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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1347093
審判番号 不服2017-9694  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-06-30 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2015- 96627「免疫組織化学およびinsituハイブリダーゼーションのためのポリマー担体」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 8日出願公開、特開2015-179091、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2008年(平成20年)5月22日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2007年5月23日、米国)を国際出願日とする特願2010-509391号の一部を平成27年5月11日に新たな特許出願としたものであって、平成28年6月28日付けで拒絶理由が通知され、同年10月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成29年3月2日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされ、平成30年5月22日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年11月13日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
この出願の平成28年10月4日に補正された請求項1?18に係る発明は、その出願(優先日)前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A:特表平9-500411号公報
引用文献B:米国特許出願公開第2005/0158770号明細書
引用文献C:特開昭62-231170号公報
具体的には、引用文献Aに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとしたものである。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1 進歩性について
この出願の審判請求時に補正された請求項1?17に係る発明は、その出願(優先日)前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1:特表2000-514188号公報(当審において新たに引用した文献)
引用文献2:特表平9-500411号公報(原査定時の引用文献A)
引用文献3:米国特許出願公開第2005/0158770号明細書(原査定時の引用文献B)

2 明確性について
この出願は、審判請求時に補正された特許請求の範囲の請求項10の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
「前記試料を抗抗体 抗体と接触させる」ことにおける「抗抗体 抗体」は何を意味しているのか不明確である。

第4 本願発明
本願請求項1?12に係る発明は、平成30年11月13日に補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される発明であり、そのうち、独立項である請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
試料における標的に対して分析を行うための方法であって、
前記試料を、標的に特異的に結合する特異的結合分子と接触させるステップであって、前記特異的結合分子は、ポリビニルピロリドンから選択されるポリマー部分を含み、かつ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体、グアニジン、アミノグアニジン、ヒドロキシルアミン、またはそれらの組み合わせから選択される複数の反応性官能基をさらに含むポリマーリンカーを介して、検出可能な標識に共役されるステップと、
前記検出可能な標識を使用する前記標識に結合される前記特異的結合分子を検出するステップと、
を含む、方法であって、
前記分析は、試料における2つ以上の異なる標的に対する多重分析であって、
前記試料を、2つ以上の異なる標的に特異的に結合する2つ以上の特異的結合分子と接触させるステップであって、前記2つ以上の特異的結合分子は、前記ポリマーリンカーの反応性官能基を介して、異なるハプテンに共役されるステップと、
前記試料を、個別に検出され得る2つ以上の異なる抗ハプテンと接触させるステップと、
を含む、方法。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)当審拒絶理由で引用した引用文献1には、次の事項が記載されている。なお、下線は、下記(2)の引用発明の認定に関する部分として当審が付与した。
(1a)「【特許請求の範囲】
1. 下記工程:
- 少なくとも1つは決定対象の分析物に特異的である、少なくとも2つのプローブでの試料のインキュベーション工程、その際、該少なくとも2つのプローブが異なる標識基を保持する、
- それぞれ異なる標識基による電磁シグナルの独立した発生工程および
- 分析物の存在または量の指標としての発生したシグナルの評価工程、
による、試料中の分析物の決定方法。
2. 第2の可能なさらなるプローブが試料に含有される第2のまたは可能な他の成分に特異的であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
3. 試料中の第2の成分が標準分析物であることを特徴とする、請求項2記載の方法。
4. シグナルの発生前に、分析物に結合していない分析物特異的プローブが分析物に結合したプローブから分離されることを特徴とする、請求項1または3記載の方法。
5. 異なる標識基がそれ自体では検出するに十分大きな電磁シグナルを発生できないものの群より選ばれたものであり、該標識基は、電磁シグナルの発生可能な検出基に該標識基を変換する試薬とのインキュベーション後に反応するように誘導されることを特徴とする、請求項1または3記載の方法。
6. 異なる標識基がハプテン類および/またはビタミン類からなる群より選ばれたものであることを特徴とする、請求項5記載の方法。」

