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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08F
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08F
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C08F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08F
管理番号 1346796
異議申立番号 異議2017-700981  
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2019-01-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-10-12 
確定日 2018-12-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第6114459号発明「メタクリル系樹脂」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6114459号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨

1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6114459号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2016-235777号、以下「本願」という。)は、平成28年12月5日(優先権主張:平成28年3月15日、特願2016-51504号)に出願人旭化成株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成29年3月24日に特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、平成29年4月12日に特許掲載公報が発行されたものである。

2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成29年10月12日に特許異議申立人高瀬彌平(以下「申立人」という。)により「特許第6114459号の特許請求の範囲の全請求項に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。

3.以降の経緯
以降の手続の経緯は以下のとおりである。

平成29年12月21日付け 取消理由通知・審尋
平成30年 3月12日 意見書(特許権者)・回答書
平成30年 4月25日 上申書(申立人)
平成30年 4月27日付け 取消理由通知(決定の予告)
平成30年 7月 6日 意見書(特許権者)
平成30年 8月 8日付け 審尋(特許権者あて)
平成30年 8月15日 上申書(申立人)
平成30年 9月 6日 回答書(特許権者)
平成30年10月 4日 上申書(申立人)

第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第12号証を提示し、申立書における取消理由に係る主張を当審で整理すると、概略、以下の取消理由1ないし4が存するとしているものと認められる。

取消理由1:本件発明1ないし8は、いずれも、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2:本件発明1ないし8は、いずれも、甲第1号証ないし甲第12号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由3:本件発明1ないし8は、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に照らしてその解決課題が解決するか否か不明であり、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1ないし8の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由4:本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件特許に係る「メタクリル系樹脂」を当業者が製造することができるように記載されていないから、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第4項第1号の規定を満たしていない特許出願にされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2014-28956号公報
甲第2号証:特開平9-324016号公報
甲第3号証:特開平9-151218号公報
甲第4号証:特開2015-135355号公報
甲第5号証:特開2001-151814号公報
甲第6号証:特開2005-281589号公報
甲第7号証:特開2015-108161号公報
甲第8号証:特開2001-233919号公報
甲第9号証:特開2014-98117号公報
甲第10号証:国際公開第2015/79694号
甲第11号証:特開2015-105332号公報
甲第12号証:特開2008-191426号公報
(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲12」と略していう。)

第3 当審が通知した取消理由(決定の予告)の概要
当審が平成30年4月27日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概略は、以下のとおりである。

「特許権者が提示した意見書及び回答書の内容を踏まえて再度検討しても、当審は、
申立人が主張する上記取消理由2及び3により、依然として、本件発明1ないし8についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。
・・(中略)・・

1.取消理由3について
・・(中略)・・
エ.小括
以上を総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、当業者が、たとえその技術常識に照らしても、本件発明につき、本件解決課題、特に従来技術に比してメタクリル系樹脂(及びその成形体)が色調に優れる点を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。
したがって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし8の記載では、同各項に記載された事項で特定される本件発明1ないし8が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものということはできない(知財高裁平成17年(行ケ)10042号判決参照。)。

(3)まとめ
よって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし8の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしていない。

2.取消理由2について
・・(中略)・・

オ.検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1及び3ないし6は、いずれも、甲1ないし甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明2は、甲1又は甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
さらに、本件発明7は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)取消理由2に係る検討のまとめ
よって、本件発明1ないし7は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、本件の請求項1ないし7に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

第6 むすび
以上のとおり、本件の請求項1ないし7に係る発明についての特許は、上記取消理由2により、取り消すべきものであり、また、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、上記取消理由3により、取り消すべきものである。」

第4 本件特許に係る請求項に記載された事項
本件特許に係る請求項1ないし8には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が、N-置換マレイミド系構造単位(B-1)、及びラクトン環構造単位(B-2)からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含むメタクリル系樹脂であり、
ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり、
前記メタクリル系樹脂のメタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下であり、
前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である、
ことを特徴とする、メタクリル系樹脂。
【請求項2】
前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定した680nmにおける透過率が90%以上である、請求項1に記載のメタクリル系樹脂。
【請求項3】
前記メタクリル系樹脂が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、メタクリル酸エステル単量体単位(A)を50?97質量%含有する、請求項1又は2に記載のメタクリル系樹脂。
【請求項4】
前記メタクリル系樹脂が、前記メタクリル系樹脂を100質量%として、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3?30質量%と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C):0?20質量%と、を含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂。
【請求項5】
前記(B)構造単位の含有量が、前記(B)構造単位と前記(C)単量体単位との合計量を100質量%として、45?100質量%である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂。
【請求項6】
前記(C)単量体単位が、アクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる少なくとも一種の構造単位を含む、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂。
【請求項7】
光弾性係数が-2×10^(-12)?+2×10^(-12)Pa^(-1)である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂。
【請求項8】
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したZ平均分子量(Mz)と重量平均分子量(Mw)との比(Mz/Mw)が、1.3?2.0である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のメタクリル系樹脂。」
(以下、上記請求項1ないし8の各項に記載されたとおりの事項で特定される発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明8」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)

第5 当審の判断
当審は、
当審が通知した取消理由2及び3についてはいずれも理由がなく、また、申立人が主張する上記取消理由1ないし4についてもいずれも理由がないから、本件発明1ないし8についての特許は取り消すことはできず、維持すべきものである、
と判断する。
以下、事案に鑑み、申立人が主張する取消理由4につきまず検討し、引き続き、申立人が主張し当審が通知した取消理由3に係る検討、特許法第29条に係る取消理由である申立人が主張する取消理由1及び2並びに当審が通知した取消理由2を併せての検討の順で順次検討する。

1.申立人が主張する取消理由4について

(1)検討
申立人が主張する取消理由4は、申立書の具体的主張(第45頁第12行?第46頁第24行)から要約すると、本件発明に係るTg、メタノール可溶分率及び不溶分のYIなる3種のパラメータで規定されたメタクリル系樹脂の製造方法につき、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、第一の態様及び第二の態様が具体的に記載されているのみであり、当該各態様の方法で製造された樹脂が実施例とされているものであって、その他の方法で製造されたものは比較例とされているところ、甲2に係る樹脂の製造方法が上記第一の態様又は第二の態様のものであるから、仮に、甲2に係る樹脂が本件発明に係る樹脂の上記3種のパラメータを具備しないものであるならば、本件発明に係る樹脂が、上記第一の態様又は第二の態様の方法により製造できるか否か不明であり、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、いわゆる実施可能要件に違反するというものと認められる。
しかるに、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、樹脂の製造方法につき、第一の態様及び第二の態様が具体的に記載されており、当該各態様の方法で製造された樹脂が実施例とされ、当該各実施例における樹脂が本件発明における上記3種のパラメータを具備することも記載されているのであるから、当該記載に照らして、当業者は、上記第一の態様又は第二の態様の方法により本件発明に係るメタクリル系樹脂を製造できるであろうと理解するのが自然であり、当該各方法では本件発明に係る樹脂を製造できないとすべき技術事項が存するものとも認められない。
(なお、甲2に係る製造方法による樹脂との対比に基づく主張は、特許性(新規性進歩性等)に係る検討における引用発明の認定に係るものと認められ、上記第一の態様又は第二の態様の方法により製造できるか否か不明であるとの疑義に基づくものであるから、実施可能要件における論証としては適当でない。)
してみると、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明に係るメタクリル系樹脂を当業者が製造できるように、すなわち、本件発明を当業者が実施できるように記載したものというべきものであるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしているものである。

(2)小括
したがって、申立人が主張する上記取消理由4は理由がない。
(よって、先の取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)において、この理由につき通知しなかった。)

2.申立人が主張し、当審が通知した取消理由3について

(1)本件発明の解決しようとする課題
本件発明の解決しようとする課題(以下「本件解決課題」という。)は、本件特許明細書の発明の詳細な説明(【0007】?【0011】)の記載からみて、光学用途に使用されるような成形体、特に光路長が長いレンズなどの成形体とする場合に、耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、色調及び透明性に優れ、成形性に優れるメタクリル系樹脂の提供にあるものと認められる。

(2)本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載内容

ア.実施例(比較例)に係る部分以外の部分の記載について
本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分以外の部分(【0001】?【0142】)の記載を検討すると、背景技術として、メタクリル系樹脂に残存するN-置換マレイミド単量体の低減化及び成形加工時等の加熱により発生するマレイミド類単量体を低減化し、樹脂(成形体)の着色を抑制する技術が、本願出願時(優先日)に存していたことが開示されており(【0002】?【0005】)、本件発明のメタクリル系樹脂は、メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7であり、上記のYIの測定における条件と同じ条件で測定した680nmにおける透過率が、90%以上であることにより、光学用途として好適な成形品を得ることができることが記載されている(【0057】?【0058】)ものの、本件発明のメタクリル系樹脂が、本件解決課題、特に上記背景技術のものに比して色調に優れる点を解決できると当業者が直ちに認識できるような作用機序に係る具体的記載はない。

なお、本件の請求項1に記載された上記「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」との点は、「メタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下」(0重量%である場合を除く)である、すなわち「メタノール可溶分」なる着色要因となる成分を含有する本件発明のメタクリル系樹脂(又はその成形体)の色調とは、直接的に関係するものと直ちに認めることはできない。
そこで、当審は、平成29年12月21日付け及び平成30年8月8日付けで2回審尋を行ったところ、特許権者は、上記平成30年3月12日付け回答書の「4-2.「メタノール不溶分」の物性と本件発明の解決課題・効果との対応関係」の『(1)「メタノール不溶分」の「YI」及び「680nmにおける透過率」と本件発明に係る「メタクリル系樹脂」の「YI」及び「光透過率」との対応関係及び因果関係』の欄において、「一般的なメタクリル系樹脂において光透過率は波長依存性を有しており、波長と光透過率との関係を表すと、高波長側で高く、高波長から低波長に向かうにつれて低下する曲線を描」くことを前提とし、「本件発明のメタクリル系樹脂は、」「ディスプレイ等における使用に好適なものであり、高波長から低波長に亘って高い光透過率を備えるという光透過性を備える」とし、『メタクリル系樹脂のほとんどを構成する「メタノール不溶分」の「680nmにおける透過率」が高い、すなわち可視光帯の中で高波長領域での光透過率が高く、かつ、「YI」が小さい、すなわち可視光帯の中で青色に対応する波長領域での光透過率が高くその補色である黄色みが低い場合、メタクリル系樹脂は、高波長から低波長に亘って高い光透過率を備えることとなり、優れた光透過性を示』すとの説明・主張を提示し、さらに、平成30年9月6日付け回答書において、追試結果([図3])を提示し、もってメタノール可溶分量が5質量%以下であるメタクリル系樹脂において、メタノール不溶分のYIと樹脂全体のYIとの間には対応関係が存する旨主張している。
しかるに、上記主張につき検討するにあたり、まず上記追試結果につき確認すると、上記「波長と光透過率との関係」における「高波長側で高く、高波長から低波長に向かうにつれて低下する曲線を描」くとの前提につき、メタノール可溶分の含有量が5質量%以下で略同等の2種のメタクリル系樹脂又はそのメタノール不溶分が、いずれも、480nmを超える波長範囲においては、高波長側で高く、高波長から低波長に向かうにつれて徐々に低下し、480nm以下の波長領域においては、波長の減少に伴い急激に低下する傾向にあることが全体として看取できるとともに、メタノール不溶分のYIが3.5である「樹脂A」の方が、メタノール不溶分のYIが7以上の7.5である「樹脂B」に比して、480nm以下の波長領域における低下の度合いが小さく、結果的に光透過率が高い傾向にあることが看取できる。
してみると、可視光帯の中で、高波長領域(例えば650?700nm付近)の赤色光から中波長領域(例えば550?570nm付近)にある黄色光にかけての波長の減少に伴う光透過率の低下は徐々に低下するものであり、黄色光に対する補色である低波長領域(例えば435nm付近)にある青色光の光透過率が急激に低下するのであるから、特許権者の主張における上記前提とした点は妥当なものであるといえる。
(なお、特許権者が平成30年7月6日付けの意見書に添付した乙第1号証の記載からみても、上記光透過率の波長に対する傾向は、メタクリル系樹脂一般に係る傾向であるものとも認識できる。)
そして、メタクリル系樹脂において、その「メタノール不溶分」の「YI」が小さい場合、樹脂全体の低波長領域(例えば480nm以下の領域)の青色光の光透過率の急激な低下が抑制され、中波長領域(例えば550?570nm付近)の黄色光の光透過率に対する低下の度合いが小さくなり、黄色光の光透過率と青色光の光透過率との差異が小さくなって樹脂全体の「YI」についても低下し、結果的に樹脂全体につき高波長から低波長に亘る光透過率の変化量が小さくなる。
また、「メタノール不溶分」の「680nmにおける透過率」が高ければ、「メタノール不溶分」の「YI」が小さい場合に、メタクリル系樹脂全体の「680nmにおける透過率」についても高い傾向となるものと解される。
してみると、上記「メタノール不溶分」の「YI」が小さいことを具備した「メタクリル系樹脂」であれば、樹脂全体として「高波長から低波長に亘って(比較的)高い光透過率を備えることとなる」ということができ、さらに、上記「メタノール不溶分」の「YI」が小さいことと「680nmにおける透過率」が高い(90%以上)ことを同時に具備した「メタクリル系樹脂」であれば、樹脂全体として「高波長から低波長に亘って(さらに)高い光透過率を備えることとなる」と理解することができる。
したがって、特許権者の上記主張は、『「YI」が小さい、すなわち可視光帯の中で青色に対応する波長領域での光透過率が高くその補色である黄色みが低い』という点については、技術的に当を得ないものではあるが、上記「メタノール不溶分」に係る「YI」が小さいことを具備した「メタクリル系樹脂」又は「メタノール不溶分」に係る「YI」が小さいことと「680nmにおける透過率」が高い(90%以上)ことを同時に具備した「メタクリル系樹脂」であれば、樹脂全体として「高波長から低波長に亘って高い光透過率を備えることとなる」との点については、技術的に首肯できるものであり、採用すべきものといえる。
そして、上記特許権者の主張に基づき本件特許明細書の発明の詳細な説明における記載に照らすと、樹脂全体として「高波長から低波長に亘って高い光透過率を備えることとなる」ならば、その樹脂(成形体)につき、可視光領域全体に係る光透過率が高い、すなわち透明性が高くなり、波長による光透過率の変化が少ないことにより、樹脂(成形体)を透過する光の着色も少なくなるであろうことは、当業者に自明であるから、上記主張は、本件特許明細書の「イエローネスインデックス(YI)や透過率がこの範囲にあることにより、光学用途として好適な成形品を得ることができる。」(【0058】)との点の作用機序を明らかにしているものと理解することができるものであって、本件発明に係るメタクリル系樹脂が、メタノール可溶分の含有量が5質量%以下であることを前提として、さらに上記「メタノール不溶分」に係る「YI」が小さいことを具備した「メタクリル系樹脂」又は「メタノール不溶分」に係る「YI」が小さいことと「680nmにおける透過率」が高い(90%以上)ことを同時に具備した「メタクリル系樹脂」の場合に、上記解決課題における「光学用途に使用されるような成形体、特に光路長が長いレンズなどの成形体とする場合に、」「色調及び透明性に優れ」るであろうことは、当業者がその技術常識に照らして認識することができるものといえる。

イ.実施例(比較例)に係る部分の記載について
また、本件特許明細書の発明の詳細な説明のうち、実施例(比較例)に係る部分(【0143】?【0163】)の記載を検討すると、各実施例及び比較例に係る各結果の対比において、「メタノール可溶分量」、「メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」及び「680nmにおける透過率」につき、実施例のものが本件請求項1又は2に記載された範囲のものであるのに対して、比較例のものは範囲外のものであること、「フィルム成膜汚れ」なる成形性に係る点で実施例に係るものが優れること並びに耐熱性に係るTgの点及び光弾性係数CRの点で実施例と比較例との間で略同等であることが看取できるから、当該記載に基づき、本件発明が、上記解決課題における「耐熱性が高い」ものでありつつ「成形性に優れる」との点につき、解決できるものと当業者が認識することができるものといえる。

