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審決分類 審判 全部無効 1項3号刊行物記載  G03B
審判 全部無効 特174条1項  G03B
審判 全部無効 2項進歩性  G03B
審判 全部無効 1項2号公然実施  G03B
管理番号 1347040
審判番号 無効2017-800042  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2017-03-29 
確定日 2018-11-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第5645227号発明「原稿圧着板開閉装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 事案の概要
本件無効審判請求に係る特許第5645227号(以下「本件特許」という。)は、加藤電機株式会社によって、平成16年6月24日を出願日として出願された特願2004-186866号の一部を平成24年8月1日に新たな特許出願とした特願2012-171028号であって、その請求項1及び2に係る発明について、平成25年2月7日に株式会社ナチュラレーザ・ワンに名義変更する出願人名義変更届がなされた後、平成26年11月14日に特許権の設定登録がなされたものであり、これに対し、平成29年3月29日に、本件無効審判の請求人である下西技研工業株式会社(以下「請求人」という。)により本件無効審判の請求がなされたものである。
(加藤電機株式会社及び株式会社ナチュラレーザ・ワンをあわせて、以下「被請求人」という。なお、特許権の権利者は株式会社ナチュラレーザ・ワンである。)

第2 手続の経緯
本件審判の経緯は、次のとおりである(なお、特許庁への提出日は、請求人、及び、被請求人のそれぞれ記載の日付である。)。

平成29年 3月29日 審判請求
平成29年 4月21日 証拠説明書(以下「証拠説明書(1)」という。
)提出
平成29年 7月 7日 審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)提出
平成29年 8月24日 審尋(請求人、被請求人に対して。以下「審尋
(1)」という。)
平成29年 9月27日 回答書(請求人。以下「請求人回答書」と
いう。)提出
平成29年 9月27日 回答書(被請求人。以下「被請求人回答書(1)
」という。)提出
平成29年10月10日 回答書(請求人。甲第22号証の提出。)提出
平成29年10月26日 審理事項の通知(以下「審理事項通知(1)」と
いう。)
平成29年12月 4日 口頭審理陳述要領書(請求人。以下「請求人要領
書(1)」という。)及び証拠説明書(以下「証拠説明書(2)」とい
う。)提出
平成29年12月 5日 口頭審理陳述要領書(被請求人。以下「被請求人
要領書(1)」という。)提出
平成29年12月11日 審尋(ファクシミリにより送付。請求人、被請求
人に対して。以下「審尋(2)」という。)
平成29年12月19日 第1回口頭審理(第1回口頭審理調書)
平成30年 1月12日 検証申出書、検証物指示説明書、口頭審理におけ
る確認事項について(以下「請求人確認事項書」という。)、証拠説明書
(以下「証拠説明書(3)」という。)、陳述書、手続補正書(以下「請
求人補正書」という。)及び上申書(以下「請求人上申書1」という。)
提出
平成30年 1月30日 審尋(請求人、被請求人に対して。以下「審尋
(3)」という。)
平成30年 3月 2日 回答書(請求人)及び手続補正書(請求人)提出
平成30年 3月 2日 回答書(被請求人。以下「被請求人回答書(2)
」という。)提出
平成30年 3月26日 併合審理通知書(2017-800041及び
2017-800042)
平成30年 3月29日 審理事項の通知(以下「審理事項通知(2)」
という。)、通知書(請求人、被請求人に対して。検証の実施について)
及び通知書(請求人に対して。検証物持参要請)
平成30年 5月 7日 口頭審理陳述要領書(請求人。以下「請求人要領
書(2)」という。)、検甲1説明用写真、検甲2説明用写真、検甲3
説明用写真及び手続補正書提出
平成30年 5月 7日 口頭審理陳述要領書(被請求人。以下「被請求人
要領書(2)」という。)提出
平成30年 6月 1日 第2回口頭審理(第2回口頭審理調書)及び検証(検証
調書)
平成30年 6月 7日 上申書(以下「請求人上申書2」という。)提出
平成30年 6月27日 併合分離通知書(2017-800041及び
2017-800042)

第3 本件特許発明
本件特許の請求項1及び2係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであると認められ(以下、それぞれを「本件特許発明1」及び「本件特許発明2」といい、それらをまとめて「本件特許発明」という。)、これを次のとおり分節して以下検討する。
「【請求項1】
A 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板とこの底板の両側より立設
させたところの両側板を有する取付部材と、
B 上板とこの上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側
へ折り曲げた抱持片を有する両側板を有し、この両側板の抱持片を設
けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介し
て回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材と、
C 前記原稿圧着板を取り付ける上板とこの上板の両側より垂設した両側
板を有し、この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第
2ヒンジピンを介して前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能
に連結したリフト部材と、
D 前記取付部材の両側板の間に設けられた固定ピンと、
E 前記リフト部材の両側板の間に設けられた作動ピンと、
F 前記支持部材の両側板の自由端側に前記作動ピンの旋回軌跡に合わせ
て設けた湾曲溝と、
G 一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に
前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダーと、
H その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前
記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダーと、
I 前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された圧縮コ
イルスプリングとから成り、
J 前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコン
タクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基
部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部とこの傾
斜部に続いて設けられた突部とこの突部に続いて設けられた凹部と
を有するものとし、
K 前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンの
コンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、
前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ
以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前
記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように
成した
L ことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。
【請求項2】
M 前記取付部材の両側板の外側に前記支持部材の両側板が第1ヒンジピ
ンによって回動可能に連結されると共に、前記取付部材の両側板の側
部には、湾曲凹部が設けられ、前記原稿圧着板を閉じた際に前記湾曲
凹部へ前記支持部材の抱持片の側が嵌入するように構成されている
N ことを特徴とする、請求項1に記載の原稿圧着板開閉装置。

第4 無効理由、無効理由に対する答弁及び証拠方法
1 請求人主張の無効理由
請求人は、請求書において、本件特許発明についての特許を無効とする、との審決を求め、以下の無効理由を主張している
(1)無効理由1(特許法第29条第1項及び同条第2項)
ア 本件特許発明1は、本件の原出願前に販売されていたキヤノン株式会社複合機iR2200に取り付けられたヒンジ(以下「キヤノン向けヒンジ」という。なお、以下では、iR2200を含め、「iR」シリーズ、「imageRUNNER」シリーズ、及び、「MEDIO iR」シリーズの表記は全角で表記するとともに、後記甲第1号証の記載、甲第4号証の写真2-1に見てとれる銘板等に基づき、文献の記載箇所の摘記を除いて、「iR」の後、及び、「image」と「RUNNER」の間に空白を入れない表記とし、「MEDIO」と「iR」の間に空白を入れる表記に揃える。)として公然実施された発明と同一であるか、同発明と、本件の原出願前に販売されていた株式会社リコー製imagio Neo 751に取り付けられたヒンジ(以下「リコー向けヒンジ」という。なお、以下では、「imagio Neo」シリーズは全角で表記するとともに、後記甲第5号証の記載、甲第11号証の写真1に見てとれる銘板等に基づき、文献の記載箇所の摘記を除きいて、「Neo」の前後に空白を入れる表記に揃える。)として公然実施された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2号または第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ 本件特許発明2は、上記キヤノン向けヒンジとして公然実施された発明、あるいは同発明とリコー向けヒンジとして公然実施された発明とを組み合わせた発明のいずれかと、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2項(後記「第5」「1」「(3)」「ア」のとおり、「特許法第29条第2項」の誤記である。)の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2)無効理由2(特許法第17条の2第3項)
本件特許発明について、平成24年10月3日付(後記「第5」「1」「(3)」「ア」のとおり、「平成26年1月20日」の誤記である。)でなされた手続補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされた補正であるから、その特許は同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。

2 無効理由に対する被請求人の答弁
被請求人は、答弁書において、本件特許発明に対する無効審判請求は成り立たず、本件無効審判請求は却下すべきものである。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求めている。

3 証拠方法
(1)請求人の証拠方法
請求人は、証拠方法として、審判請求書に添付して以下の甲第1号証ないし甲第15号証を提出し、請求人回答書に添付して以下の甲第16号証ないし甲第21号証を提出し、平成29年10月10日付け回答書(請求人)に添付して以下の甲第22号証を提出し、請求人確認事項書に添付して以下の甲第23号証を提出し、請求人要領書(2)に添付して以下の検甲1説明用写真、検甲2説明用写真証及び検甲3説明用写真を提出した。

甲第1号証:キヤノン2001年5月21日付ニュースリリース
(http://cweb.canon.jp/pressrelease/2001-05/pr_ir3300.html)
甲第2号証:キヤノン2003年5月27日付ニュースリリース
(http://cweb.canon.jp/newsrelease/2003-05/pr_ir3350.html)
甲第3号証:キヤノン社「デジタル複合機価格・機能一覧」(2003年
8月13日)
(https://web.archive.org/web/20030813222738/
http://cweb.canon.jp/imagerunner/lineup/price.html)
甲第4号証:平成28年第0148号事実実験公正証書(平成28年(20
16年)11月29日 公証人 北原一夫 作成)、及び、写真1、
2-1?2-7、3-1?3-23、4-1?4-18、5-1?
5-10、6-1?6-3、7-1?7-4、8-1?8-42、
9-1?9-15、10-1?10-8、11-1?11-3、
12-1?12-3、図1?22、符号の説明を添付
甲第5号証:リコー2002年12月3日付ニュースリリース
(https://jp.ricoh.com/release/by_field/copy/2002/1203_2.html)
甲第6号証:リコー2003年3月期アニュアルレポート
(https://jp.ricoh.com/IR/financial_data/annual_report/pdf/03_j
/ar00.pdf リンクは甲第23号証による)
甲第7号証:製品についての問い合わせに対する回答メール(2016年
12月27日付)
甲第8号証:リコーエレメックス社情報機器事業紹介ページ(2003年
10月11日現在)
(https://web-beta.archive.org/web/20031011071536/
http://www.ricohelemex.co.jp:80/corp/enterp/info.html)
甲第9号証:製品についての問い合わせに対する回答メール(2017年
1月13日付)
甲第10号証:リコー社(RICHO GROUP COMPANIES)
発行(2002年11月改訂版)「B064/B065 PARTS
CATALOG」
(https://www.arbikas.com/view/locator/ricoh_B064_Pc1060_1075.pdf
リンクは甲第23号証による)
甲第11号証:平成29年第0042号事実実験公正証書(平成29年
(2017年)3月27日 公証人 北原一夫 作成)、及び
写真1?6、書面1と題する交付書面、書面2と題する修理履歴
を添付
甲第12号証:特開2001-154287号公報
甲第13号証:特願2012-171028号願書および添付書面
甲第14号証:平成26年1月20日付手続補正書
甲第15号証:平成26年1月20日付意見書
(以上、審判請求書に添付して提出。)
甲第16号証:「平成15年12月期第1四半期連結決算概要」とする
キヤノン社のウェブページ掲載の資料
(http://web.canon.jp/ir/results/2003/rslt2003q1j.pdf
リンクは甲第23号証による)
甲第17号証:「imageRUNNER SQUARE カタログダ
ウンロード」と題するキヤノン社のホームページ
甲第18号証:「imageRUNNERS iR2200」と題する
キヤノン社のウェブページ掲載のカタログであって上記甲第17号証
のホームページ中の「iR2200」という文字列をクリックしたとき
に表示またはダウンロードされるもの。
(https://web.archive.org/web/20030420121606/
http://cweb.canon.jp:80/imagerunner/pdf/pdf_file/ir2200.pdf
リンクは甲第24号証による)
甲第19号証:「iR3300/2800/2200製品紹介ページ」と
題するキヤノン社のウェブページであって2002年(平成14)12
月2日時点のインターネットアーカイブ。
甲第20号証:「キヤノンIR2200中古コピー機,複合機のOA市場」
と題する中古コピー機専門OA市場が運営するウェブページ。
甲第21号証:キヤノンのお客様相談センターからの「件名:【キヤノン】
iR2200^(*)のお問い合せについて(お問い合せ番号:WM5656
500)」と題する、請求人代理人鰺坂和浩宛の電子メール。
(以上、請求人回答書に添付して提出)
甲第22号証:平成29年第0148号事実実験公正証書(平成29年
(2017年)10月6日 公証人 北原一夫 作成)、及び、
写真1-1?1-20、2-1?2-33、3-1?3-2、
4-1?4-24、5-1?5-13を添付
(平成29年10月10日付け回答書(請求人)に添付して提出)
甲第23号証:甲6、甲10、甲16及び甲18の印刷元であるウェブペー
ジが掲載されているリンク。
(請求人確認事項書に添付して提出)
(以下、各甲号証をそれぞれ「甲1」ないし「甲23」という。)
検甲1説明用写真、検甲2説明用写真及び検甲3説明用写真
(請求人要領書(2)に添付して提出)

(2)被請求人の証拠方法
被請求人は、証拠方法として、答弁書において以下の乙第1号証及び乙第2号証を提出した。

乙第1号証:本件特許発明の原出願である特願2004-186866号
の特開2006-10979号公開公報の図5と図6の拡大コピー
乙第2号証:本件特許発明の図面の図5と図6の拡大コピー
(以下、各乙号証をそれぞれ「乙1」あるいは「乙2」という。)

第5 当事者の主張
1 請求人の主張(なお、請求人の付与した下線は省略。以下同じ。)
(1)審判請求書における請求人の主張の概要
ア 「7 請求の理由」「(1)請求の理由の要約」「特許法第29条第1項および同条第2項(特許法第123条第1項第2号)」の「理由の要点」の項目
「請求項1に係る発明では、第2スライダーの傾斜部と凹部との間に『突部』が形成されている(構成要件J)のに対し、キヤノン向けヒンジに係る発明では、当該部分が傾斜部と逆方向に傾斜する『逆傾斜部』により形成されている点で一応は相違するが、当該相違点は、実質的な相違点ではなく、両者は実質的には同一である。仮に実質的な相違であるとしても、当該部分に『突部』を形成する点は、同じく事務機器用の原稿圧着板開閉装置の技術であるリコー向けヒンジに採用されていており、いずれも本件特許の原出願以前に公然実施された発明であり、リコー向けヒンジの構成をキヤノン向けヒンジに適用することは、当業者にとって容易である。
請求項2に係る発明中、請求項1に係る発明に追加される構成要件要素の全ては、キヤノン向けヒンジ、リコー向けヒンジに係る発明と同様に事務機器用の原稿圧着板開閉装置の技術であり、かつ、本件特許の原出願以前に頒布された甲12に記載された発明と同一であって、その構成をキヤノン向けヒンジに適用することは、当業者にとって容易である。」(審判請求書7頁「理由の要点」の項目1行?最下行)

イ 「7 請求の理由」「(1)請求の理由の要約」「特許法第17条の2第3項(特許法第123条第1項第1号)」の「理由の要点」の項目
「上記構成要件Kの構成は、拒絶査定不服審判請求時(当審注:「拒絶理由に対する補正時」の誤記と思われる)の2012年10月3日付手続補正(後記「第5」「1」「(3)」「ア」のとおり、「2014年1月20日付手続補正」の誤記である。)により挿入された要件であるが、補正の根拠となった図5、図6の記載をみても凹部(35)と第1ヒンジピン(11)とは当接しておらず、これと異なる上記構成要件Kの構成を追加する補正は、原出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面に記載された事項の範囲内においてしたものではない。」(審判請求書8頁「理由の要点」の項目1行?最下行)

ウ 「7 請求の理由」「(3)特許無効審判請求の根拠」
「本件特許の請求項1に係る発明(以下、『本件特許発明1』という。)は、本件の原出願前に販売されていたキヤノン株式会社複合機iR2200に取り付けられたヒンジ(以下『キヤノン向けヒンジ』という。)として公然実施された発明と同一一であるか、同発明と、本件の原出願前に販売されていた株式会社リコー製imagio Neo 751に取り付けられたヒンジ(以下『リコー向けヒンジ』という。)として公然実施された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2号または第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
本件特許の請求項2に係る発明(以下、『本件特許発明2』といい、本件特許発明1と本件特許発明2をあわせて『本件特許発明』という。)は、上記キヤノン向けヒンジとして公然実施された発明、あるいは同発明とリコー向けヒンジとして公然実施された発明とを組み合わせた発明のいずれかと、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
さらに、本件特許発明について、平成24年10月3日付でなされた手続補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされた補正であるから、その特許は同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。」(審判請求書8頁19行?9頁13行)

エ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「ア 本件特許発明」
「ア 本件特許発明
・・・
そして、本件の各発明は、この構成により原稿圧着板を開いた時に、内部構造が極力外部へ露出せず、かつ、グリスを塗布した固定ピンの部分を覆うことにより、コンタクトガラス上へ載置した原稿の端部がグリスで汚れないという作用・効果を奏するとされているものである。(特許公報【0004】段落。)」(審判請求書9頁15行?11頁3行)

オ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「イ 引用発明の説明」「(ア)キヤノン向けヒンジ」「a.キヤノン向けヒンジが本件特許の原出願前に公然販売されていたこと」
「(a)キヤノン向けヒンジ搭載品が本件特許の原出願前に公然販売されていたこと
キヤノン株式会社製複合機iR2200に使用されているヒンジを、以下、『本件キヤノン向けヒンジ』という。iR2200は、甲第1号証記載のとおり、2001年(平成13年)6月11日より順次発売された同社MEDIO iR3300シリーズの1機種である。iR2200は、オフィス向けに広く販売されていた民生品であり、その販売は不特定多数向けである。また、本件キヤノン向けヒンジは、後述の事実実験(甲4)からも明らかな通り、外観上ないし分解することによってその構造を知ることができるものである。したがって、本件キヤノン向けヒンジは、iR2200が販売された2001年(平成13年)6月11日には、公然と実施されていたことが明らかである。
なお、甲第2号証記載のとおり、2003年(平成15年)5月27日には、iR2200の後継機種であるimageRUNNERs iR2210が発売されている。また、インターネットアーカイブに保存されているキヤノン株式会社の同年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページにおいては、標準モデルについて見ると、後継機種であるiR2210のみが記載され、iR2200の記載がない(甲3)。これらから考えると、遅くとも、2003年(平成15年)8月13日までに、iR2200の販売が終了していたことになる。
(b)本件キヤノン向けヒンジの生産番号等
請求人は、iR2200の中古機を中古市場から購入し、当該複合機から使用されている本件キヤノン向けヒンジを取り外して、その構成を確認する事実実験を行った。当該事実実験の内容を記録した事実実験公正証書(平成28年第0148号平成28年11月29日作成)を甲第4号証として添付する。甲第4号証記載のとおり、以下の事実が確認された。入手したiR2200に取り付けられていたADF、ヒンジには、他の機種に取り付けられたり、取り替えられたりした形跡はみられず(甲4・第8頁第15行ないし第19行、添付写真2-6、7、第9頁第5行ないし第14行、添付写真3-2、第10頁第1行ないし第11行、添付写真3-5、第11頁第12行ないし第19行、添付写真3-15、16、第12頁第2行ないし第13行、添付写真3-20ないし23)、複合機本体の製造出荷時に取り付けられて販売したものとみられる。同ヒンジには、型番として『FB6-2703』との刻印(甲4・添付写真4-6)、及び、『B320725』とのロット番号のスタンプが押印されている(甲4・添付写真3-14、同第11頁第3行ないし第6行)。複写機・複合機向けヒンジにおいては、当該ロット番号は、先頭2桁が工場と製造ラインを表し、3桁目が製造年(西暦)の末尾1桁、続く4桁が製造月日を表すのが一般的であり、それによれば上記ヒンジは、2002年7月25日に生産されているものと見られ(甲4・第11頁第7行ないし第11行)、上述したiR2200の販売期間に整合するものである。
したがって、本件ヒンジは、本件の原出願日である平成16年(2004年)6月24日以前にキヤノン株式会社製複合機iR2200に取り付けられ、販売されることにより、当該ヒンジに係る発明が公然に実施されたものである。」(審判請求書11頁6行?12頁24行)

カ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「イ 引用発明の説明」「(ア)キヤノン向けヒンジ」「b.キヤノン向けヒンジの構成」(なお、後記第6で検討するとおり、甲4添付の「図」に基づく主張の部分は除く。以下同じ。)
「甲第4号証第15頁第7行ないし第20頁第4行および同頁第17行ないし第21頁第16行記載のとおり、本件キヤノン向けヒンジは、下記の構成を有する
(以下に付す写真番号はいずれも甲第4号証に添付された写真番号である。)。
『a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、(写真4-1)
b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)と、(写真4-2、3)
c 前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、(写真4-4、5)
d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、(写真4-6、4-7)
e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、(写真4-8)
f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝(54)と、(写真6-1、2)
g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、(写真4-9)
h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、(写真4-10)
i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり、(写真4-11)
j’ 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし、(写真6-3)
k 前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した(写真4-11?13)
l ことを特徴とする原稿圧着板開閉装置』」(審判請求書12頁26行?14頁13行)

キ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「イ 引用発明の説明」「(イ)リコー向けヒンジ」「a.リコー向けヒンジが本件の原出願前に公然販売されていたこと」
「(a)リコー向けヒンジ搭載品が本件特許の原出願前に公然販売されていたこと
株式会社リコー製複合機imagio Neo 751に使用されているヒンジを、以下、『本件リコー向けヒンジ』という。imagio Neo 751は、2003年2月3日に販売が開始された(甲5)。なお、imagio Neo 751/601は、2003年3月期のリコー社のアニュアルレポートにおいても『imagio Neo 751と601(海外名称:Aficio 1075と1060)シリーズも好評を博しました。』と記載されているとおり、2003年3月31日以前に日本国内はもとより海外においても販売されていた(甲6)。imagio Neo 751も、上記iR2200と同様、オフィス向けに広く販売されている民生品であり、その販売は不特定多数向けである。また、本件リコー向けヒンジは、後述の事実実験(甲4)からも明らかな通り、外観上ないし分解することによってその構造を知ることができるものである。したがって、本件リコー向けヒンジは、imagio Neo 751が販売された2003年(平成15年)2月3日には、公然と実施されていたことが明らかである。なお、2004年(平成16年)2月6日、imagio Neo 751の後継機であるimagio Neo 752シリーズが発売されており、遅くともこの時点までに、imagio Neo 751の生産が終了していた(甲7)。
(b)本件リコー向けヒンジに関する事実実験
請求人は、imagio Neo 751を所有していた者から、これに標準装備されているADF(以下、『本件ADF』という)を人手し、本件キヤノン向けヒンジと同様に、当該部品に取り付けられていた本件リコー向けヒンジを取り外して、その構成を確認する事実実験を行った。当該事実実験の内容は、甲第4号証に合わせて記載されている。
i本件ADFがimagio Neo 751/601の搭載品であること
甲第4号証記載のとおり、以下の事実が確認された。本件ADFは、他の機種に取り付けられたり、取り替えられたりした形跡はみられず、複合機の販売時に取り付けられて販売したものとみられ、ADFに付された銘板には、『B477』との部品番号と、『3110743』とのシリアル番号の記載があった(甲4第22頁第9行ないし第11行、添付写真7-2)。なお、リコー社は、その子会社であるリコーエレメックスからフィーダ製品の供給を受けている(甲8)ところ、請求人代理人がリコーエレメックス社に問い合わせた結果、シリアル番号『31107XX』の場合には、2003年11月製造であるとの回答が得られた(甲9)。
甲第10号証のリコー社発行『B064/B065部品カタログ』は、Aficio 1075/1060シリーズ(甲第6号証記載のとおり、両機種の日本名称は、imagio Neo 751/601である。)および同等品向け部品カタログであって、2002年11月に改定されたものであるが、同カタログによれば、DF部分を構成する専用部品には、『B477XXXX』のように先頭4桁が『B477』であり、続く4桁が部品ごとに異なる部品番号が付されており、『B477』がDFに共通する親番号として用いられている。そして、甲第4号証添付の写真8-1ないし42に示される当該ADFの分解過程におけるADFの部品構成・組み立て状況と、甲第10号証記載の各部品の形状、配置状況とは下記のように、一致している。

以上のことから、甲第4号証の事実実験の対象とした部品番号『B477』のADFは、甲第10号証に記載されているDFと同一製品である。また、本件ADFの製造時期は、imagio Neo 751/601の販売期間と重なるから、これらの事情から考えると、本件ADFは、海外名称Aficio 1075/1060シリーズ、日本名称imagio Neo 751/601の標準搭載品として用いられていたものである。そして、上述したとおり、imagio Neo 751/601製品が遅くとも2003年2月3日から販売に供されていたことからすると、その標準搭載品であった本件ADFも、同日から公然と実施されていたことになる。
ii本件ヒンジの製造番号等
ヒンジについても、それを取り付けていた部材を含めてADF製造後に交換・再組み立てされた形跡は皆無であり(甲4・第23頁第13行ないし第20行、写真8-16ないし18、第24頁第4行ないし第11行、写真8-19ないし24、第24頁第15行ないし第25頁第2行、写真8-36、37)ヒンジには、『B431008』とのロット番号のスタンプが押印されている(甲4・第25頁第3行ないし第5行、写真8-38)。キヤノン向けヒンジの場合と同様に、当該ロット番号は、先頭2桁が工場と製造ラインを表し、3桁目が製造年(西暦)の末尾1桁、続く4桁が製造月日を表しているものとみられ、それによれば上記ヒンジは、2003年10月8日に生産されたものである(甲4・第25頁第5行ないし第15行)。これは、上記ADFの製造年月、さらには、上述したimagio Neo 751の製造期間にも整合している。
(c)『B477』ADFがimagio Neo 751に搭載されて販売されていたこと
請求人は、(b)とは別のimagio Neo 751本体を現在も使用している会社の協力を得て、当該本体の人手時期、それに取り付けられているADF、ヒンジの状況を調査した。その結果を公証したのが甲第11号証である。
甲第11号証記載のとおり、X社の使用しているimagio Neo 751(機番『3A07-1112XX』(末尾二桁を伏せ字XXで記す。))には、ADFとして部品番号『B477』、シリアル番号『30706XX』(末尾二桁は伏されている。)が搭載されており、この複合機は、2003年8月29日にX社に納入されて以来、甲第11号証の事実実験の日(2017年3月23日)までの間にADFおよびそのヒンジの交換を伴う修理作業は行われておらず、ヒンジおよびADF本体部分は、納入日に搭載されていたものと同一である。
このように、甲第4号証の事実実験の対象となったADFと同じ部品番号を有するADFを搭載したimagio Neo 751が2003年8月29日までには、販売されていたことは明白であって、本件リコー向けヒンジもその販売により公然実施された。
一方、この複合機に搭載されていたADFの部品番号『B477』は、甲第4号証に記載される事実実験の分解対象となったリコー社のADFと同一部品である。また、(b)で述べた『B477』のシリアル番号の解釈によれば、当該複合機のADF部品は、2003年7月製造であるものと推定される。
本複合機が、同年8月末にX社に納入されていたことからみても、甲第4号証の事実実験の対象となった本件リコー向けヒンジを搭載した複合機は、遅くともADFの製造から2ヵ月経過した2004年1月までには、販売されていたものと推定される。本複合機のヒンジについては、外観上、本件リコー向けヒンジと同一構成と見受けられ、少なくとも本件リコー向けヒンジを搭載した複合機は、2004年1月までには、販売されており、それにより本件リコー向けヒンジは、本件特許の原出願の出願日以前に公然実施されていた。
(d)小括
以上のとおりであるから、本件リコー向けヒンジを組み込んだADFは、2003年11月に製造され、それを標準搭載品として搭載したimagio Neo 751シリーズは、2003年2月3日から2004年2月6日頃まで民生品として販売に供されている。これらは本件特許の原出願日以前であって、当該ヒンジに係る発明は、公然に実施されたものである。」(審判請求書14頁18行?19頁4行)

ク 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「イ 引用発明の説明」「(イ)リコー向けヒンジ」「b.リコー向けヒンジの構成」
「甲第4号証第32頁第7行ないし第33頁第13行記載のとおり、本件リコー向けヒンジは、下記の構成を有する(以下に付す写真番号はいずれも甲第4号証に添付された写真番号である。)。
『j 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし、(写真11-2、13)』」(審判請求書19頁6?14行)

ケ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「イ 引用発明の説明」「(ウ)甲第12号証」
「甲第12号証(特開2001-154287号公報、2001年6月8日発行)には、以下の記載がある。
『図面はこの発明の一実施の形態を示す。1は取付ベース1aとこの取付ベース1aの両側より立ち上げた両側板1b,1bを有する導電性材質の金属プレート製の取付部材であり、想像線で示した複写機や印刷機の装置本体A上に取り付けられている。3は背板3aとこの背板3aとより折り曲げた両側板3b,3bと頂板3cを有する同じく導電性を有する金属プレート製の支持部材であり、両側板3b,3bの一端部側をヒンジピン2を介して、取付部材1の両側板1b,1bへ回動可能に軸支させている。』(第3頁第4欄第25行ないし第34行)
『今、図1と図3に示したように、原稿圧着板を閉じた状態においては、』(第4頁第5欄第42行および第43行)
また、参照された図1、図3には、取付部材の両側板の側部(図中受圧ピン6と、取付ベース1aの間に位置する部分)には、湾曲凹部が設けられていることが図示されており、原稿圧着板を閉じた状態を示す図1、図3においては、その湾曲凹部へ、支持部材3の拘持部3eの受圧ピン6側が嵌入している様子が図示されている。
以上から、甲第12号証には、以下の発明(以下、『甲12発明』という。)が記載されている。
『K.取付部材の両側板の外側に支持部材の両側板が第1ヒンジピンによって回動可能に連結されるとともに、
L.前記取付部材の両側板の側部には、湾曲凹部が設けられ、
M.原稿圧着板を閉じた際に前記湾曲凹部へ前記支持部材の抱持片の側が嵌入するように構成されていることを特徴とする、
N.原稿圧着板開閉装置。』(審判請求書19頁16行?20頁12行)

コ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「ウ 本件特許発明と証拠発明との対比」「(ア)本件特許発明1と証拠発明との対比」
「本件特許発明1とキヤノン向けヒンジに係る発明とは、以下の点で一致する。
『・・・
F.前記支持部材の両側板の自由端側に前記作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝と、
・・・
J.前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部とこの傾斜部に続いて設けられた部分とこの部分に続いて設けられた凹部とを有するものとし、
K.前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した
L.ことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。』
そして、以下の点て相違する。
相違点:第2スライダーの傾斜部と凹部との間に設けられる箇所について、本件特許発明においては『突部』であるが、キヤノン向けヒンジに係る発明においては『逆傾斜部』である点(構成要件J、j’)。
そこで、相違点について検討するに、本件構成要件Jの『突部』とは、本件明細書の【0020】、【0021】に記載のとおり、『後端部側の第2スライダー32の閉塞面の外表面の略中央部には、図1?図7、図9に示すように、突部33が設けられている。この突部33は、支持部材5の上板51に略平行に延びて形成されている。突部33の抱持片53側は漸次傾斜された傾斜部34として形成され、背板51側には凹部32aが形成されている。原稿圧着板密着時、突部33が固定部材例えば固定ピン13に当接し、リフト部材6が第2ヒンジピン12を軸に回動することによつて、固定ピン13が当接する箇所が突部33から傾斜部34に徐々に摺動する。』『この状態から原稿圧着板3の手前側を手に持って、装置本体2の上面から離間する方向(上方)に第1ヒンジピン11を軸に回動させると、固定ピン13に当接する箇所が突部33から傾斜部34へと徐々に摺動すると共に、第2スライダー32が圧縮コイルスプリング21によって支持部材5内を後端部側へと押圧されて摺動し、圧縮コイルスプリング21が徐々に伸びる。』との記載から明らかなとおり、『突起』であることが重要なのではない。【0020】段落の『この突部33は、支持部材5の上板51に略平行に延びて形成されている。』とは、突部33の平面がL板51に略平行という意味ではなく、突部33の突出方向が上板51に略平行という意味と解されるが、本件特許発明における『突部33』と『傾斜部34』は、原稿圧着板を操作したときの固定ピン13との接触面と第2スライダーの摺動方向との傾きを異ならせることによって、第2スライダーの摺動を制御することが重要である。そうすると、突部33は、第2スライダーの摺動方向に直行する面方向に略平行な平面を有しなければならないものではなく(実際、請求項1の記載においては、突部33の突出方向や突部33の頂面の延在方向についての限定は付されていない。)、キヤノン向けヒンジの『逆傾斜部』についても本件特許発明の『突部』に該当するものというべきである。
このように、上記相違点は実質的な相違点ではないから、本件特許発明とキヤノン向けヒンジに係る発明とは実質的に同一であって、差異はない。当該相違点を厳密に解し、キヤノン向けヒンジの構成要件Jの『逆傾斜部』は、本件特許発明の構成要件Jにおける『突部』とは異なると解したとしても、リコー向けヒンジにおいては、当該傾斜部と凹部との間に設けられた部分が『突部』であり、リコー向けヒンジは、本件特許発明の構成要件Jを全て充足している。そして、リコー向けヒンジも複写機機能を有する複合機の原稿圧着板開閉装置に用いられるヒンジに関する技術であり、本件特許発明及びキヤノン向けヒンジと技術分野を同一にし、それ以外の構成要件要素もほぼ同一であるから、リコー向けヒンジの『突部』の構成をキヤノン向けヒンジの構成に適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に想到し得るものである」

サ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「ウ 本件特許発明と証拠発明との対比」「(イ)本件特許発明2と証拠発明との対比」
「本件特許発明2と甲12発明とを対比すると、甲第12号証には、本件特許発明2の特徴である構成要件KないしMのすべてが記載されている。したがって、本件特許発明2は、上述したキヤノン向けヒンジに係る発明と甲12発明とを組み合わせた発明、あるいは、これにさらにリコー向けヒンジに係る発明を組み合わせた発明に相当する。甲12発明とこれらの発明を組み合わせることがその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって容易であることは、本件特許発明1について述べたところと同様である。」(審判請求書23頁4?11行)

シ 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「エ 作用・効果」
「また、本件特許発明により得られる作用効果も、キヤノン向けヒンジ、リコー向けヒンジ、甲12発明の構成から予測しうる範囲内のものであり、格別な作用効果を奏するものとはいえない。」(審判請求書23頁13?15行)

ス 「7 請求の理由」「(4)本件特許を無効にすべき理由」「オ 補正違反(新規事項追加)」
「(イ)出願当初の開示内容
被請求人は、平成26年1月20日付意見書(甲15)において、上記補正の根拠として出願当初明細書の0022段落、当初図面の図5、図9の各記載を掲げている。
しかしながら、0022段落には、原稿圧着板を全開した際に、第2スライダーと第1ヒンジピンとが接触するか否かについては何ら記載はない。また、図9は第2スライダーのみを図示した図面であり、第1ヒンジピンとの関係については当該図面から一義的に明らかになるものではない。そして、図5、図6のいずれにおいても、第2スライダーの凹部と第1ヒンジピンとは接触しておらず、隙間があるものとして描かれている。このように、出願当初の図面、明細書及び特許請求の範囲のいずれにおいても、原稿圧着板を全開した際に、第2スライダーと第1ヒンジピンとが接触するという記載、示唆はない。

(ウ)補正が新規事項追加である点
(イ)で述べた通り、本件の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲・図面には、第1ヒンジピンと第2スライダーの凹部とが接触する形態については、何ら開示がないというべきであり、『前記凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成したこと』を請求項に追加する補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではない。したがって、本補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされた補正であり、本特許は同法第123条第1項第1号に該当するものであって、無効とすべきである。」(審判請求書25頁1?22行)

