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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1347301
審判番号 不服2018-1503  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-02 
確定日 2018-12-20 
事件の表示 特願2013-209406号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月20日出願公開、特開2015- 73549号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年10月4日の出願であって、平成29年6月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年8月23日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年10月31日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がなされ、それに対して、平成30年2月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成30年2月2日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成30年2月2日付け手続補正についての補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてする補正を含むものであって、平成29年8月23日付け手続補正によって補正された本件補正前の請求項1に、
「変動表示を実行する変動表示手段に導出された変動表示の表示結果が特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶する保留記憶手段と、
前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する保留表示を行なう保留表示手段と、
前記保留表示手段よりも後方に配置され、前記変動表示手段における変動表示に対応した表示を行なう演出表示手段と、
前記保留表示手段と前記演出表示手段との間に配置された可動部材と、
前記可動部材を制御する可動部材制御手段とを備え、
前記可動部材制御手段は、前記保留表示の表示態様によって前記可動部材が動作する期待度が異なるように、前記可動部材を制御し、
前記保留表示手段は、前記演出表示手段による表示が前記保留表示に作用することを示す表示となった場合に前記保留表示の表示態様を変化させる、遊技機。」とあったものを、

「変動表示を実行する変動表示手段に導出された変動表示の表示結果が特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶する保留記憶手段と、
前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する保留表示を行なう保留表示手段と、
前記保留表示手段よりも後方に配置され、前記変動表示手段における変動表示に対応した表示を行なう演出表示手段と、
前記保留表示手段と前記演出表示手段との間に配置された可動部材と、
前記可動部材を制御する可動部材制御手段とを備え、
前記可動部材制御手段は、前記保留表示の表示態様によって前記可動部材が動作する期待度が異なるように、前記可動部材を制御し、
前記演出表示手段は、前記保留表示手段に前記保留表示が表示されているときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する演出保留表示を表示可能であり、
前記保留表示手段は、前記演出表示手段による表示が前記保留表示に作用することを示す表示となった場合に前記保留表示の表示態様を変化させる、遊技機。」とする補正を含むものである(下線は、補正前後の箇所を明示するために合議体が付した。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、次の補正事項からなる。
本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「演出表示手段」が「前記保留表示手段に前記保留表示が表示されているときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する演出保留表示を表示可能であ」るとする補正。

2 本件補正の目的
(1)上記1(2)の補正は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の【0310】等の記載に基づいて、本件補正前の請求項1において記載されていた「演出表示手段」が「前記保留表示手段に前記保留表示が表示されているときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する演出保留表示を表示可能であ」ると限定するものである。

(2)以上のとおり、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下検討する。

(1)本願補正発明
本願補正発明を再掲すると、次のとおりのものである。なお、記号AないしGは、分説するため合議体が付した。

「A 変動表示を実行する変動表示手段に導出された変動表示の表示結果が特定表示結果となったときに遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B 変動表示に関する情報を保留記憶情報として記憶する保留記憶手段と、
C 前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する保留表示を行なう保留表示手段と、
D 前記保留表示手段よりも後方に配置され、前記変動表示手段における変動表示に対応した表示を行なう演出表示手段と、
E 前記保留表示手段と前記演出表示手段との間に配置された可動部材と、
F 前記可動部材を制御する可動部材制御手段とを備え、
F-1 前記可動部材制御手段は、前記保留表示の表示態様によって前記可動部材が動作する期待度が異なるように、前記可動部材を制御し、
D-1 前記演出表示手段は、前記保留表示手段に前記保留表示が表示されているときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する演出保留表示を表示可能であり、
C-1 前記保留表示手段は、前記演出表示手段による表示が前記保留表示に作用することを示す表示となった場合に前記保留表示の表示態様を変化させる、
G 遊技機。」