ウ.申立人の主張について
申立人は、上記平成30年10月3日付けの上申書において、特許権者の上記平成30年9月6日付けの回答書における主張につき、要約すると、「樹脂(A)」全体及び「樹脂(B)」全体の透過率におけるメタノール可溶分の影響が、いずれの樹脂においてもほぼ同程度であることの根拠が不明であるところ、メタノール可溶分の影響がほぼ同程度であることを前提とする主張であるのに対して、「図3」からみて、樹脂(A)及び樹脂(B)のメタノール可溶分量が同程度であるにもかかわらず、樹脂(A)及び(B)におけるメタノール不溶分のYI値や透過率に大きな差異があることにより、メタノール可溶分の影響が両樹脂で同程度でないことを裏付けている旨をもって、特許権者の主張は矛盾している旨主張しているので以下検討する。
申立人の上記主張は、メタノール可溶分に含まれる成分が着色に大きな影響を与えるという技術常識に基づくものであるが、メタノール不溶分においても正数の(0を超える)「YI」を有することからみて、樹脂全体には、着色に影響を与えるメタノール可溶分のみならず、メタノール不溶分中にも「YI」の上昇に寄与する成分、すなわち樹脂の着色に影響を与える成分が含有されているものと理解することができる(すなわち「YI」の上昇に寄与する成分は、「メタノール可溶分」のみではないものと理解できる。)。
そして、上記ア.でも説示したとおり、本件発明のもののようなメタクリル系樹脂の場合、樹脂全体であるかメタノール不溶分であるかを問わず、いずれも、480nmを超える波長範囲においては、高波長側で高く、高波長から低波長に向かうにつれて極めて徐々に低下し、480nm以下の波長領域においては、波長の減少に伴い急激に低下する傾向にある。
また、「YI」は、実質的に高波長及び中波長領域の光透過率に対する低波長領域の光透過率の差異量により決定される物性であって、高波長及び中波長領域の光透過率が変わらないとして、低波長領域の光透過率の低下(変化)量が少なければ「YI」値も小さくなるのであるから、これを前提に「図3」を検討すると、樹脂(A)及び(B)の各場合における樹脂全体とメタノール不溶分との対比において、いずれも、差分であるメタノール可溶分に由来して、450nm以上の波長領域においては、光透過率がわずかに(5%程度)改善されるものの、450nm以下の波長領域においては、同程度に光透過率を急激に低下させる(例えば400nm付近で20%程度低下、380nm付近で30%程度低下)傾向にあることが看取でき、メタノール可溶分に由来する光透過率の低下(変化)量の傾向については、実質的な差異があるものと認めることができない。
してみると、「樹脂(A)」全体及び「樹脂(B)」全体の透過率におけるメタノール可溶分の影響が、いずれの樹脂においてもほぼ同程度であることと理解するのが自然であって、さらに、メタノール不溶分に係る光透過率の波長に伴う変化傾向及びそれに連動する「YI」により、メタクリル系樹脂全体の光透過率の波長に伴う変化傾向及びそれに連動する「YI」が決定づけられるものであるとさえいうことができる。
したがって、申立人の上記上申書における主張は、技術的に当を得ないものであり、採用することができない。

エ.小括
以上を総合すると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載では、当業者が、その技術常識に照らして、本件発明につき、本件解決課題、特に従来技術に比してメタクリル系樹脂(及びその成形体)が色調に優れる点を解決できると当業者が認識できるものとはいうことができる。
したがって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし8の記載では、同各項に記載された事項で特定される本件発明1ないし8が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)10042号判決参照。)。

(3)まとめ
よって、本件請求項1及び同項を引用する請求項2ないし8の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、同法同条同項(柱書)に規定する要件を満たしているから、上記取消理由3は理由がない。

3.取消理由1及び2について
申立人が主張する取消理由1及び2並びに当審が通知した取消理由2につき、併せて検討する。

(1)前提事項
上記取消理由1及び2につき検討するにあたり、その前提となる事項につき検討する。

・本件発明における「メタノール可溶分」
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載(【0149】)からみて、本件発明における「メタノール可溶分」は、本件発明のメタクリル系樹脂をその全成分が溶解できる溶媒(クロロホルムなど)に溶解した溶液につき、樹脂(の高重合度成分)に対する貧溶媒である多量のメタノールに添加し、樹脂(の高重合度成分)のみを析出させ固体とし、未反応単量体、溶媒、熱分解生成物及び低重合度オリゴマーなどの低分子化合物(不純物)をメタノールに溶解した状態とすることにより分別する、いわゆる再結晶法による樹脂の精製を行う場合における低分子化合物(不純物)のメタノール溶液につき揮発性成分を留去してなるものであるから、「メタノール可溶分」は、難揮発性の未反応単量体、熱分解生成物及び低重合度オリゴマーなどの低分子化合物からなる不純物であるものと理解するのが自然である。
(なお、この点については、特許権者が上記平成30年3月12日付けの回答書(「4-1」(2))で認めているとおりである。)
したがって、以降の検討においては、本件発明における「メタノール可溶分」は「難揮発性の未反応単量体、熱分解生成物及び低重合度オリゴマーなどの低分子化合物からなる不純物」であることを前提として検討する。

(2)甲1ないし12に記載された事項及び甲1ないし6に記載された発明
以下、上記取消理由につき検討するにあたり、当該取消理由1及び2はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし12に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1ないし6に記載された発明の認定を行う。
なお、各甲号証の摘示における下線は、元々記載されているものを除き、当審が付したものである。

ア.甲1

(ア)甲1に記載された事項
上記甲1には、申立人が申立書第7頁第12行ないし第10頁上段(「表3」)で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(1a)
「【請求項1】
下記式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)50?95質量%と、下記式(2)で表されるN-置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)0.1?20質量%と、下記式(3)で表されるN-置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)0.1?49.9質量%とを含有し、繰り返し単位(X)、繰り返し単位(Y1)及び繰り返し単位(Y2)の合計量が100質量%である、アクリル系熱可塑性樹脂であって、
【化1】


(式中:R^(1)は、水素原子、直鎖状または分岐状の炭素数1?12のアルキル基、炭素数5?12のシクロアルキル基、炭素数6?14のアリール基、及び置換基を有する炭素数6?14のアリール基からなる群から選ばれるいずれかの化学基であり、同一分子中のR^(1)は同一でも異なっていてもよく、アリール基の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、直鎖状又は分岐状の炭素数1?12のアルコキシ基、及び直鎖状又は分岐状の炭素数1?12のアルキル基からなる群から選ばれるいずれかである。)
【化2】


(式中:R^(2)は、炭素数6?14のアリール基、又は置換基を有する炭素数6?14のアリール基を表し、同一分子中のR^(2)は同一でも異なっていてもよく、アリール基の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、直鎖状又は分岐状の炭素数1?12のアルコキシ基、及び直鎖状又は分岐状の炭素数1?12のアルキル基からなる群から選ばれるいずれかである。)
【化3】


(式中:R^(3)は、水素原子、炭素数1?12の直鎖状または分岐状のアルキル基、置換基を有する炭素数1?12のアルキル基、及び炭素数3?12のシクロアルキル基からなる群から選ばれるいずれかの化学基であり、同一分子中のR^(3)は同一でも異なっていてもよく、アルキル基の置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、及び直鎖状又は分岐状の炭素数1?12のアルコキシ基からなる群から選ばれるいずれかである。)光弾性係数(C)の絶対値が、3.0×10^(-12)Pa^(-1)以下であり、
ハロゲン原子の含有率が、当該アクリル系熱可塑性樹脂の質量を基準として0.47質量%未満である、
アクリル系熱可塑性樹脂。
・・(中略)・・
【請求項8】
下記の条件(iii)を満足する、請求項1?7のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
(iii)ガラス転移温度(Tg)が120℃以上である。
【請求項9】
下記の条件(iv)を満足する、請求項1?8のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂。
(iv)全光線透過率が85%以上である。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1項に記載のアクリル系熱可塑性樹脂からなる成形体。
【請求項11】
請求項10記載の成形体からなるシート又はフィルム。
・・(中略)・・
【請求項14】
請求項11?13のいずれか1項に記載のシート又はフィルムからなる偏光板保護フィルム。
【請求項15】
請求項11?13のいずれか1項に記載のシート又はフィルムからなる位相差フィルム。
【請求項16】
請求項11?13のいずれか1項に記載のシート又はフィルムからなる位相差板。
【請求項17】
請求項11?13のいずれか1項に記載のシート又はフィルムからなる透明プラスチック基板。
【請求項18】
請求項10に記載の成形体からなるレンズ。」

(1b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、透明性に優れ、且つ、耐熱性、耐候性、低吸水性が良好なアクリル系熱可塑性樹脂を提供すること、及び、該アクリル系熱可塑性樹脂であって、さらにその複屈折性が高度に制御されたアクリル系熱可塑性樹脂を提供することを目的とする。また、本発明は、それらアクリル系熱可塑性樹脂からなる成形体を提供することを目的とする。」

(1c)
「【発明の効果】
【0023】
本発明によって、透明性に優れ、且つ、耐熱性、耐候性、低吸水性が良好なアクリル系熱可塑性樹脂を提供すること、及び、該アクリル系熱可塑性樹脂であって、さらにその複屈折性が高度に制御されたアクリル系熱可塑性樹脂を提供することができる。また、それらアクリル系熱可塑性樹脂からなる成形体を提供することができる。」

(1d)
「【0049】
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記単量体と共重合可能なその他の単量体由来の繰り返し単位を含有していてもよい。共重合可能なその他の単量体としては、芳香族ビニル;不飽和ニトリル;シクロヘキシル基、ベンジル基又は炭素数1?18のアルキル基を有するアクリル酸エステル;オレフィン;ジエン;ビニルエーテル;ビニルエステル;フッ化ビニル;プロピオン酸アリル等の飽和脂肪酸モノカルボン酸のアリルエステル又はメタクリルエステル;多価(メタ)アクリレート;多価アリレート;グリシジル化合物;不飽和カルボン酸類等を挙げることができる。その他の単量体は、これらの群より選ばれる1種又は2種以上の組み合わせであり得る。」

(1e)
「【0069】
アクリル系熱可塑性樹脂中に残存する(共重合体の繰り返し単位を構成する)単量体の合計は、アクリル系熱可塑性樹脂(共重合体)100質量%に対して好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。残存単量体の合計が、0.5質量%を超えると、成形加工時に熱時着色したり、成形品の耐熱性及び耐候性が低下したりするなど実用に適さない成形体が得られるという問題がある。
【0070】
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂のGPC測定法によるPMMA換算の重量平均分子量(Mw)は、3000?1000000であることが望ましい。この重量平均分子量が3000以上であれば高分子として必要な強度が発現できる。また1000000以下であればプレス成形による成形体とすることができる。アクリル系熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、より好ましくは4000?800000であり、さらに好ましくは5000?500000であり、より一層好ましくは100000?500000である。
【0071】
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂のGPC測定法による分子量分布(Mw/Mn)は、1?10であることが望ましい。アクリル系熱可塑性樹脂組成は、リビングラジカル重合法で重合することも可能であり、必要に応じて分子量分布を調整可能である。成形加工に適した樹脂粘度に調整する観点から、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.1?7.0、より好ましくは1.2?5.0、さらに好ましくは1.5?4.0である。
・・(中略)・・
【0073】
[重合反応]
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂の重合反応においては、互いに反応性が近しい単量体、及び/又は共重合性が高い単量体を組み合わせることが、得られるアクリル系熱可塑性樹脂の樹脂組成比を、反応液に仕込む原料組成比に基づいて容易に制御することが可能であることから望ましい。一方、反応性が著しく異なる単量体を組み合わせる場合、a)反応性が低い単量体が十分に反応せず未反応単量体として残存する、b)結果として得られるアクリル系熱可塑性樹脂の樹脂組成比が予測し難いなどの問題が生じ得る。特に、未反応単量体が残存すると、アクリル系熱可塑性樹脂の特性、例えば、透明性、耐候性、が低下するなどの問題もある。」

(1f)
「【0088】
[脱揮工程]
脱揮工程とは、重合溶剤、残存単量体、水分などの揮発分を、必要に応じて減圧加熱条件下で、除去処理する工程を意味する。この除去処理が不充分であると、得られたアクリル系熱可塑性樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質などにより着色することや、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こることがある。残存揮発分量は、アクリル系熱可塑性樹脂100質量%に対して好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、さらにより好ましくは0.3質量%以下である。残存揮発分量とは、前述した重合反応時に反応しなかった残存単量体、重合溶媒、副反応生成物の合計量に相当する。
・・(中略)・・
【0093】
重合反応時の単量体反応転化率が低い場合、重合液には未反応単量体が多量に残存している。その場合、得られるアクリル系熱可塑性樹脂の残存揮発分量を減らすには高い処理温度で、長時間処理することになるが、そうすると着色や分解が生じ易いという問題がある。多量に未反応単量体を含む重合反応液を処理する場合には、問題となる単量体は、例えば、芳香族炭化水素系溶剤、炭化水素系溶剤、またはアルコール系溶剤などを重合溶液に添加した後、ホモジナイザー(乳化分散)処理を行い、未反応単量体について液-液抽出、固-液抽出するなどの前処理を施すことで重合反応液から分離できる。前処理による単量体分離後の重合反応液を前述した脱揮工程に供すると、得られるアクリル系熱可塑性樹脂100質量%中に残存する単量体の合計を0.5質量%以下に抑えることができる。」

(1g)
「【0098】
本実施形態に係るアクリル系熱可塑性樹脂、又はアクリル系熱可塑性樹脂組成物を成形して得られるフィルム又はシート状の成形体を特性評価した場合に、成形体の光弾性係数(C)の絶対値は、3.0×10^(-12)Pa^(-1)以下である。
【0099】
光弾性係数(C)の絶対値は、2.0×10^(-12)Pa^(-1)以下であることがより好ましく、1.0×10^(-12)Pa^(-1)以下であることがさらに好ましい。」


(1h)
「【0138】
(5)耐候性
耐候性は、アイスーパーUVテスター(岩崎電気(株)製SUV-W151;メタルハライドランプ)を用いて温度63℃、湿度60%の環境で約150時間暴露後、分光色彩計(日本電色工業(株)製SD-5000)でイエロー・インデックスを測定して評価した。」

(1i)
「【0148】
[アクリル系熱可塑性樹脂]
メタクリル酸メチル/N-フェニルマレイミド/N-シクロヘキシルマレイミド重合体
[実施例1]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、原料溶液導入ノズル、開始剤溶液導入ノズル、及び重合溶液排出ノズルを備えたSUS製反応器(容量0.5L)を用いた。重合反応器の圧力は、微加圧、反応温度はオイルバスで130℃に制御した。
【0149】
メタクリル酸メチル(MMA)576g、N-フェニルマレイミド(NPheMI)61g、N-シクロヘキシルマレイミド(N-CyMI)83g、メチルイソブチルケトン480gを混合した後、窒素ガスで置換して原料溶液を調製した。パーヘキサC(日油(株)製;濃度75wt%)8.63gをメチルイソブチルケトン91.37gに溶解した後、窒素ガスで置換して開始剤溶液を調整した。
【0150】
原料溶液はポンプを用いて8.25ml/minで原料溶液導入ノズルから導入した。また、開始剤溶液はポンプを用いて0.08ml/minで開始剤溶液導入ノズルから導入した。30分後、重合溶液排出ノズルから抜き出しポンプを用いて500ml/hrの一定流量でポリマー溶液を排出した。
【0151】
ポリマー溶液は、排出から1.5時間分は初流タンクに分別回収した。排出開始から、1.5時間後から2.5時間のポリマー溶液を本回収した。得られたポリマー溶液と、抽出溶媒であるメタノールを同時にホモジナイザーに供給し、乳化分散抽出した。分離沈降したポリマーを回収し、真空下、130℃で2時間乾燥して目的とするアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
組成:MMA/N-PheMI/N-CyMI=81/8/11wt%
分子量:Mw=22.5×104;Mw/Mn=2.09
Tg:135℃
このものの^(1)H-NMRスペクトルを図1に示す
・・(中略)・・
【0159】
[実施例9]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、原料溶液導入ノズル、及び開始剤溶液導入ノズルを備えたガラス製反応器(容量1.0L)を用いた。重合反応器の圧力は、微加圧、反応温度はオイルバスで100℃に制御した。
【0160】
メタクリル酸メチル(MMA)192g、N-フェニルマレイミド(NPheMI)34g、N-シクロヘキシルマレイミド(N-CyMI)46g、メチルイソブチルケトン160gを混合した後、窒素ガスで置換して原料溶液を調製した。パーヘキシン25B(日油(株)製;濃度98wt%)0.6gをメチルイソブチルケトン3.0gに溶解した後、窒素ガスで置換して開始剤溶液を調整した。
【0161】
原料溶液は圧送でガラス反応器内に原料溶液導入ノズルから導入した。また、開始剤溶液はシリンジで開始剤溶液導入ノズルから導入し重合反応を開始した。反応開始3時間後を反応終了点とし、ポリマー溶液を回収した。
得られたポリマー溶液と、貧溶媒であるメタノールを同時にホモジナイザーに供給し、乳化分散抽出した。分離沈降したポリマーを回収し、真空下、130℃で2時間乾燥して目的とするアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
組成:MMA/N-PheMI/N-CyMI=50/17/33wt%
分子量:Mw=17.7×104;Mw/Mn=2.46
Tg:135℃
・・(中略)・・
【0164】
メタクリル酸メチル/N-フェニルマレイミド/N-シクロヘキシルマレイミド/スチレン重合体
[実施例12]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、原料溶液導入ノズル、及び開始剤溶液導入ノズルを備えたガラス製反応器(容量1.0L)を用いた。重合反応器の圧力は、微加圧、反応温度はオイルバスで100℃に制御した。
【0165】
メタクリル酸メチル(MMA)140g、N-フェニルマレイミド(NPheMI)14g、N-シクロヘキシルマレイミド(N-CyMI)34g、スチレン(St)12g、メチルイソブチルケトン200gを混合した後、窒素ガスで置換して原料溶液を調製した。パーヘキサC(日油(株)製;濃度75wt%)0.32gをメチルイソブチルケトン1.00gに溶解した後、窒素ガスで置換して開始剤溶液を調整した。
【0166】
原料溶液は圧送でガラス反応器内に原料溶液導入ノズルから導入した。また、開始剤溶液はシリンジで開始剤溶液導入ノズルから導入し重合反応を開始した。反応開始3時間後を反応終了点とし、ポリマー溶液を回収した。
得られたポリマー溶液と、貧溶媒であるメタノールを同時にホモジナイザーに供給し、乳化分散抽出した。分離沈降したポリマーを回収し、真空下、130℃で2時間乾燥して目的とするアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
組成:MMA/N-PheMI/N-CyMI/St=70/5/20/5wt%
分子量:Mw=15.6×104;Mw/Mn=2.01
Tg:141℃
・・(中略)・・
【0171】
メタクリル酸メチル/N-フェニルマレイミド重合体
[比較例1]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、原料溶液導入ノズル、及び開始剤溶液導入ノズルを備えたガラス製反応器(容量1.0L)を用いた。重合反応器の圧力は、微加圧、反応温度はオイルバスで100℃に制御した。
【0172】
メタクリル酸メチル(MMA)100g、N-フェニルマレイミド(NPheMI)100g、メチルイソブチルケトン200gを混合した後、窒素ガスで置換して原料溶液を調製した。パーヘキサC(日油(株)製;濃度75wt%)0.32gをメチルイソブチルケトン1.00gに溶解した後、窒素ガスで置換して開始剤溶液を調整した。
【0173】
原料溶液は圧送でガラス反応器内に原料溶液導入ノズルから導入した。また、開始剤溶液はシリンジで開始剤溶液導入ノズルから導入し重合反応を開始した。反応開始3時間後を反応終了点とし、ポリマー溶液を回収した。
得られたポリマー溶液と、貧溶媒であるメタノールを同時にホモジナイザーに供給し、乳化分散抽出した。分離沈降したポリマーを回収し、真空下、130℃で2時間乾燥して目的とするアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
組成:MMA/N-PheMI=50/50wt%分子量:Mw=15.4×104;Mw/Mn=2.19
Tg:176℃
・・(中略)・・
【0180】
メタクリル酸メチル/スチレン/無水マレイン酸/メタクリル酸ベンジル重合体
[参考例1]
攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素ガス導入ノズル、原料溶液導入ノズル、開始剤溶液導入ノズル、及び重合溶液排出ノズルを備えたジャケット付ガラス反応器(容量1L)を用いた。重合反応器の圧力は、微加圧、反応温度は100℃に制御した。
【0181】
メタクリル酸メチル(MMA)518g、スチレン(St)48g、メタクリル酸ベンジル(BzMA)9.6g、無水マレイン酸(MAH)384g、メチルイソブチルケトン240g、n-オクチルメルカプタン1.2gを混合した後、窒素ガスで置換して原料溶液を調製した。2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)を0.364gをメチルイソブチルケトン12.96gに溶解した後、窒素ガスで置換して開始剤溶液を調整した。
【0182】
原料溶液はポンプを用いて6.98ml/minで原料溶液導入ノズルから導入した。また、開始剤溶液はポンプを用いて0.08ml/minで開始剤溶液導入ノズルから導入した。30分後、重合溶液排出ノズルから抜き出しポンプを用いて425ml/hrの一定流量でポリマー溶液を排出した。
【0183】
ポリマー溶液は、排出から1.5時間分は初流タンクに分別回収した。排出開始から、1.5時間後から2.5時間のポリマー溶液を本回収した。得られたポリマー溶液と、貧溶媒であるメタノールを同時にホモジナイザーに供給し、乳化分散抽出した。分離沈降したポリマーを回収し、真空下、130℃で2時間乾燥して目的とするアクリル系熱可塑性樹脂を得た。
組成:MMA/St/BzMA/MAH=60/12/1/27wt%
分子量:Mw=18.8×104;Mw/Mn=2.08
Tg:142℃
・・(中略)・・
【0185】
以上のように得られたアクリル系熱可塑性樹脂の組成及び評価結果を表1に示す。
【0186】
【表1】


