイド用途に適合された短繊維長の繊維グレート(典型的には20mm未満)の発展もビジネス成長のための重要な領域である。種々の繊維グレードが、製紙、ウェットレイド、エアーレイドなどの種々の製造技術のため並びに高分子マトリックス若しくは無機マトリックスにおける強化繊維としての用途のために製造されている。」
(ウ)37頁右欄17?23行
「Tencel^((R)) fibre is characterized by its smooth, round cross-section, excellent filament tenacity and high modulus, which are retained to a very high degree in the wet state. Water imbibition approaches that of viscose fibre and far exceeds that of polyester (PET) and polypropylene fibres.」
「テンセル繊維は、特徴として、平滑で丸い断面、優れたフィラメント引き裂き強度及び高いモジュラスを持ち、これらは湿潤状態でも非常に高い程度で維持される。水吸収はビスコース繊維に迫るものであり、ポリエステル(PET)繊維及びポリプロピレン繊維の水吸収よりはるかに大きい。」
(エ)38頁左欄第1段落
「Tencel in short Cut Fiber Applications
All of the applications for short cut grades of Tencel^((R)) are characterized by their requirement for fibre staple length below 20mm, for filaments that are easily opened and separated and that the fibre is dispersed easily in either air, aqueous or organic media. To fully optimise the fibre grades for each application, fibre variables such as cut length, fibre end cut quality, titre, finish type, finish level, lustre and crimp and tailored to match the processing and performance characteristics of the fibre to the product requirements.」
「短繊維テンセルの用途
テンセル(登録商標)の短繊維長グレードの全ての用途において、フィラメントが容易に解繊、分離でき、繊維が空気、水性媒体または有機媒体中において容易に分散できるようにする点から、20mm未満の短繊維長が必要とされることが特徴となる。各用途に対して繊維グレードを最適化するために、切断長、繊維端切断品質、繊度、仕上げタイプ、仕上げレベル、光沢及び捲縮などの繊維変数を、繊維の処理及び性能特性を製品要求に合致させるように調整する。」
(オ)39頁左欄第2段落
「In an interesting contrast to fabrics used in medical applications, in which fabric opacity and cover are required, bright luster grades of Tencel^((R)) fibre have been used in wetlaid fabrics to give excellent fabric transparency, where the quality of the product held within the nonwoven is a key marketing objective. In this instance, the smooth fibre surface and consistent refractive index promote reduced light scattering and hence maximises transmission of light through the fabric.」
「布の不透明性及び隠蔽が求められる医療用途に用いられる布とは興味深い対照をなすが、不織布内に保持された製品の品質が重要なマーケッティング対象となる場合に、不織布に優れた透明性を与えることは、光沢度の高いグレードのテンセルをウェットレイド不織布として用いることで可能となる。この例では、平滑な繊維表面及び均一な屈折度は、光散乱の減少を促進し、ひいては布の光透過率を最大化する。」
オ 甲7には次の記載がある。(注:当審訳を付した。)
(ア)明細書1頁1?4行
「BEVERAGE INFUSION PACKAGES AND MATERIALS THEREFOR
The present invention relates to porous, fibrous web materials for use in producing beverage infusion packages (e.g. tea bags, coffee bags and the like) as well as to beverage infusion packages produced using such materials.」
