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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1347293
審判番号 不服2017-12518  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-08-23 
確定日 2018-12-20 
事件の表示 特願2014-525570「無線通信方法、無線通信システム、基地局および無線端末」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月23日国際公開、WO2014/013531〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2012年(平成24年)7月20日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年 1月22日付け 拒絶理由通知書
平成28年 4月 1日 意見書、手続補正書の提出
平成28年 9月14日付け 拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
平成28年11月21日 意見書、手続補正書の提出
平成29年4月26日付け 平成28年11月21日の手続補正についての補正の却下の決定、拒絶査定
平成29年 8月23日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 平成29年8月23日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成29年8月23日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 補正の概要
本件補正は、平成28年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「無線通信方法であって、
複数の無線通信を実行する無線端末で、前記無線端末内での前記複数の無線通信間の干渉の発生に応じて、前記干渉の発生を通知する情報とともに、前記複数の無線通信のうちで、前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す第1補助情報を前記基地局に送信し、
前記基地局で、前記第1補助情報を前記無線端末から受信して、前記第1補助情報に基づいて決定された前記干渉に対する制御を示す制御情報を前記無線端末に送信する
ことを特徴とする無線通信方法。」

という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「無線通信方法であって、
第一方式の無線通信と第二方式の無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能な無線端末が、前記第一方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、前記第二方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、または、前記第一方式の無線通信と前記第二方式の無線通信との双方において干渉の発生が検出されたか否かを示す干渉通知と、前記複数の異なる方式の無線通信のうち少なくともいずれかの無線パラメータと、を含む第一情報を、RRC(Radio Resource Control)制御信号で、基地局に送信し、
前記無線端末が、検出された干渉を除去するために前記無線端末において実行されるべき動作に関する情報を示す制御情報であって、前記第一情報に基づく前記制御情報を、前記基地局から受信し、
前記無線端末が、前記検出された干渉を除去するための前記制御情報の受信に応じて、前記制御情報に従って前記動作を実行する
ことを特徴とする無線通信方法。」
という発明(以下、「本願補正発明」という。)とすることを含むものである。(下線は補正箇所を示す。)

2 補正の適否
(1)補正の目的要件
上記補正は、本件補正前の「複数の無線通信を実行する無線端末」について、「第一方式の無線通信と第二方式の無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能な」との限定を付加し、基地局に送信する情報を「RRC(Radio Resource Control)制御信号で」送信すると限定し、本件補正前の「前記基地局で、前記第1補助情報を前記無線端末から受信して、前記第1補助情報に基づいて決定された前記干渉に対する制御を示す制御情報を前記無線端末に送信する」という規定を「前記無線端末が、検出された干渉を除去するために前記無線端末において実行されるべき動作に関する情報を示す制御情報であって、前記第一情報に基づく前記制御情報を、前記基地局から受信し、」「前記無線端末が、前記検出された干渉を除去するための前記制御情報の受信に応じて、前記制御情報に従って前記動作を実行する」と限定したものであり、当初明細書等に記載したものである。
また、上記補正は、本件補正前の「前記無線端末内での前記複数の無線通信間の干渉の発生に応じて、前記干渉の発生を通知する情報」について、「前記無線端末内での前記複数の無線通信間の干渉の発生に応じて」との特定を削除した上で、「前記第一方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、前記第二方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、または、前記第一方式の無線通信と前記第二方式の無線通信との双方において干渉の発生が検出されたか否かを示す干渉通知」と限定し、本件補正前の「前記複数の無線通信のうちで、前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す第1補助情報」を「前記複数の異なる方式の無線通信のうち少なくともいずれかの無線パラメータと、を含む第一情報」と規定し直すものであり、当初明細書等に記載したものである。
ここで、本件補正前の「前記無線端末内での前記複数の無線通信間の干渉の発生に応じて、前記干渉の発生を通知する情報」について、「前記無線端末内での前記複数の無線通信間の干渉の発生に応じて」との特定を削除した上で、「前記第一方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、前記第二方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、または、前記第一方式の無線通信と前記第二方式の無線通信との双方において干渉の発生が検出されたか否かを示す干渉通知」と限定する補正に関して、「前記第一方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、前記第二方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、または、前記第一方式の無線通信と前記第二方式の無線通信との双方において干渉の発生が検出されたか否か」との記載では、干渉が「無線端末内での複数の無線通信間の干渉」であることが特定されていないから、当該補正は、干渉が「前記無線端末内での前記複数の無線通信間の干渉」であることの特定を削除するものであり、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものではなく、かつ、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。
また、本件補正前の「前記複数の無線通信のうちで、前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す第1補助情報」の「前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す」 との特定を削除する補正についても、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものではなく、かつ、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものでもないことは明らかである。
よって、上記補正は、特許法第17条の2第5項各号のいずれを目的とするものでもない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものである。

(2)独立特許要件
上記(1)のとおりであるが、更に進めて、仮に、上記補正が、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるとして、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

ア 本願補正発明
本願補正発明は、上記「1 補正の概要」の項の「本願補正発明」のとおりのものと認める。

イ 引用例に記載された事項及び引用発明、周知技術
(ア)引用例に記載された事項及び引用発明
平成28年1月22日付けの拒絶の理由で引用されたCMCC,On the procedure of interference avoidance for IDC([当審仮訳]:IDCのための干渉回避手順について),3GPP TSG-RAN WG2 Meeting #77bis R2-121149,2012年3月20日アップロード(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

a 「2.1 Main procedure of initiating IDC solution
As shown in figure1, the main procedure to initiate the IDC solution includes the following steps (where the dashed box and line representing optional operations and signallings):
1. LTE and ISM begin to work simultaneously in a UE, and the UE finds that the in-device interference is too severe to be solved by itself. If the trigger indication does not purely rely on UE assessment, then the network needs to configure the threshold for UE to trigger indication.
2. UE triggers the interference avoidance indication to eNB with assistant information.
3. eNB decides the need of further measurements.
4. eNB may temporarily configure TDM solution, which could be used until UE sends the measurement report for further measurements.
5. eNB decides the solution to avoid the interference, e.g. FDM or TDM solution.
6. eNB responds to the UE.