・・(中略)・・
【0192】
[実施例19?26、比較例8?14、参考例3]
実施例1?16、比較例1?7及び参考例1で得られたアクリル系熱可塑性樹脂を用いて、前述(1-a)の方法に従いプレスフィルムを成型した。該プレスフィルムから前述(1-b)の方法に従い100%延伸フィルムを成型し、その光学特性を評価した。測定結果を表3に示す。
【0193】
【表3】




(イ)甲1に記載された発明
上記甲1には、上記(1a)ないし(1i)の記載事項(特に下線部)からみて、
「下記式(1)で表されるメタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)50?95質量%と、下記式(2)で表されるN-置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)0.1?20質量%と、下記式(3)で表されるN-置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)0.1?49.9質量%とを含有し、繰り返し単位(X)、繰り返し単位(Y1)及び繰り返し単位(Y2)の合計量が100質量%である、アクリル系熱可塑性樹脂であって、(式(1)、(2)及び(3)並びに各式の説明部は省略)光弾性係数(C)の絶対値が、3.0×10^(-12)Pa^(-1)以下であり、ハロゲン原子の含有率が、当該アクリル系熱可塑性樹脂の質量を基準として0.47質量%未満であり、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、全光線透過率が85%以上である、アクリル系熱可塑性樹脂。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。

イ.甲2

(ア)甲2に記載された事項
上記甲2には、申立人が申立書第10頁表下第3行ないし第12頁下段(最下行)で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(2a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】N-置換マレイミド(a)およびメタクリル酸エステル(b)を含む単量体成分を用い、該単量体成分の一部を供給して重合を開始した後、重合途中に単量体成分の残部を供給する耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法であって、
単量体成分の供給終了時に反応系中に存在する未反応の単量体成分中におけるN-置換マレイミド(a)の割合が、単量体成分の全供給量中におけるN-置換マレイミド(a)の割合よりも少なくなるように制御することを特徴とする耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法。
【請求項2】N-置換マレイミド(a)15?50重量%と、メタクリル酸エステル(b)50?85重量%と、共重合可能なその他の単量体(c)0?20重量%とからなる単量体成分を用い、該単量体成分の一部を供給して重合を開始した後、重合途中に単量体成分の残部を供給する耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法であって、
単量体成分の供給終了時に反応系中に存在する未反応の単量体成分中のN-置換マレイミド(a)の割合が10重量%未満となるように制御することを特徴とする耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法。
・・(中略)・・
【請求項6】上記メタクリル酸エステルが、メタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法。
【請求項7】上記N-置換マレイミドが、N-シクロヘキシルマレイミドであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法。
【請求項8】上記請求項1ないし7のいずれか1項に記載の製造方法により得られる耐熱性メタクリル系樹脂であって、
黄変度が3.0以下、ビカット軟化点が120℃以上であり、かつ、未反応のN-置換マレイミド(a)の残存量が0.1重量%以下であることを特徴とする耐熱性メタクリル系樹脂。」

(2b)
「【0004】そこで、耐熱性を改善させた耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法として、N-置換マレイミドとメタクリル酸エステルとを含む単量体混合物を重合させる方法が用いられている。しかしながら、N-置換マレイミドは比較的重合しにくいため、上記の単量体混合物を一括して仕込んで重合を行うと、かなりの量のN-置換マレイミドが未反応のまま残存する。このため、耐熱性メタクリル系樹脂に白濁や黄変等の着色が生じるという問題を生じている。
【0005】そこで、着色の少ない耐熱性メタクリル系樹脂を得るために、メタクリル系樹脂組成物中に残存する未反応のN-置換マレイミドの量を少なくする方法が開示されている。
・・(中略)・・
【0009】
【発明が解決しようとする課題】・・(中略)・・
【0010】また、上記従来の方法では、重合方法として懸濁重合法を用いている。懸濁重合法でN-置換マレイミド含有量の多い耐熱性メタクリル系樹脂を製造しようとした場合、どうしても得られる耐熱性メタクリル系樹脂中に未反応のN-置換マレイミドが残りやすい。従って、組成分布、着色の大きな樹脂しか得ることができない。
・・(中略)・・
【0012】本発明の目的は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、透明性および耐熱性に優れ、しかも着色の少ない耐熱性メタクリル系樹脂およびその製造方法を提供することにある。」

(2c)
「【0024】本発明について、以下に詳しく説明する。本発明にかかる耐熱性メタクリル系樹脂の製造方法においては、N-置換マレイミド(a)およびメタクリル酸エステル(b)を含む単量体成分を重合させる。
【0025】上記単量体成分としては、N-置換マレイミド(a)15?50重量%と、メタクリル酸エステル(b)50?85重量%と、N-置換マレイミド(a)およびメタクリル酸エステル(b)と共重合可能な他の単量体(c)0?20重量%とからなる単量体成分(以下、特定の単量体成分と称する)が好ましい。これにより、優れた光学的性質、成形性を維持しながら、高い耐熱性を有する耐熱性メタクリル系樹脂を得ることができる。
【0026】なお、本明細書では、重量%の表示は、その配合量の合計が常に100重量%となるように単量体成分が配合されることを意味し、例えば、N-置換マレイミド(a)が15重量%配合されると、メタクリル酸エステル(b)が85重量%と一義的に設定されることを意味する。」

(2d)
「【0031】上記単量体成分は、必要に応じて他の単量体(c)を含んでいる。上記の他の単量体(c)は、N-置換マレイミド(a)およびメタクリル酸エステル(b)と共重合可能な化合物であればよい。他の単量体(c)としては、具体的には、芳香族ビニル類;不飽和ニトリル類;アクリル酸エステル類;オレフィン類;ジエン類;ビニルエーテル類;ビニルエステル類;フッ化ビニル類;プロピオン酸アリル等の飽和脂肪酸モノカルボン酸のアリルエステル類またはメタクリルエステル類;多価(メタ)アクリレート類;多価アリレート類;グリシジル化合物;不飽和カルボン酸類等を挙げることができる。これら例示の化合物のうち、芳香族ビニル類が特に好ましい。」

(2e)
「【0041】なお、上記単量体成分の重合方法として、懸濁重合法を用いると、マレイミド系共重合体中にN-置換マレイミド(a)の残存量が多くなることがあり、得られたマレイミド系共重合体(1)が着色して透明度が低下するおそれがある。また、乳化重合法を用いた場合では、乳化剤等が残存して、得られた耐熱性メタクリル系樹脂において濁りが生じたり、着色が生じたりして、透明度が低下するおそれがある。」

(2f)
「【0055】
上記構成によれば、耐熱性メタクリル系樹脂中におけるN-置換マレイミド(a)の残存量を低減できる。従って、残存N-置換マレイミド(a)による耐熱性メタクリル系樹脂の着色を抑制することができる。この結果、透明性および耐熱性に優れ、しかも着色の少ない耐熱性メタクリル系樹脂が得られる。
【0056】
また、本発明にかかる製造方法によって得られる耐熱性メタクリル系樹脂は、残存N-置換マレイミド(a)の含有量が少ないため、透明性および耐熱性に優れ、しかも着色が少ない。
【0057】
上記耐熱性メタクリル系樹脂の黄変度は、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましい。また、上記耐熱性メタクリル系樹脂のビカット軟化点は、120℃以上であることがより好ましく、130℃以上であることがさらに好ましい。さらに、上記耐熱性メタクリル系樹脂の未反応のN-置換マレイミドの残存量が0.1重量%以下であることがより好ましく、0.05重量%以下であることがさらに好ましい。」

(2g)
「【0080】〔実施例3〕まず、攪拌機を備えた内容量20リットルのステンレス製重合槽に、メタクリル酸メチル14部、N-置換マレイミド(a)としてのN-シクロヘキシルマレイミド10部、および、有機溶媒としてのトルエン25部を仕込んだ。
【0081】そして、300rpmで攪拌しながら窒素ガスを10分間バブリングした後、窒素雰囲気下で昇温を開始し、100℃に達した時点で、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.09部を加え、重合温度110℃の還流下で溶液重合法による重合反応を開始した。
【0082】そして、重合を開始してから1時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.5部、メタクリル酸メチル6.0部、スチレン2.5部、トルエン10部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.08部からなる混合物を一括投入した。
【0083】さらに、重合を開始してから2時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたN-シクロヘキシルマレイミド1.0部、メタクリル酸メチル5.5部、スチレン2.5部、トルエン8部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.05部からなる混合物を一括投入した。
【0084】その上、重合を開始してから3時間後に、あらかじめ窒素ガスでバブリングしたメタクリル酸メチル5.0部、スチレン2.0部、トルエン7部、およびt-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.03部からなる混合物を一括投入した。その後、さらに重合温度110℃の還流下で重合反応を続け、重合を開始してから7時間後に反応を終了した。
【0085】単量体供給終了時の全単量体成分中のN-シクロヘキシルマレイミドの割合を、実施例1と同様にして測定したところ、6.3重量%であった。上記の主な反応条件を表1に示す。
【0086】上記重合反応後の重合液を、実施例1と同様にしてペレット化し、本発明にかかる耐熱性メタクリル系樹脂としての共重合体ペレットを得た。得られた共重合体ペレットの各種物性を、実施例1と同様にして測定した結果を表2に示した。
【0087】この共重合体ペレットを実施例1と同様にして成形し、得られた成型品の光学的性質を実施例1と同様にして測定した。得られた結果を表2に合わせて示した。」

(2h)
「【0093】
【表1】


【0094】
【表2】




(イ)甲2に記載された発明
上記甲2には、未反応のN-置換マレイミドの残存量につき0.1重量%以下が好適であること(摘示(2f)【0057】及び【0058】)並びに樹脂の全光線透過率につき90%以上及びガラス転移温度120℃以上がいずれも達成されていること(摘示(2h)【表2】)がそれぞれ記載されているから、甲2には、上記(2a)ないし(2h)の記載(特に下線部)からみて、
「単量体成分として、N-置換マレイミド(a)15?50重量%と、メタクリル酸エステル(b)50?85重量%と、N-置換マレイミド(a)およびメタクリル酸エステル(b)と共重合可能な他の単量体(c)0?20重量%とからなる単量体成分を共重合してなる耐熱性メタクリル系樹脂であって、黄変度が3.0以下、ビカット軟化点が120℃以上であり、かつ、未反応のN-置換マレイミド(a)の残存量が0.1重量%以下であり、ガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり、全光線透過率が90%以上である、耐熱性メタクリル系樹脂。」
に係る発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているものといえる。

ウ.甲3

(ア)甲3に記載された事項
上記甲3には、申立人が申立書第13頁第3行ないし第14頁第5行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(3a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】N-シクロヘキシルマレイミドを主成分とし、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が0.001?1重量%(対N-シクロヘキシルマレイミド)であることを特徴とする耐熱性樹脂製造用の原料。
【請求項2】請求項1記載の原料およびこれと共重合可能な少なくとも1種の単量体を共重合して得られるものであることを特徴とする耐熱性樹脂。
【請求項3】黄色度(YI)が2以下、または溶液での黄色度(YIsol.)が3以下であることを特徴とする請求項2記載の耐熱性樹脂。」

(3b)
「【0006】しかし、より耐熱性に優れたメタクリル樹脂を得るためには、樹脂中のN-シクロヘキシルマレイミド単位を増加させる必要があるものの、N-シクロヘキシルマレイミド単位を増加させると得られるメタクリル樹脂は着色(黄変)しやすくなるという問題が生じる。
【0007】このような樹脂製品の着色はN-シクロヘキシルマレイミドを出発原料の一つとするN-シクロヘキシルマレイミド系樹脂一般に認められるところである。しかし、樹脂製品の用途によっては着色の低減が強く求められることから、着色が低減された(本発明においては、これを「低着色性」という)N-シクロヘキシルマレイミド系の耐熱性樹脂の開発が望まれていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は低着色性の耐熱性樹脂、特に透明性等の外観および耐熱性に優れ、さらに低着色性となるN-シクロヘキシルマレイミド系の耐熱性樹脂の製造を可能とする耐熱性樹脂製造用の原料を提供することを目的とする。
【0009】また、本発明は上記原料を用いて得られる耐熱性樹脂、特に透明性等の外観および耐熱性に優れ、さらに低着色性の、N-シクロヘキシルマレイミド系耐熱性樹脂を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らはN-シクロヘキシルマレイミド系の耐熱性樹脂の着色について検討したところ、出発原料としてのN-シクロヘキシルマレイミド中に存在する不純物であるシクロヘキシルアミノ無水コハク酸が着色原因物質であることを究明し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】すなわち、本発明の耐熱性樹脂製造用の原料は、N-シクロヘキシルマレイミドを主成分とし、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が0.001?1重量%(対N-シクロヘキシルマレイミド)であることを特徴としている。
【0012】また、本発明の耐熱性樹脂は、上記原料およびこれと共重合可能な少なくとも1種の単量体を共重合して得られるものであることを特徴としており、上記の耐熱性樹脂における黄色度(YI)が2以下、または溶液での黄色度(YIsol.)が3以下、好ましくは2以下であることを特徴としている。」