(1b)「本発明で理解するところのプローブとは、決定対象の分析物または/および標準分析物のための検出系の構成要素である。例えば、かかる構成要素は、免疫学的相互作用またはハイブリダイゼーションが起こるのに十分な数の核酸塩基の塩基対の相補的配列間の塩基対相互作用等の生物学的相互作用により分析物または標準分析物を検出するものである。したがって、プローブは、抗体、抗原、ハプテンまたは核酸もしくは天然の核酸とは異なる、例えば、糖リン酸骨格がペプチド骨格により置換されている核酸類似体(例えば、国際公開第92/20702号パンフレット等に記載されているようなもの)であることが好ましい。」(8頁21行?9頁1行)

(1c)「本発明の方法において、対応する数の決定対象の別々の分析物に特異的な2以上のプローブを用いることが原理的には可能である。この場合において、本発明の利点が明らかである。
本発明の必須の有意な特徴は、少なくとも2つのプローブが異なる標識基を保持するという事実である。最も単純な場合において、それぞれが異なる標識基を保持する2つのプローブを用いる。これら2つのプローブの内で、1つは決定対象の分析物に特異的である。本発明のさらなる態様において、これらのプローブの1つ以上が複数の標識基を保持すること、例えば、1つのプローブが2つの標識基を有することが可能である。これは、感度の上昇に導くことができる。しかしながら、複数の分析物を決定するために、2を超える異なる標識基を保持する蓋然性のある2を超えるプローブを用いることも可能である。この場合において、各プローブは、1以上の同一の標識基を含むことが可能である。本発明においてプローブが2つの異なる標識基を保持する場合を避けるべきである。
当該プローブは、当該プローブの1もしくは複数の分析物または標準分析物への十分な結合に適する量および濃度で試料に添加される。しかしながら、多くの場合、存在する分析物の量がわからないので、当該プローブは、通常、分析物の考えられうる最大量に比べて化学量論的に過剰に添加される。これは、本発明の方法の定量的評価が意図されるときに特に当てはまりうる。
本発明により、増幅後に試料を分割して各アリコートにプローブを添加する必要性はない。当該プローブは、別々ではなく一緒に試料とインキュベートすることが好ましい。したがって、比較的少量の試料が要求される。
本発明において、標識基とは、直接的または間接的に、プローブに結合可能な基である。さらに、標識基は、2つのタイプ、即ち、それ自体では検出のために十分大きな電磁シグナルを発生することができないような基および電磁シグナルを直接発生することができる基にさらに分割することができる。また、後者の基の標識基は、以下、検出基ともいう。それ自体では検出目的の適切な電磁シグナルを発生しない基は、好ましくは、例えば、ハプテン類、欧州特許出願EP-B-0 324 474号明細書に記載のジゴキシゲニンまたはビタミン類、例えば、ビオチン等のプローブと分析物との相互作用に関して前記したような生物学的相互作用を介して検出可能なすべての基である。例えば、ジゴキシゲニンは、ジゴキシゲニンに対する抗体により検出可能であり、ビオチンは、アビジン、ストレプトアビジンまたは抗ビオチン/抗体により検出可能である。
間接標識の場合、本発明の方法においては、成分を認識する前記検出可能基(抗体、アビジン等)の1つと電磁シグナルを発生可能な基(検出基)からなるコンジュゲートの使用が好ましい。このコンジュゲートは、インキュベーション期間の開始時でもプローブとの試料インキュベーション混合物に添加することができるが、分析物結合プローブから分析物に結合していない分析物特異的プローブの分離なしに、または分離後に、プローブと分析物とのインキュベーションの完了後のコンジュゲートの添加が好ましい。
さらに、分析物結合プローブから分析物に結合していない分析物特異的プローブを分離することならびに未結合プローブからさらなる試料成分結合プローブを分離することが、試料とプローブとのインキュベーション後に非常に薦められうることがわかった。」(10頁12行?11頁26行。上記摘記において不要な空行は削除している。)

