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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1347405
審判番号 不服2018-2640  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-26 
確定日 2018-12-27 
事件の表示 特願2017-130269「荷締め用のロック体」拒絶査定不服審判事件〔平成29年9月21日出願公開、特開2017-165493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年9月27日に出願された特願2013-201640号の一部を、平成29年7月3日に新たな特許出願としたものであって、平成29年8月1日付けで拒絶理由が通知され、平成29年10月2日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成29年11月21日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、平成30年2月26日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正がされたものである。

2.平成30年2月26日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成30年2月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1(平成29年10月2日付けの手続補正により補正された請求項1)の、
「外表面に凹凸を有する異形物からなる荷物を縛って固定するために引っ掛け対象に引っ掛けられる1つのフックから延びる長尺の長さ調整用ベルト体と、
前記荷物を縛って固定するために引っ掛け対象に引っ掛けられる2つのフックを繋ぐ長尺部材とを互いに繋ぐ荷締め用のロック体であって、
前記長さ調整用ベルト体を通して任意の位置で留めることができるベルト固定具と、
前記2つのフックを繋ぐ長尺部材を遊動的に通して前記ベルト固定具に連結されるリング体と、
前記荷物の形状に沿って柔軟に変形する素材で構成されて前記ベルト固定具における前記荷物に面する下面を覆う状態で設けられた荷物保護体とを備え、
前記荷物保護体は、
前記リング体における前記荷物に面する側も覆う状態で設けられていることを特徴とする荷締め用のロック体。」(以下「本願発明」という。)を、
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の、
「外表面に凹凸を有する異形物からなる荷物を縛って固定するために引っ掛け対象に引っ掛けられる1つのフックから延びる長尺の長さ調整用ベルト体と、
前記荷物を縛って固定するために引っ掛け対象に引っ掛けられる2つのフックを繋ぐ長尺部材とを互いに繋ぐ荷締め用のロック体であって、
前記長さ調整用ベルト体を通して任意の位置で留めることができるベルト固定具と、
前記2つのフックを繋ぐ長尺部材を遊動的に通して前記ベルト固定具に連結される金属製のリング体と、
前記荷物の形状に沿って柔軟に変形する素材で構成されて前記ベルト固定具における前記荷物に面する下面を覆う状態で設けられて前記荷物上の一部に配置される荷物保護体とを備え、
前記荷物保護体は、
前記リング体における前記荷物に面する側も覆う状態で設けられていることを特徴とする荷締め用のロック体。」(以下「本願補正発明」という。)とする補正を含むものである。(下線は、補正箇所に当審で付したもの。)

(2)補正の適否
本件補正は、補正前に「リング体」の材料について限定されていなかったものを、「金属製のリング体」と限定し、また、「荷物保護体」の配置位置について、「荷物上の一部に配置される」と限定するものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(3)引用文献1に記載された発明及び引用文献2?4の記載事項
ア.原査定の拒絶の理由において、引用文献1として引用された、登録実用新案第3120439号公報(以下、原査定と同様に「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項3】
両端に三角カン又は引掛けカンを付けた水平用バンドと、該水平用バンドの左右に滑り動かすことができ、さらにフランスカンと三角カン又は引掛けカンをつけた滑行用バンドとからなる、T字形をとる伸縮性のある締結バンド。」
(イ)「【0011】
第3の考案は、両端に三角カン又は引掛けカンを付けた水平用バンドと、該水平用バンドの左右に滑り動かすことができ、さらにフランスカンと三角カン又は引掛けカンをつけた滑行用バンドとからなる、T字形をとる伸縮性のある締結バンドである。本締結バンドによりパレットカバーとパレットを締結する。締結バンドのフランスカンはパレット上に積載された梱包物の高さにあわせて締結バンドの長さを調整し、かつ、パレットカバーとパレットを強く締結することによりパレット上に積載された複数のダンボール箱等が固定される。パレット上に積載された複数のダンボール箱等の側面だけでなくコーナー部も固定するため必要に応じ側面の数である4以上の締結バンドが使用される場合もある。」
(ウ)「【0016】
図2は請求項3の締結バンドの展開図である。水平用バンドの両端は引掛けカンや三角カンを付け、滑行用バンドには水平用バンドの左右を滑らせるため、水平用バンドを通してその先端を折り曲げて熱圧着している。水平用バンドと滑行用バンドを一体化したしたものを締結バンドとしている。締結バンドはナイロン製である。図2において三角カンの付いた滑行用バンドは、フランスカンの付いた同滑行用バンドと離れて書かれているが、フランスカンを通して一体化される。フランスカンにより締結バンド長さの調整と締め付けによりパレットカバーとパレットを締結する。使用する場所により、三角カンの付いた滑行用バンドは一方に引掛けカンあるいは三角カンを付ける場合もあり、両方に引掛けカンをつける場合もある。」
(エ)「【0017】
図3はフランスカンの概略図である。スライドスチックには金枠の縦方向に自在に移動できるように孔が通されている。一端を固定されたバンドは金枠の図面での上面より入りスライドスチックの裏面を通し折り曲げられてもとのバンドの上に出てくる。この上に出たバンドを下に引っ張るとスライドスチックは金枠の下部に押され金枠とスライドスチックの間にあるバンドは固定される。この機能により締結バンドの長さの調整とパレットカバーとパレットを締結する役割を果たす。」
(オ)図2から、水平用バンド24と滑行用バンド25とは、折り返し部26で交差していることが看取できる。