(2)引用例
ア 原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2013-106704号公報(平成25年6月6日出願公開、以下「引用例1」という。)には、遊技機に関し、次の事項が図とともに記載されている(下線は引用発明等の認定に関連する箇所を明示するために合議体が付した。以下同様。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
この発明は、始動入賞装置に入賞した遊技球の有効保留数を表示する保留表示手段を備えた遊技機に関するものである。
・・・略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで前記演出装置は、前記表示装置の表示部より前側において該表示部の上下または左右の周囲に配設されており、前記演出部材のサイズを大型にしたり、該演出部材の移動量を大きく設定することで、演出効果を高めることができる。従って前記演出装置は、前記表示装置の表示部での図柄変動演出の内容に連動して、前記演出部材を該表示部の前側へ延出するよう構成したものも多く実施されている。このように演出部材が表示装置の前側または表示部の前側まで延出して、かつ該演出部材が延出した状態のまま暫く停止するような演出態様の場合には、前記保留表示手段の前側に演出部材が位置して該保留表示手段が隠れてしまい、入賞した遊技球の有効保留数を遊技者が迅速に確認できない不都合が発生している。
【0006】
そこで本発明は、前述した課題を解決するために案出されたものであって、演出部材の移動に影響されることなく、保留表示手段による有効保留数の表示を確認し得るよう構成した遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明は、
遊技球が流下する遊技領域(10)が画成された遊技盤(D)の後側に配設され、前記遊技盤(D)に設けられた演出領域(28A)を介して該遊技盤(D)の前側に臨むと共に、前記遊技領域(10)に配設した始動入賞装置(20)への遊技球の入賞を契機として図柄変動演出が行なわれる表示装置(H)と、前記始動入賞装置(20)に入賞した遊技球の有効保留数を表示する保留表示手段(50)と、前記表示装置(H)の前方に重なる位置に移動可能な演出部材(102,103)とを備えた遊技機において、
前記演出領域(28A)に臨む表示装置(H)の前方に重なる位置に、前記保留表示手段(50)が配設され、
前記保留表示手段(50)と前記表示装置(H)との間に前記演出部材(102,103)が配設されたことを要旨とする。
【0008】
従って、請求項1に係る発明によれば、始動入賞装置への入賞が検出された遊技球の有効保留数を表示する保留表示手段が、表示装置の表示部に前方に重なる位置に配設すると共に、保留表示手段と表示部との間に演出部材を配設したから、演出部材が表示装置の表示部の前方へ移動しても保留表示手段が該演出部材で隠れることがない。従って、演出部材の動作に影響されることなく、常に保留表示手段での有効保留数の表示を視認することができ、有効保留数を的確かつ迅速に確認することができる。」
(イ)「【実施例】
【0015】
(パチンコ機)
実施例に係るパチンコ機Pは、図1に示すように、前後に開口する矩形枠状に形成されて遊技店の図示しない設置枠台に縦置き姿勢で設置される固定枠としての外枠Aの開口前面側に、遊技盤Dを着脱可能に保持する本体枠としての中枠Bが、開閉および着脱可能に組み付けられている。そして、前記遊技盤Dの裏側に、所定条件の成立(後述する始動入賞装置20への遊技球(パチンコ球)の入賞)を契機として演出用の図柄を変動表示させて図柄変動演出を行なう図柄表示装置(表示装置)Hが着脱可能に配設されている。また、前記中枠Bの前面側には、前記遊技盤Dを透視保護するガラス板や透明な合成樹脂材により形成された透視保護板26で前後に開口する窓部を覆うよう構成された装飾枠としての前枠Cが開閉可能に組み付けられると共に、該前枠Cの下方に遊技球を貯留する下球皿Fが前記中枠Bに組み付けられる。更に、前記前枠Cの下部位置に、遊技球を貯留する上球皿Eが一体的に組み付けられており、前枠Cの開閉に合わせて上球皿Eも一体的に開閉するよう構成される。
・・・略・・・
【0017】
(遊技盤)
前記遊技盤Dは、図2に示すように、アクリルやポリカーボネート等の光透過性の合成樹脂製板やベニア等の木製合板を材質とし、前記中枠Bに設けた遊技盤保持部(図示せず)の内縁形状に整合する外縁形成された略矩形の平板状に形成され、その前側には遊技領域10が設けられると共に、その後側には図3および図4に示す設置部材30が配設されている。また、前記遊技盤Dの前側には、左下部から右上部にかけて円弧状に延在する外レール11と、この外レール11の内側に中央下部から左上部にかけて並べて配置された内レール12と、外レール11の右上部から内レール12の下部までの間に右方へ凹む湾曲形状に構成された盤面飾り部材13等が配設されており、両レール11,12および盤面飾り部材13で囲まれた内側が前記遊技領域10として構成されている。これにより、前記打球発射装置から発射された遊技球は、外レール11と内レール12との間を通って遊技領域10の左上部に打ち出された後、該遊技領域10内を流下する。但し、前記内レール12の延在長を大きく設定して、前記外レール11および該内レール12で遊技領域10を形成するように構成してもよい。
【0018】
前記遊技盤Dには、図3に示すように、中央に大きな貫通口14が形成され、演出領域として前後に開口した表示窓口28Aが形成された枠状装飾部材(装飾部材)28が、該貫通口14の開口縁を覆うように配設されている。この枠状装飾部材28には、遊技盤Dの前側に露出する部分に、前記設置部材30の後側に着脱可能に配設された前記図柄表示装置H(図3参照)の表示演出部H1で表示される図柄変動演出の内容に合わせた装飾が施されている。そして、図2および図4に示すように、前記枠状装飾部材28の表示窓口28Aには、前記設置部材30の後側に配設された図柄表示装置Hの表示演出部H1や、該設置部材30の前側に配設される後述の可動演出装置100および第1?第3の装飾部材40,41,42や、後述する保留表示装置50等が臨むように構成されている。
・・・略・・・
【0022】
前記始動入賞装置20、特別入賞装置21および普通入賞具22には、各々に入賞した遊技球を検知する球検知スイッチが個別に配設され、各球検知スイッチからの球検知信号は、前記設置部材30の後側に取り付けられて当該パチンコ機Pを総合的に制御する主制御装置(図示せず)に送出される。前記主制御装置は、前記始動入賞装置20の球検知スイッチからの検出信号を受けると、大当たり抽選を行なうと共に、前記設置部材30の後側に取り付けられた統括制御装置(図示せず)に制御信号を出力して前記図柄表示装置Hに図柄変動演出を行なわせると共に、前記中枠Bの後側に配設された払出制御装置(図示せず)に制御信号を出力して、球払出装置(図示せず)に所定数の賞球を払い出させる。そして、前記主制御装置における前記大当たり抽選の結果として大当たりが発生する場合には、図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄変動演出の後に、該表示演出部H1に所定の図柄組合わせで図柄が停止表示され、前記特別入賞装置21の開閉扉21Aが開放位置に姿勢変位して多数の遊技球の入賞が可能となる。また主制御装置は、前記特別入賞装置21の球検知スイッチからの検出信号を受けると、前記払出制御装置に制御信号を出力して前記球払出装置に所定数の賞球を払い出させる。更に主制御装置は、前記普通入賞具22の球検知スイッチからの検出信号を受けると、前記払出制御装置に制御信号を出力して前記球払出装置に所定数の賞球を払い出させる。
・・・略・・・
【0024】
前記設置部材30の設置壁部31には、図3および図4に示すように、前後に貫通する表示開口(表示部)34が形成されており、該設置壁部31の後側には、該表示開口34に前記表示演出部H1を臨ませた状態で前記図柄表示装置Hが着脱可能に取り付けられる。この図柄表示装置Hは、前記表示演出部H1を構成する液晶パネルが収容ケースに収容されたユニット部材であって、該収容ケースの後面には、該図柄表示装置Hの表示演出部H1の表示制御を行なう表示制御装置と、当該パチンコ機Pの遊技演出を統括的に制御する前記統括制御装置が配設される。統括制御装置には、設置壁部31の後側に配設した中継基板(図示せず)を介して前記図柄表示装置H、前記前枠Cに配設された照明装置や前記中枠Bに配設されたスピーカ等が電気的に接続されており、該統括制御装置から出力される制御信号に基づいて各装置が作動制御される。また統括制御装置には、設置壁部31の前側に配設された前記各装飾部材40,41,42や、前記可動演出装置100等が電気的に接続されており、該統括制御装置から出力される制御信号に基づいて各照明装置の点灯制御や可動演出装置100の作動が制御される。なお実施例では、前記設置壁部31について、表示開口34の上側部分を上板部31A、表示開口34の下側部分を下板部31B、表示開口34の右側部分を右板部31C、表示開口34の左側部分を左板部31Dと各々指称する。前記設置壁部31の上板部31A、下板部31B、右板部31Cおよび左板部31Dは、前後方向への部分的な凹凸や段差があるものの、基本的には垂直に形成されて前記遊技盤Dの後面と平行になっている。」
(ウ)「【図2】


