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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1347425 |
審判番号 | 不服2018-4818 |
総通号数 | 230 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-02-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-04-09 |
確定日 | 2019-01-22 |
事件の表示 | 特願2014- 48138「タッチパネル、表示装置及び光学シート、並びに光学シートの選別方法及び光学シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日出願公開、特開2015-172837、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成26年3月11日の出願であって、平成29年10月12日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年12月8日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが、平成29年12月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成30年4月9日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がなされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成29年12月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-11に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開2010-128255号公報 2.特開2013-105160号公報 3.特開2012-93723号公報 第3 本願発明 本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、平成30年4月9日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 【請求項1】 光学シートを構成部材として有するタッチパネルであって、前記光学シートは、一方の面に凹凸形状を有してなり、表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす、画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられ、 前記光学シートは、凹凸層の単相、又は、透明基材上に凹凸層を有する複層であり、 前記凹凸層に、平均粒子径が1?25nmの無機超微粒子を含有し、 前記無機超微粒子の含有量が前記凹凸層を形成する全固形分中の35?50質量%である、タッチパネル。 1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0 (I) 【請求項2】 前記正透過方向の仮想強度の1/2の輝度を示す拡散角度を「α」とし、αの絶対値が1.4?3.0度である請求項1に記載のタッチパネル。 【請求項3】 前記正透過方向の仮想強度の1/3の輝度を示す拡散角度を「β」とし、βの絶対値が1.9?5.0度である請求項1又は2に記載のタッチパネル。 【請求項4】 前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし、γの絶対値が3.5?8.0度である請求項1?3の何れかに記載のタッチパネル。 【請求項5】 画素密度300ppi以上の表示素子の前面に光学シートを有してなる表示装置であって、前記光学シートは、一方の面に凹凸形状を有してなり、表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たし、 前記光学シートは、凹凸層の単相、又は、透明基材上に凹凸層を有する複層であり、 前記凹凸層に、平均粒子径が1?25nmの無機超微粒子を含有し、 前記無機超微粒子の含有量が前記凹凸層を形成する全固形分中の35?50質量%である、表示装置。 1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0 (I) 【請求項6】 一方の面に凹凸形状を有する光学シートであって、前記光学シートは、表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす、画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられ、 前記光学シートは、凹凸層の単相、又は、透明基材上に凹凸層を有する複層であり、 前記凹凸層に、平均粒子径が1?25nmの無機超微粒子を含有し、 前記無機超微粒子の含有量が前記凹凸層を形成する全固形分中の35?50質量%である、光学シート。 1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0 (I) 【請求項7】 前記正透過方向の仮想強度の1/2の強度を示す拡散角度を「α」とし、αの絶対値が1.4?3.0度である請求項6に記載の光学シート。 【請求項8】 前記正透過方向の仮想強度の1/3の強度を示す拡散角度を「β」とし、βの絶対値が1.9?5.0度である請求項6又は7に記載の光学シート。 【請求項9】 前記正透過方向の仮想強度の1/10の強度を示す拡散角度を「γ」とし、γの絶対値が3.5?8.0度である請求項6?8の何れかに記載の光学シート。 