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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60W
管理番号 1347135
審判番号 不服2018-5154  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-04-13 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2015-183905「車速制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成29年3月23日出願公開、特開2017-56857、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年9月17日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成29年10月16日付け :拒絶理由通知書
平成29年12月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年1月5日付け :拒絶査定
平成30年4月13日 :審判請求書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成30年1月5日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有するものが容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献一覧>
1.特開2000-339580号公報

第3 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成29年12月22日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
自車両に先行して走行する先行車が検出されない場合に予め設定された設定車速に合わせて前記自車両の車速を制御し、前記先行車が検出された場合に前記先行車に追従して前記自車両の車速を制御する車速制御を実行する車速制御装置において、
地図上で予め設定された加速制御禁止領域を記憶すると共に、前記加速制御禁止領域として、自動車専用道路の退出路分岐区間および前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から分岐する退出路を記憶する地図記憶部と、
前記自車両の地図上の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された位置に基づいて、前記自車両が前記加速制御禁止領域に位置するか否かを判定する位置判定部と、
前記先行車が検出されない場合であって前記位置判定部により前記自車両が前記加速制御禁止領域に位置すると判定された場合に、前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行する車速制御部と、
前記位置検出部により検出された前記自車両の地図上の位置に基づいて、前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したか否かを判定する進入判定部と、
前記進入判定部により前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したと判定された場合に、前記自車両の運転者に前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行していることを報知し、前記進入判定部により前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したと判定されていない場合に、前記自車両の運転者に前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行していることを報知しない報知部と、
を備える車速制御装置。」

第4 引用文献、引用発明
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された特開2000-339580号公報(以下「引用文献1」という。)には、「道路地図の記憶方法」に関して、図面(特に、図2、図5、図6及び図8参照。)とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

ア 「【0023】(第2の実施の形態)第2の実施の形態は、本発明を、前車との車間距離を一定に保ちつつ、設定された車速を上限とする範囲で、定速走行可能な車両制御装置に適用したものである。
【0024】具体的には、先行車がレーンを離脱し、設定車速まで加速可能な状態であっても、高速道路や有料道路の分岐手前では加速を禁止することによって、分岐離脱時の不意な加速を抑えるものである。
【0025】図5は、本発明による道路地図の記憶方法の第2の実施の形態を示す構成図である。
【0026】まず、構成を説明する。本装置は、GPSレシーバ等からなる測位手段や車速信号取得手段、および、振動ジャイロ等の角速度算出手段からなる現在位置算出手段601、地図情報が記憶されたCD-ROMやDVD-ROM等の記憶デバイスと、その読み出しドライバ等からなる地図情報記憶手段602、車両が高速道路や有料道路を走行中であることを検出する高速道路・有料道路検出手段603、高速道路や有料道路を走行中に、現在位置の前方にある分岐の位置を検出する分流位置検出手段604、定速走行時の車速を設定する車速設定手段605、先行車両に追従する際の車間距離を設定する車間距離設定手段606、車間距離制御型定速走行装置による制御の開始終了を指示する制御開始終了指示手段607、車両の速度を検出する車速検出手段608、先行車との車間距離を計測する車間距離計測手段609、分合流手前に加速禁止領域を設定する加速禁止領域設定手段610、設定車速、設定車間距離、現在の車速、現在の車間距離、加速禁止領域の情報を基に車速や車間距離の制御を行なう車両制御手段611、および、制御状態を表示する、ディスプレイやスピーカ等の表示手段612とからなる。
【0027】以下、第2の実施の形態の作用の流れを説明する。
(5-1)定速走行装置を利用したい場面になったら、運転者は、制御開始終了指示手段607によって、制御開始を指示する。
【0028】(5-2)運転者は、車速設定手段605と車間距離設定手段606によって、定速走行を行なう速度と、先行車までの車間距離を設定する。車速は、例えば、60km/hから110km/hの範囲で任意に設定でき、車間距離は、大中小の3段階に設定できるものとする。それぞれ、運転席付近に設定された、スイッチの操作によって行なう。
【0029】(5-3)GPSレシーバ等で構成される現在位置算出手段601によって、車両の現在位置を特定する。
【0030】(5-4)地図情報記憶手段602に記憶された地図情報を参照して、高速道路、有料道路検出手段603によって、車両が高速道路、あるいは、有料道路を走行中であるか否かを検出する。
【0031】(5-5)(5-2)で、高速道路や有料道路を走行中であることが認識されると、分流位置検出手段604によって、地図情報記憶手段602に記憶された地図情報が参照され、高速道路、および、有料道路の分岐に関わる情報が抽出される。具体的には、図2に示すように、現在位置から分岐車線入口までの距離D1や分岐開始位置までの距離D2が算出される。
【0032】(5-6)本発明の定速走行装置は、高速道路や有料道路での使用を前提としているため、もし高速道路や有料道路を走行中でないときは、高速道路や有料道路で使用するのが望ましい旨、表示手段612に絵や音で出力される。
【0033】(5-7)運転者から制御開始の指示があったときは、車速制御手段611において、所定の制御が実行される。
【0034】(5-8)具体的には、車速検出手段608によって車速が、車間距離計測手段609によって先行車との車間距離が、それぞれ計測される。各々の値は車速制御手段611に入力された後、設定された車速や車間距離と比較され、必要な加速、減速制御が行なわれる。
【0035】(5-9)(5-5)において、前方に分岐があると判断されたときは、加速禁止領域設定手段610において、まず、分流の余裕代を計算する。具体的には、図2に示すように、前方に分岐があるときは、分流余裕代として“D2-D1”を算出する。
【0036】(5-10)分岐余裕代“D2-D1”が一定値(例えば300m)より大きいとき(分岐レーンが長く続くとき)は、車線変更の余裕代が大きい場合が多いので、分岐終了の例えば200m手前を加速禁止の開始位置に、また、分岐終了点を加速禁止解除位置に設定する。
【0037】一方、分岐余裕代“D2-D1”が一定値(例えば300m)より小さいとき(分岐余裕が少ないとき)は、車線変更の余裕代が少ない場合が多いので、分岐終了の例えば300m手前を加速禁止の開始位置に、また、分岐終了点を加速禁止解除位置に設定する。
【0038】(5-11)車速制御手段611において、現在位置算出手段601で常時算出される車両位置と、(5-10)で設定した加速禁止領域のデータが照合され、加速禁止領域の内部にいると判断されると、先行車がいない、車速が設定車速以下、といった加速可能な条件であっても、加速制御が禁止される。
【0039】(5-12)加速禁止領域を離脱すると、加速制御が可能となり、設定車速までの加速が行なわれる。
【0040】(5-13)制御開始終了指示手段607によって、制御終了が指示されると、車速制御動作が終了し、通常の運転モードに切り替わる。
【0041】以上、第2の実施の形態の全体の処理の流れを、図6のフローチャートに示す。なお、第2の実施の形態に記した具体的数値は、ここに記した限りではない。」

