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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C07D
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C07D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C07D
管理番号 1347218
審判番号 不服2018-6587  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-14 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2014-553022「ハロヒダントイン化合物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月26日国際公開、WO2014/097787、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2013年11月15日(優先権主張 2012年12月19日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成29年8月4日付けで拒絶理由が通知され、同年10月4日に意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月7日付けで拒絶査定がされ、同年5月14日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶の理由は、平成29年8月4日付け拒絶理由通知における理由1であり、その理由1の概要は、この出願の請求項1?7に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された引用文献1?3に記載された発明に基いて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

引用文献1:国際公開第2007/26766
引用文献2:特開平10-28529号公報
引用文献3:特開2005-291598号公報
引用文献4:Sigma Aldrich社,ALDRICH Chemistry Handbook of Fine Chemicals,2009-2010,p.867
なお、引用文献4は、平成29年10月4日付け手続補正により削除された物の発明に係る請求項8に対して引用された文献である。

第3 特許請求の範囲の記載
この出願の特許請求の範囲の記載は、平成30年5月14日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項によって特定された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにハロヒダントイン化合物を含む組成物が予め入れられた乾燥機の内に、当該乾燥機の外部から不活性ガスを導入しながら、且つ、当該乾燥機の内を大気圧より減圧することにより上記組成物を乾燥させる工程を含み、
乾燥させる前の水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の全量に対する、上記不活性ガスの導入速度が、0.01モル%当量/分以上、5.0モル%当量/分以下であり、
上記乾燥機は、容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、又は棚段式真空乾燥機である、ハロヒダントイン化合物の製造方法。
【請求項2】
乾燥させる間の上記乾燥機内の温度が15℃以上、100℃以下であり、昇温速度が1℃/時間以上、40℃/時間以下である、請求項1に記載のハロヒダントイン化合物の製造方法。
【請求項3】
乾燥させる間の上記乾燥機の内の圧力が0.1kPa以上、50kPa以下である、請求項1又は2に記載のハロヒダントイン化合物の製造方法。
【請求項4】
上記有機溶媒が、大気圧下における沸点温度30℃以上、200℃以下であって、エステル系溶媒、芳香族系溶媒、エーテル系溶媒及び塩素系溶媒よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1?3のいずれか1項に記載のハロヒダントイン化合物の製造方法。
【請求項5】
上記ハロゲン単体が、ヨウ素、臭素及び塩素よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1?4のいずれか1項に記載のハロヒダントイン化合物の製造方法。
【請求項6】
上記ハロヒダントイン化合物が、下記化学式I
【化1】

(ここで、R_(1)及びR_(2)は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、H、置換もしくは非置換の炭素数1?10の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の炭素数
3?10の脂環式炭化水素基、又は、アリル基もしくは炭素数6?10のアラルキル基であり、
X_(1)及びX_(2)は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、H又はハロゲン原子であり、ただし、X_(1)及びX_(2)が共に水素原子である形態は含まない)
で示される化合物である、請求項1?5のいずれか1項に記載のハロヒダントイン化合物の製造方法。 」(以下「本願発明1」?「本願発明6」という。)

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、次の事項が記載されている。
(1a)「請求の範囲
[1]1,3-ジヨードヒダントイン化合物を含む湿体を準備する工程と、
前記湿体を加熱気体に接触させることにより、前記湿体を乾燥させる工程と、
を有する、1,3-ジヨードヒダントイン化合物の製造方法。」