上記摘記事項(イ)によれば、引用文献1の「締結バンド」は、「両端に三角カン又は引掛けカンを付けた水平用バンドと、該水平用バンドの左右に滑り動かすことができ、さらにフランスカンと三角カン又は引掛けカンをつけた滑行用バンドとからなる」ものである。
上記摘記事項(ウ)によれば、「滑行用バンド」は、「三角カンの付いた滑行用バンド」と「フランスカンの付いた滑行用バンド」からなり、「フランスカンを通して一体化」される。
この「フランスカンの付いた滑行用バンド」について、上記摘記事項(エ)によれば、「フランスカン」は、「金枠」と「スライドスチック」からなり、「スライドスチックには金枠の縦方向に自在に移動できるように孔が通され」ており、「一端を固定されたバンド」を通して「締結バンドの長さの調整」する機能を果たすものである。
また、上記図示事項(オ)によれば、「フランスカンの付いた滑行用バンド」は「折り返し部」を備え、その「折り返し部」は、上記摘記事項(ウ)を踏まえると、「水平用バンドの左右を滑らせるため、水平用バンドを通してその先端を折り曲げて熱圧着」して、「水平用バンドと滑行用バンドを一体化」するものである。

以上から、引用文献1には、
「両端に三角カン又は引掛けカンを付けた水平用バンドと、該水平用バンドの左右に滑り動かすことができ、さらにフランスカンと三角カンをつけた滑行用バンドとからなる締結バンドにおいて、滑行用バンドは、三角カンの付いた滑行用バンドと、フランスカンの付いた滑行用バンドからなり、フランスカンを通して一体化されるものであり、
このフランスカンの付いた滑行用バンドについて、
フランスカンは、金枠とスライドスチックからなり、スライドスチックには金枠の縦方向に自在に移動できるように孔が通されており、一端を固定されたバンドを通して締結バンドの長さの調整する機能を果たすものであり、
フランスカンの付いた滑行用バンドは折り返し部を備え、その折り返し部は、水平用バンドの左右を滑らせるため、水平用バンドを通してその先端を折り曲げて熱圧着して、水平用バンドと滑行用バンドを一体化するものである、
フランスカンの付いた滑行用バンド。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

イ.原査定の拒絶の理由において、引用文献2として引用された、実願平3-100045号(実開平5-16662号)のCD-ROM(以下、原査定と同様に「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0006】
【実施例】
第1図は、実施例1を示す斜視図である。実施例1のものでは、四辺形の環体をバンドの両端に設けた保持バンド(3)を、円形の環体である遊挿環(4)に挿着しているものである。
したがって、二つの環体を設けた保持バンド(3)は、遊挿環(4)の内側を自由に滑動することができる状態になっている。・・・・」
「図1




ウ.原査定の拒絶の理由において、引用文献3として引用された、特開2002-104494号公報(以下、原査定と同様に「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
「【0018】図1に示すように、本締結機構1は、バックル部材2と、保護シート部材3とを備えている。バックル部材2は、銅材(Au)、鉄材(Fe)、ニッケル材(Ni)その他合金材により形成された金属製のものであり、ベルト部材10の一端部10aと他端部10b(図4参照)とを締結するものである。・・・・」
「【0020】保護シート部材3は、ポリエステル繊維から成る織物であって、シート状に形成されており、バックル部材2近傍のベルト部材10(ベルト部材10の一の端部10a)に縫いつけられることによって、固着されている。・・・・」
「【0021】また、柔軟性を有する保護シート部材3により、バックル部材2と荷物100とが接触してしまうことを防止することができるのである。従って、荷物100に巻回されたベルト部材10がバックル部材2を介して締め付けられる場合にも、荷物100に傷が付いてしまうことを防止することができるのである。・・・・」
「図1