(2)請求人回答書における請求人の主張の概要
ア 「6 回答の内容」「1 『1 甲1について』について」「(1)本件特許の原出願日(2004年(平成16年)6月24日)より前にiR2200モデルが実際に販売されていたことについて」
「キヤノン社の作成に係る『平成15年12月期第1四半期連結決算概要』には、『当四半期の連結業績を事業の区分別に概観しますと、事務機事業の内、オフィスイメージング機器では、強力なラインアップを持つ白黒デジタルネットワーク複合機“imageRUNNERシリーズ”の売上が国内外で堅調な伸びを示し、その中でも特に中高速機iR3300/iR2200や高速機iR5000、iR7200/iR105が引き続き好調に推移しました。』(下線部は請求人による。)との記載がある(甲16)。これは、原出願日より前の平成15年以前にすでにiR2200が販売されていたことを意味する。
2002年(平成14年)12月2日時点のインターネットアーカイブによれば、同時点において、キヤノン社が運営する複合機のカタログダウンロードページには、『iR2200』が記載されていた(甲17)。販売していない製品のカタログをダウンロードできる状態にしておくことは考えられないから、これは、2002年12月2日より前に、iR2200が販売されていたことを意味する。なお、甲第18号証は、甲第17号証の『iR2200』という文字列をクリックしたときに表示またはダウンロードされる、iR2200のカタログである。
同じく2002年(平成14)12月2日時点のインターネットアーカイブによれば、同時点においてキヤノン社が運営するウェブサイトの製品紹介ページにおいて、iR2200が紹介されていた(甲19)。これは、2002年(平成14)12月2日の時点で、すでにiR2200が販売されていたことを意味する。
中古コピー機専門店であるOA市場のウェブサイト上には、中古コピー機としてiR2200が掲載されており、その『主な販売時期』は、2001年?2003年とされている(甲20)。これは、2001年の時点ではすでにiR2200は販売されており、2003年には販売が終了していたことを意味する。
以上のことから、本件特許出願日の2004年(平成16)年6月24日より前にiR2200はキヤノン社の決算報告の中にすでに登場しており、キヤノン社のウェブサイトにおいて同複合機の製品紹介がなされ、また、同複合機のカタログがダウンロード可能になっている。さらに、同複合機は中古市場に出ており、主な販売時期は2001年から2003年とされている。したがって、キヤノンiR2200が、本件特許の出願より前に実際に販売されていたことは明らかである。」(請求人回答書2頁18行?3頁22行)

イ 「6 回答の内容」「1 『1 甲1について』について」「(2)iR2200の備えるヒンジの構造について」
「審尋の『キヤノンMEDIOiR2200モデルの外観写真や設計図はなく、また、ヒンジ自体の構造図も存在しないから、甲1において、2001年6月11日より順次用意し、選択することができることとなったとされる当初のキヤノンMEDIOiR2200モデルのヒンジの構造を直接示す証拠はない。』との指摘について、以下のとおり釈明する。
甲第1号証の立証趣旨は、『“キヤノンMEDIO iR2200”と呼ばれるモデルが平成13年6月11日より順次発売された』という点にあるのであり、その構成まで明らかにすることを立証趣旨とする証拠ではない。
請求人が“キヤノンMEDIO iR2200”の構成を明らかにするために提出した証拠は甲第4号証である。審判請求書の『7(4)イ(ア)a(b)本件キヤノン向けヒンジの生産番号等』において主張したように、請求人はiR2200の中古機を中古市場から購入し、当該複合機から使用されている本件キヤノン向けヒンジを取り外して、その構成を確認した。それによって確認された構成は、審判請求書の『7(4)イ(ア)b.キヤノン向けヒンジ構成』において主張したとおりである。したがって、甲第1号証はそもそも複合機やヒンジの構成を立証することを趣旨とする証拠ではなく、甲第4号証が『MEDIO iR2200モデルのヒンジの構造を直接示す証拠』である。」(請求人回答書3頁24行?4頁7行)。

ウ 「6 回答の内容」「2 『2 甲2について』について」
「甲第2号証は、単独で『キヤノン向けヒンジを用いた複合機が出願日前に販売されていたこと』を立証することを趣旨とする証拠ではなく、甲第3号証とあいまって、それを立証するものである。以下、説明する。

甲第2号証は、2003年(平成15)年5月27日に発表されたニュースリリースであるが、その立証趣旨は、『iR2200の後継機であるキヤノンiR2210が、2003年5月27日に発売された』という点にある。甲第3号証は、キヤノン株式会社の2003年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページであるが、ここには、iR2210のみが掲載され、iR2200は掲載されていない。したがって、甲第2号証及び甲第3号証から、『2003年5月27日にはiR2200の後継機であるキヤノンiR2210が発売されたところ、それから約2か月半後の同年8月13日のデジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページには、iR2210のみが掲載され、iR2200は掲載されていなかった』事実が認められる。
このようにiR2210の発売後のウェブページにiR2200が掲載されていないことから、遅くとも2003年8月13日の時点では、iR2200は後継機であるiR2210に取って代わられ、その販売は中止されていたと考えるのが合理的である。このことは、甲第20号証に、販売終了時期は2003年と記載されていることとも整合する。iR2200が出願日より前に販売中止された事実は、iR2200はすべて出願日より前に販売されたことを意味する。したがって、iR2200に搭載された本件キヤノン向けヒンジも、出願日より前に販売されたといえる。

以上のとおり、甲第2号証は甲第3号証とあいまって、『キヤノン向けヒンジを用いた複合機が出願日前に販売されていたこと』を立証するものである。」(請求人回答書4頁9?30行)

エ 「6 回答の内容」「3 『3 甲3について(1)』について」
「すでに述べたとおり、甲第3号証は、キヤノン株式会社の2003年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページであるが、その立証趣旨は、『2003年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページに、iR2210のみが掲載され、iR2200は掲載されていないから、2003年8月13日の時点ではiR2200は後継機であるiR2210に取って代わられ販売は中止されていた』という点にある。
この点について、審尋では『単にこの頁には掲載されていない可能性もあり、また、旧型機のため販売はしているが掲載はしていない可能性もある。』とご指摘いただいた。
しかしながら、旧型機が販売されていると仮定した状況で、消費者向けに複合機のオプションを示す『一覧』ページに最新機種だけ表示するというのは不自然である。また、甲第2号証の『キヤノンimageRUNNERs iR2210・・・・・・価格(税別)88万円(発売日:2003年5月27日)』との記載、及び、新たに提出したimageRUNNERs iR2200のカタログ(甲18)の『iR2200‥‥‥本体標準価格¥880,000(税別)』との記載から理解できるように、iR2200とiR2210の価格は同じである。高性能になった後継機が同じ価格で販売されているにもかかわらず、それより性能の劣る旧機種を同じ価格で販売する理由はない。
したがって、キヤノン株式会社の2003年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページにiR2200が掲載されていないのは、後継機であるiR2210に取って代わられ、その販売は中止されていたからだと考えるのが合理的である。よって、甲3は『キヤノン向けヒンジを用いた複合機の販売が出願日前に終了していたこと』を立証する証拠となる。

なお、請求人が提出したiR2200に関する証拠(甲16?20)が示す販売時期は、すべて本件特許の原出願日である平成16年(2004年)6月24日より前のものであるうえ、甲第20号証によれば、販売終了時期は2003年とされている。また、本件キヤノン向けヒンジは、2002年7月25日に生産しているものと考えられるところ(甲4の11頁目7行目)、2002年7月25日に生産されたヒンジが、約2年後の2004年6月24日まで、複合機に搭載されなかったということは、当業者の常識に反する。
このように複数のiR2200に関する証拠が、いずれもiR2200が販売されたのは本件特許の原出願日よりも前のものであることを示しており、他方、iR2200が平成16年(2004年)6月24日よりも後に販売されたことを示す資料はない。
これらのことからも、iR2200の販売は、出願日よりも前に終了していたといえる。

以上のことから、甲第3号証は、甲第2号証等とあいまって、iR2200モデルの販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたことを証明するものである。」(請求人回答書5頁1行?6頁5行)

オ 「6 回答の内容」「4 『3 甲3について(2)』について」
「imageRUNNERs iR2200のカタログには、iR2200とiR2200F,iR2200L,iR2200Pとは異なるものとして表示されており、価格も機種によって異なっている(甲18)。
また、請求人代理人が、株式会社キヤノンのお客様相談センターに、『3)iR2200i、iR2200D、iR2200F、iR2200L、iR2200M、iR2200Pとは銘板(本体前面中央にある機種名表示)に違いはありますか?』と問い合わせたところ、『3)銘板に違いがあります。iR2200i、iR2200D等製品名が明記されています。』という回答が得られた(甲21)。
したがって、『iR2200P』、『iR2200D』及び『iR2200M』の『銘板』は、『iR2200』と相違する。よって、甲第4号証の写真2-1の『iR2200』との銘板は、『iR2200』(標準モデル)を特定するものである。」(請求人回答書6頁7?17行)

カ 「6 回答の内容」「5 『4 甲4について(1)』について」
「(1)アないしウに対する反論
・・・
そもそも、ADFが全体の交換を要するほど故障するというのは一般的ではない。また、ADFそのものを交換することが多いという一般常識も存在せず、むしろADFそのものを交換することは少ないというのが当業者の常識である。これらのことを示す証拠として、新たに提出する甲第22号証がある。
甲第22号証に添付された書面2は、機種番号3A07のリコー製複合機であるNeo 751の修理履歴である。これはキヤノン製複合機のものではないが、複合機のADF部の交換に関する一般的な運用を次のとおり理解することができる。
甲第22号証の修理履歴(書面2)は、このリコー製複合機について、2003年8月29日に某社に納品されてから、2017年9月14日までの間に、1度もADF全体が交換されたことはなく、また、ヒンジが交換されたこともないことを示している。すなわち、修理履歴からは、対象物名『ADF部』に対して処置名『交換』が何度か行われており、『交換』が行われる場合には、その『交換』の対象となった『部品番号』と『部品名』が併せて記録されることが理解できる。たとえば、2008年2月7日には、『交換』が、『ADF部』に対して行われており、そのときの部品番号1が『A8061295』、部品名1が『キユウシベルト』であり、部品番号2が『A8592241』、部品名2が『リバースローラキュウシ』である。もし、ADF部全体や、ヒンジ部分のみが交換されていた場合には、対象物名として『ADF部全体』または『ヒンジ』と記載されるはずのところ、そのような記載はない(甲22)。したがって、このリコー製複合機については、納品から約14年間の間、ADF全体の交換やヒンジの交換はされていない。
以上のことから、複合機のメンテナンスに関し、約14年にわたって複合機が使用される場合であっても、ADF部全体を交換するような故障が生ずることは一般的とはいえない。また仮にADF部の部品を交換する場合であっても、ADF部全体が交換されるのではなく、必要な部品を交換するというのが技術常識である。したがって、キヤノン製複合機についても、ADF部全体またはヒンジの交換があったとはいえず、むしろ上で述べたリコー複合機の実体に照らして考えれば、複合機の本件キヤノン向けヒンジについても、ADF部全体またはヒンジの交換はなかったと考えるのが合理的である。
この甲第22号証は、『甲4に記載されているネジ跡、ほこり等以外にヒンジ交換の可能性を否定する証拠』といえる。」(請求人回答書6頁19行?7頁28行)

キ 「6 回答の内容」「5 『4 甲4について(1)』について」「(2)ネジ跡、ほこり等について」
「審尋では『エ・・・上記アないしウを踏まえても甲4において、ネジ跡、ほこり等の状態が、『本件複合機』のヒンジ交換あるいはADF交換されていないことまでの証拠であるとする理由は何か。』とご指摘いただいた。
『アないしウを踏まえても』という点については、上で説明したとおり、ADFそのものを交換することが多いという一般常識は存在せず、むしろADFそのものを交換することは少ないというのが当業者の常識であり、そのことを示す証拠として、新たに提出する甲第22号証がある。
ネジ跡、ほこり等に関しては、次のことが認められる。すなわち、ネジを一度取り外して再度取り付けた場合には、ネジを締めた跡がずれるので、そのずれの有無で取り替えの有無がわかるが、本件キヤノン向けヒンジの複合機側の取り付けネジ跡は、取り外した1か所しか痕跡がなく、取り替えの形跡は見られなかった(甲4)。また、本件キヤノン向けヒンジの複合機側接触面とそれ以外の部分とのほこりの付着状態に差があり、色が異なっていることから取り外しはされていないと考えられる(甲4)。
以上のことから、ネジ跡、ほこり等が甲第4号証に示すとおりであったという事実は、『本件複合機』のヒンジ交換あるいはADF交換がされていない蓋然性が高いことを示すものといえる。」(請求人回答書7頁30行?8頁12行)

ク 「6 回答の内容」「6 『4 甲4について』の(2)について」「(1)甲4のリコーADFが取り付けられていた複合機が株式会社リコー製imagio Neo 751であったことを証明する証拠について」
「審尋は、甲第4号証において実験の対象とされたADF(『甲4のADF』)について、これがリコー製imagioNeo751に搭載されていたことを証明する証拠が提出されていない旨を述べておられる。
しかしながら、審判請求書の『7(4)イ(イ)a.(b)本件リコー向けヒンジに関する事実実験』において主張したとおり、imagio Neo 751のカタログによると、DF部分を構成する専用部品には、『B477XXXX』のように、先頭4桁が『B477』になっており、これがDFに共通する親番号として用いられている(甲10)。他方、甲4のADFにも、その部品番号として『B477』との記載があった(甲4:22頁目の6行目から始まる段落)。さらに、甲4のADFと、甲第10号証のカタログの記載は、その各部品の形状や配置状況が一致していた(審判請求書17頁目5行目から7行目)。
以上のとおり、甲4のADFの部品番号はリコー製imagio Neo 751に搭載されたADFの部品番号と一致しており、甲4のADFの各部品の形状や配置状況も、リコー製imagio Neo 751に搭載されたADFと同一であった。したがって、甲4のADFは、リコー製imagio Neo 751に搭載されたADFであると言え、この点すでに証拠を提出済みである。」(請求人回答書8頁14行?下から2行)

ケ 「6 回答の内容」「6 『4 甲4について』の(2)について」「(2)甲11のADFが本件リコーヒンジの構成を有することについて」
「新たに提出する甲第22号証は、甲第11号証において調査したimagio Neo 751(『甲11のリコー複合機』)について、本体からADFを取り外し、さらに、ADFからヒンジを取り外してヒンジの具体的構造を明らかにするために行った事実実験の様子を示したものである。甲第22号証が示すとおり、甲11のリコー複合機に取り付けられていたADF(『甲11のADF』)が備えるヒンジの構造は、審判請求書の7(4)イ(イ)bにおいて述べたものと完全に一致している。
なお、前記の『5 『4 甲4について(1)』について』において説明したとおり、甲11のリコー複合機については、ADF部本体またはヒンジの交換がなされていない。」(請求人回答書9頁1行?9頁10行)

コ 「6 回答の内容」「7 『5 甲7について』について」
「甲第7号証は、リコー製imagio Neo 751の生産終了時期を明らかにすることにより、販売時期、すなわち同機種が公然と実施された時期を推認し、本件両特許の原出願日より前に公然と実施されていたことを立証しようとするものである。
他方、新たに提出する甲第22号証の書面2は、本件imagio Neo 751(『本件リコー複合機』)のメンテナンス履歴である。本件リコー複合機、すなわち機種略号『3A07』、機番『1112XX』、機種名『NEO751』の複合機について、メンテナンス会社が、いつ、どのようなメンテナンスを行ったかの履歴がすべて示されている。これによれば、本件リコー複合機は、2003年8月29日にX社に納品され、それ以降、Y社によるメンテナンスを受けながら、同複合機の引き上げの時点までX社により使用されていた。したがって、リコー製imagio Neo 751という機種の販売終了時期を明らかにするまでもなく、本件リコー複合機という個体が本件特許の原出願より前に公然と実施されていたことは明らかである。
以上のことから、本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に、本件発明は公然と実施されていた。」(請求人回答書9頁12?27行)

(3)請求人要領書(1)における請求人の主張の概要
ア 「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「ア.『2(1)ア 審判請求の記載事項の不整合について』について」
「(ア)手続補正書の日付に関して
aとbでご指摘いただいた箇所(審判請求書の7(1)の欄と7(3)の欄)に記載した日付が誤っておりました。cとdでご指摘いただいた箇所に記載した日付が正しい日付です。
審判請求書の第8頁第2?3行の『2012年10月3日付手続補正』という記載を『2014年1月20日付手続補正』に、同第9頁第9行の『平成24年10月3日付』という記載を『平成26年1月20日』に、それぞれ修正の上陳述という扱いにしていただければと存じます。
(イ)適用条文に関して
aでご指摘いただいた箇所(審判請求書の第9頁第6行)に記載した『特許法第29条第1項第2項』という記載が誤っておりました。同所の記載を『特許法第29条第2項』に修正の上陳述という扱いにしていただければと存じます。」(請求人要領書(1)3頁4?15行)

イ 「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「イ. 『2(1)イ 無効理由1について』について」「(ア)キヤノン向けヒンジについて」
「請求人は、『(1)(丸付き数字の1)キヤノン製複合機iR2200全般の販売、(2)(丸付き数字の2)甲4の事実実験対象の個体の販売、の両方が、審判請求書で特定した『キヤノン向けヒンジ』の構成を有する発明の、本件特許の原出願前における公然実施に該当する』と主張するものです。
なお、上記(2)(丸付き数字の2)に係る甲4の事実実験対象の個体の販売が本件特許の原出願(2004年6月24日)前であったことは、請求人回答書第4?6頁の“3『3 甲3について(1)』について”の欄に記載したようにiR2200全体の販売が本件特許の原出願前に終了していた(2003年)とみられることや、審判請求書第12頁に記載したように当該個体のヒンジの製造年月日が2002年7月25日とみられることから、明らかであると考えます。すなわち、当業者の常識からすれば、ヒンジは、製造されてから1-2か月程度で複合機に組み込まれ、その後1-2か月程度で複合機の完成品が販売されるのが通常です。この点、甲22のimagio Neo 751の個体もそれに合致しています。甲22の第14頁に示されるように当該個体のヒンジは2003年5月15日の生産品と見られるのに対し、当該個体は、その約3ヶ月半後の2003年8月29日に販売代理店からX社に納品されています(甲22書面1、2参照)。販売代理店がX社に販売、納品するまでの期間を考えると、甲22のimagio Neo 751の個体も、ヒンジの生産から2-3か月程度で販売代理店へ販売されたものと推測できます。したがいまして、2002年7月に製造されたヒンジを搭載した複合機がヒンジの製造から約2年後の原出願日まで販売されなかったと考えるのは極めて不合理であり、このことから甲4の事実実験対象の個体が本件特許の原出願以前に販売されていたことは明らかであると考えます。」(請求人要領書(1)3頁22行?4頁16行)

ウ 「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「イ. 『2(1)イ 無効理由1について』について」「(イ)リコー向けヒンジについて」
「請求人は、『(1)(丸付き数字の1)リコー製複合機imagio Neo 751全般の販売、(2)(丸付き数字の2)甲4のリコー向けヒンジ(甲4でいう『本件第1ヒンジ』)が搭載されていたimagio Neo 751の個体の販売、(3)(丸付き数字の3)甲11のimagio Neo 751の個体(甲22のimagio Neo 751と同一の個体)の販売、のいずれもが、審判請求書で特定した『リコー向けヒンジ』の構成を有する発明の、本件特許の出願前における公然実施に該当する』と主張するものです。
なお、上記(2)(丸付き数字の2)に係る甲4のリコー向けヒンジが搭載されていたimagio Neo 751の個体の販売が本件特許の原出願前であったことは、甲7に示されるようにimagio Neo 751全体の製造が本件特許の原出願日である2004年6月24日の4か月以上も前(2004年2月6日)に終了していたこと、審判請求書第16頁に記載したように甲4のリコー向けヒンジが取り付けられていたADFの製造年月が2003年11月であること、同第18頁に記載したように甲4のリコー向けヒンジの製造年月日が2003年10月8日であると解されること、等の事実から明らかであると考えます。
また、上記(3)(丸付き数字の3)に係る甲11のimagio Neo 751の個体(甲22のimagio Neo 751と同一の個体)の販売が本件特許の原出願(2004年6月24日)前であったことは、甲22の書面1、2から明らかです。すなわち、甲22添付の書面1は、2013年に『imagio Neo 751』の製造終了後7年以上経過し、保守部品の提供が困難となると見込まれることから、顧客に対し、その保守の提供方法を変更する旨、通知し確認を求める文書であるところ、この文書によれば.甲11のimagio Neo 751の個体(=甲22のimagio Neo 751の個体)の『納入日』は『2003年8月29日』とされています。また、甲22添付の書面2は、同個体の納入以降全ての修理履歴をその交換部品とともに記載した書面であるところ、この書面によれば、『2003年8月29日に納品された』とされています。いずれからも、同個体の販売が本件特許の原出願(2004年6月24日)前であったことが明らかです。」(請求人要領書(1)4頁18行?5頁15行)

エ 「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「エ.『2(1)エ 甲4の『写真』と『図』について』について」
「図1?22は、代理人らが事実実験の場において事実実験の対象複合機の各部の番号、名称を公証人に分かりやすく説明するために、甲4の本実実験に先立って用意したものです。図1?11に写っているヒンジは、本件キヤノン向けヒンジと同型のもの(本件特許の出願後に実施されたもの)であって、各部の番号、名称は、本件キヤノン向けヒンジと対応しています。図12?22に写っているヒンジは、本件リコー向けヒンジと同型のもの(本件特許の出願後に実施されたもの)であって、各部の番号、名称は、本件リコー向けヒンジと対応しています。したがいまして、図1?22に示す各部の番号、名称は、事実実験で撮影された写真1?12に掲載されている各ヒンジと対応しています。なお、甲22の第16頁下から1行目から第17項上から6行目にかけて、リコー向けヒンジに関し同様の趣旨が記されております。」(請求人要領書(1)5頁17行?最下行)

オ 「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「オ. 『2(1)オ『凹部』について』について」
「ご指摘の通り、甲4の写真6-3における、逆傾斜部に統いて図面視右側に段差があり、当該段差から始まる凹み部分が、特許発明でいう凹部に対応します。」(請求人要領書(1)6頁2?3行)

カ 「6 陳述の要領」「(2)答弁書における被請求人の反論に対する請求人の反論」「ア.『答弁書7.(3)ア.?オ.』(第4、5頁)の反論に対する反論」
「<被請求人の反論の概要>
甲4の事実実験の対象となった『キヤノン(株)製iR2200』『ADF』について、入手経路やヒンジの製造年月日を明らかにすべきである。
<請求人の反論>
・・・
請求人は、主に甲4及び甲22により、キヤノン製iR2200及びでリコー製imagio Neo 751にそれぞれ搭載された各ヒンジの構造を確認すると共に、それらの複合機が本件特許の原出願前に販売されていたこと、及び、構造が確認された各ヒンジが交換されていないことを立証しております。これにより、審判請求書に記載した各証拠発明の公然実施は立証されるのであり、被請求人がいう入手経路やヒンジの製造年月日は公然実施の立証には不要です。
なお、各ヒンジの製造年月日については、審判請求書に記載のとおり、各ヒンジに押印されたスタンプの番号から類推することが可能であり、その日付が本件特許の原出願日よりも相当に前であるという事実は、それらのヒンジが搭載された複合機の販売が本件特許の原出願よりも前であったことをさらに裏付けるものとなります。」(請求人要領書(1)6頁8?24行)

キ 「6 陳述の要領」「(2)答弁書における被請求人の反論に対する請求人の反論」「イ.『答弁書7.(3)カ.?ク.』(第5?6頁)の反論に対する反論」
「<被請求人の反論の概要>
本件特許発明1の第2スライダーは、キヤノンの複写機に搭載されたヒンジの第2スライダーとは、その構成および作用効果が明らかに異なっており、キヤノンの複写機に搭載されたヒンジと同一か、或いはこのキヤノンの複写機に搭載されていた第2ヒンジとリコー製の複写機に搭載されていた第1ヒンジから当業者が容易に創作することのできたものではない。
<請求人の反論>
被請求人の反論は、審判請求書の『7(4)ウ 本件特許発明と証拠発明の対比』の欄(第20?23頁)の主張の誤りを具体的に指摘するものではありません。
本件特許発明がキヤノン向けヒンジに係る発明あるいはリコー向けヒンジに係る発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであることは、審判請求書の上記『7(4)ウ 本件特許発明と証拠発明の対比』の欄(第20?23頁)に記載したとおりです。
請求人主張の『相違点』(審判請求書7(4)ウ(ア)本件特許発明とキヤノン向けヒンジに係る発明との対比(第21頁))に関し、被請求人は、被請求人回答書において『キヤノン向けヒンジは、逆傾斜部のみが設けられており、この逆傾斜部に続いて設けられた凹部を有してはいない』(被読求人回答書第2頁『1(1)』の欄)旨の主張をしていますが、上記(1)オの通り、キヤノン向けヒンジには、『凹部』がございます。また、被請求人は、『突部』に関して、『227号特許の凸部は、第2スライダーに対しその摺動方向と直交する方向に設けられた平坦なものであり』(被請求人回答書第3頁『1.(2)』の欄)及び『227号特許でいうフラットな凸部』(被請求人回答書第7頁『4.(2)』の欄)である旨主張を行っていますが、審判合議体が審理事項通知書2(2)エ(エ)(第7頁)でご指摘の通り、本件特許請求の範囲および発明の詳細な説明には、そのような記載は見当たりません。
なお、被請求人は、被請求人回答書において、本件特許発明の構成要件Kに関し、「kの『前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材の後部が前記取付部材に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、』の構成要件は、本件特許発明のKの構成要件には存在していない』と主張していますが(同回答書1(1)(第2頁))、誤りです。本件特許発明1の構成要件Kには、そのような構成要件が記載されています。
また、被請求人は、被請求人回答書において、『当接』と『収容』の違いを主張しておりますが(同回答書第4頁)、審判請求書記載の通り、キヤノン向けヒンジの『凹部』と『第1ヒンジピン』も、227号特許(本件特許)のものと同様、『当接』しており、『収容』について一切主張していないことから、被請求人の主張は、請求人の主張となんら関係ないものと思われます。」(請求人要領書(1)6頁最下行?8頁7行)

ク 「6 陳述の要領」「(2)答弁書における被請求人の反論に対する請求人の反論」「ウ.『答弁書7.(3)ケ.』(第6頁)の反論に対する反論」
「<被請求人の反論の概要>
本件特許発明2は本件特許発明1の従属項なので、本件特許発明1が進歩性を有する以上、本件特許発明2も進歩性を有する。
<請求人の反論>
審判請求書に記載したとおり、本件特許発明1は新規性又は進歩性を有しません。また、本件特許発明2も進歩性を有しません。」(請求人要領書(1)8頁9?14行)

ケ 「6 陳述の要領」「(2)答弁書における被請求人の反論に対する請求人の反論」「エ.『答弁書7.(3)コ.』(第7頁)の反論に対する反論」
「<被請求人の反論の概要>
本件特許発明を開示した特許公報の図5と図6、及び本件特許発明の原出願である特開2006-10979号に示した特許公開公報の図5と図6には、どちらも凹部がヒンジシヤフトに当接している状態が図示されている。本件特許発明は、この各図面に記載されている内容をクレームしているのであり、何ら補正の範囲を超えていないことは明らかである。
<請求人の反論>
被請求人は、本件特許の出願当初の図5と図6が補正の根拠である旨主張していますが、それら図面の記載をもって出願当初明細書等に『前記凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成したこと』という構成の記載があったと考えるのは極めて不合理です。このことは、例えばヒンジピンの径が1cmで当該ヒンジピンと凹部の間の隙間が0.1mmであったような場合を想定すると明らかです。すなわち、そのような場合、ヒンジピンと凹部は『当接』していないといえるかもしれませんが、その0.1mmを、実物大の複合機よりもはるかに小さな特許明細書の図面において表現しようとすると、ヒンジピンと凹部を図面として描く線の方が太くなってしまうと考えられ、実際にはヒンジピンと凹部の間に0.1mmの空間があるとしても、図面上はヒンジピンと凹部が接触しているように見えることは明らかです。したがって、隙間があるかどうか不明な図面に基づいて、これに隙間が無いものと一方的に決めつけて当接していると主張することは、極めて不合理であると考えます。
また、本件特許明細書の段落【0024】(出願当初から補正されていない)には、『圧縮コイルスプリング21の付勢力によって、支持部材5が最大使用開放位置から最大開放位置までの間に位置されているときに、突起部71が受け部72に当接して押圧されるようになっている』という記載もあるのであり、図5、6においても突起部71と受け部72の間に隙間は記載されていません。そして、突起部71が受け部72に当接すると、それ以上に第2スライダーが下降できないことは明らかです。これによれば、上記図5、6に示される構成であっても、『突起部71』と『凹部』、及び『受け部72』と『ヒンジピン』相互の位置関係によっては、『凹部』と『ヒンジピン』とが当接しない場合も十分に想定されます。以上のとおり、上記被請求人の主張は失当です。」(請求人要領書(1)8頁16行?9頁19行)

コ 「6 陳述の要領」「(2)答弁書における被請求人の反論に対する請求人の反論」「オ.被請求人回答書における『4.答弁書の補充』の欄(第7頁)の反論に対する反論」
「平成29年10月23日付け審理事項通知の『2(2)被請求人に対して』の『エ(イ)』の欄(第6?7頁)及び『エ(エ)』の欄(第7頁)に示されている審判合議体のご見解のとおりです。」(請求人要領書(1)9頁22?24行)

サ 「6 陳述の要領」「(3)無効理由1(その2)の補強」
「審判請求書では、キヤノン向けヒンジに係る発明を主引例、リコー向けヒンジに係る発明を副引例、として容易想到の論理を構築しましたが、甲4及び甲22から明らかなように、キヤノン向けヒンジに係る発明とリコー向けヒンジに係る発明とはほとんどの構成が一致しているのであり、リコー向けヒンジに係る発明を主引例とした場合であっても、無効理由は同様に成り立ちます。
一方、審判請求時には入手することが出来なかったが、新たに入手することが可能となった甲22によれば、リコー向けヒンジに係る発明が本件特許の原出願前に公然実施されたことがより明確になったといえます。
そこで、請求人は、リコー向けヒンジに係る発明を主引例とした無効理由を無効理由1(その2)の補強として示します。
甲22によれば、その実験対象のリコー製複合機に搭載されていたリコー向けヒンジが、本件特許の原出願前に公然実施されていたことが明白です(上記(1)ウ(イ))。
また、リコー向けヒンジの構成は、甲22の第17?21頁のa?jに記載されるとおりですが、それに加えて次のこともいえます。すなわち、甲22の第19頁の記載によれば、原稿圧着板の全開状態において、第2スライダーの凹部と第1ヒンジピンとは当接しているか、隙間があったとしてもその隙間は0.09mm以下です。したがって、仮に、上記(2)エ記載の主張に反して、本件特許発明1でいう『当接』が本件特許の当初明細書の図5、6を根拠とすることで新規事項には該当しないといえるのであれば、リコー向けヒンジも当然に『当接』の要件を備えていることになります。もし、甲22事実実験の対象としたリコー向けヒンジを、当所明細書の図5、6と同じ大きさの図面に表現するとすれば、図面上に0.09mm以下の隙間が現れるとは考えられません。以上を踏まえると、本件特許発明1とリコー向けヒンジに係る発明との間の相違点は、次のとおりです。(相違点1)
『支持部材の両側板の自由端側に作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた』湾曲部分について、本件特許発明1においては『湾曲溝』であるが、リコー向けヒンジに係る発明においては『湾曲穴』である点(構成要件F、f’)。

上記相違点1について検討するに、リコー向けヒンジに係る発明において上記相違点1に係る本件特許発明1の構成を採用することは、以下に示すように当業者が容易になし得たことです。
本件特許発明1の構成要件Fにおける湾曲溝が、リフト部材の反転時に回転する作動ピンの動きを妨げない構成であれば足りることは明らかです。一方、リコーヒンジの構成要件f’の『湾曲穴』は、リフト部材の反転時に回転する作動ピンの動きを妨げない構成です。したがって、本件特許発明の構成要件Fにおける『湾曲溝』と、実質的に同一であり、相違点1は、実質的な相違点ではありません。
相違点1を厳密に解し、リコー向けヒンジの構成要件f’の『湾曲穴』は、本件特許発明の構成要件Fにおける『湾曲溝』とは異なると解したとしても、キヤノン向けヒンジにおいては、当該『前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた』箇所が『湾曲溝』であり、キヤノン向けヒンジは、本件特許発明の構成要件Fを充足しています。そして、キヤノン向けヒンジも複写機機能を有する複合機の原稿圧着板開閉装置に用いられるヒンジに関する技術であり、本件特許発明及びリコー向けヒンジと技術分野を同一にし、それ以外の構成要件要素もほぼ同一ですので、キヤノン向けヒンジの『湾曲溝』の構成をリコー向けヒンジの構成に適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得るものです。『前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し』という構成については(構成要件K)、甲22の写真4-10、及び、5-8等には、かかる構成が示されております。したがいまして、リコー向けヒンジは構成要件Kを充足します。写真4-10(・・・写真省略・・・)
念のため、この点を相違点である(『相違点2』とする。)と考えた場合についても付言いたしますと、原稿圧着板を全開状態にした際に、支持部材のそれ以上の回動を阻止する必要があることは当業者に自明のことであり、そのための構成をどこにどのように設けるかは当業者が適宜決定し得る設計事項に過ぎません。そして、そのための構成をヒンジを構成する支持部材の後部と取付部材の部分に設けることが出来ない理由もありません。また、リコー向けヒンジと同様の構成を有するキヤノン向けヒンジにおいても、支持部材のそれ以上の回動を阻止するための構成は、ヒンジを構成する支持部材の後部と取付部材の部分に設けられています。
以上からすれば、リコー向けヒンジにおいて、相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することも、当業者が容易に推考し得たことです。以上のとおりですので、リコー向けヒンジに係る発明を主引例とした場合であっても、無効理由1(その2)は成り立ちます。」(請求人要領書(1)9頁26行?13頁13行)

(4)請求人確認事項書における請求人の主張の概要
ア 「6 回答内容」「(1)1(1)について」
「『同型』のヒンジとは、『本件キヤノン向けヒンジ、本件リコー向けヒンジと種類は異なるが似た形状のヒンジ』です(選択肢としては(g))。これら『同型』のヒンジを掲載した図1?22は、事実実験の場において、公証人に対し、本件キヤノン向けヒンジ及び本件リコー向けヒンジの構成を分かりやすく説明するため便宜上用いられたものです。すなわち、図1?22は、たとえばイラストでも代用可能だった性質のものであり、これら『同型』のヒンジの出所は本件の争点と無関係であると思料します。」(請求人確認事項書2頁15?21行)

イ 「6 回答内容」「(2)1(2)について」
「(1)でご説明したとおり、図1?22は、たとえばイラストでも代用可能だった性質のものであり、これら『同型』のヒンジの『実施』の態様は本件の争点とは無関係であると思料します。」(請求人確認事項書2頁23行?3頁2行)

ウ 「6 回答内容」「(3)1(3)について」
「(1)でご説明したとおり、図1?22は、たとえばイラストでも代用可能だった性質のものであり、請求人は、図1?22をもって本件キヤノン向けヒンジ及び本件リコー向けヒンジの構成を立証しようとするものではございません。これら『同型』のヒンジの出所・由来は本件の争点と無関係であると思料します。」(請求人確認事項書3頁4?7行)

エ 「6 回答内容」「(4)2について」「ア 本件キヤノン向けヒンジについて」
「甲4の実験対象である本件キヤノン向けヒンジ(甲4では『本件第2ヒンジ』と定義されているヒンジ)を搭載していた複合機は、iR2200です(甲4第8頁4行目から6行目)。そして、回答書第4頁『2『2甲2について』』、及び、『『3『3甲3について(1)』について』においてもご説明しましたとおり、iR2200という機種全体の販売が本件特許の出願前に終了していたことは明らかです。当然、甲4実験対象のキヤノン社製iR2200複合機の個体も、本件特許の出願前に販売されていたといえます。したがいまして、甲4実験対象のキヤノン社製iR2200複合機の個体に搭載された本件キヤノン向けヒンジも、本件特許の出願前に公然と実施されていたことは明らかです。」(請求人確認事項書3頁14?22行)

オ 「6 回答内容」「(4)2について」「イ 本件リコー向けヒンジについて」
「甲5によれば、imagio Neo 751は、2003年2月3日に販売が開始された事実が認められます。甲6によれば、2003年3月31日以前に日本国内はもとより海外においても販売されていた事実が認められます。また、甲7によれば、本件特許が出願される約4か月半前の2004年2月6日には、imagio Neo 751の後継機であるimagio Neo 752が発売されており、遅くともこのときまでにimagio Neo 751の生産が終了していた事実が認められます。既に生産が停止されているにもかかわらず、複合機の完成品が4か月半以上の間、販売されないまま秘密状態のまま管理されているとは考えるのは常識に反します。したがいまして、甲4実験対象のリコー社製imagio Neo 751複合機の個体、そして当該個体に搭載された本件リコー向けヒンジも、本件特許の出願前に販売がされていたといえます。
なお、甲4の事実実験において対象としたADF(複合機の本体は対象としていない)が、imagio Neo 751に搭載されたものであることは審判請求書15頁(イ)において主張したとおりです。」(請求人確認事項書3頁24行?4頁9行)

