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審決分類 審判 全部申し立て 特174条1項  G01B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01B
審判 全部申し立て 2項進歩性  G01B
管理番号 1346786
異議申立番号 異議2018-700727  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2018-09-07 
確定日 2018-12-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第6288477号発明「三次元座標測定装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6288477号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6288477号の請求項1-6に係る特許についての出願は、平成28年1月29日(優先権主張 平成27年1月30日)に特許出願され、平成30年2月16日にその特許権の設定登録がされ、平成30年3月7日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、平成30年9月7日に、特許異議申立人 簑 さくら により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第6288477号の請求項1-6に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」-「本件発明6」という。)は、特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
測定プローブを測定対象物に接触させることにより測定対象物の三次元座標を測定する三次元座標測定装置であって、
前記測定対象物を載せ置く測定領域を有する定盤と、
前記測定領域をX軸方向に跨いで第一の支持柱と第二の支持柱を有しており、且つ前記測定プローブを支持しながら移動する移動体と、
前記移動体を前記測定プローブの移動方向に案内するガイドと、
前記第一の支持柱に設けられ、前記移動体をY軸方向に移動させる駆動部と、
前記ガイドにおいて、前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持し、前記駆動部に対して前記Y軸方向に沿って前後2対ある支持部と、を有し、
前記駆動部は、前記Y軸方向において前記前後2対の前記支持部の間に位置し、且つ前記一対のガイド面の一方に当接し、
前記第二の支持柱における前記Y軸方向の位置は、前記前後2対の前記支持部の間に位置する三次元座標測定装置。
【請求項2】
前記前後2対の前記支持部の間の前記Y軸方向の距離は、前記一対のガイド面の間の距離よりも大きい請求項1に記載の三次元座標測定装置。
【請求項3】
前記定盤は、Z軸方向に垂直な上面と、前記Y軸方向に沿った側面とを有し、
前記定盤の前記上面に前記Y軸方向に沿って形成された溝を備え、
前記ガイドは、前記溝の内側の側面を第1のガイド面として、かつ、前記定盤の側面を第2のガイド面として有する、請求項1又は2に記載の三次元座標測定装置。
【請求項4】
前記駆動部は前記第一の支持柱を前記Y軸方向に駆動し、前記第二の支持柱は前記第一の支持柱に追従移動する請求項1から3のいずれか1項に記載の三次元座標測定装置。
【請求項5】
前記支持部は、エアパッドである請求項1から4のいずれか1項に記載の三次元座標測定装置。
【請求項6】
前記第二の支持柱は、前記定盤の上面のみに配置される第二の支持柱支持部を有する請求項1から5のいずれか1項に記載の三次元座標測定装置。」

第3 申立ての理由の概要
特許異議申立人 簑 さくら は、次の甲第1号証-甲第8号証を提出し、次の理由1-3により、請求項1-6に係る特許は取り消されるべきものであると主張している。

甲第1号証:特許第6288477号公報(本件特許公報)
甲第2号証:平成29年10月16日付け手続補正書
甲第3号証:平成29年12月13日付け手続補正書
甲第3号証の2:平成29年12月13日付け意見書
甲第4号証:特開平5-312556号公報
甲第5号証:特開昭62-235502号公報
甲第6号証:特開昭62-235513号公報
甲第7号証:特開昭62-235514号公報
甲第7号証の2:特開昭61-97501号公報
甲第8号証:特開平10-26203号公報

1 理由1
(1)請求項1について
ア 請求項1には、「前記Y軸方向に沿って前後2対ある支持部」及び「前後2対の前記支持部」(以下、まとめて「前後2対」の支持部という。)と記載されている。
ここで、「前後2対」とは、「前方1対」及び「後方1対」(の2対)とも、「Y軸に沿って前後の対が2つ」とも解釈できるから、請求項1の記載は不明確である。
また、本件明細書の段落【0103】-【0106】の記載及び甲第3号証の2(平成29年12月13日付け意見書)によれば、請求項1における「前後2対」は、「Y軸に沿って前後の対が2つ」と解釈されるべきであるが、請求項1における「前後2対」を、上記のとおり「Y軸に沿って前後の対が2つ」と解釈した場合には、請求項1における「前記駆動部は、前記Y軸方向において前記前後2対の前記支持部の間に位置し」、及び「前記第二の支持柱における前記Y軸方向の位置は、前記前後2対の前記支持部の間に位置する」構成は、発明の詳細な説明に記載されていないことになる。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

イ 請求項1には、「前記駆動部は」、「前記一対のガイド面の一方に当接し」と記載されている。
ここで、甲第3号証の2(平成29年12月13日付け意見書)によれば、「一対のガイド面の一方」は「Yガイドの右側面42Rの側のみ」と考えられる一方で、上記記載における「一方に」は、文言上、「すくなくとも一方」とも「一方のみ」とも解釈できるから、本件発明1を明確に特定できない。
よって、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(2)請求項2について
請求項2は、請求項1を引用する請求項であるから、上記「(1)」と同様の理由により、請求項2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。
また、請求項2には、「前記前後2対の前記支持部」なる記載を有するから、上記「(1)」「ア」と同様の理由により、請求項2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(3)請求項3-5について
請求項3-5は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項であるから、上記「(1)」と同様の理由により、請求項3-5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(4)請求項6について
請求項6は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項であるから、上記「(1)」と同様の理由により、請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
また、請求項6には、「支持柱支持部」と記載されているが、当該記載はその意味内容が不明確であるから、請求項6に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

2 理由2
(1)請求項1について
上記「1 理由1」「(1)」「ア」で述べたとおり、請求項1における「前後2対」を、「Y軸に沿って前後の対が2つ」と解釈した場合には、請求項1における「前記駆動部は、前記Y軸方向において前記前後2対の前記支持部の間に位置し」、及び「前記第二の支持柱における前記Y軸方向の位置は、前記前後2対の前記支持部の間に位置する」構成は、出願当初の明細書、特許請求の範囲および図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていない事項である。
よって、当該「前後2対」なる記載を追加した平成29年12月13日付け手続補正書(甲3)は、新規事項を追加する補正である(当審注:異議申立人は、平成29年10月16日付け手続補正書(甲2)についても新規事項を追加する補正である旨述べているが、平成29年10月16日付け手続補正書(甲2)に係る補正箇所は、平成29年12月13日付け手続補正書(甲3)で補正されているので、異議申立ての理由の趣旨を上記のとおりに解した。)
従って、請求項1に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

(2)請求項2について
請求項2は、請求項1を引用する請求項であるから、上記「(1)」と同様の理由により、請求項2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願についてされたものである。
また、請求項2には、「前記前後2対の前記支持部」なる記載を有し、該記載は平成29年12月13日付け手続補正書(甲3)(当審注:異議申立人は、平成29年10月16日付け手続補正書(甲2)について新規事項を追加する補正である旨述べているが、平成29年10月16日付け手続補正書(甲2)に係る補正箇所は、平成29年12月13日付け手続補正書(甲3)で補正されているので、異議申立ての理由の趣旨を上記のとおりに解した。)により追加された記載であるから、上記「(1)」と同様の理由により、請求項2に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

(3)請求項3-6について
請求項3-6は、請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項であるから、上記「(1)」と同様の理由により、請求項3-6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものである。