エ.原査定の拒絶の理由において、引用文献4として引用された、実願昭60-36779号(実開昭61-153760号)のマイクロフィルム(以下、原査定と同様に「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。
「本考案に係る荷崩れ防止ベルトを使用するためには、ベルト(1)の他端部(8)を通しリング(2a)(2b)の内側に貫通させ、当該通しリング(2a)(2b)を支点にして反対側に折り返した後、さらに荷物(A)に対し内側の通しリング(2a)と外側の通しリング(2b)との間を通し、当該他端部(8)を引っ張って締結する。この場合力一杯ベルト(1)の他端部(8)を引っ張っても、保護部材(4)が通しリング(2a)(2b)の食い込みを防ぎ、荷物(A)を保護するのである。」(6頁9?末行)
「第1図



(4)本願補正発明と引用発明との対比
引用発明の「両端に三角カンを付けた水平用バンド」は、本願補正発明の「引っ掛け対象に引っ掛けられる2つのフックを繋ぐ長尺部材」に相当し、引用発明の「三角カンの付いた滑行用バンド」は、本願補正発明の「引っ掛け対象に引っ掛けられる1つのフックから延びる長尺の長さ調整用ベルト体」に相当する。
また、引用発明の「フランスカンの付いた滑行用バンド」は「折り返し部を備え」、その折り返し部で「水平用バンドと滑行用バンドを一体化するものである」から、本願補正発明の長さ調整用ベルト体と2つのフックを繋ぐ長尺部材とを互いに繋ぐ「荷締め用のロック体」に相当する。さらに、引用発明の「フランスカン」は、一端を固定されたバンドを通して締結バンドの長さの調整する機能を果たすものであり、本願補正発明の「長さ調整用ベルト体を通して任意の位置で留めることができるベルト固定具」に相当する。
そして、引用発明の「フランスカンの付いた滑行用バンド」の「折り返し部」は、水平用バンドの左右を滑らせるため、水平用バンドを通してその先端を折り曲げて熱圧着したものであるから、本願補正発明の「2つのフックを繋ぐ長尺部材を遊動的に通してベルト固定具に連結される金属製のリング体」とは、長尺部材を遊動的に通してベルト固定具に連結される接続部材という限りにおいて一致する。

よって、本願補正発明と引用発明は、
「引っ掛け対象に引っ掛けられる1つのフックから延びる長尺の長さ調整用ベルト体と、
引っ掛け対象に引っ掛けられる2つのフックを繋ぐ長尺部材とを互いに繋ぐ荷締め用のロック体であって、
前記長さ調整用ベルト体を通して任意の位置で留めることができるベルト固定具と、
前記2つのフックを繋ぐ長尺部材を遊動的に通して前記ベルト固定具に連結される接続部材と、を備えた荷締め用のロック体。」
で一致し、下記の点で相違する。

《相違点1》
本願補正発明の長さ調整用ベルト体と長尺部材が、外表面に凹凸を有する異形物からなる荷物を縛って固定するために引っ掛け対象に引っ掛けられるのに対し、引用発明の滑行用バンドと水平用バンドは、そのような荷物を縛って固定するものであるか特定されていない点。
《相違点2》
本願補正発明の荷締め用のロック体が、荷物の形状に沿って柔軟に変形する素材で構成されてベルト固定具における荷物に面する下面を覆う状態で設けられて荷物上の一部に配置される荷物保護体とを備えるのに対し、引用発明のフランスカンの付いた滑行用バンドは、フランスカンの下面に荷物保護体を備えていない点。
《相違点3》
本願補正発明は、荷締め用のロック体が、2つのフックを繋ぐ長尺部材を遊動的に通してベルト固定具に連結される金属製のリング体を備え、荷物保護体がリング体における記荷物に面する側も覆う状態で設けられているのに対し、引用発明は、フランスカンの付いた滑行用バンドの折り返し部が、水平用バンドの左右を滑らせるため、水平用バンドを通してその先端を折り曲げて熱圧着して、水平用バンドと滑行用バンドを一体化するものであるものの、金属製のリング体ではなく、下面に荷物保護体も備えていない点。

(5)判断
ア.《相違点1》について
荷物を締結するバンドは、種々の形状の荷物を固定することが求められるところ、荷物には、外表面に凹凸を有する異形物からなる荷物もあり、そのような荷物に対して、引用発明の滑行用バンドと水平用バンドの三角カン又は引掛けカンを引っ掛け対象に引っ掛けて、縛って固定することは、バンドが荷物の形状に沿って柔軟に変形することが技術常識であることを鑑みれば、当業者が容易に想到することができたものである。

イ.《相違点2》について
バックル等のベルトを固定する部材は、強度を得るために金属等の硬い材料で形成されることが一般的であり、そのような固定部材によって荷物に傷が付かないように、バックル等の保護が必要な箇所の下方に、柔軟な材料からなる保護部材を設けることが周知の技術(例えば、引用文献3の「保護シート部材3」、引用文献4の「保護部材4」参照。)である。ここで、引用発明の滑行用バンドに付けられたフランスカンも、ベルト等の引っ張りに耐えられるように、強度が得られる硬い材料で形成されているはずであり、荷物に傷が付かないようにする必要があることは明らかであるから、上記の周知技術のように、フランスカンの下方の保護が必要な荷物上の一部に、柔軟な材料からなる保護部材を設けることは、当業者が容易に成し得たものである。

