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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B01J
審判 査定不服 特37 条出願の単一性( 平成16 年1 月1 日から) 取り消して特許、登録 B01J
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B01J
管理番号 1347112
審判番号 不服2017-13035  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-04 
確定日 2019-01-15 
事件の表示 特願2013- 34298「燃料電池用触媒粒子及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 8日出願公開、特開2014-161786、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年 2月25日の出願であって、平成28年10月31日付けで拒絶理由が通知され、同年12月27日付けで手続補正がされたが、平成29年 5月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、同年 9月 4日付けで拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、平成30年 1月26日付けで上申書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし10に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、平成29年 9月 4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定される下記のとおりのものであると認める。

「【請求項1】
貴金属を含有する貴金属粒子と、貴金属以外の金属を含有する非貴金属粒子との混合粒子を有し、
前記非貴金属粒子の表面には貴金属以外の金属の酸化物が存在し、前記貴金属以外の金属の酸化物は非晶質であり、前記貴金属以外の金属のデバイワラー因子は0.05以上であることを特徴とする燃料電池用触媒粒子。
【請求項2】
前記貴金属粒子は、少なくとも白金を含有することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用触媒粒子。
【請求項3】
前記非貴金属粒子における貴金属以外の金属の酸化度合いは、貴金属以外の金属の酸化物を表す組成式をMOx(式中、Mは貴金属以外の金属を示し、Oは酸素を示す)とした場合、0.3≦x≦0.9であることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料電池用触媒粒子。
【請求項4】
前記貴金属以外の金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、タンタル及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒粒子。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒粒子と、
前記触媒粒子を担持する導電性担体と、
を備えることを特徴とする燃料電池用電極触媒。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒粒子を製造する燃料電池用触媒粒子の製造方法であって、
貴金属のイオン及び貴金属以外の金属のイオンを混合した後、酸素含有雰囲気で前記貴金属のイオン及び貴金属以外の金属のイオンを同時に還元することにより、混合粒子前駆体を調製する前駆体調製工程と、
前記混合粒子前駆体を酸化することにより、前記貴金属以外の金属を含有する非貴金属粒子の表面に、前記貴金属以外の金属の酸化物を形成する酸化工程と、
を有することを特徴とする燃料電池用触媒粒子の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体調製工程は、溶媒中に貴金属のイオン及び貴金属以外の金属のイオンを混合した後、還元剤を添加する工程を有し、
前記酸化工程は、前記混合粒子前駆体が分散した溶液と酸素とを接触させる工程を有することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池用触媒粒子の製造方法。
【請求項8】
前記貴金属のイオン及び貴金属以外の金属のイオンと溶媒とを混合してなる溶液における、前記貴金属のイオン及び貴金属以外の金属のイオンの合計濃度は、4.0mM以下であることを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池用触媒粒子の製造方法。
【請求項9】
前記貴金属は、白金であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒粒子の製造方法。
【請求項10】
前記貴金属以外の金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ジルコニウム、タンタル及びモリブデンからなる群から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか一項に記載の燃料電池用触媒粒子の製造方法。」

第3 原査定の理由
原査定(平成29年 5月30日付け拒絶査定)の理由の概要は次のとおりである。

1.本願発明1は、下記の引用文献1により新規性を有しておらず、特別な技術的特徴を有さないことから、本願発明1の発明特定事項を全て含む同一カテゴリーの発明ではない本願発明6?10は、特許法第37条に規定する発明の単一性を満たさないものである。

2.本願発明1?5は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開2002-159866号公報

第4 引用発明
1.引用文献の記載事項
引用文献1には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、合金触媒の調製方法、特に固体高分子型燃料電池用の電極触媒の調製方法と、固体高分子型燃料電池の製造方法とに関する。」

(イ)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の合金触媒の調製方法を詳細に説明する。本発明の合金触媒の調製方法は、まず、担体に2種類以上の金属錯体を混合させる。
【0013】・・・上記担体としては、・・・炭素系粉末などを挙げることができる。・・・
【0014】上記2種類以上の金属錯体は、特に限定されず、目的とする触媒の組成に応じたものにする。上記金属としては、例えば、Pt・・・Co、Cr、Ni、Cu、Fe・・・を挙げることができる。・・・
【0015】上記担体に上記金属錯体を混合させる方法としては、特に限定されないが、粉末混合(固相混合)若しくは液相混合が好ましい。上記粉末混合としては、例えば、室温において、N_(2)等の不活性ガス雰囲気中で連続的に約10分間以上攪拌、混合させることが好ましい。」