「飲料浸出パッケージ及びそのための材料
本発明は、飲料浸出パッケージ(例えばティーバック、コーヒーバックなど)を製造するために用いるための多孔性繊維状ウエブ材料並びに該材料を用いて製造された飲料浸出パッケージに関する。」
(イ)明細書3頁12?14行
「According to the present invention there is provided a non-woven porous, fibrous tissue for use in producing beverage infusion packages, wherein said tissue comprises lyocell fibres to improve transparency.」
「本発明によれば、飲料浸出パッケージの製造に用いるための不織多孔性繊維薄布が提供され、前記薄布は透明性を向上するためにリヨセル繊維を含む。」
(ウ)明細書3頁下3行?4頁2行
「We have found that the inclusion of lyocell fibres in tissue to be used for producing beverage infusion bags significantly improves transparency so that the contents of beverage infusion packages produced therefrom are readily visible. As a result the consumer can readily visually discern the quality of the beverage precursor material in bag.」
「我々は、飲料浸出バッグ製造に用いられる薄布にリヨセル繊維を含ませると、そこから製造される飲料浸出バッグの中身は容易に視認できるよう透明性が顕著に向上することを発見した。この結果、消費者は容易にバッグ内の飲料前駆体の品質を見定めることができる。」
(エ)明細書4頁9?11行
「It is preferred that lyocell fibres for use in the invention are circular cross-section and alternatively or additionally do not contain titanium dioxide which would cause light scattering resulting in reduced transparency. 」
「本発明で用いるためのリヨセル繊維は円形の断面を有し、あるいは又は加えて、光を散乱し透明性を減少させる二酸化チタンを含まないことが好ましい。」
カ 甲8には次の記載がある。
(ア)段落【0001】
「本発明は、皮膚に当接して使用するのに好適であり、ドライ状またはウエット状で用いることができるセルロース系不織布に関する。」
(イ)段落【0018】
「前記セルロース系繊維は、コットン,麻等の天然繊維、ビスコースレーヨン,キュプラ,及び溶剤紡糸セルロースなどの再生繊維、アセテート等の半合成繊維のうち、少なくとも1種類から選択して選ばれる。好ましくは、ビスコースレーヨンや溶剤紡糸セルロースなどの再生繊維であり、最も好ましいのは溶剤紡糸セルロース繊維である。・・・」
(ウ)段落【0048】
「(実施例1)繊度1.7dtex、繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維(テンセル社製、商品名テンセル、品番HS-260)を90質量%、繊度2.2dtex、繊維長51mmのポリプロピレン/ポリエチレン分割繊維(大和紡績(株)製)を10%とを混綿し、パラレルカード機を用いて目付が60g/m^(2)のカードウェブを作製した。次いでこのカードウェブを縦糸の繊径0.132mm、横糸の繊径0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織り構造の支持体に載置し、孔径0.12mm,のオリフィスが0.6mm間隔で設けられているノズルから水圧2.0MPa,4.0MPaの高圧水流をそれぞれ1回噴射した後、反転させ、4.0MPaの高圧水流を1回噴射して水流交絡処理を行った。そして140℃で乾燥処理を行った。次いで温調室にて水分調整を行い、水分率が5.0質量%の水流交絡不織布を得た。前記水分を含んだ不織布を表面温度が90℃,線圧400N/cmのスチール/コットンのフラット熱ロール加工機を用いて、平滑加
工を施し、本発明のセルロース系不織布を得た。・・・」
キ 甲9には次の記載がある。
(ア)段落【0001】
「本発明は、不織布およびその製造方法、並びに拭き取り材に関する。」
(イ)段落【0084】
「[実施例1?12]
溶剤紡糸型レーヨン繊維(繊度1.7dtex、繊維長40mm リヨセル レンチング社製)80質量%と、第1成分をポリエチレンテレフタレート(融点253℃)とし、第2成分を高密度ポリエチレン(融点132℃)とした放射状に8分割された断面形状を有する分割型複合繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm 商品名DFS(SH) ダイワボウポリテック(株)製)10質量%と、鞘成分をポリエチレン(融点132℃)、芯成分をポリプロピレン(融点160℃ 商品名 NBF(H) 大和紡績株式会社製)とする芯鞘型複合繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm)10質量%とを混綿し、得られた結果物に対して、ローラー型パラレルカードを用いてカードして、目付けが50g/m^(2)のカードウェブを作製した。」