(1b)「技術分野
[0001]
本発明は、1,3-ジヨードヒダントイン化合物およびその製造方法に関する。詳細には、本発明は、当該化合物の長期安定性を向上させるための改良に関する。
背景技術
[0002]
1,3-ジヨードヒダントイン化合物(以下、単に「DIH化合物」とも称する)は、写真等の感光剤として、あるいは医薬品、農薬、化学品等の製造工程におけるヨウ素化剤または酸化剤として、広く用いられている。
[0003]DIH化合物を製造する手法としては、例えば、水溶液中、塩基の存在下で、ヒダントイン化合物に一塩化ヨウ素を反応させる手法が開示されている(例えば、特開2002-30072号公報およびJ.Org.Chem.,30(1965)1101?1104を参照)。かような手法は、簡便かつ高効率であり、精製や廃液処理等の後処理も容易であるという利点を有している。
[0004]ここで、特開2002-30072号公報には、反応系からDIH化合物を精製する手法として、「析出した結晶を濾集し、得られた結晶を減圧下で乾燥する」旨が記載されている。
[0005]ところで、上記の文献に記載の手法などにより製造されたDIH化合物は、上述した用途に使用されるまで貯蔵されるのが通常である。かような貯蔵方法としては、例えば、減圧条件下、窒素雰囲気下で、暗所にて貯蔵する手法が開示されている(例えば、J.Labelled Compd.Radiopharm.,44-12(2001)815-830を参照)。
発明の開示
[0006]しかしながら、上記文献には、取扱いが容易で保存安定性に優れるDIH化合物についての記載はなく、上記文献に記載の製造方法によりDIH化合物を製造する際や、上記文献に記載のような一般的な貯蔵方法によりDIH化合物を貯蔵した場合、当該DIH化合物は純度が低下しやすいという問題があることが、本発明者らの検討により判明した。かような純度の低下は、DIH化合物が分解してヨウ素原子がヨウ素の単体(I_(2))として遊離することに起因するものと考えられる。このようにI_(2)が遊離すると、当該I_(2)による資機材の着色や腐食という問題や、取扱者に対する危険性の増大といった問題が生じる虞がある。
[0007]そこで本発明は、DIH化合物の製造時や貯蔵時におけるI_(2)の遊離を抑制し、これによりDIH化合物の純度低下や、I_(2)に起因する種々の問題を解決しうる手段を提供することを目的とする。」

(1c)「
[0041]以下、本発明の製造方法の特徴的な工程について説明する。
[0042]上述したように、本発明の製造方法では、上記で得られた「DIH化合物を含む湿体」について、(1)前記湿体を加熱気体に接触させることにより、前記湿体を乾燥させる、または(2)前記湿体を凍結乾燥させる。
[0043]まず、(1)の手法について詳細に説明する。
[0044](1)の手法においては、上記で調製した「DIH化合物を含む湿体」を、加熱気体に接触させることにより、当該湿体を乾燥させる。すなわち、(1)の手法では、いわゆる「流動乾燥」を採用する。
[0045]従来、DIH化合物を含む湿体を乾燥させる手法としては、工業的に一般的な乾燥方法が採用されていた。具体的には、例えばコニカルドライヤーを用いた減圧加熱乾燥法や、例えば棚段乾燥機を用いた常圧加熱乾燥法などが採用されていた。しかしながら、本発明者らは、上述したように、これらの方法によっては、DIH化合物を含む湿体の一部が分解してしまい、I_(2)が遊離してしまうことを見出した。具体的には、2?15%の水分を含有する、DIH化合物(5,5-ジメチル体)の湿体を40℃に加熱して3時間保持すると、当該化合物の4?6%が分解してしまい、I_(2)が遊離する。また、同様に70℃に加熱して3時間保持すると、9?30%が分解してしまうのである。その結果、DIH化合物の純度低下および遊離したI_(2)によって資機材が着色または腐食という問題や、取扱者に対する危険性が増大するといった問題が生じる虞がある。
[0046]これに対し、上記の(1)のような手法によれば、湿体の乾燥時に従来問題となっていたI_(2)の遊離が最小限に抑制されうる。なお、従来の乾燥手法と本願の乾燥手法とでI_(2)の遊離の程度に差が生じるメカニズムは完全には明らかではないが、従来の乾燥手法では湿体が数時間単位といった長時間にわたって高温条件下にさらされることで、熱に不安定なDIH化合物が分解してしまうのではないかと考えられる。従って、本願の製造方法によれば、DIH化合物の製造時のI_(2)の遊離が最小限に抑制されるばかりか、加熱時間も短縮されるため、迅速な製造が可能となり、製造コストの削減にも寄与しうる。ただし、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、メカニズムによる影響を受けることはない。
[0047]流動乾燥の具体的な形態については特に制限されず、化合物の合成分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。以下、流動乾燥における好ましい形態を例示する。ただし、下記の形態のみには制限されない。
[0048]本願において「加熱気体」とは、DIH化合物を含む湿体との接触により当該湿体を乾燥させうる程度の温度を有する気体を意味する。加熱気体は、DIH化合物と反応しない気体であることが好ましい。加熱気体の具体的な組成としては、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、空気ガス、およびこれらの混合ガスなどが挙げられるが、加熱気体の組成がこれらに制限されることはない。加熱気体としては、好ましくは空気ガスが用いられる。
[0049]前記湿体と接触する際の加熱気体の温度については特に制限されず、製造されるDIH化合物の物性や流動乾燥における一般的な知見を総合的に勘案して決定されうる。ただし、加熱気体の温度は、好ましくは20?200℃、より好ましくは40?170℃、さらに好ましくは90?130℃である。加熱気体の温度が低すぎると、熱量が不充分である結果、乾燥に長時間を要し、または所望の含液率にまで乾燥できない虞がある。一方、加熱気体の温度が高すぎると、過熱によりDIH化合物の変質(分解や融解)が発生する虞がある。
[0050]前記湿体と接触する際の加熱気体の流量についても特に制限はないが、好ましくは0.1?10.0m/秒、より好ましくは0.3?5.0m/秒、さらに好ましくは0.5?3.0m/秒である。加熱気体の流量が小さすぎると、加熱気体が湿体全体に充分に接触できない結果、乾燥に長時間を要し、または所望の含液率にまで乾燥できない虞がある。一方、加熱気体の流量が大きすぎると、湿体が過度に飛散して捕集が困難となる虞がある。」

