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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1346785
異議申立番号 異議2018-700680  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-08-14 
確定日 2018-11-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第6284303号発明「O/W型エマルション組成物及び皮膚外用剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6284303号の請求項1?11に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6284303号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成25年4月25日(優先権主張 平成24年4月26日)を出願日とする特許出願であって、平成30年2月9日にその特許権の設定登録がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許について、同年8月14日に特許異議申立人 特許業務法人藤央特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。


第2 本件特許発明
特許第6284303号の請求項1?11の特許に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明11」という。)。

「【請求項1】
油溶性有効物質とアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩とを含有するO/W型エマルション組成物であって、
該組成物のpHは4.0から8.0であり、
該組成物におけるエマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μmであり、かつ
アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩以外の界面活性剤の含有量が油相の量の0.1重量%以下である、
上記組成物。

【請求項2】
上記油溶性有効物質として、油溶性ビタミン、その誘導体又はそれらの塩;及び水溶性ビタミンの油溶性誘導体又はその塩からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の組成物。

【請求項3】
上記油溶性有効物質として、ビタミンA、その誘導体又はそれらの塩;ビタミンE、その誘導体又はそれらの塩;ビタミンD、その誘導体又はそれらの塩;ビタミンK、その誘導体又はそれらの塩;油溶性アスコルビン酸誘導体又はその塩;及び油溶性ピリドキシン誘導体又はその塩からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1又は2に記載の組成物。

【請求項4】
上記油溶性有効物質として、ビタミンA、その誘導体又はそれらの塩;ビタミンE、その誘導体又はそれらの塩;ビタミンD、その誘導体又はそれらの塩;油溶性アスコルビン酸誘導体又はその塩;及び油溶性ピリドキシン誘導体又はその塩からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1から3の何れか1項に記載の組成物。

【請求項5】
上記油溶性有効物質として、ビタミンA、その誘導体又はそれらの塩;ビタミンE、その誘導体又はその塩;及び油溶性アスコルビン酸誘導体又はその塩からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1から4の何れか1項に記載の組成物。

【請求項6】
上記油溶性有効物質として、ビタミンA、その誘導体又はそれらの塩;ビタミンE、その誘導体又はそれら塩;及び油溶性アスコルビン酸誘導体又はその塩からなる群から選択される2種以上を含有する、請求項1から5の何れか1項に記載の組成物。

【請求項7】
上記油溶性有効物質として、ビタミンA、その誘導体又はそれらの塩;並びに油溶性アスコルビン酸誘導体又はその塩を含有する、請求項1から6の何れか1項に記載の組成物。

【請求項8】
上記pHが4.5から7.5である、請求項1から7の何れか1項に記載の組成物。

【請求項9】
上記pHが4.5から7.0である、請求項1から8の何れか1項に記載の組成物。

【請求項10】
請求項1から9の何れか1項に記載の組成物を含有する、皮膚外用剤。

【請求項11】
化粧組成物、スキンケア組成物、または医薬組成物である、請求項10に記載の皮膚外用剤。」


第3 申立理由の概要及び提出した証拠
1.申立理由の概要
申立人は、甲第1?5号証を提出し、本件特許は、以下の理由1?4により、取り消されるべきものである旨主張している。

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
(1-1)申立理由1-1
本件特許発明1?5及び8?11は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第113条第2号に該当する。

(1-2)申立理由1-2
本件特許発明1?6及び8?11は、甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、同法第113条第2号に該当する。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項)
本件特許発明1?11は、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、同法第113条第2号に該当する。

(3)申立理由3 (特許法第36条第6項第1号)
本件特許発明1?4及び8?11は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。

(4)申立理由4 (特許法第36条第6項第2号)
本件特許発明1?11は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、同法第113条第4号に該当する。

2.証拠方法
(1)甲第1号証:国際公開1997/02090号

(2)甲第2号証:特開平10-95706号公報

(3)甲第3号証:特開平9-255529号公報

(4)甲第4号証:特開2009-102281号公報

(5)甲第5号証:田村 博明、他5名 編集、「新 化粧品ハンドブック」、平成18年10月30日、p.258?261


第4 甲号証の記載事項
甲第1?5号証には、それぞれ以下の記載がある。

1.甲第1号証
(甲1-1)「1.(i)アルキル変性カルボキシビ二ルポリマーと、(ii)炭素数12?28の室温(例えば15?20℃)で固形状の高級アルコールと、(iii)シリコーンオイルとを含んで成り、成分(i)/成分(ii)の重量比が0.5以下である乳化組成物。
2.界面活性剤を実質的に含まない請求の範囲第1項に記載の乳化組成物。」(請求の範囲)

