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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60W
管理番号 1346996
審判番号 不服2017-17235  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-21 
確定日 2018-12-10 
事件の表示 特願2016-506621「自動運転車両の制御をドライバーに移行するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月 9日国際公開、WO2014/165681、平成28年8月4日国内公表、特表2016-522769〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)4月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年4月5日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下の通りである。

平成28年9月21日(発送日):拒絶理由通知書
平成28年12月19日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年1月25日(発送日):拒絶理由通知書
平成29年6月20日 :意見書、手続補正書の提出
平成29年8月16日(発送日):平成29年6月20日の手続補正の却下の決定、拒絶査定
平成29年11月21日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 平成29年11月21日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成29年11月21日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正について
(1)本件補正前の平成28年12月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
自動運転モードの車両を制御するように構成されたコンピューティングデバイスを介して、前記自動運転モードで動作する前記車両の制御を移行するための指示を受け取るステップであって、前記制御を移行するための前記指示は、閾値レベルを上回り、かつ、前記自動運転モードでの前記車両の前記制御とは無関係である前記車両のステアリングシステムの変化の検出を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記自動運転モードでの前記車両の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて前記車両の状態を判定するステップと、
前記車両の前記状態および前記指示に基づいて、前記車両の1つまたは複数のシステムの制御を前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するための方略であって、前記自動運転モードから前記手動操作モードに制御を移行すべき前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムと、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのそれぞれのシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行が行われるように構成された1つまたは複数の期間とを示す情報を含む、方略を決定するステップと、
前記車両の前記1つまたは複数のシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行を実行するように前記方略を与えるステップであって、前記方略は、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムの制御を、前記車両の前記状態および前記受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するときを示す、ステップと、
を含む、方法。」

(2)そして、本件補正により、上述の本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載は、以下のとおり補正された(下線部は、補正箇所である。)。
「【請求項1】
自動運転モードの車両を制御するように構成されたコンピューティングデバイスを介して、前記自動運転モードで動作する前記車両の制御を移行するための指示を受け取るステップであって、前記制御を移行するための前記指示は、閾値レベルを上回り、かつ、前記自動運転モードでの前記車両の前記制御とは無関係である前記車両のステアリングシステムの変化の検出を含む、ステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記自動運転モードでの前記車両の現在および将来の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて前記車両の現在および将来の状態を判定するステップと、
前記車両の前記現在および将来の状態および前記指示に基づいて、前記車両の1つまたは複数のシステムの制御を前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するための方略であって、前記自動運転モードから前記手動操作モードに制御を移行すべき前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムと、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのそれぞれのシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行が行われるように構成された1つまたは複数の期間とを示す情報を含む、方略を決定するステップと、
前記車両の前記1つまたは複数のシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行を実行するように前記方略を与えるステップであって、前記方略は、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムの制御を、前記車両の前記現在および将来の状態および前記受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するときを示す、ステップと、
を含む、方法。」

2.補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「動作」について「現在および将来の」との限定を付加し、さらに「状態」について「現在および将来の」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1.(2)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平9-222922号(以下、「引用文献1」という。)には、「車両の自動運転制御装置」に関して、図面(特に、図1及び図2を参照。)とともに次の記載が記載されている。(下線は、理解の一助のために当審が付与したものである。以下同様。)

(ア)「【0005】本発明は上記従来技術の有する課題に鑑みなされたものであり、その目的は、車両走行が非安定状態にあるときには自律走行から手動走行へのモード切換を禁止し、安定状態にあるときのみモード切換を許容して円滑に手動走行モードに移行できる車両の自動運転制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明は、複数のセンサからの検出信号に基づいて自動運転を実行する走行制御手段と、自動運転と手動運転を切り換える切換手段と、操舵角が所定の範囲内にあってほぼ中立状態にある場合の走行安定性を評価する評価手段と、前記評価手段で車両走行が非安定状態にあると評価された場合に前記切換手段による自動運転から手動運転への切換を禁止するモード制御手段とを有することを特徴とする。」