」(1葉目12行?2葉目18行)

([当審仮訳]:
2.1 IDC解決法を始める主な手順
図1に示されるように、IDC解決法を始める主な手順は次のステップ(破線のボックスと線は、オプションの操作とシグナリングを示す)を含む:
1. UEにおいてLTEとISMが同時に動作し始める、そして、UEはデバイス内干渉がひどすぎてUE自身で解決できないことを検出する。もしも、トリガインジケーションがUEの評価に純粋に依存しないのならば、ネットワークはUEにインジケーションをトリガするための閾値を構成する必要がある。
2. UEは補助情報とともにeNBに対する干渉回避インジケーションをトリガする。
3. eNBは更なる測定が必要であると決定する。
4. eNBは、一時的にTDM解決法を構成するかもしれない、それは、UEが更なる測定のための測定報告を送信するまで使われるかもしれない。
5. eNBは、例えば、FDM又はTDM解決法のような、干渉を回避するための解決法を決定する。
6. eNBはUEに応答する。

←デバイス内干渉インジケーションのための閾値構成
UEはデバイス内干渉がUE自身で解決できないことを検出する
→補助情報とともにインジケーション
eNBは更なる測定の必要性を決定する
←使用可能周波数のための測定構成
eNBは一時的にTDM解決法を構成するかもしれない
←一時的なTDM解決法のための構成
→RRM測定結果
eNBはIDC解決法を決定する
←eNBからの応答(FDM又はTDMに関連した応答)
図1.IDCのための干渉回避の主な手順)

b 「2.1.1 Indication triggering
When both LTE and ISM work simultaneously in a UE, interference on serving frequency or non-serving frequency may be too serious to be solved by the UE itself. Then the UE should trigger the interference avoidance indication to eNB. (中略)

2.1.2 Indication transfer
The LTE network-controlled solutions, e.g. FDM solution or DRX based TDM solutions, are believed to be feasible to resolve the in-device coexistence issues [3]. For each solution, eNB should be indicated about the in-device interference; also some assistant information should be reported to eNB to decide which solution will be adopted.

1. Indication content
1) Unusable frequencies for FDM
For FDM solution, as captured in [4], UE can provide the “unusable frequency” to the eNB. At RAN2#77 meeting, it has been agreed that the UE judges an LTE frequency as unusable when the ongoing IDC problem on this frequency between collocated LTE and ISM radio cannot be solved by the UE itself [5].
The simplest way to indicate the “unusable frequency” is to report an EARFCN value representing the lower bound (or upper bound) of not useable frequency for BAND 40 (or BAND 7).

2) Available inter-frequency measurement results for FDM
Since the UE may be configured with inter-frequency measurements before IDC indication is triggered, it's possible that UE has some available measurements results for other frequencies. To facilitate the eNB's decision and simplify the procedure, it will be helpful to piggyback these measurement results in the indication.

3) Assistant information for DRX based TDM solution
For DRX based TDM solution, the assistant information can include e.g. suggested periodicity of the TDM pattern, scheduling period (or unscheduled period), offset of BT relative to LTE. The detailed information is FFS.

4) Indication for protecting important ISM signalling reception
According to the discussions in SI phase, it was proposed that UE can send the information about ISM important signalling to eNB. Hence the indication could possibly include assistant information, e.g. the occasion and periodicity of beacon, to protect ISM signalling reception.
(中略)

3. Indication message
During the SI phase, it is FFS how the indication is transmitted, e.g. by new report, CQI dummy values, dummy RSRP measurements, etc. As analyzed in [3], CQI report is only applicable to the serving cell, while dummy RSRP measurement can only indicate configured frequencies. Furthermore, the UE can only send measurement results when relevant measurement event is satisfied, hence existing measurement report can not be used to transmit the available inter-frequency measurement results if the event is not satisfied.
Therefore, existing mechanisms are not appropriate to transfer the indication mentioned above and a new message should be introduced to transfer the indication information.

Proposal 2: At the initiation of IDC solution, a new message should be introduced to transfer the indication.
」(2葉目19行?3葉目32行)

([当審仮訳]
2.1.1 インジケーションのトリガリング
UEにおいてLTEとISMが同時に動作する時、サービング周波数又は非サービング周波数の干渉がひどすぎてUE自身で解決できないかもしれない。その時、UEはeNBに干渉回避インジケーションをトリガすべきである。(中略)

2.1.2 インジケーションの転送
例えば、FDM解決法やDRXに基づいたTDM解決法のような、LTEネットワークが制御する解決法は、デバイス内共存問題を解決するために適していると信じられている。それぞれの解決法のために、eNBはデバイス内干渉について指示されるべきであり、どの解決法が採用されるかを決定するためにいくつかの補助情報もeNBに報告されるべきである。

1. インジケーションの内容
1) FDMのために使用できない周波数
[4]において取り込まれているように、FDM解決法のために、UEは“使用できない周波数”をeNBに提供することができる。RAN2#77会合において、一緒に配置されたLTEとISM無線間で当該周波数における進行中のIDC問題をUE自身で解決できないとき、UEは使用できないLTE周波数を判定することが合意された[5]。
“使用できない周波数”を通知するための最も単純な方法は、バンド40(又はバンド7)のための使用できない周波数の最も低い境界(又は最も高い境界)を表すEARFCNの値を報告することである。