(2)引用発明について
してみれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「決定対象の分析物に特異的である、少なくとも2つのプローブでの試料のインキュベーション工程、その際、対応する数の決定対象の別々の分析物に特異的で、それぞれが異なる標識基を保持する2以上のプローブを用い、
それぞれ異なる標識基による電磁シグナルの独立した発生工程および分析物の存在または量の指標としての発生したシグナルの評価工程、による、試料中の分析物の決定方法において、
前記電磁シグナルの発生工程は、標識基が、それ自体では検出のために十分大きな電磁シグナルを発生することができないような基であるハプテン類であり、該ハプテン類を認識する検出可能基である抗体の1つと電磁シグナルを発生可能な基である検出基からなるコンジュゲートを使用して、プローブと分析物とのインキュベーションの完了後に該コンジュゲートを添加する、方法。」(以下「引用発明」という。)

2 引用文献2について
当審拒絶理由で引用した引用文献2には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【特許請求の範囲】
1. 少なくとも1種の最適化された高蛍光性ポリマーに共有結合した特異性結合肢を含み、前記高蛍光性ポリマーが骨格ポリマーと、この骨格ポリマーに共有結合した蛍光性化合物とからなることを特徴とする高蛍光性接合体。
2. 前記特異性結合肢が抗体である請求の範囲第1項に記載の接合体。
3. 前記骨格ポリマーがアミン官能性ポリマーの残基を含む請求の範囲第1項に記載の接合体。
・・・
5. 前記アミン官能性ポリマーがポリアクリルアミドヒドラジド、ポリヒドラジド、ポリリシンおよびその組合せよりなる群から選択されるポリマーの残基である請求の範囲第3項に記載の接合体。
6. 前記蛍光性化合物がフルオレセン、カスケードブルー、クマリン、テキサスレッド(登録商標)およびフィコエリスリンよりなる群から選択される請求の範囲第1項に記載の接合体。
・・・
8. 少なくとも1種の最適化された高蛍光性ポリマーに共有結合した特異性結合肢を含み、前記高蛍光性ポリマーが骨格ポリマーと、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンおよびその組合せよりなる群から選択されて前記骨格ポリマーに共有結合したスペーサ化合物と、前記骨格ポリマーに共有結合しまたは前記スペーサ化合物内に収容された蛍光性化合物とからなることを特徴とする高蛍光性接合体。」

(2b)「本発明によれば、比較的低い感度を有する検出装置によっても検出しうるような量の蛍光を発する接合体が提供される。」(13頁2?3行)

(2c)「ここで用いる「最適化された高蛍光性ポリマー」という用語は、固定化された複数のシグナル発生基を有するポリマーを意味する。固定化されたシグナル発生基は、シグナル発生基から発生したシグナルを最大化させると共に、複数のシグナル発生基が互いに近すぎた際の消去作用を最小化させるよう、ポリマーに沿って並べられる。」(16頁11?15行)

(2d)「高蛍光性ポリマーは、当業界で周知された各種の技術により特異性結合肢に付着させることができる。蛍光性ポリマーを抗体のFc部分またはその近くに共有結合させることが本発明の好適特徴である。このような抗体に対するポリマーの付着は抗体のFc部分を立体障害させ、これによりたとえば或る種の細胞集団の表面に存在するFcリセプタを結合しないようにする。さらに、部位特異性付着は抗体の超可変領域を未障害で残して、所定の標的に結合させることができる。勿論、特異性結合肢を蛍光性ポリマーに結合させる方法は上記方法のみに限定されず、当業界で周知された他の方法も用いうることが了解されよう。
蛍光性ポリマーは、抗体のFc領域を酸化し、次いで酸化された抗体を上記種類のポリマーと反応させて抗体に結合させることができる。」(21頁2?12行。上記摘記において不要な空行は削除している。)