(ウ)段落【0085】
「次いで、カードウェブを第1交絡用のネット上に載置し、速度4m/minで進行させながら、カードウェブの表面に対して、ノズルに孔径0.13mmのオリフィスが0.6mm間隔で設けられている水供給器を用いて、水圧3MPaの柱状水流を噴射した後、裏面に対して、同様の水供給器を用いて、水圧2.5MPaの柱状水流を噴射した。カードウェブの表面とオリフィスとの距離は15mmとした。以上のようにして第1交絡された繊維ウェブを得た。上記第1交絡用のネットには、経糸の線径が0.132mm、緯糸の線径が0.132mm、メッシュ数が90メッシュの平織りPETネットを用いた。」
(エ)段落【0086】
「次に、下記のネットA?Fを支持体として用いて、繊維ウェブの表面側から第2交絡を行い、規則的な模様を有し、MD方向と平行なストライプを複数形成した。次いで、雰囲気温度が140℃の乾燥機内で乾燥及び熱処理して表1に示した実施例1?12、16?22の不織布を得た。」
ク 甲10には次の記載がある。
段落【0001】
「本発明は、高速光通信のためのコンピュータ接続配線、交換機まわりの配線、工場自動機制御の配線などに利用できる新規なプラスチック光ファイバ(以下、POFと略称する)に関するものである。
より詳しくは、本発明は、特定のフルオロアルキルメタクリレート系共重合体を鞘材としたPOF裸線上層に直接被覆層として透明なエチレン-ビニルアルコール共重合体を被覆し、且つ鞘層及び直接被覆層の厚さを一定範囲とすることにより、POF素線の曲げ時の光量の伝送損失を最小限に抑制できるPOF素線を提供する。」
ケ 甲11には次の記載がある。
(ア)[技術分野]、段落[0001]
「本発明は、液状成分(液状化合物)を吸収可能で、かつ皮膚と接触させるための積層シート及びその製造方法、特に、美容成分や薬効成分などを含む液状成分を含浸させ、皮膚に貼付して使用する積層シート(液体含浸生体被膜シート)及びその製造方法に関する。」
(イ)段落[0002]
「本発明は、液状成分(液状化合物)を吸収可能で、かつ皮膚と接触させるための積層シート及びその製造方法、特に、美容成分や薬効成分などを含む液状成分を含浸させ、皮膚に貼付して使用する積層シート(液体含浸生体被膜シート)及びその製造方法に関する。・・・」
(ウ)段落[0018]
「本発明の積層シートは、布帛で構成され、かつ液状成分を吸収可能な保液層と、この保液層の少なくとも一方の面に形成され、前記液状成分(液体効能成分)を透過可能であり、かつ皮膚と接触させるための密着層とで構成されている。すなわち、本発明の積層シート(液体含浸生体被膜シート)は、液状成分を含浸するための保液層と、肌に直接触れる側に位置する密着層とで構成されている。」
(エ)保液層についての説明
a 段落[0020]
「このような特性を有する保液層は、通常、織布又は不織布などで構成されていればよいが、生産性などの点から、不織布(又は不織繊維集合体)が好ましい。さらに、保液層を構成する不織布は、濡れ性や保液性を確保するために、親水性樹脂で構成された繊維を含むのが好ましい。・・・」
b 段落[0021]
「さらに、不織布は、保液性と放出性とのバランスに優れる点から、親水性樹脂で構成された繊維(親水性繊維)と、疎水性樹脂で構成された繊維(疎水性繊維)との混合体(混綿)が特に好ましい。・・・」
c 段落[0022]
「さらに、親水性繊維と疎水性繊維との割合(質量比)は、繊維構造体内部まで液状成分を誘引する役割、取り扱う際に液だれしないように保持する役割、液状成分を肌側に放出する役割のバランスの点から、親水性繊維/疎水性繊維=30/70?50/50(質量比)程度であってもよい。さらに、液状成分を肌側に放出させる役割などの放出性を向上させる点から、親水性繊維の割合が50質量%未満であってもよく、例えば、親水性繊維/疎水性繊維=5/95?45/55、好ましくは10/90?40/60、さらに好ましくは10/90?30/70(質量比)程度であってもよい。このように、疎水性繊維の割合を親水性繊維よりも多くすることにより、水性の液状成分では、保液性と放出性とのバランスが向上する。」
d 段落[0024]
「親水性繊維としては、親水性を有する限り、特に限定されず、合成繊維、天然繊維、天然の植物繊維や動物性のタンパク質繊維などを一旦溶解してから化学的に処理して繊維化した再生繊維などが選択できる。・・・」
e 段落[0028]
「再生繊維としては、例えば、ビスコースレーヨンなどのレーヨン、アセテート、リヨセルなどのテンセル、キュプラ、ポリノジックなどのセルロース系繊維が挙げられる。これらの天然繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、レーヨン繊維やテンセル繊維などが汎用される。」
f 段落[0031]