2) FDMのために利用可能な周波数間測定結果
IDCインジケーションがトリガされる前にUEは周波数間測定を構成されているかもしれないので、UEはいくつかの利用可能な他の周波数の測定結果を有する可能性がある。eNBの決定を容易にし、手順を簡単にするために、これらの測定結果をインジケーションの中にピギーバックすることは役立つだろう。

3) DRXに基づくTDM解決法のための補助情報
DRXに基づくTDM解決法のために、補助情報は、例えば、提案されるTDMパターンの周期性、スケジューリング周期(又はスケジュールされない周期)、LTEに関連するBTのオフセットを含む。詳細な情報は更なる検討事項(FFS)である。

4) 重要なISMシグナリングの受信を保護するためのインジケーション
SIフェーズの議論によると、UEはISMの重要なシグナリングについての情報をeNBに送ることができる。よって、ISMシグナリングの受信を保護するために、インジケーションは、例えば、ビーコンの機会や周期性のような補助情報を含むかもしれない。
(中略)

3. インジケーションメッセージ
SIフェーズの間、インジケーションがどのように送られるか、例えば、新しい報告、CQIのダミー値、ダミーのRSRP測定によって等、は更なる検討事項(FFS)である。[3]の分析によると、CQI報告はサービングセルだけに適用可能である一方、ダミーのRSRP測定は構成された周波数だけを指示することができる。さらに、UEは関連する測定イベントが条件を満たす時に限って測定結果を送ることができるので、イベントが条件を満たさない場合、利用可能な周波数間測定結果を送るために、既存の測定報告を使うことができない。それゆえ、既存のメカニズムは上記で述べたインジケーションを転送するためには適切でなく、インジケーション情報を転送するために新しいメッセージが導入されるべきである。

提案2:IDC解決法の開示時に、インジケーションを転送するための新しいメッセージが導入されるべきである。)

c 「2.1.3 eNB decides the need of further measurements
Based on the received assistant information, the eNB can decide whether it's possible to use FDM solution.
In order to determine which frequencies UE can be handed over to, eNB may configure further measurements on other not configured but useable frequencies. And then the UE will report the measurement results to the eNB, by which eNB can decide whether FDM or TDM solution will be used.

Of course, the eNB can also hand the UE over to some useable frequency blindly, according to its priori knowledge of the network deployment. Therefore, the need of this step is up to eNB implementation.

2.1.4 eNB may configure the temporary TDM solution
As analyzed in [7], the delay from UE receives the measurement configuration for useable frequencies until UE transmits the measurement report could be as long as 7680ms. During such a long period, if the ISM transmission is not allowed, the QoS of ISM will deteriorate quite a lot. On the other hand, if ISM side still continues to transmits and disturbs LTE severely, it is likely that the RLF occurred in LTE side before UE sends the measurement report, since the maximum required time for the UE to detect RLF (i.e. 1390ms) is much smaller than 7680ms [7].

Therefore, in order to ensure the proper operation of both LTE and ISM during the period of measuring frequencies, eNB may temporarily configure TDM solution to the UE.

2.1.5 eNB response
FDM or TDM related response will be transferred to UE after eNB decides which solution is used.
-If FDM solution is adopted, the response will be the inter-frequency handover command.
-If DRX based TDM solution is adopted, the response will be the TDM related configuration, e.g. DRX parameters. 」(3葉目33行?4葉目14行)

([当審仮訳]:
2.1.3 eNBは更なる測定の必要性を決定する
受信した補助情報に基づいて、eNBはFDM解決法が使用可能か否かを決定することができる。UEがどの周波数へハンドオーバできるかを決定するために、eNBは他の構成されていない使用可能な周波数上の更なる測定を構成するかもしれない。そして、UEがeNBに報告結果を報告し、eNBはFDMあるいはTDM解決法が使用されるかどうかを決定することができる。
もちろん、eNBは、ネットワーク配置についての事前の知識に従って、盲目的にUEをいくつかの使用可能な周波数へハンドオーバすることもできる。それゆえ、このステップの必要性はeNBの実装次第である。

2.1.4 eNBは一時的なTDM解決法を構成するかもしれない
[7]の分析によれば、UEが利用可能な周波数のための測定構成を受信してから、UEが測定報告を送信するまでの遅延は7680msにもなる。このような長い期間、もしもISMの送信が許可されなければ、ISMのQoSは非常に悪化するだろう。これに対して、もしもISM側が送信をし続けLTEを激しく妨害すれば、UEが測定報告を送る前にLTE側においてRLFが起こるであろう、なぜなら、UEがRLFを宣言するために要する最大時間(例えば1390ms)は7680msよりもずっと短いからである[7]。
したがって、周波数測定期間におけるLTEとISM双方の適切な動作を保証するために、eNBはUEに一時的なTDM解決法を構成するかもしれない。

2.1.5 eNBの応答
eNBがどちらの解決法が使用されるかを決定した後、FDM又はTDMに関連した応答がUEに転送されるであろう。
-もしもFDM解決法が採用されるなら、応答は周波数間ハンドオーバーコマンドであろう。
-もしもDRXに基づくTDM解決法が採用されるなら、応答は、例えば、DRXパラメータのような、TDMに関連する構成であろう。)