(エ)「【0026】
(保留表示装置)
そして、実施例のパチンコ機Pでは、パチンコ遊技において、前記図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄変動演出中に前記始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aまたは第2始動入賞口20Bに次の遊技球が入賞して検出されると、予め設定された数(実施例では各々の始動入賞口20A,20B毎に4個)までを有効保留として記憶して、先に入賞した遊技球による表示部での図柄変動演出が終了すると、次に入賞した遊技球による図柄変動演出を連続して行なうようになっている。このため前記パチンコ機Pでは、前記始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aで発生した保留球に係る有効保留数と、前記第2始動入賞口20Bで発生した保留球に係る有効保留球(審決注:「有効保留数」の誤記と認められる。)とを表示する保留表示手段としての保留表示装置50が、図3、図4、図9および図10に示すように、前記底壁部材43の前側および可動演出装置100の前側に取付けられている。すなわち前記保留表示装置50は、前記設置部材30の設置壁部31の前側に配設された前記可動演出装置100や、第1?第3の各装飾部材40,41,42および底壁部材43より前側に位置するよう配設されている。
【0027】
前記保留表示装置50は、図3?図6に示すように、前記表示開口34の左右開口幅と略同じ横幅寸法で横長に形成されて、前記底壁部材43の前側および可動演出装置100の前側に固定される本体部51と、この本体部51の上部左側から上方へ突出すると共に右方へ屈曲して延出する第1保留表示部52と、前記本体部51の上部右側から上方へ突出すると共に左方へ屈曲して延出する第2保留表示部53とを備えている。前記第1保留表示部52は、前記始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aに入賞した遊技球の有効保留数を表示するものであり、前記第2保留表示部53は、該始動入賞装置20の第2始動入賞口20Bに入賞した遊技球の有効保留数を表示するものである。このような保留表示装置50は、前記本体部51、第1保留表示部52および第2保留表示部53を一体に形成した前パネル部材55と、この前パネル部材55の後側に取付けられた後パネル部材56と、これら前パネル部材55と後パネル部材56との間に挟持された表示基板57とで構成されている。
・・・略・・・
【0035】
(第1保留表示部)
前記第1保留表示部52は、図2および図4に示すように、前記レンズ部材59の各レンズ部59Aおよび各LED64からなる4個の保留表示ランプ、すなわち正面左側から第1保留表示ランプ71、第2保留表示ランプ72、第3保留表示ランプ73および第4保留表示ランプ74を備えている。このような第1保留表示部52は、前記始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aにおいて遊技球の連続入賞により有効保留数が「1」となった場合には、前記第1保留表示ランプ71のLED64が発光制御され、これにより該第1保留表示ランプ71が点灯して有効保留数が1つであることを表示する。そして、第1始動入賞口20Aにおける有効保留数が「2」となった場合には、更に前記第2保留表示ランプ72のLED64が発光制御され、前記第1保留表示ランプ71および当該第2保留表示ランプ72が同時に点灯して有効保留数が2つであることを表示する。また、第1始動入賞口20Aにおける有効保留数が「3」となった場合には、第1?第3の各保留表示ランプ71,72,73が同時に点灯して有効保留数が3つであることを表示し、第1始動入賞口20Aにおける有効保留数が「4」となった場合には、第1?第4の各保留表示ランプ71,72,73,74が同時に点灯して有効保留数が4つであることを表示するようになっている。
【0036】
(第2保留表示部)
前記第2保留表示部53は、図2および図4に示すように、前記レンズ部材61の各レンズ部61Aおよび各LED65からなる4個の保留表示ランプ、すなわち正面右側から第5保留表示ランプ75、第6保留表示ランプ76、第7保留表示ランプ77および第8保留表示ランプ78を備えている。このような第2保留表示部53は、前記始動入賞装置20の第2始動入賞口20Bにおいて遊技球の連続入賞により有効保留数が「1」となった場合には、前記第5保留表示ランプ75のLED65が発光制御され、これにより該第5保留表示ランプ75が点灯して有効保留数が1つであることを表示する。そして、第2始動入賞口20Bにおける有効保留数が「2」となった場合には、更に前記第6保留表示ランプ76のLED65が発光制御され、前記第5保留表示ランプ75および当該第6保留表示ランプ76が同時に点灯して有効保留数が2つであることを表示する。また、第2始動入賞口20Bにおける有効保留数が「3」となった場合には、第5?第7の各保留表示ランプ75,76,77が同時に点灯して有効保留数が3つであることを表示し、第2始動入賞口20Bにおける有効保留数が「4」となった場合には、第5?第8の各保留表示ランプ75,76,77,78が同時に点灯して有効保留数が4つであることを表示するようになっている。
【0037】
前記第1保留表示部52および第2保留表示部53の前側には、図1?図3に示すと共に前述したように、前記枠状装飾部材28に配設した前記透明保護板95が位置している。従って、前記球通入口90から表示窓口28A内へ流入した遊技球が、前記第1保留表示部52および第2保留表示部53の前側において球案内面91を転動する際に、前記透明保護板95により両保留表示部52,53の前面に接触することが防止されるようになっている。
【0038】
(可動演出装置)
前記可動演出装置100は、図7?図10に示すように、前記設置壁部31の左板部31Dの前面下部から下板部31Bの前面左部の部位に固定される装置本体101と、この装置本体101に回転可能に配設された第1演出部材102と、この第1演出部材102に進退可能に配設された第2演出部材103とを備えている。この可動演出装置100は、非作動時において、前記第2演出部材103が第1演出部材102側に移動した状態で、前記保留表示装置50と前記図柄表示装置Hとの間に上方から収容されると共に、作動時には上方へ回転して前記表示開口34の中央側に向けて右上がりの傾斜状に姿勢変位するようになっている。すなわち可動演出装置100は、前記保留表示装置50の後方に重なって位置する第1姿勢(図9参照)と、この第1姿勢から前記第1演出部材102が回転して(第2演出部材103に後退したまま)、保留表示装置50の配設位置よりも表示窓口28Aの中央側に移動して前記表示開口34の前方へ延出した第2姿勢と、更に第2姿勢の状態から第2演出部材103が第1演出部材102から延出した第3姿勢(図10参照)とに姿勢変位が可能となっている。