(3c)
「【0022】黄色度(YI,YIsol.)
後記実施例1に記載のキャスト重合法に準じて得られる、本発明の耐熱性樹脂からなる厚み3.0mmの重合体板、および後記実施例3に記載の方法に準じて得られる本発明の耐熱性樹脂からなる厚み3.0mmの共重合体成型品について、色差計(日本電色工業製Σ80)を用い、JIS-K-7103にしたがって黄色度(YI)を測定した。
【0023】また後記実施例3に記載の方法に準じて得られる本発明の耐熱性樹脂からなる共重合体ペレットの15重量%クロロホルム溶液を調製し、そのクロロホルム溶液を厚さ10mmのガラスセルにて、JIS-K-7103にしたがい、透過光を用いて三刺激値をそれぞれ測定し、それら三刺激値から、溶液での黄色度(YIsol.)を測定した。
【0024】本発明の低着色性の耐熱性樹脂の製造に用いるN-シクロヘキシルマレイミドを主成分とする原料と共重合可能な単量体としては、メタクリル酸エステル類、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸シクロヘキシルおよびメタクリル酸イソボニル;アクリル酸エステル類、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピルおよびアクリル酸ブチル;芳香族ビニル化合物、例えばスチレンおよびα-メチルスチレンなどを挙げることができる。これらのうち、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、スチレン、α-メチルスチレンなどが特にその優れた反応性および耐熱性に優れた樹脂が得られるという点において好適に用いられる。
【0025】本発明の低着色性の耐熱性樹脂の一つは、前記原料と上記共重合可能な単量体との二元系共重合体であり、その代表例としては上記原料-メタクリル酸メチル共重合体、上記原料-メタクリル酸シクロヘキシル共重合体、上記原料-メタクリル酸イソボニル共重合体などを挙げることができる。
【0026】これら二元系共重合体の重合は、その方法に特段の制限はなく、従来公知の方法にしたがって行うことができる。例えば、上記原料とメタクリル酸メチルとを共重合する場合、上記原料5?50重量部とメタクリル酸メチル95?50重量部(合計100重量部)とを常法によりラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させればよい。
【0027】
本発明の他の低着色性の耐熱性樹脂としては上記原料、メタクリル酸エステル(特にメタクリル酸メチル)および前記の共重合可能な単量体のなかから選ばれた少なくとも1種の単量体を共重合させて得られる三元または多元系共重合体があげられる。
【0028】
その代表例としては、上記原料-メタクリル酸メチル-α-メチルスチレン共重合体、上記原料-メタクリル酸メチル-スチレン共重合体、上記原料-メタクリル酸メチル-アクリル酸メチル共重合体などを挙げることができる。
【0029】
これら三元または多元系共重合体の重合法は、前記二元系共重合体と同様に、その方法に特段の制限はなく、従来公知の方法にしたがって行うことができる。例えば、上記原料-メタクリル酸メチル-スチレン共重合体の場合、上記原料5?50重量部およびメタクリル酸メチル95?50重量部、ならびにこれら合計100重量部に対し30重量部以下のスチレンを常法によりラジカル重合開始剤を用いてラジカル重合させればよい。」

(3d)
「【0032】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、以下の記載における部および%はそれぞれ重量部および重量%を意味する。本発明の耐熱性樹脂製造用の原料は、N-シクロヘキシルマレイミドを主成分とし、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸が0.001?1%(対N-シクロヘキシルマレイミド)であるものである。
・・(中略)・・
【0037】〔参考例1〕・・(中略)・・
【0040】このようにして得られた原料中のシクロヘキシルアミノ無水コハク酸の含量を測定したところ2.5%であった。なお、本発明にかかる下記の実施例、および比較例で用いたN-シクロヘキシルマレイミドを主成分とする原料中のシクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量は蒸留および再結晶による精製度合を変化させることにより調整した。
【0041】〔実施例1〕シクロヘキシルアミノ無水コハク酸を0.9%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料20部とメタクリル酸メチル80部とを混合し、200mmHgの減圧下10分間脱気を行った単量体混合物に対し、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを0.4部溶解させ、下記のキャスト重合により成形した。
・・(中略)・・
【0043】上記キャスト重合により得られた重合体板について色差計(日本電色工業製Σ80)を用い、JIS-K-7103にしたがって黄色度(YI)を透過光で測定したところ0.8であった。また、熱分析装置(リガク製DSC-8230/TAS-100)を用い、JIS-K-7121にしたがってガラス転移温度を測定したところ137℃であった。
【0044】〔実施例2〕シクロヘキシルアミノ無水コハク酸を0.01%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料20部とメタクリル酸メチル80部とを混合し、200mmHgの減圧下10分間脱気を行った単量体混合物に対し、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを0.4部溶解させ、実施例1と同様の条件でキャスト重合を行い厚み3.0mmの透明な重合体板を得た。この重合体板について実施例1と同様にして黄色度(YI)およびガラス転移温度を測定したところ、それぞれ、0.8および137℃であった。
【0045】実施例1および2の結果から、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が1%以下のN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料を用いて得られるN-シクロヘキシルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体は、透明であり、また黄色度(YI)が1以下であって低着色性であり、さらにガラス転移温度が120℃以上であって耐熱性に優れていることが分かる。
【0046】〔比較例1〕シクロヘキシルアミノ無水コハク酸を1.8%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる比較原料20部とメタクリル酸メチル80部とを混合し、200mmHgの減圧下10分間脱気を行った単量体混合物に対し、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを0.4部溶解させ、実施例1と同様の条件でキャスト重合を行い厚み3.0mmの透明な重合体板を得た。この重合体板について実施例1と同様にして黄色度(YI)およびガラス転移温度を測定したところ、それぞれ、2.4および138℃であった。
【0047】〔比較例2〕シクロヘキシルアミノ無水コハク酸を2.5%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる比較原料20部とメタクリル酸メチル80部とを混合し、200mmHgの減圧下10分間脱気を行った単量体混合物に対し、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを0.4部溶解させ、実施例1と同様の条件でキャスト重合を行い厚み3.0mmの透明な重合体板を得た。この重合体板について実施例1と同様にして黄色度(YI)およびガラス転移温度を測定したところ、それぞれ、4.0および137℃であった。
【0048】比較例1および2の結果から、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が1%を超えるN-シクロヘキシルマレイミドからなる比較原料を用いて得られるN-シクロヘキシルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体は透明であり、また耐熱性に優れてはいるが、著しく着色(黄変)していることが分かる。
【0049】〔比較例3〕200mmHgの減圧下10分間脱気を行ったメタクリル酸メチル100部に対し、重合開始剤としてラウリルパーオキサイドを0.4部溶解させ、実施例1と同様の条件でキャスト重合を行い厚み3.0mmの透明な重合体板を得た。この重合体板について実施例1と同様に黄色度(YI)およびガラス転移温度を測定したところ、それぞれ、0.8および114℃であった。
【0050】比較例3の結果から、N-シクロヘキシルマレイミドを使用することなくメタクリル酸メチルを単独で重合して得られるメタクリル酸メチル重合体は透明であり、また低着色性ではあるが、ガラス転移温度が114℃であって耐熱性が劣っていることが分かる。
【0051】〔実施例3〕3つの、第1滴下槽、第2滴下槽、第3滴下槽をそれぞれ有し、内容量20リットルの攪拌機つきのステンレス製重合槽に、メタクリル酸メチル15.75部、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸を0.01%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン25部、安定化剤としてのペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.0025部を仕込んだ。
【0052】一方、メタクリル酸メチル15.75部、スチレン6部、トルエン10部の第1混合溶液を第1滴下槽に仕込み、あらかじめ窒素ガスでバブリングして溶存酸素を上記第1混合溶液槽から除去した。またシクロヘキシルアミノ無水コハク酸を0.01%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料6.25部、トルエン10部の第2混合溶液を第2滴下槽に仕込み、あらかじめ窒素ガスでバブリングして溶存酸素を上記第2混合溶液から除去した。さらにtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.108部とトルエン5部の第3混合溶液を第3滴下槽に仕込み、あらかじめ窒素ガスでバブリングして溶存酸素を上記第3混合溶液から除去した。
【0053】前記の重合槽内の溶液を300rpmで攪拌しながら、上記溶液に対し窒素ガスで10分間バブリングして、窒素ガス置換により上記溶液から溶存酸素を除去した後、窒素ガス雰囲気下で上記溶液の昇温を開始し、110℃に達した時点で重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネートを0.02部上記溶液に加えた。
【0054】続いて、上記第1混合溶液、第2混合溶液および第3混合溶液を、3.5時間かけて第1滴下槽、第2滴下槽および第3滴下槽よりそれぞれ重合槽内の上記溶液に滴下し、重合温度110℃の還流下で重合反応を7時間行った。その後、前述の安定化剤をさらに0.0475部上記重合槽内の溶液に添加した。
【0055】この重合槽内の共重合体を含む重合液を、シリンダー温度240℃にコントロールしたベント付き30mm2軸押し出し機に供給し、ベント口より真空脱揮し、出てきたストランドをペレット化して、本発明の耐熱性樹脂としての共重合ペレット(1)を得た。この共重合ペレット(1)の溶液での黄色度(YIsol.)は0.8であった。
【0056】さらに、この共重合体ペレット(1)をシリンダー温度250?260℃、金型温度100℃、射出圧950kg/cm^(2)にてコントロールした射出成型機を用いて成型し、厚み3mmの透明な成型品を得た。
【0057】この成型品について実施例1と同様にして黄色度(YI)およびガラス転移温度を測定したところ、それぞれ、1.6および136℃であった。
【0058】実施例3の結果から、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が1%以下のN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料を用いて得られるN-シクロヘキシルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体は、成型品の黄色度(YI)は1.6となって低着色性であり、また、ガラス転移温度は120℃以上あって耐熱性に優れていることが分かる。
【0059】〔比較例4〕実施例3におけるシクロヘキシルアミノ無水コハク酸を0.01%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる原料に代えて、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸1.8%含むN-シクロヘキシルマレイミドからなる比較原料を用いた他は、実施例3と同様に操作して、比較共重合体ペレット(1)を得た。この比較共重合体ペレット(1)の溶液での黄色度(YIsol.)は4.1であった。
【0060】さらに、この比較共重合体ペレット(1)を実施例3と同様にして成型し、厚み3mmの透明な成型品を得た。この成型品について実施例1と同様にして黄色度(YI)およびガラス転移温度を測定したところ、それぞれ、6.4および136℃であった。
【0061】比較例4の結果から、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が1%を超えるN-シクロヘキシルマレイミドからなる比較原料を用いて得られるN-シクロヘキシルマレイミド-メタクリル酸メチル共重合体は透明で耐熱性に優れてはいるが、著しく着色(黄変)していることが分かる。」

(イ)甲3に記載された発明
上記甲3には、上記(3a)ないし(3d)の記載(特に下線部)からみて、
「単量体成分として、N-シクロヘキシルマレイミドを主成分とし、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が0.001?1重量%(対N-シクロヘキシルマレイミド)であることを特徴とする耐熱性樹脂製造用の原料5?50重量部とメタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル95?50重量部との合計100重量部及びスチレンなどの共重合可能な少なくとも1種の単量体30重量部以下を共重合して得られる、黄色度(YI)が1.6以下、または溶液での黄色度(YIsol.)が3以下であり、ガラス転移温度が120℃以上である耐熱性樹脂。」
に係る発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているものといえる。

エ.甲4

(ア)甲4に記載された事項
上記甲4には、申立人が申立書第14頁第8行ないし第16頁下段(最下行)で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(4a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)に示す(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)と、以下の式(2)に示すN-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(B)とを有する熱可塑性樹脂(C)を含み、
o-キシレンの含有率が10ppm以上500ppm以下(質量基準)である、熱可塑性樹脂組成物。
・・(式及びその説明は省略)・・
【請求項2】
前記樹脂(C)が前記構成単位(B)としてN-フェニルマレイミド単位および/またはN-シクロヘキシルマレイミド単位を有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂(C)が前記構成単位(B)としてN-シクロヘキシルマレイミド単位を有し、
シクロヘキシルアミノ無水コハク酸の含有率が10ppm以上250ppm以下(質量基準)である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂(C)における前記構成単位(B)の含有率が2質量%以上40質量%以下である、請求項1?3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
メルトフローレート(MFR)が4.0?50(g/10分)である、請求項1?4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1?5のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物から構成される光学フィルム。
【請求項7】
請求項6に記載の光学フィルムを備える、偏光板。
【請求項8】
請求項6に記載の光学フィルムを備える、画像表示装置。
・・(【請求項9】以降略)」

(4b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、N-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(N-置換マレイミド構造)を主鎖に有する熱可塑性アクリル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であって、製造時における着色、および製膜時における、発泡をはじめとするフィルム欠点の発生が抑制された、光学的透明性および製膜性(フィルム成形性)に優れる樹脂組成物を提供することを目的の一つとする。」

(4c)
「【0031】
[熱可塑性樹脂(C)]
熱可塑性樹脂(C)は、当該樹脂を構成する構成単位として、構成単位(A)および構成単位(B)を有する熱可塑性アクリル系樹脂である。樹脂(C)がアクリル系樹脂であることから、樹脂(C)の全構成単位に占める構成単位(A)の割合(樹脂(C)における構成単位(A)の含有率)は、少なくとも50質量%であり、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
【0032】
樹脂(C)の全構成単位に占める構成単位(B)の割合(樹脂(C)における構成単位(B)の含有率)は、樹脂(C)がアクリル系樹脂である限り限定されないが、例えば、0質量%を超え50質量%以下であり、2質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上30質量%以下が好ましい。
【0033】
樹脂(C)は、2種以上の構成単位(A)を有していてもよく、2種以上の構成単位(B)を有していてもよい。樹脂(C)は、例えば、構成単位(A)としてMMA単位を有する。樹脂(C)は、例えば、構成単位(B)としてN-フェニルマレイミド単位および/またはN-シクロヘキシルマレイミド単位を有する。樹脂(C)が2種類の構成単位(B)を有する場合、例えば、構成単位(B)としてN-フェニルマレイミド単位およびN-シクロヘキシルマレイミド単位を有するとき、光弾性係数の絶対値を小さく制御しやすくなる。
【0034】
構成単位(B)を有することにより、樹脂(C)の主鎖に環構造(N-置換マレイミド構造)が配置される。この主鎖に位置する環構造により、例えば、樹脂(C)のガラス転移温度(Tg)が上昇し、耐熱性に優れる樹脂(C)、樹脂組成物(D)および成形体が得られる。樹脂(C)のTgは、例えば、110℃以上であり、N-置換マレイミド単位の種類および含有率によっては、115℃以上、120℃以上、さらには130℃以上とすることができる。
【0035】
本発明の効果が得られる限り、樹脂(C)は、構成単位(A),(B)以外の構成単位を有していてもよい。当該構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、α-ヒドロキシメチルスチレン、α-ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、酢酸ビニル、2-ヒドロキシメチル-1-ブテン、メチルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾールの各単量体に由来する構成単位である。」

(4d)
「【0046】
樹脂組成物(D)のTgは、樹脂(C)を含むことにより、例えば110℃以上である。樹脂組成物(D)における樹脂(C)の含有率、ならびに樹脂(C)におけるN-置換マレイミド単位の種類および含有率によっては、115℃以上、120℃以上、125℃以上、さらには130℃以上とすることができる。このような高いTgを有する樹脂組成物(D)は耐熱性に優れており、当該樹脂組成物から、例えば、高いTgを示す耐熱性に優れるフィルムが得られる。このようなフィルムは、光源、電源部、回路基板といった発熱体が限られた空間内に配置される液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置への使用に好適である。樹脂組成物(D)のTgの上限は、例えば150℃である。樹脂組成物(D)のTgが過度に高くなる、例えば150℃を超える、と、当該組成物の製膜性が低下したり、得られたフィルムの機械的強度が低下する傾向がある。」