上記a?cの各摘記事項及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、
(a)上記aの第2.1節及びFig.1には、UEとeNBとの通信手順が記載されており、UEとeNBとの間で無線通信が行われることは明らかであるから、引用例には、「無線通信方法」が記載されているといえる。
上記aの第2.1節の1.の記載によれば、UEにおいてLTEとISMが同時に動作することから、「UE」は、「LTEの無線通信とISMの無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能」であるといえる。
上記aのFig.1の記載によれば、eNBからUEにデバイス内干渉インジケーションのための閾値構成が送信された後、UEからeNBへインジケーションが送信されることから、Fig.1のUEからeNBへ送信されるインジケーションが、デバイス内干渉を示すインジケーションであることは明らかである。また、上記aのFig.1とともに説明される第2.1節の1.及び2.及び上記bの第2.1.1節の記載によれば、UE自身でデバイス内干渉を解決できないことを検出すると、UEはeNBに対して干渉回避インジケーションをトリガし、Fig.1においてUEからeNBへインジケーションが送信されることから、当該干渉回避インジケーションも、Fig.1においてUEからeNBへ送信されるインジケーションであることは明らかである。よって、UEは、「デバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーションをeNBに送信」するといえる。
そして、上記bの第2.1.2節の1.インジケーションの内容の1)?4)の記載によれば、「インジケーション」は、「FDMのために使用できない周波数」、「FDMのために利用可能な周波数間測定結果」、「DRXに基づくTDM解決法のために提案されるTDMパターンの周期性やスケジューリング周期」、「重要なISMシグナリングの受信を保護するためのビーコンの機会及び周期性」を「含む」。
また、上記bの第2.1.2節の3.の記載によれば、「インジケーション」は「新しいメッセージ」で転送される。
よって、引用例には、「無線通信方法であって、LTEの無線通信とISMの無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能なUEが、FDMのために使用できない周波数、FDMのために利用可能な周波数間測定結果、DRXに基づくTDM解決法のために提案されるTDMパターンの周期性やスケジューリング周期、重要なISMシグナリングの受信を保護するためのビーコンの機会及び周期性を含む、デバイス内干渉を示すとともに干渉回避ためのインジケーションを、新しいメッセージでeNBに送信」することが記載されている。

(b)上記aの第2.1節の4.及びFig.1の記載によれば、UEは、一時的なTDM解決法のための構成をeNBから受信する。そして、上記bの第2.1.2節の3)の記載によれば、TDM解決法はDRXに基づくから、一時的なTDM解決法もDRXに基づくといえ、一時的なTDM解決法のための構成が、UEにおいて実行されるべきDRXに関する情報を示すことは明らかである。ここで、上記aの第2.1節の5.の記載によれば、eNBは干渉を回避するためにTDM解決法を決定するから、一時的なTDM解決法も、干渉を回避するためのものであることは明らかであり、上記aの第2.1節の1.の記載によれば、干渉はUEによって検出されたデバイス内干渉である。よって、「UE」は、「検出されたデバイス内干渉を回避するために、前記UEにおいて実行されるべきDRXに関する情報を示す一時的なTDM解決法のための構成」を「eNBから受信」するといえる。
そして、eNBで構成される一時的なTDM解決法のための構成が、UEからeNBに送信するインジケーションに含まれる、DRXに基づくTDM解決法のために提案されるTDMパターンの周期性やスケジューリング周期に基づいて決定されること、すなわち、「一時的なTDM解決法のための構成」が「インジケーションに基づく」ことは明らかである。
よって、引用例には、「UEが、検出されたデバイス内干渉を回避するために、前記UEにおいて実行されるべきDRXに関する情報を示す一時的なTDM解決法のための構成であって、前記インジケーションに基づく前記一時的なTDM解決法のための構成を、前記eNBから受信」することが記載されている。

(c)上記(b)によれば、「UE」は、「検出されたデバイス内干渉を回避するため」の「一時的なTDM解決法のための構成」を「受信」するところ、受信することに応じて、「一時的なTDM解決法のための構成に従ってDRXを実行する」ことは明らかである。
よって、引用例には、「UEが、検出されたデバイス内干渉を回避するための一時的なTDM解決法のための構成を受信することに応じて、一時的なTDM解決法のための構成に従ってDRXを実行する」ことが記載されている。

以上を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「無線通信方法であって、
LTEの無線通信とISMの無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能なUEが、FDMのために使用できない周波数、FDMのために利用可能な周波数間測定結果、DRXに基づくTDM解決法のために提案されるTDMパターンの周期性やスケジューリング周期、重要なISMシグナリングの受信を保護するためのビーコンの機会及び周期性を含む、デバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーションを、新しいメッセージでeNBに送信し、
前記UEが、検出されたデバイス内干渉を回避するために、前記UEにおいて実行されるべきDRXに関する情報を示す一時的なTDM解決法のための構成であって、前記インジケーションに基づく前記一時的なTDM解決法のための構成を、前記eNBから受信し、
前記UEが、前記検出されたデバイス内干渉を回避するための前記一時的なTDM解決法のための構成を受信することに応じて、前記一時的なTDM解決法のための構成に従って前記DRXを実行する
無線通信方法。」