(オ)「【図9】

【図10】


(カ)「【0045】
(実施例の作用)
前述のように構成された実施例のパチンコ機Pでは、前記遊技盤Dの遊技領域10へ打ち出された遊技球が前記始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aまたは第2始動入賞口20Bに入賞して、該始動入賞装置20に配設された球検知スイッチによる球検知信号を前記主制御装置が受けると、該主制御装置は、大当たり抽選を行なうと共に、前記統括制御装置に制御信号を出力して前記図柄表示装置Hの表示演出部H1において図柄変動演出を行なわせる。そして主制御装置は、前記大当たり抽選の結果として大当たりが発生すると、前記統括制御装置を介して図柄表示装置Hの表示演出部H1に所定の図柄組合わせで図柄を停止表示させ、前記特別入賞装置21の開閉扉21Aを開放動作させて入賞口を開放させる。また前記統括制御装置は、前記主制御装置からの制御信号に基づき、前記可動演出装置100や、前記第1?第3の各装飾部材40,41,42や、その他の遊技部品を、前記図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄演出内容に合わせて総合的に作動制御する。
・・・略・・・
【0048】
そして、前記可動演出装置100は、前記保留表示装置50と図柄表示装置Hの表示開口34に臨む表示演出部H1との間において、前記第1姿勢と第2姿勢との間および第2姿勢と第3姿勢との間を姿勢変位する。従って、前記保留表示装置50の第1保留表示部52および第2保留表示部53が、前記可動演出装置100の姿勢変位する第1演出部材102および第2演出部材103で隠れることがない。
・・・略・・・
【0051】
また、前記図柄表示装置Hにおける前記表示開口34に臨んだ表示演出部H1での図柄演出表示と、該表示演出部H1の前方に重なって位置する第1保留表示部52の第1?第4の各保留表示ランプ71?74の点灯および第2保留表示部53の第5?第8の各保留表示ランプ75?78の点灯表示とが重なるようになるから、図柄演出部H1での図柄演出表示と各第1?第8の各保留表示ランプ71?78の点灯表示とを連動させることができる。また、図柄演出部H1の前方に離れた位置で第1?第8の各保留表示ランプ71?78が点灯するので、立体感のある演出表示を行なうこともできる。」
(キ)【0018】(上記(イ))の記載からみて、「設置部材30」を基準に、後側に図柄表示装置Hの表示演出部H1は配設され、同じく前側に保留表示装置50が配設されているから、図柄表示装置の表示演出部H1は、保留表示装置50より後方に配置されているといえる。また、【0026】(上記(エ))には、有効保留として記憶するのがパチンコ機Pの何であるか明示されていないが、技術常識からみて、主制御装置が有効保留を記憶することは明らかである。
(ク)上記(ア)ないし(キ)からみて、引用例1には、実施例として、次の発明が記載されている。なお、aないしgについては本願補正発明のAないしGに対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。
「a 図柄表示装置Hに図柄変動演出を行なわせ、大当たり抽選の結果として大当たりが発生する場合には、図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄変動演出の後に、該表示演出部H1に所定の図柄組合わせで図柄を停止表示させる統括制御装置と、特別入賞装置21の開閉扉21Aが開放位置に姿勢変位して多数の遊技球の入賞を可能とさせる主制御装置とを備えたパチンコ機Pであって(【0015】、【0022】)、
b 主制御装置は、前記図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄変動演出中に始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aまたは第2始動入賞口20Bに次の遊技球が入賞して検出されると、予め設定された数までを有効保留として記憶して、統括制御装置は、先に入賞した遊技球による表示部での図柄変動演出が終了すると、次に入賞した遊技球による図柄変動演出を連続して行い(【0026】)、
c 前記第1始動入賞口20Aで発生した保留球に係る有効保留数を表示する、第1保留表示ランプ71、第2保留表示ランプ72、第3保留表示ランプ73および第4保留表示ランプ74を備える第1保留表示部52と、前記第2始動入賞口20Bで発生した保留球に係る有効保留数を表示する、第5保留表示ランプ75、第6保留表示ランプ76、第7保留表示ランプ77および第8保留表示ランプ78を備える第2保留表示部53とにより構成される保留表示装置50を備え、具体的には、第1保留表示部52は、前記始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aにおいて遊技球の連続入賞により有効保留数が「1」となった場合には、前記第1保留表示ランプ71のLED64が発光制御され、これにより該第1保留表示ランプ71が点灯して有効保留数が1つであることを表示し、第1始動入賞口20Aにおける有効保留数が「2」となった場合には、更に前記第2保留表示ランプ72のLED64が発光制御され、前記第1保留表示ランプ71および当該第2保留表示ランプ72が同時に点灯して有効保留数が2つであることを表示し、第1始動入賞口20Aにおける有効保留数が「3」となった場合には、第1?第3の各保留表示ランプ71,72,73が同時に点灯して有効保留数が3つであることを表示し、第1始動入賞口20Aにおける有効保留数が「4」となった場合には、第1?第4の各保留表示ランプ71,72,73,74が同時に点灯して有効保留数が4つであることを表示するものであり、第2保留表示部53についても同様に表示する制御を行い(【0026】、【0035】、【0036】)、
d、e 装置本体101と、この装置本体101に回転可能に配設された第1演出部材102と、この第1演出部材102に進退可能に配設された第2演出部材103とを備えた可動演出装置100であって、その非作動時において、前記第2演出部材103が第1演出部材102側に移動した状態で、前記保留表示装置50と、該保留表示装置50より後方に配置された図柄変動演出を行う前記図柄表示装置Hとの間に上方から収容されると共に、作動時には上方へ回転して前記表示開口34の中央側に向けて右上がりの傾斜状に姿勢変位するようになっている可動演出装置100と(【0015】、【0038】、図9、10)、
f、f-1’統括制御装置は、主制御装置からの制御信号に基づき、前記可動演出装置100やその他の遊技部品を、図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄演出内容に合わせて総合的に作動制御する(【0045】)、
g パチンコ機P。」(以下「引用発明」という。)

イ 原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用され、本願出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2011-143174号公報(平成23年7月28日出願公開、以下「引用例2」という。)には、パチンコ遊技機に関し、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るパチンコ遊技機について説明する。
【0020】
[パチンコ遊技機1の概略構成]
まず、パチンコ遊技機1の概略構成及び動作について説明する。図1は、パチンコ遊技機1の概略正面図である。パチンコ遊技機1は、遊技者の所定操作によって打ち出された遊技球が入賞すると賞球を払い出すように構成されている。図1に示されるように、パチンコ遊技機1は、遊技球が打ち出される遊技盤2と、遊技盤2を囲む枠部材5とを備えている。枠部材5は、遊技盤2に対して蝶番(不図示)を介して開閉可能に構成されると共に、遊技盤2に対して着脱可能に構成されている。
・・・略・・・
【0034】
図1に示されるように、画像表示器6の表示画面には、図柄表示領域60、第1保留数表示領域61、第2保留数表示領域62が設けられている。パチンコ遊技機1では、第1始動口21又は第2始動口に遊技球が入って入賞すると大当たり抽選(第1特別図柄抽選又は第2特別図柄抽選)が実行される。大当たり抽選が行われた場合、画像表示器6の図柄表示領域60において、横方向に並んだ3列の特別図柄が上から下へ流れて見えるような動画像が予め設定された変動時間だけ表示される。そして、変動時間が経過すると、大当たり抽選の結果を示す停止図柄の静止画像が表示される。その際、あるライン上に同一或いは関連性のある図柄が揃うと(例えば「777」等の所定の特別図柄が表示されると)、大入賞口23が開いて大当たり状態となり、遊技者が多量の賞球を得ることが可能な大当たり遊技を楽しむことができる。また、図柄が揃わない停止図柄(図1に示される例では「776」)が図柄表示領域60に表示された場合にはハズレとなり、大入賞口23は開かない。
【0035】
ところで、パチンコ遊技機1では、図柄表示領域60に特別図柄が変動表示されている間に第1始動口21又は第2始動口22に新たな遊技球が入って入賞した場合、その入賞した遊技球に対する大当たり抽選や特別図柄の変動表示は、先に入賞した遊技球に対する特別図柄の変動表示及び停止図柄の表示が終了するまで保留される。第1保留数表示領域61には、第1始動口21に入賞したにも拘わらず第1特別図柄抽選(大当たり抽選)が保留されている遊技球(いわゆる保留球)と同数の保留球画像が、パチンコ遊技機1において保留可能な第1特別図柄抽選の最大保留数Umax1(本実施形態では「4」)を上限として表示される。図1に示される例では、第1特別図柄抽選に対する保留球が4であることを示す4個の保留球画像が第1保留数表示領域61に表示されている。
【0036】
第2保留数表示領域62には、第2始動口22に入賞したにも拘わらず第2特別図柄抽選(大当たり抽選)が保留されている遊技球(保留球)と同数の保留球画像が、パチンコ遊技機1において保留可能な第2特別図柄抽選の最大保留数Umax2(本実施形態では「4」)を上限として表示される。図1に示される例では、第2特別図柄抽選に対する保留数が2であることを示す2個の保留球画像が第2保留数表示領域61に表示されている。
・・・略・・・
【0039】
遊技盤2の前面には、各種の演出に用いられる盤ランプ8及び可動役物7(本発明の演出手段の一例)が配置されている。盤ランプ8は、遊技者によるゲームの進行に応じて発光することによって光による各種の演出を行う。可動役物7は、発光しながら遊技盤2に対して回転することにより、各種の演出を行う。なお、可動役物7は、遊技盤2に対して所定方向へ移動するものであってもよい。また、可動役物7の形状は、星形に限定されるものではなく、例えば動植物の一部を模した形状等、様々な形状が考えられる。
【0040】
図3は、図1における表示器4の拡大図である。表示器4は、上述した特別図柄抽選や普通図柄抽選の結果や保留数に関する情報を表示するものである。図3に示されるように、表示器4は、第1特別図柄表示器41、第2特別図柄表示器42、第1特別図柄保留表示器43、第2特別図柄保留表示器44、普通図柄表示器45、普通図柄保留表示器46、及び遊技状態表示器47を備えている。
【0041】
第1特別図柄表示器41は、第1始動口21に遊技球が入賞したことを契機として変動する図柄を表示するものであり、例えば7セグ表示装置で構成される。第1特別図柄表示器41は、例えば、第1始動口21に遊技球が入賞した場合、特別図柄(第1特別図柄)を変動表示してその抽選結果を表示する。第2特別図柄表示器42は、第2始動口22に遊技球が入賞したことを契機として変動する図柄を表示するものであり、例えば7セグ表示装置で構成される。第2特別図柄表示器42は、例えば、第2始動口22に遊技球が入賞した場合、特別図柄(第2特別図柄)を変動表示してその抽選結果を表示する。普通図柄表示器45は、ゲート25を遊技球が通過することに対応して変動する図柄を表示するものであり、例えばLED表示装置で構成される。普通図柄表示器45は、例えば、遊技球がゲート25を通過した場合、普通図柄を変動表示してその抽選結果を表示する。
・・・略・・・
【0069】
特別図柄処理(ステップS4)では、遊技制御部100は、大当たり抽選を実行し、画像表示器6の図柄表示領域60に特別図柄を変動表示してから大当たり抽選の結果を示す停止図柄を表示するための処理を実行する。この特別図柄処理については、図11に基づいて後に詳述する。」
(イ)「【図1】