3 引用文献3について
当審拒絶理由で引用した引用文献3には、以下の事項が記載されている。
(3a)「[0053]The reporter group (“REP”) is any detectable moiety commonly used for labeling probes. Examples include fluorophores, chromogens, haptens, proteins such as enzymes, nanoparticles such as dendrimers, fullerenes, and fullerene related structures, nanocrystals, and so on. Preferred examples include 2,4-dinitrophenyl (DNP) group, fluorescein and biotin. Quantum dots may also be introduced into nucleic acid probes using the method of the invention. Quantum dots are a technology useful for labeling probes, where detection is based on the high quantum yields, non-photobleachable fluorophores composed of sulfides and selenides of certain transition metals. Such materials are available, for example, from Quantum Dot Corporation, Hayward, Calif. 」
(当審訳:[0053]レポーター基(REP)は、プローブを標識するための一般に使用される任意の検出可能な部分である。例えば、蛍光団、発色団、ハプテン、酵素などのタンパク質、デンドリマー、フラーレン、およびフラーレン関連構造体のようなナノ粒子、ナノ結晶などが挙げられる。好ましい例は、2,4-ジニトロフェニル(DNP)群、フルオレセインおよびビオチンが挙げられる。量子ドットはまた、本発明の方法を用いて核酸プローブに導入することができる。量子ドットがプローブを標識するための有用な技術であり、ここで検出は、高い量子収率を有し、ある種の遷移金属の硫化物およびセレン化物からなる非退色性の蛍光に基づいている。このような材料は、例えば、Quantum Dot Corporation,Hayward,CAから入手可能である。)

4 引用文献Cについて
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献Cには、以下の事項が記載されている。
(4a)「2.特許請求の範囲
(1) ポリエチレンイミンを担体とし、これに抗原若しくはハプテン、又は 抗体と共に、標識剤とが結合されていることを特徴とする標識複合体。
(2) 標識剤が酵素であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の標 識複合体。
(3) 標識剤が螢燐光物質であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記 載の標識複合体。
(4) 標識剤が色素であることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の標 識複合体。」

第6 当審拒絶理由の進歩性について
1 本願発明について
(1)対比
ア 本願発明と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)特異的結合分子について
引用発明の「決定対象の分析物」及び「決定対象の別々の分析物」は、本願発明の「試料における標的」及び「試料における2つ以上の異なる標的」に相当し、引用発明の「対応する数の決定対象の別々の分析物に特異的で」ある「2以上のプローブ」は、本願発明の「標的に特異的に結合する特異的結合分子」及び「2つ以上の異なる標的に特異的に結合する2つ以上の特異的結合分子」に相当する。

(イ)検出可能な標識について
引用発明の「それぞれ異なる標識基」であり「それ自体では検出のために十分大きな電磁シグナルを発生することができないような基であるハプテン類」は、本願発明の「異なるハプテン」に相当する。
そして、本願明細書の多重検出の実施例である実施例13(【0270】)において、「抗ハプテン」に量子ドットが共役して「検出可能な標識」となっていることから、引用発明の「該ハプテン類を認識する検出可能基である抗体の1つと電磁シグナルを発生可能な基である検出基からなるコンジュゲート」は、本願発明の「個別に検出され得る2つ以上の異なる抗ハプテン」を含む「検出可能な標識」に相当する。

(ウ)各ステップについて
上記(ア)及び(イ)を踏まえると、以下のことがいえる。
a 「試料を、標的に特異的に結合する特異的結合分子と接触させるステップ」について
本願発明における「特異的結合分子」が「検出可能な標識に共役されるステップ」は、上記第4の「本願発明」においてそれ以降に記載されている「「2つ以上の特異的結合分子は、前記ポリマーリンカーの反応性官能基を介して、異なるハプテンに共役されるステップ」と、「試料を、個別に検出され得る2つ以上の異なる抗ハプテンと接触させるステップ」とからなるものである。ここで、「特異的結合分子」が検出可能な標識に「共役される」とは、2つ以上の「特異的結合分子」が異なるハプテンに「共役される」ことを含むものである。