3 理由3
本件発明1-6は、甲第4号証に記載された発明、及び甲第5号証ないし甲第8号証に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第4 当審の判断
1 理由1について
(1)請求項1に係る発明について
ア 請求項1には、「前記ガイドにおいて、前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持し、前記駆動部に対して前記Y軸方向に沿って前後2対ある支持部」と記載されている。
上記記載は、「X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込む」「支持部」の対が、「Y軸方向に沿って前後2対ある」ことを意味していると解するのが自然であって、上記「Y軸方向に沿って前後2対」との記載を、敢えて「Y軸に沿って前後の対が2つ」と解し、これに続く「前記駆動部は、前記Y軸方向において前記前後2対の前記支持部の間に位置し」、「前記第二の支持柱における前記Y軸方向の位置は、前記前後2対の前記支持部の間に位置する」との記載との関係を不合理なものとするような解釈を採用する余地はない。
異議申立人の指摘する、本件明細書の段落【0103】-【0106】の記載及び甲第3号証の2(平成29年12月13日付け意見書)における記載は、上記「Y軸方向に沿って前後2対」をどのように解釈すべきかについて述べた記載ではないから、上記判断に影響を与えるものではない。
また、請求項1における「前後2対の前記支持部」についても同様である。

イ 本件明細書の段落【0065】には、「なお、Yキャリッジ14の駆動手段として、駆動部80の他にYガイド42の左側面42Lに当接する駆動部を例えば駆動部80に対峙させて設けてもよいし、駆動部80の代わりにYガイド42の左側面42Lに当接する駆動部のみを設けてもよい。」(下線は、当審で付与した。)と記載されている。
よって、本件明細書における上記記載に基づけば、請求項1における、「前記駆動部は」「前記一対のガイド面の一方に当接し」との記載は、「駆動部」が「一対のガイド面の一方に当接し」ていることをもって、発明を特定するのに必要な事項であるとしているに過ぎす、当該記載を「ガイド面の一方のみに当接し」と限定して解釈すべき理由はない。
また、異議申立人の指摘する、甲第3号証の2(平成29年12月13日付け意見書)における記載は、引用文献1の「ラック17」が、「摺動案内部7と別体」である点で、本願発明1と異なる旨主張していると解されるから、上記判断に影響を与えるものではない。

ウ よって、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしている。

(2)請求項2について
請求項2における「前記前後2対の前記支持部」なる記載が明確であって、「前後2対」を「Y軸に沿って前後の対が2つ」と解釈する余地はなく、従って、発明の詳細な説明に記載されていることは、上記「(1)」「ア」で述べたことと同様である。
また、上記「(1)」「イ」で述べたとおり、請求項1における、「前記駆動部は」「前記一対のガイド面の一方に当接し」との記載も明確である。
よって、請求項2が請求項1を引用しているからといって、請求項2の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないことにはならない。

(3)請求項3-5について
上記「(1)」で述べたとおり、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしているから、請求項3-5が請求項1を直接的又は間接的に引用しているからといって、請求項3-5の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないことにはならない。

(4)請求項6について
上記「(1)」で述べたとおり、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしているから、請求項6が請求項1を直接的又は間接的に引用しているからといって、請求項6の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないことにはならない。
また、請求項6における「支持柱支持部」との記載が、「支持柱」の「支持部」を意味していることは明らかであるから、この点で、請求項6の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないことにはならない。

(5)まとめ
以上のとおり、請求項1-6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

2 理由2について
理由2は、請求項1における「前後2対」との記載を「Y軸に沿って前後の対が2つ」と解することを前提としているが、そのような解釈が不合理であることは、上記「1 理由1について」で述べたとおりであるから、理由2は、前提を欠き、理由がない。
よって、請求項1-6に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものではない。

3 理由3について
(1)引用発明、刊行物の記載等
ア 甲第4号証(特開平5-312556号公報)について
甲第4号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は座標測定機に係り、特にX、Y、Z軸の3軸方向にプローブを移動して被測定物の形状を測定する座標測定機に関する。
【0002】
【従来の技術】3次元座標測定機はX、Y、Z軸の3軸方向にプローブを移動して被測定物の形状を測定する。図5及び図6に示すように、3次元座標測定機はYキャリッジ10を備えていて、Yキャリッジ10はガイド12に沿ってY軸方向に移動する。すなわち、ガイド12は定盤14の表面や側面にボルト16、16…を介して取り付けられていて、ガイド12の両側部にはYキャリッジ10の一方の脚部10Aのエアパッド18、18が摺動自在に支持されている。この場合、定盤14にはボルト16、16…が螺合するねじ穴14A、14A…が加工されている。
【0003】また、Yキャリッジ10の他方の脚部10Bにはエアパッド20が設けられていて、他方の脚部10Bはエアパッド20を介して定盤14の表面に沿って移動する。これにより、Yキャリッジ10はガイド12に沿ってY軸方向に移動する。前記従来例において、Yキャリッジ10はガイド12に沿って移動するように構成されていたが、図7及び図8に示すように、定盤14の溝22に沿ってYキャリッジ10を移動する3次元座標測定機も一般に知られている。尚、図5及び図6と同一類似部材については同一符号を付与して説明を省略する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、定盤14は御影石で形成されているので、ねじ穴14A、14A…や溝22の加工費が高くなり製品のコスト低減を図ることができないという問題がある。また、ガイド12をボルト16、16…を介して取り付けた場合、ボルト16、16…の緩み等により精度が悪化するという問題があり、定盤14に溝22を加工した場合、定盤14が強度不足になるという問題がある。」