「また、これらの親水性繊維のうち、レーヨンやテンセルなどのセルロース系繊維は、化粧料などの液状成分を構成する水や水溶液、極性溶媒、これらのエマルジョンなどが繊維内部にまで浸透し吸収性が良く、保液性能が高い点で特に好ましい。一方、エチレン-ビニルアルコール共重合体繊維(特に、鞘部がエチレン-ビニルアルコール共重合体で構成された芯鞘型複合繊維)は、保液性能についてはセルロース系繊維より低いものの、化粧料などの液状成分との馴染みが良く、かつ繊維自身が液状成分の液体を吸収せず、圧力などで容易に放出できる点で特に好ましい。従って、セルロース系繊維とエチレン-ビニルアルコール共重合体繊維とを、化粧料などの液状成分の粘度や量に応じて選択してもよく、さらに両者を混合することにより保液性と放出とを制御してもよい。更には必要に応じて他の繊維を配合してもよい。」
(オ)段落[0040]
「保液層の空隙率(積層シート中における空隙率)は、化粧料などの液状成分の含浸量を確保する点から、例えば、80%以上(例えば、80?99%)、好ましくは85%以上(例えば、85?98%)、さらに好ましくは90%以上(例えば、90?95%)であってもよい。」
(4)甲1からの進歩性について
ア 甲1発明の認定
上記(1)の摘記、特に同イ(ケ)dの最後の例及び同ア(ア)及び(カ)から、次の甲1発明が認定できる。
「水で飽和したときの平均湿潤透明パーセントが20.8%である、ポリエチレンテレフタレート繊維40%、レーヨン繊維60%の混合物を目付45GMSの不織布とした水不溶性基材と湿潤剤とを一緒に梱包されている肌トリートメント用マスク。」
イ 相違点
本件発明1と甲1発明とを対比すると、少なくとも次の点で、両者は相違する。
<相違点1-1>
本件発明1における保液シートにおいては、「下記に示す透明度が0.27以下であり、
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m^(2))
かつシート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が15%以下であ」るのに対し、甲1発明におけるフェイスマスクは、水で飽和したときの平均湿潤透明パーセントが20.8%である点(以下「相違点1-1」という。)。
<相違点1-2>
本件発明1における保液シートにおいては、「透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維を含むか、又は溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレンービニルアルコール系繊維の両方を含む短繊維であるとともに、前記溶剤紡糸セルロース繊維の割合が、保液層全体に対して50質量%以上である」のに対して、甲1発明におけるフェイスマスクにおいては、ポリエチレンテレフタレート繊維40%、レーヨン繊維60%の混合物を不織布とした水不溶性基材で有る点(以下「相違点1-2」という。)。
ウ 相違点1-1についての検討
(ア)本件発明における「白度」と甲1発明における「平均湿潤透明パーセント」とは、透明性に関する測定値として共通するものであるが、その測定方法が異なるため、それらの正確な相関関係については、不明であるというほかない。前記(1)イ(ク)に摘記したように甲1には、「平均湿潤透明パーセントを少なくとも40%以上」との記載もあることから、甲1発明の平均湿潤透明パーセントを更に上げようとする動機は記載されているものの、どの程度上昇させると、白度が15%以下になるかは、把握のしようもない。すなわち、甲1発明におけるフェイスマスクに関して、仮に上記第3、2(2)の方法で「白度」を測定したときに、どのような値になるか、また、甲1の示唆にしたがって、「平均湿潤透明パーセントを少なくとも40%以上」とした場合に、どの程度白度が低下することで、白度が15%以下になるかどうかは真偽不明という他ないから、申立人の主張を認めることはできない。
(イ)また、申立人提出の参考資料1?11を検討しても、「白度」を所定値以下とすることを示す資料はなく、申立人の主張を認めることはできない。
エ 相違点1-2についての検討
(ア)再生繊維について
a 再生繊維のうち、前記(3)ケ(エ)eに摘記したように、「ビスコースレーヨンなどのレーヨン、アセテート、リヨセルなどのテンセル、キュプラ、ポリノジックなどのセルロース系繊維」が本件優先日前に知られており、「レーヨン」とは、主にビスコース法により製造された繊維であり、ビスコースとも呼ばれるものである。また、前記(2)エに摘記したように溶剤紡糸セルロース繊維とは、「溶剤紡糸セルロース繊維は、セルロース原料を化学的に変化させずに、特殊な有機溶媒に溶解させた原液或いはこの原液を乾燥させたチップを紡糸して得られるものである。これは、溶剤法によるセルロース繊維とも呼ばれ、高結晶性で高配向性であり、湿潤時における初期ヤング率、強度の高いものである。例えば、レンチング社(Lenzing AG;オーストリア)から「レンチング・リヨセル(Lenzing・Lyocell)」なる商標で販売されている。」とされているものである。
(なお、摘記はしなかったが甲9の段落【0058】には、「レーヨン(溶剤紡糸型やビスコースレーヨン)等の再生繊維」との記載があるが、誤記であると判断した。)
b 溶剤紡糸セルロース繊維について
(a)本件明細書には、次のように記載されている。
「【0115】
[保液層の繊維]
(透明繊維)
テンセル bright:テンセル繊維、LENZING社製「TENCEL」、繊度1.7dtex(平均繊維径12μm)×平均繊維長38mm、酸化チタン含有量0.00質量%、目付50g/m2の不織布における保水率1183%
・・・
(不透明繊維)
テンセル dull:テンセル繊維、LENZING社製「LENZING Lyocell」、繊度1.7dtex(平均繊維径12μm)×平均繊維長38mm、酸化チタン含有量0.75質量%」