(ウ)「【0183】
[リーチ予告を示す保留球画像の表示例]
以下、保留球画像の態様及び保留球画像に対応する保留球消化時に行われる遊技演出について、画像表示器6の第1保留数表示領域61に保留球画像が表示される場合を例に説明する。図17は、第1演出記憶部161に記憶された遊技演出情報、予告フラグ、及び予告内容情報の一例を示す図である。図18及び図19は、保留球の消化に伴って特別図柄及び保留球画像が変化する様子を示す画像表示器6の画面図の一例を示す図である。
【0184】
図17に示される例では、第1始動口21に入賞した4個の保留球が保留されていることを示す遊技演出情報及び予告フラグが第1演出記憶部161に記憶されている。具体的には、リーチ無し演出を実行することを示す遊技演出情報と予告フラグがOFFに設定されていることを示す情報が第1記憶部161A及び第3記憶部161Cに記憶され、Aリーチの演出を実行することを示す遊技演出情報及び予告内容情報と予告フラグがONに設定されていることを示す情報が第2記憶部161Bに記憶され、Bリーチの演出を実行することを示す遊技演出情報及び予告内容情報と予告フラグがONに設定されていることを示す情報が第4記憶部161Dに記憶されている。
【0185】
第1演出記憶部161にこのような情報が記憶されている状態で保留表示コマンドがセットされた場合、図18(A)に示されるように、第1保留数表示領域61に4個の保留球画像201?204が表示される。上述したように、予告フラグがONに設定されていることを示す情報、及びAリーチの演出を示す予告内容情報が第2記憶部161Bに記憶されているので、第2記憶部161Bに対応する2つ目の保留球画像202が「Aリーチ」という文字を含んだ態様で表示されている。また、予告フラグがONに設定されていることを示す情報、及びBリーチの演出を示す予告内容情報が第4記憶部161Dに記憶されているので、第4記憶部161Dに対応する4つ目の保留球画像204が「Bリーチ」という文字を含んだ態様で表示されている。」
(エ)「【図18】


(オ)「【0192】
[役物可動予告を示す保留球画像の表示例]
図20は、第1演出記憶部161に記憶された遊技演出情報、予告フラグ、及び予告内容情報の一例を示す図である。図21は、保留球の消化に伴って可動役物7が動作する様子を示す図である。
【0193】
図20には、第1記憶部161Aに記憶されていた遊技演出情報、予告フラグ、及び予告内容情報が消去され、第2記憶部161Bに記憶されていた遊技演出情報、予告フラグ、及び予告内容情報が第1記憶部161Aにシフトされた直後の第1演出記憶部161の一例が示されている。第1記憶部161Aには、保留球消化時にスーパーリーチ演出、及び役物可動予告が実行されることを示す遊技演出情報、予告フラグがONに設定されていることを示す情報、及び役物可動予告を先読み予告することを示す予告内容情報が記憶されている。このため、保留表示コマンドがセットされることにより、「役」という文字を含んだ態様の保留球画像206が画像表示器6の第1保留数表示領域61に表示されている(図21(A)参照)。
【0194】
この状態で演出制御部130が変動開始コマンドを受信すると、「役」という文字を含んだ保留球画像206が第1保留数表示領域61から消去されると共に、特別図柄の変動表示が開始される(図21(A)及び(B)参照)。ここで消去された保留球画像206に対応する遊技演出情報はスーパーリーチ演出及び役物可動予告であるため(図20の第1記憶部161A参照)、特別図柄の変動表示に伴って、大当たりになるのではないかという期待感を遊技者に与えるために、ランプ制御部150のCPU151は、可動役物7に例えば所定の発光パターンで発光しながら回転させるといった動作を実行させる(図21(B)参照)。図21(C)には、役物可動予告が実行された結果、「スーパーリーチ」に発展した状態の画像表示器6の表示画面が示されている。
【0195】
このように、パチンコ遊技機1では、可動役物7を遊技者が特定可能な文字(ここでは「役」の文字)を含む保留球画像206が画像表示器6に表示される。そして、このように特別な態様で表示された保留球画像206に対応する保留球が消化される際には、保留球画像206で先読み予告されていた役物可動予告が実際に行われることとなる。
【0196】
役物可動予告は、例えば、大当たりに対する信頼度が低い場合には行われず、大当たりに対する信頼度が高い場合に行われるというように、大当たりに対する信頼度に応じて可動役物7を動作させるか否かが決められている。パチンコ遊技機1では、保留球画像206の表示によって役物可動予告が先読み予告されるので、保留球画像206を見た遊技者が、保留球消化時に先だって保留球画像206が表示された時点で大当たりに対する信頼度を正確に把握することができる。
【0197】
なお、役物可動予告を示唆する保留球画像206は、大当たりの信頼度に応じて異なる色で表示されてもよい。例えば、大当たりに対する信頼度が低い場合には「役」の文字を含む緑色の保留球画像206を表示し、大当たりに対する信頼度が高い場合には「役」の文字を含む赤色の保留球画像206を表示するようにしてもよい。また、「役」という文字の色を、大当たりの信頼度に応じて変更するようにしてもよい。さらにまた、可動役物7の動作を遊技者が特定可能な文字を含む保留球画像を表示するようにしてもよい。」
(カ)「【図21】