(イ)周知技術
a 周知技術1
本願の国際出願日の前に公知となった国際公開第2011/123550号(以下、「周知例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(a)「[0078] In-device coexistence problems can exist with respect to a UE between resources such as, for example, LTE and ISM bands (e.g., for Bluetooth/WLAN).
(中略)
[00105] The interfering direction information can include one bit to identify whether the uplink of the reported channel/RAT is causing an in-device coexistence problem. Another bit can identify whether the downlink of the reported channel/RAT is experiencing degradation due to in-device coexistence. It may be possible that both bits are set to indicate coexistence issues on both LTE uplink and downlink. The direction information identifies whether LTE is the aggressor, the victim or both with respect to the in-device interference. The interfering direction information can be used along the with interfering technology identifier in the measurement gap configuration at the eNB so the eNB can choose the appropriate gap pattern to support coexistence.
[00106] FIGURE 10 illustrates a methodology 1000 that facilitates implementation of multi-radio coexistence functionality within a wireless communication system. The methodology 1000 may be performed, e.g., by a UE communicating with a base station, such as an eNB. At block 1002, one or more coexistence issues corresponding to a utilized set of communication resources (e.g., radio technologies or radio resources) are identified. The identification recognizes that unacceptable performance occurs or is expected to occur due to interference. In one example, a device with multiple radios is equipped to detect interference. (中略)At block 1004, an indication of the one or more coexistence issues is communicated to a serving base station.
[00107] FIGURE 11 illustrates a methodology 1100 that facilitates implementation of multi-radio coexistence functionality within a wireless communication system. The methodology 1000 may be performed, e.g., by an eNB or other base station communicating with a UE. At block 1102, signaling relating to radio coexistence issues experienced by a served UE is received from the served UE via a first radio technology. At block 1104, one or more parameters associated with communication at the served UE are assigned such that the radio coexistence issues experienced by the served UE are completely or substantially mitigated. In one example, the base station performs a handover. In another example, the base station configures a measurement gap pattern or a DRX cycle to provide a TDM solution with LTE and the other resource. The base station may have multiple options to choose from and may select one or more of the options based on any criteria. 」(18ページ5行?26ページ17行)

([当審仮訳]:
[0078] デバイス内共存問題は、(例えば、Bluetooth/WANのための)例えばLTE帯域とISM帯域とのリソース間のUEに関して存在しうる。
(中略)
[00105] 干渉元の方向情報は、レポートされたチャネル/RATのアップリンクが、デバイス内共存問題を引き起こしているかを識別するための1ビットを含みうる。その他のビットは、レポートされたチャネル/RATのダウンリンクが、デバイス内共存によって品質低下を受けているかを識別しうる。LTEアップリンクとLTEダウンリンクとの両方における共存問題を示すために、両ビットが設定されることが可能でありうる。この方向情報は、デバイス内干渉に関して、LTEが攻撃者であるか、犠牲者であるか、またはその両方であるかを識別する。干渉元の方向情報は、eNBにおける測定ギャップ設定における干渉技術の識別子とともに使用されうるので、eNBは、共存をサポートするために、適切なギャップ・パターンを選択しうる。
[00106] 図10は、無線通信システム内のマルチラジオ共存機能の実施を容易にする方法1000を例示する。この方法1000は、例えばeNBのような基地局と通信するUEによって実行されうる。ブロック1002では、利用されている通信リソースのセット(例えば、ラジオ技術またはラジオ・リソース)に対応する1または複数の共存問題が識別される。この識別は、干渉によって、許容できないパフォーマンスが生じたか、または、生じうると予測されていることを認識する。一例において、干渉を検出するために、複数のラジオを備えるデバイスが装備されている。(中略)ブロック1004では、1または複数の共存問題を示すインジケーションが、サービス提供している基地局へ通信される。
[00107] 図11は、無線通信システム内のマルチラジオ共存機能の実施を容易にする方法1100を例示する。方法1100は、例えば、eNBや、UEと通信しているその他の基地局によって実行されうる。ブロック1102では、サービス提供されているUEによって経験されたラジオ共存問題に関連するシグナリングが、サービス提供されているUEから、第1のラジオ技術によって受信される。ブロック1104では、サービス提供されているUEによって経験されたラジオ共存問題が完全にまたは実質的に緩和されるように、サービス提供されているUEにおける通信に関連付けられた1または複数のパラメータを割り当てられる。一例では、基地局はハンドオーバを実行する。別の例では、基地局は、LTEおよびその他のリソースにTDM解決策を与えるために、測定ギャップ・パターンまたはDRXサイクルを設定する。基地局は、選択する多くのオプションを有し、任意の基準に基づいて、これらオプションのうちの1または複数を選択しうる。)

(b)「CLAIMS
What is claimed is:
1. A method of wireless communication, comprising:
identifying at least one coexistence issue corresponding to a set of
communication resources of a User Equipment (UE); and
communicating an indication of the at least one coexistence issue to a base station.
(中略)
9. The method of claim 1, in which the communicating comprises
communicating at least one of an interfering technology identifier, interfering direction information and a traffic pattern indicator.」(29ページ1行?28行)

([当審仮訳]:
特許請求の範囲
請求項1. 無線通信の方法であって、
ユーザ機器(UE)の通信リソースのセットに対応する少なくとも1つの共存問題を識別することと、
前記少なくとも1つの共存問題を示すインジケーションを基地局へ通信することと、
を備える方法。
(中略)
請求項9. 前記通信することは、干渉技術の識別子、干渉元の方向情報、およびトラフィック・パターン・インジケータのうちの少なくとも1つを通信することを備える、請求項1に記載の方法。)

本願の国際出願日の前に公知となったSamsung, Detailed information from UE to eNB in the indication to inform in-device interference, 3GPP TSG-RAN2#77 meeting R2-120281, 2012年1月30日アップロード(以下、「周知例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(c)「1 Introduction
(中略)One of the objectives of this WI is to specify the indication used by UE to report the ongoing in-device co-existence issue to the eNB so that eNB can help in resolving the issue. It is assumed during SI stage some FDM assistance data and some TDM assistance data will be sent from UE to eNB. In this contribution we discuss what all are possible information as part of FDM assistance and TDM assistance data.