【請求項10】 一方の面に凹凸形状を有する光学シートの選別方法であって、(a)前記光学シートの表面へイズが22?40%を満たし、かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)を満たすものを光学シートとして選別する、画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられ、 前記光学シートは、凹凸層の単相、又は、透明基材上に凹凸層を有する複層であり、 前記凹凸層に、平均粒子径が1?25nmの無機超微粒子を含有し、 前記無機超微粒子の含有量が前記凹凸層を形成する全固形分中の35?50質量%である、光学シートの選別方法。 1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0 (I) 【請求項11】 一方の面に凹凸形状を有する光学シートの製造方法であって、(a)前記光学シートの表面へイズが22?40%を満たし、かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)を満たすように製造する、画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられ、 前記光学シートは、凹凸層の単相、又は、透明基材上に凹凸層を有する複層であり、 前記凹凸層に、平均粒子径が1?25nmの無機超微粒子を含有し、 前記無機超微粒子の含有量が前記凹凸層を形成する全固形分中の35?50質量%である、光学シートの製造方法。 1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0 (I)」 第4 引用文献1、引用発明について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。なお、下線は当審にて付与したものである。 「【0002】 表示装置の表面に用いる光学シートとして、基材の観察者側の面に防眩性を有する機能層が積層されたものが知られている。このような防眩性を付与するためには、表面層に凹凸形状を付与したり、表面層を形成する樹脂に拡散粒子を含有させるなどの方法がとられる。このような拡散粒子は、表面層を形成する樹脂とは完全に相溶することがないため、これらを用いた光学シートは可視光を拡散する作用を有する。また、表面層の凹凸も同様に可視光を拡散する作用を有する。 【0003】 本発明では、上記のような可視光の拡散を生じさせるものを拡散要素と定義するが、このような拡散要素によって防眩性が付与される。そして、従来から、防眩性を評価する方法として、ヘイズ値や内部ヘイズと総ヘイズの比が一般に用いられてきた。すなわち、光学シートの製造過程において、ヘイズ値を制御することで、所望に応じた防眩性を有する光学シートを製造し得ると考えられていた(特許文献1?3参照)。 【0004】 【特許文献1】特開2002-267818号公報 【特許文献2】特開2007-334294号公報 【特許文献3】特開2007-17626号公報 【0005】 しかしながら、同じヘイズ値であっても防眩性が異なる場合が多く見られ、ヘイズ値及び内部ヘイズと総ヘイズの比を指標としての製造では、必ずしも良好な光学シートを安定に生産することはできないことがわかった。 本発明はこのような状況下、防眩性の高い光学シートを安定して供給する製造方法及び防眩性の高い光学シートを提供することを目的とする。」 「【0010】 本発明の光学シートの製造方法は、透明基材の少なくとも一方の面に機能層を有し、該機能層の最表面及び/又は内部に拡散要素を有する表示素子表面に用いる光学シートの製造方法であって、Q/U<21.4の関係を有するように製造条件等を制御することを特徴とする。 以下、図3を用いて、Q及びUの測定方法について説明する 図3に示すような光学シートについて5の方向から可視光線を照射すると、6の方向に正透過されるとともに、一部の光が拡散される。この6の方向、すなわち、0度における透過強度が正透過強度Qである。また、拡散正透過±2度と拡散正透過±1度での透過強度をそれぞれ測定し、該強度を直線で結び、拡散正透過角度(0度)に外挿した透過強度を仮想正透過強度Uと定義する(図4参照)。 そして、光学シートの製造過程において、Q/Uを指標として、材料の選定、製造条件の制御などを行うことにより、防眩性の高い光学シートを効率よく製造することを可能とするものである。 なお、拡散透過強度の測定は、具体的には以下のように測定する。」 「【0013】 本発明の製造方法では、下記式(I)を指標として制御することが特徴である。 Q/U<21.4 (I) Q/Uが21.4未満となるように製造することによって、防眩性に優れた光学シートを得ることができる。より良好な防眩性を得るとの観点からは、Q/Uは7.2未満であることが好ましく(式(II)Q/U<7.2)、5.7未満であることがさらに好ましい(式(III)Q/U<5.7)。」 「【0022】 また、屈折率、粒径分布が同一な透光性微粒子であっても、透光性粒子の凝集の程度により拡散透過強度分布は異なるので、凝集状態の異なる2種類以上の透光性粒子を組み合わせて使用したり、シランカップリング処理の条件の異なる2種以上の無機粒子を用いることで凝集状態を変えて拡散透過強度分布を調整することができる。 なお、透光性粒子の凝集防止には、可視光線の波長以下の粒子径、例えば50nm以下程度の粒子径を有するシリカなどを添加する方法が好適に挙げられる。」 以上の記載、特に下線部によれば、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「表示装置であって、表示装置の表面に光学シートが用いられ、 前記光学シートは、透明基材の少なくとも一方の面に機能層を有し、該機能層の最表面及び/又は内部に拡散要素を有するものであり、 0度における透過強度を正透過強度Q、拡散正透過±2度と拡散正透過±1度での透過強度をそれぞれ測定し、該強度を直線で結び、拡散正透過角度(0度)に外挿した透過強度を仮想正透過強度Uと定義したときに、Q/U<21.4の関係を有するように製造条件等を制御するものであり、より良好な防眩性を得るとの観点からは、Q/U<5.7であることがさらに好ましく、 透光性粒子の凝集防止のために、可視光線の波長以下の粒子径、例えば50nm以下程度の粒子径を有するシリカなどを添加する、表示装置。」 