(5)請求人補正書における請求人の主張の補正
ア 「(1)審判請求書の『7 請求の理由』『(4)本件特許を無効にすべき理由』『イ 引用発明の説明』の『(イ) リコー向けヒンジ』の欄(第14頁第14行?第19頁第14行)の記載を次のとおりに補正する(下線は補正箇所を示す。)。
『(イ)リコー向けヒンジ 、
a.リコー向けヒンジが本件の原出願前に公然販売されていたこと
(a)リコー向けヒンジ搭載品が本件特許の原出願前に公然販売されていたこと
(・・・途中省略・・・)
また、本件リコー向けヒンジは、後述の事実実験(甲4)、(甲22)からも明らかな通り、
(・・・途中省略・・・)
(b)本件リコー向けヒンジに関する事実実験(その1)
(・・・途中省略・・・)
ii甲第4号証の本件リコー向けヒンジの製造番号等
(・・・途中省略・・・)
(d)小括(その1)
以上のとおりであるから、甲第4号証の本件リコー向けヒンジを組み込んだ
(・・・途中省略・・・)
(e)本件リコー向けヒンジに関する事実実験(その2)
(なお、(e)及び後記(f)は全て下線が付与されるため、下線を省略する。)
請求人は、甲第11号証の実験対象となったリコー複合機の構成を確認する事実実験を行った。当該事実実験の内容は、甲第22号証に記載されている。
甲第22号証の『【2】 複合機の保管状態と前回公証対象複合機との同一性』の欄(第6頁第17行?第10頁第7行)の記載によれば、甲第22号証の実験対象のリコー複合機が本件特許の原出願日(2004年6月24日)前の2003年8月29日にX社に納入されたこと、換言すれば、遅くとも2003年8月29日までに当該リコー複合機に係る発明が公然実施されたことが明らかである。
また、同所の記載から、当該リコー複合機が多数販売された『imagio Neo 751』という機種の複合機の中の1台であることも明らかである。さらに、同所(特に『(3)修理履歴文書の確認』の欄(第8頁第6行?第10頁第7行))の記載、及び甲第22号証の『【3】本件リコーヒンジの取り外し』の欄(第10頁第8行?第14頁第10行)の記載によれば、甲第22号証の実験対象のリコー複合機に搭載されていたヒンジが、当該リコー製複合機がX社に納入された2003年8月29日当時に当該リコー製複合機に搭載されていたヒンジであることも明らかである。
(f)小括(その2)
以上によれば、遅くとも2003年8月29日までに、甲第22号証の実験対象のリコー複合機に搭載されていたヒンジに係る発明が公然実施されたことが明らかである。」(請求人補正書2頁4行?6頁3行)

イ 「b.リコー向けヒンジの構成
甲第4号証第28頁第13行ないし第31頁第2行、同第32頁第7行ないし第33頁第13行、甲第22号証第16頁第19行ないし第19頁第3行、同第20頁第9行ないし第21頁第7行記載のとおり、本件リコー向けヒンジは、下記の構成を有する(以下に付す写真番号はいずれも甲第22号証に添付された写真番号である。)。
(なお、以下の構成のうちaないしi、k及びlについては全て下線が付与されるため、下線を省略する。)
『a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、(写真4-4)
b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材(5)と、(写真4-5ないし4-7)
c 前記原稿圧着板を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、(写真4-8ないし4-10)
d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、(写真4-11ないし4-13)
e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、(写真4-14)
f 前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲穴(54)と、(写真5-7)
g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、(写真4-15、4-16)
h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、(写真4-17、4-18)
i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり、(写真4-18)
j 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし、(写真5-8ないし5-11)
k 前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が固定ピンより離れ、前記凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)を収容させるように成した(写真4-19ないし4-21)
l ことを特徴とする原稿圧着板開閉装置。』」(請求人補正書6頁4行?7頁9行)

ウ 「また、甲第22号証の第19頁第4?第19行の記載によれば、原稿圧着板の全開状態において、第2スライダーの凹部と第1ヒンジピンとは当接しているか、隙間があったとしてもその隙間は0.09mm以下である(仮に、本件特許発明1の構成要件Kでいう『当接』が本件特許の当初明細書の図5、6を根拠とすることで新規事項には該当しないといえるのであれば、リコー向けヒンジも当然に『当接』の要件を備えていることになる。なぜならば、甲第22号証の事実実験対象のリコー向けヒンジを、本件特許の当初明細書の図5、6と同じ大きさの図面に表現するとすれば、図面上に0.09mm以下の隙間が現れるとは考えられないからである。)。さらに、甲第99号証の写真4-10、5-8等によれば、リコー向けヒンジは、本件特許発明1の構成要件Kにおける『前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し』に相当する構成も備えているといえる。』」(請求人補正書7頁10?21行。なお、上記の記載については全て下線が付与されるため、下線を省略した。)

エ 「(2)審判請求書の『7請求の理由』の『(4)本件特許を無効にすべき理由』の『ウ本件特許発明と証拠発明との対比』の欄(第20頁第13行?第23頁第11行)の記載を次のとおりに補正する(下線は補正箇所を示す。)。
『(ア)本件特許発明1と証拠発明との対比(その1)
本件特許発明1とキヤノン向けヒンジに係る発明とは、以下の点て一致する。
(・・・途中省略・・・)
そして、以下の点で相違する。
相違点1:第2スライダーの傾斜部と凹部との間に設けられる箇所について、本件特許発明においては『突部』であるが、キヤノン向けヒンジに係る発明においては『逆傾斜部』である点(構成要件J、j’)。
そこで、相違点1について検討するに、
(・・・途中省略・・・)
このように、上記相違点1は実質的な相違点ではないから、本件特許発明とキヤノン向けヒンジに係る発明とは実質的に同一であって、差異はない。
当該相違点1を厳密に解し、キヤノン向けヒンジの構成要件j’の『逆傾斜部』は、本件特許発明の構成要件Jにおける『突部』とは異なると解したとしても、リコー向けヒンジにおいては、当該傾斜部と凹部との間に設けられた部分が『突部』であり、リコー向けヒンジは、本件特許発明の構成要件Jを全て充足している。そして、リコー向けヒンジも複写機機能を有する複合機の原稿圧着板開閉装置に用いられるヒンジに関する技術であり、本件特許発明及びキヤノン向けヒンジと技術分野を同一にし、それ以外の構成要件要素もほぼ同一であるから、リコー向けヒンジの『突部』の構成をキヤノン向けヒンジの構成に適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に想到し得るものである。」(請求人補正書7頁25行?9頁24行)

オ 「(イ)本件特許発明1と証拠発明との対比(その2)
本件特許発明1とリコー向けヒンジに係る発明とは、以下の点で一致する。
『A.事務機器の装置本体へ取り付けられる底板とこの底板の両側より立設させたところの両側板を有する取付部材と、
B.上板とこの上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片を有する両側板を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材と、
C.前記原稿圧着板を取り付ける上板とこの上板の両側より垂設した両側板を有し、この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第2ヒンジピンを介して前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材と、
D.前記取付部材の両側板の間に設けられた固定ピンと、
E.前記リフト部材の両側板の間に設けられた作動ピンと、
F.前記支持部材の両側板の自由端側に前記作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた湾曲部分と、
G.一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダーと、
H.その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダーと、
I.前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された圧縮コイルスブリンクとから成り、
J.前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部とこの傾斜部に続いて設けられた突部と、この突部に続いて設けられた凹部とを有するものとし、
K.前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した
L.ことを特徴とする、原稿圧着板開閉装置。』
そして、以下の点で相違する。
相違点2:支持部材の両側板の自由端側に作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた』湾曲部分について、本件特許発明1においては『湾曲溝』であるが、リコー向けヒンジに係る発明においては『湾曲穴』である点(構成要件F、f’)。
そこで、上記相違点2について検討するに、リコー向けヒンジに係る発明において上記相違点2に係る本件特許発明1の構成を採用することは、以下に示すように当業者が容易になし得たことである。
本件特許発明1の構成要件Fにおける湾曲溝が、リフト部材の反転時に回転する作動ピンの動きを妨げない構成であれば足りることは明らかである。一方、リコーヒンジの構成要件fの『湾曲穴』は、リフト部材の反転時に回転する作動ピンの動きを妨げない構成である。したがって、本件特許発明の構成要件Fにおける『湾曲溝』と、実質的に同一であり、相違点2は、実質的な相違点ではない。相違点2を厳密に解し、リコー向けヒンジの構成要件fの『湾曲穴』は、本件特許発明の構成要件Fにおける『湾曲溝』とは異なると解したとしても、キヤノン向けヒンジにおいては、当該『前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた』箇所が『湾曲溝』であり、キヤノン向けヒンジは、本件特許発明の構成要件Fを充足している。そして、キヤノン向けヒンジも複写機機能を有する複合機の原稿圧着板開閉装置に用いられるヒンジに関する技術であり、本件特許発明及びリコー向けヒンジと技術分野を同一にし、それ以外の構成要件要素もほぼ同一であるから、キヤノン向けヒンジの『湾曲溝』の構成をリコー向けヒンジの構成に適用することは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に推考し得るものである。
なお、念のため付言するに、仮に、リコー向けヒンジが本件特許発明1の構成要件Kの『当接』に相当する構成や、『前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し』に相当する構成を備えていないとしても、本件特許発明がリコー向けヒンジに係る発明とキヤノン向けヒンジに係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であることには変わりがない。なぜならば、それらの構成は、いずれも、キヤノン向けヒンジが備えている構成であり、それらのキヤノン向けヒンジが備える構成を上記リコー向けヒンジの構成において採用することに何ら困難はないからである。」(請求人補正書9頁25行?11頁15行。なお、上記の記載については全て下線が付与されるため、下線を省略した。)

カ 「(ウ)本件特許発明2と証拠発明との対比
本件特許発明2と甲12発明とを対比すると、甲第12号証には、本件特許発明2の特徴である構成要件KないしMのすべてが記載されている。したがって、本件特許発明2は、上述したキヤノン向けヒンジに係る発明と甲12発明とを組み合わせた発明、あるいは、これにさらにリコー向けヒンジに係る発明を組み合わせた発明に相当する。また、本件特許発明2は、上述したリコー向けヒンジに係る発明にキヤノン向けヒンジに係る発明と甲12発明とを組み合わせた発明にも相当する。
甲12発明とこれらの発明を組み合わせることがその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって容易であることは、本件特許発明1について述べたところと同様である。』」(請求人補正書11頁16?25行)

(6)請求人上申書(2)における請求人の主張の概要
「4 上申の内容
(1)請求の理由の要旨を変更するとの指摘について
平成30年3月29日付『審理事項通知書』3エでは、『前者(※本件リコー向けヒンジ(甲第4号証に基づく)を主発明とする無効理由)については、第1回口頭審理期日で被請求人が同意しましたが、後者(※リコー向けヒンジ(甲第22号証に基づく)を主発明とする無効理由)については被請求人に対する確認はなされていません』とされています。そして、『合議体の暫定的見解として、審判請求書には添付されていない甲第22号証に基づくリコー向けヒンジを主発明とする無効理由を付加する審判請求書の補正は、直接証拠を差し代え、ないしは、追加することとなり、請求の理由の要旨を変更するものと考えています』とされています。
この点につき、請求人から前回口頭審理期日にて発言した内容をあらためて下記の通りまとめましたので、上申いたします。

(2)請求の理由の補正が請求の理由の要旨を変更するものではないこと
請求人は、平成29年12月4日付け口頭審理陳述要領書及び平成30年1月12日付け手続補正書よる審判請求理由の補正は、特許法第131条の2第1項でいう『要旨を変更するもの』には該当しないと考えます。理由は次のとおりです。

ア.補正後の無効理由も、『『キヤノン向けヒンジ』として公然実施された発明及び『リコー向けヒンジ』として公然実施された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということを具体的理由とするもの』である点では補正前の無効理由と変わりはなく、平成29年10月26日付けの審理事項通知で整理された無効理由1のその2の範囲を逸脱するものではない。
イ.審判便覧51-16『『請求の理由』の要旨変更』によれば、無効審判請求書に記載した請求の理由の補正を制限する趣旨は、請求の理由の補正に起因ずる審理のやり直しに伴う審理遅延が生じることを防ぐ点にあり、当初の審判請求書に記載された『権利を無効にする根拠となる事実』の存否を判断するのに必要な審理範囲が、請求の理由の補正に起因して実質的に変更され、それにより大幅な審理のやり直しや権利者の実質的反論を必要とするようになるかの観点から、請求理由の要旨変更の有無を判断する、とされているが、上記補正によっても、当初の審判請求書に記載された『権利を無効にする根拠となる事実』の存否を判断するのに必要な審理範囲に変化がなく、大幅な審理のやり直しや権利者の実質的反論を必要とするような事態が生じないことは明らかである。

なお、上記審判便覧51-16『『請求の理由』の要旨変更』には、『主要事実の差し替えや追加』が『請求理由の要旨変更となる例』として挙げられていますが、それは一般的なケースを想定した例示に過ぎず、本件のような事情(間接事実乃至補助事実のための証拠調べにより主要事実のための証拠調べも終了するという事情)があるケースにおいては、必ずしもその例に従う必要はなく、上記『審理遅延が生じることを防ぐ』という特許法第131条の2第1項の趣旨に則って判断されるべきです。

(3)被請求人の同意があること
仮に上記補正が請求の理由の要旨を変更するものであったとしても、リコー向けヒンジ(甲第22号証に基づく)を主発明とする無効理由については、その変更について被請求人の同意があり、特許法第131条の2第2項の要件を満たします。したがいまして、請求の理由の変更は許可され得るものです。以下、説明いたします。

請求人は、平成29年12月4日提出の口頭審理陳述要領書6(3)無効理由1(その2)の補強として、『甲4及び甲22から明らかなように、』・・・『リコー向けヒンジに係る発明を主引例とした場合であっても、無効理由は同様に成り立ちます』との主張を行い、これに基づき審判請求書を補正いたしました。これに対し、被請求人は、第1回口頭審理期日について、当該補正に同意しました。このことは、第1回口頭審理調書『陳述の要領』『被請求人『4』』に記載されるとおりです。
したがって、甲4、甲22の両者について、これらを主発明とする無効理由について、すでに被請求人の同意があることは明らかです。
そして、『審理を不当に遅延させるおそれがないこと』、『補正に係る請求の理由を審判請求時の請求書に記載しなかったことにつき合理的な理由があること』は、すでに平成30年1月12日付『上申書』にて記載のとおりです。
以上のことから、特許法第131条の2第2項に該当し、請求の理由の変更は許可され得るものです。

(4)職権審理の求めリコー向けヒンジの構造およびリコー向けヒンジが公然実施されていたことは、すでに主張立証されており、甲22に係る発明を主引例とした場合を本無効審判事件の審理対象としても、審理が遅延するおそれはありません。逆に、甲22に係る発明を主引例とした場合が本無効審判事件の審理対象とされなかった場合には、すでに提出済みの主張、証拠をあらためて別の無効審判請求として提出することとなり、訴訟不経済であり、被請求人にとっても応訴負担となります。
このような事情の下では、万一上記補正が要旨を変更するものであり、かつ、特許法第131条の2第2項に該当しないとのご判断に至った場合には、上記補正内容に関わる無効理由について職権での審理が為されてしかるべきと考えます。」(請求人上申書(2)1頁下から6行?3頁下から2行)

2 被請求人の主張
(1)答弁書における被請求人の主張の概要(なお、答弁書中の「キャノン」は「キヤノン」とした。)
ア 「7.答弁の理由」「(1)本件審判請求書に記載の請求人の主張の認否」
「ア.本件審判請求書の請求の理由中、第4ページから第5ページにかけての右欄のj´、k及び(効果)の項の記載は不正確かつ間違っており認められない。
イ.請求の理由中、第5ページの左欄の(効果)の記載は、不充分であり認められない。
ウ.請求の理由中(以下同じ)、第7ページの「理由の要点」の項の記載は認められない。
エ.第7ページから第8ページにかけての、特許法第17条の2第3項に関する記載は、認められない。
オ.第8ページの(2)手続きの経緯の記載は概ね認める。
カ.第8ページから第9ページにかけての(3)特許無効審判請求の根拠の記載は、認められない。
キ.第9ページから第24ページにかけての(4)本件特許を無効にすべき理由の項の記載については以下の通りである。
a.第9ページから第11ページにかけてのアの項の本件特許発明の項の記載は作用効果の部分を除いて認める。
b.第11ページから第19ページにかけてのイの引用発明の説明の項の(ア)のa.の項は不知、b.の項は概ね認め、第14ページから第19ページにかけての(イ)のa.のリコー向けヒンジの項は、不知乃至争う。また、同第19ページのb.の項については概ね認める。
c.第19ページから第20ページにかけての(ウ)の甲第12号証に関する記載は、概ね認める。
d.第20ページから第23ページにかけてのウの本件特許発明と証拠発明の対比の項については、第21ページに記載のあるキヤノン向けヒンジの相違点に関する記載の部分は認め、他は認められない。
e.第23ページのエの作用・効果の項も記載は認められない。
f.同じく第23ページから第25ページにかけてのオの補正違反の項は、手続きの経緯については認め、その他の記載は認められない。
g.第25ページから第26ページにかけての(5)むすびの項の記載は認められない。」(答弁書2頁20行?3頁24行)

イ 「7.答弁の理由」「(2)本件審判請求書に添付された書証の認否」
「ア.甲第1号証から甲第3号証については、不知。
イ.甲第4号証については、添付された写真と図面を除いて、そのようなことが行われたことは認める。
ウ.甲第4号証の写真については、入手経路を除いて、写真1から写真11については認め、
エ.甲第4号証の図面についても写真と同じものは認める。
オ.甲第5号証から甲第10号証までは、不知。
カ.甲第11号証については、そのようなことが行われたことは認める。但し、書面1と称する書証以降は不知。
キ.甲第12号証と甲第15号証は、認める。」(答弁書3頁26行?4頁7行)

ウ 「7.答弁の理由」「(3)被請求人の主張と反論」
「ア.請求人は甲第4号証に係る写真2-1から2-5に示されたキヤノン向けヒンジが搭載されているという複写機は、中古市場から入手したとしているが、その際の納品書なり領収書を提出して入手経路を明らかにすべきである。本来であれば、公証人の公証は、この点を確認しなくてはならないところ、そのような形跡はない。ただ請求人の側の会社にあったというだけでは、それが充分な証拠能力を持つとは言い難いというべきである。
イ.次に、請求人は同じく甲第4号証に係る写真7に示されたリコー向けヒンジが取り付けられた原稿自動送り装置の入手経路についても、明らかにすべきである。公証人の公証は、この点についても確認の上、公証しなくてはならないところ、このような形跡はない。ただ請求人の側に会社にあったということと、その製造年月日を直接証明するものが、甲第9号証のメールでのしかも社員の回答だけというのは如何なものか。これだけでは、単なる推定にとどまり、それが充分な証拠能力を持つとは言い難い。
ウ.事件の内容から言えば、本来明らかにされるべきは複写機やそこに用いられている原稿自動送り装置の製造年月日ではなく、当該原稿送り装置に取り付けられているヒンジの製造年月日であるべきである。この原稿自動送り装置の本体部分とヒンジは別々のメーカーにより、しかも中国において異なった場所で製造されており、両者は簡単に着脱できることから、原稿自動送り装置の製造年月日が、必ずしもヒンジの製造年月日を表すものではない。さらなる証明が必要である。・・・
オ.以下、請求人は、キヤノン製の複写機の原稿自動送り装置に取り付けられたキヤノン向けヒンジ(第2ヒンジ)と、リコー製複写機の原稿自動送り装置に取り付けられ、原特許出願の出願日より早いということを前提として、主張、反論を行うが、本件はまず、上記したようにキヤノン製複写機の入手経路とリコー製とされる原稿自動送り装置の入手経路及びキヤノン向けヒンジとリコー向けヒンジのが明らかにされなくてはならない。請求人はこの点を明らかにされたい。
カ.請求人は、キヤノン製複写機の原稿自動送り装置に取り付けられたキヤノン向けヒンジ(第1ヒンジ)について、本件審判請求書の第20ページ以降の、ウの項の本件特許発明と証拠発明との対比の項で、『第2スライダーに設けた逆傾斜部は本件特許発明の突部に該当するというべきである。』とその第22ページの中段あたりにおいて主張しているが、この主張は間違いである。何故なら、そこには傾斜部に続く逆方向に向けた傾斜部が記載されているだけで、本件特許発明の請求項1でいう『傾斜部34』に続く『凸部33』とこの『凸部33』に続いて設けられた『凹部32a』は記載されていない。
また、第2スライダーの凹部が第1ヒンジピンに当接していることは、何ら証明されていない。
本件特許発明の請求項1でいう凸部33は、原稿圧着板の閉成操作時にその表面に当接する固定ピン13との関係で、スムーズな閉成操作を促すことができるという作用効果を奏するものである。また、第2スライダー32の凹部32aが第1ヒンジピン11と当接するように構成することは、原稿圧着板を全開状態にした際に第2スライダー32の下降を阻止し、この全開状態から原稿圧着板を閉じる操作を行う際に、がたつきのないスムーズな閉成操作を行うことができることを意味する。
したがって、本件特許発明1の第2スライダーは、キヤノンの複写機に搭載されたヒンジの第2スライダーとは、その構成および作用効果が明らかに異なっており、キヤノンの複写機に搭載されたヒンジと同一か、或はこのキヤノンの複写機に搭載されたヒンジに基づいて当業者が容易に創作することのできたものではない。
キ.次に、リコー製の複写機に搭載されていたという原稿圧着板に取り付けられているヒンジ1は、甲第4号証に係るヒンジ1の事実実験公正証書の第33ページ上から6行目から13行目の記載に係る公証人の説明文にもある通り、第2スライダーの凹部がヒンジピンに当接しているとの証明はなされていない。したがって、リコー向けの第1ヒンジについては、本件特許発明1を無効にする証拠足り得ない、というべきである。このことは、キャノン向けヒンジ(第2ヒンジ)と組み合わせても、同じである。
ク.以上のことから、本件特許発明1が、キヤノン製の複写機に搭載されていたヒンジと同一か或はこのキヤノン製の複写機に搭載されていた第2ヒンジとリコー製の複写機に搭載されていた第1ヒンジから、当業者が容易に創作することができたということはできないものである。また、本願特許発明1が、特許公報などの有力な公知文献がないことは、逆に本件特許発明1の新規性と創作性を際立たせるものということができる。
ケ.次に、本件特許発明2についてであるが、この本件特許発明2は本件特許発明1の従属項であるので、とくに公知公用技術であっても問題はない。
コ.つぎに、請求人は、本件特許発明1が、特許法第17条の2第3項の規定に反してなされた補正であるから、その特許は同法第123条第1項第1号の規定に該当し、無効にされるべきであると、主張している。本件特許発明1と2を開示した特許公報の図5と図6、及び本件特許発明の原出願である特開2006-10979号に示した特許公開公報の図5と図6には、どちらも凹部がヒンジシャフトに当接している状態が図示されている。本件特許発明は、この各図面に記載されている内容をクレームしているのであり、何ら補正の範囲を超えていないことは明らかである。請求人の補正違反という主張も成り立たない。なお、上記各公報の図5と図6を拡大して乙第1号証と乙第2号証として添付する。」(答弁書4頁9行?7頁10行)

(2)被請求人回答書(1)における被請求人の主張の概要
ア 「1.第2の1に対して、」
「(1)『ア、本件審判請求書の請求の理由中、第4ページから5ページにかけての右欄のj’とkの部分は間違っており認められないとした理由は、(1)(丸付き数字の1)キヤノン向けヒンジは、逆傾斜部のみが設けられており、この逆傾斜部に続いて設けられた凹部を有してはいないことと、(2)(丸付き数字の2)kの『前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材の後部が前記取付部材に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、』の構成要件は、本件特許発明のKの構成要件には存在していないこと、及び(3)(丸付き数字の3)キヤノンヒンジは、原稿圧着板を全開状態にした際には、第2スライダーの逆傾斜部は第1ヒンジピンに当接しているが、凹部はもともと存在していないので、第1ヒンジピンに当接しようがないこと、等によります。

(2)『イ.請求の理由中、第5ページ左欄の(効果)の記載は、不充分かつ不正確であり認められない。』とした理由は、第2スライダーの構成を構成要件JとKのように構成したことによる作用効果が何ら記載されていないからであります。即ち、本件特許発明は、第2スライダーを構成要件JとKのように構成することによって、この本件特許発明の凸部は、第2スライダーに対しその摺動方向と直交する方向に設けられた平坦なものであり、出願当初の図面の図1?図2に示したように、原稿圧着板の閉成時において、固定ピンと圧接しており、この状態において、当該原稿圧着板は開閉方向のどちらにも開閉或は回転付勢されておらず、原稿圧着板は自重で閉成状態を保っていることになります。これに対し、キヤノン向けヒンジは、原稿圧着板を閉じた状態において、第2スライダーの逆傾斜部が固定ピンヘ圧接していることになり、閉成状態にした原稿圧着板は、閉成方向へ回転付勢されていることになります。そういたしますと、複写機の使用時において、閉成状態の原稿圧着板を開く際に、キヤノン向けヒンジのものは、固定ピンが逆傾斜部を上る際の抵抗に遭遇するのに対し、227号特許のものは、この抵抗に遭遇せず、スムーズに開くことができるという操作フィーリング上の相違が発生いたします。この点についての考察が不十分かつ不正確ということであります。

(3)『ウ.第8ページの『理由の要点』の項は認められない』とした理由の一つは、同理由の要点で、キヤノン向けヒンジが、突部を逆傾斜部とした点と、凹部が存在していないのにこれがあると主張し、この部分を固定ピンと当接させた点は実質的な相違ではないとしている点であります。これに対して、227号特許の凸部は、上述したように、第2スライダーに対しその摺動方向と直交する方向に設けられた平坦なものであり、出願当初の図面の図1?図2に示したように、原稿圧着板の閉成時において、固定ピンと圧接しており、この状態において、原稿圧着板は開閉方向のどちらにも開閉或は回転付勢されておらず、当該原稿圧着板は自重で閉成状態を保っていることになります。これに対し、キヤノン向けヒンジは、第2スライダーの逆傾斜部が固定ピンヘ圧接していることにより、閉成状態にした原稿圧着板は、閉成方向へ回転付勢されていることになります。そういたしますと、複写機の使用時において、閉成状態の原稿圧着板を開く際に、キヤノン向けヒンジのものは、固定ピンが逆傾斜部を上る際の抵抗に遭遇するのに対し、227号特許のものは、この抵抗に遭遇せず、スムーズに開くことができるという上記したような操作フィーリング上の相違が発生いたします。この点についての考察を欠いていることから、これを認められないと致しました。また、原稿圧着板を全開状態にした際に、固定ピンが第2スライダー当接するように構成したものと、単に凹部へ収容させる様に構成したものとでは、ヒンジの構成が異なります。単に収容させるとしたものは、原稿圧着板の全開状態において、第2スライダーの下降を素子摺する他の構成や部材を必要とし、当接するとしたものは、スライダーの下降を止める他の構成や部材を必要としないという、構成と作用効果上の違いをもたらします。この点についても審判請求書の理由の要点に記載はなく、不充分であります。以上が、被請求人が審判請求書の『理由の要点』の項の記載は認められないとした理由であります。そして、これらのことは、原稿圧着板開閉装置において通常の知識を持つものであれば、当然に理解され得る技術事項であります。

(4)『オ.第9頁ページの(2)手続きの経緯は概ね認める。』は、『(2)手続きの経緯は認める。』に訂正いたします。

(5)答弁書の(4)のb、の項については、キヤノン向けヒンジは、答弁書の指摘された部分について、『概ね認める。』としたのを、j’の構成要件でいう第2スライダーには凹部は形成されていないので『認めない』に含めます。また、リコー向けヒンジのものは、請求人が突部としているものは、第2傾斜部とみられることから、070号特許の平坦な突部ではないので、認めないに含めます。」(被請求人回答書(1)2頁13行?4頁最下行)

イ 「2.第2の2に対して」
「(1)この項の(1)について、被請求人の主張は、甲4、19頁最下行?20頁4行の『・・・見出せなかった。』、21頁14?16行の『・・・見出せなかった。』、31頁12?14行の『・・・見出せなかった。』、及び、第33ページ11?13行の『・・・見出せなかった。』の記載を含めて甲第4号証を認めるという意味ではありません。あくまでそういうことが行われた事実を認めるということであり、その内容についてまで認めるという意味ではありません。もともと、特許法並びに特許を取得した発明の明細書、図面の内容、解釈並びに技術レベルなどについて疎い、というよりは初めての経験であると思われる公証人の公証は、その内容を理解しているということに基づくものではないと思われますことから、被請求人がその内容まで認めるという意味ではありません。従いまして、被請求人の『7.答弁の理由』との間に整合性がないということはないものと思われます。

(2)この項の(2)については、上記(1)と同じ趣旨の答弁であります。

(3)この項の(3)については、『写真1?写真11については認め、』とあるのを、『写真1?写真6については認め、写真7?写真11については認めない。』に訂正いたします。その意味は、それが写真2-1の複写機についていたヒンジに係る写真であったことは認めるとうことであり、『写真7?写真11については認めない』ということは、そもそもこのADFそのものの入手経路が不明確であるから認められないという意味であります。
即ち、この写真7?写真11に掲載されたADFは、その時点で使用中であったX事務所にあった複写機より外してきたということでありますが、このADFを分解し、ヒンジも分解してしまったことから、元のX事務所の複写機には戻せないものであります。そういたしますと、X事務所側に存在していたという複写機は、どこに行ったのでしょうか。使えなくなる複写機であれば、X事務所においては邪魔になるだけですので、わざわざADFだけ取り外して請求人の事務所へ運んでくる必要はなく、複写機本体と共に送られてくるべきものであります。でありますことから、入手経路に腑に落ちない点がありますということで、書証として認められない、と答弁したものであります。

(4)この項の(4)については、公証人は、公正証書の第15頁上から7行目?第17頁下から4行目にかけて、図1?11と写真4?11を対比して公証していますが、図1?図11と対比させる写真4?11には、図10の第2スライダーの写真6-3のものを除いて、一致しているものはないことによります。

(5)この項の(5)については、甲第4号証と同じ趣旨で、甲第11号証に記載されたことが行われたことは認め、その内容については争う、という意味であります。」(被請求人回答書(1)5頁1行?6頁14行)

ウ 「3.第2の3に対して」
「(1)この項の(1)については、今さらキヤノン製の複写機の入手経路を明らかにする納品書なり領収書が提出されたとしても、この点を今さら公証人が公証するわけには行かず、後から提出するというのでは、そのようなものは後から作成、入手が可能であることから、それだけでは不十分であります。その他の審尋に記載されている甲第4号証の証明或は疎明事項を証明或は疎明しても、この一点で証拠能力のない資料ということになるものと思料いたします。

(2)この項の(二)については、この回答書の2.の(3)で述べていることが当てはまります。

(3)この項の(3)について、さらなる証明が必要とは、ヒンジの製造年月日を明らかにすることが必要であります。」(被請求人回答書(1)6頁16行?7頁3行)

エ 「4.答弁書の補充」
「尚、被請求人は、この機会に前回提出に係る答弁書の内容を以下のように補充いたします。
(1)申請人が公然実施品として、書証を提出したキヤノン向けヒンジとリコー向けヒンジについて、仮にこれらのものが227号特許の出願前に市場において販売され複写機に取り付けられていたとしても、227号特許の構成要件のJやKを確認することは容易ではありません。と言いますのは、ここの部分は甲第4号証を見てみましてもわかりますように、ヒンジを専用の工具を用いて壊して分解してみないと確認できないことと、分解したヒンジはもう使い物になりません。また、ヒンジ単体だけで流通しているものでもありません。少なくともADFと一体で購入することを要します。通常そのようなことをわざわざする人が存在するとは思えません。よって、本件事案の場合、公然実施されたことにはならないと思料いたします。

(2)さらに、申請人が、凸部だとするキヤノン向けヒンジの逆傾斜部と、リコー向けヒンジの緩傾斜部は、227号特許でいうフラットな凸部とは異なります。よって、逆傾斜部と緩傾斜部を組み合わせても、227号特許でいう平坦な凸部は想起されてくるものではなく、さらに、上記1.の(2)で説明したように、その作用効果も異なります。よって、キヤノン向けヒンジとリコー向けヒンジを組み合わせたからと言って、227号特許発明か想起されてくるものではありません。」(被請求人回答書(1)7頁5行?最下行)

(3)被請求人要領書(1)における被請求人の主張の概要
ア 「6.陳述の要領」「(1)通知書第3ページの2のエの項の「写真」と「図」についての項、」
「(a)図2と写真4-2,3及び図11と写真4-11?13は、取付部材の後板に設けられた長溝の有無の相違があります。つまり、図2と図11には長溝があるのに対し、写真4-2,3と写真4-11?13には長溝がありません。
(b)図3と写真4-4,5及び図7と写真4-9は、シフト部材の背板に記載された番号の有無の違いがあります。つまり、図2と図11にはリフト部材の背板の上部に『B32075』という番号の記載がないのに対し、写真4-4,5と4-9にはこの番号があります。」(被請求人要領書(1)2頁16?23行)

イ 「6.陳述の要領」「(2)第4ページのオ『凹部』について、」
「この『凹部』は、写真6-3には一見してあるように見えますが、図10ではこの凹部は見られません。これは写真6-3にあっては、第2スライダーをやや下方から写しているせいだと思われます。」(被請求人要領書(1)2頁25行?3頁1行)

ウ 「6.陳述の要領」「(3)通知書の第4ページの(2)の被請求人に対しての項のア証拠の認否の項について」
「(a)(ア)で被請求人が甲1-3及び甲5-10について『不知』としている理由は、通知書の(a)の趣旨であります。
(b)同ページの(イ)のaの甲4及び甲11についての被請求人の認否に関して、この場合本文とはどの部分を指すのか明確ではありませんが、少なくとも明細書や特許請求の範囲についての記述は、いかに公証人と云えども、これらのことにつき専門知識を有するとは思えない北原一夫氏が実際に作成したものではなく、請求人が原稿を作成し、公証人北原一夫氏はその大半の意味が解らないままタイプして職印を押したというのが事実ではないかと思われます。よって、実質的に見て真性に作成されたものとは認められない、ということになります。
次に、同ページの(イ)のbの項でありますが、通知書の(b)の趣旨であります。即ち、上述したように、写真4-1?13と図1?11との間に不一致のあることから、証拠の真正について争い、この証拠に基づく請求人の主張についても争います。」(被請求人要領書(1)3頁4?17行)

エ 「6.陳述の要領」「(4)」
「通知書の第5ページの(ウ)の項の甲16?22号証につきましては、甲16?21については不知、甲22については、そこに添付された写真5-4と5-8に示されているように、受け部が取付部材の両側板の外側へ折り曲げられています。これに対し本件特許権のものは、その特許公報の図8に示されていますように、受け部72、72が取付部材4の両側板42、42の内側へ折り曲げられています。したがいまして、この甲22をもってする請求人の主張については争います。」(被請求人要領書(1)3頁18?24行)

オ 「6.陳述の要領」「(6)」
「通知書の第6ページのエの項につきましては、以下の通りであります。
即ち、請求人は、甲4で事実実験をしたキヤノン製のiR2200型機とリコ製のimagio NEO 751型機の各個体に搭載されていたヒンジが本件特許の原出願の出願日以前に公然と実施されていたことを証明しようとしています。しかしながら、請求人は各個体の全部について本件ヒンジが搭載されていたとする立証は致しておりません。そうであるとすると、通知書の第3ページにも記載されておりますように、請求人は前記各個体が本件特許の原出願の前に販売されたものであることの立証をしなくてはならないものと考えます。しかしながら、請求人は各個体の持ち主は誰であったのか、何時販売されたものなのか、を発注書なり納品書や請求書、領収書などを提出せず、未だにその立証をしておりません。甲11と甲22でいう『X社』とはどこにあって、何を業務としている何という会社なのか、前記各書証に添付されている書面2のメンテナンスを請け負っている会社は、どこにある何という会社であるのか、何ら明らかではありません。さらに書面1の「お礼とご案内」は発行日付がありません。その上、書面2はその第2ページを見較べると解りますが、甲11と甲22では一致しておりません。」(被請求人要領書(1)4頁7?23行)

