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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1347016 |
審判番号 | 不服2017-2479 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-21 |
確定日 | 2018-12-05 |
事件の表示 | 特願2015-178849「発光素子」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月12日出願公開、特開2016- 26390〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成23年3月14日(パリ条約による優先権主張2010年3月15日、韓国)に出願した特願2011-55810号の一部を平成27年9月10日に新たな特許出願としたものであって、平成28年7月1日付けの拒絶理由通知に対して、同年9月30日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月1日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成29年2月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされた。 その後当審において、平成30年1月30日付けで拒絶理由が通知され、同年4月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 当審の拒絶理由 当審において平成30年1月30日付けで通知した拒絶の理由の概要は、 「●理由1(委任省令要件) 本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」というもの、 「●理由2(進歩性) 本件出願の請求項1?14に係る発明は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物である、「特開2001-339121号公報」(以下「引用例1」という。)に記載された発明及び「特開平7-94782号公報」(以下「引用例2」という。)並びに「特開2002-111059号公報」(以下「引用例3」という。)の記載に基いて、その原出願の優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というもの、及び 「●理由3(明確性) 本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」というものである。 3 本願発明 本願の請求項1?9に係る発明は、平成30年4月12日に提出された手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 第1導電型半導体層、前記第1導電型半導体層の上に活性層、及び前記活性層の上に第2導電型半導体層を含む発光構造物と、 前記第1導電型半導体層の上に第1電極と、 前記第1導電型半導体層及び前記第2導電型半導体層の上に接合層と、 前記第2導電型半導体層の上に透光性電極層と、 前記透光性電極層の上に第2電極と、を含み、 前記接合層は、絶縁性材質からなり、 前記接合層は、前記第1導電型半導体層の上面から前記発光構造物の一側面に沿って前記第2導電型半導体層の上面の一部に延長されて配置され、 前記接合層は、前記第2導電型半導体層と前記透光性電極層との間に配置され、 前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積は、前記第1電極の上面面積の10?95%の範囲で形成されることを特徴とする、発光素子。」 4 引用例の記載と引用発明 (1)引用例1の記載 引用例1には、図1?8とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加した。以下同じ。)。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、発光効率の高い窒化物半導体発光素子とこれを利用した光学装置に関するものである。」 イ 「【0017】(実施例1)以下において、本発明の実施例1による窒化物半導体レーザダイオード素子が説明される。 【0018】図1の模式的な断面図に示された実施例1による窒化物半導体レーザダイオード素子は、C面(0001)サファイア基板100、GaNバッファ層101、n型GaNコンタクト層102、n型In_(0.07)Ga_(0.93)Nクラック防止層103、n型Al_(0.1)Ga_(0.9)Nクラッド層104、n型GaN光ガイド層105、発光層106、p型Al_(0.2)Ga_(0.8)N遮蔽層107、p型GaN光ガイド層108、p型Al_(0.1)Ga_(0.9)クラッド層109、p型GaNコンタクト層110、n型電極111、p型電極112、およびSiO_(2)誘電体膜113を含んでいる。 …(略)… 【0029】本発明におけるように発光層がAs、P、またはSbを含む場合、熱による発光層の損傷(相分離による発光強度の低下と色斑の発生など)が生じやすく、NH_(3)以外の雰囲気中で発光層の成長温度より高い温度で基板を保持することは発光強度の低下を招くので好ましくない。したがって、上述のようにMOCVD装置から基板を取出す過程でp型化を行なう手法は、基板の取出後にp型化のためのアニールの省略を可能にし、非常に有用なものである。なお、従来のp型化アニールを省略しなければさらにMgの活性化率が向上するが、その際には、発光層の損傷を考慮に入れて少なくとも発光層の成長温度以下(約900℃以下)においてアニール時間を短く(10分以下)する必要がある。他方、図1(または図7または図9)に示されているように発光層106(904)の側面(レーザダイオードの場合は光射出端面を除く)を誘電体膜113(910)で覆ってからアニールすることによって発光層からの窒素またはAs(またはPまたはSb)の抜けを防止し、発光層の相分離や偏析を抑制することができる。 【0030】次に、MOCVD装置から取出したエピタキシャルウェハをレーザダイオード素子に加工するプロセスについて説明する。 