(4e)
「【実施例】
【0093】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0094】
最初に、本実施例において作製した熱可塑性樹脂組成物の評価方法を示す。
・・(中略)・・
【0098】
[ガラス転移温度(Tg)]
樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
・・(中略)・・
【0101】
[黄色度(YI値)]
樹脂組成物の着色の程度として、その黄色度(YI値)をJIS K7373の規定に準拠して求めた。YI値が1.0未満を良(○)、1.0以上2.0未満を可(△)、2.0以上を不可(×)と評価した。
・・(中略)・・
【0105】
(実施例1)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、メタクリル酸メチル(MMA)95質量部、N-フェニルマレイミド(PMI)5質量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.05質量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(DM)0.1質量部、およびトルエン80.5質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ、内容物を105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)0.103質量部を添加するとともに、トルエン21質量部にt-アミルパーオキシイソノナノエート0.205質量部を溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、滴下終了後、さらに6時間の熟成を行った。
【0106】
次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮は、リアベントの圧力を300mmHg、第1ベントの圧力を200mmHg、第2から第4ベントの圧力を20mmHgに減圧して実施した。その際、別途準備しておいた酸化防止剤溶液を、0.03kg/時の投入速度で第1ベントと第2ベントとの間から、イオン交換水を0.01kg/時の投入速度で第3ベントと第4ベントとの間から、ポンプを用いてそれぞれ投入した。酸化防止剤溶液には、50質量部の酸化防止剤(住友化学製、スミライザーGS)をトルエン235質量部に溶解させた溶液を用いた。
【0107】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによってペレット化して、樹脂組成物(D-1)のペレットを得た。
【0108】
(実施例2)
反応容器に仕込むMMAの量を95質量部から91質量部に、PMIの量を5質量部から9質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(D-2)のペレットを得た。
【0109】
(実施例3)
反応容器に仕込むMMAの量を95質量部から85質量部に、PMIの量を5質量部から15質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物(D-3)のペレットを得た。
【0110】
(実施例4)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA70質量部、PMI30質量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.05質量部、およびトルエン80.5質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ、内容物を105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)0.103質量部を添加するとともに、トルエン21質量部にt-アミルパーオキシイソノナノエート0.205質量部を溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、滴下終了後、さらに6時間の熟成を行った。
【0111】
次に、得られた重合溶液を、バレル温度260℃、回転速度100rpm、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮は、リアベントの圧力を300mmHg、第1ベントの圧力を200mmHg、第2から第4ベントの圧力を20mmHgに減圧して実施した。その際、別途準備しておいた酸化防止剤溶液を、0.03kg/時の投入速度で第1ベントと第2ベントとの間から、イオン交換水を0.01kg/時の投入速度で第3ベントと第4ベントとの間から、ポンプを用いてそれぞれ投入した。酸化防止剤溶液には、50質量部の酸化防止剤(住友化学製、スミライザーGS)をトルエン235質量部に溶解させた溶液を用いた。
【0112】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによってペレット化して、樹脂組成物(D-4)のペレットを得た。
【0113】
(実施例5)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA95質量部、N-シクロヘキシルマレイミド(CMI)5質量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.05質量部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(DM)0.1質量部、およびトルエン80.5質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ、内容物を105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)0.103質量部を添加するとともに、トルエン21質量部にt-アミルパーオキシイソノナノエート0.205質量部を溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、滴下終了後、さらに6時間の熟成を行った。
【0114】
次に、得られた重合溶液を、バレル温度240℃、回転速度100rpm、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮は、リアベントの圧力を300mmHg、第1ベントの圧力を200mmHg、第2から第4ベントの圧力を20mmHgに減圧して実施した。その際、別途準備しておいた酸化防止剤溶液を0.03kg/時の投入速度で、およびベンジルアルコール(BzOH)を0.01kg/時の投入速度で、それぞれ第1ベントと第2ベントとの間からポンプを用いて投入した。また、イオン交換水を0.01kg/時の投入速度で、第3ベントと第4ベントとの間からポンプを用いて投入した。酸化防止剤溶液には、50質量部の酸化防止剤(住友化学製、スミライザーGS)をトルエン235質量部に溶解させた溶液を用いた。
【0115】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによってペレット化して、樹脂組成物(D-5)のペレットを得た。
【0116】
(実施例6)
反応容器に仕込むMMAの量を95質量部から91質量部に、CMIの量を5質量部から9質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、樹脂組成物(D-6)のペレットを得た。
【0117】
(実施例7)
反応容器に仕込むMMAの量を95質量部から85質量部に、CMIの量を5質量部から15質量部に変更した以外は実施例5と同様にして、樹脂組成物(D-7)のペレットを得た。
【0118】
(実施例8)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管、および滴下ロートを備えた反応容器に、MMA70質量部、CMI30質量部、酸化防止剤(アデカスタブ2112、ADEKA製)0.05質量部、およびトルエン80.5質量部を仕込み、これに窒素ガスを導入しつつ、内容物を105℃まで昇温させた。昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt-アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、ルペロックス570)0.103質量部を添加するとともに、トルエン21質量部にt-アミルパーオキシイソノナノエート0.205質量部を溶解させた溶液を2時間かけて滴下しながら溶液重合を進行させ、滴下終了後、さらに6時間の熟成を行った。
【0119】
次に、得られた重合溶液を、バレル温度260℃、回転速度100rpm、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)のベントタイプスクリュー二軸押出機(φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時の処理速度で導入し、脱揮を行った。脱揮は、リアベントの圧力を300mmHg、第1ベントの圧力を200mmHg、第2から第4ベントの圧力を20mmHgに減圧して実施した。その際、別途準備しておいた酸化防止剤溶液を0.03kg/時の投入速度で、およびベンジルアルコール(BzOH)を0.01kg/時の投入速度で、それぞれ第1ベントと第2ベントとの間からポンプを用いて投入した。また、イオン交換水を0.01kg/時の投入速度で、第3ベントと第4ベントとの間からポンプを用いて投入した。酸化防止剤溶液には、50質量部の酸化防止剤(住友化学製、スミライザーGS)をトルエン235質量部に溶解させた溶液を用いた。
【0120】
脱揮完了後、押出機内に残された熱溶融状態にある樹脂組成物を押出機の先端から排出し、ペレタイザーによってペレット化して、樹脂組成物(D-8)のペレットを得た。
【0121】
(実施例9)
PMI5質量部の代わりにPMI2質量部とCMI3質量部とを反応容器に仕込んだ以外は実施例5と同様にして、樹脂組成物(D-9)のペレットを得た。
【0122】
(実施例10)
PMI9質量部の代わりにPMI3質量部とCMI6質量部とを反応容器に仕込んだ以外は実施例6と同様にして、樹脂組成物(D-10)のペレットを得た。
【0123】
(実施例11)
PMI15質量部の代わりにPMI6質量部とCMI9質量部とを反応容器に仕込んだ以外は実施例7と同様にして、樹脂組成物(D-11)のペレットを得た。
【0124】
(実施例12)
PMI30質量部の代わりにPMI13質量部とCMI17質量部とを反応容器に仕込んだ以外は実施例8と同様にして、樹脂組成物(D-12)のペレットを得た。
【0125】
(実施例13)
BzOHを投入しない以外は実施例10と同様にして、樹脂組成物(D-13)のペレットを得た。
【0126】
(実施例14)
BzOHを投入しない以外は実施例12と同様にして、樹脂組成物(D-14)のペレットを得た。
【0127】
(実施例15)
脱揮に際してBzOHを、第1ベントと第2ベントとの間からだけではなく、第2ベントと第3ベントとの間から0.01kg/時の投入速度でポンプを用いてさらに投入した以外は実施例10と同様にして、樹脂組成物(D-15)のペレットを得た。
【0128】
(実施例16)
脱揮に際してBzOHを、第1ベントと第2ベントとの間からだけではなく、第2ベントと第3ベントとの間から0.01kg/時の投入速度でポンプを用いてさらに投入した以外は実施例12と同様にして、樹脂組成物(D-16)のペレットを得た。
・・(中略)・・
【0139】
実施例1?16で作製した樹脂組成物の評価結果を以下の表1Aおよび表1Bに示す。
【0140】
【表1A】


【0141】
【表1B】


【0142】
表1A,1Bに示すように、各実施例の樹脂組成物はいずれもo-キシレンの含有率が10ppm以上500ppm以下の範囲にあり、着色の程度(黄色度)が低いとともに、当該樹脂組成物を溶融成形して得たフィルムに発泡、スジおよびブリードアウトが見られず、その外観は良好であった。ただし、脱揮の際にBzOHを加えるとともに、BzOHの含有量が400ppmを超える実施例15では、得られたフィルムの端部にのみ僅かな発泡が確認された。o-キシレンほどではないが、BzOHが過度に残留すると、フィルムの外観に欠点が生じる可能性がある。また、これにはBzOHの揮発に伴う質量減少によって低い温度でTdが観察されていることが関連していると予想された。
【0143】
なお、N-置換マレイミド単位の含有率が相対的に大きいことでMFRの値が7.0(g/10分)未満となった実施例3,4,7,8,11,12,14,16では、290℃の製膜温度が必要であった。また、原料にCMIを含むためにCASAが樹脂組成物に残留するととともに、脱揮の際にBzOHを注入しなかった実施例13,14では、押出機のベント口にCASAの堆積が目視により確認された。特に、実施例14では、ベントラインが完全に閉塞した。他の実施例ではベント口にCASAの堆積は発生しなかった。BzOHの添加が、ベント口におけるCASAの堆積防止に効果的であること、および樹脂組成物中の残留CASA量にほとんど影響がないことが確認された。そして、全ての実施例において、ベントから溶融樹脂が噴き出すベントアップは発生しなかった。」

(イ)甲4に記載された発明
上記甲4には、上記(4a)ないし(4e)の記載(特に下線部)からみて、
「以下の式(1)に示す(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)の少なくとも50質量%と、以下の式(2)に示すN-フェニルマレイミド単位および/またはN-シクロヘキシルマレイミド単位などのN-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(B)の2?40質量%とを有する熱可塑性樹脂(C)であって、当該樹脂(C)を含む樹脂組成物(D)につき、ガラス転移温度(Tg)が110℃?150℃であり、JISK7373による黄色度(YI)が1.0未満である、熱可塑性樹脂。


式(1)において、R^(1)は水素原子またはメチル基であり、R^(2)は炭素数1?12の炭化水素基である。


式(2)において、R^(3)およびR^(4)は、互いに独立して、水素原子、炭素数1?12のアルキル基または炭素数6?14のアリール基であり、Xは、炭素数3?12のシクロアルキル基または炭素数6?14のアリール基である。」
に係る発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているものといえる。

オ.甲5

(ア)甲5に記載された事項
上記甲5には、申立人が申立書第17頁第3行ないし第18頁第17行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(5a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を脱アルコール反応させて該重合体中にラクトン環構造を導入させることにより透明性耐熱樹脂を得る方法において、
前記脱アルコール反応の際に、有機リン化合物を触媒として用いることを特徴とする、透明性耐熱樹脂の製造方法。
・・(中略)・・
【請求項4】分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を脱アルコール反応させて該重合体中にラクトン環構造を導入させることにより得られる透明性耐熱樹脂において、
ダイナミックTG測定における150?300℃の間での重量減少率から求めた脱アルコール反応率が90%以上であり、かつ、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が5以下であることを特徴とする、透明性耐熱樹脂。
【請求項5】少なくとも触媒を用いて前記脱アルコール反応をさせることにより得られる、請求項4に記載の透明性耐熱樹脂。
【請求項6】請求項4または5に記載の透明性耐熱樹脂と、該透明性耐熱樹脂以外の熱可塑性樹脂とを含む、透明性耐熱樹脂組成物。」

(5b)
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】 そこで、本発明の課題は、耐熱性に優れるとともに、成形品中に泡やシルバーが入ることを抑制することができ、しかも、着色が少なく、良好な透明性を保持させることができる、透明性耐熱樹脂を提供することにある。」

(5c)
「【0010】
【発明の実施の形態】本発明に係る透明性耐熱樹脂の製造方法は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を脱アルコール反応させて該重合体中にラクトン環構造を導入させるものである。(重合体の製造)分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体とは、直接あるいはいくつかの原子を介して主鎖に結合した水酸基とエステル基を有する重合体であり、本発明の脱アルコール反応によって前記水酸基とエステル基の少なくとも一部が縮合環化してラクトン環を生じることができるものである。特に、前記水酸基とエステル基が近接して存在する場合には、ラクトン環が生成し易くなるので好ましく、水酸基とエステル基の間に介在する原子が6以下がさらに好ましく、4以下が最も好ましい。水酸基とエステル基の間に介在する原子が6を越えるものについては、分子間反応による架橋が起こり、ゲル化しやすくなるため、好ましくない。この重合体の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1000?1000000であることが好ましく、さらに好ましくは5000?500000、最も好ましくは40000?300000であるのがよい。分子量が上記範囲より低いと、機械的強度が低下して脆くなるという問題があり、上記範囲より高いと、流動性が低下して成形しにくくなるという問題があるからである。
【0011】前記重合体における分子鎖中の水酸基およびエステル基の割合は、例えば、2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステルが原料単量体である場合、重合体中の2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル単量体の比が、5?60重量%であることが好ましい。より好ましくは10?60重量%、さらに好ましくは20?50重量%、最も好ましくは20?40重量%であるのがよい。水酸基、エステル基を別々に持つ単量体、あるいは、繰り返し単位からなる場合には、水酸基とエステル基において等量的に少ない方の単量体、あるいは、繰り返し単位で表される。水酸基およびエステル基の割合が少ないと、脱アルコール後の重合体の耐熱性や耐溶剤性があまり向上しない。また、上記割合が60重量%を超える場合など、水酸基およびエステル基の割合が高すぎる場合は、重合体の架橋により、溶融賦形しにくくなったり、脱アルコール反応率が低下し、それゆえ、成形品に泡が入りやすくなるおそれがある。
・・(中略)・・
【0013】前記重合体を得る際の原料となる単量体は特に限定されないが、該原料単量体の少なくとも一部が、分子内に水酸基とエステル基とを有するビニル単量体、または、分子内に水酸基を有するビニル単量体と分子内にエステル基を有するビニル単量体との混合物であることが特に好ましく、これら以外に他のビニル単量体を共存させてもよい。
【0014】前記の分子内に水酸基とエステル基とを有するビニル単量体としては特に限定されないが、特に、一般式(1)で示される単量体が好ましく、例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。これらの中でも特に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルと2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが耐熱性向上効果が高いことから、最も好ましい。また、これらの単量体は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
【化1】


【0016】前記の分子内に水酸基を有するビニル単量体としては特に限定されないが、上記の一般式(1)で示される単量体や、α-ヒドロキシメチルスチレン、α-ヒドロキシエチルスチレン、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルなどの2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル、2-(ヒドロキシエチル)アクリル酸などの2-(ヒドロキシアルキル)アクリル酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、上記の一般式(1)で示される単量体を用いた場合、脱アルコール反応率、つまりラクトン環化率を高くしても、架橋反応によるゲル化が起こりにくいため、好ましい。
【0017】前記の分子内にエステル基を有するビニル単量体としては特に限定されないが、上記の一般式(1)で示される単量体や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、耐熱性、透明性の点からはメタクリル酸メチルが好ましい。
【0018】前記の分子内に水酸基とエステル基を有するビニル単量体、あるいは、分子内に水酸基を有するビニル単量体と分子内にエステル基を有するビニル単量体との混合物と併用してもよい他のビニル単量体としては特に限定されないが、特に、一般式(2)で示される単量体や、N-置換マレイミド等の単量体が好ましく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、この中でも、スチレン、α-メチルスチレンが特に好ましい。また、これらの単量体は1種のみ用いても2種以上を併用してもよい。また、併用するこれらの単量体の含有量は30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下、そしてさらに好ましくは10重量%以下が好ましい。」

(5d)
「【0034】前記脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、前記脱アルコール反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去する処理工程をいう。この処理工程が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーなどの成形不良の問題等が生じる。
【0035】脱アルコール反応の際に脱揮工程を併用する場合、脱アルコール反応の全体を通じて脱揮工程を併用する形態、および、脱揮工程を脱アルコール反応の過程全体にわたっては併用せずに過程の一部においてのみ併用する形態が挙げられる。なお、該脱揮工程は、脱アルコール反応と同時に終了することには限らず、脱アルコール反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。」

(5e)
「【0045】本発明の透明性耐熱樹脂は、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が5以下となるものである。該着色度(YI)は、好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1.7以下であるのがよい。着色度(YI)が5を越えるような透明性耐熱樹脂は、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できないこととなる。例えば、前述した本発明の製造方法によれば、容易に着色度(YI)を5以下とすることができる。
【0046】このように、本発明の透明性耐熱樹脂は、5以下という低い着色度(YI)と、90%以上という高い脱アルコール反応率とを兼ね備えたものであるが、これを得るには、少なくとも触媒を用いて脱アルコール反応をさせることが好ましい。通常、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を脱アルコール反応させてラクトン環を形成する際に触媒を用いなければ、比較的低い着色度(YI)の樹脂とすることができるのであるが、この場合、脱アルコール反応率すなわちラクトン環化率が低くなり、ひいては樹脂に充分な耐熱性を付与することができないからである。本発明の透明性耐熱樹脂を得る際のさらに好ましい実施形態としては、脱アルコール反応の際に前記有機リン化合物を触媒として用い、重合体中にラクトン環構造を導入させるようにするものである。
【0047】本発明の透明性耐熱樹脂は、重量平均分子量が40,000?300,000、さらに好ましくは80,000?200,000、最も好ましくは100,000?200,000であることが好ましい。本発明の透明性耐熱樹脂は、脱アルコール反応の際の触媒として有機リン化合物を用いて製造されるので、脱揮工程において分子量の低下を効果的に抑制し、上記範囲の重量平均分子量を保持することができるのである。重量平均分子量が40,000未満であると、機械的強度が低下し、脆くなりやすいという問題があり、一方、300,000、を越えると、流動性が低下して成形しにくくなるので、好ましくない。
【0048】本発明の透明性耐熱樹脂は、ラクトン環構造を有した重合体からなっており、その重合体が有するラクトン環構造の占める割合は、5重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは10重量%以上、最も好ましくは15重量%以上であるのがよい。ラクトン環構造の占める割合は、脱アルコール反応率によって決まるのであるが、本発明においては、前記のように90%以上の脱アルコール反応率を実現しうるので、容易に前記範囲を満足するラクトン環構造を有する樹脂とすることができる。ラクトン環構造の占める割合が5重量%未満であると、得られる透明性耐熱樹脂に十分な耐熱性が付与できない傾向がある。なお、ラクトン環構造の占める割合は、具体的には、実施例で後述する方法で算出することができる。」

(5f)
「【0050】本発明の透明性耐熱樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が、115℃以上、好ましくは120℃以上、さらに好ましくは125℃以上、最も好ましくは130℃以上であるのがよい。本発明の透明性耐熱樹脂中の残存揮発分は、その総量が、好ましくは1500ppm以下、より好ましくは1000ppm以下となる。これよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーなどの成形不良の原因となる。
【0051】本発明の透明性耐熱樹脂においては、射出成形により得られる成形品の、ASTM-D-1003に準じた方法で測定された全光線透過率が85%以上、さらに好ましくは88%以上、最も好ましくは90%以上であることが好ましい。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが85%未満であると、透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないこととなる。」