(甲1-2)「本発明の乳化組成物を調製する方法としては、ホモミキサー、ホモディスパーなど通常の乳化に用いる乳化機を用いて調製できるが、超音波乳化機、高圧乳化機など高い剪断力を持つ乳化機により調製すると、使用性、安定性についてさらに向上する。」(第9頁第10?13行)

(甲1-3)「実施例1?3、比較例1?4
表1に示す組成の乳化組成物は、まず油相成分を加熱し液状にし、続いて水相成分に添加しながら乳化機で乳化して製造し、上記基準に基づいて評価を行った。」(第10頁下から第4行?末行)

(甲1-4)「実施例4
実施例1と同様にして、以下に示す組成の乳化組成物を作製し、同様の評価を行ったところ、本実施例の乳化組成物は、実施例1と同様、こくがあり、ベたつきの少ない使用感となり、かつ乳化安定性の良い優れたものであることが分かった。
A.油相
ジメチルポリシロキサン 10.0 %
ミリスチン酸イソプロピル 8.0
スクワラン 2.0
α-トコフェロール 0.3
セチルアルコール 3.0
B.水相
トリエタノールアミン 0.25
プロピレングリコール 10.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
メタリン酸ナトリウム 0.1
CARBOPOL 1342 0.3
ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1
イオン交換水 残余 」(第12頁第4?22行)

(甲1-5) 「実施例9
高圧乳化機により以下に示す組成の乳化組成物を作成し、使用性の評価を行ったところ、本実施例の乳化組成物は、こくがあり、ベたつき・ぬめりの少ない使用感となり、 かつ、乳化安定性の良い優れたものであることが分かった。」(第15頁下から第4行?第16頁第1行)

2.甲第2号証
(甲2-1)「【請求項1】L-アスコルビン酸および/またはその誘導体と、分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性多価アルコールと、水溶性多価アルコールと同重量%以下の水と、油性成分とからなることを特徴とする乳化剤組成物。
【請求項2】実質的に界面活性剤を含まない請求項1記載の乳化剤組成物。
【請求項3】請求項1または2記載の乳化剤組成物を更に水と混合して得られる水中油型乳化組成物。」(特許請求の範囲)

(甲2-2)「【0031】実施例1、比較例1
表1の配合組成により、下記の方法で化粧料用乳化組成物を製造した。
【0032】[製法](1)の一部(1重量%)に(2),(3),(4)を溶解し、(6)を徐添しながらホモミキサー処理を行い、乳化剤組成物とする。これを(1)の残部に(7),(8)を溶解したパーツに添加して乳化組成物を得た。なお、比較例については上記の(4)を(5)に代えた以外は上記と同様の製法により得た。」

(甲2-3)「【0036】
実施例2 乳液
A.油相
スクワラン 10.0 重量%
パルミチン酸イソプロピル 5.0
ワセリン 3.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
ヘキシルデカノール 3.0
α-トコフェロール0.3
B.水相
トリエタノールアミン 0.25
ポリエチレングリコール 8.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
メタリン酸ナトリウム 0.1
CARBOPOL 1342 0.3
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1
ジパルミチン酸L-アスコルビル 0.2
水酸化カリウム 0.2
イオン交換水 残余
[製法]Aの油相をBの水相に添加し、乳化機で乳化することにより乳液が得られた。」

(甲2-4)「【0041】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、界面活性剤を使用せずに乳化の長期安定性に優れ、べたつきのない使用感を有した乳化組成物を得ることの可能な乳化剤組成物が提供される。また、本発明の水中油型乳化組成物は保湿効果や抗酸化効果にも優れたものである。」

3.甲第3号証
(甲3-1)「【請求項1】以下の成分(A)及び(B):
(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー
(B)室温で固形状である油性成分
を含んでなり、かつ乳化した結果形成される内相の油性成分の数平均粒子径が1μm 以下である水中油型乳化組成物。」(特許請求の範囲)

(甲3-2)「【0047】〔実施例1,2、比較例1?3〕第1表に示す処方の乳化組成物を製造し、上記の基準に基づき「使用に際してのこく」及び低温安定性について評価し、数平均乳化粒子径を測定した。これらの評価等の結果も併せて第1表に示す。
【0048】


【0049】<製法>油相成分を加熱して液状にし、これを水相成分に添加して、回転式乳化機(ホモミキサー:HM)又は高圧乳化機(ナノマイザー)で乳化した。」

4.甲第4号証
(甲4-1)「【請求項1】
(A)水溶性増粘剤を含み、
水中油型乳化化粧料全量に対して(A)水溶性増粘剤を0.3質量%以上含有し、
前記水中油型乳化化粧料は高剪断処理が施されており、
乳化粒子径が平均1μm以下であり、
さらに次の条件(1)?(2)を満たすことを特徴とする水中油型乳化化粧料。
(1)25℃においてカードメーター(感圧軸11.3Φ/200g荷重値)を用いて測定した硬度が6?16であること。
(2)45℃における粘度(ビスメトロン回転粘度計;ローターNo.3,ローター回転数12rpm)が3000?10000mPa・sであること。」(特許請求の範囲)