(イ)「【0009】
【実施例】以下添付図面に従って本発明に係る座標測定機について詳説する。図1には本発明に係る座標測定機50の要部拡大が示され、図2にはそのA-A矢視図が示されている。座標測定機50はYキャリッジ52及び支持部材54等を備えていて、Yキャリッジ52は右側Yコラム52A及び左側Yコラム52Bを有している。支持部材54は右側脚部54Aと左側脚部54Cを有していて、右左の脚部54A、54Cの下端部はそれぞれアーム54Bで連結されている。アーム54Bは定盤64の底面に沿って延長されていて、右左の脚部54A、54Cはそれぞれ定盤64の右左の側面に沿って立設されている。
【0010】右側Yコラム52Aの下端部には右側脚部54Aの上端部が固定されていて、右側脚部54Aの上端部にはボルト56Aが螺合されている。ボルト56Aの先端部にはボール58が溶着されている。図3に示すように、ボール58Aは溝60A内に回動自在に嵌入されていて、溝60Aは垂直方向エアパッド60の背面に形成されている。垂直方向エアパッド60の摺動面60Aは定盤64の右端部表面に沿って移動自在に支持されている(当審注:「摺動面60A」とある記載は、「摺動面60B]の誤記である。)。
【0011】また、右側脚部54Aの略中央部にはボルト56Bが螺合されていてボルト56Bの先端部にはボール58Bが固着されている。ボール58Bは基準エアパッド66の背面に形成されている溝66A内に回動自在に嵌入されていて、基準エアパッド66の摺動面66Bは定盤64の右側面に沿って移動自在に支持されている。
【0012】さらに、図4に示すように左側脚部54Cにはシャフト68が摺動自在に支持されていて、シャフト68の先端部にはフランジ68Aが形成されている。左側脚部54Cとフランジ68Aとの間のシャフト68には皿ばね69が配設されていて、皿ばね69はフランジ68Aを右方向に付勢している。フランジ68Aにはボール58Dが固着されていて、ボール58Dは反力用エアパッド70の背面に形成されている溝70A内に回動自在に嵌入されている。反力用エアパッド70の摺動面の70Bは定盤64の左側面に沿って移動自在に支持されている。
【0013】このように、反力用エアパッド70が定盤64の左側面に設けられたので、定盤64の左側面(当審注:「右側面」の誤記である。)に設けられている基準エアパッド66に反力が付与される。また、反力用エアパッド70を皿ばね69で定盤64の左側面方向に付勢したので、皿ばね69はアーム54B等の支持部材54の熱変形を吸収する。従って、基準エアパッド66に付与される反力を略一定に保つことができる。この場合、皿ばね69のばね定数は基準エアパッド66のばね定数より小さく設定されている。
【0014】左側Yコラム52Bの下端部にはボルト56Cが螺合されていてボルト56Cの先端部にはボール58Cが固着されている。ボール58Cは垂直方向エアパッド74の背面に形成されている溝74A内に回動自在に嵌入されていて、垂直方向エアパッド74の摺動面74Bは定盤64の左端部に沿って移動自在に支持されている。
【0015】また、左側Yコラム52Bの下端部には板ばね76の上端部が取り付けられていて、板ばね76の下端部は左側脚部54Cに連結されている。従って、左側脚部54Cは板ばね76を介して左側Yコラム52Bに吊られた状態に保持される。これにより、アーム54B等の支持部材54の熱変形は板ばね76で吸収されるので、支持部材54の熱変形は左側Yコラム52Bに影響を与えない。従って、例えば、支持部材54のアーム54Bが熱変形しても左側Yコラム52Bには熱変形による反力が発生しない。
【0016】さらに、右側脚部54Aには読取りヘッド78が設けられていて、読取りヘッド78はY軸スケール80を読み取り、これにより、Yキャリッジ52のY軸方向の移動量が検出される。Y軸スケール80は読取りヘッド78に対向して定盤64に設けられている。尚、定盤64はボルト82、82…を介して架台84に載置されている。
【0017】このように構成された本発明に係る座標測定機の作用について説明する。先ず、ボルト56A、56B、56Cを調整して、エアパッド60、66、74を適正位置に位置決めする。すなわち、エアパッド60、66、74のそれぞれの摺動面60B、66B、74Bと定盤64の対向面間の距離を適正に設定する。この場合、反力用エアパッド70は定盤64の左側面に設けられると共に、皿ばね69で定盤64の左側面方向に付勢されているので、定盤64の左側面に設けられている基準エアパッド66に反力が付与される。
【0018】これにより、Yキャリッジ52はX軸方向、Z軸方向への移動が拘束されてY軸方向のみに移動する。前記実施例では板ばね76で左側Yコラム52Bと左側脚部54Cを連結したが、これに限らず、ワイヤ等の他の連結部材を使用してもよい。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る座標測定機によれば、支持部材の熱変形を吸収して基準エアパッド部材の測定テーブルに対する反力を一定に維持すると共に、支持部材に連結されているYキャリッジの他方のコラムに支持部材の熱変形の影響を与えないようにすることができる。
【0020】従って、測定テーブルに直接ガイド部材を取り付けたり、測定テーブルに直接ガイド用の溝を加工する必要がないので、コスト低減を図ることができ、さらに、精度の悪化や定盤の強度不足を防止することができる。また、Yキャリッジの一対のコラムが支持部材に連結されているので、一対のコラムのねじれを防止することができる。」

(ウ)甲第4号証の図1、図2には、「右側脚部54A」の「垂直方向エアパッド60」及び「基準エアパッド66」の対が、Y軸方向に沿って前後2対設けられ、「左側Yコラム52B」の「垂直方向エアパッド74」と「反力用エアパッド70」のY軸方向の位置が、Y軸方向において前記2対の前記「垂直方向エアパッド60」及び「基準エアパッド66」の間に位置することが示されている。

(エ)甲第4号証の図7、8には、溝22の右側面と定盤14の右側部に、Yキャリッジ10の一方の脚部10Aのエアパッド18、18が「摺動自在に」(段落【0002】より)支持されていることが見て取れる。

<引用発明1-1>
よって、甲第4号証の上記(ア)及び図5、6には、次の発明(以下、「引用発明1-1」という。)が記載されていると認められる。
「X、Y、Z軸の3軸方向にプローブを移動して被測定物の形状を測定する3次元座標測定機であって、
3次元座標測定機はYキャリッジ10を備え、ガイド12は定盤14の表面や側面に取り付けられていて、ガイド12の両側部に、Yキャリッジ10の一方の脚部10Aのエアパッド18、18が摺動自在に支持され((ア)、段落【0002】より。)、Yキャリッジ10の他方の脚部10Bにはエアパッド20が設けられていて、他方の脚部10Bはエアパッド20を介して定盤14の表面に沿って移動し、これにより、Yキャリッジ10はガイド12に沿ってY軸方向に移動する((ア)、段落【0003】より。)、
3次元座標測定機((ア)、段落【0002】より。)。」

<引用発明1-2>
また、甲第4号証の段落【0003】の「尚、図5及び図6と同一類似部材については同一符号を付与して説明を省略する。」との記載を踏まえると、甲第4号証の上記(ア)及び図7、8には、次の発明(以下、「引用発明1-2」という。)が記載されていると認められる。
「X、Y、Z軸の3軸方向にプローブを移動して被測定物の形状を測定する3次元座標測定機であって、
3次元座標測定機はYキャリッジ10を備え((ア)、段落【0002】より。)、定盤14に溝22を加工し((ア)、段落【0004】より。)、溝22の右側面と定盤14の右側部に、Yキャリッジ10の一方の脚部10Aのエアパッド18、18が摺動自在に支持され((ア)、段落【0002】、図7、8より。)、Yキャリッジ10の他方の脚部10Bにはエアパッド20が設けられていて、他方の脚部10Bはエアパッド20を介して定盤14の表面に沿って移動し、これにより、Yキャリッジ10は定盤14の溝22に沿ってY軸方向に移動する((ア)、段落【0003】より。)、
3次元座標測定機((ア)、段落【0002】より。)。」

<甲第4号証に記載された技術的事項>
さらに、甲第4号証には、上記(イ)及び図2より、次の技術的事項(以下、「甲第4号証に記載された技術的事項」という。)が記載されていると認められる(甲第4号証の段落【0010】における「摺動面60A」は、誤記であるので、「摺動面60B」と読み替えた。段落【0013】における「定盤64の左側面に設けられている基準エアパッド66」も「定盤64の右側面に設けられている基準エアパッド66」の誤記であるので、そのように読み替えた。)。
「座標測定機50はYキャリッジ52及び支持部材54等を備えていて、Yキャリッジ52は右側Yコラム52A及び左側Yコラム52Bを有し、支持部材54は右側脚部54Aと左側脚部54Cを有していて、右左の脚部54A、54Cの下端部はそれぞれアーム54Bで連結され、アーム54Bは定盤64の底面に沿って延長されていて、右左の脚部54A、54Cはそれぞれ定盤64の右左の側面に沿って立設され((イ)、段落【0009】より。)、
右側Yコラム52Aに固定される右側脚部54Aの垂直方向エアパッド60の摺動面60Bは定盤64の右端部表面に沿って移動自在に支持され((イ)、段落【0010】より。)、また、右側脚部54Aの基準エアパッド66の摺動面66Bは定盤64の右側面に沿って移動自在に支持され((イ)、段落【0011】より。)、さらに、左側脚部54Cの反力用エアパッド70の摺動面の70Bは定盤64の左側面に沿って移動自在に支持され((イ)、段落【0012】より。)、反力用エアパッド70が定盤64の左側面に設けられたので、定盤64の右側面に設けられている基準エアパッド66に反力が付与され((イ)、段落【0013】より。)、左側Yコラム52Bの垂直方向エアパッド74の摺動面74Bは定盤64の左端部に沿って移動自在に支持され((イ)、段落【0014】より。)、
右側脚部54Aの垂直方向エアパッド60及び基準エアパッド66の対が、Y軸方向に沿って前後2対設けられ、左側Yコラム52Bの垂直方向エアパッド74と反力用エアパッド70のY軸方向の位置が、Y軸方向において前記2対の前記垂直方向エアパッド60及び基準エアパッド66の間に位置し(図1、図2より。)、
左側Yコラム52Bと左側脚部54Cを板ばね76等の連結部材で連結し、これにより、Yキャリッジ52はX軸方向、Z軸方向への移動が拘束されてY軸方向のみに移動((イ)、段落【0018】より。)し、
測定テーブルに直接ガイド部材を取り付けたり、測定テーブルに直接ガイド用の溝を加工する必要がないので、コスト低減を図ることができ、さらに、精度の悪化や定盤の強度不足を防止することができる((イ)、段落【0020】より。)、
座標測定機50((イ)、段落【0009】より。)。」

