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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61H
管理番号 1347408
審判番号 不服2017-13436  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-11 
確定日 2018-12-28 
事件の表示 特願2016-117942号「簡易風呂」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月24日出願公開、特開2017-205474号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月14日(優先権主張 平成27年7月7日 平成28年5月11日)の出願であって、平成29年6月1日付けで拒絶理由が通知され、同年7月7日に意見書及び手続補正書が提出され、同年8月15日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年9月11日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書及び意見書が提出され、当審において平成30年7月2日付けで平成29年9月11日の手続補正についての補正の却下の決定がされるとともに拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年7月23日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成30年7月23日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
カバー又は袋の形状構成の簡易風呂において、該カバー又は袋は、手足、身体を洗う、又は入浴する際に安定、安全、洗いやすい、或いは入りやすい機能、形状、構造、作用を構成する為、該カバー又は袋を固定する又は固定化する該機能、形状、構造或いは作用を所有する事が出来る簡易風呂。」

第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、以下の理由を含むものである。
[理由1]
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
[理由2]
この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
刊行物
1.特開平10-127511号公報
2.特開平11-19153号公報
3.特開2011-115482号公報
4.特開2009-291408号公報
以下、それぞれ、「引用文献1」ないし「引用文献4」という(なお、「引用文献3」及び「引用文献4」は、上記理由2において、周知例として示したものである。)。

第4 引用文献等
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
上記引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(なお、下線は当審が加筆した。以下、同様である。)。
(1a)
「【請求項1】 背もたれ部と座部と脚部を備えた椅子部と、柔軟で且つ水密な材料からなり折り畳み自在の浴槽部とが着脱自在に構成され、該椅子部に浴槽部の上部を支持するためのアームが回動可能に取り付けられ、前記浴槽部は上部が開口させられ且つ前記椅子部の座部と床面とに載置し得る段付き形状の袋状体と、該袋状体の上部開口部の周縁に前記アームを取り付けて支持する支持部と、該袋状体を上部開口部から床面側まで開閉し得る水密なファスナーとを備えることを特徴とする折り畳み式簡易浴槽。」
(1b)
「【0013】図1は本発明の折り畳み式簡易浴槽の一例を示すものであり、袋状体の浴槽部10と折り畳み式の椅子部12とから構成されている。浴槽部10の上部開口部の周縁に設けられた1対の筒状部14には、椅子部12の背もたれ部16に取り付けられた1対のアーム18がそれぞれ挿入され、浴槽部10を椅子部12に固定するとともに自立させるように構成されている。入浴時には、この浴槽部10の中に利用者が入り、お湯が満たされることになる。」
(1c)
「【0019】図4は、本例に用いることのできる浴槽部10の一例を示すものである。同図(a)のように袋状に閉じられて浴槽として使用されるが、利用者が出入りする時は、同図(b)のように前部が開けられる。すなわち、浴槽部10を構成する袋状体には水密ファスナー36が上部開口部から床面側にまで設けられていて、前部の開閉は水密ファスナー36によって行われ、水密ファスナー36を閉じた状態でお湯を満たしても、その箇所から漏れたりすることはないように形成されている。この浴槽部10の椅子部12への固定は、浴槽部10の上部開口部の周縁に設けられた1対の筒状部14へ、椅子部12に取り付けられた1対のアーム18を挿入することによって行われる。」
(1d)
「【0021】また、浴槽部10の形状は図4に示されるように、床面の上に載置されるとともに、椅子部12の座部22に載置されるように2段を成して形成されていて、浴槽部10が椅子部12に安定して載置されるように構成されている。ただし、この浴槽部10の形状は特に限定されない。椅子部12の形状に合わせてもっと角形にしてもよいし、お湯の飛散を防ぐために背部を高くしてもよい。考慮しなければならないのは、浴槽部10の内容積である。通常、大人の入浴には150リットル以上のお湯が必要とされていて、本発明の浴槽部はこの条件を十分に満たすことができる。」
(1e)
「【0022】図5は、図1に対する比較として、浴槽部10の前部を開いた状態を示している。上述したように、利用者の出入りは図のように前部を開いて行われる。浴槽部10の前面に設けられた水密ファスナー36を開き、アーム18の取り付け部を緩めて、アーム18を下方に回動させ、同時にその先端が開くように回転させることによって、浴槽部10の前部を足元までが広く拡げることができる。その結果、車椅子等からの移動を楽に行うことができるようになる。また、両側に障害物が無いので移動を助ける介護作業が非常にやりやすい。重度の障害者に対してはリフトを使用することもできる。」
(1f)
「【0028】すなわち、通常時には折り畳み式浴槽の一部に格納されていて、入浴時にだけ引き出され、実質的な床面積を増やすような部材を備えるのである。図7にその一例を示した。図の転倒防止部材40は、通常は足乗せ板26の中に格納されているが、入浴時には横方向に引き出されて、床面積を増やしたのと同等の転倒防止機能を果たすことができる。転倒防止部材40の実施の形態は本例に限定されるものではない。たとえば、突っかい棒として機能する部材を椅子部12の各部フレームと一体化しておき、入浴時にだけ引き出して使用することも可能である。」
(1g)
「【0029】ここで、上述の折り畳み式簡易浴槽を用いて入浴する場合の手順をまとめれば次のようになる。先ず、格納されていた折り畳み式簡易浴槽を浴室または床防水された部屋に組み立て、入浴者を車椅子その他の方法によって浴槽近くまで移動させる。転倒防止部材40を備えている場合には、引き出して正しくセットする。次に、浴槽部10の水密ファスナー36を開き、アーム18を回動させることにより、浴槽部10の前面を大きく開放する。入浴者を浴槽部10に入れ、アーム18を所定の位置に戻し、水密ファスナー36を閉じてから、シャワー等からお湯を入れる。なお、給湯設備がある場合は、給湯口から適温に調節されたお湯を入れるのが好ましい。お湯を入れて、入浴者の身体を温めた後、洗剤などで身体を洗って、清浄にする。このとき、入浴者が自ら洗うことができる場合は、浴槽部10内で身体を動かしつつ洗浄し、介添え人が手伝う場合は、浴槽部10の上部開口部から手を差し入れて、洗うことになる。」
(1h)
「【0038】すなわち、図9に示されるように、座部のシート42にV字型あるいはU字型の切り込みを入れ、ファスナー36で接ぐのである。身障者が浴室等で使用する時には、図10に示されるように、股間部を洗いやすいようにファスナー36を開いて用いる。そして、ファスナー36を閉じれば、健常者にとっても、何の違和感も無く使用することのできる椅子となる。」
(1i)
「【0045】浴槽部10に設けた筒状部14にアーム18を挿入することにより、浴槽部10を椅子部12に固定し、上述した入浴手順によって身障者の入浴を試みたところ、簡便かつ安全に実行できるのを確認することができた。また、入浴後の後始末も容易であり、コンパクトに折り畳んで格納することができた。」
(1j)
図1、2、5、7は、以下のとおりである。