(甲4-2)「【0002】
水中油型乳化化粧料を調製する場合、経時安定性を考慮すれば、キサンタンガムやカルボマーなどの水溶性増粘剤、HLB6前後のものと10以上の界面活性剤を用いてホモミキサーなどの乳化機により、各種油剤を乳化粒子径3?10μmにするよう乳化するのが一般的である。しかしながら、皮膚化粧料として考えた場合、前記のような方法によって調製された乳化化粧料は、安定性には優れるものの、皮膚に塗布した場合、のびや肌へのなじみが悪く、べたついて、浸透感に劣るものであり、必ずしも使用性に満足できるものではなかった。」

(甲4-3)「【0051】
[実施例1および比較例1,2]
下記表1に示す処方で、水中油型乳化組成物であるスキンクリームを下記方法により製造した。
(実施例1の製法)
高剪断乳化装置(BERENTS社製BECOMIX RW2.5)を用いて、(1)?(6)を均一溶解した水相を60℃に加温した(水相)。次いで、別の釜に用意した(7)?(20)を60℃で均一溶解した油相を調製した。先の60℃に加温した水相に60℃の油相を添加して、高剪断乳化装置(BERENTS社製BECOMIX RW2.5)で周速20m/sにて3分間乳化した。乳化粒子径が平均1μm以下となっていることを確認したら、そのまま35℃まで周速2m/sで攪拌しながら冷却し、目的のスキンクリームを得た。
【0052】
(比較例1,2の製法)
(1)?(6)を均一溶解した水相を70℃に加温する(水相)。次いで、別の釜に用意した(7)?(20)を70℃で均一溶解した油相を調製する。先の70℃に加温した水相に60℃の油相を添加して、ホモミキサー(プライミクス社製T.K.ホモミクサーMARKII 2.5型)を用いて、9000回転で3分間乳化する。乳化粒子径を確認し、熱交換機で35℃まで冷却して目的のスキンクリームを得た。
・・・
【0064】
【表1】

*1;BERENTS社製BECOMIX RW2.5を用いて製造
*2;プライミクス社製 T.K.ホモミクサーMARKII 2.5型を用いて製造
・・・
【0066】
[実施例2および比較例3,4]
上記実施例1と同様の処方・方法で、高剪断乳化装置による乳化時間を変えて水中油型乳化組成物であるスキンクリームを製造した。
[比較例5?7]
上記実施例1と同様の処方・方法で、ホモミキサーによる乳化時間を変えて水中油型乳化組成物であるスキンクリームを製造した。
【0067】
【表2】

【0068】
前記表2から明らかなように、本発明品である実施例1,2は、上記同様、安定性に優れ、肌へののび、べたつき、さっぱりさ、みずみずしさ、浸透感、肌改善効果といった使用性に優れるものであった。一方、比較例5?7は、実施例1と全く同じ配合成分であり、水溶性増粘剤の配合量も同じであるため安定性において優れている。しかしながら、比較例5?7は、本発明品に用いる高剪断力乳化機に比較し剪断力に劣る一般的なホモミキサーで調製しているため、粘度が高く、乳化粒子径も大きく、使用性の評価は低いものであった。
さらに、比較例3,4は本発明品である実施例1等と同じ配合成分であり、高剪断力乳化機を用いたにも関わらず、その乳化時間を短縮したために、乳化粒子径は1μm以下とならず粘度も高いものとなり、使用性に劣るものとなった。
以上により、一般的なホモミキサーを使用した場合に好適な粘度及び乳化粒子径を得られない処方系において、高剪断乳化装置を用いて乳化時間を十分なものにすれば、優れた安定性はそのままで、かつ硬度及び粘度が低く、乳化粒子径も小さく、使用性に優れた水中油型乳化組成物を得られることが明らかとなった。
【0069】
[実施例3?7および比較例8?11]
また、下記表3に示す処方で、水中油型乳化組成物であるスキンクリームを下記方法により製造した。
(実施例3?7の製法)
高剪断乳化装置(BERENTS社製BECOMIX RW2.5)を用いて、(1)?(9)を均一溶解した水相を60℃に加温した(水相)。次いで、別の釜に用意した(10)?(22)を60℃で均一溶解した油相を調製する。先の60℃に加温した水相に60℃の油相を添加して、高剪断乳化装置(BERENTS社製BECOMIX RW2.5)で周速20m/sにて3分間乳化した。乳化粒子径が平均1μm以下となっていることを確認したら、(23)を添加して、そのまま35℃まで周速2m/sで攪拌しながら冷却し、目的のスキンクリームを得た。
【0070】
(比較例8?11の製法)
(1)?(9)を均一溶解した水相を70℃に加温する(水相)。次いで、別の釜に用意した(10)?(22)を70℃で均一溶解した油相を調製した。先の70℃に加温した水相に60℃の油相を添加して、ホモミキサー(プライミクス社製 T.K.ホモミクサーMARKII 2.5型)を用いて、9000回転で3分間乳化する。乳化粒子径を確認したら、(23)を添加して、熱交換機で35℃まで冷却して目的のスキンクリームを得た。
【0071】
評価は、上述した表1の方法と同様の方法により行った。
【表3】