(5g)
「【0061】
【実施例】以下、本発明に係る実施例および比較例について説明するが、本発明は該実施例により何ら制限されるものではない。なお、以下の文中「部」は「重量部」を表す。
・・(中略)・・
【0062】
(脱アルコール反応率、ラクトン環構造の占める割合)
脱アルコール反応して得られた重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1.33hPa、80℃、3時間以上)することにより、揮発成分等を除去し、得られた白色固形状の樹脂の脱アルコール反応率を以下の方法(ダイナミックTG法)で分析した。
【0063】測定装置:Thermo Plus2 TG-8120 Dynamic TG ((株)リガク社製)
測定条件:試料量 約5mg
昇温速度 10℃/min
雰囲気 窒素フロー200ml/min
方法 階段状等温制御法(60?500℃間で重量減少速度値0.005%/sec以下で制御)
反応率:以下の参考例1で得られた重合体組成からすべての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、この測定において重量減少の始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少量から求めた。
【0064】すなわち、ラクトン環構造を有した重合体の熱分析(ダイナミックTG)において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。他方、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定した時の理論重量減少率(すなわち、その組成上において100%の脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比と、当該重合体組成における前記原料単量体の含有率とから算出することができる。これらの値(X,Y)を脱アルコール計算式:
1-(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
に代入してその値を求め、%で表記すると、脱アルコール反応率が得られる。
【0065】そして、この脱アルコール反応率分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の当該重合体組成における含有率(重量比)に、脱アルコール反応率を乗じることで、当該重合体中のラクトン環構造の占める割合を算出することができる。例として、後述の実施例1で得られる樹脂においてラクトン環構造の占める割合を計算する。この樹脂の理論重量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、この2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの重合体中の含有率(重量比)は組成上20.0%であるから、(32/116)×20.0≒5.52重量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測重量減少率(X)は0.09重量%であった。これらの値を上記の脱アルコール計算式に当てはめると、1-(0.09/5.52)≒0.984となるので、脱アルコール反応率は98.4%である。そして、重合体中ではこの脱アルコール反応率分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの当該樹脂中における含有率(20.0%)に、脱アルコール反応率(98.4%=0.984)を乗じると、当該樹脂中のラクトン環構造の占める割合は19.7(=20.0×0.984)重量%となる。
【0066】なお、この脱アルコール反応率は、脱揮工程を同時に併用する脱アルコール反応の前にあらかじめ脱アルコール反応をおこなう場合に、重合体の反応状態を規定する上で重要な指標となる。
(重量平均分子量)重合体の重量平均分子量は、GPC(東ソー社製GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。
【0067】(着色度(YI))樹脂の着色度(YI)は、樹脂をクロロホルムに溶かし、15重量%溶液として石英セルに入れ、JIS-K-7103に従い、色差計(日本電色工業社製、装置名:SZ-Σ90)を用いて、透過光で測定した。
(樹脂の熱分析)樹脂の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、TG(リガク社製、装置名:TG-8110)とDSC(リガク社製、装置名:DSC-8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM-D-3418に従い、中点法で求めた。
【0068】(樹脂中の揮発分測定)樹脂中に含まれる残存揮発分量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、装置名:GC-14A)を用いて測定して求めた。
(全光線透過率、曇価)透明度の指標として、得られた樹脂を射出成形(厚み3.2mm)し、全光線透過率および曇価を、ASTM-D-1003に従って、濁度計(日本電色工業社製、装置名:NDH-1001DP)を用いて測定した。
【0069】(成形品の耐衝撃性)得られた樹脂を射出成形して得たノッチなしの試験片を用いた以外はASTM-D-256に従って、アイゾット衝撃試験器((株)東洋精機社製)を用いて、衝撃強度(アイゾット値)を測定し、耐衝撃性の指標とした。
(樹脂中のラクトン環の確認)樹脂の骨格中にラクトン環があるかどうかは、赤外線吸収スペクトルおよび^(13)C-NMRにより確認した。なお、赤外線吸収スペクトルは、FTS-45赤外分光光度計(BIO-RAD製)を用い、^(13)C-NMRは、FT-NMR UNITY plus400(Varian製)を用いて測定を行った。
【0070】(参考例1)攪拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入管および滴下ポンプを付した30Lの反応釜に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。そして、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075部を加えると同時に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部、メタクリル酸メチル20部、トルエン25部、開始剤(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート)0.075部からなる溶液を3時間半かけて滴下しながら100?110℃で溶液重合を行い、さらに1時間半かけて熟成を行った。重合の反応率は91.8%で、重合体中の2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル含有率(重量比)は20.0%であった。また、この重合体の重量平均分子量は130,000であった。
【0071】[実施例1]参考例1で得られた重合体溶液100部に対して37.5部のメチルイソブチルケトン、および、重合体成分1部に対して0.005部のフェニル亜ホスホン酸を加え、窒素を通じつつ、100℃で5時間、脱アルコール反応を行った。得られた反応溶液の一部を取り出し、先に記載の方法で脱アルコール反応率を求めたところ、この時点での脱アルコール反応率は88.0%であった(ダイナミックTG法の測定で、0.66%の重量減少を検知)。
【0072】次いで、上記の脱アルコール反応で得られた重合体溶液を、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3?400hPa(10?300mmHg)、リアベント数1個とフォアベント数4個のベントタイプスクリュー2軸押出機(Φ=29.75mm、L/D=30)に、樹脂量換算で2.0kg/時間の処理速度で導入し、該押出機内で脱アルコール反応を完結させつつ脱揮処理を行い、押し出すことにより、透明なペレットを得た。
【0073】得られたペレットについて、先に記載の方法で脱アルコール反応率を求めたところ、脱アルコール反応率は98.4%であった(ダイナミックTG法の測定で、0.09%の重量減少を検知し、この方法で求めたラクトン環構造の占める割合は19.7重量%であった)。また、このペレットの着色度YIは1.7であった。
【0074】また、上記ペレットの重量平均分子量は120,000であり、また、耐熱性の指標である5%重量減少温度は367℃であったことから、このペレットは高温領域での熱安定性に優れていることがわかった。なお、ガラス転移温度は135℃であった。また、上記ペレット中の残存揮発分は以下に示す値となった。
メタクリル酸メチル:60ppm
2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル:70ppm
メタノール:190ppm
トルエン:160ppm
メチルイソブチルケトン:230ppm
このペレットを250℃で射出成形することにより、安定的に泡やシルバーが入らない、無色透明(全光線透過率:91.0%、曇価:2.5%)の成形品を得た。また、衝撃強度(アイゾット値)を測定したところ、177N・cm/cm^(2)(18kgf・cm/cm^(2))であった。成形品中には泡は見られず、また、射出成形機内で樹脂を250℃で5分間滞留させた後に射出成形しても、成形品には泡は見られなかった。」

(イ)甲5に記載された発明
上記甲5には、上記(5a)ないし(5g)の記載(特に下線部)からみて、
「分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を脱アルコール反応させて該重合体中にラクトン環構造を5重量%以上導入させた後に当該重合体を一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥することにより、揮発成分等を除去して得られる透明性耐熱樹脂において、ダイナミックTG測定における150?300℃の間での重量減少率から求めた脱アルコール反応率が90%以上であり、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が5以下であり、ガラス転移温度(Tg)が115℃以上であり、かつ、射出成形により得られる成形品のASTM-D-1003に準じた方法で測定された全光線透過率が85%以上であることを特徴とする透明性耐熱樹脂。」
に係る発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているものといえる。

カ.甲6

(ア)甲6に記載された事項
上記甲6には、申立人が申立書第18頁第20行ないし第19頁第20行で指摘したとおりの事項を含めて、以下の事項が記載されている。

(6a)
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内にラクトン環構造を持つ熱可塑性の重合体(A)を必須構成成分とする熱可塑性樹脂組成物において、
さらに、下記一般式(b1):
CH_(2)=CR^(a)-CO-O-R^(b) (b1)
(ただし、R^(a)は水素原子またはアルキル基であり、R^(b)は炭素数2?18の有機残基である。)
で表される不飽和単量体由来の構成単位からなる熱可塑性の重合体(B)を含み、
前記重合体(A)と前記重合体(B)とが混ざり合っている、
ことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記重合体(A)が、下記一般式(a3):
【化1】


(ただし、R^(6)、R^(7)、R^(8)は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1?20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。)
で表されるラクトン環構造を有する、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記重合体(A)と前記重合体(B)との屈折率の差が0.030以下である、請求項1または2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記重合体(A)と前記重合体(B)とが熱力学的に相溶している、請求項1から3までのいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。」

(6b)
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ラクトン環構造を有する重合体は、上述したような各種の優れた物性を有する一方で、成形加工性については乏しく、該重合体を必須とする樹脂組成物をフィルム状やシート状に成形しようとした場合、成形途中で割れやひびが生じ易いという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、分子内にラクトン環構造を有する熱可塑性の重合体を必須構成成分とし、フィルム状やシート状等に成形する際の成形加工性にも優れている、熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。」

(6c)
「【0008】
以下、本発明の組成物の各構成成分について具体例を挙げて詳しく説明し、引き続き、熱可塑性樹脂組成物について説明する。
〔重合体(A)〕
本発明の組成物の必須構成成分である重合体(A)は、分子内にラクトン環構造を持つ熱可塑性の重合体(分子鎖中にラクトン環構造が導入された熱可塑性の重合体)であれば、限定はされず、その製造方法についても限定されないが、好ましくは、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を重合によって得た(重合工程)後に、得られた重合体(a)を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入する(ラクトン環化縮合工程)ことによって得られる。
【0009】
重合工程においては、下記一般式(a1)で表される不飽和単量体を含む単量体成分の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得る。
・・(中略)・・
【0011】
・・(中略)・・
上記一般式(a1)で表される不飽和単量体としては、例えば、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチルなどが挙げられる。なかでも、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。これらの不飽和単量体は1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0012】
単量体成分中の、上記一般式(a1)で表される不飽和単量体の含有割合は、5?90重量%が好ましく、より好ましくは10?70重量%、さらに好ましくは10?60重量%、特に好ましくは10?50重量%である。上記含有割合が5重量%よりも少ないと、得られるラクトン環含有重合体の耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が低下するおそれがあり、90重量%よりも多いと、ラクトン環構造を形成する際に架橋反応が起こってゲル化し易くなり、流動性が低下して溶融成形しにくくなる場合があったり、未反応の水酸基が残りやすくなるために成形の際にさらに縮合反応が進行して揮発性物質が発生してシルバーストリークが入りやすくなったりするなどのおそれがある。
【0013】
単量体成分は、上記一般式(a1)で表される不飽和単量体以外の、その他の単量体を含むことが好ましい。該その他の単量体としては、本発明の効果を損なわない範囲で選択すれば、限定はされないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記一般式(a2)で表される不飽和単量体が好ましく挙げられる。上記その他の単量体は、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
・・(中略)・・
【0015】
・・(中略)・・
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記一般式(a1)で表される不飽和単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルであれば、限定はされないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル;が挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なかでも特に、耐熱性、透明性の点から、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0016】
上記(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、10?95重量%が好ましく、より好ましくは10?90重量%、さらに好ましくは40?90重量%、特に好ましくは50?90重量%である。
・・(中略)・・
【0018】
上記一般式(a2)で表される不飽和単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。なかでも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α-メチルスチレンが好ましい。
上記一般式(a2)で表される不飽和単量体を用いる場合、単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、0?30重量%が好ましく、より好ましくは0?20重量%、さらに好ましくは0?15重量%、特に好ましくは0?10重量%である。」

(6d)
「【0031】
環化縮合反応を溶剤の存在下で行い、かつ、環化縮合反応の際に脱揮工程を併行することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併行する形態、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併行せずに過程の一部においてのみ併行する形態が挙げられる。脱揮工程を併行する方法では、縮合環化反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体等の揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要により減圧加熱条件下で、除去処理する工程をいう。この除去処理が不十分であると、生成した樹脂中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質等によって着色したり、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こったりする問題等が生じる。」

(6e)
「【0046】
重合体(A)は、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が、6以下であるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。着色度(YI)が6を越えると、樹脂組成物の透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できない場合がある。
重合体(A)中のラクトン環構造の含有割合は、5?80重量%であることが好ましく、より好ましくは10?60重量%、さらにより好ましくは10?50重量%である。
重合体(A)は、熱重量分析(TG)における5%重量減少温度が、330℃以上であることが好ましく、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは360℃以上である。熱重量分析(TG)における5%重量減少温度は、熱安定性の指標であり、これが330℃未満であると、十分な熱安定性を発揮できないおそれがある。
【0047】
重合体(A)は、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110℃以上、より好ましくは115℃以上、さらに好ましくは120℃以上である。
重合体(A)は、それに含まれる残存揮発分の総量が、5,000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは3,000ppm以下である。残存揮発分の総量が5,000ppmよりも多いと、成形時の変質等によって着色したり、発泡したり、シルバーストリークなどの成形不良の原因となる。
重合体(A)は、射出成形により得られる成形品の、JIS K-7105に準じた方法で測定された全光線透過率が、85%以上であることが好ましく、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは90%以上である。全光線透過率は、透明性の目安であり、これが85%未満であると、樹脂組成物の透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないおそれがある。
【0048】
重合体(A)は、射出成形により得られる成形品の、JIS K-7105に準じた方法で測定された曇価が、5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下である。曇価は、透明性の目安であり、これが5%を越えると、樹脂組成物の透明性が低下し、本来目的とする用途に使用できないこととなる。」