(1d)「[0075]<実施例1>
DIH化合物を含む湿体として、酢酸n-ブチル(2質量%)および水(13質量%)を含有する5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントイン(20kg)を準備した。
[0076]上記で準備した湿体を流動乾燥器中に仕込み、加熱気体として110℃の空気を1m/秒の流量で前記湿体に30分間接触させることにより前記湿体を乾燥させて、5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントインの淡黄色結晶粉末を、98%以上の純度で得た。
[0077]次いで、得られた粉末における遊離I_(2)および水の含有量を測定した。その結果、遊離I_(2)の含有量は0.2質量%以下であり、水の含有量は1質量%以下であった。なお、遊離I_(2)および水の含有量の測定は以下の手法により行った。」

(1e)「
[0088]<比較例1>
DIH化合物を含む湿体として、酢酸n-ブチル(2質量%)および水(13質量%)を含有する5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントイン(200kg)を準備した。
[0089]上記で準備した湿体を1000Lコニカルドライヤー中に仕込み、2700?5300Paの減圧条件下、40?70℃にて乾燥させた。
[0090]その結果、乾燥開始から約4時間後に5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントインの分解が進行し、I_(2)が遊離した。そして乾燥開始から約8時間後には、遊離I_(2)により減圧ラインが閉塞し、以降、コニカルドライヤーによる乾燥が継続できない状態となった。この際、得られた5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントインは赤色結晶であって、2質量%以上の遊離I_(2)および8質量%の水を含有しており、実用には供し得ないものであった。なお、この赤色結晶をポリエチレン製容器中に密封した状態で5℃にて貯蔵したが、数週間のうちにさらにI_(2)の遊離が進行し、遊離したI_(2)が容器上部に付着する様子が観察された。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 減圧状態に管理することが可能な減圧室内に流動床乾燥装置を収容し、排気手段を介して前記減圧室内の空気を排出して前記流動床内外の圧力を常時減圧状態に維持するとともに、前記流動床内に温風を導入する一方、この流動床内の温度を温度センサで検知し、前記温風の温度を調整しながら被乾燥体を乾燥するようにしたことを特徴とする被乾燥体の乾燥方法。
【請求項2】 前記流動床内の温度を常温?90℃の範囲に制御することを特徴とする被乾燥体の乾燥方法。」