(b)本件優先日前に、溶剤紡糸セルロース繊維として、酸化チタン含有量が0.00質量%の「テンセル bright」(以下「ブライトタイプ」という。)と酸化チタン含有量が0.75質量%の「テンセル dull」(以下「ダルタイプ」という。)とが市販されていることが分かる。
(イ)相違点1-2について
a 甲2について
前記(2)キに摘記したように、甲2に記載された不織布は、手術用ガーゼに用いるものであるから、溶剤紡糸セルロース繊維を甲1発明のレーヨン繊維に代えて用いることの動機にはなるとはいえない。
b 甲6について
甲6には、前記(3)エ(オ)には、溶剤紡糸セルロース繊維の透明性について記載されているが、用途としては、内容物を確認できる容器としての使用についての示唆があるのみであって、フェイスマスクに適用することは記載も示唆もされていない。
c 甲7について
甲7は、前記(3)オ(ウ)(エ)には、湿潤状態での溶剤紡糸セルロール繊維(リヨセル)の透明性の高さについて記載されているが、飲料浸出バッグの用途をフェイスマスクに転用することは、当業者が容易になし得ることではない。
d 甲8について
甲8には、不織布を溶剤紡糸セルロース繊維を用いて製造し、皮膚に当接する用途に用いることが記載されているものの、上記(ア)bにおいて示したブライトタイプであるか、ダルタイプであるかは甲8全体の記載を参照しても、明らかでない。この点について更に検討すると、甲8においては、比較例としてコットン不織布を用いており、コットンの白色に近いダルタイプのものと推認できる。そうすると、透明化を指向する甲1発明に対して、甲8に記載された事項を適用することには、阻害事由があるということができ、また、仮に甲1発明に甲8に記載された事項を適用できるとしても、本件発明1の「透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であ」る点を満たすことにはならない。
e 甲9について
上記dと同様に、甲9に記載の「リヨセル」がブライトタイプであるか、ダルタイプであるかは、明示されていない。甲9において、模様を生じるためには、ダルタイプであることが必要であるから、甲9における「リヨセル」は、ダルタイプであると推認できる。そうすると、透明化を指向する甲1発明に対して、甲9に記載された事項を適用することには、阻害事由があるということができ、また、仮に甲1発明に甲9に記載された事項を適用できるとしても、本件発明1の「透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であ」る点を満たすことにはならない。
f 甲11について
甲11には、フェイスマスクの保液層に溶剤紡糸セルロース繊維であるテンセルを含む不織布を用いることが記載されているものの、前記(3)ケ(エ)cに摘記したように、溶剤紡糸セルロース繊維(親水性繊維)は、疎水性繊維よりも重量比で少なくすることが好ましいとされており、甲11に記載された事項を甲1発明に適用しても、本件発明1の「前記溶剤紡糸セルロース繊維の割合が、保液層全体に対して50質量%以上」という構成を充足しないことになる。また、甲11におけるテンセルが、ブライトタイプであるかダルタイプであるかは、甲11の記載からは明らかでない。この点について更に検討すると、甲11においては、比較例3としてコットン不織布を用いており、甲11の「テンセル」は、コットンの白色に近いダルタイプのものと推認できる。そうすると、透明化を指向する甲1発明に対して、甲8に記載された事項を適用することには、阻害事由があるということができ、また、仮に甲1発明に甲11に記載された事項が適用できるとしても、本件発明1の「透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であ」る点を満たすことにはならない。
g 参考資料5について
参考資料5には、その段落【0023】に「セルロース系繊維としては、・・・レーヨン、リヨセル等の再生繊維」との記載があるだけであり、リヨセルがブライトタイプのものであるか否かは明らかでない。
h 参考資料6について
参考資料には、その段落【0025】に、「パルプ・コットン・レーヨン・リヨセルなどのセルロース系の天然・化学繊維」との記載があるだけであり、リヨセルがブライトタイプのものであるか否かは明らかでない。
オ 小括
以上のとおり、相違点1-1が容易想到であると認めるに足りる主張・立証がなく、相違点1-2については、本件優先日前ブライトタイプの溶剤紡糸セルロース繊維がフェイスマスクに用いられていたと認められないから、本件発明1は、甲1発明及び上記各文献の記載事項に基いて当業者が容易に発明することができた発明ということはできない。
(5)甲2発明からの進歩性について
ア 甲2発明の認定
上記(3)2の摘記から次の甲2発明が認定できる。
「手術の際に使用できるガーゼであって、溶剤紡糸セルロース繊維により構成された繊維シートからなるガーゼであって、該繊維シートは、X線造影糸を適宜の間隔で配列させ、単糸繊度1.7デシテックス、繊維長38mmの溶剤紡糸セルロース繊維相互が水流交絡することにより全体として一体化しておりいるガーゼ。」の発明。
イ 対比・判断
本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも次の点で相違する。
<相違点2>