(ウ)「【0018】次に、本発明の合金触媒の調製方法は、上記混合させた後、還元剤または還元ガスによって上記金属を還元させる。上記粉末混合の場合は還元ガスが好ましく、上記液相混合の場合は還元剤または還元ガスが好ましい。
【0019】上記還元ガスは、・・・水素ガスが好ましい。水素ガスの濃度は1?100vol%が好ましい。還元条件としては、特に限定されないが、室温?約500℃で約10分間以上還元ガスを通過させるのが好ましく、約150?200℃で約1?2時間還元ガスを通過させるのが更に好ましい。」

(エ)「【0021】そして、本発明の合金触媒の調製方法は、上記金属を酸化処理させる。上記酸化処理としては、酸素ガス・・・により、金属表面に酸素を付与することが好ましい。・・・酸素及びスチーム処理でさらに好ましい条件としては、例えば0.1、0.3、0.5、1.0、5.0vol%と徐々に酸化ガス濃度を上げていき、各濃度1?60分で処理する方法が挙げられる。このようにマイルドな酸化処理をすることにより、合金触媒を大気中に取出した際の急激な酸化を防ぎ、微粒子の状態で合金触媒を得ることができる。酸化処理をせずに大気中に取出した場合、急激に合金触媒が酸化され、担体のカーボンが燃焼する。この燃焼により活性金属が焼結することによって、金属粒径が粗大化してしまう。
【0022】このような工程を経て調製された合金触媒は、少なくとも2種類以上の金属が高い合金化度合いを示し、なおかつ微粒子化した活性金属を含む合金触媒を得ることができる。」

(オ)「【0026】
【実施例】本発明に係る合金触媒の調製方法の実施例を以下に挙げる。
【0027】実施例1
あらかじめPtが40wt%微粒子化担持されているケッチェンカーボン0.8gに、ルテノセンを0.457g添加した後、室温にて、N_(2)流通下で10分攪拌し粉末混合した。次に、N_(2)流通下のまま混合粉末中の温度を150℃まで昇温した後、N_(2)からH_(2)流通下へ変更し、そのまま2時間攪拌保持した。そして、再度N_(2)流通下へ変更し室温まで冷却後、O_(2)を0.1vol%の割合で混合流通させ、そのまま30分攪拌保持した。その後、O_(2)濃度を0.3、0.5、1.0、5.0vol%と徐々に上げていき、各O_(2)濃度においての攪拌保持時間を30分として触媒粉末を十分にO_(2)と接触させた後、大気中へ取出す事により粉末触媒1を得た。」

(カ)「【0030】実施例4
実施例1において、ケッチェンカーボン0.4gにビスアリル白金(II)0.4gとルテノセン0.457gを添加した後、室温、N_(2)流通下で10分攪拌混合した後は前述した実施例1と同様にして粉末触媒31を得た。尚、粉末触媒31のケッチェンカーボンへの担持量は実施例1と同様にした。
【0031】実施例5
実施例4のルテノセンの代わりに・・・塩化コバルト、塩化クロム、塩化ニッケル、塩化銅、塩化鉄・・・を用いる事以外は前述した実施例4と同様にして粉末触媒32?45を得た。」

(キ)「【0038】
【表2】



2.引用発明
したがって、記載事項(ア)、(オ)?(キ)より、引用文献1の実施例5には粉末触媒40として次の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されていると認められる。

「ケッチェンカーボンにビスアリル白金(II)と塩化コバルトを添加し、室温、N_(2)流通下で10分攪拌粉末混合し、N_(2)流通下のまま混合粉末中の温度を150℃まで昇温し、N_(2)からH_(2)流通下へ変更し、そのまま2時間攪拌保持し、再度N_(2)流通下へ変更し室温まで冷却し、O_(2)を0.1vol%の割合で混合流通させ、そのまま30分攪拌保持し、O_(2)濃度を0.3、0.5、1.0、5.0vol%と徐々に上げていき、各O_(2)濃度においての攪拌保持時間を30分として触媒粉末を十分にO_(2)と接触させた後、大気中へ取出すことにより得られた活性金属として、白金及びコバルトの合金粒子を有する燃料電池用粉末触媒。」