イ 甲第5号証(特開昭62-235502号公報)
甲第5号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「[産業上の利用分野]
本発明は3次元測定装置の駆動装置に係り、更に詳細には、回転駆動体をガイド部材から脱着可能にした3次元測定装置の駆動装置に関するものである。
[従来の技術]
最近、3次元測定装置を使用しているユーザの中には、被測定物の形状が複雑化し、ポイントトウポイントでは測定不可能なものもでてきている。しかも、これらの複雑化した形状の被測定物の測定には手動方式で対応しているのが現状である。すなわち、作業者がスピンドルを把持し、プローブを被測定物の形状に沿って倣う方法である。
この手動方式による方法をモータ駆動方式のラックとピニオンによるものにしても、ラックとピニオンの噛み合いをメカニカルに取り除かなければならない。その手段として、モータ駆動方式によるラックとピニオンによる方法では、出力ピニオンの手前にクラッチを用い、ピニオンを空回りさせてラックからピニオンを脱着させる手段やギヤボックス自体をラックを離し脱着させる手段を構じている。
[発明が解決しようとする問題点]
しかしながら、前述した従来のラックからピニオンを脱着させる手段のうち、前者は構造上バックラッシュを取り除くことが困難であること、後者は作業者の調整技能と繁雑さが問題となる。
本発明の目的は上記事情に鑑み問題を解決するために提案されたものであって、回転駆動体をガイド部材を脱着可能にすると共にバックラッシュを取り除いた3次元測定装置の駆動装置を提供するものである。」(第1頁左欄第13行-第2頁左上欄第5行)

(イ)「[実施例]
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
第1図、第2図および第3図を参照するに、3次元測定装置1における箱型形状の内部を空洞にしたベース3が床などに載置されている。ベース3上の第1図において左右両側部に、箱型形状の内部を空洞にした摺動案内部5,7が設けられている。この摺動案内部5,7はそれぞれ第2図において前後方向すなわちX軸方向に延伸してある。摺動案内部5,7上には、門型形状のメインキャレッジ9が設けられ、該メインキャレッジ9の左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けてある。摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けてあり、かつ摺動案内部7上にガイドレール17がX軸方向に延伸して設けてある。
上記構成により、X軸モータ15により摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿って、ガイドレール17に案内されてX軸方向に移動されてメインキャレッジ9がX軸方向に移動されることになる。」(第2頁右上欄第1行-同頁左下欄第2行)


(ウ)「ベース3上にあって、摺動案内部5と7との間にX軸方向に向けてワーク支持テーブル39が載置してあって、該ワーク支持テーブル39上に測定しようとする被測定物の図示省略のワークが載置される。X軸、Y軸およびZ軸に移動制御されるプローブ29がワークに当接して各種の測定データが測定されることになる。
前述したメインキャレッジ9の左右下部に移動自在に取付けられた摺動案内部材11,13の裏側には、各種のエアパッドが設けられている。
より詳細には、第1図および第3図に示すように、摺動案内部材11における上部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド41が設けてある。また、摺動案内部材11における下部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド43が設けてある。さらに、摺動案内部材13における上部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド45が設けてある。摺動案内部材13における下部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド47が設けてある。同様に、摺動案内部材13における左部上側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド49が設けてある。また、摺動案内部材13における右部下側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド51が設けてある。
上記構成により、エアパッド49とエアパッド51に図示省略のエア供給装置から乾燥したエアを供給することによって、エアパッド49と摺動案内部7の左外側との間にエア膜が形成されると共に、エアパッド51と摺動案内部7の右外側との間にエア膜が形成される。その結果、セントラルキャレッジ19がメインキャレッジ9の上部ビーム9Uのほぼ真中にある場合には、摺動案内部5,7に対して、摺動案内部材11,13がX軸方向にスムーズに移動される状態となる。」(第2頁右下欄第19行-第3頁右上欄第15行)

(エ)「次に、摺動案内部材13の後方部に設けたX軸モータ15により、摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿ってガイドレール17に案内されてX軸方向に移動されてメインキャレッジ9が移動される。より詳細には、第4図および第5図には、X軸モータ15の駆動部が示されていて、X軸モータ15は支持体53上に取付けてある。X軸モータ15の出力軸55は支持体53内に設けた円筒形状の連結部材57を介して、カップリング59の一方部59Aに連結してある。カップリング59の他方部59Bはシャフト61とシャフト61の上方に設けた固定部材63との間に介設されてボルト65により締結してある。カップリング59の一方部59Aと他方部59Bとは連結してある。カップリング59の一方部59Aはベアリング67を介して支持体53に回転自在に支承してある。シャフト61の先端側には駆動ローラ69がテーパピン71により止めてある。シャフト61は複数例へば2個のベアリング73を介して支持体53に回転自在に支承してある。
上記構成により、X軸モータ15を駆動させると、出力軸55よりカップリング59を介してシャフト61に回転が伝達されて駆動ローラ69が回転されることになる。
前記支持体53は駆動ローラ69を支持し、かつ第5図において上方へ延在してあって支持体53の一部第5図において後方右側で枢軸75に枢支てある。枢軸75は摺動案内部材13に設けてある。前記枢軸75には従動ローラ77を支持する揺動体79が枢支してある。
第4図に示してあるように、揺動体79内には従動ローラ77をテーパピン81で止めているシャフト83が設けてあって、シャフト83は複数例えば2個のベアリング85を介して揺動体79に回転自在に支承してある。第4図において上部のベアリング85は上方よりロックナット87で締付けてある。なお、ベアリング85間は2個のカラー89が設けてあり、ベアリング85の動きを阻止してある。
前記支持体53が第5図において上方へ延在した突出体53Tの上端にはボルト91が締結してある。また、前記揺動体79が第5図において上方へ延在した突出体79Tの上端にはボルト93が締結してある。ボルト91とボルト93との間には、解放用スプリング95が設けてあり、該解放用スプリング95は、枢軸75を支点として駆動ローラ69と従動ローラ77のガイドレール17に対する押圧力を調整するものである。さらに、摺動案内部材13の第5図において左側には、エアシリンダ97が複数本のボルト99で取付けてある。エアシリンダ97の先端第5図において右側にプランジャ101が設けてある。エアシリンダ97を作動させることにより、プランジャ101が揺動体79の突出体79Tを押し付けて、枢軸75を支点しとして揺動体79が揺動し、従動ローラ77をガイドレール17に押圧させる押圧力を調節出来るようにしてある。
上記構成により、駆動ローラ69と従動ローラ77とでガイドレール17を挾み込み、X軸モータ15を駆動させて駆動ローラ69を回転させると、摺動案内部材13はガイドレール17に案内されてX軸方向に移動されることになる。」(第3頁右下欄第12行-第4頁左上欄第16行)

(オ)「前記駆動ローラをピニオン、ガイドレールをラックとしても何等実施例の実施態様は変らずに、バックラッシュを取り除いた駆動を行なうことができる。」(第4頁右下欄第12-15行)

(カ)「[効果]
以上のごとき実施例の説明から理解されるように、本発明によれば、回転駆動体をガイド部材から容易にかつ簡単に脱着させることができる効果を奏する。さらに、ガイド部材と回転駆動体とのバックラッシュを取り除いて駆動させることができる。しかも、駆動部をセットする時もワンタッチ装着が可能である。延いては、駆動部の脱着作業に対して、作業者の工数が著しく軽減できかつ従来に比べて短時間で行なうことができる。」(第4頁右下欄第20行-第5頁左上欄第9行)