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 引用発明において、「表示装置であって、表示装置の表面に光学シートが用いられ」ることは、本願発明1の「光学シートを構成部材として有するタッチパネル」と、「光学シートを構成部材として有する表示装置」である点で共通するといえる。 また、引用発明における「機能層」は、防眩性を付与するために、表面層に凹凸形状を付与したり、表面層を形成する樹脂に拡散粒子を含有させたりするものであるから、本願発明1の「凹凸層」に相当し、引用発明において、「前記光学シートは、透明基材の少なくとも一方の面に機能層を有し、該機能層の最表面及び/又は内部に拡散要素を有するものであ」ることは、本願発明1において、「前記光学シートは、一方の面に凹凸形状を有してな」り、かつ、「前記光学シートは、凹凸層の単相、又は、透明基材上に凹凸層を有する複層であ」ることに相当する。 そして、引用発明において、「0度における透過強度を正透過強度Q、拡散正透過±2度と拡散正透過±1度での透過強度をそれぞれ測定し、該強度を直線で結び、拡散正透過角度(0度)に外挿した透過強度を仮想正透過強度Uと定義したときに、Q/U<21.4の関係を有するように製造条件等を制御するものであり、より良好な防眩性を得るとの観点からは、Q/U<5.7であることがさらに好まし」いことは、本願発明1において、「前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす、 1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0 (I)」ことと、「0度における透過強度を正透過強度Q、拡散正透過±2度と拡散正透過±1度での透過強度をそれぞれ測定し、該強度を直線で結び、拡散正透過角度(0度)に外挿した透過強度を仮想正透過強度Uと定義したときに、Q/Uが所定の関係式を満たす」構成とすることでは共通するといえる。 さらに、引用発明における「シリカなど」が本願発明1における「無機超微粒子」に相当するから、引用発明において、「透光性粒子の凝集防止のために、可視光線の波長以下の粒子径、例えば50nm以下程度の粒子径を有するシリカなどを添加する」ことは、本願発明1において、「前記凹凸層に、平均粒子径が1?25nmの無機超微粒子を含有」することと、「前記凹凸層に無機超微粒子を含有する」ことでは共通するといえる。 したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 光学シートを構成部材として有する表示装置であって、前記光学シートは、一方の面に凹凸形状を有してなり、0度における透過強度を正透過強度Q、拡散正透過±2度と拡散正透過±1度での透過強度をそれぞれ測定し、該強度を直線で結び、拡散正透過角度(0度)に外挿した透過強度を仮想正透過強度Uと定義したときに、Q/Uが所定の関係式を満たすものであって、 前記光学シートは、凹凸層の単相、又は、透明基材上に凹凸層を有する複層であり、 前記凹凸層に無機超微粒子を含有する、表示装置。 (相違点) (相違点1)本願発明1は、「光学シートを構成部材として有するタッチパネル」の発明であるのに対し、引用発明は「光学シート」を構成部材として有する「表示装置」であるものの、当該「表示装置」が「タッチパネル」であることは特定されていない点。 (相違点2)本願発明1は、「正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値」を「正透過方向の仮想強度」と定義するものであるのに対し、引用発明は、「拡散正透過±2度と拡散正透過±1度での透過強度をそれぞれ測定し、該強度を直線で結び、拡散正透過角度(0度)に外挿」することによって「仮想正透過強度U」を求めるものであるものの、「正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値」によって求めることは特定されていない点。 (相違点3)本願発明1は、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるのに対し、引用発明は、表面ヘイズの値については特定されておらず、また、「正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度」の値についても5.7未満とすることが望ましいものであるが、「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」とすることは特定されていない点。 (相違点4)本願発明1は、「画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられ」るものであるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。 (相違点5)本願発明1は、「前記凹凸層に、平均粒子径が1?25nmの無機超微粒子を含有し、前記無機超微粒子の含有量が前記凹凸層を形成する全固形分中の35?50質量%である」のに対し、引用発明は、凹凸層に無機超微粒子を含有するものであるものの、その平均粒子径は50nm以下と本願発明1で特定する数値範囲とは異なっており、また、無機超微粒子の含有量については特定されていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点3について検討する。相違点3に係る本願発明1の、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるのに対して、引用発明は、表面ヘイズの値については一切特定することなく、「正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度」の値のみを独立に制御して5.7未満とするものである。また、引用文献1には、表面ヘイズ及び「正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度」の両方を制御することについては記載されていない。