(イ)「【0009】<第1実施形態>図1には本実施形態の構成ブロック図が示されている。自律走行系としてCCDカメラなどの進路認識・障害物検出センサ10、車速センサ11、赤外線送受信機などの路車間通信装置12、GPS14が設けられ、各検出信号が自動運転ECU(電子制御装置)20に供給される。自動運転ECU20は、これらの信号に基づいて操舵アクチュエータ22やブレーキアクチュエータ24、アクセルアクチューエータ26を駆動して自律走行を行う。また、自律運転(自動運転)と手動運転を切り換える切換インターフェース(手動切換スイッチ)16が運転席近傍に設けられており、このスイッチを操作することにより、自律運転と手動運転の相互の切換が可能となっている。但し、自動運転から手動運転への切換は一定の条件下でのみ可能であり、これについては後述する。なお、運転状況モニタディスプレイ18は円滑な操作を補助することを目的とし、自動/手動運転中の区別、自動→手動に切換(移行)ができるか否かの区別、及び状況に合わせた操作案内(自動運転中には手動運転への移行方法を案内する等)を表示するもので、インストルメントパネル内にLEDディスプレイを設けて構成することができる。
【0010】一方、車両の走行安定性を評価するために必要な各種状態量を検出するための手段として、ピッチ角センサ・ピッチ角速度センサ34、ヨーレートセンサ38、横Gセンサ40、前後Gセンサ42、ロール角センサ・ロール角速度センサ44が設けられており、各検出信号は自動運転ECU20に供給される。また、車両によっては搭載されている走行安全装置であるTRC(トラクションコントロール:登録商標)、ABS(アンチロックブレーキシステム)、VSC(ビークルスタビリティーコントロール)各システムを制御するためのECU28、30、32も状態検出センサとして用いることができる。従って、以下の場合には、一般に車両の走行が非安定状態にあると考えることができる。
【0011】(A)所定値以上の横Gが発生しているとき
(B)所定値以上の前後Gが生じているとき
(C)所定値以上のヨーレートが生じているとき
(D)所定値以上のロール角、ロール角速度が生じているとき
(E)所定値以上のピッチ角、ピッチ角速度が生じているとき
(F)TRCが作動しているとき
(G)ABSが作動しているとき
(H)VSCが作動しているとき
なお、横Gの所定値として、例えば車速と旋回半径を考慮して決めてよく、例えば0.02G以上とすることができる。また、前後Gの所定値としては、例えば0.4G以上とすることができ、他の物理量の所定値についても、種々の実験により最適の値を与えることができる。
【0012】評価手段及びモード制御手段としての自動運転ECU20は、これらのいずれか、あるいはこれらを複合的に用いて車両の走行が安定状態にあるか非安定状態にあるかを評価し、非安定状態にある場合にはたとえ車両が直進路を走行している場合であっても一律に自動運転から手動運転への切換を禁止する。これにより、非安定状態での手動運転に伴う運転者の操舵操作の負担を低減して円滑な走行を維持することができる。」