(a)「異なるハプテンに共役されるステップ」について
引用発明の「対応する数の決定対象の別々の分析物に特異的で、それぞれが異なる標識基を保持する2以上のプローブを用い」る「少なくとも2つのプローブでの試料のインキュベーション工程」と、本願発明の「前記試料を、2つ以上の異なる標的に特異的に結合する2つ以上の特異的結合分子と接触させるステップであって、前記2つ以上の特異的結合分子は、前記ポリマーリンカーの反応性官能基を介して、異なるハプテンに共役されるステップ」とは、「前記試料を、2つ以上の異なる標的に特異的に結合する2つ以上の特異的結合分子と接触させるステップであって、前記2つ以上の特異的結合分子は、異なるハプテンに共役されるステップ」の点で共通する。

(b)「異なる抗ハプテンと接触させるステップ」について
引用発明の「プローブと分析物とのインキュベーションの完了後に」、「該ハプテン類を認識する検出可能基である抗体の1つと電磁シグナルを発生可能な基である検出基からなるコンジュゲート」「を添加する」ことは、本願発明の「前記試料を、個別に検出され得る2つ以上の異なる抗ハプテンと接触させるステップ」に相当する。

(c)上記(a)及び(b)を踏まえると、
引用発明の「対応する数の決定対象の別々の分析物に特異的で、それぞれが異なる標識基を保持する2以上のプローブを用い」る「少なくとも2つのプローブでの試料のインキュベーション工程」及び「プローブと分析物とのインキュベーションの完了後に」「該ハプテン類を認識する検出可能基である抗体の1つと電磁シグナルを発生可能な基である検出基からなるコンジュゲート」「を添加する」ことと、
本願発明の「前記試料を、標的に特異的に結合する特異的結合分子と接触させるステップであって、前記特異的結合分子は、ポリビニルピロリドンから選択されるポリマー部分を含み、かつ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体、グアニジン、アミノグアニジン、ヒドロキシルアミン、またはそれらの組み合わせから選択される複数の反応性官能基をさらに含むポリマーリンカーを介して、検出可能な標識に共役されるステップ」とは、
「前記試料を、標的に特異的に結合する特異的結合分子と接触させるステップであって、前記特異的結合分子は、検出可能な標識に共役されるステップ」の点で共通する。

b 引用発明の「それぞれ異なる標識基による電磁シグナルの独立した発生工程および分析物の存在または量の指標としての発生したシグナルの評価工程」は、本願発明の「前記検出可能な標識を使用する前記標識に結合される前記特異的結合分子を検出するステップ」に相当し、引用発明の「対応する数の決定対象の別々の分析物に特異的で、それぞれが異なる標識基を保持する2以上のプローブを用い」る「試料中の分析物の決定方法」は、本願発明の「試料における2つ以上の異なる標的に対する多重分析」である「試料における標的に対して分析を行うための方法」に相当する。

イ 一致点・相違点について
してみれば、本願発明と引用発明とは、
(一致点)
「試料における標的に対して分析を行うための方法であって、
前記試料を、標的に特異的に結合する特異的結合分子と接触させるステップであって、前記特異的結合分子は、検出可能な標識に共役されるステップと、
前記検出可能な標識を使用する前記標識に結合される前記特異的結合分子を検出するステップと、
を含む、方法であって、
前記分析は、試料における2つ以上の異なる標的に対する多重分析であって、
前記試料を、2つ以上の異なる標的に特異的に結合する2つ以上の特異的結合分子と接触させるステップであって、前記2つ以上の特異的結合分子は、異なるハプテンに共役されるステップと、
前記試料を、個別に検出され得る2つ以上の異なる抗ハプテンと接触させるステップと、
を含む、方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
2つ以上の特異的結合分子が異なるハプテンに共役される際に、本願発明では、「ポリビニルピロリドンから選択されるポリマー部分を含み、かつ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体、グアニジン、アミノグアニジン、ヒドロキシルアミン、またはそれらの組み合わせから選択される複数の反応性官能基をさらに含むポリマーリンカーを介」するのに対して、引用発明では、「それぞれが異なる標識基を保持する2以上のプローブ」と特定され、そのようなポリマーリンカーを介するものかどうか不明である点。