(キ)上記(ア)ないし(カ)からみて、引用例2には、パチンコ遊技機の実施形態として、次の事項が記載されている。
「保留球画像206の表示によって役物可動予告が先読み予告されるパチンコ遊技機1において(【0196】)、
「Aリーチ」、「Bリーチ」及び「役」のいずれかの文字を含んだ態様で表示される保留球画像(【0185】、【0193】、図18、図21)のうち、「役」という文字を含んだ態様の保留球画像206が画像表示器6の第1保留数表示領域61に表示され、該保留球画像206が第1保留数表示領域61から消去されると共に、特別図柄の変動表示が開始され、大当たりになるのではないかという期待感を遊技者に与えるために、可動役物7に回転させるといった動作を実行させる、ランプ制御部150のCPU151を備えたこと(【0193】、【0194】、図21)。」(以下「引用例2の記載事項」という。)

(3)対比
ア 本願補正発明と引用発明とを対比する。なお、以下の見出し(a)ないし(g)は、本願補正発明のAないしGに対応させている。

(a)引用発明の「パチンコ機P」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。また、引用発明の「特別入賞装置21の開閉扉21Aが開放位置に姿勢変位して多数の遊技球の入賞が可能となる」状態は、本願補正発明の「遊技者にとって有利な有利状態」に相当する。
そうすると、引用発明の特定事項aと、本願補正発明の特定事項Aとは、「A’遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機」である点で共通する。

(b)引用発明の特定事項bにおける「有効保留」は、前記図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄変動演出中に始動入賞装置20の第1始動入賞口20Aまたは第2始動入賞口20Bに次の遊技球が入賞して検出されると、主制御装置により情報として記憶されるものであり、この記憶された情報に基づいて、統括制御装置により、先に入賞した遊技球による表示部での図柄変動演出が終了すると、次に入賞した遊技球による図柄変動演出を連続して行なうようになっている。また、本願補正発明の「変動表示」は、本願の明細書(【0007】等)の記載を参酌すると、特別図柄又は演出図柄の変動表示を意味することが明らかであるから、引用発明の「図柄変動演出」と、本願補正発明の「変動表示」とは、「図柄変動」である点で共通する。また、引用発明は、「有効保留」(保留記憶情報)を記憶しているのであるから、本願補正発明の「保留記憶手段」に相当するものを備えることは明らかである。
してみると、引用発明の特定事項bと、本願補正発明の特定事項Bとは、「B’図柄変動に関する情報を保留記憶情報として記憶する保留記憶手段」である点で共通する。

(c)引用発明の特定事項cの「保留表示装置50」は、要するに、「有効保留」(保留記憶情報)の数、すなわち「有効保留数」を、対応する数となるように保留された順に複数の保留表示ランプで表示するものである。また、引用発明の「統括制御装置」は、「主制御装置からの制御信号に基づ」いてパチンコ機Pの遊技演出を統括的に制御するものであり、「主制御装置」からの保留記憶情報に基づいて「有効保留数」が表示されるように制御ししているといえるところ、技術常識からみて、保留表示装置50も表示制御することは明らかである。そうすると、引用発明の「統括制御装置」及び「保留表示装置50」は、本願補正発明の「保留表示手段」に相当するものであるから、引用発明の特定事項cは、本願補正発明の特定事項Cに相当する。

(d)(e)引用発明の「図柄表示装置H」は、表示演出部H1を備え、図柄変動演出を行うものであるから、本願補正発明の「演出表示手段」に相当するといえる。また、引用発明は、「図柄表示装置H」(演出表示手段)が「保留表示装置50」(保留表示手段)より後方に配置されているものであるから、引用発明の特定事項dと、本願補正発明の特定事項Dとは、「D’前記保留表示手段よりも後方に配置されている演出表示手段」を備えている点で共通する。
また、引用発明は、可動演出装置100の非作動時において、第2演出部材103が第1演出部材102側に移動した状態で、保留表示装置50(保留表示手段)と、該保留表示装置50より後方に配置された前記図柄表示装置H(演出表示手段)との間に上方から収容されることから、引用発明の特定事項d、eと、本願補正発明の特定事項Eとは、「E’前記保留表示手段と前記演出表示手段との間に配置された可動部材」を備えている点で共通する。

(f)引用発明は、統括制御装置が主制御装置からの制御信号に基づき、前記可動演出装置100を総合的に作動制御するのであるから、引用発明の特定事項fは、本願補正発明の特定事項Fに相当する。

(g)上記(a)のとおり、引用発明の「パチンコ遊技機P」は、本願補正発明の「遊技機」に相当する。

イ 上記アからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「A’遊技者にとって有利な有利状態に制御可能な遊技機であって、
B’図柄変動に関する情報を保留記憶情報として記憶する保留記憶手段と、
C 前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する保留表示を行なう保留表示手段と、
D’前記保留表示手段よりも後方に配置されている演出表示手段と、
E’前記保留表示手段と前記演出表示手段との間に配置された可動部材と、
F 前記可動部材を制御する可動部材制御手段と
を備えた、
G 遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。

・相違点1(特定事項A、B、D、E)
「遊技者にとって有利な有利状態に制御可能」とする契機が、
本願補正発明では、「変動表示を実行する変動表示手段に導出された変動表示の表示結果が特定表示結果となったとき」であるのに対し、
引用発明では、図柄変動演出を行う図柄表示装置H(演出表示手段)の表示演出部H1に、所定の図柄組合わせで図柄が停止表示したときである点。

・相違点2(特定事項F-1)
「前記可動部材制御手段」は、
本願補正発明では、「前記保留表示の表示態様によって前記可動部材が動作する期待度が異なるように、前記可動部材を制御」するのに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点3(特定事項D-1)
本願補正発明では、「前記演出表示手段は、前記保留表示手段に前記保留表示が表示されているときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する演出保留表示を表示可能である」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

・相違点4(特定事項C-1)
「前記保留表示手段」は、
本願補正発明では、「前記演出表示手段による表示が前記保留表示に作用することを示す表示となった場合に前記保留表示の表示態様を変化させる」のに対し、
引用発明では、そのような特定がない点。