(ウ)「【0014】図2には切換処理のフローチャートが示されている。まず、自動運転ECU20は、手動切換スイッチ(手動移行スイッチ)16が操作されたか否かを判定する(S101)。自律(自動)運転中に運転者が切換スイッチを操作した場合には、次に走行安全装置が作動中であるか否かを各ECUからの作動信号に基づいて判定する(S102)。走行安全装置28?32のいずれか、あるいは複数が作動中である場合には、作動開始後所定時間t_(1) 経過したか否かを判定する(S107)。所定時間経過していない場合には、切換スイッチの操作にもかかわらず手動運転モードへの移行を禁止する(S109)。この移行禁止は、たとえ車両が直線路を走行中であっても実行されることになる。そして、所定時間経過した場合には、ディスプレイ上に「走行状態が手動運転への切換に適さなかったためキャンセルされました。もう一度、手動運転への切換をやり直して下さい。」というメッセージを表示し(S108)、再びS101以降の処理を繰り返す。
【0015】この状態で再び運転者が手動切換スイッチをオンした場合、走行安全装置が作動中であれば手動運転への移行が禁止されるが、走行安全装置が作動を終了したときには、次に強制手動スイッチがオンされたか否かを判定する(S103)。この強制手動スイッチは、運転者側の意思で強制的に運転に介入するためのスイッチであり、例えば長い間旋回状態が続いている場合や不整地路が続いている場合でも運転者がそのことを十分認識した上で手動運転へ移行したいと欲するときに使用するスイッチである。この強制手動スイッチ17は、例えば図3に示すように切換スイッチ16の近傍に設けることができる。強制手動スイッチ17がオンされていない場合には、次に車両挙動が設定値以上であるか否かを判定する(S110)。この判定は、上記の(A)?(E)のいずれか、あるいは複数のAND条件を判定するものであり、走行安定装置が作動していなくても、これらの条件を満たす場合には、手動運転への移行が運転者への負担が増大するとして手動運転への移行を禁止する(S111,S112)。一方、車両挙動が設定値以上でない場合には、車両走行が安定状態にあるとみなせるので、手動運転への移行開始を許容する(S104)。また、手動切換スイッチ16と強制手動スイッチ17がともにオンされている場合には、運転者の意思によるものであるから車両挙動の有無にかかわらず手動運転への移行を開始する(S104)。これにより、以下のモードが実現することになる。
【0016】(1)走行安全装置作動
一律に手動運転への移行禁止
(2)走行安全装置非作動かつ車両挙動値が所定値以上
手動切換スイッチオンによる手動運転への移行を禁止
手動切換スイッチオン+強制切換スイッチオンによる手動運転への移行を許容
(3)走行安全装置非作動かつ車両挙動値が所定値以下
手動切換スイッチオンによる手動運転への移行を許容
但し、手動運転への移行が完了するまでにはある程度の時間を要するため、この間に走行状態が変化して安定状態から非安定状態に移行する可能性もある。そこで、所定時間t_(2) が経過したか否かを判定し(S105)、経過していない場合であって走行安全装置が作動した場合には、たとえ強制手動スイッチ17がオンされていても手動運転への移行をキャンセルする(S114,S115,S108)。一方、走行安全装置が作動していない場合には、次に強制手動スイッチがオンされているか否かを判定する(S116)。強制手動スイッチ17が操作されておらず、単に手動切換スイッチ16のみがオンされている場合には、さらに車両挙動が非安定状態に変化したか否かを判定し(S117)、車両走行状態が非安定状態に変化している場合には手動運転への移行をキャンセルする(S119)。一方、所定時間t_(2) 内で車両挙動に変化がなかった場合には、円滑に手動運転への切換が可能であるので手動運転への移行を完了する(S106)。また、強制手動スイッチ17がオンされている場合には、上述したように運転者の意思によるものなので車両挙動の有無にかかわらず手動運転への移行を完了する(S106)。」

(エ)「【0017】このように、走行安全装置が作動中は一律に手動運転への移行を禁止するとともに、走行安全装置が作動していなくても車両挙動が所定値以上あって非安定状態にあると判断される場合には、手動運転切換スイッチのオンにかかわらず手動運転への移行を禁止するので、運転者は切換直後に高度の操舵操作などが要求されることが少なくなり、円滑に手動運転へ移行することができる。また、手動運転切換スイッチ操作時には車両走行が安定状態にあったとしても、移行が完了するまでの間の走行状態変化をモニタし、走行状態が非安定状態に変化した場合には手動運転への移行をキャンセルするので、走行環境変化にも十分対応することができる。さらに、走行安定装置の作動しきい値と横Gなどの車両挙動物理量の所定値との大小関係に鑑み、車両挙動値のみが所定値以上である場合には強制手動スイッチ操作による運転者の介入を許容しているので、熟練した運転者が多少の非安定状態下での手動運転を望む場合にも対応することができる。
【0018】なお、本実施形態では横Gなどの物理量が所定値以上である場合と走行安全装置が作動している場合に分けて走行の非安定状態を2段階で評価しているが、例えば走行安全装置の作動/非作動のみで走行の安定/非安定を評価してもよく、また、横Gなどの物理量が所定値以上か否かのみで走行の安定/非安定を評価してもよい。」