(6f)
「【実施例】
【0065】
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下では、便宜上、「重量部」を単に「部」と、「リットル」を単に「L」と記すことがある。また、「重量%」を「wt%」と記すことがある。
実施例および比較例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
<重合反応率、重合体組成分析>
得られた重合反応混合物中の未反応単量体の量をガスクロマトグラフィー(島津製作所社製、製品名:GC17A)で測定し、その測定値をもとに、重合反応時の反応率、および、重合体中の特定の単量体由来の構成単位の含有割合を算出した。
【0066】
<ダイナミックTG>
重合体(もしくは重合体溶液あるいはペレット)を、一旦テトラヒドロフランに溶解もしくは希釈し、過剰のヘキサンもしくはメタノールへ投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(1mmHg(1.33hPa)、80℃、3時間以上)することによって揮発成分などを除去し、得られた白色固形状の重合体を、以下の方法・条件に基づくダイナミックTG法で分析した。
測定装置:Thermo Plus2 TG-8120 Dynamic TG((株)リガク製)
測定試料重量:5?10mg
昇温速度:10℃/分
測定雰囲気:窒素フロー 200mL/分
方法:階段状等温制御法(60?500℃の間で重量減少速度値0.005wt%/秒以下で制御)
<ガラス転移温度(Tg)>
重合体および樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)を、以下の方法・条件により測定した。
【0067】
測定装置:DSC8230((株)リガク製)
測定試料重量:10mg
昇温速度:10℃/分
測定雰囲気:窒素フロー 50mL/分
方法:ASTM-D-8230に準拠し、中点法で求めた。
<脱アルコール反応率、ラクトン環構造の含有割合>
脱アルコール反応率(%)は、得られた重合体が有する水酸基が全てメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において、重量減少が始まる前の150℃から、重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から求めた。
【0068】
すなわち、まず、ラクトン環構造を有する重合体のダイナミックTG測定において、150℃から300℃までの間の重量減少率(wt%)の測定を行い、その値を実測重量減少率(X)(wt%)と定義する。
次に、当該重合体の組成から、その重合体組成に含まれる全ての水酸基がラクトン環の形成に関与するためアルコールになり脱アルコールすると仮定したときの重量減少率(すなわち、その組成上において100%脱アルコール反応が起きたと仮定して算出した重量減少率)を計算し、その値を理論重量減少率(Y)(wt%)と定義する。具体的には、理論重量減少率(Y)は、当該重合体中の、脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する単量体由来の構成単位の含有割合(モル%)、すなわち、使用した単量体成分全体中の、水酸基を有する単量体の配合割合(モル%)から算出することができる。
【0069】
これら実測重量減少率(X)および理論重量減少率(Y)の値を下記計算式:
脱アルコール反応率(%)
=〔1-(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))〕×100
に代入することにより脱アルコール反応率(%)を求めることができる。そして、この脱アルコール反応率に相当する分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、ラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する単量体由来の構成単位の、当該重合体における含有割合(wt%)に、脱アルコール反応率(%)を乗じることで、当該重合体中のラクトン環構造の含有割合(wt%)を算出することができる。
【0070】
以下に、例として、後述する製造例1-1で得られる重合体(A)についてラクトン環構造の含有割合を計算する。まず、この重合体の理論重量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル由来の構成単位の重合体中の含有割合は組成上10.0wt%であることから、理論重量減少率(Y)は、(32/116)×10.0≒2.76(wt%)となる。また、ダイナミックTG測定のよる実測重量減少率(X)は、0.10wt%であった。これら実測重量減少率(X)および理論重量減少率(Y)の値を上記計算式に代入すると、〔1-(0.10/2.70)〕×100≒96.4となるので、脱アルコール反応率は96.4%となる。そして、当該重合体ではこの脱アルコール反応率に相当する分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル由来の構成単位の当該重合体中における含有割合(10.0wt%)に、脱アルコール反応率(96.4%)を乗じると、当該重合体中のラクトン環構造の含有割合は9.6wt%となる。
【0071】
<重量平均分子量(Mw)>
重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(東ソー社製、GPCシステム)のポリスチレン換算により求めた。
<屈折率>
重合体の屈折率は、アッベ屈折率計((株)アタゴ製、製品名:アッベ屈折率計4T)を用い、ナトリウムD線についての25℃での屈折率(%)を測定した。
<着色度YI>
重合体を15wt%となるようにクロロホルムに溶解させた溶液を、石英セルに入れ、JIS K-7103に準拠し、色差計(日本電色工業社製、製品名:SZ-Σ90)を用いて、透過光で測定した。
【0072】
<成型加工性>
・・(中略)・・
(フィルム成型加工性)
○:成形したフィルムに割れやひびは全く認められなかった。
【0073】
△:成形したフィルムに割れやひびが少し認められた。
×:成形したフィルムに割れやひびが多く認められた。
(フィッシュアイの有無)
○:全く認められなかった。
△:少し認められた。
×:多く認められた。
<ヘイズ>
JIS K-7105に準拠し、濁度計(日本電色工業社製、製品名:NDH-1001DP)を用いて、フィルムのヘイズを測定した。
【0074】
<耐候性>
促進耐候性試験機(Eye Super UV Tester、岩崎電気社製、製品名:Suv-F1)を用い、フィルム表面に、強度100mW/cm^(2)のUVを100時間照射したときの、該フィルムの着色度YIを測定し、初期値(UV照射前の着色度YI)との差(ΔYI)で評価した。
<耐溶剤性>
フィルム表面に、イソプロピルアルコール(IPA)またはキシレンを接触させ、3日間放置後、その外観を観察し、以下の基準により評価した。
【0075】
○:変化が認められなかった。
△:微クラックの発生が認められた。
×:フィルム表面は膨潤し、少なくとも一部が溶解していた。
<表面硬度(鉛筆硬度)>
フィルムの表面硬度(鉛筆硬度)を、JIS K-5400に準拠し、鉛筆引掻き試験機(JIS K-5401)を用いて、鉛筆引掻き試験値として測定した。
〔製造例1-1〕
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた30Lの反応釜に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル5部およびメタクリル酸メチル45部からなる単量体成分と、トルエン50部とを仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。
【0076】
その後、還流下(100?110℃)で、開始剤としてターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.15部を加えて溶液重合を行い、さらに5時間かけて熟成を行って、重合体(a1)の溶液を得た。重合の反応率は95.0wt%であった。
得られた重合体(a1)中の、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル由来の構成単位の含有割合は10.0wt%であり、重合体(a1)の重量平均分子量は150,000であった。
得られた重合体(a1)の溶液に、重合体(a1)100部に対しメチルイソブチルケトン50部を加えるとともに、該溶液100部に対しリン酸メチル/リン酸ジメチル混合物(東京化成工業社製)0.1部を加え、窒素を通じつつ、還流下(95?100℃)で5時間、環化縮合反応を行った。得られた反応溶液の一部を取り出し、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.62%の重量減少率を検知した。
【0077】
環化縮合反応後に得られた重合体溶液を、ベントタイプスクリュー二軸押出機(直径=29.75mm、L/D=30、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3?400hPa、リアベント数1個、フォアベント数4個)に、重合体量換算で2.0kg/hの処理速度で導入し、上記押出機内で、さらなる環化縮合反応と、脱揮とを行い、押出すことにより、透明な重合体(A1)のペレットを得た。
得られた重合体(A1)のペレットについて、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.1wt%の重量減少率を検知した。また、重合体(A1)の重量平均分(Mw)子量は165,000であり、ガラス転移温度(Tg)は123℃、屈折率は1.499、着色度YIは0.3であった。
【0078】
〔製造例1-2〕
製造例1-1と同様の反応釜に、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル10部およびメタクリル酸メチル40部からなる単量体成分と、メチルイソブチルケトン(MIBK)50部を仕込み、窒素を通じつつ100℃まで昇温した。
その後、製造例1-1と同様に、溶液重合および熟成を行って、重合体(a2)の溶液を得た。重合の反応率は96.0wt%であった。
得られた重合体(a2)中の、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル由来の構成単位の含有割合は20.0wt%であり、重合体(a2)の重量平均分子量は170,000であった。
【0079】
環化縮合反応、および、押出し機内でのさらなる環化縮合反応と脱揮は、製造例1-1と同様に行い、透明な重合体(A2)のペレットを得た。
得られた重合体(A2)のペレットについて、ダイナミックTGの測定を行ったところ、0.16wt%の重量減少率を検知した。また、重合体(A2)の重量平均分子量(Mw)は150,000であり、ガラス転移温度(Tg)は129℃、屈折率は1.509、着色度YIは0.6であった。」

(イ)甲6に記載された発明
上記甲6には、上記(6a)ないし(6f)の記載(特に下線部)からみて、
「2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルなどの下記一般式(a1)で表される不飽和単量体10?50重量%及びメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル50?90重量%を含有する単量体成分を重合することにより得られた分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を加熱処理して環化縮合することによりラクトン環構造を重合体に導入するとともに脱揮することによって得られる分子内にラクトン環構造を持つ熱可塑性の重合体であって、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が1以下であり、ガラス転移温度(Tg)が、120℃以上であり、かつ、当該重合体の射出成形により得られる成形品の、JIS K-7105に準じた方法で測定された全光線透過率が90%以上である重合体。」
に係る発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているものといえる。

キ.甲7ないし甲12に記載された事項

(ア)甲7
上記甲7には、申立人が申立書第19頁第23行から第24行で主張するとおりの、アクリル系樹脂において、分子量が500以下のアクリル系樹脂(成分)は、成形時の外観不良を発生させやすくなるために、可能な限り少ない方がよいことが記載されている(【0025】)。

(イ)甲8
上記甲8には、申立人が申立書第19頁第27行から第29行で主張するとおりの、高い耐熱性を付与し得るだけのN-置換マレイミドを導入した場合にも、残存マレイミド類単量体及び成形加工時等の加熱により発生するマレイミド類単量体を低減し、かつ着色を抑制することができることが記載されている(【0008】)。

(ウ)甲9
上記甲9には、申立人が申立書第20頁第3行から第11行で主張するとおりの、メタクリル酸エステル単量体単位(A):50?97質量%と、マレイミド系構造単位、グルタルイミド系構造単位、及びラクトン環構造単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の、主鎖に環構造を有する構造単位(B):3?30質量%と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なその他のビニル系単量体単位(C)0?20質量%と、を含むメタクリル系樹脂(I)100質量部を含有するフィルムにおいて(【請求項1】)、当該メタクリル系樹脂の製造時に、残存モノマーの低減化の観点から、重合工程後に、重合温度よりも高い温度に昇温し、一定時間保持することが好ましいこと(【0058】)が記載されている。

(エ)甲10
上記甲10には、申立人が申立書第20頁第15行から第16行で主張するとおりの、マレイミドアクリル系樹脂において、未反応単量体が残存すると、透明性、耐候性などの特性が低下する等の問題があることが記載されている([0095])。

(オ)甲11
上記甲11には、申立人が申立書第20頁第19行から第21頁上中段(2つの表まで)で主張するとおりの、式(1)に示す(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)と、式(2)に示すN-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(B)とを有する熱可塑性樹脂(C)を含む、ガラス転移温度(Tg)が115℃以上130℃未満であり、メルトフローレート(MFR)が7.5?50[g/10分]であり、熱分解開始温度(Td)が300℃以上である、熱可塑性樹脂組成物において(【請求項1】)、当該樹脂(C)又は樹脂組成物であれば、光弾性係数(Cd)を小さくし、光学フィルムとしての応力に対する複屈折の変動を小さくすること(0?4.5×10^(-12)Pa^(-1))ができること(【0042】)が記載され、実施例(比較例)として0.01?4.47×10^(-12)Pa^(-1)が達成されていること(【0112】【表1】及び【0113】【表2】)も記載されている。

(カ)甲12
上記甲12には、申立人が申立書第21頁下から第4行から第22頁中段(表まで)で主張するとおりの、正の位相差を与えるラクトン環構造単位と負の位相差を与える芳香族単量体由来の構造単位とを有するアクリル系共重合体を主成分として含有することを特徴とする偏光子保護フィルムが記載され(【請求項1】)、当該偏光子保護フィルムが、光弾性係数の絶対値20×10^(-12)m^(2)/N以下であることも記載されており(【0033】)、さらに実施例(比較例)として1.3?2.1×10^(-12)m^(2)/Nの光弾性係数が達成されること(【0163】【表1】)が記載されている。

(3)対比・検討
以下、本件発明1ないし8につき、それぞれ、各甲号証に記載された発明と個々に対比・検討する。

ア.本件発明1について

(ア)甲1発明との対比・検討

(a)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「下記式(2)で表されるN-置換マレイミド単量体(a)由来の繰り返し単位(Y1)」及び「下記式(3)で表されるN-置換マレイミド単量体(b)由来の繰り返し単位(Y2)」は、いずれも本件発明1における「N-置換マレイミド系構造単位(B-1)」に相当し、甲1発明の「アクリル系熱可塑性樹脂」は、「メタクリレート単量体由来の繰り返し単位(X)50?95質量%」を含有する、すなわちメタクリレート単位を主たる構成単位とするものであるから、本件発明1における「メタクリル系樹脂」に相当することが当業者に自明である。
また、甲1発明における「ガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり」との点は、本件発明1における「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり」との間で、「120℃超160℃以下」との範囲で重複するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲1発明とは、下記の2点で相違し、その余で一致している。

相違点a-1:本件発明1では「前記メタクリル系樹脂のメタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下であ」るのに対して、甲1発明では、アクリル系熱可塑性樹脂のメタノール可溶分とメタノール不溶分との量比につき特定されていない点
相違点a-2:本件発明1では「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」のに対して、甲1発明では、アクリル系熱可塑性樹脂の上記イエローネスインデックス(YI)につき特定されていない点

(b)検討
事案に鑑み、相違点a-2につき、まず検討する。

(b-1)相違点a-2について
上記相違点a-2につき検討すると、甲1には、甲1発明の「アクリル系熱可塑性樹脂」に係る「実施例1」なる具体例として、重合工程の後、メタノールを重合溶液に添加して、ホモジナイザー(乳化分散)処理を行い、未反応単量体について液-液抽出する前処理を施すことで未反応単量体などを重合反応液から分離する前処理による単量体分離後の重合反応液をさらに脱揮工程に供して得られるアクリル系熱可塑性樹脂が開示されており(摘示(1i))、当該アクリル系熱可塑性樹脂が、「イエロー・インデックス」で評価される耐候性試験において、PMMA(ポリメチルメタクリレート)と同等であることも開示されている(摘示(1b)及び申立人が摘示する【0186】【表1】参照)。
確かに、上記前処理は、難揮発性のものを含む未反応単量体などの低分子化合物からなる不純物、すなわち、本件発明でいう「メタノール可溶分」が除去される工程であるから、当該前処理工程に供された上記具体例の「アクリル系熱可塑性樹脂」は、実質的に本件発明でいう「メタノール不溶分」に対応し、当該「アクリル系熱可塑性樹脂」単独の成形体がPMMA(成形体)と同等の「イエロー・インデックス」を示すことが甲1に開示されているものと理解することができるかにも見える。
ここで、PMMAは、従来から、いわゆる有機ガラスとして使用されているとおり、極めて透明性、耐候性などに優れ、経時的に極めて着色(黄変)しにくい樹脂であることは、当業者の技術常識であるものとは認められる。
しかしながら、甲1で測定されている「イエロー・インデックス」は、樹脂又はその成形体を温度63℃、湿度60%の環境で約150時間紫外線に暴露後のものであり、樹脂が劣化分解した後の物性値であるのに対して、本件発明における「メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」は、樹脂製造後にメタノールで分別してなる「不溶分」につき、更なる熱履歴又は紫外線暴露に付さずにクロロホルム溶液として測定してなるものであるから、直接的に対比することができないものである。
また、実質的に本件発明でいう「メタノール不溶分」に対応する上記甲1発明に係る上記具体例の「アクリル系熱可塑性樹脂」単独の成形体がPMMA(成形体)と同等のイエロー・インデックスを示すからといって、メタクリル系樹脂全体とそのメタノール不溶分とのYIにつき上記2.で説示したとおりの相関があるとしても、樹脂全体のYIに基づき、メタノール不溶分のYIが正確に算出把握できるものともいえない。
よって、甲1発明のものが、本件発明でいう「イエローネスインデックス」につき、低い「0?7」の範囲にあるということはできない。
してみると、上記相違点a-2は、実質的な相違点である。
そして、甲1及び他の甲号証の記載を検討しても、本件発明でいう「メタノール不溶分」の「イエローネスインデックス」につき着目すべき事項が存するものでもないから、上記相違点a-2に係る事項が、他の甲号証の記載に照らして、甲1発明において当業者が適宜なし得ることともいえない。

(b-2)本件発明1の効果について
本件発明1の効果につき検討すると、甲1発明は、「透明性に優れ、且つ、耐熱性、耐候性、低吸水性が良好」で「さらにその複屈折性が高度に制御されたアクリル系熱可塑性樹脂」及び当該「アクリル系熱可塑性樹脂からなる成形体」の提供を目的としている(申立人が摘示する【0019】参照)のに対して、本件発明1を含む本件発明の解決課題は、上記1.で示したとおりの「光学用途に使用されるような成形体、特に光路長が長いレンズなどの成形体とする場合に、耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、色調及び透明性に優れ、成形性に優れるメタクリル系樹脂の提供」にあるから、本件発明と甲1発明とは、解決しようとする課題につき耐候性及び色調の点を除き略同一であるものとはいえる。
しかるに、甲1発明は、上記で説示したとおり、温度63℃、湿度60%の環境で約150時間紫外線に暴露後の樹脂が劣化分解したことによる経時的着色(黄変)で評価する「耐候性」につき論及するものであって、本件発明のような樹脂の製造直後の色調(着色)につき論及するものではないから、本件発明は、上記解決課題、特に色調に優れる点につき、甲1発明を含む従来技術に比して、当該従来技術の効果から予期し得ない「色調に優れる」との優れた効果を奏するものと認められ、本件発明1を含む本件発明が、上記相違点(特に相違点a-2)に係る事項により、甲1発明を含む従来技術に比して、特段の効果を奏するものと認めることができる。

(b-3)小括
以上を総合すると、本件発明1は、上記相違点a-1につき論ずるまでもなく、上記甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、また、甲1に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものということもできない。

(イ)甲2発明との対比・検討

(a)対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると、甲2発明における「単量体成分として」の「N-置換マレイミド(a)」は、共重合されることにより樹脂の構造単位として樹脂(重合体)に含まれることが当業者に自明であるから、本件発明1における「N-置換マレイミド系構造単位(B-1)」に相当し、甲2発明の「耐熱性メタクリル系樹脂」は、本件発明1における「メタクリル系樹脂」に相当する。
また、甲2発明における「ガラス転移温度(Tg)が120℃以上であり」との点は、本件発明1における「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり」との間で、「120℃超160℃以下」との範囲で重複するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲2発明とは、下記の2点で相違し、その余で一致している。

相違点b-1:本件発明1では「前記メタクリル系樹脂のメタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下であ」るのに対して、甲2発明では、耐熱性メタクリル系樹脂のメタノール可溶分とメタノール不溶分との量比につき特定されていない点
相違点b-2:本件発明1では「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」のに対して、甲2発明では、「耐熱性メタクリル系樹脂」につき「黄変度が3.0以下」であり、「メタノール不溶分」のイエローネスインデックス(YI)につき特定されていない点

(b)検討
事案に鑑み、相違点b-2につき、まず検討する。

(b-1)相違点b-2について
上記相違点b-2につき検討すると、甲2には、「上記構成によれば、耐熱性メタクリル系樹脂中におけるN-置換マレイミド(a)の残存量を低減でき」、「残存N-置換マレイミド(a)による耐熱性メタクリル系樹脂の着色を抑制することができる」ことにより、「結果、透明性および耐熱性に優れ、しかも着色の少ない耐熱性メタクリル系樹脂が得られる」とされ、「耐熱性メタクリル系樹脂の黄変度は、3.0以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好まし」く、「さらに、上記耐熱性メタクリル系樹脂の未反応のN-置換マレイミドの残存量が0.1重量%以下であることがより好ましく、0.05重量%以下であることがさらに好ましい。」(摘示(2f))と記載されているが、甲2における当該「黄変度」は、「JIS K 7103」なる規格(現在は廃止されている。)による樹脂(プラスチック)の劣化試験における物性値であり、甲1における「イエロー・インデックス」と同様に、樹脂製造後にメタノールで分別してなる「不溶分」につき、更なる熱履歴又は紫外線暴露を付さずにクロロホルム溶液として測定してなる本件発明における「20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」とは、直接的に対比することができず、甲2発明の「耐熱性メタクリル系樹脂」における「メタノール可溶分」に相当する未反応単量体などの難揮発性低分子化合物からなる不純物を含まない「メタノール不溶分」である部分につき、本件発明1でいう「イエローネスインデックス」が0?7なる極めて低いものとなっていると理解することはできない。
したがって、上記相違点b-2は、実質的な相違点である。
そして、甲2及び他の甲号証の記載を検討しても、本件発明でいう「メタノール不溶分」の「イエローネスインデックス」につき着目すべき事項が存するものでもないから、上記相違点b-2に係る事項が、他の甲号証の記載に照らして、甲2発明において当業者が適宜なし得ることともいえない。