イ 上記アの段落【0023】、【0026】及び【0034】から、先行車が存在する場合に先行車との車間距離を一定に保つように自車両の車速を制御し、先行車が存在しない場合に設定車速を基に自車両の車速を制御する車速制御を実行することは明らかである。また、先行車との車間距離を計測する車間距離計測手段609を備えているから、先行車を検出することも明らかである。

ウ 上記アの段落【0031】から、分流位置検出手段604は、地図情報記憶手段602に記憶された地図情報を参照して分岐に関わる情報を抽出することが分かる。また、上記アの段落【0035】ないし【0037】から、加速禁止領域設定手段610は、分岐終了の手前から分岐終了点までを加速禁止領域に設定することが分かる。さらに、設定された前記加速禁止領域を記憶する手段が設けられていることは明らかである。
そうすると、地図情報記憶手段602に記憶された地図情報を参照して分岐に関わる情報を抽出する分流位置検出手段604と、分岐終了の手前から分岐終了点までを加速禁止領域に設定する加速禁止領域設定手段610と、前記加速禁止領域を記憶する手段が設けられているといえる。

エ 上記アの段落【0038】から、車両位置と加速禁止領域のデータを照合することで、車両が前記加速禁止領域の内部にいることを判断することが分かるから、車両位置に基づいて、自車両が前記加速禁止領域の内部にいるか否かを判断する位置判定部が設けられているといえる。

オ 上記アの段落【0038】から、現在位置算出手段601で車両位置を算出することが分かる。また、上記ウ及びエで述べたように、車両位置は、地図情報に基づいて設定される加速禁止領域のデータと照合されるものであることを踏まえると、車両位置は地図上の位置として認識されるものといえる。

上記アないしオ並びに図2、図5、図6及び図8の図示内容を総合すると、引用文献1には、「車両制御装置」に関して、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

〔引用発明〕
「先行車が検出されない場合に設定車速を基に自車両の車速を制御し、前記先行車が検出された場合に前記先行車との車間距離を一定に保つように前記自車両の車速を制御する車速制御を実行する車両制御装置において、
地図情報記憶手段602に記憶された地図情報を参照して分岐に関わる情報を抽出する分流位置検出手段604と、分岐終了の手前から分岐終了点までを加速禁止領域に設定する加速禁止領域設定手段610と、前記加速禁止領域を記憶する手段と、
車両位置を地図上の位置として算出する現在位置算出手段601と、
前記現在位置算出手段601で算出された車両位置に基づいて、前記自車両が前記加速禁止領域の内部にいるか否かを判断する位置判定部と、
前記先行車がいない条件であっても前記位置判定部により前記自車両が前記加速禁止領域の内部にいると判断されると、前記自車両の加速制御を禁止する車速制御手段611と、
制御状態を表示する表示手段612と、
を備える車両制御装置。」