(オ)「【0019】<第2実施形態>図4には本実施形態のシステム構成が示されている。車両前方にはCCDカメラなどの進路・障害物検出センサ50が設けられ、検出信号を自動運転用ECU(電子制御装置)52に供給する。自動運転用ECU52は、入力された検出信号に基づいて(あるいは、車速センサなどの他のセンサからの信号にも基づいて)操舵アクチュエータ56を制御するとともに、前方車などの障害物と自車との距離が所定距離以下となった場合にはブレーキアクチュエータ58を駆動して自動制動を行う。また、自動・手動切換スイッチ54は、自動運転用ECU52に対して自律走行(自動運転)と手動運転の相互のモード切換を指示するスイッチで、運転席近傍に設けられる。
【0020】ここで、本実施形態において特徴的なことは、自律走行実行中に切換スイッチ54を操作すると、モード制御手段としての自動運転用ECU52は手動運転モードに移行するが、自動制動実行中は手動運転モードへの移行を禁止して自動制動を維持する点であり、これにより走行の安全を確保するとともに円滑な手動運転への移行を可能とする点である。」

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「自動運転を行う自動運転ECU20は、手動切換スイッチ16が操作されたか否かを判定し(S101)、
前記自動運転ECU20により、ピッチ角センサ・ピッチ角速度センサ34、ヨーレートセンサ38、横Gセンサ40、前後Gセンサ42、ロール角センサ・ロール角速度センサ44の検出信号から車両挙動が設定値以上であるか否かを判定し(S110)、
車両挙動が設定値以上の場合には、手動運転への移行を禁止し(S111,S112)、車両挙動が設定値以上でない場合には、手動運転への移行開始を許容し(S104)、手動運転への移行が完了するまでにはある程度の時間を要するため、所定時間t_(2) が経過したか否かを判定し(S105)、所定時間t_(2) が経過していない場合、車両挙動が非安定状態に変化したか否かを判定し(S117)、車両走行状態が非安定状態に変化している場合には手動運転への移行をキャンセル(S119)し、所定時間t_(2) 内で車両挙動に変化がなかった場合には手動運転への移行を完了する(S106)、車両の自動運転制御装置。」

イ 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開平9-240502号(以下、「引用文献2」という。)には、「車両操舵装置」に関して、図面とともに次の記載が記載されている。

(ア)「【0024】
【発明の目的】本発明は、係る従来例の有する不都合を改善し、特に、スイッチによらず運転者の意図を的確に捕捉して自動運転と手動運転とを切り替えることのできる車両操舵装置を提供することを、その目的とする。」

(イ)「【0025】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、第1の手段(請求項1)として、操舵車輪の向きを変化させるステアリング機構と、このステアリング機構に運転者からの操舵力を伝達する操舵力伝達手段と、自車の車速等の走行状態を捕捉する走行状態センサ部と、所定の自動操舵モードが設定されているときには走行状態センサ部によって捕捉された自車の走行状態に基づいて目標操舵量を算出する自動操舵制御部と、この自動操舵制御部によって算出された目標操舵量に応じてステアリング機構を駆動するモータとを備えている。しかも、走行状態センサ部が、運転者からの操舵力の大きさを検出するトルクセンサを備えている。さらに、自動操舵制御部に、トルクセンサ出力が所定のしきい値未満のときには自動操舵モードに設定すると共に当該トルクセンサからの出力が所定のしきい値以上のときにはパワーステアリングモードに設定する切換制御部と、この切換制御部によってパワーステアリングモードが設定されたときには自車の走行状態に応じて運転者からの操舵力を加勢又は抑制する目標操舵量を算出するパワーステアリング制御部とを併設している。また、モータに、切換制御部によって設定された各モードに応じて自動操舵制御部によって算出された目標操舵量又はパワーステアリング制御部によって算出された目標操舵量に基づいてモータを駆動制御するモータ駆動制御部を併設した、という構成を採っている。
【0026】第1の手段では、切換制御部が、トルクセンサ出力が所定のしきい値未満のときには自動操舵モードに設定し、自動操舵制御部が、この自動操舵モード中は自車の走行状態に応じて目標操舵量を算出し、一方、切換制御部が、トルクセンサからの出力が所定のしきい値以上のときにはパワーステアリングモードに設定し、パワーステアリング制御部が、このパワーステアリングモード中は車速等の自車の走行状態に応じて運転者からの操舵力を加勢又は抑制する目標操舵量を算出するため、運転者からのステアリングホイールへの操舵力に応じて、自動操舵と手動動作を切り替えることとなり、さらに、手動操舵中は自動操舵に用いるモータによりパワーステアリング動作を行う。」