よって、甲第5号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「3次元測定装置1であって、
ベース3上の左右両側部に、摺動案内部5,7が設けられ、この摺動案内部5,7はそれぞれX軸方向に延伸し、摺動案内部5,7上には、門型形状のメインキャレッジ9が設けられ、該メインキャレッジ9の左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けてあり、摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けてあり、かつ摺動案内部7上にガイドレール17がX軸方向に延伸して設けてあり、
X軸モータ15により摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿って、ガイドレール17に案内されてX軸方向に移動されてメインキャレッジ9がX軸方向に移動されることになり((イ)より。)、
ベース3上にあって、摺動案内部5と7との間にX軸方向に向けてワーク支持テーブル39が載置してあって、該ワーク支持テーブル39上に測定しようとする被測定物のワークが載置され、X軸、Y軸およびZ軸に移動制御されるプローブ29がワークに当接して各種の測定データが測定されることになり、
メインキャレッジ9の左右下部に移動自在に取付けられた摺動案内部材11,13の裏側には、各種のエアパッドが設けられ、より詳細には、摺動案内部材11における上部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド41が設けてあり、また、摺動案内部材11における下部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド43が設けであり、さらに、摺動案内部材13における上部左側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド45が設けてあり、摺動案内部材13における下部右側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド47が設けてあり、同様に、摺動案内部材13における左部上側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド49が設けてあり、また、摺動案内部材13における右部下側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド51が設けてあり、
エアパッド49とエアパッド51にエア供給装置から乾燥したエアを供給することによって、エアパッド49と摺動案内部7の左外側との間にエア膜が形成されると共に、エアパッド51と摺動案内部7の右外側との間にエア膜が形成され((ウ)より。)、
摺動案内部材13の後方部に設けたX軸モータ15により、摺動案内部材11,13がベース3上の摺動案内部5,7に沿ってガイドレール17に案内されてX軸方向に移動されてメインキャレッジ9が移動され、X軸モータ15を駆動させると、駆動ローラ69が回転され、枢軸75は摺動案内部材13に設けてあり、前記枢軸75には従動ローラ77を支持する揺動体79が枢支してあり、解放用スプリング95は、枢軸75を支点として駆動ローラ69と従動ローラ77のガイドレール17に対する押圧力を調整するものであり、駆動ローラ69と従動ローラ77とでガイドレール17を挾み込み、X軸モータ15を駆動させて駆動ローラ69を回転させると、摺動案内部材13はガイドレール17に案内されてX軸方向に移動されることになる((エ)より。)、
3次元測定装置1((イ)より。)。」

ウ 甲第6号証(特開昭62-235513号公報)
甲第6号証には、甲第5号証における上記「(ア)」、「(カ)」を、次の「(ア)’」、「(カ)’」に書き替えた他は、甲第5号証の上記「(イ)」-「(エ)」と同様の記載がなされている。
よって、甲第6号証には、上記「イ」の甲第5号証に記載された技術的事項と同じ技術的事項が記載されているものと認められる。

(ア)’「[産業上の利用分野]
本発明は3次元測定装置の駆動装置に係り、更に詳細には、ガイド部材の両サイドの平行度が悪くても移動フレームの直進性に与える影響を最小限に抑制した3次元測定装置の駆動装置に関するものである。
[従来の技術]
従来、3次元測定装置の駆動装置としては、ラックとピニオンとからなる駆動装置が用いられ、しかも、ラックの精度を上げ、組付時のラックの歯面に真直度に公差を用いている。また、ピニオンとラックの軸間距離を通常よりも大きくとり、そのために生じるバックラッシュを他の機構を用いて取り除いている。
[発明が解決しようとする問題点]
しかしながら、3次元測定装置などの真直度は数ミクロンメートルであるが、ピニオンをラックに押付けると、キャレッジの移動中にラックの真直度が機械の直進性に影響を与え、所定の精度がでないという問題がある。したがって、この部分の調整が困難かつサービス工数の増加となっているのである。
本発明の目的は上記事情に鑑み問題を解決するために提案されたものであって、ガイド部材の両サイドの平行度が悪くても、機械の直進性に与える影響を最小限に抑制し移動フレームを移動出来るように所定の精度を維持せしめた3次元測定装置の駆動装置を提供するものである。」(第1頁左下欄第18行-第2頁左上欄第6行)

(カ)’「[効果]
以上のごとき実施例の説明から理解されるように、本発明によれば、ガイド部材における真直度の加工精度がラフであっても、および、ガイド部材における組付時の平行度の加工精度がラフであっても、移動フレームの直進性すなわち機械の直進性が所定の精度を維持して移動することが出来る効果を奏する。
本発明によると、バックラッシュが取り除かれると共に、機械摺動における真直度に影響を与えないで、移動フレームが移動される。」(第4頁右下欄第18行-第5左上欄第8行)

エ 甲第7号証(特開昭62-235514号公報)
甲第7号証には、甲第5号証における上記「(ア)」、「(カ)」を、次の「(ア)’’」、「(カ)’’」に書き替え、かつ、甲第5号証における「駆動ローラ」を「ピニオン」とし、甲第5号証における「ガイドレール」を「ラック」とした他は、甲第5号証の上記「(イ)」-「(エ)」と同様の記載がなされている。
(ア)’’「[産業上の利用分野]
本発明は3次元測定装置の駆動装置に係り、更に詳細には、機械の直進性への影響を与えずにバックラッシュを取り除いた3次元測定装置の駆動装置に関するものである。
[従来の技術]
従来、3次元測定装置の駆動装置としては、最も多くラックとピニオンとからなる駆動装置が用いられている。しかも、バックラッシュを取り除く手段としては、2枚のピニオンを捩る手段と、ピニオンをラックに押付ける手段とが知られている。
[発明が解決しようとする問題点]
しかしながら、前述した従来の後者による手段は、エアパッドをその摺動部に備えている3次元測定装置では、ラック取付時の真直度と、ラック自体の精度とが直接機械の真直度に影響を与えるため用いられていない。
現在では3次元測定装置の駆動装置として前者の手段が使用されているが、組立調整が煩しく、またマニュアルスキャニング時すなわちギヤの脱着時には、さらに煩しく工数の増加と作業者の煩雑さを助長しているという問題がある。
本発明の目的は上記事情に鑑み問題を解決するために提案されたものであって、主にバックラッシュを自動的に取り除くようにした3次元測定装置の駆動装置を提供するものである。」(第1頁左下欄第11行-第1頁右下欄第18行)

(カ)’’「[効果]
以上のごとき実施例の説明から理解されるように、本発明によれば、ピニオンとラック間のバックラッシュを自動的に取り除くことができる効果を奏する。
さらに、本発明によると、ピニオンおよび回転体の脱着が可能で、しかもセットする時もワンタッチで装着することが可能である。その結果、作業者の工数が著しく軽減させることができる。
ラックにおける真直度の加工精度がラフであってもおよびラックにおける組付時の平行度の加工精度がラフであっても、移動フレームの直進性すなわち機械の直進性が真直度に影響を与えないで所定の精度を維持して移動できる。」(第4頁右下欄第5-18行)

オ 甲第7号証の2(特開昭61-97501号公報)
甲第7号証の2には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「〔発明の利用分野〕
本発明は、精密測定機の測定ヘッドの移動に係り、特に半導体露光装置や検査装置に用いられる高精度ウエハステージに好適な精密測定ヘッドの駆動方式に関するものである。」(第1頁左下欄第12-16行)