【0031】まず、反応性イオンエッチング装置を用いてn型GaNコンタクト層102の一部を露出させ、この露出部分上にHf/Auの順の積層からなるn型電極111を形成する。…(略)…」 ウ 「【0081】(実施例6)実施例6は、窒化物半導体発光ダイオード素子に関するものである。図9において、この実施例6の窒化物半導体発光ダイオード素子の模式的な縦断面図(a)と上面図(b)が示されている。 【0082】図9(a)の発光ダイオード素子は、C面(0001)サファイア基板900、GaNバッファ層901(膜厚30nm)、n型GaNコンタクト層902(合議体注:「n型GaN層コンタクト902」は誤記と認定した。)(膜厚3μm、Si不純物濃度1×10^(18)/cm^(3))、n型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層903(膜厚20nm、Si不純物濃度1×10^(18)/cm^(3))、発光層904、p型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層905(膜厚20nm、Mg不純物濃度6×10^(19)/cm^(3))、p型GaNコンタクト層906(膜厚200nm、Mg不純物濃度1×10^(20)/cm^(3))、透光性p型電極907、パッド電極908、n型電極909、および誘電体膜910を含んでいる。 【0083】ただし、このような発光ダイオード素子において、n型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層903は省略されてもよい。また、p型電極907はNiまたはPdで形成され、パッド電極908はAuで形成され、そしてn型電極909はHf/Au、Ti/Al、Ti/Mo、またはHf/Alの積層体で形成され得る。」 エ 図1、9は以下のとおりのものである。 (2)引用発明 ア(ア)図9(a)から、透光性p型電極907はp型GaNコンタクト層906の上に配置されていること、パッド電極908は透光性p型電極907の上に配置されていること、n型電極909はn型GaNコンタクト層902の上に配置されていること、誘電体膜910はn型GaNコンタクト層902及びp型GaNコンタクト層906の上に配置されていることが見てとれる。 (イ)図9(a)(b)から、誘電体膜910は、n型GaNコンタクト層902の上面から、n型GaNコンタクト層902、n型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層903、発光層904、p型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層905、p型GaNコンタクト層906の側面に沿ってp型GaNコンタクト層906の上面の一部に延長されて配置されていること、誘電体膜910は、p型GaNコンタクト層906と透光性p型電極907との間に配置されていることが見てとれる。 (ウ)引用例1の上記(1)イの摘記事項及び図1から、n型電極111は、発光層106の側面を誘電体膜113で覆ってから、n型GaNコンタクト層102の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜113の上に形成したものであるところ、図9に示されるn型電極909も同様なプロセスで加工されることが開示されているといえる。すなわち、n型電極909は、発光層904の側面を誘電体膜910で覆ってから、n型GaNコンタクト層902の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成したものであるといえる。 イ そうすると、引用例1の上記(1)のイの摘記事項及び図1を参酌してまとめると、引用例1には、図9に示される「実施例6」として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「n型GaNコンタクト層902、その上にn型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層903、その上に発光層904、その上にp型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層905、その上にp型GaNコンタクト層906を含んでおり、 さらに、p型GaNコンタクト層906の上の透光性p型電極907、透光性p型電極907の上のパッド電極908、n型GaNコンタクト層902の上のn型電極909、およびn型GaNコンタクト層902及びp型GaNコンタクト層906の上の誘電体膜910を含んでおり、 誘電体膜910は、n型GaNコンタクト層902の上面から、n型GaNコンタクト層902、n型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層903、発光層904、p型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層905、p型GaNコンタクト層906の側面に沿ってp型GaNコンタクト層906の上面の一部に延長されて配置され、 誘電体膜910は、p型GaNコンタクト層906と透光性p型電極907との間に配置され、 n型電極909は、発光層904の側面を誘電体膜910で覆ってから、n型GaNコンタクト層902の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成した、窒化物半導体発光ダイオード素子。」 5 対比 本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明における「n型GaNコンタクト層902」、「発光層904」、「p型GaNコンタクト層906」、「n型電極909」、「透光性p型電極907」、「パッド電極908」、「窒化物半導体発光ダイオード素子」は、それぞれ本願発明における「第1導電型半導体層」、「活性層」、「第2導電型半導体層」、「第1電極」、「透光性電極層」、「第2電極」、「発光素子」に相当する。 