• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61F
管理番号 1347461
審判番号 不服2018-74  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-01-04 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2015-37481号「脚用枕」拒絶査定不服審判事件〔平成28年9月5日出願公開、特開2016-158678号、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年2月26日の出願であって、平成29年2月27日付けで拒絶理由が通知され、同年4月28日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月25日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、平成30年1月4日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1及び2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
[刊行物]
1.特開2006-34410号公報
2.実公平6-12747号公報
以下、それぞれ、「引用文献1及び2」という。

第3 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1?3」という。)は、平成30年1月4日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりものである。
「 【請求項1】
下腿の周囲を覆うクッションを含む脚被覆部と、
前記脚被覆部が下腿にフィットするように前記脚被覆部を締める強さである締付力を調節可能な第1の調節部と、
前記脚被覆部を引っ張ることにより前記締付力を調節可能な第2の調節部とを備え、
前記第1の調節部は、脹脛が締め付けられるように前記脚被覆部が下腿にフィットする状態、および、前記脚被覆部が下腿に取り付けられた状態でユーザーが移動する場合に前記脚被覆部が下腿に保持される状態を形成できるように前記締付力を調節可能である
脚用枕。
【請求項2】
前記脚被覆部は下腿に巻き付け可能な帯状の形態を有し、
前記第1の調節部は、下腿の周囲に巻き付けられる前記脚被覆部の長さを調節することにより前記締付力を調節する
請求項1に記載の脚用枕。
【請求項3】
前記脚被覆部は、脹脛を支持する支持部、および、前記支持部の側部から伸びる帯状の巻付部を含み、
前記第2の調節部は、前記支持部の内面に取り付けられる第1の取付部、および、前記巻付部に形成される穴を通過して前記巻付部の外面に取り付けられる第2の取付部を備え、前記巻付部に対する前記第2の取付部の取り付け位置が調節可能である
請求項2に記載の脚用枕。」

第4 引用文献に記載された事項及び発明
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付加した。以下同様である。)。
(1a)
「【請求項1】
人体の足に脱着可能に装着することのできる下肢の血流改善用具であって、
仰向けに寝たときに、ふくらはぎの下部から踵の上方近傍の間のアーチ状の隙間を埋めることのできるクッション材を備えていることを特徴とする下肢の血流改善用具。」
(1b)
「【0005】
特許文献1に開示の足枕のように、足首をクッション部材で上に持ち上げて仰向けに寝ると、下肢のむくみを解消するには効果的であるが、この体位では膝関節が中に浮いた状態となることから膝関節に負担がかかり、膝関節が痛くなるという問題が発生し易い。勿論、この付加的な問題を解消するには、ふくらはぎや膝関節の下に別のクッション材を敷くことで膝関節の負担を軽減することができる。
【0006】
本願発明者は、足の疲労を回復するには就寝時の足の高さを自然な状態に保ちながら血流を改善するのが効果的であると考えて本発明を案出するに至ったものである。
【0007】
本発明の目的は、足の膝に負担をかけることなく足の疲労を回復することができる下肢の血流改善用具を提供することにある。
【0008】
本発明の更なる目的は、踵の床ずれや就寝時の足攣りを防止することのできる下肢の血流改善用具を提供することにある。」
(1c)
「【0009】
ふくらはぎは人体の血流を支配する大きなファクタであることが知られているが、就寝時のふくらはぎに着目すると、仰向けに寝ると、ふくらはぎが押し潰された状態になる。その原因は、下肢や掛け布団の重さによるが、ふくらはぎが押し潰されると当該部位を通る血管が圧迫された状態になることから好ましい事ではない。
【0010】
本発明は、上記の技術的課題を達成すべく、
人体の足に脱着可能に装着することのできる下肢の血流改善用具であって、
仰向けに寝たときに、足のふくらはぎの下部から踵の上方近傍の間のアーチ状の隙間を埋めることのできるクッション材を具備していることを特徴とする。」
(1d)
「【0012】
すなわち、従来は足のむくみや疲労回復には下肢を高く上げた状態で寝るのが良いとされていたが、本発明にあっては、下肢の高さを強制的に上げるのではなく、仰向けに寝たときに、ふくらはぎが押し潰された状態となるのを抑えてふくらはぎの膨らみが自然に近い状態に維持できるようにした点に特徴を有する。
【0013】
本発明の血流改善用具によれば、仰向けに寝たときに、下肢の高さを心臓とほぼ同じ高さレベルに保ちつつ、ふくらはぎの膨らみを自然に近い状態、典型的には立位姿勢のときの膨らみ状態に保つことができるため、これまでのように仰向けに寝たときに、掛け布団などの重みなどでふくらはぎが押し潰された状態になって、ふくらはぎを通る血管が圧迫された状態になるのを、本発明の血流改善用具によって防止することができ、これにより就寝時の当該部位の血流を改善して足の疲労を回復することができる。また、本発明の血流改善用具によれば、足を上方に高く上げるものではないため、膝関節に負担を強いることはない。」
(1e)
「【0017】
第1実施例(図1?図6)
・・・
【0018】
血流改善用具1は、寝るときに、図5から分かるように、下肢の下部に装着して使用するものである。装着の際には、クッション材収容部2を、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがい、左右のフラップ3、4で足LGを包み込むようにして、足LGの前方に向けて延びる左右のフラップ3、4の前端の面ファスナ5a、5bを重ね合わせて係合させることにより固定する。
・・・
【0022】
血流改善用具1は、図5を参照して前述したように、クッション材収容部2が下肢LGのふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがいながら、両手を使って左右のフラップ3、4を下肢LGの下部の前で重ねるようにして面ファスナ5a、5bを係合させることにより装着することができる。図5には、クッション材収容部2に挿入したクッション材を参照符号6で示してある。」