(イ)「〔発明の概要〕
上記の目的を達成するため、本発明は測定ヘッドの軸に案内バーを取りつけ、案内バーとローラの摩擦で測定ヘッドの移動を行う方式であり、その方法としては軸に直接ローラを押しつけて移動させる方式もあるが、本発明は軸の案内にエアベアリングを用いているため、ローラを軸に押しつけて駆動させると、軸に傷がついたり、微細なゴミが発生して軸と軸受のすき間に入り、走行精度を悪化させる要因となるため、案内バーを取りつけて、駆動させる方式としたものである。」(第1頁左下欄第17行-第2頁左上欄第2行)

したがって、上記(ア)、(イ)より、甲第7号証の2には、上記(ア)、(イ)の「本発明」と対比される方法として、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
「精密測定機の測定ヘッドの移動を行う方法としては軸に直接ローラを押しつけて移動させる方式もあるが、軸の案内にエアベアリングを用いているため、ローラを軸に押しつけて駆動させると、軸に傷がついたり、微細なゴミが発生して軸と軸受のすき間に入り、走行精度を悪化させる要因となる。」

カ 甲第8号証(特開平10-26203号公報)
甲第8号証には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レールと構造体とを、両者の摩擦力を利用して、レールの長手方向へ相対移動させる摩擦駆動機構に関する。詳しくは、構造体に駆動ローラを回転自在に支持し、この駆動ローラをレールに押し当て、その接触部に生じる摩擦を利用して、レールと構造体とをレールの長手方向へ相対移動させる摩擦駆動機構に関する。

(イ)「【0006】ところで、精密測定機器や精密工作機械などの精度向上に関する課題の1つに、駆動の直線運動性能(運動真直度、速度変動、ヒステリシス、振動など)の向上が挙げられる。近年、高精度の精密測定機器や精密工作機械などの駆動機構として、摩擦駆動機構の優位性が実証されたことに伴い、摩擦駆動機構が採用されることが多くなっている。しかし、その採用にあたっては、前記1)?3)の課題を解消するため、摩擦駆動機構を構成する各部品の加工精度を厳しく抑えることが前提となり、コスト的にも問題となる。」

(ウ)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の摩擦駆動機構は、レールと構造体とを、両者の摩擦力を利用して、レールの長手方向へ相対移動させる摩擦駆動機構において、前記構造体に、前記レールに接しかつ回転が付与される駆動ローラと、前記レールを挟んで前記駆動ローラとは反対側面にそのレールと所定の軸受隙間を隔てて配置された少なくとも1個以上の空気軸受とをそれぞれ設けたことを特徴とする。
【0009】このような構成によれば、空気軸受の軸受面とレールのガイド面とは、空気軸受から噴出された空気膜を介して非接触であるから、上記1)の課題を解消できる。つまり、バックアップローラを設ける必要がないから、駆動ローラの進行方向とバックアップローラの進行方向とにずれが生じて、双方のローラを支持するブラケットに歪みを生じさせたりすることもなく、ローラとレールとの間の微小なすべり量に変動が生じることも少なくできる。また、バックアップローラ側の回転に伴う抵抗および接触に伴う摩擦が無視できるから、駆動効率の向上がはかれる。」

(エ)「【0017】〔第1実施形態〕図2に第1実施形態の摩擦駆動機構Aの斜視図を、図3にその断面をそれぞれ示す。これらの図に示すように、前記構造体2には、ブラケット6を介して、前記レール1に接しかつ回転が付与される駆動ローラ3と、この駆動ローラ3に回転を付与するモータ4と、前記レール1を挟んで前記駆動ローラ3とは反対側面にそのレール1と所定の軸受隙間を隔てて配置された2個の空気軸受11とがそれぞれ設けられている。」

(オ)「【0030】以上の各実施形態においては、2つの空気軸受11を備えていたが、空気軸受11は1個、あるいは、3個以上でもよい。また、上記実施形態においては、レール1に対して構造体2が移動する構成であったが、構造体2に対してレール1が移動する構造であってもよい。
【0031】
【実施例】図9は、本発明の摩擦駆動機構を用いた1軸の直動テーブル装置を示している。同図に示すように、ベース61上には、ガイドレール62と空気軸受(図示省略)とからなる案内機構を介して構造体としてのテーブル63がガイドレール62の長手方向へ移動自在に設けられているとともに、ガイドレール62の間に前記レール1と、テーブル63の移動位置を検出するスケール64とがそれぞれ設けられている。テーブル63には、ジョイン65を介して前記第2実施形態の摩擦駆動機構Bが取り付けられている。
【0032】図10は摩擦駆動機構Bの詳細を示している。前記駆動ローラ3の軸3Aは、ローラ取付ブラケット6にラジアルベアリング71を介して回転自在に支持されているとともに、前記モータ4に直結されている。また、前記空気軸受11およびシリンダ装置21は、ピポット軸受を構成する鋼球14および調整ボルト13を介して前記ローラ取付ブラケット6に支持されている。なお、ジョイン65は、テーブル63の移動方向に対して垂直な面内において変位可能で、ガイドレール62とレール1とのアライメント誤差などに起因する外乱、つまり、テーブル63の運動方向への推力以外の外乱を吸収することができるようになっている。


よって、甲第8号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「精密測定機器に採用される摩擦駆動機構であって((イ)、段落【0006】より。)、摩擦駆動機構は、レール1に接しかつ回転が付与される駆動ローラ3と、この駆動ローラ3に回転を付与するモータ4と、前記レール1を挟んで前記駆動ローラ3とは反対側面にそのレール1と所定の軸受隙間を隔てて配置された2個の空気軸受11とがそれぞれ設けられ((エ)、段落【0017】より。)、
このような構成により、バックアップローラを設ける必要がない((ウ)、段落【0009】より。)、
摩擦駆動機構((イ)、段落【0006】より。)。」

(2)本件発明1について(引用発明1-2を主引用例とした場合)
ア 対比
事案に鑑み、先ず、本件発明1と引用発明1-2とを対比する。
(ア)引用発明1-2における「X、Y、Z軸の3軸方向にプローブを移動して被測定物の形状を測定する3次元座標測定機」は、「プローブ」を「被測定物」に接触させて三次元座標を測定して、「被測定物」の形状を測定するものであることは明らかであって、本件発明1における「測定プローブを測定対象物に接触させることにより測定対象物の三次元座標を測定する三次元座標測定装置」に相当する。

(イ)引用発明1-2における「定盤14」は、「形状を測定する」対象である「被測定物」を載せ置くためのものであることは明らかであって、本件発明1における「前記測定対象物を載せ置く測定領域を有する定盤」に相当する。

(ウ)引用発明1-2における「一方の脚部10A」が、本件発明1における「第一の支持柱」に相当する。

(エ)引用発明1-2における「他方の脚部10B」が、本件発明1における「第二の支持柱」に相当する。

(オ)引用発明1-2における「Yキャリッジ10」は、「一方の脚部10A」と「他方の脚部10B」とを有しており、「Y」「軸」「方向にプローブを移動」させるものであることは明らかであるといえる。
そして、引用発明1-2における「Yキャリッジ10は定盤14の溝22に沿ってY軸方向に移動する」のであるから、甲第4号証の図7、8の「従来の座標測定機の側面図」の左右方向が「X」「軸」方向に対応することは明らかであって、「Yキャリッジ10」の「一方の脚部10A」と「他方の脚部10B」は、「定盤14」を、甲第4号証の図7、8の「従来の座標測定機の側面図」の左右方向、つまり、「X」「軸」方向に跨いでいるといえる。そして、「Yキャリッジ10」が被測定物に接触させるプローブを移動させるものである以上、それが跨ぐ範囲が「測定領域」を含むものであることも明らかである。
よって、引用発明1-2における「Yキャリッジ10」が、本件発明1における「前記測定領域をX軸方向に跨いで第一の支持柱と第二の支持柱を有しており、且つ前記測定プローブを支持しながら移動する移動体」に相当するといえる。