本件発明1が、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたフェイスマスクであるのに対して、甲2発明が手術の際に使用できるガーゼである点。
ウ 検討
相違点2について検討する。甲2発明は、医療用のガーゼであるから、使用時に血液や体液を吸収させるために、乾燥させた状態で包装されているものであるから、甲2発明に「化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させ」るようにすることには、阻害事由がある。また、使用される局面も、甲2発明は、医療機関で用いられるものであり、本件発明1は家庭内で用いられるものであって、共通点はない。甲1、3?11に記載された事項を検討しても、相違点2を、当業者が容易に想到できるということはできない。
(6)取消理由1についての小括
本件発明1は、甲1発明及び甲2?11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるということはできない。また、本件発明1は、甲2発明及び甲1、3?11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるということもできない。したがって、本件発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできない。また、本件発明1を包含し、さらに発明特定事項を追加した本件発明2、3、5?15も同様に特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできないから、本件発明1?3、5?15に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するということはできず、取り消すことはできない。
2 取消理由2(サポート要件違背)について
(1)上記第4、2(1)の取消理由2-1(目付の上限)について
上記第2、1(1)エにおける訂正事項1-3において、本件発明1に係る保液シートは、上限が200g/m^(2)に特定された。そうすると、目付が上限の場合、透明度0.27以下を満たすためには、白度は、57%以下と上限は定まることになる。本件発明1における白度の上限値は、その上限よりも低い15%以下と特定されており、取消理由2-1は、本件訂正により解消したことになる。
(2)上記第4、2(2)の取消理由2-2(課題解決)について
上記第2、1(1)イにおける訂正事項1-1において、本件発明1は、「化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたフェイスマスク」を対象とするものに訂正された。そのため、保液シートが液体成分によって含浸されないということは起こりえなくなったため、常に「使用時に肌に密着しているか否かを視覚で判断することを容易とする湿潤状態での透明性を得る」という発明の課題が解決されることとなり、取消理由2-2は解消したことになる。
(3)小括
上記のとおり、本件発明に係る特許請求の記載は、特許法第36条第6項第1号の規定を満たすものといえるから、本件発明1?3、5?15に係る特許は、特許法第113条第4号に該当せず、取り消すことはできない。
3 取消理由3について
(1)記載事項
ア 表紙の記載事項
上部に、「Osaki」と大きなロゴが記載され、中央に「製品カタログ」と記載され、下部に「オオサキメディカル株式会社」と記載されている。
イ 裏表紙の記載事項
中央に「http://www.osakimedical.co.jp」と記載され、下部左に「Osaki」と記載され、その下に「オオサキメディカル株式会社」と記載され、その下に住所、郵便番号、電話番号が記載されている。下部右に、「2008.04」と記載されている。
ウ 19頁の記載事項
ア クロスガーゼRの部分
(ア)上側半分
上部から「クロスガーゼR」と記載され、その下部に、次のように記載されている。
「●ソフトで吸収性・通気性に優れたリヨセル^((R))100%の不織布ガーゼです。
●コットンと同等の安全性で、処置用ガーゼとしても安心して使用できます。
●脱落繊維が少なく、湿潤強度に優れているため清拭用ガーゼや機器のワイパーなどに最適です。
●高圧蒸気滅菌、E.O.G滅菌に対しても品質の劣化はほとんどありません。」
(イ)下側半分
a 表の上に次の記載がある。
「一般医療機器 医療用不織布:34605000」
b 上記aの下に表があり、各行のタイトルが「品番」「種類」「規格
」「標準価格(税抜価格)(円)」「梱入数」であることが表示されており、次の行に「品番23800」「4号」「25cm×25cm 4ツ折 200枚入り」「1,260(1,200)」「20袋」と記載されている。
c 表の下には、次の記載がある。
「■販売名:クロスガーゼR ■届出番号:23B2X10001000011」
(2)甲13発明の認定
「医療用ガーゼであって、リヨセル繊維が100%の不織布ガーゼ。」の発明が記載されている。
(3)検討
ア 本件発明1は、フェイスマスクであって、甲13発明の医療用ガーゼとは相違があるから、仮に甲13発明が、本件優先日前に公然実施されていたとしても、本件発明1が公然実施されたことにはならない。本件発明1は、特許法第29条第1項第2号に該当する発明とはいえない。
イ 特許法第29条第2項について
(ア)本件発明1が、甲13発明及び本件優先日前に知られた事項に基いて当業者が容易に発明できたものかを検討する。