カ 「6.陳述の要領」「(7)」
「通知書の第7ページの(ウ)の項につきましては、
(a)本書の上記2.で述べましたように、この『凹部』は、写真6-3には一見してあるように見えますが、図10ではこの凹部は見られません。これは写真6-3にあっては、第2スライダーをやや下方から写しているせいだと思われます。
(b)同ページの(エ)の項につきましては、突起が平坦であることは本件特許発明の請求項と明細書には記載がありませんが、本件特許公報のとくに図9には、突部33が平坦であることが記載されております。また、図1?図7にも断面図ではありますが、突部33が平坦であることが記載されております。さらに、突部33が平坦なもの以外の記載やそれを推定する記載はありません。」(被請求人要領書(1)4頁24行?5頁7行)

キ 「6.陳述の要領」「(8)被請求人の主張」
「いずれにしても、被請求人は、口頭審理手続きにおいて、甲4と甲11及び甲22において写真で提出したヒンジの現物の提出を請求人に対し求めます。」(被請求人要領書(1)5頁12?14行)

(4)被請求人回答書(2)における被請求人の主張の概要
「(3)請求人はまた、口頭審理における確認事項とする書面において、甲第4号証に添付した図1?22について、公証人に対し、甲第22号証の第16ページ【3】に記載したような説明を行っていません。公証人は図1?22に記載されたものと写真のものを同一のものとして認識し、公証を行ったことになります。
そうすると公証人による公証の過程に無視できない重要な錯誤があることになり、甲第4号証はその証拠能力に問題があることになります。よって、甲第4号証は、証拠としては認められないというべきであります。イラストでも代用可能であったというのであれば、そのようにすべきであったのであり、そのようにしなかったことは、請求人の責めに帰すべき、重大なる過失であると考えます。

(4)次に、甲第22号証の図1?22に示されたヒンジは、そこに証拠図面として示されている以上、当然に検証物として提出されなくてはならないというべきであります。請求人は被請求人に対し、この図1?22に記載されているヒンジについて、それが写真で示されているのであるから、実物があるはずであり、検証物としての提出を求めるものであります。

(5)次に、手続補正書の件でありますが、本件特許発明に係るヒンジにおいては、原稿圧着板を開成状態にした際に、ヒンジピンが第2スライダーに『当接』するか、或は第2スライダーに設けた『凹部』に収容されるかは、その構成と作用効果が明らかに異なることから、大きな相違点であって、これが相違点ではないとする請求人の主張には承服できません。
何故ならば、答弁書でも述べていますように、原稿圧着板の所定開成状態において、第2スライダーがヒンジピンに当接すると、それ以上弾性手段の弾力は支持部材に作用しなくなり、原稿圧着板はフリーな状態となります。これに対し、ヒンジピンが原稿圧着板の所定開成角度で凹部内に収容されるということは、その状態では弾性手段の弾力がまだ支持部材に作用していることになり、原稿圧着板はフリーな状態にはなりません。フリーな状態にしようとすれば、第2スライダーを止める別な部材が必要となります。
したがいまして、被請求人が、手続補正書で述べていることは、正しくなく、あまり意味のない主張であります。」(被請求人回答書(2)3頁1行?4頁1行)

(5)被請求人要領書(2)における被請求人の主張の概要
「6.陳述の要領
(1)上記無効審判請求事件に係る発送日平成30年4月03日付け発送の審理事項通知書において、審判長殿よりお尋ねのあった甲第22号証につきましては、審判請求書に最初に添付した証拠以外の新証拠を新たに提出したものでありますことから、審判請求の理由の要旨を変更するものであり、特許法第131条の2の第1項に規定に該当するものと被請求人も考えます。よって却下すべきものであります。

(2)次に、甲第4号証は、請求人も認めている通り、写真とは異なるものを図面として公証人へ提示し、あたかも同じものであるかのように錯覚させて作成したことは明らかでありますので、証拠の成立に重大な瑕疵があり、その証拠能力に問題があると言わなくてはなりません。このことは平成30年3月2日付の被請求人による回答書の6.回答の内容の(3)においても主張しております。
平成29年12月21日付で送付されてまいりました第1回口頭審理調書の被請求人の項の3において、被請求人は『請求人が提出した甲第4号証及び甲第11号証ないし22号証の成立を認める。』という記載がありますが、上述した理由により撤回いたします。
それではと言って再度甲第4号証のような証拠を作成し、それをさらに検証するとなると、審理遅延を招くことは必至であります。その原因はといえば請求人の不注意乃至重過失によるものであることは明らかであります上に、甲第11号証は具体的なヒンジの構成を欠き、さらに甲第22号証は上記のとおりでありますことから、本件無効審判請求は重要な具体的証拠を欠き、証拠不十分ないし証明不十分として却下すべきものであります。

(3)そもそも本件特許権については、被請求人から請求人へ権利行使はしない旨明言しておりますことから、請求人に争う利害関係があるのか大いに疑問であり、この点も争います。」(被請求人要領書(2)2頁16行?3頁16行)

3 当事者の主張に関して、合議体は審尋及び審理事項通知で概略次の各事項について、確認を行う、あるいは、釈明を求めたところ、それぞれ、次の釈明があった。
(1)審尋(1)
ア 請求人に対して
(ア)甲1について
a 甲1がなぜ「キャノン向けヒンジを用いた複合機が出願日前に販売されていたこと」(キヤノンMEDIOiR2200モデルが公然と販売されていたこと)を立証する証拠(証拠説明書 2頁 「4 証拠の説明」欄)であるといえるのか(審尋(1)「第1」「1」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(2)」「ア」及び「イ」のとおり。

(イ)甲2について
a なぜ、甲2が「キャノン向けヒンジを用いた複合機が出願日前に販売されていたこと」を立証する証拠(証拠説明書 2頁 「4 証拠の説明」欄)であるのか(審尋(1)「第1」「2」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(2)」「ウ」のとおり。

(ウ)甲3について
a 甲3がなぜ「キャノン向けヒンジを用いた複合機の販売が出願日前に終了していたこと」(キヤノンMEDIOiR2200モデルの販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたこと)を立証する証拠(証拠説明書 2頁 「4 証拠の説明」欄)であるのか。
甲3に記載の、「iR2200P」、「iR2200D」及び「iR2200M」の「銘板」が「iR2200」と同じであるのか相違するのか(審尋(1)「第1」「3」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(2)」「エ」及び「オ」のとおり。

(エ)甲4について
a 甲4において、ネジ跡、ほこり等の状態が、「本件複合機」のヒンジ交換あるいはADF交換されていないことまでの証拠であるとする理由は何か。
甲11のヒンジが、甲4の本件ADFのヒンジと同一のものであるとする理由は何か(審尋(1)「第1」「4」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(2)」「カ」ないし「ケ」のとおり。

(オ)甲7について
a 甲7が「リコー向けヒンジを用いた複合機の生産終了時期」を立証する証拠(証拠説明書 2頁 「4 証拠の説明」欄)と、株式会社リコー製imagioNeo751の販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたこととの関係について明らかにせよ。」(審尋(1)「第1」「5」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(2)」「コ」のとおり。

イ 被請求人に対して
(ア)審判請求書に対する認否について
a 答弁書の「7.答弁の理由」の「(1)本件審判請求書に記載の請求人の主張に対する認否」(答弁書 2?3頁)について(審尋(1)「第2」「1」)。

b 被請求人の釈明は上記「2」「(2)」「ア」のとおり。

(イ)審判請求書に添付された書証の認否について
a 答弁書の「7.答弁の理由」の「(2)本件審判請求書に添付された書証の認否」(答弁書 3?4頁)について(審尋(1)「第2」「2」)。

b 被請求人の釈明は上記「2」「(2)」「イ」のとおり。

(ウ)被請求人の主張と反論について
a 答弁書の「7.答弁の理由」の「(3)被請求人の主張と反論」(答弁書 4?7頁)について(審尋(1)「第2」「3」)。

b 被請求人の釈明は上記「2」「(2)」「ウ」のとおり。

(2)審理事項通知(1)
ア 請求人に対して
(ア)「キヤノン向けヒンジ」「リコー向けヒンジ」の趣旨について
a 「無効理由1について
請求人の主張における「キヤノン向けヒンジ」「リコー向けヒンジ」が次のいずれの趣旨であるのか明らかにして下さい。
(ア)キヤノン向けヒンジについて、
(a)キヤノン株式会社が販売した複合機「iR2200」全般か、それとも
(b)甲4の事実実験において実験対象とした「iR2200」の個体か。

(イ)リコー向けヒンジについて
(a)株式会社リコーが販売した「imagioNeo751」全般か、それとも
(b)甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体か。」(審理事項通知(1)「2」「(1)」「ウ」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(3)」「イ」及び「ウ」のとおり。

(イ)甲4の「写真」と「図」について
a 甲4において、図1?22として用いられている「写真」の多くが、写真1?12に対応しない理由について説明して下さい(審理事項通知(1)「2」「(1)」「エ」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(3)」「エ」のとおり。

c 被請求人は上記「2」「(3)」「ア」のとおりさらに主張する。

(ウ)「凹部」について
a 甲4の写真6-3を見ると、いわゆる逆傾斜部に続いて図面視右側に段差があり、当該段差から始まる凹部(へこみ)に見える構造はあります、本件特許発明でいう凹部に相当するものであるか不明です。
当該段差から始まる凹部(へこみ)に見える構造が、本件発明の凹部に対応するにかについて説明して下さい(審理事項通知(1)「2」「(1)」「オ」)。

b 請求人の釈明は上記「1」「(3)」「オ」のとおり。

c 被請求人は上記「2」「(3)」「イ」のとおりさらに主張する。

イ 被請求人に対して
(ア)証拠の認否について(審理事項通知(1)「2」「(2)」「ア」)。

被請求人の釈明は上記「2」「(3)」「ウ」及び「エ」のとおり。

(イ)請求人の、審判請求書の「イ 引用発明の説明」「(ア) キャノン向けヒンジ」「a」「(b)」(上記「第5」「1」「(1)」「オ」)、「イ 引用発明の説明」「(イ) リコー向けヒンジ」「a」「(b)」「i」及び同「ii」(上記「第5」「1」「(1)」「キ」)、及び、請求人回答書「6 回答の内容」「5」(上記「第5」「1」「(2)」「カ」、「キ」)における、「『本件複合機』のヒンジ交換あるいはADF交換がされていない蓋然性が高いことを示すものといえる。」旨の主張に対して反論があれば、釈明して下さい(審理事項通知(1)「2」「(2)」「ウ」)。

被請求人の釈明はなかった。

(ウ)被請求人答弁書「7」「(3)」「ア」ないし「ウ」(上記「第5」「2」「(1)」「ウ」)、並び、被請求人回答書(1)【回答の内容】「3」「(3)」(上記「第5」「2」「(2)」「ウ」)の主張、被請求人回答書(1)【回答の内容】「4」「(1)」(上記「第5」「2」「(2)」「エ」)の主張、被請求人回答書(1)【回答の内容】「1」「(1)」(上記「第5」「2」「(2)」「ア」)の主張、及び、被請求人回答書【回答の内容】「1」「(2)」?「(3)」(上記「第5」「2」「(2)」「ア」)及び「4」「(2)」(上記「第5」「2」「(2)」「エ」)の主張について(審理事項通知(1)「2」「(2)」「エ」)。

被請求人の釈明は上記「2」「(3)」「オ」及び「カ」のとおり。

第6 請求人が提出した証拠について
1 甲1ないし23の成立及び証拠力
(1)争いのない事項
ア 「請求人が提出した甲第4号証及び甲第11ないし22号証の成立を認める。」(第1回口頭審理調書)

イ 「甲第23号証の文書の成立の真正を認める」(第2回口頭審理調書)

(2)当審の判断
ア 甲1(後記「第7」「1」「(2)」「イ」「(ア)」)、甲2(後記「第7」「1」「(2)」「ウ」「(ア)」)、及び、甲3(後記「第7」「1」「(2)」「イ」「(イ)」)は、当審がウエブ上で存在を確認したものであって、証拠として成立が認められ、また、その証拠力も認める。
イ 甲4、11、22は公証人が作成した事実実験公正証書であって、事実実験公正証書に記載された、公証人が確認した事項、及び、添付した写真について証拠力を認める。
ウ 甲18(後記「第7」「1」「(2)」「イ」「(エ)」)は、当審がウエブ上で存在を確認したものであって、証拠力を認める。
エ 甲5、6、8、10、12?17、19?20、23は、その内容からみて、証拠力が認められる。
オ 甲7、9、21は電子メールを印刷したものであるため、その真性を確認できないが、内容が他の証拠と矛盾しないものであるから、他の証拠と合わせて、証拠力があるものと認められる。

2 甲4及び甲22における「図」
(1)甲4の「図」について
ア 甲4には「図」に関して次の記載がある。
(ア)「代理人らは、図1ないし図11に基づき、そこに記載されている写真と付されている番号、名称により、上記分説と対比した場合の本件第2ヒンジの構成(分解することなく外観から確認できる範囲のものに限る。)は下記のとおりであると説明したので、当該図を本証書に添付する。・・・
a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、(図1、写真4-1)
b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材(5)と、(図2、写真4-2、3)
c 前記原稿圧着板を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、(図3、写真4-4、5)
d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、(図4、写真4-6、4-A7)
e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、(図5、写真4-8)
g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、(図7、写真4-9)
h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、(図8、写真4-10)
i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり、(図9、写真4-11)
k 前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダーの凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した(図11、写真4-11ないし13)
l ことを特徴とする原稿圧着板開閉装置」(15頁7行?17頁17行)
(なお、「l」の構成は「原稿圧着板開閉装置」である。)

(イ)「(4)本件第2ヒンジと『227号特許』との対比(その2) 代理人らは、前記(2)で外観からは確認できなかった227号特許の構成要件要素F、Jに対応する構成について、前記(2)と同様に、図6、図10に基づき、そこに記載されている写真と付されている番号、名称により対比して、以下の構成を備えていると説明した。(なお、下線部は、227号特許の構成要件要素と相違する部分である。)
f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝(54)と(図6、写真6-1、2)
j 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし(図10、写真6-3)
上記各説明に基づいで、本職は、本件第2ヒンジの該当部分をそれぞれ確認したが、説明や図面と異なる部分は見出せなかった。」(20頁16行?21頁17行)

(ウ)「代理人らは、図12ないし図22に基づき、添付されている写真と付されている番号・名称により、上記分説と対比した場合の本件第1ヒンジの構成(分解することなく外観から確認できる範囲のものに限る。)は下記のとおりであると説明したので、当該図を本調書に添付する。
a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、(図12、写真9-1)
b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材(5)と、(図13、写真9-2、3)
c 前記原稿圧着板を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、(図4、写真9-4、5)
d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、(図15、写真9-6)
e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、(図16、写真9-7)
g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、(図18、写真9-8、9)
h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、(図19、写真9-10)
i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり、(図20、写真9-11)
k 前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)を収容させるように成した(図22、写真9-12ないし15)
l ことを特徴とする原稿圧着板開閉装置」(28頁13行?31頁2行)
(なお、「l」の構成は「原稿圧着板開閉装置」である。)

(エ)「(4)本件第1ヒンジと『070号特許』との対比(その2)
代理人らは、前記(2)で外観からは確認できなかった070号特許の構成要件要素F、Jに対応する構成について、前記(2)と同様に、図17、図21に基づき、そこに記載されている写真と付されている番号、名称により対比して、以下の構成を備えていると説明した。(なお、下線部は、070号特許の構成要件要素と相違する部分である。)
f 前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲穴(54)と(図17、写真11-1)
j 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし、(図21、写真11-2、3)
また、代理人らは、写真9-14及び15と写真11-2及び3を対比することによって、原稿圧着版を全開状態にした場合に、第2スライダー(32)の凹部(35)が第1ヒンジピン(11)を収容させる構成(構成要件k)を充たすことが確認できる旨説明した。
本職は、上記各説明に基づいて、分解された本件第1ヒンジの該当部分をそれぞれ確認し、写真撮影したが、説明や図面と異なる部分は見出せなかった。」(32頁7行?33頁13行)

イ 甲4の「図」に関する被請求人の主張
(ア)答弁書「7.答弁の理由」「(2)本件審判請求書に添付された書証の認否」
「イ.甲第4号証については、添付された写真と図面を除いて、そのようなことが行われたことは認める。
ウ.甲第4号証の写真については、入手経路を除いて、写真1から写真11については認め、
エ.甲第4号証の図面についても写真と同じものは認める。」(上記「第5」「2」「(1)」「イ」)

(イ)被請求人回答書(1)「2.第2の2に対して」「(4)」
「(4)この項の(4)については、公証人は、公正証書の第15頁上から7行目?第17頁下から4行目にかけて、図1?11と写真4?11を対比して公証していますが、図1?図11と対比させる写真4?11には、図10の第2スライダーの写真6-3のものを除いて、一致しているものはないことによります。」(上記「第5」「2」「(2)」「イ」)

(ウ)被請求人要領書(1)「6.陳述の要領」「(1)通知書第4ページの2のエの項の「写真」と「図」についての項、」
「(a)図2と写真4-2,3及び図11と写真4-11?13は、取付部材の後板に設けられた長溝の有無の相違があります。つまり、図2と図11には長溝があるのに対し、写真4-2,3と写真4-11?13には長溝がありません。
(b)図3と写真4-4,5及び図7と写真4-9は、シフト部材の背板に記載された番号の有無の違いがあります。つまり、図2と図11にはリフト部材の背板の上部に『B32075』という番号の記載がないのに対し、写真4-4,5と4-9にはこの番号があります。」(上記「第5」「2」「(3)」「ア」)

(エ)被請求人要領書(1)「6.陳述の要領」「(3)通知書の第4ページの(2)の被請求人に対しての項のア証拠の認否の項について」
「次に、同ページの(イ)のbの項でありますが、通知書の(b)の趣旨であります。即ち、上述したように、写真4-1?13と図1?11との間に不一致のあることから、証拠の真正について争い、この証拠に基づく請求人の主張についても争います。」(上記「第5」「2」「(3)」「ウ」)

(オ)被請求人回答書(2)「(3)」及び「(4)」
「(3)請求人はまた、口頭審理における確認事項とする書面において、甲第4号証に添付した図1?22について、公証人に対し、甲第22号証の第16ページ【3】に記載したような説明を行っていません。公証人は図1?22に記載されたものと写真のものを同一のものとして認識し、公証を行ったことになります。
そうすると公証人による公証の過程に無視できない重要な錯誤があることになり、甲第4号証はその証拠能力に問題があることになります。よって、甲第4号証は、証拠としては認められないというべきであります。イラストでも代用可能であったというのであれば、そのようにすべきであったのであり、そのようにしなかったことは、請求人の責めに帰すべき、重大なる過失であると考えます。

(4)次に、甲第22号証の図1?22に示されたヒンジは、そこに証拠図面として示されている以上、当然に検証物として提出されなくてはならないというべきであります。請求人は被請求人に対し、この図1?22に記載されているヒンジについて、それが写真で示されているのであるから、実物があるはずであり、検証物としての提出を求めるものであります。」(上記「第5」「2」「(4)」)

(カ)被請求人要領書(2)「6.陳述の要領」「(2)」
「(2)次に、甲第4号証は、請求人も認めている通り、写真とは異なるものを図面として公証人へ提示し、あたかも同じものであるかのように錯覚させて作成したことは明らかでありますので、証拠の成立に重大な瑕疵があり、その証拠能力に問題があると言わなくてはなりません。このことは平成30年3月2日付の被請求人による回答書の6.回答の内容の(3)においても主張しております。
平成29年12月21日付で送付されてまいりました第1回口頭審理調書の被請求人の項の3において、被請求人は『請求人が提出した甲第4号証及び甲第11号証ないし22号証の成立を認める。』という記載がありますが、上述した理由により撤回いたします。
それではと言って再度甲第4号証のような証拠を作成し、それをさらに検証するとなると、審理遅延を招くことは必至であります。その原因はといえば請求人の不注意乃至重過失によるものであることは明らかであります上に、甲第11号証は具体的なヒンジの構成を欠き、さらに甲第22号証は上記のとおりでありますことから、本件無効審判請求は重要な具体的証拠を欠き、証拠不十分ないし証明不十分として却下すべきものであります。」(上記「第5」「2」「(5)」)

ウ 甲4の「図」に関する請求人の釈明
(ア)請求人要領書(1)「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「エ.『2(1)エ 甲4の『写真』と『図』について』について」
「図1?22は、代理人らが事実実験の場において事実実験の対象複合機の各部の番号、名称を公証人に分かりやすく説明するために、甲4の本実実験に先立って用意したものです。図1?11に写っているヒンジは、本件キヤノン向けヒンジと同型のもの(本件特許の出願後に実施されたもの)であって、各部の番号、名称は、本件キヤノン向けヒンジと対応しています。図12?22に写っているヒンジは、本件リコー向けヒンジと同型のもの(本件特許の出願後に実施されたもの)であって、各部の番号、名称は、本件リコー向けヒンジと対応しています。したがいまして、図1?22に示す各部の番号、名称は、事実実験で撮影された写真1?12に掲載されている各ヒンジと対応しています。なお、甲22の第16頁下から1行目から第17項上から6行目にかけて、リコー向けヒンジに関し同様の趣旨が記されております。」(上記「第5」「1」「(3)」「エ」)

(イ)請求人確認事項書「6 回答内容」「(1)1(1)について」
「『同型』のヒンジとは、『本件キヤノン向けヒンジ、本件リコー向けヒンジと種類は異なるが似た形状のヒンジ』です(選択肢としては(g))。これら『同型』のヒンジを掲載した図1?22は、事実実験の場において、公証人に対し、本件キヤノン向けヒンジ及び本件リコー向けヒンジの構成を分かりやすく説明するため便宜上用いられたものです。すなわち、図1?22は、たとえばイラストでも代用可能だった性質のものであり、これら『同型』のヒンジの出所は本件の争点と無関係であると思料します。」(上記「第5」「1」「(4)」「ア」)

(ウ)請求人確認事項書「6 回答内容」「(2)1(2)について」
「(1)でご説明したとおり、図1?22は、たとえばイラストでも代用可能だった性質のものであり、これら『同型』のヒンジの『実施』の態様は本件の争点とは無関係であると思料します。」(上記「第5」「1」「(4)」「イ」)

(エ)請求人確認事項書「6 回答内容」「(3)1(3)について」
「(1)でご説明したとおり、図1?22は、たとえばイラストでも代用可能だった性質のものであり、請求人は、図1?22をもって本件キヤノン向けヒンジ及び本件リコー向けヒンジの構成を立証しようとするものではございません。これら『同型』のヒンジの出所・由来は本件の争点と無関係であると思料します。」(上記「第5」「1」「(4)」「ウ」)

(2)本審決における甲4の「図」の扱いについて
被請求人は甲4の図1?22の「証拠能力」(被請求人記載のとおり)について争っているところ(上記「(1)」「イ」「(ア)」)、請求人は、甲4の「図」は、「図1?11に写っているヒンジは、本件キヤノン向けヒンジと同型のもの(本件特許の出願後に実施されたもの)であ」(上記「(1)」「ウ」「(ア)」)るとして、「イラストでも代用可能だった性質のものであり、これら『同型』のヒンジの出所は本件の争点と無関係である」(上記「(1)」「ウ」「(イ)」ないし「(エ)」)と釈明する。
したがって、本審決では、甲4の「図」に関する記載箇所及び図1?22を除いて判断する。
また、検証では、甲4の「写真」を元に請求人が作成した、検甲1説明用写真及び検甲2説明用写真を用いた。

(3)本審決における甲22の「図」の扱いについて
ア 被請求人の主張
被請求人は、被請求人回答書(2)(3頁10?14行)で、甲22の「図」についても下記のとおり主張する。
「(4)次に、甲第22号証の図1?22に示されたヒンジは、そこに証拠図面として示されている以上、当然に検証物として提出されなくてはならないというべきであります。請求人は被請求人に対し、この図1?22に記載されているヒンジについて、それが写真で示されているのであるから、実物があるはずであり、検証物としての提出を求めるものであります。」(上記「第5」「2」「(4)」)

イ したがって、本審決では、甲4の「図」と同様に、甲22の「図」に関する記載箇所及び図1?22も除いて判断する。
また、検証では、甲4と同様に、甲22の「写真」を元に請求人が作成した、検甲3説明用写真を用いた。

第7 引用発明の認定
1 キヤノン向けヒンジとして公然実施された発明について
(1)請求人の主張する「キヤノン向けヒンジとして公然実施された発明」の趣旨
ア 審理事項通知(1)の「2」「(1)」「ウ」で、請求人に対して次の点について釈明を求めた。
「請求人の主張における『キヤノン向けヒンジ』・・・が次のいずれの趣旨であるのか明らかにして下さい。
(ア)キヤノン向けヒンジについて、
(a)キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般か、それとも
(b)甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体か。」

イ 審理事項通知(1)の上記アの点に対して、請求人は、請求人要領書(1)「6」「(1)」「ウ.」「(ア)」(同3頁22?25行)において、次のとおり釈明した。
「請求人は、『(1)(丸付き数字の1)キヤノン製複合機iR2200全般の販売、(2)(丸付き数字の2)甲4の事実実験対象の個体の販売、の両方が、審判請求書で特定した『キヤノン向けヒンジ』の構成を有する発明の、本件特許の原出願前における公然実施に該当する』と主張するものです。」(上記「第5」「1」「(3)」「イ」)
したがって、以下本審決では、請求人の主張する「キヤノン株式会社複合機iR2200に取り付けられたヒンジとして公然実施された発明」の趣旨は、次の両方であるとして検討する。
(a)キヤノン株式会社が販売した複合機「iR2200」全般を意味する「キヤノン株式会社複合機iR2200」に取り付けられたヒンジとして公然実施された発明
(b)甲4の事実実験において実験対象とした「iR2200」の個体を意味する「キヤノン株式会社複合機iR2200」に取り付けられたヒンジとして公然実施された発明

(2)キヤノン向けヒンジが公然実施されたものであることについて
ア 「キヤノン向けヒンジ」が「公然実施」されたものであること
(ア)請求人は、「キヤノン向けヒンジ」が「公然実施」されたものであることについて、審判請求書「7」「(4)」「イ」「(ア)」「a」「(a)」(同11頁13?19行)で、「iR2200は、オフィス向けに広く販売されていた民生品であり、その販売は不特定多数向けである。また、本件キヤノン向けヒンジは、後述の事実実験(甲4)からも明らかな通り、外観上ないし分解することによってその構造を知ることができるものである。したがって、本件キヤノン向けヒンジは、iR2200が販売された2001年(平成13年)6月11日には、公然と実施されていたことが明らかである。」(上記「第5」「1」「(1)」「オ」)と主張する。

(イ)被請求人は、「キヤノン向けヒンジ」が「公然実施」されたものであることについて、被請求人回答書(1)「4.」「(1)」(同7頁7?16行)で、「(1)申請人が公然実施品として、書証を提出したキヤノン向けヒンジとリコー向けヒンジについて、仮にこれらのものが227号特許の出願前に市場において販売され複写機に取り付けられていたとしても、227号特許の構成要件のJやKを確認することは容易ではありません。と言いますのは、ここの部分は甲第4号証を見てみましてもわかりますように、ヒンジを専用の工具を用いて壊して分解してみないと確認できないことと、分解したヒンジはもう使い物になりません。また、ヒンジ単体だけで流通しているものでもありません。少なくともADFと一体で購入することを要します。通常そのようなことをわざわざする人が存在するとは思えません。よって、本件事案の場合、公然実施されたことにはならないと思料いたします。」(上記「第5」「2」「(2)」「エ」)と主張する。

(ウ)上記(イ)に関して、当審が、審理事項通知(1)において、「被請求人回答書【回答の内容】「4」「(1)」(7頁7?16行)の主張について・・・しかしながら、壊して分解することはリバースエンジニアリングとして周知の事項であり、販売され壊して分解し得る状態におかれているものであれば、公然実施されていたものと認められます。」(審理事項通知(1)「2」「(2)」「エ」「(イ)」)として釈明を求めたが、釈明はなかった。

(エ)したがって、「キヤノン向けヒンジ」は、キヤノン製複合機iR2200の販売により、公然と実施されていた発明であると認められる。

イ キヤノン製複合機iR2200の販売日
(ア)甲1に記載された事項
a 甲1は、請求人代理人が平成28年11月30日に作成した、「発表日2001年5月21日」の「ニュースリリース」である、「キヤノンが新世代の環境配慮型デジタル複合機12モデルを発売 “キヤノンMEDIO iR3300シリーズ”」と題するキヤノン社のウェブページを印刷したものである。
b 甲1には、次の記載がある。
「ニュースリリース」
「発表日2001年5月21日」
「キヤノンが新世代の環境配慮型デジタル複合機12モデルを発売」
「“キヤノンMEDIO iR3300シリーズ”」
「キヤノンは、一般オフィス向けに中・低速のデジタル複合機キヤノンMEDIO iR3300(計12モデル)を6月11日より順次発売します。」
「*MEDIO iR3300シリーズの各モデル(PSモデル、Lモデル、Fモデル、標準モデル)も同様の外観です。」
「・キヤノンMEDIO iR3300シリーズ‥‥‥‥‥‥価格(税別)88万円?137万円(発売日:2001年6月11日より順次)」
「なお、新製品“MEDIO iR3300シリーズ”は、出力スピードが毎分33枚(iR3300)、28枚(iR2800)、22枚(iR2200)の各機種に、PDFファイルなどの出力に最適なポストスクリプト3互換のPSモデル、『LIPS IV』のプリンター機能を標準搭載したLモデル、ファクシミリ機能が標準で装備されたFモデル、および標準モデルの4タイプを用意しており、使用環境に合わせて最適なモデルを選択することかできます。」
c 上記bによれば甲1には、次の事項が記載されていると認められる。
「キヤノン株式会社のデジタル複合機iR2200は、2001年(平成13年)6月11日より順次発売する同社MEDIO iR3300シリーズの1機種である。」(以下「甲1記載事項」という。)
(なお、甲1に関しては、2017年6月15日現在も閲覧可能であった。)

(イ)甲16に記載された事項
a 甲16は、請求人代理人が「平成15年4月30日キヤノン株式会社」「平成15年12月期第1四半期連結決算概要」と題するインターネットウェブ上の書面(後記(キ)の甲23参照)を印刷したものである。
b 甲16には、次の記載がある。
(a)1頁
「Canon」
「平成15年4月30日キヤノン株式会社」
「平成15年12月期第1四半期連結決算概要」
「本日開催の取締役会におきまして、当社の平成15年12月期第1四半期(平成15年1月1日から平成15年3月31日まで)の連結決算が確定致しましたので、ご報告致します。」
(b)2頁
「経営成績及び財政状態」(1行)
「2.製品事業別の状況
当四半期の連結業績を事業の区分別に概観しますと、事務機事業の内、オフィスイメージング機器では、強力なラインアップを持つ白黒デジタルネットワーク複合機“imageRUNNERシリーズ”の売上が国内外で堅調な伸びを示し、その中でも特に中高速機iR2200/iR3300や高速機iR5000、iR7200/iR105が引き続き好調に推移しました。」(35?39行)
c 上記bによれば甲16には、次の事項が記載されていると認められる。
「当四半期の連結業績を事業の区分別に概観しますと、事務機事業の内、オフィスイメージング機器では、強力なラインアップを持つ白黒デジタルネットワーク複合機“imageRUNNERシリーズ”の売上が国内外で堅調な伸びを示し、その中でも特に中高速機iR3300/iR2200や高速機iR5000、iR7200/iR105が引き続き好調に推移しました。」(以下「甲16記載事項」という。)。

(ウ)甲17に記載された事項
a 甲17は、請求人代理人が平成29年9月6日に作成した、「Canon」「カタログPDFダウンロード」と題するキヤノン株式会社のウェブページの「ニュースリリース」のインターネットアーカイブを印刷したものである。
b 甲17には、次の記載がある。
「imageRUNNER SQUARE カタログダウンロード」
「2002年12月2日」
「カタログPDFダウンロード」
「■本体カタログ」
「iR2200」
c 上記bによれば甲17には、次の事項が記載されていると認められる。
「■本体カタログ」の欄に「iR2200」との記載がある(以下「甲17記載事項」という。)。

(エ)甲18に記載された事項
a 甲18は、請求人代理人が平成29年9月6日に作成した、「Canon imageRUNNERS(Sは白抜き文字) iR2200」と題するインターネットウェブ上のカタログ(後記(キ)の甲23参照)を印刷したものである。
b 甲17には、次の記載がある。
(a)表紙
「Canon imageRUNNERS(Sは黒字に白抜き)」
「iR2200」
(b)最終頁
「iR2200………………………………本体標準価格¥880,000(税別)」
c 上記bによれば甲18には、次の事項が記載されていると認められる。
「iR2200…………本体標準価格¥880,000(税別)」(以下「甲18記載事項」という。)。
(なお、甲18に関しては、2017年6月15日現在も閲覧可能であった。)

(オ)甲19に記載された事項
a 甲19は、請求人代理人が平成29年9月6日に作成した、「2002年12月2日」の「ニュースリリース」である、「21世紀型デジタル複合機の基準となる高性能、中速機」と題するキヤノン株式会社のウェブページのインターネットアーカイブを印刷したものである。
b 甲19には、次の記載がある。
「iR3300/2800/2200製品紹介ページ」
「2002年12月2日」
「imageRUNNERS(Sは黒字に白抜き)iR3300/2800/2200」
「省スペース、省エネルギー、高機能。」
「これが21世紀型デジタル複合器の新しい基準です。」
「22枚/分 iR2200」
c 上記bによれば甲19には、次の事項が記載されていると認められる。
「imageRUNNERS(Sは白抜き文字)iR3300/2800/2200」(以下「甲19記載事項」という。)。

(カ)甲20に記載された事項
a 甲20は、請求人代理人が平成29年9月6日に作成した、「中古コピー機専門 OA市場」と題するインターネットウェブ上のページを印刷したものである。
b 甲20には、次の記載がある。
「中古コピー機専門 OA市場」
「キヤノンIR2200は、」
「ソートや両面・手差し機能が標準対応。」
「オプションでプリンタ・スキャナ機能を搭載。」
「機能詳細」
「特徴 キヤノンIR2200は、ソートや両面・手差し機能が標準対応。オプションでプリンタ・スキャナ機能を搭載。」
「主な販売時期 2001年?2003年」
c 上記bによれば甲20には、次の事項が記載されていると認められる。
「キヤノンIR2200は、ソートや両面・手差し機能が標準対応。オプションでプリンタ・スキャナ機能を搭載。」「主な販売時期 2001年から2003年」(以下「甲20記載事項」という。)。

(キ)甲23に記載された事項
a 甲23は、請求人代理人が平成30年1月12日に作成した、甲6、甲10、甲16及び甲18はインターネットを通じてアクセスしたものであること」を立証趣旨とする陳述書である。
b 甲23には、次の記載がある。
「甲6:
https://jp.ricoh.com/IR/financial_data/annual_report/pdf/03_j/ar00
.pdf
甲10:
http://www.arbikas.com/view/locator/ricoh_B064_Pc1060_1075.pdf
甲16:http://web.canon.jp/ir/results/2003/rslt2003q1j.pdf
甲18:
https://web.arcliive.org/web/20030420121606/
http://cweb.canon.jp:80/imagerunner/pdf/pdf_file/ir2200.pdf」

(ク)請求人の主張
請求人は、キヤノン製複合機iR2200の販売日に関して、審判請求書「7」「(4)」「イ」「(ア)」「a.」「(a)」(上記「第5」「1」「(1)」「オ」)、及び、請求人回答書「6」「1」「(1)」及び「(2)」(上記「第5」「1」「(2)」「ア」及び「イ」)のとおり主張する。