2 Discussion
During SI phase there was common understanding in RAN2 that the UE can send an indication to the network to report the coexistence problems and the adopted coexistence solution is decided by the network i.e. (LTE network-controlled UE-assisted paradigm). The indication will be consisting of FDM assistance data and TDM assistance data. We analyse one by one what are the possible information elements one by one discussing them as the requirement.
(中略)
Depending upon LTE and ISM transmission power level it is possible that either both LTE and ISM are affected or only one of them is affected. It will be beneficial for eNB to know this information.
(中略)
Requirement 2: UE reports to eNB the direction of interference. i.e. only LTE to ISM or only ISM to LTE or both directions in-device interference.」(1葉目9行?2葉目2行)

([当審仮訳]:
1 はじめに
(中略)このWIの目標の1つは、進行中のデバイス内共存問題をeNBに通知するためにUEによって使用される、eNBがこの問題を解決するのを助けることができるためのインジケーションを規定することである。SIステージの間いくつかのFDM補助データといくつかのTDM補助データがUEからeNBへ送信されるであろうことが想定される。この寄書において、一体何がFDM補助とTDM補助のデータの一部としての可能性がある情報なのかを議論する。

2 議論
SIフェーズの間RAN2において、UEは共存問題を通知するためにネットワークにインジケーションを送信することができ採用された共存解決法がネットワーク、すなわち(LTEネットワークに制御されたUEによって補助されたパラダイム)によって決定されるという共通の理解があった。インジケーションはFDM補助データとTDM補助データから構成されるだろう。我々は1つずつ可能性のある情報要素は何かについて1つずつ要求事項として議論することで分析する。
(中略)
LTEとISMの送信電力レベルに依存して、LTEとISMの両方が影響を受ける可能性、もしくはそれらの一方だけが影響を受ける可能性がある。この情報を知ることはeNBにとって利便性があるだろう。
(中略)
要求事項2:UEはeNBに干渉の方向、すなわち、LTEからISMへだけか、ISMからLTEへだけか、それとも両方の方向のデバイス内干渉かを通知する。)

本願の国際出願日の前に公知となったNew Postcom, Consideration on IDC indication, 3GPP TSG RAN WG2 Meeting #78 R2-122355,2012年5月15日アップロード(以下、「周知例3」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(d)「2.2 What information is included in the IDC indication?
The potential content of IDC Indication is divided into 4 categories listed in e-mail discussion:
- Assistant information for FDM solution
- Assistant information for TDM solution
- RRM measurement results
- Other information
(中略)
2.2.4 Other information
Considering autonomous denials, the direction of interference, such as only LTE to ISM or only ISM to LTE or both of them, should be included in the IDC indication in order to protect important signaling for ISM radio. The details are FFS still.

Proposal 5: Include the direction of IDC interference in the IDC indication as the assistant information. 」(2葉目5行?3葉目27行)

([当審仮訳]:
2.2 IDCインジケーションに何の情報が含まれるか?
IDCインジケーションの可能性のある内容はeメールの議論でリストに入れられた4つのカテゴリーに分けられる。
- FDM解決法のための補助情報
- TDM解決法のための補助情報
- RRM測定結果
- その他の情報
(中略)
2.2.4 その他の情報
自律的な否認を考慮すると、ISM無線の重要なシグナリングを保護するために、LTEからIMSへだけか、IMSからLTEへだけか、それとも両方かのような干渉の方向がIDCインジケーションに含まれるべきである。詳細はまだ更なる検討事項(FFS)である。
提案5:補助情報としてIDCインジケーションにIDC干渉の方向を含めなさい。)

上記(a)?(d)の記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、「LTEの無線通信とISMの無線通信を備えるUEにおいて、デバイス内共存問題を通知するインジケーションとともに、LTEが干渉しているか否か、ISMが干渉しているか否か、LTEとISMの双方が干渉しているか否かを示す干渉の方向情報を、干渉制御のための情報としてeNBに送信すること」は周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。

b 周知技術2
平成28年1月22日付けの拒絶の理由で引用されたSamsung, Over all signaling for IDC, 3GPP TSG-RAN2#78 R2-122509, 2012年5月14日アップロード(以下、「周知例4」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)

(e)「1 Introduction
(中略)One of the objectives of this WI is to specify the indication used by UE to report the ongoing in-device co-existence issue to the eNB so that eNB can help in resolving the issue. (中略)
2 Discussion
In RAN2 77Bis following agreements were made related to signalling for IDC
Agreements
1 All necessary/available assistant information for FDM and TDM solutions is sent together (details FFS)
2 The IDC indication is a new UL-DCCH (RRC) Message. (後略)」(1葉目8?18行)

([当審仮訳]:
1 はじめに
(中略)このWIの目標の1つは、進行中のデバイス内共存問題をeNBに通知するためにUEによって使用される、eNBがこの問題を解決するのを助けるためのインジケーションを規定することである。
(中略)
2 議論
RAN2 77Bisにおいて、IDCのためのシグナリングに関連して以下の合議がなされた。
合意事項
1 FDM及びTDM解決法のためのすべての必要な/利用可能な補助情報は一緒に送信される(詳細は更なる検討事項(FFS)である。)
2 IDCインジケーションは新しいUL-DCCH(RRC)メッセージである。(後略))

周知例3には、以下の事項が記載されている。(下線は当審が付与。)
(f)「1 Introduction
At the RAN2#77bis meeting, the issue of IDC trigger in Rel-11 was discussed [1]. The agreements were as follows:
Agreements:
1 All necessary/available assistant information for FDM and TDM solutions is sent together (details FFS)
2 The IDC indication is a new UL-DCCH (RRC) Message. (後略)」(1葉目7?11行)