(イ)甲13発明は、医療用ガーゼであるから、上記第4、1(5)における甲2発明と軌を一にするものであるから、甲2発明における検討と同様に、甲13発明に接した当業者が「化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたフェイスマスク」である本件発明1に想到することには、阻害事由があり、当業者が容易に想到できるものということはできない。
(4)取消理由3の小括
本件発明1は、公然実施された甲13発明であるということはできないから、特許法第29条第1項第2号の発明に該当しない。また、本件発明1は、甲13発明及び甲1?11に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるということもできないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできない。そして、本件発明1を包含し、さらに発明特定事項を追加した本件発明2、3、5?15も同様に特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ということはできないから、本件発明1?3、5?15に係る特許は、特許法第113条第2号に該当するということはできず、取り消すことはできない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
申立人は、特許異議申立書において、次の2つの理由も主張した。
1 特許法第36条第6項第2号
(1)申立人は、本件発明1においては、「透明度」が所定値以下であると特定しているが、透明性を高くするという本件発明の課題と反しており、本件発明1の記載が明確でなく、特許法第36条第6項第2号の規定に適合しておらず、特許法第113条第4号に該当し、特許発明1及び引用する本件発明2、3、5?15に係る特許は取り消すべき旨主張していると解される。
(2)しかしながら、本件発明における「透明度」は、上記第2、2に記載したとおりのものであって、透明であるほど値が低いものと定義されているのであるから、特許請求の範囲の記載と明細書の記載は整合しているといえる。この点の申立人の主張は失当である。
2 特許法第36条第6項第2号
(1)本件発明9に対して
申立人は、本件発明9について「不織繊維集合体が、セミランダムウェブ、パラレルウェブ又はクロスウェブを水流絡合させたスパンレース不織布」という記載が、物の発明において、製造方法による特定しており、いわゆるPBPクレームであるので、特許法第36条第6項第2号の規定を充足しないと主張する。
(2)本件発明12に対して
申立人は、本件発明12について「メルトブローン不織布で形成された密着層が積層されている」という記載が、物の発明において、製造方法による特定しており、いわゆるPBPクレームであるので、特許法第36条第6項第2号の規定を充足しないと主張する。
(3)判断
ア しかしながら、本件発明9における「水流絡合させた」及び本件発明12における「積層された」という発明特定事項により、それらがプロダクト・バイ・プロセスクレームに当たると解される余地はあるものの、それらの発明特定事項によって、請求された物がどのような構造や特性を表しているのかは明確である。
イ したがって、本件発明9及び12を、あえて特許法第36条第6項第2号との関係で問題とすべきプロダクト・バイ・プロセスクレームに当たるとみる必要はないから、本件発明9及び12は、明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定に適合するものである。

第6 申立人意見書で主張された取消理由について
1 空隙率についての特許法第36条第6項第1号
(1)申立人意見書第13頁において、本件発明1においては「80%以上の空隙率」と規定しているのに対して、本件特許明細書に記載された実施例においては、空隙率が92?95%であるから、空隙率が80%の保液シートについては、透明性が確保されるとはいえないと主張する。
(2)しかしながら、溶剤紡糸セルロース繊維(一例が「リヨセル」)が高い透明度を有することは、甲5、甲6、参考資料7、参考資料8に記載のように本件優先日前に周知の事項であるから、空隙率の多少の変動により、透明度に影響はないと理解出来る。申立人の主張は、採用できない。
2 目付についての特許法第36条第6項第1号
(1)申立人意見書14頁ににおいて、本件発明1においては、本件訂正により目付の上限が規定されたが、下限が規定されていないから、本件発明は、保液できず課題を解決できない発明を含んでいる旨主張している。
(2)しかしながら、本件発明は、「フェイスマスク」に関するものであって、フェイスマスクとして利用可能な目付量は、自ずから下限が存在すると言うべきであるから、発明特定事項に下限が必要であるということはできない。本件発明にサポート要件違背があるという申立人の主張は理由がない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由並びに申立人意見書で主張された取消理由によっては、本件発明1?3及び5?15に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件発明1?3及び5?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4、16?18に対する特許異議の申立てについては、訂正によりそれらの請求項が削除されたため、特許法第120条の8第1項の規定により準用する同法第135条の規定により、特許異議の申立てを却下することとする。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状成分を吸収可能な保液層を含み、前記保液層が透明繊維を含む不織繊維集合体で形成され、かつ80%以上の空隙率を有する保液シートであって、目付が200g/m^(2)以下であり、下記に示す透明度が0.27以下であり、