ウ キヤノン製複合機iR2200の販売終了日
(ア)甲2に記載された事項
a 甲2は、請求人代理人が平成28年11月30日に作成した、「発表日2003年5月27日」の「ニュースリリース」である、「Java^(TM)プログラムの実行環境を搭載した新世代ネットワーク複合機 “キヤノンimageRUNNERiiR3350i”など計9モデルを発売」と題するキヤノン社のウェブページを印刷したものである。
b 甲2には、次の記載がある。
「Canon」
「ニュースリリースメニュー」
「発表日2003年5月27日」
「Java^(TM)プログラムの実行環境を搭載した新世代ネットワーク複合機 “キヤノンimageRUNNERiiR3350i”など計9モデルを発売」
「キヤノンは、Javaプログラムの実行環境を搭載したネットワーク複合機“キヤノンimageRUNNER(イメージランナー)iiR3350iシリーズ”3モデルと、複合機としての機能を備えたキヤノンimageRUNNERsiR3310シリーズ6モデルの計9モデル^(※1)を5月27日より順次発売します。」
「新製品“iR3350iシリーズ(出力スピードが毎分33枚の(iR3350i)、同28枚の(iR2850i)、同22枚の(iR2250i)、いずれもスキャナー/プリンター/コピー機能を標準搭載^(※2)はJavaアプリケーションを実行するための独自のプラットフォーム『MEAP(ミープ)』を搭載することで、システム拡張の柔軟性を一層り高めたネットワーク複合機です。」
「一方、新製品“iR3310シリーズ”はコピー/ファクス機能を搭載したネットワーク複合機で、オプションの装着によリスキャナー/プリンター機能を付加することができます。なお、“iR3310シリーズ゛は、搭載機能や出力スピードにより6モデルが用意されており、使用環境に合わせて最適なモデルを選択することができます。」
「新製品“imageRUNNERiiR3350iシリーズ”は、2002年3月に発売された「imageRUNNERiiR3300iシリーズ」の優れた基本性能を継承しつつ、Javaプログラムの実行環境を新たに搭載することで、情報システムとしての拡張性を高めたモデルです。」
「一方、新製品“imageRUNNERsiR3310iシリーズ”は、2001年6月発売の「imageRUNNERsiR3300シリーズ」の後継モデルで、ユーザーからの要望に応え、ファクス機能の強化を図っています。」
c 上記bによれば甲2には、次の事項が記載されていると認められる。
「新製品“iR3350iシリーズ(出力スピードが毎分33枚の(iR3350i)、同28枚の(iR2850i)、同22枚の(iR2250i)、いずれもスキャナー/プリンター/コピー機能を標準搭載^(※2)はJavaアプリケーションを実行するための独自のプラットフォーム「MEAP(ミープ)」を搭載することで、システム拡張の柔軟性を一層り高めたネットワーク複合機です。」「新製品“imageRUNNERiiR3350iシリーズ”は、2002年3月に発売された「imageRUNNERiiR3300iシリーズ」の優れた基本性能を継承しつつ、Javaプログラムの実行環境を新たに搭載することで、情報システムとしての拡張性を高めたモデルです。」「一方、新製品“imageRUNNERsiR3310iシリーズ”は、2001年6月発売の「imageRUNNERsiR3300シリーズ」の後継モデルで、ユーザーからの要望に応え、ファクス機能の強化を図っています。」(以下「甲2記載事項」という。)
(なお、甲2に関しては、2017年6月15日現在も閲覧可能であった。)

(イ)甲3に記載された事項
a 甲3は、請求人代理人が平成28年10月26日に作成した、「2003年8月13日」の「デジタル複合器 価格・機能一覧」と題するキヤノン社のウェブページのインターネットアーカイブを印刷したものである。
b 甲3の「Sモデル」の欄の左列の下半分には、次の記載がある。
「iR3310・・・iR2810・・・iR2210・・・iR3310F・・・iR2810F・・・iR2210F・・・iM300P・・・iR2800P・・・iR2200P・・・iR3300D・・・iR2800D・・・iR2200D・・・iR3300M・・・iR2800M・・・iR2200M」(以下「甲3記載事項」という。)
c 上記bによれば甲3には、「iR2200」が記載されていないと認められる。
(なお、甲3に関しては、2017年6月15日現在も閲覧可能であった。)

(ウ)請求人の主張
請求人は、キヤノン製複合機iR2200の販売終了日に関して次のとおり主張する。
a 審判請求書「7」「(4)」「イ」「(ア)」「a」「(a)」において、「なお、甲第2号証記載のとおり、2003年(平成15年)5月27日には、iR2200の後継機種であるimageRUNNERs iR2210が発売されている。また、インターネットアーカイブに保存されているキヤノン株式会社の同年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページにおいては、標準モデルについて見ると、後継機種であるiR2210のみが記載され、iR2200の記載がない(甲3)。これらから考えると、遅くとも、2003年(平成15年)8月13日までに、iR2200の販売が終了していたことになる。」(上記「第5」「1」「(1)」「オ」)
b 請求人回答書(1)「1」「(1)」において、「中古コピー機専門店であるOA市場のウェブサイト上には、中古コピー機としてiR2200が掲載されており、その『主な販売時期』は、2001年?2003年とされている(甲20)。これは、2001年の時点ではすでにiR2200は販売されており、2003年には販売が終了していたことを意味する。」(上記「第5」「1」「(2)」「ア」)
c 請求人回答書(1)「2」において、「甲第2号証は、2003年(平成15)年5月27日に発表されたニュースリリースであるが、その立証趣旨は、『iR2200の後継機であるキヤノンiR2210が、2003年5月27日に発売された』という点にある。甲第3号証は、キヤノン株式会社の2003年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページであるが、ここには、iR2210のみが掲載され、iR2200は掲載されていない。したがって、甲第2号証及び甲第3号証から、『2003年5月27日にはiR2200の後継機であるキヤノンiR2210が発売されたところ、それから約2か月半後の同年8月13日のデジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページには、iR2210のみが掲載され、iR2200は掲載されていなかった』事実が認められる。このようにiR2210の発売後のウェブページにiR2200が掲載されていないことから、遅くとも2003年8月13日の時点では、iR2200は後継機であるiR2210に取って代わられ、その販売は中止されていたと考えるのが合理的である。このことは、甲第20号証に、販売終了時期は2003年と記載されていることとも整合する。iR2200が出願日より前に販売中止された事実は、iR2200はすべて出願日より前に販売されたことを意味する。」(上記「第5」「1」「(2)」「ウ」)
d 請求人回答書(1)「3」において、「しかしながら、旧型機が販売されていると仮定した状況で、消費者向けに複合機のオプションを示す『一覧』ページに最新機種だけ表示するというのは不自然である。また、甲第2号証の『キヤノンimageRUNNERsiR2210・・・・・・価格(税別)88万円(発売日:2003年5月27日)』との記載、及び、新たに提出したimageRUNNERsiR2200のカタログ(甲18)の『iR2200‥‥‥本体標準価格¥880,000(税別)』との記載から理解できるように、iR2200とiR2210の価格は同じである。高性能になった後継機が同じ価格で販売されているにもかかわらず、それより性能の劣る旧機種を同じ価格で販売する理由はない。したがって、キヤノン株式会社の2003年8月13日付デジタル複合機価格・機能一覧を掲載したウェブページにiR2200が掲載されていないのは、後継機であるiR2210に取って代わられ、その販売は中止されていたからだと考えるのが合理的である。よって、甲3は『キヤノン向けヒンジを用いた複合機の販売が出願日前に終了していたこと』を立証する証拠となる。」(上記「第5」「1」「(2)」「エ」)
e 請求人回答書(1)「3」において、「なお、請求人が提出したiR2200に関する証拠(甲16?20)が示す販売時期は、すべて本件特許の原出願日である平成16年(2004年)6月24日より前のものであるうえ、甲第20号証によれば、販売終了時期は2003年とされている。また、本件キヤノン向けヒンジは、2002年7月25日に生産しているものと考えられるところ(甲4の11頁目7行目)、2002年7月25日に生産されたヒンジが、約2年後の2004年6月24日まで、複合機に搭載されなかったということは、当業者の常識に反する。このように複数のiR2200に関する証拠が、いずれもiR2200が販売されたのは本件特許の原出願日よりも前のものであることを示しており、他方、iR2200が平成16年(2004年)6月24日よりも後に販売されたことを示す資料はない。これらのことからも、iR2200の販売は、出願日よりも前に終了していたといえる。
以上のことから、甲第3号証は、甲第2号証等とあいまって、iR2200モデルの販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたことを証明するものである。」(上記「第5」「1」「(2)」「エ」)

エ 小括
(ア)甲1記載事項(上記「イ」「(ア)」)から、キヤノン製複合機iR2200は、2001年(平成13年)6月11日より順次発売する」ことが明らかである。
また、甲16記載事項ないし甲20記載事項(上記「イ」「(イ)」ないし「(カ)」)から、キヤノン製複合機iR2200は少なくとも2003年以前に販売されていたことが明らかである。
したがって、甲1記載事項及び甲16記載事項ないし甲20記載事項から、キヤノン製複合機iR2200は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に販売されていたことが明らかである。

(イ)そして、上記アで検討したとおり、「キヤノン向けヒンジ」は、キヤノン製複合機iR2200の販売により、公然と実施されていた発明と認められ、かつ、上記(ア)で検討したとおり、キヤノン製複合機iR2200が、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に販売されていたことが明らかであるから、キヤノン製複合機iR2200に取り付けられたヒンジとして公然実施された発明としての「キヤノン向けヒンジ」は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に公然実施されていた発明であると認められる。

(ウ)しかしながら、請求人の主張(上記「ウ」「(ウ)」)を踏まえても、甲2及び甲3が、キヤノン製複合機iR2200が、当該各ウェブページ上の当該頁には掲載されていない、ということ以上の、「iR2200モデルの販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたこと」を示す証拠とはいえない。
また、甲20は、「主な販売時期 2001年?2003年」(甲20記載事項)と記載されることに照らせば、キヤノン製複合機iR2200の主な販売時期が2003年までであって、2004年に販売されていたことを否定するものではないから、販売時期が2003年で終了したことを示す証拠とはいえない。
よって、甲1ないし3記載事項、及び、甲16記載事項ないし甲20記載事項から、「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」(上記(1))としてのキヤノン製複合機iR2200は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前の2001年に販売されていたが、その販売終了日は明らかではないと認められる。

(3)甲4で事実実験が行われたキヤノン製複合機iR2200
ア 「キヤノン製複合機iR2200」に関して「本件複合機」の事実実験を行うことの意義について
(ア)甲4に記載された事項
甲4は、公証人北原一夫が平成28年11月29日に作成した、平成28年10月26日に行われた事実実験に関する「平成28年0148号事実実験公正証書」である。
甲4には「本件複合機」に関して、次の記載がある。
「実験対象品であるキヤノン株式会社製iR2200(以下、「本件複合機」という)は、中古業者からラップにより封止された状態で搬入されており、現在まで封止が維持されている」(7頁17?20行)
「複合機本体の正面には、『iR2200』との銘板があ」る(8頁5?6行)

(イ)「本件複合機」の発売日
上記(2)で検討したとおり、「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」(上記(1))としてのキヤノン製複合機iR2200は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前の2001年に販売されていたが、その販売終了日は明らかでない」ところ、「甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200である、甲4で事実実験が行われた「本件複合機」の発売日も明らかではない。

(ウ)「甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体」と「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」
a 甲21に記載された事項
(a)甲21は、請求人代理人が、株式会社キヤノンのお客様相談センターに、「3)iR2200i、iR2200D、iR2200F、iR2200L、iR2200M、iR2200Pとは銘板(本体前面中央にある機種名表示)に違いはありますか?」と問い合わせたことに対する、株式会社キヤノンのお客様相談センターからの平成29年9月1日付け返信メールを印刷したものである。
(b)甲21には、次の記載がある。
「3)銘板に違いがあります。iR2200i、iR2200D等製品名が明記されています。」
(c)上記(b)によれば甲21から、次の事項が認められる。
「甲第4号証の写真2-1の『iR2200』との銘板は、『iR2200』(標準モデル)であることを特定すること。」

b 請求人は上記aに関して、請求人回答書「6 回答の内容」「4 『3 甲3について(2)について』」(上記「第5」「1」「(2)」「オ」)でも主張する。

c 上記aによれば、キヤノン製複合機iR2200が、2001年の販売開始以降、「iR2200」の銘板を用いた機種において、モデルチェンジが行われたことを示す証拠はなく、モデルが異なる(iR2200i、iR2200D)と銘板も異なる(iR2200i、iR2200D)とされるから、「iR2200」との銘板を用いた機種であるキヤノン製複合機iR2200は、2001年の販売開始以降同じ構成で製造・販売されていたと推認される。
これに対して、甲4で事実実験が行われた「本件複合機」の販売日が、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前であるか明らかではない。
しかしながら、「本件複合機」は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前の2001年に販売されていた「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200の1つであるから、ヒンジ及びヒンジに関わる部品が交換されていなければ、「甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200と、「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200とは、ヒンジを含め同じ構成であると推認される。
よって、「甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200と「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200とでは、そこで使用されているヒンジ及び当該ヒンジに関わる部品が交換されていなければ、両者のヒンジは同じ構成であると認められる。

d 請求人は上記cに関して、請求人確認事項書「6 回答内容」「(4)2について」「ア 本件キヤノン向けヒンジについて」(上記「第5」「1」「(4)」「エ」)でも主張する。

(エ)小括
以上(ア)ないし(ウ)での検討によれば、「甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200について事実実験を行うことは、そこで使用されているヒンジ及び当該ヒンジに関わる部品が交換されていない限りにおいて、「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200について事実実験を行うことに相当する。
したがって、「甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200について事実実験を行うことは、そこで使用されているヒンジ及び当該ヒンジに関わる部品が交換されていない限り、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前の2001年に販売され、公然実施されていた、「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」(上記(1)参照)としてのキヤノン製複合機iR2200のヒンジの構成について事実実験を行うことに相当する。

イ 甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体である「本件複合機」及び同「本件複合機」に用いられていた「キヤノン向けヒンジ」(甲4における「本件第2ヒンジ」。)の部品交換の有無
(ア)甲4には、「本件複合機」及び「キヤノン向けヒンジ」の部品交換の有無について、次の記載がある。
a 「代理人らは、実験対象品であるキヤノン株式会社製iR2200・・・は、中古業者からラップにより封止された状態で搬入されており、現在まで封止が維持されている旨述べたので、本職は当該封止状況を外観から確認したが、ラップの封止状況に特に異常は見当たらず、説明と相違する部分も見出せなかった(写真2-1)。」(7頁17行?8頁3行)
b 「その後、ADFを上に開き、取り外し対象の本件第2ヒンジ、及びその複合機本体への取り付け部分の状態を確認、撮影する作業を目撃したが、外観上、本実験以前に、取り外しや再組み立てをしたことを疑わせる形跡は認められなかった(写真2-6、7)。」(8頁15?19行)
c 「代理人らは、ネジを一度取り外して再度取り付けた場合には、ネジを締めた跡がずれるので、そのずれの有無で取り替えの有無がわかるが、本件第2ヒンジの複合機側の取り付けネジ跡は、取り外した1か所しか痕跡がなく、取り替えの形跡は見られない旨説明したが、本職において確認したところでも、ネジ跡は輪状の跡が1か所あるだけで、ずれた複数の輪状の跡は認められず、本実験以前にネジを一度取り外して再度取り付けるなどの取り替えの形跡は皆無であった(写真3-2)。」(9頁5?14行)
d 「以上の作業により、代理人らは当該ADFを複合機本体から取り外した。代理人らは、本件第2ヒンジの複合機側接触面とそれ以外の部分とのほこりの付着状態に差があり、色が異なっていることから取り外しはされていないと見られると述べたが、本職も確認したところ、代理人の説明通り、複合機本体とネジで結合されて接触していた本件第2ヒンジの接触面とそれ以外の部分とでは、ほこりの付着状態や色相に目視でも明らかなほどの差があり、本実験で取り外す以前に取り外されて再度組み立てられたことを窺わせる形跡は皆無であった(写真3-5)。」(9頁20行?10頁11行)
e 「また、代理人らは、上記固定部材の取り外し後のネジ跡から取り替えの形跡は見られない旨説明し、本職が確認したところ、説明通り、2か所のネジ跡には輪状の跡がそれぞれ1か所あるだけで、ずれた複数の輪状の跡は認められず、本実験以前にネジを一度取り外して再度取り付けるなどの取り替えの形跡は皆無であった(写真3-15、16)。」(11頁12?19行)
f 「代理人らは、上記ヒンジブラケット上のネジ跡、及び取り外した本件第2ヒンジに付着したほこり、ネジ跡の状態から本件第2ヒンジは、ヒンジブラケットから取り外された形跡が見られない旨説明し、本職も確認したところ、説明通り、それぞれのネジ跡には、輪状の跡がそれぞれ1か所あるだけで、ずれた複数の輪状の跡は認められず、また、ネジの接着面とそれ以外とでほこりの付着の有無や色相等が明らかに異なっており、本実験以前にネジを一度取り外して再度取り付けるなどの取り替えの形跡は皆無であった(写真3-20ないし23)。」(12頁2?13行)

(イ)上記(ア)の点に関する請求人に対する審尋、及び、同審尋に対する請求人の釈明
a 上記(ア)の点について、審尋(1)で請求人に次の事項について釈明を求めた。
(a)「本件複合機に関する、納品書あるいは領収書等入手経路を明らかにする証拠が提出されておらず、また、当該本件複合機におけるヒンジ交換の可能性についての保管状況や整備記録など、交換されていないことを示す間接証拠も提出されていない」(審尋(1)「第1」「4」「(1)」「イ」)
(b)「甲4に記載されているネジ跡、ほこり等以外にヒンジ交換の可能性を否定する証拠は見当たらない。」(審尋(1)「第1」「4」「(1)」「イ」)
(c)「ADFが故障した際に、ヒンジのみ交換することはあまりなく、ADFそのものを交換することが多いと理解される。また、複合機が精密機械であることを考慮すると交換する際にほこりを放置して交換する可能性も低いと理解される」(審尋(1)「第1」「4」「(1)」「ウ」)
(d)「甲4において、ネジ跡、ほこり等の状態が、『本件複合機』のヒンジ交換あるいはADF交換されていないことまでの証拠であるとする理由は何か。」(審尋(1)「第1」「4」「(1)」「エ」)
b 上記aの審尋に対する請求人の釈明は次のとおりである。
(a)請求人回答書「6 回答の内容」「5」(同6頁27行?7頁26行)において、「そもそも、ADFが全体の交換を要するほど故障するというのは一般的ではない。また、ADFそのものを交換することが多いという一般常識も存在せず、むしろADFそのものを交換することは少ないというのが当業者の常識である。これらのことを示す証拠として、新たに提出する甲第22号証がある。・・・以上のことから、複合機のメンテナンスに関し、約14年にわたって複合機が使用される場合であっても、ADF部全体を交換するような故障が生ずることは一般的とはいえない。また仮にADF部の部品を交換する場合であっても、ADF部全体が交換されるのではなく、必要な部品を交換するというのが技術常識である。したがって、キヤノン製複合機についても、ADF部全体またはヒンジの交換があったとはいえず、むしろ上で述べたリコー複合機の実体に照らして考えれば、複合機の本件キヤノン向けヒンジについても、ADF部全体またはヒンジの交換はなかったと考えるのが合理的である。」(上記「第5」「1」「(2)」「カ」)
(b)請求人回答書「6 回答の内容」「5」(同8頁3?12行)において、「ネジ跡、ほこり等に関しては、次のことが認められる。すなわち、ネジを一度取り外して再度取り付けた場合には、ネジを締めた跡がずれるので、そのずれの有無で取り替えの有無がわかるが、本件キヤノン向けヒンジの複合機側の取り付けネジ跡は、取り外した1か所しか痕跡がなく、取り替えの形跡は見られなかった(甲4)。また、本件キヤノン向けヒンジの複合機側接触面とそれ以外の部分とのはこりの付着状態に差があり、色が異なっていることから取り外しはされていないと考えられる(甲4)。以上のことから、ネジ跡、ほこり等が甲第4号証に示すとおりであったという事実は、『本件複合機』のヒンジ交換あるいはADF交換がされていない蓋然性が高いことを示すものといえる。」(上記「第5」「1」「(2)」「キ」)
(c)請求人要領書(1)「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「イ. 『2(1)イ 無効理由1について』について」「(ア)キヤノン向けヒンジについて」(上記「第5」「1」「(3)」「イ」)においても同様に主張する。

(ウ)上記(イ)対する被請求人の反論
上記「(イ)」「b」の請求人の釈明に関して、被請求人に対して反論(釈明)を求めた(審理事項通知(1)「2」「(2)」「ウ」)が、被請求人から反論(釈明)はなかった。

ウ 小括
以上ア及びイでの検討によれば、「本件複合機」において、ADFや「キヤノン向けヒンジ」が交換されたことを伺わせる証拠はないから、「本件複合機」は、販売日以来事実実験の日まで、ADF及び「キヤノン向けヒンジ」に関して、ヒンジ及びヒンジに関わる部品が交換されておらず、「本件複合機」には発売当初のADF及び「キヤノン向けヒンジ」が搭載されていたものと推認される。
したがって、「本件複合機」において「キヤノン向けヒンジ」について事実実験を行うことは、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に販売されていたキヤノン製複合機iR2200の「ヒンジ」の構成を確認することであると認められる。

(4)「本件複合機」の「キヤノン向けヒンジ」について
ア 甲4における「本件複合機」の銘板及び「キヤノン向けヒンジ」の刻印とスタンプ
甲4によれば、「本件複合機」の本体裏側の銘板には、機器名「F140100」、シリアル番号「MJX03413」との記載があり、また、搭載されているADFの銘板には、機種名としてけ「DADF-H1」、シリアル番号として「XDX06090」との記載があったとされる(8頁4?11行)。
また、甲4によれば、「キヤノン向けヒンジ」に関して、「本件第2ヒンジにはFB6-2703との刻印があり」(10頁12?15行)、「本件第2ヒンジに『B320725』とスタンプされている」(11頁3?6行)とされる。

イ 「キヤノン向けヒンジ」のスタンプの「B320725」の意味
上記アの「キヤノン向けヒンジ」のスタンプの「B320725」が意味する事項に関して、甲4には、「当該スタンプは、先頭2桁が工場と製造ラインを表し、3桁目が製造年(西暦)の末尾1桁、続く4桁が製造月日を表しており、本件第2ヒンジは、2002年7月25日生産品と見られる」(11頁7?11行)と記載され、請求人は審判請求書12頁12?20行(上記「第5」「1」「(1)」「オ」)でも同様に主張する。
しかしながら、「キヤノン向けヒンジ」に関しての、上記のスタンプの意味する内容に関する客観的な証拠は示されていない。
したがって、甲4の上記点は、「本件複合機」の「キヤノン向けヒンジ」の製造月日は、「2002年7月25日生産品と見られる」可能性を示すにとどまる。

ウ 被請求人の主張
上記イの点に対して被請求人は、答弁書4頁「7」「(3)」「ウ」(同4頁26行?5頁4行)で、「事件の内容から言えば、本来明らかにされるべきは複写機やそこに用いられている原稿自動送り装置の製造年月日ではなく、当該原稿送り装置に取り付けられているヒンジの製造年月日であるべきである。この原稿自動送り装置の本体部分とヒンジは別々のメーカーにより、しかも中国において異なった場所で製造されており、両者は簡単に着脱できることから、原稿自動送り装置の製造年月日が、必ずしもヒンジの製造年月日を表すものではない。さらなる証明が必要である。」(上記「第5」「2」「(1)」「ウ」)と主張する。
また、被請求人は、答弁書「7」「(3)」「ア」及び「オ」(上記「第5」「2」「(1)」「ウ」)、被請求人回答書(1)「2.」「(3)」及び「(4)」(上記「第5」「2」「(2)」「イ」)、被請求人回答書(1)「3.」(上記「第5」「2」「(2)」「ウ」)及び被請求人要領書(1)「6.」「(6)」(上記「第5」「2」「(3)」「オ」)において、「本件複合機」の「入手経路を明らかにすべき」、「入手経路を明らかにする納品書なり領収書を提出すべき」、「キヤノン向けヒンジの製造年月日が明らかにされなくてはならない」、「請求人は前記各個体が本件特許の原出願の前に販売されたものであることの立証をしなくてはならないものと考えます。」等主張する。

エ 請求人の主張
上記ウの被請求人の主張に対して請求人は、請求人要領書(1)「6 陳述の要領」「(2)答弁書における被請求人の反論に対する請求人の反論」「ア.『答弁書7.(3)ア.?オ.』(第4、5頁)の反論に対する反論」(上記「第5」「1」「(3)」「カ」)のとおり主張する。

オ 小括
しかしながら、上記「(3)」「イ」で検討したとおりであって、「本件複合機」において、ADFや「キヤノン向けヒンジ」が交換されたことを伺わせる証拠はないから、「本件複合機」は、販売日以来事実実験の日まで、ADF及び「キヤノン向けヒンジ」に関して、ヒンジ及びヒンジに関わる部品が交換されていなければ、「本件複合機」には発売当初のADF及び「キヤノン向けヒンジ」が搭載されていたものと推認される。
したがって、上記「(3)」「ア」で検討したとおり、入手経路、あるいは、キヤノン向けヒンジそのものの製造年月日を明らかにせずとも、「本件複合機」において「キヤノン向けヒンジ」について事実実験を行えば、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に販売されていた「キヤノン株式会社製複合機iR2200」の「ヒンジ」の構成を確認することになるから、被請求人が主張するような「入手経路を明らかにす」る必要も、「入手経路を明らかにする納品書なり領収書を提出す」る必要も、「キヤノン向けヒンジの製造年月日が明らかにされなくてはならない」必要も認められない。
よって、「本件複合機」において「キヤノン向けヒンジ」について事実実験を行うことは、「ヒンジの製造年月日」が明らかでなくとも、「キヤノン向けヒンジとして公然実施された発明」が、「キヤノン株式会社が販売した複合機『iR2200』全般」の場合は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に公然実施されていた発明である「キヤノン向けヒンジ」の構成を確認することであると認められる。
しかしながら、「甲4の事実実験において実験対象とした『iR2200』の個体」そのものの発売日を示す証拠は示されず、発売日を特定することはできないから、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に公然実施されていた発明であるとは認めることができない。

(5)「キヤノン向けヒンジ」の構成、検証結果及び本件発明1
ア 甲4に記載された、事実実験で確認された「キヤノン向けヒンジ」の構成
「a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、(写真4-1)
b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)と、(写真4-2、3)
c 前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、(写真4-4、5)
d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、(写真4-6、4-7)
e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、(写真4-8)
f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝(54)と、(写真6-1、2)
g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、(写真4-9)
h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、(写真4-10)
i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり、(写真4-11)
j’ 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし、(写真6-3)
k 前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した(写真4-11?13)
l ことを特徴とする原稿圧着板開閉装置。」(15頁13行?17頁17行、及び、審判請求書12頁最下行?14頁13行(上記「第5」「1」「(1)」「カ」))

イ 甲4に記載された、事実実験で確認された「キヤノン向けヒンジ」の「前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダーの凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接する」こと(上記「第3」本件特許発明の構成K)
a 「緩衝材として用いられるエアクッションを切断したものであり、その厚さは0.013mmであった(写真4-14)」「ポリエチレンフィルム片」を使用して(18頁5?7行)
b 「原稿圧着板を閉じた状態に相当する状態に底板に力を加えて第2スライダー(32)を第1スライダー(31)側に移動させた状態で、第2スライダー(32)を治具により固定し、固定した状態で第2スライダー(32)と第1ヒンジピン(11)との開にポリエチレンフイルム片を挿入し(写真4-15、16)、治具を外すことで第2スライダー(32)を戻して原稿圧着板の全開状態に相当する状態とし、ポリエチレンフイルム片の挿入側端部と反対の端部か保持したところ、ポリエチレンフィルム片のみでヒンジが保持できた」点(18頁8?18行)
c 「再度、底板に力を加えて第2スライダー(32)を第1スライダー(31)側に移動させてポリエチレンフィルム片を取り出し、当該フィルム片を本職が観察したところ、第2スライダーの凹部(35)と第1ヒンジピン(11)に挟まれた箇所付近に、その痕跡が残っていた(写真4-18)」点(19頁8?13行)

ウ 請求人の釈明及び被請求人の主張
(ア)請求人は、上記アに関して、請求人要領書(1)「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「オ. 『2(1)オ『凹部』について』について」で「ご指摘の通り、甲4の写真6-3における、逆傾斜部に統いて図面視右側に段差があり、当該段差から始まる凹み部分が、特許発明でいう凹部に対応します。」(請求人要領書(1)6頁2?3行:上記「第5」「1」「(3)」「オ」)と釈明する。

(イ)被請求人は、上記アに関して、次のように主張する。
被請求人は、上記ア及びイに関して、答弁書「7」「(3)」「カ」及び「キ」(上記「第5」「2」「(1)」「ウ」)、被請求人回答書(1)「1.」「(1)」?「(3)」(上記「第5」「2」「(2)」「ア」)、被請求人回答書(1)「1.」「(5)」(上記「第5」「2」「(2)」「ア」)、被請求人回答書(1)「2.」「(4)」(上記「第5」「2」「(2)」「イ」)、被請求人要領書(1)「6.」「(1)」?「(3)」(上記「第5」「2」「(3)」「ア」?「ウ」)及び被請求人要領書(1)「6.」「(7)」「(a)」?「(b)」(上記「第5」「2」「(3)」「カ」)等において、甲4における「写真4?11」と「図1?11」が一致しない、キヤノン向けヒンジには「凹部」はない、「第2スライダーの構成及び作用効果が異なる」、事実実験に立ち会った公証人が専門知識を有するとは思えない、等々述べている。

エ 検証結果
上記ウの被請求人の主張に鑑み、また、被請求人の被請求人要領書「(1)」「6.」「(8)」(上記「第5」「2」「(3)」「キ」)の要請に基づいて、平成30年6月1日に「キヤノン向けヒンジ」とされる、「検甲第2号証」に関して検証を行った。
その検証結果は第2回口頭審理及び証拠調べ調書(平成30年6月1日期日)の検証調書のとおりである。

オ 検証の対象となった検甲第2号証が、甲4に記載された事実実験で確認されたとする「キヤノン向けヒンジ」であること
(ア)検甲第2号証の検証結果と、甲4に記載された事実実験で確認されたとする「キヤノン向けヒンジ」の対比
a 検証により、「検甲第2号証は、検証開始時において、公証人北原一夫の職印により封印された封筒(甲第4号証写真12-1、12-2参照)の中に入れられた状態であった。同封筒の表面には、下西技研工業株式会社との社名が印字され、『CANONiR2200』『2016年10月26日』と手書きの文字が記されている。また、裏面には、『平成28年10月26日』『公証人北原一夫封印』と手書きの文字が記されている(写真II-1、写真II-2)。」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「1」「(1)」)。
そこで、検甲第2号証の検証結果と、甲4に記載された事実実験で確認されたとする「キヤノン向けヒンジ」を以下の各点で対比する。
公証人北原一夫の職印により封印された封筒の表面における、下西技研工業株式会社との社名の印字と「CANONiR2200」「2016年10月26日」と手書きの文字、及び、同裏面における、「平成28年10月26日」「公証人北原一夫封印」と手書きの文字。

(a)検甲第2号証の検証結果(写真II-1、写真II-2)。

(検甲2:写真II-1)

(検甲2:写真II-2)

(b)甲第4号証(写真12-1、12-2)

(甲4:写真12-1)

(甲4:写真12-2)

(c)上記(a)及び(b)は同じ場所に同一の書体で上記の記載を見てとることができるから、両者は同一の封筒であると認められる。
b リフト部材の上板(61)に付されたスタンプの文字
(a)検甲第2号証の検証結果(写真II-15)。

(検甲2:写真II-15)

(b)甲第4号証(写真3-14)

(甲4:写真3-14)

(c)上記(a)及び(b)には、いずれも同じ場所に同じ書体で同一の「B320725」とのスタンプを見てとることができるから、両者は同一の部材であると認められる。
c 同様に、検甲第2号証の検証結果の、取付部材(4)(写真II-6)、底板(41)(写真II-7)、取付部材の側板(42)(写真II-8)、支持部材(5)(写真II-9)、支持部材の上板(51)(写真II-10)、支持部材の側板(52)(写真II-11)、包持片(53)(写真II-12)、湾曲溝(54)(写真II-13)、リフト部材(6)(写真II-14)、リフト部材の上板(61)(写真II-15)、リフト部材の側板(62)(写真II-16)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真II-17)、第2ヒンジピン(12)及び作動ピン(14)(写真II-18)、第1スライダー(31)(写真II-19)、圧縮コイルスプリング(21)(写真II-20)及び第2スライダー(32)(写真II-21)と、甲第4号証の取付部材(4)、底板(41)及び取付部材の側板(42)(写真4-1)、支持部材(5)、支持部材の上板(51)、支持部材の側板(52)、包持片(53)及び湾曲溝(54)(写真4-2、4-3、6-1、6-2)、リフト部材(6)、リフト部材の上板(61)及びリフト部材の側板(62)(写真4-4、4-5)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真4-1、4-2、4-6、4-7)、第2ヒンジピン(12)及び作動ピン(14)(写真4-4、4-5、4-8)、第1スライダー(31)(写真4-10)、圧縮コイルスプリング(21)(写真4-11)及び第2スライダー(32)(写真4-9、6-3)をそれぞれ対比しても、両者の各部品に異なるところは見いだせないから、両者の各部品も同一の部材であると認められる。

(イ)以上(ア)での検討によれば、検証の対象である検甲第2号証は、甲4に記載された事実実験で確認された「キヤノン向けヒンジ」であると認められる。

カ 引用発明1
上記アの事実実験(甲4)で確認された「キヤノン向けヒンジ」の構成(上記「ア」)を、上記エの検証結果によって確認する。
(ア)「キヤノン向けヒンジ」の各構成
a 検甲第2号証を検証した結果、「上記1(1)の封筒の内容物(検甲第2号証)の部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-1に示される『取付部材(4)』がある。この『取付部材(4)』は、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-1に示される『底板(41)』と、この底板の両側より立設させた『側板(42)』(2枚)を有する」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「a.」)。
また、「キヤノン向けヒンジ」はキヤノン製複合機iR2200に取り付けられたヒンジであって、甲4の写真2-7から、「底板(41)」は事務機器(キヤノン株式会社複合機iR2200)の装置本体へ取り付けられていることが見てとれる。

(甲4:写真2-7)
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と」(上記「ア」「a」)の構成を有することが確認された。

b 検甲第2号証の検証の結果、「b.部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-2、4-3に示される『支持部材(5)』がある。この『支持部材(5)』は、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-2,4-3に示される『上板(51)』と、この上板の両側の一部より垂設された『側板(52)』(2枚)を有し、これらの側板(2枚)のそれぞれの下端部には、内側へ折り曲げた『包持片(53)』を備え、さらには、これらの側板(52)(2枚)のそれぞれの自由端側に、甲第4号証及び検甲第2号証説明用写真の写真6-1、6-2に示される『湾曲溝(54)』を有する」(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「b.」)こと、及び、「d.部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の・・・写真4-6、4-7に見てとれる『第1ヒンジピン(11)』がある」(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「d.」)ことが確認された。
また、「キヤノン向けヒンジ」の「支持部材(5)」は、甲4の写真4-16及び4-17から、両側板の抱持片を設けてない部分を取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成ることが見てとれる。

(甲4:写真4-16、写真4-17)
さらに、「キヤノン向けヒンジ」の「支持部材(5)」は、甲4の写真2-7(上記a参照)及び写真3-4から、原稿圧着板を支持することが見てとれる。

(甲4:写真3-4)
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)と」(上記「ア」「b」)の構成を有するとともに、「f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝(54)と」(上記「ア」「f」)の構成のうち、「前記支持部材(5)の両側板の自由端側に設けた湾曲溝(54)と」の構成を有することが確認された。

c 検甲第2号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-4、4-5に示される『リフト部材(6)』がある。この『リフト部材(6)』は、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-4,4-5に示される『上板(61)』と、この上板の両側より垂設された『側板(62)』(2枚)を有する」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「c.」)。
また、「キヤノン向けヒンジ」の「リフト部材(6)」の「上板(61)」は、甲4の写真2-7(上記a参照)及び写真3-4(上記b参照)から、原稿圧着板を取り付けるものであることが見てとれる。
さらに、「キヤノン向けヒンジ」の「リフト部材(6)」は、甲4の写真4-17(上記b参照)から、リフト部材(6)の両側板(62)を支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したものであることが見てとれる。
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「c 前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と」(上記「ア」「c」)の構成を有することが確認された。

d 検甲第2号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-6、4-7に示される『固定ピン(13)』及び上記の写真4-6、4-7に見てとれる『第1ヒンジピン(11)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「d.」)。
ここで、検証調書の写真II-7及び写真II-17から、固定ピン(13)は取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられたものであることが見てとれる。

(検甲2:写真II-7)