・・・」

5.甲第5号証
(甲5-1)エルゴカルシフェロール及びコレカルシフェロールが、ビタミンD類であり、天然界面活性物質であること。(表12・80)


第5 判断
1.申立理由1(特許法第29条第1項第3号)
1-1.甲第1号証に記載された発明に基づく新規性違反について
(1)甲第1号証に記載された発明
上記摘記事項(甲1-1)、(甲1-3)及び(甲1-4)より、甲第1号証には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲1発明」という。)。

「以下に示す組成の乳化組成物であり、油相成分を加熱し液状にし、続いて水相成分に添加しながら乳化機で乳化して製造した、実質的に界面活性剤を含まない乳化組成物。

A.油相
ジメチルポリシロキサン 10.0 %
ミリスチン酸イソプロピル 8.0
スクワラン 2.0
α-トコフェロール 0.3
セチルアルコール 3.0
B.水相
トリエタノールアミン 0.25
プロピレングリコール 10.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
メタリン酸ナトリウム 0.1
CARBOPOL 1342 0.3
ヒドロキシプロピルメチルセルロース0.1
イオン交換水 残余 」

(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「α-トコフェロール」及び「CARBOPOL 1342」は、それぞれ、本件特許発明1の「油溶性有効物質」及び「アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩」に相当する。また、甲1発明は、油相に比べて水相を多く含み、「油相成分を加熱し液状にし、続いて水相成分に添加しながら乳化機で乳化して製造」することからみて、O/W型エマルション組成物であるといえる。さらに、甲1発明は、「実質的に界面活性剤を含まない」から、本件特許発明1のように、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩以外の界面活性剤の含有量が油相の量の0.1重量%以下」のものである。そして、本件特許発明1は、「油溶性有効物質」及び「アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩」以外に、トリエタノールアミン等のpHを調整するための物質や、「化粧料や医薬などの皮膚外用剤に用いられ得る油剤、粉体、色素、高分子、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、溶媒、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分、保湿剤、塩類、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤等の任意の成分」を配合することができるから(本件特許明細書の【0034】及び【0035】を参照。)、甲1発明が、ジメチルポリシロキサン、ミリスチン酸イソプロピル、スクワラン、セチルアルコール、トリエタノールアミン、プロピレングリコール 、パラオキシ安息香酸メチル、メタリン酸ナトリウム及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むことは、両発明の相違点ではない。
そうしてみると、両発明は、「油溶性有効物質とアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩とを含有するO/W型エマルション組成物であって、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩以外の界面活性剤の含有量が油相の量の0.1重量%以下である、上記組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。


(相違点1-1)
本件特許発明1が「組成物のpHは4.0から8.0」であるのに対し、甲1発明はpHの値が特定されていない点。

(相違点1-2)
本件特許発明1が「組成物におけるエマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であるのに対し、甲1発明はエマルション粒子の平均粒子径の値が特定されていない点。