(カ)引用発明1-2において、「Yキャリッジ10は定盤14の溝22に沿ってY軸方向に移動する」から、引用発明1-2における「定盤14」の「溝22の右側面と定盤14の右側部」(及びこれらの間の定盤14の表面)により形成された部分が、本件発明1における「前記移動体を前記測定プローブの移動方向に案内するガイド」に相当する。

(キ)引用発明1-2では、「Yキャリッジ10は定盤14の溝22に沿ってY軸方向に移動する」のであるから、引用発明1-2における「Yキャリッジ10」が「Y軸方向に移動」させる駆動部を有していることは明らかである。よって、このように「Y軸方向に移動」させる駆動部が、本件発明1における「前記移動体をY軸方向に移動させる駆動部」に相当する。

(ク)引用発明1-2では、上記「(オ)」で述べたとおり、甲第4号証の図7、8の「従来の座標測定機の側面図」の左右方向が「X」「軸」方向に対応することは明らかである。
そして、引用発明1-2では「Yキャリッジ10は定盤14の溝22に沿ってY軸方向に移動する」のであるから、引用発明1-2における「定盤14」の「溝22の右側面と定盤14の右側部」が、「Y」「軸」方向に(つまり、「X」「軸」方向に垂直に)一対のガイド面を形成していることは明らかである。
よって、引用発明1-2における「定盤14」の「溝22の右側面と定盤14の右側部」が、本願発明1における「X軸方向に垂直な一対のガイド面」に相当するといえる。

(ケ)上記「(ウ)」、「(ク)」を踏まえると、引用発明1-2における「Yキャリッジ10の一方の脚部10Aのエアパッド18、18」は、「定盤14」の「溝22の右側面と定盤14の右側面」に「摺動自在に支持され」ているから、本件発明1における「前記ガイドにおいて、前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持し、前記駆動部に対して前記Y軸方向に沿って前後2対ある支持部」とは、「前記ガイドにおいて、前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持する支持部」の点で共通する。

よって、引用発明1-2と本件発明1とは、次の一致点、相違点を有するものと認められる。
(一致点)
「測定プローブを測定対象物に接触させることにより測定対象物の三次元座標を測定する三次元座標測定装置であって、
前記測定対象物を載せ置く測定領域を有する定盤と、
前記測定領域をX軸方向に跨いで第一の支持柱と第二の支持柱を有しており、且つ前記測定プローブを支持しながら移動する移動体と、
前記移動体を前記測定プローブの移動方向に案内するガイドと、
前記移動体をY軸方向に移動させる駆動部と、
前記ガイドにおいて、前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持する支持部と、を有する、
三次元座標測定装置。」

(相違点1)
本件発明1では、「前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持する支持部」が、「前記Y軸方向に沿って前後2対ある」の対し、引用発明1-2では、甲第4号証の図7、8は「従来の座標測定機の側面図」に過ぎないため、引用発明1-2における「Yキャリッジ10」の「一方の脚部10Aのエアパッド18、18」のうち、「溝22の右側面と定盤14の右側面」の「エアパッド18、18」が、定盤14の溝22に沿ってY軸方向に何対あるか確定することができない点。


(相違点2)
本件発明1では、「前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持する支持部」が、「前記駆動部に対して」前記Y軸方向に沿って前後2対あり、「前記駆動部は、前記Y軸方向において前記前後2対の前記支持部の間に位置し、且つ前記一対のガイド面の一方に当接し」ているの対し、引用発明1-2では、「Yキャリッジ10」が駆動部を有していることは明らかであるものの、引用発明1-2の駆動部が「Yキャリッジ10」のどこに設けられているか不明であり、しかも、甲第4号証の図7、8は「従来の座標測定機の側面図」に過ぎないため、引用発明1-2における「Yキャリッジ10」の「一方の脚部10Aのエアパッド18、18」のうち、「溝22の右側面と定盤14の右側面」の「エアパッド18、18」が、駆動部に対してどのような位置関係にあるか特定できない点。

(相違点3)
本件発明1では、「前記第二の支持柱における前記Y軸方向の位置は、前記前後2対の前記支持部の間に位置する」のに対し、引用発明1-2では、「他方の脚部10Bはエアパッド20を介して定盤14の表面に沿って移動」するものの、「Yキャリッジ10」の「一方の脚部10Aのエアパッド18、18」との位置関係を特定できない点。

イ 判断
事案に鑑みて、先ず相違点2について検討する。
(ア)甲第4号証には、上記相違点2に関して、「座標測定機50はYキャリッジ52及び支持部材54等を備えていて、Yキャリッジ52は右側Yコラム52A及び左側Yコラム52Bを有し」、「右側Yコラム52Aに固定される」「右側脚部54Aの基準エアパッド66の摺動面66Bは定盤64の右側面に沿って移動自在に支持され」、「右側脚部54Aの」「基準エアパッド66」が、「Y軸方向に沿って前後」に「2」つ「設けられ、左側Yコラム52Bの垂直方向エアパッド74」の「Y軸方向の位置が、Y軸方向において前記2」つの「基準エアパッド66の間に位置」する構成が記載されている。

(イ)甲第5号証には、上記相違点2に関して、「3次元測定装置1」における「門型形状のメインキャレッジ9」の「左右下部には、それぞれ摺動案内部材11,13がX軸方向に沿って移動自在に取付けてあり、摺動案内部材13の後方部には、X軸モータ15が設けてあり、かつ摺動案内部7上にガイドレール17がX軸方向に延伸して設けてあり」、「摺動案内部材13における右部下側の裏側には、X軸方向に沿って一定間隔毎に複数のエアパッド51が設けてあり」、「枢軸75には従動ローラ77を支持する揺動体79が枢支してあり、解放用スプリング95は、枢軸75を支点として駆動ローラ69と従動ローラ77のガイドレール17に対する押圧力を調整」し、「駆動ローラ69と従動ローラ77とでガイドレール17を挾み込み、X軸モータ15を駆動させて駆動ローラ69を回転させると、摺動案内部材13はガイドレール17に案内されてX軸方向に移動される」構成が記載されている。

(ウ)甲第6号証に記載されている技術的事項は、甲第5号証に記載された技術的事項と同じである(「(1)」「ウ」参照。)から、甲第6号証には、上記相違点2に関して、上記「(イ)」と同じ構成が記載されている。

(エ)甲第7号証には、上記相違点2に関して、甲第5、6号証に記載された上記「(イ)」の構成における「駆動ローラ69」と「ガイドレール17」を、それぞれ「ピニオン」と「ラック」とした構成が示されている。

(オ)甲第7号証の2には、上記相違点2に関して、「軸に直接ローラを押しつけて移動させる方式もあるが、軸の案内にエアベアリングを用いているため、ローラを軸に押しつけて駆動させると、軸に傷がついたり、微細なゴミが発生して軸と軸受のすき間に入り、走行精度を悪化させる要因となる。」ことが記載されている。

(カ)甲第8号証には、上記相違点2に関して、「レール1に接しかつ回転が付与される駆動ローラ3と、この駆動ローラ3に回転を付与するモータ4と、前記レール1を挟んで前記駆動ローラ3とは反対側面にそのレール1と所定の軸受隙間を隔てて配置された2個の空気軸受11とがそれぞれ設けられ」た「摩擦駆動機構」が、「精密測定機器に採用される」ことが記載されている。