(検甲2:写真II-17)
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と」(上記「ア」「d」)の構成を有することが確認された。

e 検甲第2号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-8に示される『作動ピン(14)』及び上記の写真4-8に見てとれる『第2ヒンジピン(12)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「e.」)。
また、「キヤノン向けヒンジ」の「作動ピン(14)」は、甲4の写真4-8から、リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられたものであることが見てとれる。

(甲4:写真4-8)
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と」(上記「ア」「e」)の構成を有することが確認された。

h 検甲第2号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-10に示される『第1スライダー(31)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「h.」)。
また、「キヤノン向けヒンジ」の「第1スライダー(31)」は、甲4の写真4-4から、その一端部側を作動ピン(14)に当接し、支持部材(5)の両側板(52)の間に抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられたものであることが見てとれる。

(甲4:写真4-4)
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と」(上記「ア」「h」)の構成を有することが確認された。

i 検甲第2号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-11に示される『圧縮コイルスプリング(21)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「i.」)。
また、「キヤノン向けヒンジ」の「圧縮コイルスプリング(21)」は、甲4の写真4-11から、第2スライダー(32)と第1スライダー(31)との間に弾設されたものであることが見てとれる。

(甲4:写真4-11)
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり」(上記「ア」「i」)の構成を有することが確認された。

j 検甲第2号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-9に示される『第2スライダー(32)』がある。この『第2スライダー(32)』は、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真6-3に示されるように『延出片(38)』と、この延出片の基部側から垂設された『傾斜部(34)』と、この傾斜部に続いて設けられた『逆傾斜部(36)』と、この逆傾斜部に続いて設けられた『逆傾斜部に続く部位(35)』を有する」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第2号証」「2」「j.」)。
また、「キヤノン向けヒンジ」の「第2スライダー(32)」は、甲4の写真4-7、4-12から、一端部側を固定ピン(13)に当接させ支持部材(5)の両側板の間に抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられたものであることが見てとれる。

(甲4:写真4-7)

(甲4:写真4-12)

さらに、「キヤノン向けヒンジ」の「第2スライダー(32)」の「延出片(38)」は、甲4の写真2-7(上記a参照)、写真4-9及び検証調書の写真II-23から、固定ピン(13)側に当該固定ピン(13)のとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有するものであること、及び、「第2スライダー(32)」の「傾斜部(34)」は固定ピン(13)側に暫時傾斜したものであることが見てとれる。

(甲4:写真4-9)

(検甲2:写真II-23)
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と」(上記「ア」「g」)の構成を有することが確認された。
また、「キヤノン向けヒンジ」が、「j’ 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし」(上記「ア」「j’」)との構成のうち、「前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部に続く部位(35)とを有するものとし」との構成を有することが確認された。

k 検甲第2号証の検証の結果、「a.検甲2仮ヒンジは、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-11、4-12に示されるように、『上板(51)の全閉の状態においては延出片(38)が固定ピン(13)の底板(41)側を覆い』という構成を有している」こと(検証調書「第4」「検甲第2号証」「5」「a.」)、「b.検甲2仮ヒンジは、甲第4号証及び検甲2説明用写真の写真4-13に示されるように、『上板(41)を全開状態にした際には支持部材(5)の後部が取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し』という構成を有している」こと(検証調書「第4」「検甲第2号証」「5」「b.」)、及び、「c.検甲2仮ヒンジは、『(上板(51)を全開状態にした際には)第2スライダー(32)が固定ピン(13)より離れ、第2スライダー部の『逆傾斜部に続く部位(35)』が第1ヒンジピン(11)と当接する』という構成を有している」こと(検証調書「第4」「検甲第2号証」「5」「c.」)が確認された。
ここで、上記cでの検討を踏まえると、リフト部材(6)の上板(61)には原稿圧着板(3)が取り付けられているから、上板(61)を開閉することは原稿圧着板(3)をも開閉することとなる。
また、上記jでの検討を踏まえると、「延出片(38)」は、固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有するものであるから、延出片(38)は、上板(61)(原稿圧着板(3))の開閉に伴って、固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆うこととなる。
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「k 前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」(上記「ア」「k」)の構成のうち、「前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の逆傾斜部に続く部位(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」との構成を有することが確認された。

l 検甲第2号証は、開閉装置であるところ、上記cでの検討を踏まえると、リフト部材(6)の上板(61)には原稿圧着板(3)が取り付けられているから、「原稿圧着板開閉装置」の構成を有すると認められる。
したがって、「キヤノン向けヒンジ」が、「l 原稿圧着板開閉装置」(上記「ア」「l」)の構成を有することが確認された。

(イ)引用発明1
以上によれば、検証結果で確認されるとともに、甲4に添付された写真から見てとることのできる「キヤノン向けヒンジ」の構成は次のとおりである(以下「引用発明1」という。)。
「a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、
b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)と、
c 前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、
d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、
e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、
f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に設けた湾曲溝(54)と、
g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、
h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、
i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり、
j’ 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部に続く部位(35)とを有するものとし、
k 前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の逆傾斜部に続く部位(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した
l 原稿圧着板開閉装置。」

(ウ)検証結果及び甲4に添付された写真から確認できなかった事項
甲4に記載された、事実実験で確認された「キヤノン向けヒンジ」の構成において、検証では確認されず、また、甲4に添付された写真からも見てとることができない「キヤノン向けヒンジ」の構成は次のとおりである。
a 「f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝(54)と」(上記「ア」)の構成のうち、「湾曲溝(54)」が「作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた」ものである点。
b 「j’ 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし」(上記「ア」)の構成のうち、「逆傾斜部に続いて設けられた凹部(35)とを有する」点。
c 「k 前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」(上記「ア」)との構成のうち、「第2スライダー(32)」が、「第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」ところが「第2スライダー部の凹部(35)」である点。

2 リコー向けヒンジとして公然実施された発明について
(1)請求人の主張する「リコー向けヒンジとして公然実施された発明」の趣旨
ア 審理事項通知(1)の「2」「(1)」「ウ」で、請求人に対して次の点について釈明を求めた。
「請求人の主張における・・・『リコー向けヒンジ』が次のいずれの趣旨であるのか明らかにして下さい。・・・
(イ)リコー向けヒンジについて
(a)株式会社リコーが販売した『imagio Neo 751』全般か、それとも
(b)甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体か。」

イ 審理事項通知(1)の上記アの点に対して、請求人は、請求人要領書(1)「6」「(1)」「ウ.」「(イ)」(同4頁18?23行)において、次のとおり釈明した。
「請求人は、『(1)(丸付き数字の1)リコー製複合機imagio Neo 751全般の販売、(2)(丸付き数字の2)甲4のリコー向けヒンジ(甲4でいう『本件第1ヒンジ』)が搭載されていたimagio Neo 751の個体の販売、(3)(丸付き数字の3)甲11のimagio Neo 751の個体(甲22のimagio Neo 751と同一の個体)の販売、のいずれもが、審判請求書で特定した『リコー向けヒンジ』の構成を有する発明の、本件特許の出願前における公然実施に該当する』と主張するものです。」(上記「第5」「1」「(3)」「ウ」)
したがって、以下本審決では、請求人の主張する「株式会社リコー製imagio Neo 751に取り付けられたヒンジとして公然実施された発明」の趣旨は、次の両方であるとして検討する。
(a)株式会社リコーが販売した「imagio Neo 751」全般を意味する「株式会社リコー製imagio Neo 751」に取り付けられるADFに取り付けられたヒンジとして公然実施された発明
(b)甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体に取り付けられたヒンジとして公然実施された発明

(2)リコー向けヒンジが公然実施されたものであることについて
ア 「リコー向けヒンジ」が「公然実施」されたものであること
(ア)請求人は、「リコー向けヒンジ」が「公然実施」されたものであることについて、審判請求書「7」「(4)」「イ」「(イ)」「a」「(a)」(同14頁26行?15頁3行)で、「imagio Neo 751も、上記iR2200と同様、オフィス向けに広く販売されている民生品であり、その販売は不特定多数向けである。また、本件リコー向けヒンジは、後述の事実実験(甲4)からも明らかな通り、外観上ないし分解することによってその構造を知ることができるものである。したがって、本件リコー向けヒンジは、imagio Neo 751が販売された2003年(平成15年)2月3日には、公然と実施されていたことが明らかである。」(上記「第5」「1」「(1)」「キ」)と主張する。

(イ)被請求人は、「リコー向けヒンジ」が「公然実施」されたものであることについて、被請求人回答書(1)「4.」「(1)」(同7頁7?16行)で、「(1)申請人が公然実施品として、書証を提出したキヤノン向けヒンジとリコー向けヒンジについて、仮にこれらのものが227号特許の出願前に市場において販売され複写機に取り付けられていたとしても、227号特許の構成要件のJやKを確認することは容易ではありません。と言いますのは、ここの部分は甲第4号証を見てみましてもわかりますように、ヒンジを専用の工具を用いて壊して分解してみないと確認できないことと、分解したヒンジはもう使い物になりません。また、ヒンジ単体だけで流通しているものでもありません。少なくともADFと一体で購入することを要します。通常そのようなことをわざわざする人が存在するとは思えません。よって、本件事案の場合、公然実施されたことにはならないと思料いたします。」(上記「第5」「2」「(2)」「エ」)と主張する。

(ウ)上記(イ)に関して、当審が、審理事項通知(1)において、「被請求人回答書【回答の内容】「4」「(1)」(7頁17行?8頁4行)の主張について・・・しかしながら、壊して分解することはリバースエンジニアリングとして周知の事項であり、販売され壊して分解し得る状態におかれているものであれば、公然実施されていたものと認められます。」(審理事項通知(1)「2」「(2)」「エ」「(イ)」)として釈明を求めたが、釈明はなかった。

(エ)したがって、「リコー向けヒンジ」は、リコー製複合機imagio Neo 751の販売により、公然と実施されていた発明であると認められる。

イ リコー製複合機imagio Neo 751の販売日
(ア)甲5に記載された事項
a 甲5は、請求人代理人が平成28年11月30日に作成した、2002年12月3日付けの「ニュースリリース」である、「エネルギー消費効率を低減した高速デジタル融合機 『imagio Neo 751/601シリーズ』を新発売」と題するリコー社のウェブページを印刷したものである。
b 甲5には、次の記載がある。
「RICOH」
「ニュースリリース」
「エネルギー消費効率を低減した高速デジタル融合機 『imagio Neo 751/601シリーズ』を新発売」
「2002年12月3日」
「株式会社リコー」
「株式会社リコー(社長:桜井正光)は、高速デジタル複合機の新製品として、エネルギー消費効率を低減した『imagio Neo 751シリーズ』(毎分75枚機)3機種、『imagio Neo 601シリーズ』(毎分60枚機)2機種のあわせて5機種を開発し、2003年2月3日に新発売いたします。月販台数は5機種あわせて2,000台を予定しております。」
c 上記bによれば甲5には、次の事項が記載されていると認められる。
「株式会社リコー製複合機imagio Neo 751は、2003年2月3日に新発売が予定されていたこと。」(以下「甲5記載事項」という。)

(イ)甲6に記載された事項
a 甲6は、「RICOH」「アニュアルレポート2003」「2003年3月期」と題する」と題するインターネットウェブ上の文書(甲23(上記「第7」「1」「(2)」「イ」「(キ)」)参照)を請求人代理人が印刷したものである。
b 甲6の14頁左欄11?14行には、次の記載がある。
「また高速デジタル複合機のimagio Neo 751/601(海外名称:Aficio 1075と1060)シリーズも好評を博しました。」
c 上記bによれば甲6には、次の事項が記載されていると認められる。
「株式会社リコー製複合機imagio Neo 751は、2003年3月31日以前に日本国内はもとより海外においても販売されていたこと。」(以下「甲6記載事項」という。)

(ウ)請求人の主張
請求人は、リコー製複合機imagio Neo 751の販売日に関して、審判請求書「7」「(4)」「イ」「(イ)」「a.」「(a)」(同14頁18行?15頁3行。上記「第5」「1」「(1)」「キ」)のとおり主張する。

ウ リコー製複合機imagio Neo 751の販売終了日
(ア)甲7に記載された事項
a 甲7は、請求人代理人が、リコーテクニカルコールセンターに「Neo 601、Neo 751シリーズの生産終了/販売終了時期はいつでしょうか?本体から取り外されたADFのみからそれがリコー社製複写機用のADFか否か、どの複写機用のADFかはわかりますか?わかる場合、どこをみればわかりますか?」と問い合わせたことに対する、リコーテクニカルコールセンターの上杉陽祐氏からの平成28年12月27日付け返信メールを印刷したものである。
(b)甲7には、次の記載がある。
「リコーテクニカルコールセンター
担当:上杉陽祐様・・・
追加で質問です。
Neo 601、Neo 751シリーズの生産終了/販売終了時期はいつでしょうか?
本体から取り外されたADFのみからそれがリコー社製複写機用のADFか否か、
どの複写機用のADFかはわかりますか?
わかる場合、どこをみればわかりますか?
よろしくお願いいたします。

創英国際特許法律事務所
法務
鯵坂和浩」
「創英国際特許法律事務所
法務
鯵坂和浩様
リコーテクニカルコールセンターの上杉陽祐でございます。
ご連絡いただき、ありがとうございます。
早速でございますが、お問い合わせいただいた件につきましてご案内申し上げます。
Neo 601、Neo 751シリーズの場合、その後継機であるNeo 602、Neo 752シリーズが発売された2004年02月06日時点で生産を終了しておりますが、販売終了時期につきましては、販売会社の在庫状況によって前後するため、当センターから正確な時期をご案内することは困難でございます。
また、Neo 601、Neo 751シリーズ等は、ADFが本体標準搭載の機種になっております、したがいまして本体の一部であるため、ADF単体での管理は行っておりません。
ADFがオプション扱いの機種の場合は、ADF側の製造機番、シリアルNoにて、本体同様に管理を行っております。
なお、ADFの状態にもよりますが、実物を、普段メンテナンスを行っているエンジニアが確認すれば、それがリコー製の複写機で使用するものかどうか判別できる可能性はございます。」
(c)上記(b)によれば甲7から、次の事項が認められる。
「平成16年2月6日にimagio Neo 751の後継機であるimagio Neo 752シリーズが発売されており、この時点には、imagio Neo 751の生産が終了していたこと。」「販売会社の在庫状況によって前後するため、正確な販売終了時期を特定することは困難であること。」(以下「甲7記載事項」という。)

(イ)請求人の主張
請求人は、リコー製複合機imagio Neo 751の販売終了日に関して、審判請求書「7」「(4)」「イ」「(イ)」「a.」「(a)」(同15頁3?6行。上記「第5」「1」「(1)」「キ」)のとおり主張する。

(ウ)請求人の釈明
a 請求人の主張する「リコー製複合機imagio Neo 751の販売終了日」に関して、審尋(1)の「第1」「5」で、請求人に対して次の点について釈明を求めた。
「(1)甲7には、『Neo 601、Neo 751シリーズの場合、その後継機であるNeo 602、Neo 752シリーズが発売された2004年02月06日時点で生産を終了しておりますが、販売終了時期につきましては、販売会社の在庫状況によって前後するため、当センターから正確な時期をご案内することは困難でございます。』(甲7 本文 5?9行)と記載されている。
(2)上記記載からは、株式会社リコー製imagio Neo 751が2004年2月6日時点で生産を終了したことは読み取れるが、株式会社リコー製imagio Neo 751の販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたことまでは明らかではない。
(3)甲7が『リコー向けヒンジを用いた複合機の生産終了時期』を立証する証拠(証拠説明書 2頁 『4 証拠の説明』欄)と、株式会社リコー製imagio Neo 751の販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたこととの関係について明らかにせよ。」

b 上記審尋に対して、請求人には、請求人回答書(1)「6 回答の内容」「7 『5 甲7について』」(同9頁12?15行)において、次のとおり釈明した。
「甲第7号証は、リコー製imagio Neo 751の生産終了時期を明らかにすることにより、販売時期、すなわち同機種が公然と実施された時期を推認し、本件両特許の原出願日より前に公然と実施されていたことを立証しようとするものである。」(上記「第5」「1」「(2)」「コ」)

c また、請求人陳述要領書(1)「6 陳述の要領」「(1)審判官合議体からの照会事項について」「イ. 『2(1)イ 無効理由1について』について」「(イ)リコー向けヒンジについて」(請求人要領書(1)4頁18行?5頁15行 上記「第5」「1」「(3)」「ウ」)のとおり釈明する。

エ 小括
(ア)甲5記載事項(上記「イ」「(ア)」)及び甲6記載事項(上記「イ」「(イ)」)から、リコー製複合機imagio Neo 751は、「2003年2月3日に販売が開始されたこと」(甲5記載事項)及び「2003年3月31日以前に日本国内はもとより海外においても販売されていたこと」(甲6記載事項)が認められる。
したがって、甲5記載事項及び甲6記載事項から、リコー製複合機imagio Neo 751は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に販売されていたことが明らかである。

(イ)そして、上記アで検討したとおり、「リコー向けヒンジ」は、リコー製複合機imagio Neo 751の販売により、公然と実施されていた発明と認められ、かつ、上記(ア)で検討したとおり、リコー製複合機imagio Neo 751が、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に販売されていたことが明らかであるから、「リコー製複合機imagio Neo 751」に取り付けられたヒンジとして公然実施された発明としての「リコー向けヒンジ」は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に公然実施されていた発明であると認められる。

(ウ)しかしながら、請求人の主張(上記「ウ」「(イ)」)及び請求人の釈明(上記「ウ」「(ウ)」)を踏まえても、甲7が、リコー製複合機imagio Neo 751が、当該各ウェブページ上の当該頁には掲載されていない、ということ以上の、リコー製複合機imagio Neo 751の販売が本件特許の原出願日である2004年6月24日以前に終了していたことを示す証拠とはいえない。
よって、甲5記載事項ないし甲7記載事項から、「株式会社リコーが販売した『imagio Neo 751』全般」(上記(1))としてのリコー製複合機imagio Neo 751は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前の2003年2月3日に新発売が予定されていたが、その販売終了日は明らかではないと認められる。

(3)甲4で事実実験が行われたADF(以下「本件ADF」という。)
ア 「本件ADF」に関して甲4に記載された事項
甲4は、公証人北原一夫が平成28年11月29日に作成した、平成28年10月26日に行われた事実実験に関する「平成28年0148号事実実験公正証書」である。
甲4には「本件ADF」に関して、次の記載がある。
「実験の対象となるADFは、これをこれを取り付けた複合機を所有していた業者からADFのみ取り外して送付を受け、受領した未開封の状態で保管してある」(21頁20行?22頁3行)
「ADFの銘板には、部品型番「B477」、シリアル番号「3110743」との記載があった(写真7-2)。」(22頁9?11行)

イ 「本件ADF」の発売日
上記(2)で検討したとおり、リコー製複合機imagio Neo 751は、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前の2003年2月3日に新発売が予定されていたが、その販売終了日は明らかでないところ、「甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体(上記(1)参照)としての、甲4で事実実験が行われた「本件ADF」の発売日は明らかではない。

(4)本件ADFが「株式会社リコーが販売した『imagio Neo 751』」に搭載されていたこと
ア 甲8ないし11の記載事項
(ア)甲8に記載された事項
a 甲8は、請求人代理人が平成28年12月21日に、「2003年10月11日」の「リコーエレメックス 企業紹介 事業紹介」「リコーエレメックス株式会社」「情報機器事業」と題するリコーエレメックス社のウェブページを印刷したものである。
b 甲8には、次の記載がある。
「リコーエレメックス 企業紹介 事業紹介」
「2003年10月11日」
「リコーエレメックス株式会社」
「情報機器事業」
「先進テクノロジーで高度情報化社会の未来を拓く
グローバル・テクノロジーで、一歩前へ。より効率が高く、敏速でむだのないドキュメント(文書・書類)づくりのシステムが求められている現代のビジネス環境。ドキュメント改革をめざすオフィスのニーズに応えるOA機器群、情報機器群を、リコーエレメックスは「高感度・高品質主義」の製品テーマとともに用意しています。ジアソ式コピー機、PPC周辺機器をはじめ、イメージスキャナー、ファクシミリ暗号化アダプター、電子黒板「リコピーボード」や、オーバーヘッド・プロジェクターなど先端技術を駆使した情報機器のレパートリーも充実。」
「ドキュメントフィーダー」
c 上記bによれば甲8には、次の事項が記載されていると認められる。
「リコー株式会社の子会社であるリコーエレメックス株式会社はPPC周辺機器の1つとしてドキュメントフィーダーを供給していること。」(以下「甲8記載事項」という。)

(イ)甲9に記載された事項
a 甲9は、請求人代理人が、リコーエレメックス株式会社に「ADF」の「シリアル番号が『31107XX』ですと、2003年11月の製品という理解でよろしいのでしょうか?」と問い合わせたことに対する、リコーエレメックス株式会社の岩田敏幸氏からの平成29年1月13日付け返信メールを印刷したものである。
b 甲9には、次の記載がある。
「鰺坂 和浩・・・
先日のADFですが、Imageo Neo 751ごろのものと思われます。
シリアル番号が『31107XX』ですと、2003年11月の製品という理解でよろしいのでしょうか?」
「鰺坂 和浩様・・・
お問合わせの内容につきまして回答させていただきます。
鯵坂様のご推察通り、『2003年11月生産機』でございます。」
c 上記bによれば甲9には、次の事項が記載されていると認められる。
「リコーエレメックス株式会社のADFのシリアル番号『31107XX』は、2003年11月製造であることを意味する。」(以下「甲9記載事項」という。)

(ウ)甲10に記載された事項
a 甲10は、「Gestetner LANIER RICOH SAVIN」(登録商標を意味する丸付きRは省略) B064/B065 PARTS CATALOG RICOH GROUP COMPANIES 001361MIU」と題するインターネットウェブ上のリコー株式会社発行のカタログ(甲23(上記「第7」「1」「(2)」「イ」「(キ)」)参照)を請求人代理人が印刷したものである。
b 甲10には、次の記載がある。
(b-1)甲10の「LEGEND」の項(頁数不明)には、次の記載がある。
「PRODUCT CODE B064・・・COMPANY RICOH Aficio 1060」
「PRODUCT CODE B065・・・COMPANY RICOH Aficio 1075」
(b-2)甲10の「DOCUMENTATION HISTORY」の項(頁数不明)には、次の記載がある。
「REV.NO. * DATE 6/2002 COMMENTS Original Printing」
「REV.NO.1 DATE 11/2002 COMMENTS Addition of B478,B513,B531」
(b-3)甲10の20頁には、次の記載がある。
「4.DF EXTERIOR(B064/B065)」


「B064/B065」
「Parts Location and List」
(b-4)甲10の24頁には、次の記載がある。
「6.DF ORIGINAL FEED 2(B064/B065)」

「B064/B065」
「Parts Location and List」
(b-5)甲10の28頁には、次の記載がある。
「8.DF ORIGINAL TRANSFER 2(B064/B065)」

「B064/B065」
「Parts Location and List」
(b-6)甲10の32頁には、次の記載がある。
「10.DF ORIGINAL TRANSFER 4(B064/B065)」

「B064/B065」
「Parts Location and List」
(b-7)甲10の40ないし41頁には、次の記載がある。
「14.DF FRAME SECTION(B064/B065)」

「B064/B065」
「Parts Location and List」


c 上記bによれば甲10には、次の事項が記載されていると認められる。
「リコー株式会社発行のAficio 1075/1060等向け部品カタログ『B064/B065部品カタログ』2002年11月改定)には、ドキュメントフィーダ(DF)部分を構成する部品には、『B477XXXX』のように先頭4桁が『B477』で、続く4桁が部品ごとに異なる部品番号が付されていること。」(以下「甲10記載事項」という。)

(エ)甲11に記載された事項
a 甲11は、平成29年3月23日に行われた事実実験に関する公証人北原一夫が平成29年3月27日に作成した「平成29年0042号事実実験公正証書」である。
b 甲11には「3 事実実験の結果」として、次の記載がある。
「(1) 複合機の確認
本職は、嘱託人の案内で、X社事務所を訪れ、同所において使用されている株式会社リコー製複合機imagio Neo 751(以下、『本複合機』という。)を確認した。・・・
嘱託人は、写真1ないし6と実物とを対比することにより、本複合機の現状を下記のとおりであると説明した。・・・
嘱託人は、本複合機の正面には、写真1に示すとおり、『RICOH imagio Neo 751』との型番が記された銘板が付されていること、写真2に示すとおり、その側面部分に『imagio Neo 751』の機種名ととともに機種コ-ド『B111-00』と製造機番『3A07-1112XX』(末尾二桁を伏せ字XXで示す。)が記されたステッカーが付されていること、その原稿台上に設置されたADF(自動原稿送り装置)部分を開いた箇所には、写真3に示すとおり、ADFの部品番号『PARTS N0. B477』と、シリアル番号『SERIAL N0. 30706XX』(末尾二桁を伏せ字XXで示す。)が記載されたステッカーが付されていること、ADFの左側には、写真4ないし6に示されるとおりの構成のヒンジが取り付けられていることを説明した。
嘱託人の説明を受けて、本職が確認したところ、本複合機には、各写真と一致する銘板、ステッカーが付されており、ヒンジの状況も写真と一致していた。本職は、ADF、複写機本体の状況を確認したところ、外観上特に異常は見受けられなかった。また、ヒンジやADFには、埃、油等が多数付着しており、その付着状況から長期間に渡って本複合機に取り付けられたまま使用しているものと見られるなど、外観上、本実験以前に、取り外しや再組み立てをしたことを伺わせる形跡は認められなかった。・・・
嘱託人は、本職の面前で、写真2、3に写っている各シリアル番号の末尾2桁部分を黒マジックでマスキングした。本職は、マスキングされた後の写真2、3を含む写真1ないし6を本証書末尾に添付することとした。・・・
(2) 修理履歴文書の確認
本職は、嘱託人が当該複合機のメンテナンスを請け負っているY社の担当者から提供を受けた修理履歴文書等の原本を確認するとともに、同担当者から当該文書等の作成状況等について説明を受けた。・・・
確認の対象となった書面は、以下のとおりである。
(1)(丸付き数字の1)『お礼とご案内』(以下、『書面1』という。)
(2)(丸付き数字の2)修理履歴情報(以下、『書面2』という。)
Y社担当者は、各書面について、以下のとおり、述べた。・・・
書面1は、Y社が株式会社リコーの代理人として、X社に交付した書面であり、2013年に『imagio Neo 751』の製造終了後7年以上経過し、保守部品の提供が困難となると見込まれることから、顧客に対し、その保守の提供方法を変更する旨、通知し確認を求める文書である。・・・
書面2は、本複合機の全ての修理履歴をその交換部品とともに記載した書面である。書面2は、株式会社リコーの管理する保守データベースから、本複合機の納入日以降2016年12月末までの修理履歴情報全てを出力したものである。・・・
嘱託人らは、書面1には、X社の社名が宛先として記載されており、(1)で確認した本複合機の機種名、機番が記載されており、その納人日として『2003年8月29日』との記載があること、書面2は、(1)で確認した本複合機の機種名、機番が記載されており、納入日以降、2016年12月末に至るまで、ADF本体、ヒンジの交換に該当する修理履歴は記載されていないこと、2017年にも、ADF本体、ヒンジの交換に該当する修理は行われていないことを説明した。・・・
本職が、各書面を確認したところ、各書面の記載、及びその作成状況には、嘱託人らの説明に相違する点は見受けられなかった。また、(1)で述べたヒンジ、ADFの外観の状況と相違する点も見受けられなかった。
また、書面2には、本複合機について、X社に2003年8月29日に納品された後、2016年12月末までの保守作業、部品交換履歴であることに聞違いない旨の記載と、株式会社Y社の担当部署の記名・押印が付されていた。・・・
嘱託人は、本職の面前で、書面1、2のX社、Y社を特定可能な記載部分と、本複合機の機番の末尾二桁部分を黒マジックでマスキングした。本職は、マスキングされた後の書面1、2にそれぞれ『書面1』、『書面2』と記載したうえ、本証書に添付することとした。」(3頁12行?7頁11行)
c 上記b によれば甲11には、次の事項が記載されていると認められる。
「『RICOH imagio Neo 751』との型番が記された銘板が付され、その側面部分に『imagio Neo 751』の機種名ととともに機種コ-ド『B111-00』と製造機番『3A07-1112XX』が記されたステッカーが付されている複合機の原稿台上に設置されたADF(自動原稿送り装置)部分を開いた箇所には、ADFの部品番号『PARTS N0. B477』と、シリアル番号『SERIAL N0. 30706XX』が記載されたステッカーが付され、ADFの左側には、ヒンジが取り付けられていること。」(以下「甲11記載事項」という。)

(オ)甲22に記載された事項
a 甲22は、平成29年9月14日及び同年同月18日に行われた事実実験に関する公証人北原一夫が平成29年10月6日に作成した「平成29年0148号事実実験公正証書」である。
b 甲22には「第2」「2」「【2】」「(2)」として、次の記載がある。
「代理人らは、本件リコー複合機の正面には、『RICOH imagio Neo 751』との型番が記された銘板が付されていること(写真1-2)、その側面部分に『imagio Neo 751』の機種名ととともに機種コード『B111-00』と製造機番『3A07-1112XX』(末尾二桁を伏せ字XXで示す。)が記されたステッカーが付されていること(写真1-3)、その原稿台上に設置されたADF(自動扇高送り装置)部分を開いた箇所には、ADFの部品番号『PARTS NO.B477』と、シリアル番号『SERIAL NO. 30706XX』(末尾二桁を伏せ字XXで示す。)が記載されたステッカーが付されていること(写真1-4)、ADFの左側には、ヒンジが取り付けられていることを説明した(写真1-5)。代理人らの説明を受けて、本職が確認したところ、代理人らの説明と相違する点はなかった。」
(c)上記(b)によれば甲22には、次の事項が記載されていると認められる。
「『RICOH imagio Neo 751』との型番が記された銘板が付され、その側面部分に『imagio Neo 751』の機種名ととともに機種コード『B111-00』と製造機番『3A07-1112XX』が記されたステッカーが付されている複合機の原稿台上に設置されたADF部分を開いた箇所には、ADFの部品番号『PARTS NO.B477』と、シリアル番号『SERIAL NO. 30706XX』が記載されたステッカーが付され、ADFの左側には、ヒンジが取り付けられていること。」(以下「甲22記載事項」という。)

イ 請求人の主張
請求人は、本件ADFが「株式会社リコーが販売した『imagio Neo 751』」に搭載されていたことについて次のとおり主張する。
(ア)審判請求書「7」「(4)」「イ」「(イ)」「a.」「(b)」及び「(c)」(同15頁7行?18頁下から4行:上記「第5」「1」「(1)」「キ」)
(イ)請求人回答書(1)「6 回答の内容」「5 『4 甲4について(1)』について」(同6頁19行?8頁12行:上記「第5」「1」「(2)」「カ」及び「キ」)
(ウ)請求人回答書(1)「6 回答の内容」「6 『4 甲4について』の(2)について」(同8頁14行?9頁10行):上記「第5」「1」「(2)」「ク」及び「ケ」)
(エ)請求人回答書(1)「6 回答の内容」「7 『5 甲7について』について」(同9頁11?27行):上記「第5」「1」「(2)」「コ」)
(オ)請求人確認事項書「6 回答内容」「(4)2について」「イ 本件リコー向けヒンジについて」(同3頁下から3行?4頁10行:上記「第5」「1」「(4)」「オ」)

ウ 小括
(ア)上記アによれば、次のことがいえる。
a 「甲4の事実実験において実験対象としたADF」の銘板には、下記甲4の写真7-2に見られるとおり、のとおり、部品型番(PARTS NO.)「B477」、シリアル番号(SERIAL NO.)「3110743」と記載されている。

(甲4:写真7-2)
b 「リコー株式会社の子会社であるリコーエレメックス株式会社はPPC周辺機器の1つとしてドキュメントフィーダーを供給している」(甲8記載事項)ところ、「リコーエレメックス株式会社のADFのシリアル番号『31107XX』は、2003年11月製造であることを意味する」(甲9記載事項)とともに、「リコー株式会社発行のAficio 1075/1060等向け部品カタログ『B064/B065部品カタログ』2002年11月改定)には、ドキュメントフィーダ(DF)部分を構成する部品には、『B477XXXX』のように先頭4桁が『B477』で、続く4桁が部品ごとに異なる部品番号が付されている。」(甲10記載事項)
c 「『RICOH imagio Neo 751』との型番が記された銘板が付され、その側面部分に『imagio Neo 751』の機種名ととともに機種コ-ド『B111-00』と製造機番『3A07-1112XX』が記されたステッカーが付されている複合機の原稿台上に設置されたADF(自動原稿送り装置)部分を開いた箇所には、下記甲11の写真3に見られるとおり、ADFの部品番号『PARTS NO.B477』と、シリアル番号『SERIAL N0.30706XX』が記載されたステッカーが付され、ADFの左側には、ヒンジが取り付けられている。」(甲11記載事項)

(甲11:写真3)
d 「『RICOH imagio Neo 751』との型番が記された銘板が付され、その側面部分に『imagio Neo 751』の機種名ととともに機種コード『B111-00』と製造機番『3A07-1112XX』が記されたステッカーが付されている複合機の原稿台上に設置されたADF部分を開いた箇所には、下記甲22の写真1-4に見られるとおり、ADFの部品番号『PARTS NO.B477』と、シリアル番号『SERIAL NO.30706XX』が記載されたステッカーが付され、ADFの左側には、ヒンジが取り付けられている。」(甲22記載事項)

(甲22:写真1-4)

(イ)甲4の本件ADF(上記「(ア)」「a」)、甲11のADF(上記「(ア)」「c」)及び甲22のADF(上記「(ア)」「d」)の対比
a 甲11のADF(上記「(ア)」「c」)及び甲22のADF(上記「(ア)」「d」)は、いずれも、「RICOH imagio Neo 751」との型番が記された銘板が付され、その側面部分に「imagio Neo 751」の機種名ととともに機種コ-ド「B111-00」と製造機番「3A07-1112XX」が記されたステッカーが付されている複合機の原稿台上に設置されたADF(自動原稿送り装置)部分を開いた箇所には、ADFの部品番号『PARTS NO.B477』と、シリアル番号『SERIAL N0.30706XX』が記載されたステッカーが付され、ADFの左側には、ヒンジが取り付けられている点で一致している。したがって、甲11のRICOH imagio Neo 751に搭載されたADFと甲22のRICOH imagio Neo 751に搭載されたADFは同じRICOH imagio Neo 751シリーズであって同じ構成を有すると推認される。
また、甲4の本件ADF(上記「(ア)」「a」)と、甲11のADF及び甲22のADFを対比すると、ADFの部品番号のステッカーはいずれも「PARTS NO.B477」で一致するとともに、シリアル番号「SERIAL NO.」が記載されたステッカーも同種のものであると認められる。

(ウ)以上(ア)及び(イ)によれば、甲4の本件ADF、甲11のADF及び甲22のADFは同じ種類のADFであると推認される。
また、後記「(6)」「カ」で検討するように検証の結果「検証の対象となった検甲第1号証(甲4に記載された事実実験で確認されたとする『リコー向けヒンジ』)と、検証の対象となった検甲第3号証(甲22に記載された事実実験で確認されたとする『本件リコーヒンジ』)が同じ構造を有していることが確認されたことから、甲4の本件ADFに取り付けられた「リコー向けヒンジ」と、甲22のADFに取り付けられた「本件リコーヒンジ」は同じ構造を有しているヒンジであることが確認された。
ここで、甲4の本件ADFは個体としては、RICOH imagio Neo 751に搭載されていたか否か確認できない。
しかしながら、RICOH imagio Neo 751シリーズ(全般)に搭載されていたADFと同じものであって、甲4の本件ADFについて事実実験を行うことは、そこで使用されているヒンジ及び当該ヒンジに関わる部品が交換されない限りにおいて、株式会社リコーが販売した「imagio Neo 751」全般のADFについて事実実験を行うことに相当する。
したがって、「甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体」(上記(1)参照)としての株式会社リコーが販売した「imagio Neo 751」に使用されているとされるADFについて事実実験を行うことは、そこで使用されているヒンジ及び当該ヒンジに関わる部品が交換されていない限り、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前の2003年に販売され、公然実施されていた、「株式会社リコーが販売した『imagio Neo 751』全般」(上記(1)参照)としての株式会社リコーが販売した「imagio Neo 751」のADFに用いられいたヒンジについて事実実験を行うことに相当する。