([当審仮訳]:
1 はじめに
RAN2#77bisの会合において、Rel-11のIDCトリガの問題が議論された[1]。合意事項は以下のとおりである:
合意事項:
1 FDM及びTDM解決法のためのすべての必要な/利用可能な補助情報は一緒に送信される(詳細は更なる検討事項(FFS)である)
2 IDCインジケーションは新しいUL-DCCH(RRC)メッセージである。(後略))

上記(e)?(f)の記載及び当該技術分野の技術常識を考慮すると、「デバイス内共存問題を通知するインジケーションを新しいRRCメッセージで送信すること」は、周知技術(以下、「周知技術2」という。)である。

ウ 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「LTEの無線通信」を「第一方式の無線通信」と称し、引用発明の「ISMの無線通信」を「第二方式の無線通信」と称することは任意である。
引用発明の「UE」は、本願補正発明の「無線端末」に相当する。
よって、引用発明の「LTEの無線通信とISMの無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能なUE」は、本願補正発明の「第一方式の無線通信と第二方式の無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能な無線端末」に相当する。
また、引用発明の「FDMのために利用可能な周波数間測定結果」がLTEの無線パラメータである周波数に関する情報を含むことは明らかであるから、引用発明の「FDMのために使用できない周波数、FDMのために利用可能な周波数間測定結果、DRXに基づくTDM解決法のために提案されるTDMパターンの周期性やスケジューリング周期」はいずれも、LTEの無線パラメータといえる。
そして、引用発明の「重要なISMシグナリングの受信を保護するためのビーコンの機会及び周期性」は、ISMの無線パラメータといえる。
よって、引用発明の「FDMのために使用できない周波数、FDMのために利用可能な周波数間測定結果、DRXに基づくTDM解決法のために提案されるTDMパターンの周期性やスケジューリング周期、重要なISMシグナリングの受信を保護するためのビーコンの機会及び周期性」は、本願補正発明の「複数の異なる方式の無線通信のうち少なくともいずれかの無線パラメータ」に相当する。
また、引用発明の「デバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーション」は、デバイス内干渉を示すものであるから「干渉通知」を含むといえ、「デバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーション」を「第一情報」と称することは任意であるから、引用発明の「デバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーション」は、本願補正発明の「干渉通知」を含む「第一情報」と一致している。
そして、引用発明の「eNB」は本願補正発明の「基地局」に相当する。
よって、引用発明の「無線通信方法であって、LTEの無線通信とISMの無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能なUEが、FDMのために使用できない周波数、FDMのために利用可能な周波数間測定結果、DRXに基づくTDM解決法のために提案されるTDMパターンの周期性やスケジューリング周期、重要なISMシグナリングの受信を保護するためのビーコンの機会及び周期性を含む、デバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーションを、eNBに送信」することは、本願補正発明と「無線通信方法であって、第一方式の無線通信と第二方式の無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能な無線端末が、干渉通知と、前記複数の異なる方式の無線通信のうち少なくともいずれかの無線パラメータと、を含む第一情報を、基地局に送信」する点で一致している。

(イ)引用発明の「検出されたデバイス内干渉を回避するため」は、干渉を回避することによって干渉が除去されるといえるから、本願補正発明の「検出された干渉を除去するため」に相当する。
引用発明の「UEにおいて実行されるべきDRX」は、本願補正発明の「無線端末において実行されるべき動作」に含まれるから、引用発明の「UEにおいて実行されるべきDRXに関する情報」は、本願補正発明の「無線端末において実行されるべき動作に関する情報」に含まれる。
そして、引用発明の「UEにおいて実行されるべきDRXに関する情報を示す一時的なTDM解決法のための構成」は、UEにおいて実行されるべき動作に関する情報を示すといえ、UEを制御するための情報といえることから、本願補正発明の「無線端末において実行されるべき動作に関する情報を示す制御情報」に相当する。
よって、引用発明の「前記UEが、検出されたデバイス内干渉を回避するために、前記UEにおいて実行されるべきDRXに関する情報を示す一時的なTDM解決法のための構成であって、前記インジケーションに基づく前記一時的なTDM解決法のための構成を、前記eNBから受信」することは、本願補正発明の「前記無線端末が、検出された干渉を除去するために前記無線端末において実行されるべき動作に関する情報を示す制御情報であって、前記第一情報に基づく前記制御情報を、前記基地局から受信」することに相当する。

(ウ)上記(イ)で述べた点を考慮すると、引用発明の「前記UEが、前記検出されたデバイス内干渉を回避するための前記一時的なTDM解決法のための構成を受信することに応じて、前記一時的なTDM解決法のための構成に従って前記DRXを実行する」ことは、本願補正発明の「前記無線端末が、前記検出された干渉を除去するための前記制御情報の受信に応じて、前記制御情報に従って前記動作を実行する」ことに相当する。

以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「無線通信方法であって、
第一方式の無線通信と第二方式の無線通信とを含む複数の異なる方式の無線通信を実行可能な無線端末が、干渉通知と、前記複数の異なる方式の無線通信のうち少なくともいずれかの無線パラメータと、を含む第一情報を、基地局に送信し、
前記無線端末が、検出された干渉を除去するために前記無線端末において実行されるべき動作に関する情報を示す制御情報であって、前記第一情報に基づく前記制御情報を、前記基地局から受信し、
前記無線端末が、前記検出された干渉を除去するための前記制御情報の受信に応じて、前記制御情報に従って前記動作を実行する
ことを特徴とする無線通信方法。」