(4)判断
ア 相違点1について検討する。
(ア)パチンコ遊技機において、変動表示手段として、副制御手段により制御される液晶表示装置等からなる可変表示装置とは別に、主制御手段により制御される7セグ等からなる特別図柄表示器を備え、前記可変表示装置の変動表示と、前記特別図柄表示器の変動表示とが対応するように構成することは本願の出願前に周知(以下「周知技術1」という。例.原査定の拒絶の理由で引用された上記引用例2(【0040】、【0041】、【0069】参照。)、特開2011-30716号公報(【0001】、【0016】、【0019】)、特開2011-206431号公報(【0001】、【0023】、【0036】、【0037】))である。
(イ)上記(ア)からみて、引用発明において、統括制御装置で制御する図柄表示装置Hに加え、主制御装置で制御する7セグ等からなる特別図柄表示器を備えるようになすことは、当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得たことである。そのようになした際に、図柄表示装置Hの表示が特別図柄表示器の変動表示に対応することは明らかであり、特別図柄表示器が変動表示手段の役割を果たすとともに、図柄表示装置Hが演出表示手段としての役割を果たすことは当業者に自明であるから、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは当業者が周知技術1に基づいて適宜なし得たことにすぎない。

イ 相違点2について検討する。
(ア)引用例2の記載事項(上記(2)イ(キ))は、保留球画像206の表示によって役物可動予告が先読み予告されるパチンコ遊技機1において、「Aリーチ」、「Bリーチ」及び「役」のいずれかの文字を含んだ態様で表示される保留球画像のうち、「役」という文字を含んだ態様の保留球画像206が画像表示器6の第1保留数表示領域61に表示され、該保留球画像206が第1保留数表示領域61から消去されると共に、特別図柄の変動表示が開始され、大当たりになるのではないかという期待感を遊技者に与えるために、可動役物7に回転させるといった動作を実行させる、ランプ制御部150のCPU151を備えたものであり、要するに、保留球画像が、複数種の表示態様のうち、「役」という文字を含んだ態様である場合に、可動役物7を回転させるものである。
(イ)LED等の発光部材を用いて保留表示を行う保留表示手段を備えたパチンコ遊技機において、前記保留表示手段の表示態様(発光色や点滅など)によって、遊技に関する期待度が異なることは本願の出願前に周知(以下「周知技術2」という。例.特開2001-178904号公報(【0014】、【0030】ないし【0038】、図7には、保留表示領域51をフルカラーLED等の多色発光部材を用いて構成し、該保留表示領域51の発光色を変化させることにより、遊技者に有利なゲーム内容となる可能性を予告していることが記載されている。)、上記特開2011-30716号公報(【0001】、【0019】、【0037】、【0058】、【0059】、図15、図16には、先読みが大当り等の特定結果になったことを契機として、枠装飾装置60の保留表示を点滅させることが記載されている。)、特開2003-340038号公報(【0030】、【0114】、【0115】、図10には、予告報知の成立として、始動記憶表示器182を点滅させていることが記載されている。))である。
(ウ)引用発明も引用例2の記載事項も、可動部材を備えるパチンコ遊技機で共通し、さらに可動部材を演出表示手段(図柄表示装置Hの表示演出部H1)での演出内容に合わせて作動させることでも共通するものである。そうすると、引用例2の記載事項に接した当業者であれば、引用発明において、引用例2の記載事項を適用しようと試みるものである。
そして、具体的には、引用例2の記載事項は、保留球画像が、「役」という文字を含んだ態様である場合に可動役物7を回転させ、保留球画像が、他の表示態様では、可動役物7を回転させることが明示されていないのであるから、本願補正発明の特定事項F-1のうち、「前記保留表示の表示態様によって前記可動部材が動作する期待度が異なるように、前記可動部材を制御」するという特定事項を備えるものである。
そうすると、引用発明において、引用例2の記載事項を適用し、その適用の際に、可動演出装置100やその他の遊技部品を、図柄表示装置Hの表示演出部H1での図柄演出内容に合わせて総合的に作動制御していることや、上記(イ)で示した周知技術2を踏まえれば、保留表示ランプの表示態様に応じて、可動演出装置が動作する期待度が異なるようになすこと、すなわち、上記相違点2に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が容易になし得たことである。

ウ 相違点3について検討する。
(ア)パチンコ遊技機において、液晶表示装置等からなる図柄表示部に、LED等の発光部材を用いて保留表示を行う保留表示手段に保留表示が表示されているときに、保留数を容易に確認できるように、前記保留表示の保留記憶に対応する保留画像を表示可能とすることは本願の出願前に周知(以下「周知技術3」という。例.特開2004-298338号公報(【0009】、【0042】、【0165】ないし【0173】、図18には、遊技者が保留成立数を認識可能とするため、4個のLEDからなる始動記憶表示器18と、飾り保留記憶表示を行う図柄表示部9とを備えたことが記載されている。)、特開2004-298339号公報(【0008】、【0039】、【0162】ないし【0170】、図18には、遊技の興趣を向上させるため、4個のLEDからなる始動記憶表示器18と、飾り保留記憶表示を行う図柄表示部9とを備えたことが記載されている。)、特開2009-6018号公報(【0067】、【0113】、【0117】、図11には、遊技の興趣の向上のため、第1保留ランプ46aのみならず第1表示部a1?a4の表示状況からも保留個数が把握できるようになっていることが記載されている。)、特開2013-34710号公報(【0001】、【0258】ないし【0263】、【0289】、【0292】、図3、図22には、遊技者の誤認を招かないために、特図1保留ランプ218及び特図2保留ランプ220で保留数分のLEDを点灯し、遊技の興趣を向上させるために、装飾図柄表示装置208で保留画像を種々の態様で表示することが記載されている。)、上記特開2011-30716号公報(【0001】、【0007】、【0019】、【0037】、【0058】、【0059】、図15、図16には、遊技の趣向性を高めるために、可変表示装置53の表示部54の一部に設けられた始動記憶表示領域54aである第1の始動記憶表示手段と、枠装飾表示装置60である第2の始動記憶表示手段とを備えたことが記載されている。))である。
(イ)引用例1の【0005】及び【0006】には、遊技球の有効保留数を容易に確認し得るようにすることを目的とすることが記載されており、上記(ア)で示した周知技術3と、保留数を容易に確認できることで共通するから、引用発明において、保留表示ランプによる保留表示に加え、図柄表示装置Hで、前記保留表示に対応する保留画像を演出表示するようになすこと、すなわち、上記相違点3に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が周知技術3に基づいて適宜なし得たことである。