透明度=シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)/目付量(g/m^(2))
かつシート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が15%以下であり、
前記透明繊維が、着色剤の含有量0.1質量%以下であり、かつ溶剤紡糸セルロース繊維を含むか、又は溶剤紡糸セルロース繊維及びエチレン-ビニルアルコール系繊維の両方を含む短繊維であるとともに、前記溶剤紡糸セルロース繊維の割合が、保液層全体に対して50質量%以上である保液シートで形成され、化粧料を含む液状成分を保液層に含浸させたフェイスマスク。
【請求項2】
溶剤紡糸セルロース繊維がカルボキシル基を実質的に含まないセルロース系繊維である請求項1記載のフェイスマスク。
【請求項3】
透明繊維がさらにレーヨン繊維を含む請求項1又は2記載のフェイスマスク。
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
透明繊維が、着色剤の含有量0.01質量%以下の短繊維である請求項1?3のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項6】
着色剤が酸化チタンである請求項1?3及び5のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項7】
不織繊維集合体を形成する繊維が平均繊維径1?15μmの短繊維である請求項1?3及び5?6のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項8】
短繊維の平均繊維長が20?70mmであるとともに、不織繊維集合体の見掛密度が0.08?0.15g/cm^(3)であり、かつ空隙率が90?95%である請求項1?3及び5?7のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項9】
不織繊維集合体が、セミランダムウェブ、パラレルウェブ又はクロスウェブを水流絡合させたスパンレース不織布である請求項1?3及び5?8のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項10】
不織繊維集合体の目付が30?100g/m^(2)である請求項1?3及び5?9のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項11】
保液層の一方の面に、透明樹脂で形成された非多孔性の透明層が積層されている請求項1?3及び5?10のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項12】
保液層の少なくとも一方の面に、メルトブローン不織布で形成された密着層が積層されている請求項1?3及び5?11のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項13】
メルトブローン不織布が、着色剤の含有量0.1質量%以下の透明繊維で形成されている請求項12記載のフェイスマスク。
【請求項14】
JIS L1913に準拠した湿潤時の30%伸長時応力が、少なくとも一方向において1.5N/5cm以上である請求項1?3及び5?13のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項15】
シート質量に対して700質量%の水を含浸させたときの白度(%)が1?10%である請求項1?3及び5?14のいずれかに記載のフェイスマスク。
【請求項16】
(削除)
【請求項17】
(削除)
【請求項18】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2018-10-23 
出願番号 特願2014-521346(P2014-521346)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (D06M)
P 1 651・ 112- YAA (D06M)
P 1 651・ 121- YAA (D06M)
P 1 651・ 537- YAA (D06M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加賀 直人  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 門前 浩一
竹下 晋司
登録日 2017-06-16 
登録番号 特許第6158178号(P6158178)
権利者 クラレクラフレックス株式会社
発明の名称 保液シート及びフェイスマスク  
代理人 加藤 和詳  
代理人 鍬田 充生  
代理人 阪中 浩  
代理人 鍬田 充生  
代理人 中島 淳  
代理人 阪中 浩  
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