(ウ)「【0030】図1は、本発明による車両操舵装置の構成を示すブロック図である。車両操舵装置は、操舵車輪の向きを変化させるステアリング機構4と、このステアリング機構に運転者からの操舵力を伝達する操舵力伝達手段6と、自車の車速等の走行状態を捕捉する走行状態センサ部10と、所定の切換信号に応じて自動操舵モードとされているときに走行状態センサ部10によって捕捉された自車の走行状態に基づいて目標操舵量を算出する自動操舵制御部12と、この自動操舵制御部12によって算出された目標操舵量に応じてステアリング機構4を駆動するモータ2とを備えている。
【0031】しかも、走行状態センサ部10が、運転者からの操舵力の大きさを検出するトルクセンサ11を備えている。この走行状態センサ部10は、図12に示した従来の走行状態センサ部71と同様のものである。
【0032】さらに、自動操舵制御部12に、トルクセンサ出力が所定のしきい値未満のときには自動操舵制御部12に切換信号を出力すると共に当該トルクセンサ11からの出力が所定のしきい値以上のときにはパワーステアリングモードに設定する切換制御部18と、この切換制御部18によってパワーステアリングモードが設定されたときには自車の走行状態に応じて運転者からの操舵力を加勢又は抑制する目標操舵量を算出するパワーステアリング制御部14とを併設している。

(エ)「【0036】本実施形態では、モータ2を自動操舵の動力源並びに手動操舵時の補助動力源(パワーアシスト)として兼用している。さらに、電動パワステに取り付けられているトルクセンサを自動操舵モードとパワステモードとの切換用のスイッチとしてしている。これにより、スイッチの切換動作をなくし、操作性を向上させる。」

(オ)「【0041】図4は、パワーステアリングモードと自動操舵モードの切換の一例を示す説明図である。切換制御部18は、所定のしきい値Aに基づいて、トルクセンサ出力がこのしきい値Aを越えたときには自動操舵を中止して、マニュアル操作へ切り替える。さらに、マニュアル操作へ切り替えられた場合、パワーステアリング制御部14は、パワステマップに基づいてトルク出力に応じたアシスト量(目標操舵量)を算出する。すると、モータ駆動制御部16はこの目標操舵量に基づいて、ハンドル61に加えられた操舵力を加勢し、又は抑制する制御を行う。」

これらの記載事項及び図面の図示内容を総合し、本件補正発明の記載ぶりに則り整理すると、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2の記載事項」という。)が記載されている。