(2b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、お茶のように、微妙な香ばしさが要求される食品等を乾燥させる場合は、乾燥時間、乾燥温度などを制御することが困難で、多少の違いによっても風味に微妙な違いが生じてしまい、乾燥処理に関し熟練が要求されている。また、程よく乾燥させるには、多大な時間が要求されるため、従来から改善が求められていた。
【0006】本発明は上記実情に鑑み、微妙な香ばしさが要求される食品等を乾燥させる場合にも、その独特の風味を外部に逃すことなく乾燥させることができ、しかも乾燥度合いの調整が簡単で、さらには短時間のうちに乾燥処理することが可能な被乾燥体の乾燥方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、被乾燥体を乾燥するにあたり流動床乾燥装置を減圧状態に管理することが可能な減圧室内に収容し、さらにこの流動床乾燥装置の流動床内を常時減圧下に管理して被乾燥体を乾燥するようにしている。」

(2c)「【0022】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る被乾燥体の乾燥方法によれば、減圧状態に管理される密封された減圧室内に乾燥装置が設置され、被乾燥体を乾燥しているので、全体を略均一に乾燥することができるとともに、乾燥時間を短くすることができる。また、流動床内外の圧力を減圧しているので、流動床内の温度を細胞壁が破壊されることのない低い温度に設定することができ、したがって、被乾燥体の有する風味を損なわずに、この被乾燥体を乾燥することができた。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、次の事項が記載されている。

(3a)「【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置内を減圧させる真空ポンプと、該真空ポンプの動作にて減圧した中で蒸気を生成する蒸気タンクと、減圧蒸気を加熱して減圧過熱蒸気とする加熱ヒ-タと、被乾燥物を乾燥させる流動層乾燥装置本体とからなり、前記減圧過熱蒸気を前記流動層乾燥装置本体内に流入させて減圧過熱蒸気にて被乾燥物を流動状態にて乾燥させてなることを特徴とする減圧過熱蒸気を用いた流動層乾燥殺菌装置。」

(3b)「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に、農作物,食品および医薬品原料,産業廃棄物や食品残渣(被乾燥物)に対して、低温度でありながら短時間で乾燥させることができ、しかも殺菌ができることが要望されている。このため、本発明が解決しようとする課題(技術的課題又は目的等)は、被乾燥物を短時間で乾燥させることができると共に、殺菌ができ、さらに小型の設備で対応することである。」

(3c)「 【産業上の利用可能性】
【0027】
従来技術の真空乾燥と、従来技術の過熱蒸気流動層乾燥とを結合した構成であるが、特に顕著な効果を奏する発明である。すなわち、真空乾燥と比較して、流動層乾燥であり、乾燥能力が格段と高く、小型の設備で対応できるし、真空乾燥では、プレ-ト上に載せて伝える直接伝熱方式であり、乾燥能力が低いが、本発明では、設備費用を比較的割安にしつつ乾燥能力を著しく高められる。さらに、約50℃?約200℃にての乾燥のため殺菌作用も得られるという多くの利点があり、産業上の利用可能性は極めて大きい。」

4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4には、次の事項が記載されている。
訳文にて示す。
(4a)「1,3-ジブロモ-5,5ジメチルヒダントイン,98%
ジブロマンチン
・・・

融点 197-199℃」

5 引用文献1に記載された発明について
上記摘記事項(1a)には、1,3-ジヨードヒダントイン化合物を含む湿体を準備する工程と、前記湿体を加熱気体に接触させることにより、前記湿体を乾燥させる工程と、を有する、1,3-ジヨードヒダントイン化合物の製造方法が記載され、上記摘記事項(1c)には、「加熱気体」とは、DIH化合物を含む湿体との接触により当該湿体を乾燥させうる程度の温度を有する気体を意味することが記載され、前記湿体と接触する際の加熱気体の流量についても特に制限はないが、好ましくは0.1?10.0m/秒、より好ましくは0.3?5.0m/秒、さらに好ましくは0.5?3.0m/秒であることが記載され、上記摘記事項(1d)には、特許請求の範囲に対応した実施例1として、DIH化合物を含む湿体として、酢酸n-ブチル(2質量%)および水(13質量%)を含有する5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントイン(20kg)を準備し、準備した湿体を流動乾燥器中に仕込み、加熱気体として110℃の空気を1m/秒の流量で前記湿体に30分間接触させることにより前記湿体を乾燥させて、5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントインの淡黄色結晶粉末を、98%以上の純度で得、次いで、得られた粉末における遊離I_(2)および水の含有量を測定し、遊離I_(2)の含有量は0.2質量%以下であり、水の含有量は1質量%以下であったことが記載されている。