エ 相違点4について検討する。
(ア)パチンコ遊技機において、遊技の興趣を向上させるため、画像表示部におけるキャラクターが始動記憶表示に影響表示を行うと、該影響表示が行われた始動記憶表示の表示態様が変化することは本願の出願前に周知(以下「周知技術4」という。例.原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-195089号公報(【0004】、【0163】ないし【0168】、図35には、キャラクターに意外性のある動きをさせて遊技の興趣を向上するために、演出キャラクター180が左から2番目の特別図柄始動記憶表示46の上でベルを鳴らすという影響表示を行うと、この2番目の特別図柄始動記憶表示46に大当りの表示200を行うことが記載されている。)、原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-188117号公報(【0004】、【0168】ないし【0173】、図37には、キャラクターに意外性のある動きをさせて遊技の興趣を向上するために、演出キャラクター180が左から2番目の特別図柄始動記憶表示46の上でベルを鳴らすという影響表示を行うと、この2番目の特別図柄始動記憶表示46に大当りの表示200を行うことが記載されている。)、原査定の拒絶の理由で引用された特開2004-174075号公報(【0004】、【0158】ないし【0162】、図33には、キャラクターに意外性のある動きをさせて遊技の興趣を向上するために、演出キャラクター180が左から2番目の特別図柄始動記憶表示46の上でベルを鳴らすという影響表示を行うと、この2番目の特別図柄始動記憶表示46に大当りの表示200を行うことが記載されている。)、上記特開2003-340038号公報(【0030】、【0114】、【0115】、図10には、遊技に対する期待感を向上させるために、キャラクタ52が左から3つ目の始動記憶表示器182を指し示し、同時にこの始動記憶表示器182を点滅させることで予告報知の成立することが記載されている。))である。
(イ)引用例1には、「【0051】・・・略・・・ 図柄演出部H1での図柄演出表示と各第1?第8の各保留表示ランプ71?78の点灯表示とを連動させることができる。また、図柄演出部H1の前方に離れた位置で第1?第8の各保留表示ランプ71?78が点灯するので、立体感のある演出表示を行なうこともできる。」(上記(2)ア(カ))と記載されており、図柄演出部H1での図柄演出表示と各第1?第8の各保留表示ランプ71?78の点灯表示とを連動させることの示唆がされている。
(ウ)上記(ア)で示した周知技術4及び上記(イ)の示唆に基づけば、引用発明は、図柄演出部H1での図柄演出表示と各第1?第8の各保留表示ランプ71?78の点灯表示とを連動させるものであるところ、周知技術4もキャラクターが始動記憶表示に影響表示を行う点で演出表示と保留表示とを連動させている点で共通するものである。そうすると、引用発明において、図柄表示装置Hにキャラクター等を表示し、該キャラクター等がいずれかの保留表示ランプに影響表示を行うと、該影響表示が行われた保留表示ランプの表示態様が変化するようになすこと、すなわち、上記相違点4に係る本願補正発明の特定事項となすことは当業者が適宜なし得たことである。

オ 以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1ないし4に係る本願補正発明の特定事項のようになすことは、当業者が引用例2の記載事項及び周知技術1ないし4に基づいて容易に想到し得たことである。

カ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、引用例2の記載事項の奏する効果及び周知技術1ないし4の奏する効果から予測することができた程度のものである。

キ 審判請求人の主張について
(ア)審判請求人は、審判請求書において、概略以下のとおり主張している。
「【本願発明が特許されるべき理由】
・・・略・・・
(3)引用文献との対比
・・・略・・・
引用文献1には、保留表示手段、可動部材、演出表示手段の順に並んだ遊技機について開示されています(図9,図10ご参照)。引用文献1に記載の発明は、演出部材の移動に影響されることなく保留表示手段による有効保留数の表示を確認し得るようにするという課題を解決するために、表示装置の前方の重なる位置に保留表示手段を設けた発明です。しかしながら、引用文献1に記載の発明には、演出表示手段が、保留表示手段に保留表示が表示されているときに保留記憶手段に記憶されている保留記憶情報に対応する演出保留表示を表示可能であるという構成Hについては何ら開示も示唆もありません。
また、引用文献2には、可動物予告を示唆する保留球画像206は、大当りの信頼度に応じて異なる色で表示されてもよいことが開示されています(段落[0197]ご参照)。しかしながら、引用文献2にも補正後の本願発明の構成Hについては何ら開示も示唆もありません。
さらに、周知技術として示された引用文献3?5には、演出表示手段に対応する画面上に表示した保留表示にキャラクタが作用することにより保留表示の表示態様が変化する遊技機について開示されています。しかしながら、引用文献3?5にも補正後の本願発明の構成Hについては何ら開示も示唆もありません。
また、仮に引用文献1に引用文献3?5の技術を組合わせることができたとしても、表示態様の変化の対象となるのは演出表示手段により表示される演出保留表示であり、保留表示手段に表示される保留表示ではありません。そのため、保留表示手段に表示される保留表示の態様が変化する本願発明とは異なります。
構成H,Iを備える補正後の本願発明は、保留表示手段によっても演出表示手段によっても保留表示(演出保留表示)を表示することができるが、演出表示手段により保留表示に作用することを示す表示が実行された場合に、敢えて保留表示手段に表示される保留表示の表示態様を変化させるようにした発明です。これにより、補正後の本願発明は、構成H,Iを備える相乗的な効果として、保留表示手段および演出表示手段による複数の表示手段を用いた関連した演出により遊技の興趣を向上させることができるとともに、保留表示と演出保留表示とで表示される複数の保留表示により可動部材が動作したときでも容易に保留表示を認識することができるという、引用文献1?5からは奏し得ない有利な効果を奏します。
したがいまして、引用文献1?5に基づいて当業者が本願発明に容易に想到し得たことの論理付けはできません。」

(イ)しかしながら、上記(4)ウ(ア)のとおり、構成H(審決における特定事項D-1)は周知技術3として示したように周知といえる。
また、上記(4)イ(イ)のとおり、LED等の発光部材を用いて保留表示を行う保留表示手段を備えたパチンコ遊技機において、前記保留表示手段の表示態様(発光色や点滅など)によって遊技に関する期待度が異なることは周知技術2として示したように周知であるから、上記(4)イで示したとおり、保留表示手段に表示される保留表示を表示態様の変化の対象とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。
さらに、構成H、I(特定事項D-1、C-1)を備えれば、保留表示と演出保留表示とで表示される複数の保留表示により可動部材が動作したときでも容易に保留表示を認識することができるという効果も当業者が予測できる範囲のものにすぎない。
してみると、審判請求人の主張を採用することはできない。

(5)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項及び周知技術1ないし4に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成29年8月23日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであって、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 原査定の理由の概略
この出願の平成29年8月23日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記引用文献に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


引用文献1.特開2013-106704号公報
引用文献2.特開2011-143174号公報
引用文献3.特開2004-195089号公報
引用文献4.特開2004-188117号公報
引用文献5.特開2004-174075号公報

3 引用文献
(1)引用文献1(引用例1)及び引用文献2(引用例2)の記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」で検討した本願補正発明から、実質的に、特定事項D-1である「前記演出表示手段は、前記保留表示手段に前記保留表示が表示されているときに前記保留記憶手段に記憶されている前記保留記憶情報に対応する演出保留表示を表示可能であり、」に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記「第2〔理由〕3(3)」に記載した相違点1、2及び4で相違する。
そして、引用発明において、相違点1、2及び4に係る本願補正発明の特定事項となすことは、上記「第2〔理由〕3(4)」に記載したとおり、当業者が引用例2の記載事項、周知技術1、2及び4に基づいて適宜なし得たものであるから、本願発明は、当業者が引用発明、引用例2の記載事項、周知技術1、2及び4に基づいて容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例2の記載事項、周知技術1、2及び4に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-22 
結審通知日 2018-10-23 
審決日 2018-11-05 
出願番号 特願2013-209406(P2013-209406)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 有賀 綾子  
特許庁審判長 長崎 洋一
特許庁審判官 濱野 隆
鉄 豊郎
発明の名称 遊技機  
代理人 特許業務法人深見特許事務所  

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