まず、相違点1-2について検討する。
甲1発明における「乳化機」、すなわち、甲第1号証の実施例4で用いられた乳化機については、甲第1号証の実施例には、どのような乳化機であるかといった記載はないが、甲第1号証には、乳化組成物を調製する方法として、「ホモミキサー、ホモディスパーなど通常の乳化に用いる乳化機」を用いる方法と、「超音波乳化機、高圧乳化機など高い剪断力を持つ乳化機」を用いる方法があることが記載され(摘記事項(甲1-2))、甲第1号証の実施例9において「高圧乳化機」が用いられたことが記載されている(摘記事項(甲1-5))ことを考えれば、実施例4で用いられた乳化機は、超音波や高圧などの特別な乳化機ではなく、「ホモミキサー、ホモディスパーなど通常の乳化に用いる乳化機」であると認められる。
一方、エマルション粒子の平均粒子径は、エマルション組成物を製造するための製造機に何を使うかだけではなく、エマルション組成物を構成する油相及び水相の成分の種類及び量や、エマルション組成物を製造する際の加熱温度、撹拌時間などの乳化条件にも影響されるのが技術常識であるところ(なお、甲第4号証の比較例2及び5?7における平均乳化粒子径あるいは同号証の実施例1及び2並びに比較例3及び4における平均乳化粒子径が異なっている(摘記事項(甲4-3))ことは、上記技術常識を示す一例である。)、甲第1号証の記載からは、乳化機として通常の乳化機を用いることは理解できるものの、甲1発明を製造するための加熱温度、撹拌時間などの乳化条件は不明であり、甲1発明の組成物を構成する油相及び水相の成分の種類及び量であれば、どの程度の平均粒子径のエマルション粒子が製造できるのかも不明であるから、甲第1号証の記載からは、甲1発明におけるエマルション粒子の平均粒子径が「2μmから10μm」であると認めることはできない。

これにつき、申立人は、甲第3及び4号証を提示し、「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることは、「本願出願優先日前の刊行物の記載事項から水中油型乳化化粧料における一般的な技術事項であった」と述べ、甲1発明の乳化組成物が「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」を満たすものである蓋然性が高く、甲1発明の「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることは、甲第1号証に記載されているに等しい事項といえると主張する。
上記主張について検討すると、甲第3号証には、同一の成分を有した組成物について、回転式乳化機(ホモミキサー:HM)で乳化した比較例1及び3の乳化物の数平均乳化粒子径が5μmであり、高圧乳化機(ナノマイザー)で乳化した比較例2の数平均乳化粒子径が1μm以下であることが示されている(摘記事項(甲3-2))。
しかしながら、甲第3号証の比較例は、甲第3号証の実施例、すなわち、(A)アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び(B)室温で固形状である油性成分を含み、数平均乳化粒子径が1μm 以下である水中油型乳化組成物(摘記事項(甲3-1)及び(甲3-2))と、こくのある使用感や低温安定性の観点で比較するための実験例として示されたものに過ぎないから、比較例1及び3の記載をもって、W/O型エマルション組成物の平均粒子径は2μmから10μmの範囲とするのが一般的とはいえないし、ましてや甲1発明のエマルション粒子の平均粒子径が 2μmから10μmの範囲にあるということもできない。
さらに、甲1発明と甲第3号証の比較例1及び3とは、組成物の成分が異なるし、加熱温度、攪拌時間などの乳化条件が同じであるかどうかも不明であるから、甲1発明におけるエマルション粒子の平均粒子径が甲第3号証の比較例3に記載の乳化組成物における乳化粒子(エマルション粒子)の平均粒子径と同じであると認めるべき根拠もない。
したがって、甲第3号証の記載から、甲1発明の乳化組成物が「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」を満たすものとは認められない。
甲第4号証には、「水中油型乳化化粧料を調製する場合、経時安定性を考慮すれば、キサンタンガムやカルボマーなどの水溶性増粘剤、HLB6前後のものと10以上の界面活性剤を用いてホモミキサーなどの乳化機により、各種油剤を乳化粒子径3?10μmにするよう乳化するのが一般的である」と記載されている(摘記事項(甲4-2))。
しかしながら、この記載は、界面活性剤を用いた水中油型乳化化粧料について述べたものであり、甲1発明のように実質的に界面活性剤を含まない乳化組成物についての一般的な技術事項を述べたものではないから、この記載をもって、甲1発明のエマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μmの範囲にあるということはできない。
また、甲第4号証には、比較例1などとして、ホモミキサーを用いて、平均乳化粒子径が3?5μmなどである乳化組成物が得られることが示されている(摘記事項(甲4-3))。
しかしながら、甲第4号証の比較例は、甲第4号証の実施例、すなわち、水溶性増粘剤を含み、平均乳化粒子径が1μm以下である水中油型乳化化粧料(摘記事項(甲4-1)及び(甲4-3))と、安定性や使用性の観点で比較するための実験例として示されたものに過ぎないから、比較例1などの記載をもって、W/O型エマルション組成物の平均粒子径は2μmから10μmの範囲とするのが一般的とはいえないし、ましてや甲1発明のエマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μmの範囲にあるということもできない。
さらに、甲1発明と甲第4号証の比較例とは、組成物の成分が異なるし、加熱温度、攪拌時間などの乳化条件が同じであるかどうかも不明であるから、甲第4号証の比較例に記載の乳化組成物における乳化粒子(エマルション粒子)の平均粒子径が甲1発明のそれと同じであると認めるべき根拠もない。
したがって、甲第4号証の記載から、甲1発明の乳化組成物が「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」を満たすものとは認められない。