したがって、引用文献1には、「酢酸n-ブチル(2質量%)および水(13質量%)を含有する5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントイン(20kg)を準備し、準備した湿体を流動乾燥器中に仕込み、加熱気体として110℃の空気を1m/秒の流量で前記湿体に30分間接触させることにより前記湿体を乾燥させて、5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントインの淡黄色結晶粉末を得る、遊離I_(2)の含有量は0.2質量%以下であり、水の含有量は1質量%以下である1,3-ジヨードヒダントイン化合物の製造方法」(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

また、引用文献1には、比較例1として、上記摘記事項(1e)の記載から、「酢酸n-ブチル(2質量%)および水(13質量%)を含有する5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントイン(200kg)を準備し、準備した湿体を1000Lコニカルドライヤー中に仕込み、2700?5300Paの減圧条件下、40?70℃にて乾燥させる方法」(以下「比較引用発明」という。)が記載されているといえる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比・判断
ア 対比
引用発明1の「酢酸n-ブチル(2質量%)」「水(13質量%)」「5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントイン(20kg)」は、それぞれ、本願発明1の「有機溶媒」「水」「ハロヒダントイン化合物」に該当することは明らかであり、また、引用発明1の「準備した湿体」は、水、酢酸n-ブチル、5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントインを含むのであるから、本願発明1の「水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにハロヒダントイン化合物を含む組成物」に該当する。
そして、引用発明1において、「準備した湿体を流動乾燥器中に仕込」むことは、本願発明1の「組成物が予め入れられた乾燥機」であり、「乾燥機は、容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、又は棚段式真空乾燥機である」こととは、「組成物を予め」「乾燥機」に「入れ」ている限りにおいて相当している。
さらに、引用発明1の「気体」「1m/秒の流量で前記湿体に30分間接触させることにより前記湿体を乾燥させて、5,5-ジメチル-1,3-ジヨードヒダントインの淡黄色結晶粉末を得る」ことは、本願発明1の「水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにハロヒダントイン化合物を含む組成物が予め入れられた乾燥機の内に、当該乾燥機の外部から」「ガスを導入しながら、上記組成物を乾燥させる工程」に相当するといえる。
そして、「遊離I_(2)の含有量は0.2質量%以下であり、水の含有量は1質量%以下である1,3-ジヨードヒダントイン化合物の製造方法」は、「ハロヒダントイン化合物の製造方法」に該当することは明らかである。

そうすると、本願発明1と引用発明1とでは、

「水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分並びにハロヒダントイン化合物を含む組成物が予め入れられた乾燥機の内に、当該乾燥機の外部からガスを導入しながら、上記組成物を乾燥させる工程を含むハロヒダントイン化合物の製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)乾燥工程に関して、本願発明1では、乾燥機の外部から不活性ガスを導入しながら、且つ、当該乾燥機の内を大気圧より減圧することにより上記組成物を乾燥させるのに対して、引用発明1では、加熱気体として110℃の空気を接触させるものの、乾燥機の内を大気圧より減圧することを併用するとはしていない点

(相違点2)ガスの導入速度に関して、本願発明1では、乾燥させる前の水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の全量に対する、上記不活性ガスの導入速度が、0.01モル%当量/分以上、5.0モル%当量/分以下であるのに対して、引用発明1では、加熱気体として110℃の空気を1m/秒の流量で前記湿体に30分間接触させるとしている点

(相違点3)用いる乾燥機について、本願発明1では、容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、又は棚段式真空乾燥機であるとしているのに対して、引用発明1では、流動乾燥器である点