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用1発明とを対比する。
引用1発明の「白金」は本願発明1の「貴金属」に相当し、以下同様に、「コバルト」は「貴金属以外の金属」及び「非貴金属」に相当し、「粉末触媒」は「触媒粒子」に相当する。
してみれば、本願発明1と引用1発明とは、
「貴金属及び貴金属以外の金属を含有する燃料電池用触媒粒子」である点で一致し、本願発明1では、「貴金属を含有する貴金属粒子と、貴金属以外の金属を含有する非貴金属粒子との混合粒子を有し、非貴金属粒子の表面には貴金属以外の金属の酸化物が存在し、前記貴金属以外の金属の酸化物は非晶質であり、前記貴金属以外の金属のデバイワラー因子は0.05以上である」に対し、引用1発明では、白金とコバルトは合金を形成しており、コバルトの表面に、非晶質であるコバルトの酸化物が存在し、コバルトのデバイワラー因子が0.05以上であるかどうかが明らかでない点で相違する。

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討する。
本願明細書の段落【0035】?【0037】には、「貴金属イオン及び貴金属以外の金属のイオンが混合した混合溶液に還元剤を添加し、貴金属イオン及び貴金属以外の金属のイオンを同時に還元させる。これにより、貴金属粒子3と非貴金属粒子5との混合粒子前駆体を得ることができる。」、「貴金属イオンと貴金属以外の金属のイオンの還元速度を比較すると、貴金属イオンの還元速度の方が圧倒的に速い。その結果、貴金属以外の金属は結晶性の高い状態に至らず、非貴金属粒子は結晶性が非常に低い状態で存在する。さらに、非貴金属粒子の周囲には結晶性の高い貴金属原子が存在することで、非貴金属粒子は結晶性が低いまま、混合粒子前駆体中に存在することが可能となる。」、「混合粒子前駆体が分散した溶液を大気中の酸素と接触させ、非貴金属粒子の表面に存在する貴金属以外の金属を酸素により酸化させる。このように、本実施形態の製造方法では、溶液雰囲気をあえて大気開放とする。これにより、非貴金属粒子の表面に貴金属以外の金属の酸化被膜を形成することができる。」ことが記載されている。
してみれば、本願発明1は、大気開放された混合溶液において、貴金属イオン及び貴金属イオン以外の金属イオンを還元剤を用いて還元することで、貴金属粒子と非貴金属粒子との混合粒子前駆体を得ながら、混合粒子前駆体中に存在する結晶性が低い非貴金属粒子の表面に存在する貴金属以外の金属を酸化させることによって、得られるものと認められる。
一方、引用1発明は、ビスアリル白金(II)と塩化コバルトを粉末混合し、H_(2)流通下で還元させた後、O_(2)ガスを流通させることで酸化させているものであって、大気開放された還元剤を含む混合溶液において、白金イオン及びコバルトイオンの還元及び酸化を行っているものではないから、結晶性が低い状態でコバルト粒子が存在するものとはいえないし、コバルトのデバイワラー因子が0.05以上であるともいえない。
また、引用文献1に引用1発明において、コバルトのデバイワラー因子を0.05以上とする動機付けとなるような記載はない。
よって、本願発明1は、引用文献1に記載された発明ではないし、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

2.本願発明2?5について
本願発明2?5は、本願発明1を直接または間接的に引用するものであるから、1.での検討と同様に、引用文献1に記載された発明ではないし、引用文献1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。

第6 原査定についての判断
上記第5のとおり、本願発明1?5は、引用文献1に記載された発明ではないし、同発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
そして、本願発明1及びこれを引用する本願発明2?10は、同一の特別な技術的特徴を有するから、発明の単一性の要件を満たすものである。
したがって、原査定を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

第7 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-25 
出願番号 特願2013-34298(P2013-34298)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B01J)
P 1 8・ 65- WY (B01J)
P 1 8・ 113- WY (B01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大城 公孝  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 後藤 政博
山崎 直也
発明の名称 燃料電池用触媒粒子及びその製造方法  
代理人 三好 秀和  

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