(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1a)?(1c)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
なお、符号は、摘記(1b)及び(1c)を参照して、当審が付した。
[引用発明]
「背もたれ部と座部と脚部を備えた椅子部12と、柔軟で且つ水密な材料からなり折り畳み自在の浴槽部10とが着脱自在に構成され、該椅子部12に浴槽部10の上部を支持するためのアーム18が回動可能に取り付けられ、前記浴槽部10は上部が開口させられ且つ前記椅子部12の座部と床面とに載置し得る段付き形状の袋状体と、該袋状体の上部開口部の周縁に前記アーム18を取り付けて支持する支持部と、該袋状体を上部開口部から床面側まで開閉し得る水密なファスナー36とを備える折り畳み式簡易浴槽。」

2 引用文献2について
上記引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(2a)
「【0073】さらに、袋状の浴槽11・31の安定性を高めるため、浴槽11の接合させた部位や、浴槽31の側壁34・35・36に芯又はリブなどを埋入してもよく、空気室を設けて幼児用プールのように浴槽を保持するように構成しても良い。さらに、浴槽11・31における入浴者1の胴部1cや胸部1dに対応する部位にフレームを内装し、浴槽11・31の支持をするものであっても、安定性は確保される。即ち、浴槽11・31を安定して支持する手段であれば従来知られるいかなる方法であっても良い。」
(2b)
図1?3は、以下のとおりである。


3 引用文献3について
上記引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(3a)
「【0009】
バスタブ2は、図1?図4に示すように通常のバスタブを中央部で斜めに切った状態の形状をしている。バスタブ2は、斜めの部分の4本のパイプ5、6、7、8と浴槽部9で構成されている。パイプの材質はアルミ等の金属又は合成樹脂である。浴槽部9を構成するシートの材質は合成樹脂又はゴムである。バスタブ2のパイプ6とパイプ8に椅子4を取り付けている。その取り付け部にバスタブ2を支持する支持棒10、11を設けている。椅子4の材質は合成樹脂である。支持棒10、11の材質はアルミ等の金属又は合成樹脂である。」
(3b)
図4は、以下のとおりである。