イ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
a まず、引用文献1は、技術分野に記載されるように、1,3-ジヨードヒダントイン化合物(「DIH化合物」)の長期安定性を向上させるための改良に関する文献であるが(上記摘記事項(1a))、本願発明の相違点1の構成である、乾燥機の外部から不活性ガスを導入しながら、且つ、当該乾燥機の内を大気圧より減圧することを併用することについては、一切記載がない。
b そして、引用文献1には、背景技術の貯蔵方法としては、減圧条件下、窒素雰囲気下で、暗所にて貯蔵する手法が開示されているが、その従来技術を記載した文献には、取扱いが容易で保存安定性に優れるDIH化合物についての記載はなく、従来技術の製造方法によりDIH化合物を製造する際や、従来技術に記載のような一般的な貯蔵方法によりDIH化合物を貯蔵した場合、純度が低下しやすいという問題があること、純度の低下は、DIH化合物が分解してヨウ素原子がヨウ素の単体(I_(2))として遊離することに起因するものと考えられること、I_(2)が遊離すると、資機材の着色や腐食という問題や、取扱者に対する危険性の増大といった問題が生じる虞があることが示されてはいる。
そして、引用文献1には、DIH化合物の製造時や貯蔵時におけるI_(2)の遊離を抑制し、これによりDIH化合物の純度低下や、I_(2)に起因する種々の問題を解決しうる手段を提供することを目的としていることが記載されている(上記摘記事項(1b))。
c それらの前提事項の上で、さらに、引用文献1には、従来、DIH化合物を含む湿体を乾燥させる手法としては、具体的方法として、コニカルドライヤーを用いた減圧加熱乾燥法や、棚段乾燥機を用いた常圧加熱乾燥法などが採用されていたが、これらの方法によっては、DIH化合物を含む湿体の一部が分解してしまい、I_(2)が遊離してしまうことを見出し、70℃に加熱して3時間保持すると、9?30%が分解してしまう結果、DIH化合物の純度低下および遊離したI_(2)によって資機材が着色または腐食という問題や、取扱者に対する危険性が増大するといった問題が生じる虞があることが記載されている(上記摘記事項(1c))。
d したがって、引用発明1は、減圧加熱乾燥法でも、常圧加熱乾燥法でも、I_(2)の遊離に起因する種々の問題が生じるため、新たな解決手段として、引用発明1の加熱気体として110℃の空気を1m/秒の流量で前記湿体に30分間接触させるという手段を採用しているのであるから、引用発明1において、DIH化合物の純度低下および遊離したI_(2)によって資機材が着色または腐食という問題や、取扱者に対する危険性が増大するコニカルドライヤーを用いた減圧加熱乾燥法や、棚段乾燥機を用いた常圧加熱乾燥法を用いることは、当業者が動機付けられるとはいえない。
さらには、引用発明1において、乾燥機の内を大気圧より減圧にすることを併用する点を採用することについては、何ら動機付けられるものではない。
e また、引用発明1における加熱気体には、本願発明1の不活性ガスに該当する例示もされてはいるが、引用発明1の加熱気体とは、「DIH化合物を含む湿体との接触により当該湿体を乾燥させうる程度の温度を有する気体を意味する」([0048])もので、本願発明1のハロヒダントイン化合物に対して不活性であることを重視する「不活性ガス」を直ちに意味するものとはいえない。
f したがって、引用発明1において、乾燥機の外部から不活性ガスを導入しながら、且つ、当該乾燥機の内を大気圧より減圧することにより上記組成物を乾燥させることには、動機付けがあるとはいえず、当業者といえども相違点1の構成を容易に想到することはできないといえる。

g また、お茶のように、微妙な香ばしさが要求される食品等を乾燥させる場合に、乾燥時間、乾燥温度などを制御することが困難で、多少の違いによっても風味に微妙な違いが生じてしまうといった問題を課題とし、微妙な香ばしさが要求される食品等を乾燥させる場合に、その独特の風味を外部に逃すことなく乾燥させることができ、乾燥度合いの調整が簡単で、短時間のうちに乾燥処理することが可能な被乾燥体の乾燥方法を提供することを目的した引用文献2や、不純物のない水の減圧過熱蒸気を用いて殺菌ができることを前提としている引用文献3を考慮しても、それらは、引用発明1の1,3-ジヨードヒダントイン化合物の製造方法とは対象となる被乾燥物や用いる媒体が異なるものであり、引用発明1において、乾燥機の外部から不活性ガスを導入しながら、且つ、当該乾燥機の内を大気圧より減圧することにより上記組成物を乾燥させることには、動機付けがあるとはいえず、当業者といえども相違点1の構成を容易に想到することはできないといえる。