よって、上記申立人の主張は受け入れられず、本件特許発明1と甲1発明とは相違点1-2で相違するから、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。

(3)本件特許発明2?5及び8?11について
本件特許発明2?5は、本件特許発明1における「油溶性有効物質」を特定の化合物に限定したものであり、本件特許発明8及び9は、pHの値をさらに限定したものであり、本件特許発明10は、本件特許発明1の組成物を含有する皮膚外用剤であり、本件特許発明11は、本件特許発明10の皮膚外用剤を「化粧組成物、スキンケア組成物、または医薬組成物」に限定したものであり、いずれの発明も、本件特許発明1と同様に、「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることを必須の事項とするものである。
よって、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2?5及び8?11は、甲第1号証に記載された発明ではない。


1-2.甲第2号証に記載された発明に基づく新規性違反について
(1)甲第2号証に記載された発明
上記摘記事項(甲2-1)、(甲2-3)及び(甲2-4)より、甲第2号証には、以下の発明が記載されていると認められる(以下、「甲2発明」という。)。

「以下に示す組成の乳化液であり、Aの油相をBの水相に添加し、乳化機で乳化することより得られる、実質的に界面活性剤を含まない水中油型乳化組成物である乳化液。

A.油相
スクワラン 10.0 重量%
パルミチン酸イソプロピル 5.0
ワセリン 3.0
ジメチルポリシロキサン 2.0
ヘキシルデカノール 3.0
α-トコフェロール0.3
B.水相
トリエタノールアミン 0.25
ポリエチレングリコール 8.0
1,3-ブチレングリコール 5.0
パラオキシ安息香酸メチル 0.1
メタリン酸ナトリウム 0.1
CARBOPOL 1342 0.3
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1
ジパルミチン酸L-アスコルビル 0.2
水酸化カリウム 0.2
イオン交換水 残余 」

(2)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「α-トコフェロール」及び「ジパルミチン酸L-アスコルビル」は、本件特許発明1の「油溶性有効物質」に相当し、甲2発明の「CARBOPOL 1342」は、本件特許発明1の「アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩」に相当する。また、甲2発明の「水中油型乳化組成物」は、本件特許発明1の「O/W型エマルション組成物」に相当する。さらに、甲2発明は、「実質的に界面活性剤を含まない」から、本件特許発明1のように、「アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩以外の界面活性剤の含有量が油相の量の0.1重量%以下」のものである。そして、本件特許発明1は、「油溶性有効物質」及び「アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩」以外に、トリエタノールアミン、水酸化カリウム等のpHを調整するための物質や、「化粧料や医薬などの皮膚外用剤に用いられ得る油剤、粉体、色素、高分子、防腐剤、香料、紫外線吸収剤、溶媒、天然系の植物抽出成分、海藻抽出成分、生薬成分、保湿剤、塩類、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤等の任意の成分」を配合することができるから(本件特許明細書の【0034】及び【0035】を参照。)、甲2発明が、スクワラン、パルミチン酸イソプロピル、ワセリン、ジメチルポリシロキサン、ヘキシルデカノール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、パラオキシ安息香酸メチル、メタリン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び水酸化カリウムを含むことは、両発明の相違点ではない。
そうしてみると、両発明は、「油溶性有効物質とアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩とを含有するO/W型エマルション組成物であって、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩以外の界面活性剤の含有量が油相の量の0.1重量%以下である、上記組成物」である点で一致し、以下の点で相違する。


(相違点2-1)
本件特許発明1が「組成物のpHは4.0から8.0」であるのに対し、甲2発明はpHの値が特定されていない点。

(相違点2-2)
本件特許発明1が「組成物におけるエマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であるのに対し、甲2発明はエマルション粒子の平均粒子径の値が特定されていない点。

まず、相違点2-2について検討する。
甲2発明における「乳化機」については、甲第2号証の実施例1の記載から(摘記事項(甲2-2))、「ホモミキサー」であると認められる。
しかしながら、上記1-1.(2)で述べたように、エマルション粒子の平均粒子径は、乳化機に何を使うかだけではなく、組成物を構成する油相及び水相の成分の種類及び量や、加熱温度、撹拌時間などの乳化条件にも影響されるところ、甲第2号証の記載からは、乳化機としてホモミキサーを用いることは理解できるものの、甲2発明を製造するための加熱温度、撹拌時間などの乳化条件は不明であり、甲2発明の組成物を構成する油相及び水相の成分の種類及び量であれば、どの程度の平均粒子径のエマルション粒子が製造できるのかも不明であるから、甲第2号証の記載からは、甲2発明におけるエマルション粒子の平均粒子径が「2μmから10μm」であるとはいえない。
これにつき、申立人は、甲第3号証及び甲第4号証を提示して、甲1発明に対する主張と同様の主張をしているが、上記1-1.(2)で述べたところと同様、当該主張は受け入れられない。