(5)甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体である「本件ADF」に用いられていた「リコー向けヒンジ」(甲4における「本件第1ヒンジ」。)の部品交換の有無
ア 甲4には、「本件ADF」及び「リコー向けヒンジ」の部品交換の有無について、次の記載がある。
(ア)「代理人らは、実験の対象となるADFは、これをこれを取り付けた複合機を所有していた業者からADFのみ取り外して送付を受け、受領した末開封の状態で保管してある旨述べた。写真7-1は、本職の面前で梱包を開封した際、梱包中に収納されている模様を撮影した写真である。」(21頁20行?22頁5行)

(イ)「また、当該ADFに取り付けられている第1ヒンジの複合機側の固定部分(底板)の表面のほこり等の付着状況、ネジ跡の状態から当該第1ヒンジは、取り付けられていた複合機以外に取り付けられた形跡は見られない旨説明した(写真7-3、4)。本職は、当該ADF、第1ヒンジの外観を確認したが、説明と相違する部分は見出せなかった。」(22頁14行?23頁1行)

(ウ)「代理人らは、搬送ガイド板取り外し後のステ-にはほこり等が多数付着し、搬送ガイド板取り付け部分とは色も異なっており、ガイド板が取り外された形跡は見られない旨述べたが、本職も確認したところ、その説明通り、ほこりの付着状況や変包状況から、ガイド板が本件実験前に取り外されて再組み立てがなされた形跡は皆無であった(写真8-16ないし18)。」(23頁13?20行)

(エ)「代理人らは、取り付けネジ付近についても変色跡、ネジ跡から、ステーが交換された形跡が見られない旨述べた。本職も確認したところ、説明通り、変色跡、ネジ跡が輪状の跡が1か所あるだけで、ずれた複数の輪状の跡は認められず、本件実験前にネジを一度取り外して再度取り付けるなどの取り替えの形跡は皆無であった(写真8-19ないし24)。」(24頁4?11行)

(オ)「代理人らは、抜き取ったステーの変色跡、ほこりの付着状況、ネジ跡から、当該ステーが交換された形跡は見受けられない旨述べたが、本職も確認したところ、説明通り、変色跡、ほこりの付着状況、ネジ跡等が境界線が一本のみ明瞭に残った状態であることが明らかで、本件実験前に当該ステーが交換されて再組み立てされた形跡は皆無であった(写真8-36、37)。」(24頁15行?25頁2行)

イ 上記アに関しては、「キヤノン向けヒンジ」に関して「第7」「1」「(3)」「イ」で検討した理由と同様の理由により、「本件ADF」において「リコー向けヒンジ」が交換されたことを伺わせる証拠はないから、「本件ADF」は、販売日以来事実実験の日まで、ADF及び「リコー向けヒンジ」に関して、ヒンジ及びヒンジに関わる部品が交換されておらず、「本件ADF」には発売当初の「リコー向けヒンジ」が搭載されていたものと推認される。
したがって、上記(4)での検討を踏まえると、「本件ADF」において「リコー向けヒンジ」について事実実験を行うことは、本件特許の分割基礎となる出願の出願日である2004年6月24日より前に販売されていたリコー製複合機imagio Neo 751の「ヒンジ」の構成を確認することであると認められる。

(6)「リコー向けヒンジ」の構成、検証結果及び本件発明1
ア 甲4に記載された、事実実験で確認された「リコー向けヒンジ」の構成
「a.事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、
b.上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)と、
c.前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、
d.前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、
e.前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、
f’.前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲穴(54)と、
g.一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、
h.その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、
i.前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とから成り、
j.前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし、
k.前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)を収容させるように成した
l.ことを特徴とする原稿圧着板開閉装置」(28頁19行?31頁2行)
(なお、「l」の構成は「原稿圧着板開閉装置」である)

イ 被請求人の主張
被請求人は、上記アに関して、次のように主張する。
(ア)被請求人要領書(1)「6.」「(4)」(同3頁18?24行)において
「甲22については、そこに添付された写真5-4と5-8に示されているように、受け部が取付部材の両側板の外側へ折り曲げられています。これに対し本件特許権のものは、その特許公報の図8に示されていますように、受け部72、72が取付部材4の両側板42、42の内側へ折り曲げられています。したがいまして、この甲22をもってする請求人の主張については争います。」(上記「第5」「2」「(3)」「エ」)

(イ)被請求人要領書(1)「6.」「(6)」(同4頁7?23行)において
「通知書の第6ページのエの項につきましては、以下の通りであります。
即ち、請求人は、甲4で事実実験をしたキヤノン製のiR2200型機とリコ製のimagio NEO 751型機の各個体に搭載されていたヒンジが本件特許の原出願の出願日以前に公然と実施されていたことを証明しようとしています。しかしながら、請求人は各個体の全部について本件ヒンジが搭載されていたとする立証は致しておりません。そうであるとすると、通知書の第3ページにも記載されておりますように、請求人は前記各個体が本件特許の原出願の前に販売されたものであることの立証をしなくてはならないものと考えます。しかしながら、請求人は各個体の持ち主は誰であったのか、何時販売されたものなのか、を発注書なり納品書や請求書、領収書などを提出せず、未だにその立証をしておりません。甲11と甲22でいう『X社』とはどこにあって、何を業務としている何という会社なのか、前記各書証に添付されている書面2のメンテナンスを請け負っている会社は、どこにある何という会社であるのか、何ら明らかではありません。さらに書面1の「お礼とご案内」は発行日付がありません。その上、書面2はその第2ページを見較べると解りますが、甲11と甲22では一致しておりません。」(上記「第5」「2」「(3)」「オ」)

ウ 検証結果
上記「イ」「(イ)」の被請求人の主張に鑑み、また、被請求人の被請求人要領書「(1)」「6.」「(8)」(上記「第5」「2」「(3)」「キ」)の要請に基づいて、平成30年6月1日に「リコー向けヒンジ」とされる「検甲第1号証」、及び、「本件リコーヒンジ」とされる「検甲第3号証」に関して検証を行った。
その検証結果は第2回口頭審理及び証拠調べ調書(平成30年6月1日期日)の検証調書のとおりである。

エ 検証の対象となった検甲第1号証が、甲4に記載された事実実験で確認されたとする「リコー向けヒンジ」であること
(ア)検甲第1号証の検証結果と、甲4に記載された事実実験で確認されたとする「リコー向けヒンジ」の対比
a 検証により、「検甲第1号証は、検証開始時において、公証人北原一夫の職印により封印された封筒2封(甲第4号証写真12-1、12-2参照)の中に入れられた状態であった。同封筒2封それぞれの表面には、下西技研工業株式会社との社名が印字され、『RICOHimagioNeo751』『2016年10月26日』と手書きの文字が記されている。うち1封には『1/2』が、もう1封には『2/2』がそれぞれ手書きの文字で記されている。また、それぞれの裏面には、『平成28年10月26日』『公証人北原一夫封印』と手書きの文字が記されている(写真I-1、写真I-2)。」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「1」「(1)」)。
そこで、検甲第1号証の検証結果と、甲4に記載された事実実験で確認されたとする「リコー向けヒンジ」を以下の各点で対比する。
公証人北原一夫の職印により封印された2つの封筒の表面における、下西技研工業株式会社との社名の印字、「RICOH imagio Neo 751 1/2」「2016年10月26日」と手書きの文字または「RICOH imagio Neo 751 2/2」「2016年10月26日」と手書きの文字、及び、同裏面における「平成28年10月26日」「公証人北原一夫封印」と手書きの文字

(a)検甲第1号証の検証結果(写真I-1、写真I-2)。

(検甲1:写真I-1)

(検甲1:写真I-2)

(b)甲第4号証(写真12-1、12-2)
(写真については、上記「1」「(5)」「オ」「(ア)」「a」「(b)」参照。)

(c)上記(a)及び(b)は同じ場所に同一の書体で上記の記載を見てとることができるから、両者は同一の封筒であると認められる。

b リフト部材の上板(61)に付されたスタンプの文字
(a)検甲第1号証の検証結果(写真I-10)。

(検甲1:写真I-10)
(b)甲第4号証(写真8-42)

(甲4:写真8-42)

(c)上記(a)及び(b)には、いずれも同じ場所に同じ書体で同一の「B431008」とのスタンプを見てとることができるから、両者は同一の部材であると認められる。

c 同様に、検甲第1号証の検証結果の、取付部材(4)(写真I-7)、底板(41)(写真I-8)、取付部材の側板(42)(写真I-9)、支持部材(5)(写真I-10)、支持部材の上板(51)(写真I-11)、支持部材の側板(52)(写真I-12)、包持片(53)(写真I-13)、湾曲穴(54)(写真I-14)、リフト部材(6)(写真I-15)、リフト部材の上板(61)(写真I-16)、リフト部材の側板(62)(写真I-17)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真I-18)、第2ヒンジピン(12)(写真I-19)、作動ピン(14)(写真I-20)、第1スライダー(31)(写真I-21)、圧縮コイルスプリング(21)(写真I-22)及び第2スライダー(32)(写真I-23)と、甲第4号証の取付部材(4)、底板(41)及び取付部材の側板(42)(写真9-1)、支持部材(5)、支持部材の上板(51)、支持部材の側板(52)、包持片(53)及び湾曲穴(54)(写真9-2、9-3、9-4、9-5、11-1)、リフト部材(6)、リフト部材の上板(61)及びリフト部材の側板(62)(写真9-4、9-5、9-7)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真9-1、9-6、10-8)、第2ヒンジピン(12)及び作動ピン(14)(写真9-7、9-10、11-1)、第1スライダー(31)(写真10-8)、圧縮コイルスプリング(21)(写真10-8)及び第2スライダー(32)(写真10-8、11-2)をそれぞれ対比しても、両者の各部品に異なるところは見いだせないから、両者の各部品も同一の部材であると認められる。

(イ)以上(ア)での検討によれば、検証の対象である検甲第1号証は、甲4に記載された事実実験で確認された「リコー向けヒンジ」であると認められる。

オ 検証の対象となった検甲第3号証が、甲22に記載された事実実験で確認されたとする「本件リコーヒンジ」であること
(ア)検甲第3号証の検証結果と、甲22に記載された事実実験で確認されたとする「本件リコーヒンジ」の対比
a 検証により、「検甲第3号証は、検証開始時において、公証人北原一夫の職印により封印された封筒(甲第22号証写真5-13参照。なお、同写真では裏面のみ撮影されている。)の中に入れられた状態であった。同封等の表面には、下西技研工業株式会社との社名が印字され、『RICOHimagioNeo751 ヒンジ(B430515)』と手書きの文字が記されている。また、裏面には、『平成29年9月18日 午後3時59分 前記ヒンジ在中 封印した。 新橋公証役場公証人北原一夫』と手書きの文字が記されている(写真III-1、写真III-2)。」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第3号証」「1」「(1)」)。
そこで、検甲第3号証の検証結果と、甲22に記載された事実実験で確認されたとする「本件リコーヒンジ」を以下の各点で対比する。
公証人北原一夫の職印により封印された封筒の表面における、下西技研工業株式会社との社名の印字、「RICOH imagio Neo 751 ヒンジ(B430515)」と手書きの文字、及び、同裏面における「平成29年9月18日 午後3字59分 前記ヒンジ在中 新橋公証役場 公証人 北原一夫」と手書きの文字

(a)検甲第3号証の検証結果(写真III-2)。

(検甲3:写真III-2)

(b)甲第22号証(写真5-13)

(甲22:写真5-13)

(c)上記(a)及び(b)は同じ場所に同一の書体で上記の記載を見てとることができるから、両者は同一の封筒であると認められる。

b リフト部材の上板(61)に付されたスタンプの文字
(a)検甲第3号証の検証結果(検甲3:写真III-12)。

(検甲3:写真III-12)

(b)甲第22号証(写真4-3)

(甲22:写真4-3)

(c)上記(a)及び(b)には、いずれも同じ場所に同じ書体で同一の「B430515」とのスタンプを見てとることができるから、両者は同一の部材であると認められる。

c 同様に、検甲第3号証の検証結果の、取付部材(4)(写真III-6)、底板(41)(写真III-7)、取付部材の側板(42)(写真III-8)、支持部材(5)(写真III-9)、支持部材の上板(51)(写真III-10)、支持部材の側板(52)(写真III-11)、包持片(53)(写真III-12)、湾曲穴(54)(写真III-13)、リフト部材(6)(写真III-14)、リフト部材の上板(61)(写真III-15)、リフト部材の側板(62)(写真III-16)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真III-18)、第2ヒンジピン(12)(写真III-18)、作動ピン(14)(写真III-19)、第1スライダー(31)(写真III-20)、圧縮コイルスプリング(21)(写真III-21)及び第2スライダー(32)(写真III-22)と、甲第22号証の取付部材(4)、底板(41)及び取付部材の側板(42)(写真4-4)、支持部材(5)、支持部材の上板(51)、支持部材の側板(52)、包持片(53)及び湾曲穴(54)(写真4-5、4-6、4-9、4-14)、リフト部材(6)、リフト部材の上板(61)及びリフト部材の側板(62)(写真4-5、4-6、4-8)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真4-7、4-11、4-12、4-13)、第2ヒンジピン(12)及び作動ピン(14)(写真4-6、4-9、4-14)、第1スライダー(31)(写真5-6)、圧縮コイルスプリング(21)(写真5-6)及び第2スライダー(32)(写真5-8、5-9)をそれぞれ対比しても、両者の各部品に異なるところは見いだせないから、両者の各部品も同一の部材であると認められる。

(イ)以上(ア)での検討によれば、検証の対象である検甲第3号証は、甲22に記載された事実実験で確認された「本件リコーヒンジ」であると認められる

カ 検証の対象となった検甲第1号証(甲4に記載された事実実験で確認されたとする「リコー向けヒンジ」)と、検証の対象となった検甲第3号証(甲22に記載された事実実験で確認されたとする「本件リコーヒンジ」)が同じ構造を有していること
(ア)検甲第1号証の検証結果の、取付部材(4)(写真I-7)、底板(41)(写真I-8)、取付部材の側板(42)(写真I-9)、支持部材(5)(写真I-10)、支持部材の上板(51)(写真I-11)、支持部材の側板(52)(写真I-12)、包持片(53)(写真I-13)、湾曲穴(54)(写真I-14)、リフト部材(6)(写真I-15)、リフト部材の上板(61)(写真I-16)、リフト部材の側板(62)(写真I-17)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真I-18)、第2ヒンジピン(12)(写真I-19)、作動ピン(14)(写真I-20)、第1スライダー(31)(写真I-21)、圧縮コイルスプリング(21)(写真I-22)及び第2スライダー(32)(写真I-23)と、検甲第3号証の検証結果の、取付部材(4)(写真III-6)、底板(41)(写真III-7)、取付部材の側板(42)(写真III-8)、支持部材(5)(写真III-9)、支持部材の上板(51)(写真III-10)、支持部材の側板(52)(写真III-11)、包持片(53)(写真III-12)、湾曲穴(54)(写真III-13)、リフト部材(6)(写真III-14)、リフト部材の上板(61)(写真III-15)、リフト部材の側板(62)(写真III-16)、第1ヒンジピン(11)及び固定ピン(13)(写真III-18)、第2ヒンジピン(12)(写真III-18)、作動ピン(14)(写真III-19)、第1スライダー(31)(写真III-20)、圧縮コイルスプリング(21)(写真III-21)及び第2スライダー(32)(写真III-22)とをそれぞれ対比しても、両者の各部品に異なるところは見いだせないから、両者の各部品は同じ構造を有していると認められる。

(イ)したがって、検証の対象となった検甲第1号証(甲4に記載された事実実験で確認されたとする「リコー向けヒンジ」)と、検証の対象となった検甲第3号証(甲22に記載された事実実験で確認されたとする「本件リコーヒンジ」)が同じ構造を有していると認められる。

キ 引用発明2
上記アの事実実験(甲4)で確認された「リコー向けヒンジ」の構成(上記「ア」)を、上記ウの検証結果によって確認する。
(ア)「リコー向けヒンジ」の各構成
a 検甲第1号証を検証した結果、「封筒2封の内容物(検甲第1号証)の部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-1に示される『取付部材(4)』がある。この『取付部材(4)』は、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-1に示される『底板(41)』と、この底板の両側より立設させた『側板(42)』(2枚)を有する」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「a.」)。
また、「リコー向けヒンジ」は、「甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体」に取り付けられたヒンジであるところ、上記(4)で検討したとおり、「株式会社リコーが販売した『imagio Neo 751』全般」としての株式会社リコーが販売した「imagio Neo 751」のADFに用いられいたヒンジについて事実実験を行うことに相当する」ところ、ADFは単独で使用するものではなく、何らかの複合機に取り付けられてはじめて機能する部材である。
そうすると、甲11及び甲22に記載されるとおり、「リコー製複合機imagio Neo 751に取り付けられた」ADFであってよく、この場合、当該ADFに用いられてているヒンジは、「リコー製複合機imagio Neo 751に取り付けられたヒンジ」となり、ヒンジの「底板(41)」は事務機器(リコー製複合機imagio Neo 751)の装置本体へ取り付けられることとなる。
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と」(上記「ア」「a」)の構成を有することが確認された。

b 検甲第1号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-2、9-3に示される『支持部材(5)』がある。この『支持部材(5)』は、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-2,9-3に示される『上板(51)』と、この上板の両側の一部より垂設された『側板(52)』(2枚)を有し、これらの側板(2枚)のそれぞれの下端部には、内側へ折り曲げた『包持片(53)』を備え、さらには、これらの側板(52)(2枚)のそれぞれの自由端側に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真11-1に示される『湾曲穴(54)』を有する」(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「b.」)こと、及び、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-6に示される『固定ピン(13)』及び上記の写真9-6に見てとれる『第1ヒンジピン(11)』がある」(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「d.」)ことが確認された。
また、「リコー向けヒンジ」の「支持部材(5)」は、甲4の写真9-8及び9-9から、両側板の抱持片を設けてない部分を取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成ることが見てとれる。

(甲4:写真9-8)

(甲4:写真9-9)
さらに、「リコー向けヒンジ」は、「甲4の事実実験において実験対象としたADFの個体」に取り付けられたヒンジであるところ、上記(4)で検討したとおり、事務機器(リコー製複合機imagio Neo 751)の装置本体へ取り付けられているものであってよいから、この場合は、「リコー向けヒンジ」の「支持部材(5)」は、甲11の写真5及び写真6から、原稿圧着板を支持するものであってよいことが見てとれる。

(甲11:写真5)

(甲11:写真6)
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)と」(上記「ア」「b」)の構成を有するとともに、「f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲穴(54)と」(上記「ア」「f」)の構成のうち、「前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に設けた湾曲した部位(54)と」の構成を有することが確認された。

c 検甲第1号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-4、9-5に示される『リフト部材(6)』がある。この『リフト部材(6)』は、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-4,9-5に示される『上板(61)』と、この上板の両側より垂設された『側板(62)』(2枚)を有する」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「c.」)。
また、「リコー向けヒンジ」の「リフト部材(6)」の「上板(61)」は、上記bで検討したとおり、原稿圧着板を取り付けるものであってよい。
さらに、「リコー向けヒンジ」の「リフト部材(6)」は、甲4の写真9-4及び写真9-9(上記b参照)から、リフト部材(6)の両側板(62)を支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したものであることが見てとれる。
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「c 前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と」(上記「ア」「c」)の構成を有することが確認された。

(甲4:写真9-4)

d 検甲第1号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-6に示される『固定ピン(13)』及び上記の写真9-6に見てとれる『第1ヒンジピン(11)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「d.」)。
ここで、検証調書の写真I-9及びI-18から、固定ピン(13)は取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられたものであることが見てとれる。

(検甲1:写真I-9)

(検甲1:写真I-19)
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と」(上記「ア」「d」)の構成を有することが確認された。

e 検甲第1号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-7に示される『作動ピン(14)』及び上記写真9-7に見てとれる『第2ヒンジピン(12)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「e.」)。
また、「リコー向けヒンジ」の「作動ピン(14)」は、検証調書の写真I-17及びI-20から、リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられたものであることが見てとれる。

(検甲1:写真I-17)

(検甲1:写真I-20)
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と」(上記「ア」「e」)の構成を有することが確認された。

h 検甲第1号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-10に示される『第1スライダー(31)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「h.」)。
また、「リコー向けヒンジ」の「第1スライダー(31)」は、甲4の写真9-10から、その一端部側を作動ピン(14)に当接し、支持部材(5)の両側板(52)の間に抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられたものであることが見てとれる。

(甲4:写真9-10)
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と」(上記「ア」「h」)の構成を有することが確認された。

i 検甲第1号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-11に示される『圧縮コイルスプリング(21)』がある」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「i.」)。
また、「リコー向けヒンジ」の「圧縮コイルスプリング(21)」は、甲4の写真9-2から、第2スライダー(32)と第1スライダー(31)との間に弾設されたものであることが見てとれる。

(甲4:写真9-2)
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とから成り」(上記「ア」「i」)の構成を有することが確認された。

j 検甲第1号証の検証の結果、「部品の中に、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-8、9-9に示される『第2スライダー(32)』がある。この『第2スライダー(32)』は、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真11-2に示されるように『延出片(38)』と、この延出片の基部側から垂設された『傾斜部(34)』と、この傾斜部に続いて設けられた『突部(33)』と、この突部に続いて段差を介して設けられた『突部に続く部位(35)』を有する」ことが確認された(検証調書「第4」「検甲第1号証」「2」「j.」)。
また、「リコー向けヒンジ」の「第2スライダー(32)」は、甲4の写真9-2(上記i参照)、写真9-8(上記b参照)から、一端部側を固定ピン(13)に当接させ支持部材(5)の両側板の間に抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられたものであることが見てとれる。
さらに、上記(4)で検討したとおり、事務機器(リコー製複合機imagio Neo 751)の装置本体へ取り付けられているものであってよいから、「リコー向けヒンジ」の「第2スライダー(32)」の「延出片(38)」は、甲4の写真9-8、9-9(上記b参照)及び写真11-2から、固定ピン(13)側に当該固定ピン(13)のとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有するものであること、及び、「第2スライダー(32)」の「傾斜部(34)」は固定ピン(13)側に暫時傾斜したものであることが見てとれる。

(甲4:写真11-2)
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と」(上記「ア」「g」)の構成を有することが確認された。
また、「リコー向けヒンジ」が、「j.前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて設けられた凹部(35)とを有するものとし」(上記「ア」「j」)との構成のうち、「前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)を有するものとし」ていることが確認された。

k 検甲第1号証の検証の結果、「a.検甲1仮ヒンジは、甲第4号証及び検甲1説明用写真の写真9-12、9-13に示されるように、「上板(51)の全閉の状態においては延出片(38)が固定ピン(13)の底板(41)側を覆い」という構成を有している」こと(検証調書「第4」「検甲第1号証」「5」「a.」)、及び、「b.検甲1仮ヒンジは、「上板(51)を全開状態にした際には、第2スライダー(32)が固定ピン(13)より離れ、突部に続く部位(35)が第1ヒンジピン(11)を収容させるように成した」という構成を有している」こと(検証調書「第4」「検甲第1号証」「5」「b.」)が確認された。
ここで、上記cでの検討を踏まえると、リフト部材(6)の上板(61)には原稿圧着板(3)が取り付けられてよいから、上板(61)を開閉することは原稿圧着板(3)をも開閉することであってよい。
また、上記jでの検討を踏まえると、「延出片(38)」は、固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有するものであるから、延出片(38)は、上板(61)(原稿圧着板(3))の開閉に伴って、固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆うものであってよい。
したがって、「リコー向けヒンジ」が、「k 前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」(上記「ア」「k」)の構成のうち、「前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れるように成した」との構成を有することが確認された。

l 検甲第1号証は、開閉装置であるところ、上記(4)で検討したとおり、事務機器(リコー製複合機imagio Neo 751)の装置本体へ取り付けられているものであってよいから、上記cでの検討を踏まえると、リフト部材(6)の上板(61)には原稿圧着板(3)が取り付けらて、「原稿圧着板開閉装置」の構成を有していてよいと認められる。
したがって、「リコー向けヒンジ」は、「l 原稿圧着板開閉装置」(上記「ア」「l」)の構成を有していてよいことが確認された。

(イ)引用発明2
以上によれば、検証結果で確認されるとともに、甲4に添付された写真から見てとることのできる「リコー向けヒンジ」の構成は次のとおりである(以下「引用発明2」という。)。
「a.事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)と、
b.上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)と、
c.前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)と、
d.前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)と、
e.前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)と、
f’.前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に設けた湾曲した部位(54)と、
g.一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)と、
h.その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)と、
i.前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とから成り、
j.前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)を有するものとし、
k.前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れるように成した
l.原稿圧着板開閉装置。」

(ウ)検証結果及び甲4に添付された写真から確認できなかった事項
甲4に記載された、事実実験で確認された「リコー向けヒンジ」の構成において、検証では確認されず、また、甲4に添付された写真からも見てとることができない「リコー向けヒンジ」の構成は次のとおりである。
a 「f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に前記作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた湾曲した部位(54)と」(上記「ア」)の構成のうち、「湾曲した部位(54)」が「作動ピン(14)の旋回軌跡に合わせて設けた」ものである点。
b 「前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンの特にコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)を有するものとし」(上記「ア」)の構成のうち、「突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)」が「突部に続いて設けられた凹部(35)」である点。
c 「前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)を収容させるように成した」(上記「ア」)との構成のうち、「前記原稿圧着板を全開状態にした際には」、「前記凹部(35)が前記第1ヒンジピン(11)を収容させるように成した」点。

第8 無効理由についての当審の判断
1 請求人及び被請求人双方に争いのない事実
平成30年6月1日期日に行った検証において被請求人立ち会いのもと確認した事項(平成30年6月1日期日の検証調書)。

2 無効理由2
事案に鑑みて、請求人が審判請求書で主張する無効理由2(上記「第5」「1」「(1)」「イ」、「ウ」及び「ス」)から検討する。
(1)請求人が審判請求書で主張する無効理由2は、次のとおりである。
「本件特許発明について、平成26年1月20日でなされた手続補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされた補正であるから、その特許は同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。」(上記「第4」「1」「(2)」)

(2)上記無効理由2についての請求人の主張
ア 審判請求書における請求人の主張
上記「第5」「1」「(1)」「ス」のとおりであって、本件特許発明の構成「K 前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」に関して、請求人は、概略「本件の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲・図面には、第1ヒンジピンと第2スライダーの凹部とが接触する形態については、何ら開示がないというべきであり、『前記凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成したこと』を請求項に追加する補正は、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではない。」と主張する。

イ 請求人要領書(1)における請求人の主張
上記「第5」「1」「(3)」「キ」及び「ケ」のとおりである。

(3)上記無効理由2についての被請求人の釈明
答弁書における被請求人の釈明
上記「第5」「2」「(1)」「ウ」の「コ」のとおりである。

(4)本件特許出願に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲・図面における、第1ヒンジピン11と凹部に係る記載
ア 本件特許出願に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲には、「第1ヒンジピン11」に関わる「凹部35」についての記載はないが、図5、6に関して次のとおりの記載がある。
「【0020】
後端部側の第2スライダー32の閉塞面の外表面の略中央部には、図1?図7、図9に示すように、突部33が設けられている。この突部33は、支持部材5の上板51に略平行に延びて形成されている。突部33の抱持片53側は漸次傾斜された傾斜部34として形成され、原稿圧着板密着時、突部33が固定部材例えば固定ピン13に当接し、リフト部材6が第2ヒンジピン12を軸に回動することによって、固定ピン13が当接する箇所が突部33から傾斜部34に徐々に摺動する。この固定ピン13の外周には通常潤滑用のグリスが塗布されているが、第2スライダー32の下部側から前記固定ピン13より前側に突出させて延出片38が設けられている。
【0021】
装置本体2の上面のコンタクトガラス2a面上に原稿圧着板3が密着している状態(閉位置(図1及び図2参照))において支持部材5の、抱持片53の部分が取付部材4の湾曲凹部44内に嵌入し、延出片38は固定ピン13の回り、とくにコンタクトガラス2a側を覆っている。この状態から原稿圧着板3の手前側を手に持って、装置本体2の上面から離間する方向(上方)に第1ヒンジピン11を軸に回動させると、固定ピン13に当接する箇所が突部33から傾斜部34へと徐々に摺動すると共に、第2スライダー32が圧縮コイルスプリング21によって支持部材5内を後端部側へと押圧されて摺動し、圧縮コイルスプリング21が徐々に伸びる。そして、原稿圧着板3が装置本体2の上面に対する最大使用開放位置になると(図3及び図4参照)、第2スライダー32の両側に設けた突起部71が、受け部72の手前に落ち込む際のクリック感を原稿圧着板3を介して操作者の手に感じ取ることができる。勿論、ここのところはその他の公知構成の原稿圧着板回動規制機構(図示せず)によって規制しても良い。なお、図1?図7、図9中、38は延出片を示し、原稿圧着板3の最大使用開放角度において、図3と図4に示したように、延出片38が、固定ピン13のコンタクトガラス2a側の部分より前側に突出している。
【0022】
・・・また、原稿圧着板回動規制機構は、装置本体2の点検、修理等のメンテナンスを行う際にコンタクトガラス2aを容易に取り外すことができるように、取付部材4の両側板に設けたストッパー部48と支持部材5の断面L形状を呈した当接部55によって、原稿圧着板3(支持部材5)の上面に対する最大開放角度を90°に規制することができる最大開放機能を有している(図5及び図6参照)。尚、当接部55は、これを支持部材5の他の個所としても良く、リフト部材6の側に設けても良い。・・・
【0024】
突起部71は、第2スライダー32の閉塞面の外表面の両側部が中央部より窪んだ段状に形成され、この両側段部32bの略中央部に設けられている。突起部71は、例えば略半円状に形成されている。受け部72は、取付部材4の取付片42aの傾斜部42bの略中央部に凸状に形成されており、圧縮コイルスプリング21の付勢力によって、支持部材5が最大使用開放位置から最大開放位置までの間に位置されているときに、突起部71が受け部72に当接して押圧されるようになっている(図3?図6参照)。
【0025】
このように、圧縮コイルスプリング21の付勢力によって突起部71が受け部72に当接して押圧されることにより、支持部材5(原稿圧着板3)が最大開放位置(図5及び図6参照)から最大使用開放位置(図3及び図4参照)へと回動するとき、支持部材5(原稿圧着板3)に作用するトルクが大きくなる。従って、この発明の原稿圧着板開閉装置1は、原稿圧着板3が最大開放位置から最大使用開放位置へと倒れる際の速度を緩和することができる。
【0026】
また、第2スライダー32の両側段部32bの支持部材5の上板51側には、湾曲状に窪んだ凹部36が設けられている。この凹部36は、取付部材4の取付片42aの先端部が面接触する凹状に形成されている。この凹部36は、支持部材5(原稿圧着板3)が最大開放位置(図5及び図6参照)に達したとき、取付片42aの先端部が面接触するように形成されている。これにより、支持部材5(原稿圧着板3)が最大使用開放位置(図3及び図4参照)から最大開放位置(図5及び図6参照)へと回動したとき、取付片42aの先端部が面接触するので、支持部材5(原稿圧着板3)が安定した状態で立たせることができる。」

イ 本件特許出願に最初に添付された図1ないし7及び図9(a)及び(b)における、「凹部35」付近を拡大し方向を揃えた図(本件特許出願に最初に添付された図1ないし9に基づいて当審が作成した。)


(5)当審の判断
ア 最初に、「第2スライダー32」の図(上記「(4)」「イ」の図9)における「突部33」に関して「傾斜部34」の反対側に位置する部位を以下「突部33続く部位」と呼ぶ。

イ 上記(2)の請求人の主張を踏まえて、「原稿圧着板を全開状態にした際」である「最大開放位置」の図(上記「(4)」「イ」の図5及び6)における「第1ヒンジピン11」と「第2スライダー32」の関係をみると、「第1ヒンジピン11」は、「第2スライダー32」の「突部33続く部位」に位置し、「第1ヒンジピン11」は「突部33続く部位」に大半が入っていることがみてとれる。
ここで、「突部33続く部位」は、「突部33」側に段部を有するが、当該「突部33」の反対側は、平坦で特に何の構造もなく「第2スライダー32」の端部に達する。
そして、「突部33続く部位」は、通常は「突部33から段部を介して続く平坦な部位」とでも呼ぶべき凹部の半分の形状の部位である。

ウ しかしながら、「突部33続く部位」は、「突部33」からみれば、凹状であることは否めず、これを「凹部」と呼ぶことは誤りとまでいえない。
さらに、図5、6には、「第1ヒンジピン11」は、当該「凹部」において、「突部33から段部を介して続く平坦な部位」に接しているかのように記載されていることから、第2スライダーの凹部が第1ヒンジピンと「当接する」ことが、願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲、図面に記載も示唆もなかったとはいえない。
したがって、特に図5、6を根拠に、「原稿圧着板を全開状態にした際には」「前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」と補正することは、願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではないとはいえない。

(6)請求人の主張について
請求人は、上記「(2)」「イ」において、概略「0022段落には、原稿圧着板を全開した際に、第2スライダーと第1ヒンジピンとが接触するか否かについては何ら記載はない。また、図9は第2スライダーのみを図示した図面であり、第1ヒンジピンとの関係については当該図面から一義的に明らかになるものではない。そして、図5、図6のいずれにおいても、第2スライダーの凹部と第1ヒンジピンとは接触しておらず、隙間があるものとして描かれている。このように、出願当初の図面、明細書及び特許請求の範囲のいずれにおいても、原稿圧着板を全開した際に、第2スライダーと第1ヒンジピンとが接触するという記載、示唆はない。」「本件の願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲・図面には、第1ヒンジピンと第2スライダーの凹部とが接触する形態については、何ら開示がないというべきであ」る(上記「第5」「1」「(1)」「シ」)と主張する。
また、請求人は、図面に記載された線の太さを考慮すると、ヒンジピンと凹部とに空間があるとしても図面上は接触して見えること、突起部71と受け部72が当接することから第2スライダーが下降しないことを理由に、「凹部」と「ヒンジピン」が当接しない場合も十分に想定されると主張する(「第5」「1」「(3)」「ケ」参照。)。
しかしながら、本件の出願当初の明細書における段落【0024】及び【0025】の記載及び図3ないし図6の記載から、支持部材5(原稿圧着板3)が最大使用開放位置(図3及び図4参照)から最大開放位置(図5及び図6参照)へと回動するとき、支持部材5は、第1ヒンジピン11を軸に回動し、第2スライダー32は、突起部71と受け部72が当接しながら第2スライダー32の凹部が第1ヒンジピン11に近づくように移動する(第2スライダー32の傾斜した姿勢(図3及び図4参照)から垂直な姿勢(図5及び図6参照)への移動参照。)ことが読み取れる。
そして、最大開放位置の図である図5と図6には、第2スライダー32の凹部が第1ヒンジピン11に当接している状態が示されている。
以上のことから、突起部71と受け部72が当接することは、第2スライダー32の凹部が第1ヒンジピン11に当接することを阻害する構成とはいえず、特許出願に添付される図面が、設計図とは異なり、線の太さなどによって精密に記載されないことがあることを考慮しても、本件の出願当初の明細書及び図面の記載から、支持部材5が最大使用開放位置から最大開放位置へと回動するときに、第2スライダー32の凹部が第1ヒンジピン11に近づくように移動し、最大開放位置のときに当接することが矛盾を生じることなく理解できるものである。
よって、本件の出願当初の明細書及び図面に、原稿圧着板を全開(最大開放位置)した際に、第2スライダーと第1ヒンジピンが当接することが記載されていないとまではいえないから、前記請求人の主張は採用できない。

(7)小括
以上のとおりであって、平成26年1月20日付け手続補正(以下「本件補正」という。)によって、特許請求の範囲の請求項1に追加した「第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」との構成は、本件の出願当初の明細書及び特許請求の範囲、図面に記載された事項の範囲内のものであり、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされた補正であるとすることはできないから、本件特許発明についての特許は、特許法第123条第1項第1号に該当しない。

3 無効理由1
(1)無効理由1について
ア 請求人が審判請求書で主張する無効理由1(上記「第5」「1」「(1)」「ア」、「ウ」ないし「シ」)は、次のとおりである。
(ア)本件特許発明1は、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明と同一であるか、同発明と、「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第2号または第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(イ)本件特許発明2は、上記「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明、あるいは同発明と「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明とを組み合わせた発明のいずれかと、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(いずれも上記「第4」「1」「(1)」)