(イ)相違点2について
ガスの導入速度に関して、引用文献1には、「乾燥させる前の水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の全量に対する、上記不活性ガスの導入速度」を、「0.01モル%当量/分以上、5.0モル%当量/分以下である」という特定範囲することの記載も示唆も存在しない。
確かに、前記湿体と接触する際の加熱気体の流量について、「特に制限はないが、好ましくは0.1?10.0m/秒、より好ましくは0.3?5.0m/秒、さらに好ましくは0.5?3.0m/秒である」との記載はあるが、「特に制限はない」との前提において、単位からみて、加熱気体自体の流体速度(m/秒)を、流量と称して、好ましい範囲を示しているにすぎず、この記載が、乾燥させる前の水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の全量に対する、上記不活性ガスの導入速度を示唆するものとはいえない。
また、引用文献2,3には、引用文献2の「温風」や引用文献の「減圧過熱蒸気」に関して、被乾燥物に対する、ガスの導入速度に関する記載は一切なく、それらの文献を考慮しても、引用発明1において、乾燥させる前の水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の全量に対する、不活性ガスの導入速度を、0.01モル%当量/分以上、5.0モル%当量/分以下に特定することは、当業者といえども容易に想到する技術的事項であるとはいえず、相違点2に関しても、当業者が容易になし得た技術的事項とはいえない。

(ウ)相違点3について
さらに、相違点3について検討する。
引用発明1では、乾燥機として、流動乾燥機を用いることを前提とするものであり、本願発明1の容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、又は棚段式真空乾燥機を用いることについては記載されていない。
上述のとおり、従来技術として、コニカルドライヤーを用いた減圧加熱乾燥法や棚段乾燥機を用いた常圧加熱乾燥法などが示されてはいるが(上記摘記事項(1c))、それらの記載は、I_(2)の遊離を生じる問題のあるものとして示されているのであって、例えば比較引用発明のとおり(上記摘記事項(1e))、I_(2)の遊離の問題を生じるものである。
したがって、引用発明1において、上記摘記事項(1c)(1e)の記載を理由として、乾燥機の種類を流動乾燥機に替えて、本願発明1の容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、又は棚段式真空乾燥機とすることは、合理的に動機付けられないといえ、相違点3に関しても、当業者が容易になし得た技術的事項とはいえない。
また、引用文献2は、流動床内乾燥を、引用文献3は、流動層乾燥を前提とする乾燥方法の技術であり、引用文献2,3に関しても、引用発明1の流動乾燥機に替えて、本願発明1の容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、又は棚段式真空乾燥機とすることは、合理的に動機付けられないといえ、相違点3に関しても、当業者が容易になし得た技術的事項とはいえない。

(エ)相違点1?3の有機的関係について
上記(ア)?(ウ)のとおり、各相違点1,2,3は、引用文献1記載の発明から、引用文献2?3の技術的事項を考慮しても、当業者が容易になし得たものとはいえないが、本願発明1は、特定の乾燥機内に、不活性ガスを導入しながら、かつ、乾燥機内を大気圧より減圧することで乾燥させる方法の発明であるから、(相違点1)?(相違点3)をまとめて当業者が容易に想到できるといえるかについても検討する。

引用文献1には、加熱気体として一定温度の空気を一定の流量で湿体に接触させることにより前記湿体を乾燥させて、ハロヒダントイン化合物を得ることが記載されており(上記摘記(1a)(1d))、該記載事項は、本願発明1の外部からガスを導入しながら乾燥させる点で関連するものであるといえるが、乾燥機内を減圧にすることや被乾燥物の量に対するガスの導入速度に関する記載はない。