「ステアリング機構のトルクセンサ出力が所定のしきい値を越えたときには自動操舵を中止して、マニュアル操作へ切り替えること。」

(3)引用発明との対比
本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「自動運転を行う自動運転ECU20」はその機能、構成および技術的意義からみて前者の「自動運転モードの車両を制御するように構成されたコンピューティングデバイス」に相当し、後者の「手動切換スイッチ16が操作された」ことは前者の「前記自動運転モードで動作する前記車両の制御を移行するための指示」に相当する。
そうすると、後者の「自動運転を行う自動運転ECU20は、手動切換スイッチ16が操作されたか否かを判定し(S101)」は、前者の「自動運転モードの車両を制御するように構成されたコンピューティングデバイスを介して、前記自動運転モードで動作する前記車両の制御を移行するための指示を受け取るステップ」に相当する。
次に、後者の「ピッチ角センサ・ピッチ角速度センサ34、ヨーレートセンサ38、横Gセンサ40、前後Gセンサ42、ロール角センサ・ロール角速度センサ44の検出信号から車両挙動が設定値以上であるか否かを判定し(S110)」と前者の「自動運転モードでの前記車両の現在および将来の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて前記車両の現在および将来の状態を判定するステップ」とは、「自動運転モードでの前記車両の現在の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて前記車両の現在の状態を判定するステップ」という限りで一致する。
また、後者の「車両挙動が設定値以上の場合には、手動運転への移行を禁止し(S111,S112)、車両挙動が設定値以上でない場合には、手動運転への移行開始を許容し(S104)」は、(2)ア(イ)の段落【0009】の「自動運転ECU20は、これらの信号に基づいて操舵アクチュエータ22やブレーキアクチュエータ24、アクセルアクチューエータ26を駆動して自律走行を行う。また、自律運転(自動運転)と手動運転を切り換える切換インターフェース(手動切換スイッチ)16が運転席近傍に設けられており、このスイッチを操作することにより、自律運転と手動運転の相互の切換が可能となっている。但し、自動運転から手動運転への切換は一定の条件下でのみ可能であり、これについては後述する。」を合わせみると、前者の「車両の1つまたは複数のシステムの制御を前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するための方略」に相当する。
そして、後者の「手動運転への移行が完了するまでにはある程度の時間を要するため、所定時間t_(2) が経過したか否か」を判定することは、上記引用文献1の段落【0009】の記載を合わせみると、前者の「前記自動運転モードから前記手動操作モードに制御を移行すべき前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムと、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのそれぞれのシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行が行われるように構成された1つまたは複数の期間とを示す情報」に相当する。
そうすると、後者の「車両挙動が設定値以上の場合には、手動運転への移行を禁止し(S111,S112)、車両挙動が設定値以上でない場合には、手動運転への移行開始を許容し(S104)、手動運転への移行が完了するまでにはある程度の時間を要するため、所定時間t_(2 )が経過したか否かを判定し(S105)」と前者の「前記車両の前記現在および将来の状態および前記指示に基づいて、前記車両の1つまたは複数のシステムの制御を前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するための方略であって、前記自動運転モードから前記手動操作モードに制御を移行すべき前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムと、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのそれぞれのシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行が行われるように構成された1つまたは複数の期間とを示す情報を含む、方略を決定するステップ」とは、「前記車両の前記現在の状態および前記指示に基づいて、前記車両の1つまたは複数のシステムの制御を前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するための方略であって、前記自動運転モードから前記手動操作モードに制御を移行すべき前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムと、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのそれぞれのシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行が行われるように構成された1つまたは複数の期間とを示す情報を含む、方略を決定するステップ」という限りで一致する。
さらに、後者の「所定時間t_(2) が経過したか否かを判定し(S105)、所定時間t_(2) が経過していない場合、車両挙動が非安定状態に変化したか否かを判定し(S117)、車両走行状態が非安定状態に変化している場合には手動運転への移行をキャンセル(S119)し、所定時間t_(2) 内で車両挙動に変化がなかった場合には手動運転への移行を完了する(S106)」は、前者の「1つまたは複数のシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行を実行するように前記方略を与えるステップ」に相当し、後者の「所定時間t_(2)」は「手動運転への移行が完了するまでにはある程度の時間を要するため」の時間であるから、前者の「受け取った指示に基づく所与の期間」に相当する。
そうすると、後者の「所定時間t_(2 )が経過したか否かを判定し(S105)、所定時間t_(2 )が経過していない場合、車両挙動が非安定状態に変化したか否かを判定し(S117)、車両走行状態が非安定状態に変化している場合には手動運転への移行をキャンセル(S119)し、所定時間t_(2) 内で車両挙動に変化がなかった場合には手動運転への移行を完了する(S106)」と前者の「車両の前記1つまたは複数のシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行を実行するように前記方略を与えるステップであって、前記方略は、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムの制御を、前記車両の前記現在および将来の状態および前記受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するときを示す、ステップ」とは、「車両の前記1つまたは複数のシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行を実行するように前記方略を与えるステップであって、前記方略は、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムの制御を、前記車両の前記現在の状態および前記受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するときを示す、ステップ」という限りで一致する。
また、後者の「自動運転制御装置」が切換処理のフローチャートを実行するものであるから、前者の「方法」を含むことは明らかである。