4 引用文献4について
上記引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(4a)
「【0016】
図1を参照してこの発明に係る組立て風呂実施例を説明する。組立風呂(200)は少なくとも脚上部(11)と脚下部(12)を含む同軸上に伸縮可能な4本の脚を有している。そして、その脚の前記脚上部にスライド可能に設けられた可動支持材(2)を備えている。一方、2本の棒(41)、(42)で回転自在なX字状に組まれ、そのそれぞれの下部先端(411)(421)が前記脚下部に回転できるように固定され、それぞれの上部先端(412)、(422)が前記可動支持材に回転できるように固定されることによって異なる2本の前記脚に跨って連結された少なくとも3組の連結機構(4)を有し、組立て風呂用フレーム(100)を構成している。他方、底面を持った袋状に構成され上方開口部の対向する2辺(51)、(52)に、2本の脚(1)の先端に結合される固定バー(6)をそれぞれ有した防水性のシート浴槽(5)が用いられる。そのシート浴槽(5)を脚(1)と連結機構(4)が包囲するように配置されることで組立て風呂(200)が構成されている。以下組立て風呂(200)の各構成要素について詳細に説明する。
【0017】
組立て風呂用フレーム(100)は、アルミ、ステンレス、硬質プラスチック、チタン等のサビない材質とし、安全性の面で、丸パイプ型状をここでは用いているが、角パイプでも良い。
【0018】
また、前記連結機構(4)と連結部材(8)には、2本の棒で回転自在なX字状に組まれる接合部分に補強パイプまたは、充填材により水圧に耐える補強がなされている。さらに脚(1)のうち1本には、3組の連結機構(4)とあいまって立方体状空間を構成するように、他の1本の脚に結合できるような連結部材(8)がシート浴槽(5)を取り囲む形となり給湯によるシート浴槽の膨らみを緩和する役目を果たす。図1と図6、図10で示す。
・・・
【0024】
また、シート浴槽(5)は底面を持った袋状になった防水性のシートで構成され上方開口部の対向する2辺の(51)、(52)に2本の脚の先端に結合される固定バー(6)を取り付けた後、・・・
【0025】
またシート浴槽(5)と組立風呂用フレーム(100)を接続する固定バー(6)に取り付けたスライド結合部(7)は脚(1)の上部先端に取り付けた雄ネジキャップ(9)に取付け雌ネジ(72)をねじ込むことにより固定ピン(73)が上部に移動し、シート固定バー(6)を挟み込む型と成ることにより一層堅固になり、自在に大きさも調節できる。その状態を図7と図12、図16、図17で示す。」
(4b)
図1は、以下のとおりである。


第5 対比・判断
1 本願発明の「カバー又は袋の形状構成の簡易風呂」について
(1)
本願の明細書には、
「【0013】
カバー又は袋を使用して液体を溜める事が出来る形状の立体構造と為して、それに、水、お湯等々の種々雑多な液体を溜める事が出来る構成である。故に該立体構造カバー、袋と為す形状の該カバー、袋にて手足身体を洗う、入浴する事が出来る特徴のカバー又は袋の簡易風呂である。故に、該カバー、袋の簡易風呂は、手軽に、安価な、安心な、簡単に、便利に、簡易な風呂として使用出来る効果が得られる。」
と記載されている。
(2)
上記(1)を参照すると、本願発明の「簡易風呂」は、「カバー又は袋を使用して液体を溜める事が出来る形状の立体構造と為し」、「それに」、「お湯等々の」「液体を溜める事が出来る構成であ」り、「立体構造カバー、袋と為す形状の該カバー、袋にて手足身体を洗う、入浴する事が出来る」「カバー又は袋の簡易風呂」であるといえることから、本願発明の「簡易風呂」の「カバー又は袋の形状構成」は、「簡易風呂」が、「カバー又は袋」を「液体を溜める事が出来る形状の立体構造」としているものといえる。
このことから、本願発明の「カバー又は袋の形状構成の簡易風呂」は、「カバー又は袋を液体を溜める事が出来る形状の立体構造としている簡易風呂」を意味するものと理解できる。