また、引用文献2には、減圧状態に管理することが可能な減圧室内に流動床乾燥装置を収容し、排気手段を介して前記減圧室内の空気を排出して前記流動床内外の圧力を常時減圧状態に維持するとともに、前記流動床内に温風を導入する一方、温度センサで前記温風の温度を調整しながら被乾燥体を乾燥する乾燥方法が記載されており(上記摘記(2a))、該記載事項は、流動床乾燥機を減圧状態にしている点で、本願発明1の乾燥機の内を大気圧より減圧することと関連するものであるといえるが、流動床乾燥装置を用いることを前提としている上に、食品を主な被乾燥物とする技術であり、不活性ガスを導入する点や被乾燥物の量に対するガスの導入速度に関する記載はない。

さらに、引用文献3には、減圧した中で蒸気を生成し、減圧蒸気を加熱して減圧過熱蒸気とし、減圧過熱蒸気を流動層乾燥装置内に流入させて被乾燥物を流動状態にて乾燥させる方法が記載されており(上記摘記(3a))、該記載事項は、本願発明1のガスを導入しながら、乾燥機内も減圧状態にする点で関連するものであるといえるが、流動層乾燥装置を用いることを前提としている上に、不活性ガスを導入する点や被乾燥物の量に対するガスの導入速度に関する記載はない。

また、引用文献4は、単に「1,3-ジブロモ-5,5ジメチルヒダントイン」「98%」のものが市販されていることを示すだけの文献である。

上述のように、本願発明1の個々の技術的要素単独との対比でみたときに、関連する技術が、異なる種類の乾燥装置や異なる乾燥対象物や異なる乾燥媒体に関する文献において存在したとしても、本願発明1は、あくまでも、ハロヒダントイン化合物を含む組成物を乾燥させるハロヒダントイン化合物の製造方法として、乾燥対象物、乾燥媒体、乾燥媒体の導入条件、乾燥機内圧力条件、乾燥機の種類を全体としてとらえるべき方法の発明であり、引用文献1?4から方法全体が容易に想到できたことにはならない。
したがって、上記相違点1?3をまとめて検討したとしても、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2?4に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?6について
本願発明2は、本願発明1を引用して、乾燥させる間の乾燥機内の温度の上下限及び昇温速度の上下限をさらに限定した発明であり、本願発明3は、本願発明1又は2を引用して、乾燥させる間の上記乾燥機の内の圧力の上下限をさらに限定した発明であり、本願発明4は、本願発明1?3を引用して、有機溶媒の大気圧下における沸点温度の上下限と溶媒の種類をさらに限定した発明であり、本願発明5は、本願発明1?4を引用して、ハロゲン単体の種類をさらに限定した発明であり、本願発明6は、本願発明1?5を引用して、ハロヒダントイン化合物の構造式の範囲をさらに限定した発明である。

このように、本願発明2?6は本願発明1を引用した上で、さらに技術的に限定した発明であるから、本願発明1の、「乾燥機の外部から不活性ガスを導入しながら、且つ、当該乾燥機の内を大気圧より減圧することにより上記組成物を乾燥させる工程を含」むこと、「乾燥させる前の水、有機溶媒及びハロゲン単体よりなる群より選ばれる少なくとも1種の成分の全量に対する、上記不活性ガスの導入速度が、0.01モル%当量/分以上、5.0モル%当量/分以下であ」ること、「乾燥機は、容器回転式真空乾燥機、ドラム回転式真空乾燥機、真空ベルト乾燥機、又は棚段式真空乾燥機である」こととの特定事項を備えており、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?6は、引用文献1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2014-553022(P2014-553022)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C07D)
P 1 8・ 537- WY (C07D)
P 1 8・ 113- WY (C07D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 早川 裕之山口 修一  
特許庁審判長 佐藤 健史
特許庁審判官 菅原 洋平
瀬良 聡機
発明の名称 ハロヒダントイン化合物の製造方法  
代理人 特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK  
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