第5 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「先行車」は、その構成、機能又は技術的意義からみて、本願発明における「自車両に先行して走行する先行車」に相当し、以下同様に、「設定車速を基に自車両の車速を制御し」は「予め設定された設定車速に合わせて前記自車両の車速を制御し」に、「前記先行車との車間距離を一定に保つように前記自車両の車速を制御する」は「前記先行車に追従して前記自車両の車速を制御する」に、「車速制御を実行する車両制御装置」は「車速制御を実行する車速制御装置」に、「車両位置を地図上の位置として算出する現在位置算出手段601」は「前記自車両の地図上の位置を検出する位置検出部」に、「前記現在位置算出手段601で算出された車両位置に基づいて、前記自車両が前記加速禁止領域の内部にいるか否かを判断する位置判定部」は「前記位置検出部により検出された位置に基づいて、前記自車両が前記加速制御禁止領域に位置するか否かを判定する位置判定部」に、「前記先行車がいない条件であっても前記位置判定部により前記自車両が前記加速禁止領域の内部にいると判断されると、前記自車両の加速制御を禁止する車速制御手段611」は「前記先行車が検出されない場合であって前記位置判定部により前記自車両が前記加速制御禁止領域に位置すると判定された場合に、前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行する車速制御部」に、それぞれ相当する。
また、引用発明における「地図情報記憶手段602に記憶された地図情報を参照して分岐に関わる情報を抽出する分流位置検出手段604と、分岐終了の手前から分岐終了点までを加速禁止領域に設定する加速禁止領域設定手段610と、前記加速禁止領域を記憶する手段」と、本願発明における「地図上で予め設定された加速制御禁止領域を記憶すると共に、前記加速制御禁止領域として、自動車専用道路の退出路分岐区間および前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から分岐する退出路を記憶する地図記憶部」とは、「加速制御禁止領域を記憶する記憶部」という限りで共通する。
引用発明における「制御状態を表示する表示手段612」と、本願発明における「前記進入判定部により前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したと判定された場合に、前記自車両の運転者に前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行していることを報知し、前記進入判定部により前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したと判定されていない場合に、前記自車両の運転者に前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行していることを報知しない報知部」とは、「制御状態を報知する報知部」という限りで共通する。

そうすると、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点がある。

〔一致点〕
「自車両に先行して走行する先行車が検出されない場合に予め設定された設定車速に合わせて前記自車両の車速を制御し、前記先行車が検出された場合に前記先行車に追従して前記自車両の車速を制御する車速制御を実行する車速制御装置において、
加速制御禁止領域を記憶する記憶部と、
前記自車両の地図上の位置を検出する位置検出部と、
前記位置検出部により検出された位置に基づいて、前記自車両が前記加速制御禁止領域に位置するか否かを判定する位置判定部と、
前記先行車が検出されない場合であって前記位置判定部により前記自車両が前記加速制御禁止領域に位置すると判定された場合に、前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行する車速制御部と、
制御状態を報知する報知部と、
を備える車速制御装置。」

〔相違点1〕
加速制御禁止領域を記憶する記憶部について、本願発明においては、「地図上で予め設定された加速制御禁止領域を記憶すると共に、前記加速制御禁止領域として、自動車専用道路の退出路分岐区間および前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から分岐する退出路を記憶する地図記憶部」であるのに対して、
引用発明においては、「地図情報記憶手段602に記憶された地図情報を参照して分岐に関わる情報を抽出する分流位置検出手段604と、分岐終了の手前から分岐終了点までを加速禁止領域に設定する加速禁止領域設定手段610と、前記加速禁止領域を記憶する手段」である点。

〔相違点2〕
本願発明においては、「前記位置検出部により検出された前記自車両の地図上の位置に基づいて、前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したか否かを判定する進入判定部」を備えているのに対して、
引用発明においては、かかる事項を備えていない点。

〔相違点3〕
制御状態を報知する報知部について、本願発明においては、「前記進入判定部により前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したと判定された場合に、前記自車両の運転者に前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行していることを報知し、前記進入判定部により前記自車両が前記自動車専用道路の前記退出路分岐区間から前記退出路に進入したと判定されていない場合に、前記自車両の運転者に前記自車両の加速制御を禁止した前記車速制御を実行していることを報知しない報知部」であるのに対して、
引用発明においては、「制御状態を表示する表示手段612」である点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、先ず、上記相違点3について検討する。
引用文献1には、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を示唆する記載はない。
また、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、「自車両が自動車専用道路を直進して退出路分岐区間を通過する度に、運転者に対して自車両の加速制御を禁止した車速制御を実行していることを報知すると、運転者が煩わしさを感じるおそれがある。」(本願明細書の段落【0006】)及び「退出路に進入して先行車がいなくなった自車両が加速しなくても運転者が自車両の走行に違和感を覚える」(同)との課題を解決するものであり、当該課題が本願の出願前に当業者にとって自明ないし周知であったとはいえないから、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項は設計的事項とはいえない。
そうすると、引用発明において、当業者の通常の創作能力の範囲内で、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たとはいえない。

したがって、本願発明は、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-18 
出願番号 特願2015-183905(P2015-183905)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田村 佳孝  
特許庁審判長 金澤 俊郎
特許庁審判官 粟倉 裕二
鈴木 充
発明の名称 車速制御装置  
代理人 黒木 義樹  
代理人 大森 鉄平  
代理人 小飛山 悟史  
代理人 長谷川 芳樹  
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