イ 引用発明は、「『n型GaNコンタクト層902』、『その上に発光層904』、『その上にp型GaNコンタクト層906』を含んで」いるから、本願発明と引用発明とは、「第1導電型半導体層、前記第1導電型半導体層の上に活性層、及び前記活性層の上に第2導電型半導体層を含む発光構造物」を含む点で一致する。 ウ 引用発明の「誘電体膜910」は、「n型GaNコンタクト層902及びp型GaNコンタクト層906の上」の膜であり、膜は層であるといえるから、本願発明の「接合層」とは、「前記第1導電型半導体層及び前記第2導電型半導体層の上」の層である点で共通する。 エ 引用発明の「誘電体膜910」は、発光ダイオード素子の「n型GaNコンタクト層902の上面から、n型GaNコンタクト層902、n型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層903、発光層904、p型Al_(0.1)Ga_(0.9)N遮蔽層兼クラッド層905、p型GaNコンタクト層906の側面に沿ってp型GaNコンタクト層906の上面の一部に延長されて配置され」た誘電体膜であるから、絶縁性の材質からなるものであるといえる。 オ 本願発明の「前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積は、前記第1電極の上面面積の10?95%の範囲で形成される」ことと、引用発明の「n型電極909は、発光層904の側面を誘電体膜910で覆ってから、n型GaNコンタクト層902の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成した」こととを対比する。 引用発明において、n型電極909は、「この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成した」ものであり、また、n型電極909とn型GaNコンタクト層902は、上記「この露出部分」において重なる。 したがって、引用発明において、n型電極909とn型GaNコンタクト層902とが重なる面積のn型電極909の上面面積に対する割合は、「この露出部分」の面積の「『この露出部分』及びn型電極909がその上に形成される上記『誘電体膜910』」の面積に対する割合が対応するといえる。 よって、当該「重なる領域」の面積は、n型電極の上面面積より小さいといえる。 以上から、本願発明と引用発明とは、「前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積は、前記第1電極の上面面積の100%未満の範囲で形成される」点で共通する。 カ したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 <一致点> 「第1導電型半導体層、前記第1導電型半導体層の上に活性層、及び前記活性層の上に第2導電型半導体層を含む発光構造物と、 前記第1導電型半導体層の上に第1電極と、 前記第1導電型半導体層及び前記第2導電型半導体層の上に層と、 前記第2導電型半導体層の上に透光性電極層と、 前記透光性電極層の上に第2電極と、を含み、 前記層は、絶縁性材質からなり、 前記層は、前記第1導電型半導体層の上面から前記発光構造物の一側面に沿って前記第2導電型半導体層の上面の一部に延長されて配置され、 前記層は、前記第2導電型半導体層と前記透光性電極層との間に配置され、 前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積は、前記第1電極の上面面積の100%未満の範囲で形成される、発光素子。」 <相違点> <相違点1> 「前記第1導電型半導体層及び前記第2導電型半導体層の上」に含む層について、本願発明では「接合層」であるのに対し、引用発明は、誘電体膜910が「接合層」であるか不明な点。 <相違点2> 「前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積」と「前記第1電極の上面面積」との大小関係について、本願発明では、「前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積は、前記第1電極の上面面積の10?95%の範囲で形成される」のに対し、引用発明では、「n型電極909は、発光層904の側面を誘電体膜910で覆ってから、n型GaNコンタクト層902の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成した」ものであるところ、n型電極909とn型GaNコンタクト層902が重なる面積のn型電極909の上面面積に対する割合の数値範囲が不明である点。 6 当審の判断 以下、上記相違点1及び相違点2について検討する。 (1)相違点1について ア 本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0036】には、「上記接合層130の透光性絶縁性材質は、例えば、SiO_(2)、…のうちの少なくとも1つで形成されることができ」と記載されている。 また、同段落【0046】には、「上記第1電極150は、例えば、Au、Al、Ag、Ti、Cu、Ni、またはCrのうち、少なくとも1つを含む単層または多層構造で形成できるが、これに対して限定するのではない。」と記載されている。 イ 一方、引用例1の上記5(1)イ、ウの摘記事項を参照すると、引用例1の段落【0082】には、誘電体膜910の材料について記載されていないが、段落【0018】及び【0029】を参照すると、引用例1には、誘電体膜910として、SiO_(2)誘電体膜が示唆されているものと認められる。 また、引用例1の上記5(1)ウの段落【0083】には、n型電極909について、「n型電極909はHf/Au、Ti/Al、Ti/Mo、またはHf/Alの積層体で形成され得る。」と記載されている。 ウ 引用例1に記載の誘電体膜910として示唆されている膜の材質は、上記アで検討したように、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された接合層130の材質として挙げられているSiO_(2)と同じである。 