よって、本件特許発明1と甲2発明とは相違点2-2で相違するから、相違点2-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第2号証に記載された発明ではない。

(3)本件特許発明2?6及び8?11について
本件特許発明6は、本件特許発明1における「油溶性有効物質」を特定の化合物に限定したものであり、本件特許発明1と同様に、「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることを必須の事項とするものである。また、上記1-1.(3)で述べたとおり、本件特許発明2?5及び8?11も、「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることを必須の事項とするものである。
よって、本件特許発明2?6及び8?11は、本件特許発明1と同様に、甲第2号証に記載された発明ではない。

1-3.小活
以上検討したとおり、本件特許発明1?5及び8?11は、甲第1号証に記載された発明ではなく、本件特許発明1?6及び8?11は、甲第2号証に記載された発明ではないから、申立理由1には理由がない。


2.申立理由2(特許法第29条第2項)
2-1.甲1発明に基づく進歩性違反について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明は、上記1-1.(2)で述べたとおり、相違点1-1及び相違点1-2で相違する。
そして、申立人は、これらの相違点について「少なくとも、引用文献2、3および甲第4号証、甲第3号証に示されるような技術水準の中でごく通常に行われていた範囲の値といえるから、本件発明の構成は当業者が、容易に想到し得たものである」と述べ、さらに本件特許発明1の効果について「本件明細書にいう‘経皮吸収性’の効果(課題)は、「本件出願優先日前の周知技術」についての確認試験の結果にすぎず、また、本件発明(本件特許発明1)にかかる構成に当業者が予測し難い顕著な効果があるというものでもない」と述べ、「本件特許発明1は、甲1および甲2に記載された発明に記載された事項に基づき、本件出願優先日前の技術常識もしくは技術水準の中で、もしくは公知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである」と主張する。
そこで、上記主張について検討する。
まず、相違点1-2について検討するに、申立人が引用する引用文献2(特開2001-139453号公報)及び引用文献3(国際公開2007/039974号)には、皮膚外用剤の乳化組成物におけるエマルション粒子の平均粒子径についての記載はないから、これらの文献は、エマルション粒子の平均粒子径についての技術常識又は技術水準を示すものではない。
甲第3号証には、回転式乳化機(ホモミキサー:HM)で乳化した比較例1及び3の乳化物の数平均乳化粒子径が5μmであることが記載されている(摘記事項(甲3-2))。
しかしながら、上記1-1.(2)で述べたとおり、甲第3号証の比較例は、甲第3号証の実施例に対する比較のための実験例として示されたものであるから、それらの比較例の記載が甲1発明におけるエマルション粒子の平均粒子径を2μmから10μmの範囲とすることを特に動機付けるものとはいえない。
甲第4号証には、「水中油型乳化化粧料を調製する場合、経時安定性を考慮すれば、キサンタンガムやカルボマーなどの水溶性増粘剤、HLB6前後のものと10以上の界面活性剤を用いてホモミキサーなどの乳化機により、各種油剤を乳化粒子径3?10μmにするよう乳化するのが一般的である」と記載されている(摘記事項(甲4-2))。
しかしながら、上記1-1.(2)でも述べたとおり、この記載は、界面活性剤を用いた水中油型乳化化粧料について述べたものであるから、甲1発明のエマルション粒子の平均粒子径を2μmから10μmの範囲とすることを動機付けるものではない。
また、甲第4号証には、比較例1などとして、ホモミキサーを用いて、平均乳化粒子径が3?5μmなどである乳化組成物が得られることが示されている(摘記事項(甲4-3))。
しかしながら、上記1-1.で述べたとおり、甲第4号証の比較例も甲第4号証の実施例に対する比較のための実験例として示されたものに過ぎないから、甲第3号証の比較例について上述したところと同様である。
さらに、引用文献2及び3並びに甲第3及び4号証の他の記載をみても、甲1発明のエマルション粒子の平均粒子径を「2μmから10μm」とする動機付けになるような記載は見い出せない。したがって、相違点1-2は、甲第1号証並びに引用文献2、引用文献3、甲第3号証及び甲第4号証から当業者が容易に想到し得るものではない。
そして、本件特許発明1は、エマルション組成物の乳化安定性を維持しつつ、油溶性有効物質の保存安定性及び経皮吸収性を高めるという効果を奏するものであるところ、甲第1号証並びに引用文献2、引用文献3、甲第3号証及び甲第4号証にはかかる効果を示唆する記載もないから、当業者がこれらの文献から、本件特許発明1の上記効果を予測することはできない。
したがって、相違点1-1を検討するまでもなく、申立人の上記主張は受け入れられないものである。