さらに、引用文献2,3にも、表面ヘイズ及び「正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度」の両方を制御することについては記載されていない。 本願発明1は、相違点3に係る構成により、表面ヘイズ及び「正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度」の両方を制御して一定の範囲の値とすることにより、画素密度300ppi以上の超高精細の表示素子のギラツキを防止し、かつ、解像度の低下を防止できるという格別の効果を奏するものであるから、このような構成とすることが単なる設計的事項であるとはいえない。 よって、相違点3に係る、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという構成を引用発明に採用することが容易に想到し得たとはいえない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-4について 本願発明2-4も、本願発明1と同様に、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 3.本願発明5について 本願発明5も、本願発明1の相違点3に係る構成に対応する、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満た」すものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 4.本願発明6-9について 本願発明6-9も、本願発明1の相違点3に係る構成に対応する、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 5.本願発明10について 本願発明10も、本願発明1の相違点3に係る構成に対応する、「(a)前記光学シートの表面へイズが22?40%を満たし、かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)を満たすものを光学シートとして選別する」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 6.本願発明11について 本願発明11も、本願発明1の相違点3に係る構成に対応する、「(a)前記光学シートの表面へイズが22?40%を満たし、かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)を満たすように製造する」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという構成を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、及び、引用文献2,3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 原査定について 本願発明1-4は、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという技術的事項を有するものであり、 本願発明5は、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満た」すものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという技術的事項を有するものであり、 本願発明6-9は、「表面へイズが22?40%であり、かつ、前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)の関係を満たす」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという技術的事項を有するものであり、 本願発明10は、「(a)前記光学シートの表面へイズが22?40%を満たし、かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)を満たすものを光学シートとして選別する」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという技術的事項を有するものであり、 本願発明11は、「(a)前記光学シートの表面へイズが22?40%を満たし、かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し、透過した光について、凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し、正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と、正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に、下記式(I)を満たすように製造する」ものであり、式(I)は「1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦4.0」であるという技術的事項を有するものである。 拒絶査定において引用された引用文献1-3にはこれらの事項が記載されていないため、本願発明1-11は、当業者であっても、引用文献1-3に基づいて容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。 第7 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2019-01-07 |
出願番号 | 特願2014-48138(P2014-48138) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 岩橋 龍太郎、菊池 伸郎 |
特許庁審判長 |
千葉 輝久 |
特許庁審判官 |
山田 正文 菊地 陽一 |
発明の名称 | タッチパネル、表示装置及び光学シート、並びに光学シートの選別方法及び光学シートの製造方法 |
代理人 | 大谷 保 |