また、引用発明は、「n型電極909は、発光層904の側面を誘電体膜910で覆ってから、n型GaNコンタクト層902の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成した」ものであるところ、引用例1に、「n型電極909」(第1電極)の材質として例示されているTi/Alは、上記アで検討したように、本願明細書の発明の詳細な説明に記載された第1電極150の材質として例示されているAl、Tiと同じであり、Ti/Alでない場合も、引用例1の上記5(1)ウの段落【0083】に記載された「n型電極909」の材質と、本願明細書の発明の詳細な説明の段落【0046】に記載された第1電極150の材質は、金属である点で共通する。 したがって、本願明細書の発明の詳細な説明に開示された接合層130と第1電極150それぞれの材質、及び引用例1に開示された誘電体膜910とn型電極909それぞれの材質として、いずれも同じものが挙げられているので、引用発明の誘電体膜910は本願発明の接合層に相当するといえる。 仮に、引用発明の誘電体膜910が本願発明の接合層に相当するとはいえないとしても、引用発明は、「n型電極909は、発光層904の側面を誘電体膜910で覆ってから、n型GaNコンタクト層902の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成した」ものであるから、誘電体膜910とn型電極909との間の接合力は大きいことが望ましいことは当然であることと認められる。 したがって、引用発明において、誘電体膜910を接合層とすることは当業者であれば適宜なし得たことである。 よって、相違点1は実質的なものではない、また、仮に、相違点1が実質的なものではないとまではいえないとしても、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者であれば適宜なし得たことである。 (2)相違点2について ア 本願発明において、第1電極は「前記第1導電型半導体層の上に第1電極」、接合層は「前記第1導電型半導体層及び前記第2導電型半導体層の上に接合層」であり、「『前記接合層は、前記第1導電型半導体層の上面から』『配置され』」ているものの、第1電極の下面と接合層が垂直方向に重畳される領域を有することは、特定されていない。 そうすると、引用発明において、n型電極とn型GaNコンタクト層902が重なる面積のn型電極の上面の面積に対する割合として、所望の数値範囲を選択することは当業者であれば適宜なし得たことである。 したがって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者であれば適宜なし得たことである。 イ 一方、本願明細書には、「第1電極150と第1導電型半導体層112が重なる面積」と「第1電極150の上面面積」との大小関係についての記載に関し、以下のように記載されている。 「【0033】 図3を参照すると、上記第1電極150の下面が上記接合層130が垂直方向に重畳される領域の幅(2b)は上記第1電極150の上面の全体幅(a)の5%?90%範囲で形成できる。上記第1電極150と上記第1導電型半導体層112とが重畳する面積は、上記第1電極150の上面の面積に比べて10?95%範囲で形成できる。上記接合層130は上記第1電極150と上記第1導電型半導体層112との間にインベッディド(はめ込まれた)形態で配置され、このような領域は第1電極150の方向に進行する光の抽出効率を改善させることができる。」 ウ 以上の本願明細書及び図面全体の記載を勘案しても、本願発明は、「前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積は、前記第1電極の上面面積の10?95%の範囲で形成される」ものとすることにより、格別の効果を奏するものであることを当業者が認識できる記載は見出せない。 したがって、上記段落【0033】の記載を勘案しても、本願発明における「前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積」の「前記第1電極の上面面積」に対する割合の数値範囲の下限値である「10%」と上限値である「95%」が臨界的意義を有するものとは認められない。 以上のとおりであるから、引用発明において、n型電極909を、「発光層904の側面を誘電体膜910で覆ってから、n型GaNコンタクト層902の一部をエッチングにより露出させ、この露出部分上及び誘電体膜910の上に形成」するに際し、本願発明のように、「前記第1電極と前記第1導電型半導体層が重なる面積は、前記第1電極の上面面積の10?95%の範囲で形成される」との構成を採用することは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことと認められる。 よって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者であれば適宜なし得たことである。 (3)判断についてのまとめ 以上検討したとおり、相違点1は実質的なものではない、また、仮に、相違点1が実質的なものではないとまではいえないとしても、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者であれば適宜なし得たことであり、また、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者であれば適宜なし得たことである。 したがって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 7 むすび 以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2018-07-03 |
結審通知日 | 2018-07-10 |
審決日 | 2018-07-24 |
出願番号 | 特願2015-178849(P2015-178849) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小濱 健太 |
特許庁審判長 |
森 竜介 |
特許庁審判官 |
恩田 春香 星野 浩一 |
発明の名称 | 発光素子 |
代理人 | 岩瀬 吉和 |
代理人 | 小野 誠 |
代理人 | 重森 一輝 |
代理人 | 金山 賢教 |
代理人 | 市川 英彦 |