したがって、両者は、
「自動運転モードの車両を制御するように構成されたコンピューティングデバイスを介して、前記自動運転モードで動作する前記車両の制御を移行するための指示を受け取るステップと、
前記コンピューティングデバイスにより、前記自動運転モードでの前記車両の現在の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて前記車両の現在の状態を判定するステップと、
前記車両の前記現在の状態および前記指示に基づいて、前記車両の1つまたは複数のシステムの制御を前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するための方略であって、前記自動運転モードから前記手動操作モードに制御を移行すべき前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムと、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのそれぞれのシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行が行われるように構成された1つまたは複数の期間とを示す情報を含む、方略を決定するステップと、
前記車両の前記1つまたは複数のシステムの制御の前記自動運転モードから前記手動操作モードへの前記移行を実行するように前記方略を与えるステップであって、前記方略は、前記車両の前記1つまたは複数のシステムのうちのそれぞれのシステムの制御を、前記車両の前記現在の状態および前記受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において前記自動運転モードから前記手動操作モードに移行するときを示す、ステップと、
を含む、方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
前者は、「制御を移行するための指示は、閾値レベルを上回り、かつ、自動運転モードでの車両の制御とは無関係である車両のステアリングシステムの変化の検出を含む」のに対し、後者は、かかる構成を備えていない点。

[相違点2]
前者は、車両の現在「および将来の」動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて車両の現在「および将来」の状態を判定し、車両の現在「および将来」の状態および受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において自動運転モードから手動操作モードに移行するものであるのに対し、後者は「車両の現在の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて車両の現在の状態を判定」し、「車両の現在の状態および受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において自動運転モードから手動操作モードに移行する」ものである点。

(4)判断
相違点について検討する。
相違点1について検討する。
引用文献2の記載事項は以下のとおりである。
「ステアリング機構のトルクセンサ出力が所定のしきい値を越えたときには自動操舵を中止して、マニュアル操作へ切り替えること。」
本件補正発明と引用文献2記載の技術とを対比すると、後者の「しきい値」は、その機能、構成および技術的意義からみて前者の「閾値レベル」に相当し、以下同様に「ステアリング機構のトルクセンサ出力が所定のしきい値を越えた」は、自動操舵を中止して、マニュアル操作へ切り替えるから、「制御を移行するための指示」に相当する。
また、後者の「ステアリング機構のトルクセンサ出力が所定のしきい値を越えたとき」は、トルクセンサが運転者からの操舵力の大きさの変化を検知するもので、自動運転における制御とは関連しない(前記(2)イ(ウ)ないし(2)イ(オ)を参照。)ことから、「自動運転モードでの車両の制御とは無関係である車両のステアリングシステムの変化の検出」に相当する。

そうすると、引用文献2の記載事項を本件補正発明の用語を用い整理すると、以下の事項ということができる。

「制御を移行するための指示は、閾値レベルを上回り、かつ、自動運転モードでの車両の制御とは無関係である車両のステアリングシステムの変化の検出である技術。」

引用文献2の記載事項は、自動運転から手動運転の切換に関する技術であって、引用発明と共通する。加えて、スイッチによらず運転者の意図を的確に補足して自動運転と手動運転とを切り替えるもの(前記(2)イ(ア)を参照。)であるから、引用発明に引用文献2の記載事項の適用に格別な困難性を見出すこともできない。

そうすると、引用発明において、引用文献2の記載事項に基づいて、上記相違点1にかかる本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