ウ.《相違点3》について
引用発明の滑行用バンドの折り返し部は、水平用バンドの左右を滑らせることができるように、滑行用バンドの先端を折り曲げて熱圧着して水平用バンドを通したものであるが、水平用バンドの左右の位置調節をより容易にすることが求められることは明らかである。そのため、引用文献2に示すような、リング状の部材にベルトを通して滑りやすい構造(「保持バンド3」を「遊挿環4」に通した構造)を、引用発明の折り返し部に換えて採用することは、当業者が容易に成し得ることである。その際、荷物を締める時の耐久性を考慮して、そのリング状の部材を金属製とするとともに、引用文献3及び4の周知技術のように、金属製のリング状の部材の下方に、柔軟な材料からなる保護部材を設けることも、当業者が適宜成し得る設計的事項である。

エ.請求人は、審判請求書(「(3)(d)」)において、
「・・・・引用文献1におけるカバーシート4(当審注:「パレットカバー1」の誤記であると認める。)は、パレット上に積み上げられたダンボール箱をひとまとめにするためのものであるため、これを荷物の表面上の一部に設けられる荷物保護体に置き換えれば、パレット上に積み上げられたダンボール箱が極めて不安定になり梱包装置として実質的に機能しなくなることは明らかです。
・したがって、引用文献1における別体のカバーで全体を覆うことに替えて、特にベルト固定具やリング部材の下側に荷物保護体を一体に設けることは、梱包物の安定的な梱包性能を考慮すれば、少なくとも当業者が容易に想到し得たことではありません。」と主張する。
しかし、引用文献1の【請求項3】には、「両端に三角カン又は引掛けカンを付けた水平用バンドと、該水平用バンドの左右に滑り動かすことができ、さらにフランスカンと三角カン又は引掛けカンをつけた滑行用バンドとからなる、T字形をとる伸縮性のある締結バンド」(上記摘記事項(ア))と記載され、「パレットカバー」を包含していない。しかも、その「締結バンド」が固定する梱包物について、引用文献1には、「複数のダンボール箱等」(上記摘記事項(イ))と記載されており、複数のダンボール箱に限っていない。そうすると、引用文献1のこれらの記載に接した当業者であれば、「締結バンド」は「パレットカバー」を用いずに梱包し得ること、また、荷物が複数のダンボール箱に限られないことが認識し得るはずである。
一般に、荷物を締結するバンドは種々の形状の荷物を固定するために用いることができ、引用文献1の「締結バンド」も、「パレットカバー」を併用することが必要な複数のダンボール箱の梱包に限られるものではないから、引用文献1の「締結バンド」が、「パレット上に積み上げられたダンボール箱をひとまとめにするため」に用いられることを前提に、「パレットカバー」が必須の構成であり、その必須の構成を荷物保護体に置き換えることは当業者が容易に想到し得ないとの請求人の主張は、その前提において当を得たものではない。上述のように、引用発明のフランスカンの付いた滑行用バンドにおいて、フランスカンのように硬い材料で形成されている箇所の下方に、荷物に傷が付かないように、保護部材を付加することは、当業者が容易に想到することができたものである。

オ.そして、本願補正発明により奏される、「ロック体150は、ベルト固定具151およびリング体153と荷物WKとの間に荷物保護体154が介在しているため、ベルト固定具151およびリング体153の接触による荷物WKの損傷を防止することができる」(本件明細書の【0049】)との効果は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び上記周知技術から予測できる程度のものである。

カ.したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成29年10月2日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定され、そのうち、請求項1に係る発明は、前記「2.(1)」において記載したとおりのものである。


(2)原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願発明が、引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。

(3)引用文献1に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1の記載事項、及び引用文献1に記載された発明は、前記「2.(3)ア.」に記載したとおりである。

(4)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明が、リング体が「金属製」であり、また、荷物保護体の配置位置について「荷物上の一部に配置される」としていた要件を限定しないものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらにリング体が「金属製」であり、また、荷物保護体の配置位置について「荷物上の一部に配置される」という発明特定事項を含む本願補正発明が、前記「2.(4)及び(5)」で述べたように、引用発明、引用文献2に記載された事項及び上記周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上によれば、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-29 
結審通知日 2018-10-30 
審決日 2018-11-12 
出願番号 特願2017-130269(P2017-130269)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
P 1 8・ 575- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 植前 津子  
特許庁審判長 渡邊 豊英
特許庁審判官 久保 克彦
井上 茂夫
発明の名称 荷締め用のロック体  
代理人 居藤 洋之  
代理人 居藤 洋之  

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