2 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)
引用発明の「浴槽部10」は、「上部が開口させられ且つ前記椅子部12の座部と床面とに載置し得る段付き形状の袋状体と、該袋状体の上部開口部の周縁に前記アーム18を取り付けて支持する支持部と、該袋状体を上部開口部から床面側まで開閉し得る水密なファスナー36とを備え」るものであり、「上部が開口させられ」た「袋状体」が、水密なファスナー36を閉じた状態でお湯を満たすようになるといえることから(摘記(1c)の段落【0019】)、引用発明の「浴槽部10」は、本願発明の「カバー又は袋」に相当する。
(2)
引用発明の「折り畳み式簡易浴槽」は、本願発明の「簡易風呂」に相当する。
(3)

引用発明の「折り畳み式簡易浴槽」は、「椅子部12」が、「座部」を「備え」、「該椅子部12に浴槽部10の上部を支持するためのアーム18が」「取り付けられ」、「浴槽部10」が、「上部が開口させられ且つ前記椅子部12の座部と床面とに載置し得る段付き形状の袋状体」と、「該袋状体の上部開口部の周縁に前記アーム18を取り付けて支持する支持部」とを「備え」る構成を有しているといえる。

上記アの構成の「アーム18」と「アーム18を取り付けて支持する支持部」とに関しては、具体的に、「浴槽部10の上部開口部の周縁に設けられた1対の筒状部14には、椅子部12の背もたれ部16に取り付けられた1対のアーム18がそれぞれ挿入され、浴槽部10を椅子部12に固定するとともに自立させるように構成されている。」(摘記(1b)の段落【0013】)ものといえることから、引用発明の「アーム18」の技術的意義は、「浴槽部10」を自立させる、すなわち、「浴槽部10」の形状を保つことにあるといえる。

引用発明の上記アの構成の「折り畳み式簡易浴槽」は、「座部」と「座部と床面とに載置し得る段付き形状の袋状体」、及び、「アーム18」と「アーム18を取り付けて支持する支持部」(上記イ)を備えるから、「浴槽部10」を立体構造として保つ、すなわち、「浴槽部10」を、浴槽として機能するように、液体を溜める事が出来る形状の立体構造として保つものといえる。

上記ア?ウ、上記(1)、(2)及び上記1(2)を踏まえると、引用発明の上記アの構成を有する「折り畳み式簡易浴槽」は、本願発明の「カバー又は袋の形状構成の簡易風呂」に相当するものといえる。

以上より、本願発明と引用発明との一致点及び一応の相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「カバー又は袋の形状構成の簡易風呂。」
<相違点>
本願発明では、簡易風呂が、「該カバー又は袋は、手足、身体を洗う、又は入浴する際に安定、安全、洗いやすい、或いは入りやすい機能、形状、構造、作用を構成する為、該カバー又は袋を固定する又は固定化する該機能、形状、構造或いは作用を所有する事が出来る」ものであるのに対して、引用発明では、折り畳み式簡易浴槽(簡易風呂)が、「背もたれ部と座部と脚部を備えた椅子部12と、柔軟で且つ水密な材料からなり折り畳み自在の浴槽部10とが着脱自在に構成され、該椅子部12に浴槽部10の上部を支持するためのアーム18が回動可能に取り付けられ、前記浴槽部10は上部が開口させられ且つ前記椅子部12の座部と床面とに載置し得る段付き形状の袋状体と、該袋状体の上部開口部の周縁に前記アーム18を取り付けて支持する支持部と、該袋状体を上部開口部から床面側まで開閉し得る水密なファスナー36とを備える」ものである点。

3 判断
(1)
上記相違点に係る本願発明の構成は、「該カバー又は袋は、手足、身体を洗う、又は入浴する際に安定、安全、洗いやすい、或いは入りやすい機能、形状、構造、作用を構成する為、該カバー又は袋を固定する又は固定化する該機能、形状、構造或いは作用を所有する事が出来る」というものであるから、その構成は、「該カバー又は袋は、手足、身体を洗う、又は入浴する際に安定、安全、洗いやすい、或いは入りやすい機能、形状、構造、作用を構成する為」(以下、「構成A」という。)、「該カバー又は袋を固定する又は固定化する該機能、形状、構造或いは作用を所有する事が出来る」という構成(以下、「構成B」という。)を採用したものと理解することができる。要するに、上記相違点に係る本願発明の構成は、実質的に、上記「簡易風呂」に係る構成を、上記構成A及びBのとおり機能的に特定しているものといえる。
このことを踏まえ、上記相違点について、以下、検討する。