(相違点1)
一致点の「第一情報」に含まれる「干渉通知」が、本願補正発明では、「前記第一方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、前記第二方式の無線通信において干渉の発生が検出されたか否か、または、前記第一方式の無線通信と前記第二方式の無線通信との双方において干渉の発生が検出されたか否かを示す干渉通知」であるのに対して、引用発明には当該発明特定事項がない点。

(相違点2)
第一情報を基地局に送信するのに、本願補正発明では、RRC(Radio Resource Control)制御信号で送信するのに対して、引用発明には新しいメッセージで送信するとしか特定されていない点。

エ 判断
上記各相違点について判断する。
(相違点1について)
上記周知技術1のとおり、「LTEの無線通信とISMの無線通信を備えるUEにおいて、デバイス内共存問題を通知するインジケーションとともに、LTEが干渉しているか否か、ISMが干渉しているか否か、LTEとISMの双方が干渉しているか否かを示す干渉の方向情報を、干渉制御のための情報としてeNBに送信すること」は周知であるから、引用発明において、UEがデバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーションをeNBに送信する際に、上記周知技術1を適用し、干渉制御のための情報として、LTEが干渉しているか否か、ISMが干渉しているか否か、LTEとISMの双方が干渉しているか否かを示す干渉の方向情報を含めて送信するようにすることは、当業者が容易に想到しうるものである。

(相違点2について)
上記周知技術2のとおり、「デバイス内共存問題を通知するインジケーションを新しいRRCメッセージで送信すること」は周知であるから、引用発明において、UEがデバイス内干渉を示すとともに干渉回避のためのインジケーションを、新しいメッセージでeNBに送信する際に、上記周知技術2を適用し、RRC制御信号で送信するようにすることは、当業者が容易に想到しうるものである。

そして、本願補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法17条の2第5項の規定に違反するものであり、また、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?20に係る発明は、平成28年4月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記「第2 平成29年7月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定」の[理由]「1 補正の概要」の項の「本願発明」のとおりのものと認める。

2 原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由である、平成28年9月14日付け拒絶理由通知の理由は、概略、以下のとおりである。
(新規事項)平成28年4月1日付け手続補正書でした補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。


●理由(新規事項)について
・請求項 1-20
補正により、請求項1,12,15,18の「第1補助情報」について、「前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す第1補助情報」である点が追加されたが、このような補助情報は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載されていない。また、この点は願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項から自明なものでもない。したがって、前記補正は新規事項の追加である。

3 当審の判断
平成28年4月1日付け手続補正書でした補正によって追加された本願発明の「前記複数の無線通信のうちで、前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す第1補助情報」について、明細書には、「第1補助情報」が「干渉の制御を補助する情報」であり、「複数の無線通信について無線端末20の志向を示す情報(志向情報)」であること、志向(preference)は例えば、「無線端末20で複数の無線通信のうちどの無線通信の通信性能を優先するかを示す」ことは記載されているものの(段落[0032])、「第1補助情報」が「前記複数の無線通信のうちで、前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す」ことは出願当初の明細書等に記載されていない。
次に、明細書には「通信規制」なる用語自体記載されていない。そして、補正によって追加された基地局が決定する「前記干渉に対する制御」とは、活性度に応じてDRXの周期を短くしたり長くしたりすることやスケジューリングの頻度を上げたり下げたりすることであるから(段落[0020]、[0068]、[0110]-[0114]等)、「前記干渉に対する制御」とは、DRXの制御やスケジューリングの制御である。
ここで、DRXを行うことは常に受信状態にするのではなく、制限を設けた受信状態にすることであるから、DRXを設定すること自体が干渉に対する制御における通信規制といえる。また、スケジューリングを設けることは常に送受信するのではなく、制限を設けた送受信状態にすることであるから、スケジューリングを設定すること自体が干渉に対する制御における通信規制といえる。
よって、補正によって追加された「前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外」とは、DRXの対象外とすること(すなわち、DRXを行わないこと)や、スケジューリングの設定の対象外とすること(すなわち、スケジューリングを用いた通信を行わないこと)を含むものである。
しかしながら、発明の詳細な説明には、例えば段落[0020]に「制御部13は例えば、干渉の制御を補助する情報を受信すると、無線通信に関する制御情報として無線通信パラメータを決定する。無線通信パラメータは例えば、第1無線通信の活性度を上げる(活性化する)場合には、DRXの周期をより短くするように設定されるか、スケジューリングの頻度を上げるように設定される。また、無線通信パラメータは例えば、第1無線通信の活性度を下げる場合には、DRXの周期をより長くするように設定されるか、スケジューリングの頻度を下げるように設定される。」と記載されているように、DRXの周期を短くしたり長くすることやスケジューリングの頻度を上げたり下げたりすることは記載されているものの、特定の無線通信を、DRXの対象外とすることや、スケジューリングの設定の対象外とすることは、出願当初の明細書等に記載されておらず、出願当初の明細書等の記載から自明な事項ともいえない。
したがって、補正によって本願発明に追加された「前記複数の無線通信のうちで、前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外となり得る無線通信を示す第1補助情報」は、DRXの設定の対象外とすることや、スケジューリングの設定の対象外とすることを含む「前記干渉に対する制御を基地局が決定する際に当該制御における通信規制の対象外」に関する事項を新たに追加するものであって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものではない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第17条の2第3項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-16 
結審通知日 2018-10-23 
審決日 2018-11-06 
出願番号 特願2014-525570(P2014-525570)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
P 1 8・ 572- Z (H04W)
P 1 8・ 55- Z (H04W)
P 1 8・ 57- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 健  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 山本 章裕
羽岡 さやか
発明の名称 無線通信方法、無線通信システム、基地局および無線端末  
代理人 高田 大輔  
代理人 大竹 裕明  
代理人 平川 明  

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