相違点2について検討する。
本件補正発明の「車両の現在および将来の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて車両の現在および将来の状態を判定」することに関して、本願の発明の詳細な説明及び図面の「コンピューティングデバイスは、自動運転車両が時間の経過とともに実行できる考えられる将来的な動きまたはコマンドを使用するように構成されてもよい。例えば、コンピューティングデバイスは、車両が旋回、加速、ブレーキングまたは車線変更などをまさに実行しようとしていると判定してもよい。さらに、コンピューティングデバイスは、車両が交通信号、障害物、所望の目的地、またはその他のパラメータなどに近づいていると判定してもよい。コンピューティングデバイスは、図1で説明した車両に関連する1つまたは複数のコンポーネントを使用して、車両の現在または将来の動作状態を定める様々なパラメータを判定してもよい。コンポーネントのいくつかの例は、全地球測位システム(GPS)、他のコンピューティングデバイス、レーザー、画像検出デバイス、レーダー、センサ、ゲージ、またはその他のコンポーネントを含んでもよい。」(本願の発明の詳細な説明の段落【0073】及び図面を参照。)との記載がある。
他方、引用発明の自動運転ECU20は、CCDカメラなどの進路認識・障害物検出センサ10、車速センサ11、赤外線送受信機などの路車間通信装置12、GPS14の検出信号に基づいて操舵アクチュエータ22やブレーキアクチュエータ24、アクセルアクチューエータ26を駆動して自律走行を行うもの(前記(2)ア(イ)の段落【0009】を参照。)である。このようなCCDカメラなどの進路認識・障害物検出センサ10、車速センサ11、赤外線送受信機などの路車間通信装置12、GPS14の検出信号に基づいて操舵アクチュエータ22やブレーキアクチュエータ24、アクセルアクチューエータ26を駆動する自動運転ECU20は、本願の上記記載からみて、本件補正発明の「将来の動作に関連する少なくとも1つのパラメータ」に基づいて「車両の将来の状態を判定」するものといえる。また、引用文献1の「非安定状態にある場合にはたとえ車両が直進路を走行している場合であっても一律に自動運転から手動運転への切換を禁止する。」(前記(2)ア(イ)の段落【0012】を参照。)との記載は、本願の上記記載からみて、本件補正発明の車両の将来の状態に基づく所与の期間にわたる一連の移行において、自動運転モードから手動操作モードに移行することを示すものといえる。
また、引用文献1の「前方車などの障害物と自車との距離が所定距離以下となった場合に行う自動制動の実行中は手動運転モードへの移行を禁止する」(前記(2)ア(オ)を参照。)との記載も、本願の上記記載からみて、本件補正発明の車両の将来の状態に基づく所与の期間にわたる一連の移行において、自動運転モードから手動操作モードに移行することを示すものといえる。
これらを総合すると、引用文献1には、本件補正発明の「車両の現在および将来の動作に関連する少なくとも1つのパラメータに基づいて車両の現在および将来の状態を判定」し、「車両の現在および将来の状態および受け取った指示に基づく所与の期間にわたる一連の移行において自動運転モードから手動操作モードに移行する」ことが示唆されている。
そうすると、引用発明において、引用文献1に示唆される事項に基づいて当業者が通常の創作能力の範囲内で上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、容易に想到し得たことである。

また、本件補正発明は、全体としてみても、引用発明、引用文献1に示唆される事項及び引用文献2の記載事項から予測し得ない格別な効果を奏するものではない。

したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献1に示唆される事項及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成29年11月21日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成28年12月19日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2 1.(1)に記載のとおりのものである。

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献に記載された発明に基づいて、その出願前に発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献A:特開平9-222922号(本審決の引用文献1)
引用文献B:特開平9-240502号(本審決の引用文献2)
引用文献C:特開2007-196809号

3.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及び引用文献2並びに引用発明及び引用文献2の記載事項は、前記第2[理由]2.(2)に記載したとおりである。

4.対比・判断
本願発明は前記第2[理由]1.(2)で検討した本件補正発明から、「動作」についての「現在および将来の」との限定及び「状態」についての「現在および将来の」との限定を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2[理由]2.(3)及び(4)に記載したとおり、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び引用文献2の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2018-07-17 
結審通知日 2018-07-18 
審決日 2018-07-31 
出願番号 特願2016-506621(P2016-506621)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 秀政立花 啓  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 水野 治彦
鈴木 充
発明の名称 自動運転車両の制御をドライバーに移行するためのシステムおよび方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 佐藤 睦  

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