引用発明の「アーム18」に関して、引用文献1には、「浴槽部10の上部開口部の周縁に設けられた1対の筒状部14には、椅子部12の背もたれ部16に取り付けられた1対のアーム18がそれぞれ挿入され、浴槽部10を椅子部12に固定するとともに自立させるように構成されている。」(摘記(1b)の段落【0013】)と記載されていることから、浴槽部10は、アーム18によって椅子部12に固定されることにより、安定するといえる。
したがって、引用発明の「アーム18」の構造は、入浴する際に安定させる機能、形状、構造、作用を構成するように(上記構成A)、「浴槽部10」を固定しているといえる(上記構成B)。

引用発明の「アーム18」に関して、引用文献1には、「浴槽部10に設けた筒状部14にアーム18を挿入することにより、浴槽部10を椅子部12に固定し、上述した入浴手順によって身障者の入浴を試みたところ、簡便かつ安全に実行できるのを確認することができた。」(摘記(1i)の段落【0045】)と記載されている。
したがって、引用発明の「アーム18」の構造は、入浴する際に安全にする機能、形状、構造、作用を構成するように(上記構成A)、「浴槽部10」を固定しているといえる(上記構成B)。

引用文献1には、「浴槽部10内で身体を動かしつつ洗浄し、介添え人が手伝う場合は、浴槽部10の上部開口部から手を差し入れて、洗うことになる。」(摘記(1g)の段落【0029】)と記載されており、介添え人は、「アーム18」で支持された「浴槽部10の上部開口部」(上記アを参照)から手を差し入れて、入浴者を洗うことができるのであるから、洗いやすく構成されていることが明らかである。
したがって、引用発明の「アーム18」の構造は、入浴する際に洗いやすい機能、形状、構造、作用を構成するように(上記構成A)、「浴槽部10」を固定しているといえる(上記構成B)。

引用発明は、「アーム18が回動可能に取り付けられ」、「該袋状体を上部開口部から床面側まで開閉し得る水密なファスナー36」を「備える」ものであるところ、引用発明の「アーム18」に関して、引用文献1には、「浴槽部10の前面に設けられた水密ファスナー36を開き、アーム18の取り付け部を緩めて、アーム18を下方に回動させ、同時にその先端が開くように回転させることによって、浴槽部10の前部を足元までが広く拡げることができる。その結果、車椅子等からの移動を楽に行うことができるようになる。」(摘記(1e)の段落【0022】)と記載されている。
このことと、上記アを踏まえると、引用発明の「アーム18」の構造は、入浴する際に入りやすい機能、形状、構造、作用を構成するように(上記構成A)、「浴槽部10」を固定しているといえる(上記構成B)。

上記ア?エを踏まえると、引用発明の「折り畳み式簡易浴槽」の「アーム18」の構造は、引用発明の他の構成部品と関連することによって、入浴する際に安定、安全、洗いやすい、或いは入りやすい機能、形状、構造、作用を構成するように(上記構成A)、「浴槽部10」を固定しているといえる(上記構成B)。

上記ア?オ及び上記2(1)、(2)を踏まえると、引用発明の「折り畳み式簡易浴槽」が、「背もたれ部と座部と脚部を備えた椅子部12と、柔軟で且つ水密な材料からなり折り畳み自在の浴槽部10とが着脱自在に構成され、該椅子部12に浴槽部10の上部を支持するためのアーム18が回動可能に取り付けられ、前記浴槽部10は上部が開口させられ且つ前記椅子部12の座部と床面とに載置し得る段付き形状の袋状体と、該袋状体の上部開口部の周縁に前記アーム18を取り付けて支持する支持部と、該袋状体を上部開口部から床面側まで開閉し得る水密なファスナー36とを備える」ことは、本願発明の「簡易風呂」が、「該カバー又は袋は、手足、身体を洗う、又は入浴する際に安定、安全、洗いやすい、或いは入りやすい機能、形状、構造、作用を構成する為、該カバー又は袋を固定する又は固定化する該機能、形状、構造或いは作用を所有する事が出来る」ことに相当するといえる。