(キ)しかし、甲第4-8号証の何れにも、上記相違点2に係る本件発明1の構成である「前記X軸方向に垂直な一対のガイド面を挟み込むことにより、前記ガイドに対して前記第一の支持柱を支持する支持部」が、「前記駆動部に対して」前記Y軸方向に沿って「前後」2対あり、「前記駆動部は、前記Y軸方向において前記前後2対の前記支持部の間に位置し、且つ前記一対のガイド面の一方に当接し」ている構成に相当する構成は記載されていない。

(ク)また、甲第4-8号証には、上記相違点2に係る本件発明1の構成について、断片的な構成は散見されるものの、これらの断片的な構成を有機的に組み合わせて上記相違点2に係る本願発明1の駆動部の構成とすることは、当業者といえども、容易になし得たこととはいえない。

ウ まとめ
以上のとおり、相違点1、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、当業者が、甲第4号証に記載された発明(引用発明1-2)、及び、甲第4号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本件発明1について(引用発明1-1を主引用例とした場合)
引用発明1-1における「定盤14の表面や側面に取り付けられ」た「ガイド12」は、引用発明1-2における「定盤14」に「加工」した「溝22の右側面」、「定盤14の右側部」(及びこれらの間の定盤14の表面)により形成された部分に対応する。また、引用発明1-1における「ガイド12の両側面」は、引用発明1-2における「溝22の右側面」及び「定盤14の右側部」に対応する。また、引用発明1-1については、図5、6が対応する。
したがって、本件発明1と引用発明1-1との対比、判断は、上記対応関係を踏まえれば、上記「(2)」における引用発明1-2との対比、判断と同様である。
よって、本件発明1は、当業者が、甲第4号証に記載された発明(引用発明1-1)、及び、甲第4号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)本件発明2-6について
本件発明2-6は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記「(2)」、「(3)」で述べたのと同様の理由により、当業者が、甲第4号証に記載された発明(引用発明1-1,引用発明1-2)、及び、甲第4号証ないし甲第8号証に記載された技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。

(5)まとめ
以上のとおり、請求項1-6に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。

第5 異議申立人の主張について
1 理由1、2について
異議申立人の主張する理由1、2が理由のないことは、上記「第4」「1」、「2」で述べたとおりである。

2 理由3について
(1)本件発明1について
ア 異議申立人が異議申立書に記載した相違点1(異議申立書第36頁第18-23行)及び相違点2(異議申立書第36頁第24行-第37頁第2行)についての異議申立人の主張は、次のとおりのものである。
(ア)甲第7号証の2について「・・・ここに言う問題とは、ローラ駆動により軸に傷がつくこと、また、微細なゴミが発生して軸と軸受けのすき間に入ることにより、走行精度が悪化するというものである。この点に鑑みれば、ローラが押しつけられる面と、エアベアリング(エアパッド)が対向する面とが同一となることは明らかである。したがって、駆動装置が当接する面が、エアパッドが対向する面と同一となるようにすることは、技術常識に過ぎないものである。」(異議申立書第38頁第3-10行)

(イ)相違点1(異議申立書第36頁第18-23行)について、「すなわち、甲4発明に対し、甲5号証ないし甲7号証に記載されるような駆動装置に係る周知技術を適用すること、・・・は当業者が通常実施する技術事項である。そして、その際に、甲7の2号証に記載されるような技術常識を考慮してガイド12又は溝22によって設けられたガイド12’において、エアパッド18と同一面に駆動装置を当接させるように構成することも、当業者が通常実施する技術事項である。」(異議申立書第38頁第11-19行)

(ウ)相違点2(異議申立書第36頁第24行-第37頁第2行)について、「すなわち、甲4発明において、甲5号証ないし甲7号証に記載の駆動装置を適用するに際し、更に、駆動装置と前後2対のエアパッド18、18との配置関係を、甲8号証の摩擦駆動機構から看取されるように、2個の空気軸受11(エアパッドに相当)を駆動装置に対して前後の関係とする程度のことは、当業者であれば容易になし得ることである。」(異議申立書第39頁第7-12行)

イ 異議申立人の主張に対する当審の判断
(ア)甲第7号証の2第3頁左上欄第10-14行には、異議申立人の主張する「問題」について、
「(1) 高精度加工されたZ軸表面に傷をつけることがない。
(2) ローラの転がりによって発生するゴミが、Z軸のエアベアリング面に侵入するおそれがないので、Z軸の走行精度が維持できる。」(丸数字の1、2を「(1)」、「(2)」で代替して記載した。)
と記載されている。
ここで、「ローラの転がりによって発生するゴミが、Z軸のエアベアリング面に侵入する」という問題は、「測定ヘッドの軸」の「エアベアリング」面と、「ローラ」を「押しつけ」る「軸」の面とが同一面でなくても起こり得ることであるから、「微細なゴミが発生して軸と軸受けのすき間に入ることにより、走行精度が悪化する」(上記「ア」「(ア)」)からといって、「ローラが押しつけられる面と、エアベアリング(エアパッド)が対向する面とが同一となる」との構成が導き出されることにはならない。
よって、「駆動装置が当接する面がエアパッドが対向する面と同一となるようにすること」(上記「ア」「(ア)」)が「技術常識」であるとはいえない。

(イ)甲第5-7号証に記載された技術的事項は、「3次元測定装置の駆動装置」として「ラックとピニオンとからなる駆動装置」を使用した場合に生ずる問題点を解決することを課題としている(上記「第4」「3」「(1)」「イ」「(ア)」「(カ)」、「(1)」「ウ」「(ア’)」「(カ’)」)、「(1)」「エ」「(ア’’)」「(カ’’)」)参照。)が、甲第4号証には、そもそも駆動部についての言及がないのであるから、甲第4号証に記載された発明に甲第5-7号証に記載された技術的事項を組み合わせる動機付けを見いだすことはできない。
また、上記「(ア)」で述べたとおり、「駆動装置が当接する面がエアパッドが対向する面と同一となるようにすること」が「技術常識」であるともいえない。

(ウ)甲第8号証に記載された技術的事項は、「バックアップローラを設ける必要がない」(上記「第4」「3」「(1)」「カ」の段落【0009】参照。)ようにするため、「駆動ローラ3」と「空気軸受11」とを用いることを要件としている。
これに対し、甲第5-7号証に記載された技術的事項は、「駆動ローラ69(甲第7号証では、ピニオン69)と従動ローラ77とでガイドレール17を挾み込」み、「枢軸75に」「従動ローラ77を支持する揺動体79」を「枢支し」、「解放用スプリング95」によって「枢軸75を支点として駆動ローラ69と従動ローラ77のガイドレール17に対する押圧力を調整する」ことで、「ラックとピニオンとからなる駆動装置」を使用した場合に生ずる問題点を解決しているのであるから、仮に、甲4号証に記載された発明において、甲5ないし甲7号証に記載の駆動装置を適用することが動機付けられたとしても、更に、甲8号証に記載された技術的事項を適用し、従動ローラ77(甲第8号証における「バックアップローラ」に対応する)を設けないようにすることは、甲第5-8号証に記載された解決課題とかけ離れて、複数の構成を無目的に組み合わせるに等しく、当業者といえども、動機付けられないことである。

ウ まとめ
以上のとおり、本件発明1についての異議申立人の主張(理由3)は、理由がなく、採用できない。

(2)本件発明2-6について
本件発明2-6は、本件発明1を減縮した発明であるから、上記「(1)」で述べたのと同様の理由により、異議申立人の主張(理由3)は、理由がなく、採用できない。

第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-11-22 
出願番号 特願2016-15852(P2016-15852)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01B)
P 1 651・ 537- Y (G01B)
P 1 651・ 55- Y (G01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
中村 説志
登録日 2018-02-16 
登録番号 特許第6288477号(P6288477)
権利者 株式会社東京精密
発明の名称 三次元座標測定装置  
代理人 松浦 憲三  
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