よって、本件特許発明1は、甲第1号証の記載並びに引用文献2、引用文献3、甲第3号証及び甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2?11について
本件特許発明7は、本件特許発明1における「油溶性有効物質」を特定の化合物に限定したものであり、本件特許発明1と同様に、「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることを必須の事項とするものである。また、本件特許発明2?6及び8?11も、「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることを必須の事項とするものである。
よって、本件特許発明2?11は、本件特許発明1と同様に、甲第1号証の記載並びに引用文献2、引用文献3、甲第3号証及び甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


2-2.甲2発明に基づく進歩性違反について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明は、上記1-2.(2)で述べたとおり、相違点2-1及び相違点2-2で相違する。
これについて、申立人は、甲1発明に基づく進歩性違反に係る主張と同様の主張をしているが、上記2-1.(1)で述べた理由と同様の理由から、当該主張は受け入れられず、したがって、本件特許発明1は、甲第2号証の記載並びに引用文献2、引用文献3、甲第3号証及び甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本件特許発明2?11について
上記のとおり、本件特許発明2?11は、本件特許発明1と同様に、「エマルション粒子の平均粒子径が2μmから10μm」であることを必須の事項とするものであるから、甲第2号証の記載並びに引用文献2、引用文献3、甲第3号証及び甲第4号証の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2-3.小活
以上検討したとおり、本件特許発明1?11は、甲第1?4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由2には理由がない。


3.申立理由3(特許法第36条第6項第1号)
申立人は、「本件明細書実施例において、薬剤安定性、経皮吸収性がともに確認されている「油溶性有効物質」は、‘ビタミンA油、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル、酢酸d1-α-トコフェロール’のみであり、本件請求項1(及び請求項2-4、8-11)に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものとは認められない」と主張する。
そこで検討するに、本件明細書の実施例において、薬剤安定性及び経皮吸収性が優れていることが確認されたビタミンA油、テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル及び酢酸d1-α-トコフェロールは、その化学構造が全く異なるものであり、専ら「油溶性」という性質において共通する物質であると認められる。
してみると、そのような化学構造が異なる「油溶性」物質を含む複数のO/W型エマルション組成物のいずれもが、薬剤安定性及び経皮吸収性に優れるのは、それらの物質の「油溶性」なる性質に基づくものと理解されるから、本件特許発明1においては、上記3つの物質に限らず、「油溶性有効物質」なる範囲のものであれば、実施例で記載のビタミンA油等と同様に作用・効果を奏するものと推認するのが相当である。
したがって、本件特許発明1は、特許を受けようとする発明が本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されているから、上記主張は受け入れられない。
本件特許発明2?4及び8?11についても同様である。

よって、申立理由3には理由がない。


4.申立理由4(特許法第36条第6項第2号)
申立人は、「・・・(甲第5号証)には、本件発明の油溶性ビタミンである「エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、コレカルシフェロール(ビタミンD3)」がリン脂質とともに‘天然界面活性剤’として挙げられており、「F:アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩以外の界面活性剤の含有量が油相の量の0.1重量%以下である」は不明確であり、本件請求項1に係る発明(及びこれを引用する本件請求項2-11に係る発明)は明確ではない」と主張する。
しかしながら、本件請求項1における「アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩以外の界面活性剤の含有量が油相の量の0.1重量%以下である」との記載はその記載のとおりの意味であって、何ら不明確なものではなく、例えば、本件特許発明1が「油溶性有効物質」としてビタミンD2を含む場合において、当該「油溶性有効物質」、すなわちビタミンD2が界面活性剤であるならば、該ビタミンD2の含有量は「油相の量の0.1重量%以下」であることを意味するのは明らかである。
したがって、本件特許発明1は明確であるから、上記主張は受け入れられない。
請求項1を引用する本件特許発明2?11についても同様である。

よって、申立理由4には理由がない。


第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-11-21 
出願番号 特願2013-91919(P2013-91919)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (A61K)
P 1 651・ 121- Y (A61K)
P 1 651・ 113- Y (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中村 俊之  
特許庁審判長 關 政立
特許庁審判官 長谷川 茜
阪野 誠司
登録日 2018-02-09 
登録番号 特許第6284303号(P6284303)
権利者 御木本製薬株式会社 第一三共ヘルスケア株式会社
発明の名称 O/W型エマルション組成物及び皮膚外用剤  
代理人 藍原 誠  
代理人 今村 正純  
代理人 渡辺 紫保  
代理人 今村 正純  
代理人 渡辺 紫保  
代理人 藍原 誠  
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