したがって、上記相違点は、実質的に相違点とはいえないから、相違点は存在せず、本願発明は、引用発明である。

(2)
上記(1)のとおり、上記相違点に係る本願発明の構成は、「簡易風呂」に係る構成を、上記構成A及びBのとおり機能的に特定しているものであるが、本願の明細書の段落【0014】及び【0022】には、「カバー又は袋」に骨組みを持たせて簡易風呂を構成することも記載されているので、仮に、上記相違点に係る本願発明の構成が、実質的に、「カバー又は袋」に骨組みを持たせることを前提とした構成を特定しているものとした場合についても、念のため、以下、検討する。

本願の明細書には、
「【0014】
カバー又は袋と、該カバー又は袋に関与する骨組みと、から為る簡易風呂である。カバー又は袋に形状構成を為し該液体を溜める事が出来る立体構造と為す事が出来るカバー又は袋に骨組みを持たせて、該カバー、袋にしっかりした安定性のある、安全性のある、又は固定性を持たせる形状にする。故に該カバー、袋に該骨組み設定形状を保たせることによって、該形状が崩れない、形状を保っている特徴を為す事が出来るので、該カバー、袋、は、手足身体を洗う、入浴する機能を安全、且つ安定にてする事が出来る。又入浴風呂に於いて、入りやすい事の機能を高める事が出来る効果が得られる。
・・・
【0022】
図2は、本発明の実施例2であって、請求項2の、カバーの形状が液体を溜める事が出来て手足身体を洗う、入浴する事が出るカバーに骨組みを持たせる。カバーの製品の絵は、カバーの形状が立体構造を所持して、水、お湯等々の種々雑多な液体を溜める事が出来る構成である、更に該立体構造カバーと為して、該カバーにて手足身体を洗う、入浴する事が出来る特徴のカバー風呂の製品の、カバーに骨組みをもたせて、カバーに安定性、安全性、又は固定性を持たせて、カバーの形状を保たせる(形状が崩れない、形状を保っている)特徴を為す、故に手足身体を洗う、入浴する機能を安全、安定、入浴入りやすい事の機能を高める。又該形状は、変形形状、丸、三角、四角等々の何角でも、どんな形状でも良い。」
と記載されている。
また、本願の明細書の段落【符号の説明】【0038】には、「1 カバー」及び「2 骨組み」と記載され、図2及び図3の記載には、それらの符号1及び2が示されている。

そして、「骨」は、「家屋・器具などの芯となって全体を支える材料。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」を意味することも踏まえると、本願の明細書における上記アの「骨組み」の技術的意義は、カバー又は袋の形状を保つことで、本願発明の上記相違点に係る構成すなわち上記構成A及びBとすることにあるといえる。

上記(1)で述べたとおりであるから(特に上記(1)アの「アーム18」が袋状体を備える「浴槽部10」を「自立させる」旨及び上記2(3)イを参照)、引用発明の「アーム18」の技術的意義は、「浴槽部10」(カバー又は袋)の形状を保つことで、本願発明の上記相違点に係る構成すなわち上記構成A及びBとすることにあるといえる。

上記イ及びウを踏まえると、引用発明の「アーム18」は、本願発明の「骨組み」に相当するといえることから、上記相違点に係る本願発明の構成が、実質的に、「カバー又は袋」に骨組みを持たせることを前提とした構成を特定しているものとした場合であっても、上記相違点は、実質的に相違点とはいえないから、相違点は存在せず、本願発明は、引用発明である。

(3)
さらに、上記「骨組み」が、図2の符号2に示されるように、カバー又は袋に全体的に「骨組み」を持たせるものであるとしても、例えば、引用文献2(摘記(2a)、(2b)及び図5?6等)、引用文献3(摘記(3a)及び(3b)等)、引用文献4(摘記(4a)、(4b)及び図2?3等)に示すように、カバー又は袋に、全体的に、芯、リブ、パイプ、バー等の骨組みを構成し得る形状維持部材を用いることで、カバー又は袋を液体を溜める立体構造として保つ簡易風呂を構成することは周知技術であり、この周知技術を踏まえることで、引用発明において、「アーム18」のような骨組みを、全体的に設けるようにして、上記相違点1に係る本願発明の構成を想到することは、当業者にとって格別に困難なことではない。

4 まとめ
以上から、本願発明は、引用文献1に記載された発明(引用発明)であるし、または、引用文献1に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、または、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2018-10-10 
結審通知日 2018-10-16 
審決日 2018-11-02 
出願番号 特願2016-117942(P2016-117942)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (A61H)
P 1 8・ 121- WZ (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 賢一  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 中田 善邦
出口 昌哉
発明の名称 簡易風呂  
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