(2)相違点の判断
ア 上記引用文献2には、摘記(2a)?(2c)に記載のとおり、フルオレセン、クマリン等の複数の蛍光性化合物を結合した骨格ポリマーを特異性結合肢に結合することにより、低感度な検出装置であっても、シグナルを増大させて検出できるようにすることが記載されており、その骨格ポリマーとして、ポリアクリルアミドヒドラジド、ポリヒドラジド、ポリリシンおよびその組合せよりなる群から選択されるポリマーの残基を有する骨格ポリマーが記載されている。ここで、フルオレセン、クマリン等は、蛍光性化合物であるとともに、本願明細書の【0015】、【0022】等に記載されているとおり本願発明の「ハプテン」でもあり、引用文献2の「特異性結合肢」は本願発明の「特異的結合分子」に相当するものである。
しかし、引用文献2の「ポリアクリルアミドヒドラジド、ポリヒドラジド、ポリリシンおよびその組合せよりなる群から選択されるポリマーの残基を有する骨格ポリマー」と、本願発明の「ポリビニルピロリドンから選択されるポリマー部分を含み、かつ、ヒドラジン、ヒドラジド、ヒドラジン誘導体、ヒドラジド誘導体、グアニジン、アミノグアニジン、ヒドロキシルアミン、またはそれらの組み合わせから選択される複数の反応性官能基をさらに含むポリマーリンカー」における「ポリマー部分」とは、引用文献2の骨格ポリマーは「ポリビニルピロリドン」を含んでいない点で、異なるものである。

イ してみれば、引用文献2には、特異的結合分子が検出可能な複数の標識に共役される際に、ヒドラジド、ヒドラジド誘導体等の複数の反応性官能基を含むポリマーリンカーを介することにより、シグナルを増大させて検出できるようにする技術が記載されているといえるものの、そのポリマー部分に「ポリビニルピロリドン」を含んでいないのであるから、引用文献1の摘記(1c)に「本発明のさらなる態様において、これらのプローブの1つ以上が複数の標識基を保持すること、例えば、1つのプローブが2つの標識基を有することが可能である。これは、感度の上昇に導くことができる。しかしながら、複数の分析物を決定するために、2を超える異なる標識基を保持する蓋然性のある2を超えるプローブを用いることも可能である。この場合において、各プローブは、1以上の同一の標識基を含むことが可能である」との上記引用文献2の技術を組み合わせる動機付けの記載があり、引用発明に上記引用文献2に記載の技術を組み合わせられるとしても、上記相違点の構成が導出できるものではない。

ウ そして、その余の上記引用文献1?3及びCの記載を参照しても、上記相違点に相当する構成が記載されているものはない。

(3)小括
よって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項、さらには、その他の上記引用文献1?3及びCに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 請求項2?12に係る発明について
請求項2?12に係る発明は、いずれも本願発明を引用するものであり、上記相違点に係る構成を備えるものであるから、本願発明と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された事項、さらにその他の上記引用文献1?3及びCに記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第7 当審拒絶理由の明確性について
上記第3の2で指摘した「抗抗体 抗体」については、平成30年11月13日に提出された手続補正により「抗-抗体の抗体」と補正され、この拒絶理由は解消された。

第8 原査定について
上記記第2で記載したとおり、原査定は、本願発明が引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとしたものである。
引用文献2に記載されている事項は、第5の2で摘記したとおりであり、そこに記載されている技術は上記第6の1の(2)アで述べたとおり、特異的結合分子が検出可能な複数の標識に共役される際に、ヒドラジド、ヒドラジド誘導体等の複数の反応性官能基を含むポリマーリンカーを介することにより、シグナルを増大させて検出できるようにするものであり、これを引用発明として、上記引用文献1に記載されている事項を組み合わせても、ポリマーリンカーのポリマー部分に「ポリビニルピロリドン」を含んでなることは導出されないのであるから、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとの原査定は維持することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審の拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2015-96627(P2015-96627)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01N)
P 1 8・ 537- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加々美 一恵  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 渡戸 正義
三崎 仁
発明の名称 免疫組織化学およびinsituハイブリダーゼーションのためのポリマー担体  
代理人 杉村 憲司  
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