(b-2)本件発明1の効果について
本件発明1の効果につき検討すると、甲2発明は、「透明性および耐熱性に優れ、しかも着色の少ない耐熱性メタクリル系樹脂」の提供を目的としている(申立人が摘示する【0012】参照)のに対して、本件発明1を含む本件発明の解決課題は、上記1.で示したとおりの「光学用途に使用されるような成形体、特に光路長が長いレンズなどの成形体とする場合に、耐熱性が高く、高度に複屈折が制御され、色調及び透明性に優れ、成形性に優れるメタクリル系樹脂の提供」にあるから、本件発明と甲2発明とは、解決しようとする課題の点で「着色が少ない」及び「色調」の点を除き略同一であるとはいえる。
しかるに、甲2発明は、上記で説示したとおり、「JIS K 7103」なる規格(現在は廃止されている。)による樹脂(プラスチック)の劣化試験における経時的着色(黄変)で評価する「黄変度」につき論及するものであって、本件発明のような樹脂の製造直後の色調(着色)につき論及するものではないから、本件発明は、上記解決課題、特に色調に優れる点につき、甲2発明を含む従来技術に比して、当該従来技術の効果から予期し得ない「色調に優れる」との優れた効果を奏するものと認められ、本件発明1を含む本件発明が、上記相違点(特に相違点b-2)に係る事項により、甲2発明を含む従来技術に比して、特段の効果を奏するものと認めることができる。

(b-3)小括
以上を総合すると、本件発明1は、相違点b-1につき検討するまでもなく、上記甲2発明、すなわち甲2に記載された発明であるということはできず、また、甲2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであるともいうことはできない。

(ウ)甲3発明との対比・検討

(a)対比
本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「単量体成分として」の「N-シクロヘキシルマレイミドを主成分とし、シクロヘキシルアミノ無水コハク酸含量が0.001?1重量%(対N-シクロヘキシルマレイミド)であることを特徴とする耐熱性樹脂製造用の原料」は、共重合されることにより樹脂の構造単位として樹脂(重合体)に含まれることが当業者に自明であるから、本件発明1における「N-置換マレイミド系構造単位(B-1)」に相当し、甲3発明の「耐熱性樹脂」は、当該「原料5?50重量部とメタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル95?50重量部との合計100重量部及びスチレンなどの共重合可能な少なくとも1種の単量体30重量部以下を共重合して得られる」、すなわちメタクリル酸エステルを上記量共重合させて主たる構成単位とするものであるから、本件発明1における「メタクリル系樹脂」に相当することが当業者に自明である。
また、甲3発明における「ガラス転移温度が120℃以上である」との点は、本件発明1における「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり」との間で、「120℃超160℃以下」との範囲で重複するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲3発明とは、下記の2点で相違し、その余で一致している。

相違点c-1:本件発明1では「前記メタクリル系樹脂のメタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下であ」るのに対して、甲3発明では、耐熱性樹脂のメタノール可溶分とメタノール不溶分との量比につき特定されていない点
相違点c-2:本件発明1では「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」のに対して、甲3発明では、「耐熱性樹脂」の「黄色度(YI)が1.6以下、または溶液での黄色度(YIsol.)が3以下であ」る点

(b)検討
事案に鑑み、相違点c-2につき、まず検討する。

(b-1)相違点c-2について
上記相違点c-2につき検討すると、甲3には、甲3発明の「耐熱性樹脂」に係る「実施例1」ないし「実施例3」及びそれらに対する「比較例1」ないし「比較例4」なる具体例が記載されており(摘示(3d))、それらの具体例の結果をを総合すると、共重合ペレットの溶液での黄色度(YIsol.)は、成型品の黄色度(YI)を下回るものであって、不純物含量が低減化された各実施例のものが、低減化されていない各比較例のものに比して、共重合ペレットの溶液での黄色度(YIsol.)及び成型品の黄色度(YI)の点で明らかに着色(黄変)が抑制されており、特に成型品の黄色度(YI)の点で、極めて着色(黄変)しにくい樹脂であることが当業者の技術常識であるPMMAと同等の黄色度となっていることが看取できるものとはいえる。
しかしながら、上記共重合ペレットの溶液での黄色度(YIsol.)は、本件発明のものとは異なる熱履歴を経てペレットとなったものの黄色度であり、さらに、メタノール可溶分が除外されたメタノール不溶分に係るものでもないから、上記2.で説示したように、メタクリル系樹脂全体とそのメタノール不溶分とのYIにつき相関関係があるとしても、樹脂全体のYIに基づき、メタノール不溶分のYIが正確に算出把握できるものとはいえない。
してみると、不純物含量が低減化され、成型品の黄色度(YI)が1.6以下と低い甲3発明に係る上記具体例の「耐熱性樹脂」につき、「メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」が、「0?7」の範囲にあるものと理解することができるものではない。
したがって、上記相違点c-2は、実質的な相違点である。
そして、甲3及び他の甲号証の記載を検討しても、本件発明でいう「メタノール不溶分」の「イエローネスインデックス」につき着目すべき事項が存するものでもないから、上記相違点c-2に係る事項が、他の甲号証の記載に照らして、甲3発明において当業者が適宜なし得ることともいえない。

(b-2)小括
以上を総合すると、本件発明1は、相違点c-1につき検討するまでもなく、上記甲3発明、すなわち甲3に記載された発明であるとはいえず、また、甲3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであるともいえない。

(エ)甲4発明との対比・検討

(a)対比
本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における「式(2)に示すN-フェニルマレイミド単位および/またはN-シクロヘキシルマレイミド単位などのN-置換マレイミド単量体に由来する構成単位(B)」は、本件発明1における「N-置換マレイミド系構造単位(B-1)」に相当し、甲4発明の「熱可塑性樹脂(C)」は、「式(1)に示す(メタ)アクリレート単量体に由来する構成単位(A)の少なくとも50質量%」を含有する、すなわち(メタ)アクリレート単位を主たる構成単位とするものであるから、本件発明1における「メタクリル系樹脂」に相当することが当業者に自明である。
また、甲4発明における「ガラス転移温度(Tg)が110℃?150℃であり」との点は、本件発明1における「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり」との間で、「120℃超150℃以下」との範囲で重複するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲4発明とは、下記の2点で相違し、その余で一致している。

相違点d-1:本件発明1では「前記メタクリル系樹脂のメタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下であ」るのに対して、甲4発明では、「熱可塑性樹脂(C)」のメタノール可溶分とメタノール不溶分との量比につき特定されていない点
相違点d-2:本件発明1では「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」のに対して、甲4発明では、「JISK7373による黄色度(YI)が1.0未満であ」り、「熱可塑性樹脂(C)」の上記イエローネスインデックス(YI)につき特定されていない点

(b)検討

(b-1)相違点d-1について
上記相違点d-1につき検討すると、上記(1)の前提のとおり、本件発明における「メタノール可溶分」は「難揮発性の未反応単量体、熱分解生成物及び低重合度オリゴマーなどの低分子化合物からなるメタノール可溶性の不純物」であるところ、甲4には、甲4発明の「熱可塑性樹脂(C)」の製造において、不純物(CASA)が少ない単量体を使用して重合を行った後、脱揮処理を行い、残留したo-キシレン、CASA、ベンジルアルコールの量が低減化されていることが記載されている(摘示(4e))のみであって、それらはいずれも揮発性のものであるから、本件発明における「難揮発性の未反応単量体、熱分解生成物及び低重合度オリゴマーなどの低分子化合物からなるメタノール可溶性の不純物」である「メタノール可溶分」を低減化するような技術思想が存するものとは認められない。
してみると、上記相違点d-1は、実質的な相違点であるものというべきである。
また、甲4発明において、他の甲号証に記載された事項を組み合わせるべき動機となる事項も存するものとは認められないから、上記相違点d-1に係る事項は、甲4発明において、又は、甲4発明と他の甲号証に記載された事項との組合せにおいて、当業者が適宜なし得ることということはできない。

(b-2)相違点d-2について
念のため、上記相違点d-2につき検討すると、甲4には、甲4発明の「熱可塑性樹脂(C)」の製造において、不純物(CASA)が少ない単量体を使用して重合を行った後、脱揮処理を行い、残留したo-キシレン、CASA、ベンジルアルコールの量が低減化されていることが記載されている(摘示(4e))のみであって、それらはいずれも揮発性のものであるから、上記処理は、難揮発性の未反応単量体などの低分子化合物からなる不純物、すなわち、本件発明でいう「メタノール可溶分」が除去される工程であるとはいえない。
してみると、甲4発明における「JISK7373による黄色度(YI)が1.0未満である」との点は、「熱可塑性樹脂(C)」又はそれを含む「樹脂組成物」全体に係るものであって、本件発明における「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」と直接対比できるものではないから、上記2.で説示したように、メタクリル系樹脂全体とそのメタノール不溶分とのYIにつき相関関係があるとしても、樹脂全体のYIに基づき、メタノール不溶分のYIが正確に算出把握できるものとはいえない。
したがって、上記相違点d-2は、実質的な相違点である。
そして、甲4及び他の甲号証の記載を検討しても、本件発明でいう「メタノール不溶分」の「イエローネスインデックス」につき着目すべき事項が存するものでもないから、上記相違点d-2に係る事項が、他の甲号証の記載に照らして、甲4発明において当業者が適宜なし得ることともいえない。

(b-3)小括
以上を総合すると、本件発明1は、上記甲4発明、すなわち甲4に記載された発明であるということはできず、また、甲4に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものということもできない。
(よって、先の取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)において、甲4に基づく理由につき通知しなかった。)

(オ)甲5発明との対比・検討

(a)対比
本件発明1と甲5発明とを対比すると、甲5発明における「分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を脱アルコール反応させて該重合体中にラクトン環構造を5重量%以上導入させ・・て得られる透明性耐熱樹脂」は、具体的には、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとの共重合体につき脱アルコール反応させて該重合体中にラクトン環構造を導入させて得られる透明性耐熱樹脂であるから(摘示(5g)「参考例1」参照)、本件発明1における「主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が・・ラクトン環構造単位(B-2)・・を含むメタクリル系樹脂」に相当するものと認められる。
また、甲5発明における「ガラス転移温度(Tg)が115℃以上であり」との点は、本件発明1における「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり」との間で、「120℃超160℃以下」との範囲で重複するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲5発明とは、下記の2点で相違し、その余で一致している。

相違点e-1:本件発明1では「前記メタクリル系樹脂のメタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下であ」るのに対して、甲5発明では、透明性耐熱樹脂のメタノール可溶分とメタノール不溶分との量比につき特定されていない点
相違点e-2:本件発明1では「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」のに対して、甲5発明では、「透明性耐熱樹脂」につき「15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が5以下であ」り、「メタノール不溶分」のイエローネスインデックス(YI)につき特定されていない点

(b)検討
事案に鑑み、相違点e-2につき、まず検討する。

(b-1)相違点e-2について
上記相違点e-2につき検討すると、甲5には、「本発明の透明性耐熱樹脂は、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が5以下となるものである。該着色度(YI)は、好ましくは4以下、さらに好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1.7以下であるのがよい。着色度(YI)が5を越えるような透明性耐熱樹脂は、着色により透明性が損なわれ、本来目的とする用途に使用できないこととなる。」(摘示(5e))と記載されているが、甲5における当該「着色度(YI)」は、「JIS K 7103」なる規格(現在は廃止されている。)による樹脂(プラスチック)の劣化試験における物性値であり、甲1における「イエロー・インデックス」と同様に、樹脂製造後にメタノールで分別してなる「不溶分」につき、更なる熱履歴又は紫外線暴露に付さずにクロロホルム溶液として測定してなる本件発明における「20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」とは、直接的に対比することができず、甲5発明の「透明性耐熱樹脂」において、本件発明1でいう「イエローネスインデックス」が0?7なる極めて低いものとなっていると理解することはできない。
したがって、上記相違点e-2は、実質的な相違点である。
そして、甲5及び他の甲号証の記載を検討しても、本件発明でいう「メタノール不溶分」の「イエローネスインデックス」につき着目すべき事項が存するものでもないから、上記相違点e-2に係る事項が、他の甲号証の記載に照らして、甲5発明において当業者が適宜なし得ることともいえない。

(b-3)小括
以上を総合すると、本件発明1は、相違点e-1につき検討するまでもなく、上記甲5発明、すなわち甲5に記載された発明であるということはできず、また、甲5に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであるともいうことはできない。
(よって、先の取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)において、甲5に基づく理由につき通知しなかった。)

(カ)甲6発明との対比・検討

(a)対比
本件発明1と甲6発明とを対比すると、甲6発明における「2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルなどの下記一般式(a1)で表される不飽和単量体10?50重量%及びメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル50?90重量%を含有する単量体成分を重合することにより得られた分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を加熱処理して環化縮合することによりラクトン環構造を重合体に導入するとともに脱揮することによって得られる分子内にラクトン環構造を持つ熱可塑性の重合体」は、本件発明1における「主鎖に環構造を有する構造単位(B)を含み、前記(B)構造単位が・・ラクトン環構造単位(B-2)・・を含むメタクリル系樹脂」に相当する。
また、甲6発明における「ガラス転移温度(Tg)が、120℃以上であり」との点は、本件発明1における「ガラス転移温度が120℃超160℃以下であり」との間で、「120℃超160℃以下」との範囲で重複するものと認められる。
してみると、本件発明1と甲6発明とは、下記の2点で相違し、その余で一致している。

相違点f-1:本件発明1では「前記メタクリル系樹脂のメタノール可溶分の量がメタノール可溶分の量とメタノール不溶分の量の合計量100質量%に対して5質量%以下であ」るのに対して、甲6発明では、重合体のメタノール可溶分とメタノール不溶分との量比につき特定されていない点
相違点f-2:本件発明1では「前記メタノール不溶分の20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)が0?7である」のに対して、甲6発明では、「重合体」の「15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が1以下であ」る点

(b)検討
事案に鑑み、相違点f-2につき、まず検討する。

(b-1)相違点f-2について
上記相違点f-2につき検討すると、甲6には、「重合体(A)は、15重量%のクロロホルム溶液中での着色度(YI)が、6以下であるものが好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、最も好ましくは1以下である。」(摘示(6e))と記載されているが、甲6における当該「着色度(YI)」は、「JIS K 7103」なる規格(現在は廃止されている。)による樹脂(プラスチック)の劣化試験における物性値であり(摘示(6f)【0071】)、甲1における「イエロー・インデックス」と同様に、樹脂製造後にメタノールで分別してなる「不溶分」につき、更なる熱履歴又は紫外線暴露に付さずにクロロホルム溶液として測定してなる本件発明における「20w/v%クロロホルム溶液について10cm光路長セルを用いて測定したイエローネスインデックス(YI)」とは、直接的に対比することができず、甲6発明の「重合体」において、本件発明1でいう「イエローネスインデックス」が0?7なる極めて低いものとなっていると理解することはできない。
したがって、上記相違点f-2は、実質的な相違点である。
そして、甲6及び他の甲号証の記載を検討しても、本件発明でいう「メタノール不溶分」の「イエローネスインデックス」につき着目すべき事項が存するものでもないから、上記相違点f-2に係る事項が、他の甲号証の記載に照らして、甲6発明において当業者が適宜なし得ることともいえない。

(b-3)小括
以上を総合すると、本件発明1は、相違点f-1につき検討するまでもなく、上記甲6発明、すなわち甲6に記載された発明であるとはいえず、また、甲6に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたものであるともいえない。
(よって、先の取消理由通知及び取消理由通知(決定の予告)において、甲6に基づく理由につき通知しなかった。)

(キ)本件発明1についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明に基づいて、又は甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明に基づき、他の甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

イ.本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、いずれも本件発明1を引用してなるものであるところ、本件発明1については、上記ア.でそれぞれ説示したとおりの理由により、甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明に基づいて、又は甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明に基づき、他の甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできないのであるから、本件発明2ないし8についても、甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明に基づいて、又は甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明に基づき、他の甲1ないし甲12に記載された事項を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

ウ.検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし8は、いずれも、甲1ないし甲6の各甲号証に記載された発明であるということはできず、また、甲1ないし甲12の各甲号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。

(4)取消理由1及び2に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし8は、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものでもないから、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許は、いずれも特許法第29条の規定に違反してされたものということはできない。
よって、申立人が主張する取消理由1及び2はいずれも理由がなく、当審が通知した取消理由2についても理由がない。

4.当審の判断のまとめ
以上のとおり、申立人が主張する取消理由1ないし4並びに当審が通知した取消理由2及び3は、いずれも理由がないから、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許を取り消すことはできない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、申立人が主張する理由及び提示した証拠によっては、本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、ほかに本件の請求項1ないし8に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2018-11-27 
出願番号 特願2016-235777(P2016-235777)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C08F)
P 1 651・ 537- Y (C08F)
P 1 651・ 113- Y (C08F)
P 1 651・ 121- Y (C08F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 松元 洋  
特許庁審判長 大熊 幸治
特許庁審判官 大島 祥吾
橋本 栄和
登録日 2017-03-24 
登録番号 特許第6114459号(P6114459)
権利者 旭化成株式会社
発明の名称 メタクリル系樹脂  
代理人 杉村 憲司  
代理人 塚中 哲雄  
代理人 神 紘一郎  
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