イ ここで、本件特許発明1に対する無効理由1は、「本件特許発明1は、『キヤノン向けヒンジ』として公然実施された発明と『リコー向けヒンジ』として公然実施された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。」(上記「ア」「(ア)」)であって、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明と「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明のいずれも主発明とし得る主張であるところ、審判請求書では、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明を主発明とする理由のみ詳細に主張する(上記「第5」「1」「(1)」「コ」)。

ウ この点について、請求人は、請求人要領書(1)の「6」「(3)」で「無効理由1(その2)の補強」(上記「第5」「1」「(3)」「サ」)として、『リコー向けヒンジ』として公然実施された発明を主とし、甲22の記載事項も加えた、審判請求書の補正を旨とする主張を行った。

エ 上記ウの審判請求書の補正について、第1回口頭審理において、当審が被請求人に同意の確認を行い、審判請求書の補正に同意することを確認した(第1回口頭審理調書「被請求人」「4」)。

オ 上記エを受けて、請求人は「請求人補正書」(上記「第5」「1」「(5)」)を提出したところ、当該補正は、上記ウの「無効理由1(その2)の補強」(請求人要領書(1)「6」「(3)」)に加えて、甲22を主発明とする主張を加えたと解し得る主張を含むものであった。

カ 上記オの「請求人補正書」の「甲22を主発明とする主張を加えた主張」が含まれると解釈した場合について、上記エの被請求人の同意の確認を行っていないため、審理事項通知(2)「3.」で、当審が被請求人に同意の確認を行ったところ、同意しない旨の回答があった(被請求人要領書(2)「6.」「(1)」)。

キ したがって、以下では、「請求人補正書」(上記「第5」「1」「(5)」)は、上記ウの「無効理由1(その2)の補強」(請求人要領書(1)「6」「(3)」)のとおり、『リコー向けヒンジ』として公然実施された発明を主とし、甲22の記載事項も加えた、審判請求書の補正であるとし、甲22を主発明とする主張はないものと解して検討する。

ク また、上記イの「本件特許発明1は、『キヤノン向けヒンジ』として公然実施された発明と『リコー向けヒンジ』として公然実施された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである」は、『キヤノン向けヒンジ』として公然実施された発明を主発明とする主張と、『リコー向けヒンジ』として公然実施された発明を主発明とする主張との2つの主張からなるものと解して検討する。

(2)上記(1)での検討によれば、上記無効理由1は、複数の無効理由からなるため、本審決では、以下、次の4つの無効理由に分けて検討する。
ア 無効理由1-1
本件特許発明1は、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

イ 無効理由1-2
本件特許発明1は、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明に「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明を組み合わせた発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

ウ 無効理由1-3
本件特許発明1は、「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明に「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明を組み合わせた発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

エ 無効理由1-4
本件特許発明2は、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明、あるいは、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明と「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明とを組み合わせた発明と、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(3)無効理由1-1
ア 本件特許発明1
本件特許発明1は、上記「第3」「【請求項1】」に記載されたとおりのものである。

イ 引用発明
「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明(引用発明1)は、上記「第7」「1」「(5)」「カ」「(イ)」のとおりのものである。

ウ 対比
(ア)本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
A 引用発明1の「事務機器の装置本体へ取り付けられる」「底板(41)」は、本件特許発明1の「事務機器の装置本体へ取り付けられる」「底板」に相当し、
引用発明1の「この底板の両側より立設させたところの」「両側板(42)」は、本件特許発明1の「この底板の両側より立設させたところの」「両側板」に相当し、
引用発明1の「底板(41)と」「両側板(42)を有する」「取付部材(4)」は、本件特許発明1の「底板と」「両側板を有する」「取付部材」に相当する。
したがって、引用発明1の「a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)」との構成は、本件特許発明1のA「事務機器の装置本体へ取り付けられる底板とこの底板の両側より立設させたところの両側板を有する取付部材」との構成と相当関係にある。

B 引用発明1の「支持部材(5)」の「上板(51)」は、本件特許発明1の「支持部材」の「上板」に相当し、
引用発明1の「この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた」「抱持片(53)」は、本件特許発明1の「この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた」「抱持片」に相当し、
引用発明1の「抱持片(53)を有する」「両側板(52)」は、本件特許発明1の「抱持片を有する」「両側板」に相当し、
引用発明1の「第1ヒンジピン(11)」は、本件特許発明1の「第1ヒンジピン」に相当し、
引用発明1の「この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る」「支持部材(5)」は、本件特許発明1の「この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成る」「支持部材」に相当し、
引用発明1の「原稿圧着板(3)を支持する」「支持部材(5)」は、本件特許発明1の「原稿圧着板を支持する」「支持部材」に相当する。
したがって、引用発明1の「b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)」との構成は、本件特許発明1のB「上板とこの上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片を有する両側板を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材」との構成と相当関係にある。

C 引用発明1の「前記原稿圧着板(3)を取り付ける」「上板(61)」は、本件特許発明1の「前記原稿圧着板を取り付ける」「上板」に相当し、
引用発明1の「この上板の両側より垂設した」「両側板(62)」は、本件特許発明1の「この上板の両側より垂設した」「両側板」に相当し、
引用発明1の「第2ヒンジピン(12)」は、本件特許発明1の「第2ヒンジピン」に相当し、
引用発明1の「この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して」「連結した」「リフト部材(6)」は、本件特許発明1の「この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第2ヒンジピンを介して」「連結した」「リフト部材」に相当し、
引用発明1の「前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結した」「リフト部材(6)」は、本件特許発明1の「前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結した」「リフト部材」に相当する。
したがって、引用発明1の「c 前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)」との構成は、本件特許発明1のC「前記原稿圧着板を取り付ける上板とこの上板の両側より垂設した両側板を有し、この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第2ヒンジピンを介して前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材」との構成と相当関係にある。

D 引用発明1の「前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた」「固定ピン(13)」は、本件特許発明1の「前記取付部材の両側板の間に設けられた」「固定ピン」に相当する。
したがって、引用発明1の「d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)」との構成は、本件特許発明1のD「前記取付部材の両側板の間に設けられた固定ピン」との構成と相当関係にある。

E 引用発明1の「前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた」「作動ピン(14)」は、本件特許発明1の「前記リフト部材の両側板の間に設けられた」「作動ピン」に相当する。
したがって、引用発明1の「e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)」との構成は、本件特許発明1のE「前記リフト部材の両側板の間に設けられた作動ピン」との構成と相当関係にある。

F 引用発明1の「前記支持部材(5)の両側板の自由端側に設けた」「湾曲溝(54)は、本件特許発明1の「前記支持部材の両側板の自由端側に前記作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた」「湾曲溝」と、「前記支持部材の両側板の自由端側に設けた」「湾曲溝」の点で一致する。
したがって、引用発明1の「f 前記支持部材(5)の両側板の自由端側に設けた湾曲溝(54)」との構成は、本件特許発明1のF「前記支持部材の両側板の自由端側に前記作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝」との構成と、F´「前記支持部材の両側板の自由端側に設けた湾曲溝」との構成の点で一致する。

G 引用発明1の「一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた」「第2スライダー(32)」は、本件特許発明1の「一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた」「第2スライダー」に相当する。
したがって、引用発明1の「g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)」との構成は、本件特許発明1のG「一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー」との構成と相当関係にある。

H 引用発明1の「その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた」「第1スライダー(31)」は、本件特許発明1の「その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた」「第1スライダー」に相当する。
したがって、引用発明1の「h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)」との構成は、本件特許発明1のH「その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー」との構成と相当関係にある。

I 引用発明1の「前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された」「圧縮コイルスプリング(21)」は、本件特許発明1の「前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された」「圧縮コイルスプリング」に相当する。
したがって、引用発明1の「i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり」との構成は、本件特許発明1のI「前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された圧縮コイルスプリングとから成り」との構成と相当関係にある。

J 引用発明1の「第2スライダー(32)」が有する「前記固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する」「延出片(38)」は、本件特許発明1の「第2スライダー」が有する「前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する」「延出片」に相当し、
引用発明1の「第2スライダー(32)」が有する「この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した」「傾斜部(34)」は、本件特許発明1の「第2スライダー」が有する「この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した」「傾斜部」に相当する。
したがって、引用発明1の「j’ 前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部に続く部位(35)とを有するものとし」との構成は、本件特許発明1のJ「前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部とこの傾斜部に続いて設けられた突部とこの突部に続いて設けられた凹部とを有するものとし、」との構成と、J´「前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部を有するものとし」との構成の点で一致する。

K 引用発明1の「原稿圧着板(3)」の「所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆」うことは、本件特許発明1の「原稿圧着板」の「所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆」うことに相当し、
引用発明1の「原稿圧着板」を「全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の逆傾斜部に続く部位(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」ことは、本件特許発明1の「原稿圧着板」を「全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」構成と、「原稿圧着板」を「全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの逆傾斜部に続く部位が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」構成の点で一致する。
したがって、引用発明1の「k 前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記支持部材(5)の後部が前記取付部材(4)側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れ、前記第2スライダー部の逆傾斜部に続く部位(35)が前記第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」との構成は、本件特許発明1のK「前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」との構成と、K´「前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの逆傾斜部に続く部位が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」との構成の点で一致する。

L 引用発明1の「原稿圧着板開閉装置」は、本件特許発明1の「原稿圧着板開閉装置」に相当する。
したがって、引用発明1の「l 原稿圧着板開閉装置。」との構成は、本件特許発明1のL「原稿圧着板開閉装置。」との構成と相当関係にある。

(イ)上記(ア)によれば、両者は、
「A 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板とこの底板の両側より立設させたところの両側板を有する取付部材と、
B 上板とこの上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片を有する両側板を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材と、
C 前記原稿圧着板を取り付ける上板とこの上板の両側より垂設した両側板を有し、この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第2ヒンジピンを介して前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材と、
D 前記取付部材の両側板の間に設けられた固定ピンと、
E 前記リフト部材の両側板の間に設けられた作動ピンと、
F´ 前記支持部材の両側板の自由端側に設けた湾曲溝と、
G 一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダーと、
H その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダーと、
I 前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された圧縮コイルスプリングとから成り、
J´ 前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部と、を有するものとし、
K´ 前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの逆傾斜部に続く部位が前記第1ヒンジピンと当接するように成した
L 原稿圧着板開閉装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

a 「湾曲溝」が、本件特許発明1では「作動ピンの旋回軌跡に合わせて」設けたものであるのに対して、引用発明1はこのようなものであるか明らかではない点(以下「相違点1」という。)。

b 「第2スライダー」が、本件特許発明1では「傾斜部に続いて設けられた突部と、この突部に続いて設けられた凹部」を有するのに対して、引用発明1は「傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部に続く部位(35)」とを有する点(以下「相違点2」という。)。

エ 判断
(ア)相違点1
引用発明1の「湾曲溝(54)」がどのような理由で「湾曲」した形状となしたものであるかは明らかではないが、「溝」に「作動ピン(14)」を収容した状態で、「第2ヒンジピン(12)」を軸として、支持部材(5)とリフト部材(6)相対角度を変える動作をするものであるから、当該「溝」の形状は、少なくとも前記動作の際に「作動ピン(14)」の動きを許容する形状をしているものであり、前記動きを許容する構成として、当該「溝」の形状を「作動ピン(14)」の旋回軌跡に合わせたものとなすことは当業者が当然になし得る設計的事項にすぎない。

(イ)相違点2
引用発明1は、「第2スライダー」の「傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部に続く部位(35)」からなる構造となすことで、「原稿圧着板の所定の開閉角度」から、「原稿圧着板を全開状態にした際」に、事務機器の使用者側に原稿圧着板が倒れることなく、「原稿圧着板を全開状態にした」状態を維持できるようなヒンジを実現する発明であることは、当業者が当然に理解することである。
そして、このような発明において、「逆傾斜部」に代えて「突部」を設けるとともに、「段差と表現するほどの高さの差はな」く(検証調書「第4」「検甲第2号証」「j.」)、実質的には平坦部というべき「逆傾斜部に続く部位」を「凹部」に設計変更すべき動機は見当たらず、また、このように構成することが周知慣用手段であったとする事実も示されていない。
したがって、「段差と表現するほどの高さの差はな」く、実質的には平坦部というべき「逆傾斜部に続く部位」を「凹部」に設計変更することが設計的事項であったとする証拠も見当たらないから、引用発明1は本件特許発明1ではない。
よって、無効理由1-1は理由がない。

オ 請求人の主張
請求人は審判請求書「7」「(4)」「ウ」「(ア)」(上記「第5」「1」「(1)」「コ」)のとおり主張する
しかしながら、上記エで検討したとおりであるから、上記請求人の主張は採用できない。

(4)無効理由1-2
ア 本件特許発明1
本件特許発明1は、上記「第3」「【請求項1】」に記載されたとおりのものである。

イ 引用発明
(ア)「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明(引用発明1)は、上記「第7」「1」「(5)」「キ」「(イ)」のとおりのものである。
(イ)「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明(引用発明2)は、上記「第7」「2」「(6)」「カ」「(イ)」のとおりのものである。

ウ 対比
本件特許発明1と引用発明1との対比については、上記「(3)」「ウ」のとおりである。

エ 判断
(ア)相違点1
相違点1の判断については、上記「(3)」「エ」「(ア)」のとおりである。

(イ)相違点2
引用発明1は、「第2スライダー」の「傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部に続く部位(35)」からなる構造となすことで、「原稿圧着板の所定の開閉角度」から、「原稿圧着板を全開状態にした際」に、事務機器の使用者側に原稿圧着板が倒れることなく、「原稿圧着板を全開状態にした」状態を維持できるようなヒンジを実現する発明であることは、当業者が当然に理解することである。
そして、このような発明において、「逆傾斜部」に代えて「突部」を設けるとともに、「段差と表現するほどの高さの差はな」く(検証調書「第4」「検甲第2号証」「j.」)、実質的には平坦部というべき「逆傾斜部に続く部位」を「凹部」に設計変更すべき動機は見当たらず、また、このように構成することが周知慣用手段であったとする事実も示されていない。
さらに、引用発明2は、本件特許発明1の「凹部」に係る構成を備えるが、引用発明1の「第2スライダー」の「傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部(36)と、この逆傾斜部に続いて設けられた逆傾斜部に続く部位(35)」からなる構造に、大きく構造が異なり、その結果、使用感(フィーリング)の異なる構成(被請求人回答書(1)「1.」「(3)」 上記「第5」「2」「(2)」「ア」の(3))を適用する動機はみあたらない。
したがって、「段差と表現するほどの高さの差はな」く、実質的には平坦部というべき「逆傾斜部に続く部位」を「凹部」に設計変更する動機も、「逆傾斜部に続く部位」に代えて引用発明2の「凹部」を適用する動機も見当たらないから、引用発明1は本件特許発明1ではなく、また、本件特許発明1が引用発明1に引用発明2を適用することによって容易に想到し得たものであるとすることもできない。
よって、無効理由1-2は理由がない。

(5)無効理由1-3
ア 本件特許発明1
本件特許発明1は、上記「第3」「【請求項1】」に記載されたとおりのものである。

イ 引用発明
(ア)「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明(引用発明1)は、上記「第7」「1」「(5)」「キ」「(イ)」のとおりのものである。
(イ)「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明(引用発明2)は、上記「第7」「2」「(6)」「カ」「(イ)」のとおりのものである。

ウ 対比
(ア)本件特許発明1と引用発明2とを対比する。
A 引用発明2の「事務機器の装置本体へ取り付けられる」「底板(41)」は、本件特許発明1の「事務機器の装置本体へ取り付けられる」「底板」に相当し、
引用発明2の「この底板の両側より立設させたところの」「両側板(42)」は、本件特許発明1の「この底板の両側より立設させたところの」「両側板」に相当し、
引用発明2の「底板(41)と」「両側板(42)を有する」「取付部材(4)」は、本件特許発明1の「底板と」「両側板を有する」「取付部材」に相当する。
したがって、引用発明2の「a 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板(41)と、この底板の両側より立設させたところの両側板(42)を有する取付部材(4)」との構成は、本件特許発明1のA「事務機器の装置本体へ取り付けられる底板とこの底板の両側より立設させたところの両側板を有する取付部材」との構成と相当関係にある。

B 引用発明2の「支持部材(5)」の「上板(51)」は、本件特許発明1の「支持部材」の「上板」に相当し、
引用発明2の「この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた」「抱持片(53)」は、本件特許発明1の「この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた」「抱持片」に相当し、
引用発明2の「抱持片(53)を有する」「両側板(52)」は、本件特許発明1の「抱持片を有する」「両側板」に相当し、
引用発明2の「第1ヒンジピン(11)」は、本件特許発明1の「第1ヒンジピン」に相当し、
引用発明2の「この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る」「支持部材(5)」は、本件特許発明1の「この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成る」「支持部材」に相当し、
引用発明2の「原稿圧着板(3)を支持する」「支持部材(5)」は、本件特許発明1の「原稿圧着板を支持する」「支持部材」に相当する。
したがって、引用発明2の「b 上板(51)と、この上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片(53)を有する両側板(52)を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材(4)の両側板(42)の外側へ第1ヒンジピン(11)を介して回動可能に連結して成る原稿圧着板(3)を支持する支持部材(5)」との構成は、本件特許発明1のB「上板とこの上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片を有する両側板を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材」との構成と相当関係にある。

C 引用発明2の「前記原稿圧着板(3)を取り付ける」「上板(61)」は、本件特許発明1の「前記原稿圧着板を取り付ける」「上板」に相当し、
引用発明2の「この上板の両側より垂設した」「両側板(62)」は、本件特許発明1の「この上板の両側より垂設した」「両側板」に相当し、
引用発明2の「第2ヒンジピン(12)」は、本件特許発明1の「第2ヒンジピン」に相当し、
引用発明2の「この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して」「連結した」「リフト部材(6)」は、本件特許発明1の「この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第2ヒンジピンを介して」「連結した」「リフト部材」に相当し、
引用発明2の「前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結した」「リフト部材(6)」は、本件特許発明1の「前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結した」「リフト部材」に相当する。
したがって、引用発明2の「c 前記原稿圧着板(3)を取り付ける上板(61)と、この上板の両側より垂設した両側板(62)を有し、この両側板を前記支持部材(5)の両側板(52)の外側の自由端側へ第2ヒンジピン(12)を介して前記支持部材(5)の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材(6)」との構成は、本件特許発明1のC「前記原稿圧着板を取り付ける上板とこの上板の両側より垂設した両側板を有し、この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第2ヒンジピンを介して前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材」との構成と相当関係にある。

D 引用発明2の「前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた」「固定ピン(13)」は、本件特許発明1の「前記取付部材の両側板の間に設けられた」「固定ピン」に相当する。
したがって、引用発明2の「d 前記取付部材(4)の両側板(42)の間に設けられた固定ピン(13)」との構成は、本件特許発明1のD「前記取付部材の両側板の間に設けられた固定ピン」との構成と相当関係にある。

E 引用発明2の「前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた」「作動ピン(14)」は、本件特許発明1の「前記リフト部材の両側板の間に設けられた」「作動ピン」に相当する。
したがって、引用発明2の「e 前記リフト部材(6)の両側板(62)の間に設けられた作動ピン(14)」との構成は、本件特許発明1のE「前記リフト部材の両側板の間に設けられた作動ピン」との構成と相当関係にある。

F 引用発明2の「前記支持部材(5)の両側板の自由端側に設けた」「湾曲した部位(54)」は、本件特許発明1の「前記支持部材の両側板の自由端側に前記作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた」「湾曲溝」と、「前記支持部材の両側板の自由端側に設けた」「湾曲した部位」の点で一致する。
したがって、引用発明2の「f’.前記支持部材(5)の両側板(52)の自由端側に設けた湾曲した部位(54)」との構成は、本件特許発明1のF「前記支持部材の両側板の自由端側に前記作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝」との構成と、F´「前記支持部材の両側板の自由端側に設けた湾曲した部位」との構成の点で一致する。

G 引用発明2の「一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた」「第2スライダー(32)」は、本件特許発明1の「一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた」「第2スライダー」に相当する。
したがって、引用発明2の「g 一端部側を前記固定ピン(13)に当接させ前記支持部材(5)の前記両側板の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー(32)」との構成は、本件特許発明1のG「一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダー」との構成と相当関係にある。

H 引用発明2の「その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた」「第1スライダー(31)」は、本件特許発明1の「その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた」「第1スライダー」に相当する。
したがって、引用発明2の「h その一端部側を前記作動ピン(14)に当接し、前記支持部材(5)の両側板(52)の間に前記抱持片(53)に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー(31)」との構成は、本件特許発明1のH「その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダー」との構成と相当関係にある。

I 引用発明2の「前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された」「圧縮コイルスプリング(21)」は、本件特許発明1の「前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された」「圧縮コイルスプリング」に相当する。
したがって、引用発明2の「i 前記第2スライダー(32)と前記第1スライダー(31)との間に弾設された圧縮コイルスプリング(21)とからなり」との構成は、本件特許発明1のI「前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された圧縮コイルスプリングとから成り」との構成と相当関係にある。

J 引用発明2の「第2スライダー(32)」が有する「前記固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する」「延出片(38)」は、本件特許発明1の「第2スライダー」が有する「前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する」「延出片」に相当し、
引用発明2の「第2スライダー(32)」が有する「この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した」「傾斜部(34)」は、本件特許発明1の「第2スライダー」が有する「この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した」「傾斜部」に相当し、
引用発明2の「第2スライダー(32)」が有する「この傾斜部に続いて設けられた突部(33)」は、本件特許発明1の「この傾斜部に続いて設けられた突部」に相当する。
したがって、引用発明2の「j.前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)を有するものとし、」は、本件特許発明1のJ「前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部とこの傾斜部に続いて設けられた突部とこの突部に続いて設けられた凹部とを有するものとし、」と、J´「前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部とこの傾斜部に続いて設けられた突部」「とを有するものとし、」の点で一致する。

K 引用発明2の「原稿圧着板(3)」の「所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆」うことは、本件特許発明1の「原稿圧着板」の「所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆」うことに相当し、
引用発明2の「原稿圧着板」を「全開状態にした際には」「前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れるように成した」ことは、本件特許発明1の「原稿圧着板」を「全開状態にした際には前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ、前記凹部が前記第1ヒンジピンを収容させるように成した」構成と、「原稿圧着板」を「全開状態にした際には前記第2スライダーが前記固定ピンより離れるように成した」構成の点で一致する。
したがって、引用発明2の「k.前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れるように成した」との構成は、本件特許発明1のK「前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」との構成と、K´「前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れるように成した」との構成の点で一致する。

L 引用発明2の「原稿圧着板開閉装置」は、本件特許発明1の「原稿圧着板開閉装置」に相当する。
したがって、引用発明2の「l 原稿圧着板開閉装置。」との構成は、本件特許発明1のL「原稿圧着板開閉装置。」との構成と相当関係にある。

(イ)上記(ア)によれば、両者は、
「A 事務機器の装置本体へ取り付けられる底板とこの底板の両側より立設させたところの両側板を有する取付部材と、
B 上板とこの上板の両側の一部より垂設されたところの下端部側に内側へ折り曲げた抱持片を有する両側板を有し、この両側板の抱持片を設けてない部分を前記取付部材の両側板の外側へ第1ヒンジピンを介して回動可能に連結して成る原稿圧着板を支持する支持部材と、
C 前記原稿圧着板を取り付ける上板とこの上板の両側より垂設した両側板を有し、この両側板を前記支持部材の両側板の外側の自由端側へ第2ヒンジピンを介して前記支持部材の回動方向とは逆方向へ回動可能に連結したリフト部材と、
D 前記取付部材の両側板の間に設けられた固定ピンと、
E 前記リフト部材の両側板の間に設けられた作動ピンと、
F 前記支持部材の両側板の自由端側に設けた湾曲した部位と、
G 一端部側を前記固定ピンに当接させ前記支持部材の前記両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第2スライダーと、
H その一端部側を前記作動ピンに当接し前記支持部材の両側板の間に前記抱持片に抱えられて摺動可能に設けられた第1スライダーと、
I 前記第2スライダーと前記第1スライダーとの間に弾設された圧縮コイルスプリングとから成り、
J´ 前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部とこの傾斜部に続いて設けられた突部とを有するものとし、
K´ 前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダーが前記固定ピンより離れるように成した
L 原稿圧着板開閉装置。」
である点で一致し、次の各点で相違する。

a 「支持部材の両側板の自由端側に設けた湾曲した部位」が、本件特許発明1では「旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝」設けたものであるのに対して、引用発明2は「湾曲穴(54)」である点(以下「相違点3」という。)

b 「第2スライダー」が、本件特許発明1では「この突部に続いて設けられた凹部を有する」のに対して、引用発明2は「この突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)を有する」点(以下「相違点4」という。)

c 「原稿圧着板を全開状態にした際には」、本件特許発明1では「第2スライダー」の「凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」のに対して、引用発明2は「第2スライダー」の「突部に続く部位(35)」が「第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」か否か明らかではない点(以下「相違点5」という。)

エ 判断
(ア)相違点3
引用発明2の「湾曲穴(54)」がどのような理由で「湾曲」した形状となしたものであるかは明らかではないが、「穴」に「作動ピン(14)」を収容した状態で、「第2ヒンジピン(12)」を軸として、支持部材(5)とリフト部材(6)相対角度を変える動作をするものであるから、当該「穴」の形状を「作動ピン(14)」の旋回軌跡に合わせたものとなすことは当業者が当然になし得る設計的事項にすぎない。
さらに、引用発明2の「湾曲穴(54)」を「湾曲溝(54)」とすることは、当該「湾曲穴(54)」と「湾曲溝(54)」がともに同じく、「作動ピン(14)」を収容した状態で、「第2ヒンジピン(12)」を軸として、支持部材(5)とリフト部材(6)相対角度を変える動作をするための構成として共通するものであり、かつ、引用発明2と同様の「原稿圧着板開閉装置」に用いるヒンジである当該引用発明1において、当該構造を「湾曲溝(54)」とすることが公知であったことに照らして、引用発明2の「湾曲穴(54)」を「湾曲溝(54)」とすることに格別の技術的困難性はなく、また、このように構成することを妨げる格別の理由も見当たらない。
そして、本件特許発明1の「湾曲溝」に関して、本件特許明細書には「作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けた湾曲溝」以上の記載はなく、作動ピンの旋回軌跡に合わせて設けたものであれば、溝であっても穴であってもどちらでもよい程度の設計的事項の差であるといえる。
したがって、引用発明2の「湾曲穴(54)」に、引用発明1の「湾曲溝(54)」の構成を適用するとともに、当該「湾曲溝(54)」の形状を「作動ピン(14)」の旋回軌跡に合わせたものとなして、上記相違点3に係る本件特許発明1の構成となすことは当業者が容易になし得ることである。

(イ)相違点4
a 引用発明2は、「第2スライダー」の「突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)」からなる構造となすことで、「原稿圧着板の所定の開閉角度」から、「原稿圧着板を全開状態にした際」に、事務機器の使用者側に原稿圧着板が倒れることなく、「原稿圧着板を全開状態にした」状態を維持できるようなヒンジを実現する発明であることは、当業者が当然に理解することである。

b そして、当該「突部に続く部位(35)」は、検甲2の写真I-28によれば、「突部33」側に段部を有するが、当該「突部33」の反対側は、平坦で特に何の構造もなく「第2スライダー32」の端部に達するものであって、「突部に続く部位(35)」は、通常は「突部33から段部を介して続く平坦な部位」とでも呼ぶべき凹部の半分の形状の部位である。


c ここで、当該「突部に続く部位(35)」は上記「2」「(5)」「イ」での検討によれば、本件特許発明1の「凹部」と同じ形状であると認められる。
そうすると、引用発明2の「突部に続く部位(35)」は、本件特許発明1における「凹部」であるから、引用発明2の「j.前記第2スライダー(32)は、前記固定ピン(13)側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片(38)と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部(34)と、この傾斜部に続いて設けられた突部(33)と、この突部に続いて段差を介して設けられた突部に続く部位(35)を有するものとし」ていることは、本件特許発明1のJ「前記第2スライダーは、前記固定ピン側に当該固定ピンのとくにコンタクトガラス側の軸方向を覆う幅を有する延出片と、この延出片の基部に続いて設けられた前記固定ピン側に暫時傾斜した傾斜部と、この傾斜部に続いて設けられた突部と、この突部に続いて設けられた凹部とを有するものとし」ていることに相当する。
したがって、相違点4は実質的な相違点ではない。

(ウ)相違点5
a 上記(イ)で検討したとおり、引用発明2の「突部に続く部位(35)」は本件特許発明1の「凹部」に相当するものであるところ、甲4には、「第2スライダー」の「突部に続く部位(35)」(「凹部」に相当)が「第1ヒンジピン(11)と当接するように成した」か否か明記がないため、「リコー向けヒンジ」が当該「当接」に係る構成を有するか否か明らかではなく、また、検証においても、圧縮コイルスプリング(21)を挿入して仮組み立てすることができなかったため(検証調書「第4」「検甲第1号証」「4」及び「第4」「検甲第3号証」「4」)、検甲1仮ヒンジ及び検甲3仮ヒンジにおいて、当該「当接」に係る構成の検証はなされなかった。

b 甲22の19頁4?19行には、事実実験の結果として、概略
「第2スライダーの凹部と第1ヒンジピンとの間に既製の用紙(アスクルのマルチペーパー スーパーホワイトA4サイズ、紙の厚さ:0.09mm)を挟んで、原稿圧着板の全開状態に相当する状態を作り出し、当該紙片をコンタクトガラス側から引っ張ったところ、第2スライダーの凹部と第1ヒンジピンとの間で紙片が抜けなかった。しかし、・・・が少し力を入れた様子で引っ張ったところ、紙片はコンタクトガラス側から抜け出した・・・本職が確認したところ、たしかに紙片にはこすれたような汚れが付着しており、複数箇所において折り目のような形状が見られ、丸まっていた。」
と記載されている。
上記甲22の記載から、分解する前の、圧縮コイルスプリング(21)を備えた甲4の「リコー向けヒンジ」(引用発明2)も甲22の事実実験と同様の結果が得られるものと推認される。
しかしながら、上記事実実験の結果からは、甲4の「リコー向けヒンジ」(引用発明2)の「第2スライダー」の「突部に続く部位(35)」(「凹部」に相当)と「第1ヒンジピン(11)」との間の隙間は、紙片の厚さ程度以下であることが推認されるにとどまり、「紙片の厚さ程度以下」の隙間があるのか、あるいは、隙間が無く当接するのかは定かでない。
また、甲4の「リコー向けヒンジ」(引用発明2)の「第2スライダー」の「突部に続く部位(35)」(「凹部」に相当)と「第1ヒンジピン(11)」との間の隙間を無くして当接しなければならない格別の理由も見あたらないから、「リコー向けヒンジ」(引用発明2)の「第2スライダー」の「突部に続く部位(35)」(「凹部」に相当)が「第1ヒンジピン(11)」は当接しないものであってよく、当接するものであるとまでは特定できない。

c 上記a及びbによれば、「リコー向けヒンジ」が相違点5の「当接」に係る構成を有するものであるとは認められない。
したがって、引用発明2の「k.前記原稿圧着板(3)の所定の開閉角度までは前記延出片(38)が前記固定ピン(13)のコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には前記第2スライダー(32)が前記固定ピンより離れるように成した」ことは、本件特許発明1のK「前記原稿圧着板の所定の開閉角度までは前記延出片が前記固定ピンのコンタクトガラス側を覆い、前記原稿圧着板を全開状態にした際には、前記支持部材の後部が前記取付部材側に当接して当該支持部材のそれ以上の回動を阻止し、前記第2スライダーが前記固定ピンより離れ前記当該第2スライダーの凹部が前記第1ヒンジピンと当接するように成した」ことの点で相当関係にあるとは認められない。
したがって、引用発明2と本件特許発明1は、上記相違点5において相違する。

オ 小括
以上の検討によれば、本件特許発明1は、上記相違点5において引用発明2と相違し、かつ、引用発明2において、相違点5の構成となすべき格別の理由も見あたらないから、本件特許発明1は、引用発明2及び引用発明1に基づいて当業者が容易に想到し得るものであるとすることはできない。
よって、無効理由1-3は理由がない。

(6)無効理由1-4
ア 本件特許発明2
本件特許発明2は、上記「第3」「【請求項2】」に記載されたとおりのものである。

イ 引用発明
(ア)「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明(引用発明1)は、上記「第7」「1」「(5)」「キ」「(イ)」のとおりのものである。
(イ)「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明(引用発明2)は、上記「第7」「2」「(6)」「カ」「(イ)」のとおりのものである。

ウ 無効理由1-4について
(ア)無効理由1-4は、「本件特許発明2は、『キヤノン向けヒンジ』として公然実施された発明、あるいは、『キヤノン向けヒンジ』として公然実施された発明と『リコー向けヒンジ』として公然実施された発明とを組み合わせた発明と、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである」というものであるから、実体的には下記の3つの理由からなるものと解される。
a 本件特許発明2は、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明と甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
b 本件特許発明2は、「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明に「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明を組み合わせた発明と、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。
c 本件特許発明2は、「リコー向けヒンジ」として公然実施された発明に「キヤノン向けヒンジ」として公然実施された発明を組み合わせた発明と、甲第12号証に記載された発明に基づいて、その原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。

(イ)しかしながら、上記(3)での検討によれば、引用発明1は本件特許発明1ではなく、また、上記(4)での検討によれば、本件特許発明1が引用発明1に引用発明2を適用することによって容易に想到し得たものではなく、さらに、上記(5)での検討によれば、引用発明2及び引用発明1を組み合わせた発明から当業者が容易に想到し得るものであるとすることもできないから、本件特許発明1に上記アの【請求項2】の構成を付加する発明である本件特許発明2を、引用発明1、引用発明1に引用発明2を適用した発明、ないし、引用発明2及び引用発明1を組み合わせた発明のいずれかと、甲第12号証に記載された発明に基づいて、容易に想到し得たものであるとすることはできない。
よって、無効理由1-4は理由がない。

エ 小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、無効理由1-4によって無効とすることはできない。

(7)無効理由1のまとめ
以上(1)ないし(6)のとおりであるから、本件特許発明1及び2は、無効理由1によって無効とすることはできない。

第9 むすび
1 以上「第8」「2」で検討したとおり、本件補正は、願書に最初に添付された明細書及び特許請求の範囲、図面に記載された事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされた補正であるとすることはできないから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第1号に該当しない。

2 以上「第8」「3」「(3)無効理由1-1」で検討したとおり、引用発明1は本件特許発明1ではない。
したがって、本件特許発明1についての特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。

3 以上「第8」「3」「(4)無効理由1-2」で検討したとおり、本件特許発明1が引用発明1に引用発明2を適用することによって容易に想到し得たものであるとすることはできない。
したがって、本件特許発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。

4 以上「第8」「3」「(5)無効理由1-3」で検討したとおり、本件特許発明1は、引用発明2及び引用発明1を組み合わせた発明から当業者が容易に想到し得たものであるとすることはできない。
したがって、本件特許発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。

5 以上「第8」「3」「(6)無効理由1-4」で検討したとおり、本件特許発明2は、引用発明1、引用発明1に引用発明2を適用した発明、ないし、引用発明2及び引用発明1を組み合わせた発明のいずれかと、甲第12号証に記載された発明に基づいて、容易に想到し得たものであるとすることはできない。
したがって、本件特許発明2についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものではなく、同法第123条第1項第2号に該当しない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-09-06 
結審通知日 2018-09-13 
審決日 2018-09-28 
出願番号 特願2012-171028(P2012-171028)
審決分類 P 1 113・ 55- Y (G03B)
P 1 113・ 112- Y (G03B)
P 1 113・ 113- Y (G03B)
P 1 113・ 121- Y (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関口 英樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 野村 伸雄
松川 直樹
登録日 2014-11-14 
登録番号 特許第5645227号(P5645227)
発明の名称 原稿圧着板開閉装置  
代理人 伊藤 捷雄  
代理人 水野 秀一  
復代理人 小曳 満昭  
代理人 寺下 雄介  
代理人 黒木 義樹  
代理人 緒方 昭典  
代理人 伊藤 捷雄  
代理人 阿部 寛  
代理人 緒方 昭典  
代理人 横本 幸昌  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 城戸 博兒  
代理人 横本 幸昌  
代理人 鰺坂 和浩  
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