(2)引用文献1に記載された発明
摘記(1e)の段落【0018】及び段落【0022】には、第1実施例の構成が記載され、当該記載は、摘記(1a)の請求項1の構成を具体的に記載したものであるといえること、及び、摘記(1a)?(1e)から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
[引用発明]
「人体の足に脱着可能に装着することのできる下肢の血流改善用具1であって、
仰向けに寝たときに、ふくらはぎCの下部から踵Hの上方近傍の間のアーチ状の隙間を埋めることのできるクッション材6を備え、
下肢の下部に装着して使用するものであり、装着の際には、クッション材6を挿入したクッション材収容部2を、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがい、左右のフラップ3、4で足LGを包み込むようにして、足LGの前方に向けて延びる左右のフラップ3、4の前端の面ファスナ5a、5bを重ね合わせて係合させることにより固定する
下肢の血流改善用具1。」

2 引用文献2について
引用文献2には、図とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)1頁1欄9?10行
「〔産業上の利用分野〕
本考案は、膝蓋骨疾患に使用する膝装具に関する。」
(2b)2頁3欄1?21行
「〔考案が解決しようとする課題〕
本考案の目的は、上述のような従来の膝装具の持つ欠点を解決し、圧迫力、圧迫方向の調節が可能で、かつ圧迫部位の変化の少ない膝蓋骨亜脱臼、脱臼用膝装具を得ることにある。
〔課題を解決するための手段〕
この目的は本考案によれば、膝関節部とその上下の大腿部、下腿部とを被覆する本体と、本体の膝蓋骨に当る部分の上下にそれぞれ横方向に記置され一端を本体に固定し、他端を本体に脱着可能にした2本のストラップと、膝蓋骨の側方に当るように両ストラップに固定したパテラパッドとを備えることにより達成される。
〔作用〕
本考案においては、膝蓋骨が脱臼する方向の膝蓋骨の側方にパテラパッドが位置するように本体に置いて膝関節部およびその上下の大腿部、下腿部上に固定し、ストラップの本体に固定されていない他端に適宜引張力を加えてその他端を本体と結合することにより、パテラパッドを膝蓋骨の側方に密接せしめて膝蓋骨に側方から圧迫力を加え、亜脱臼、脱臼を防止するようにしたものである。」
(2c)2頁4欄40行?3頁5欄11行
「装着に当たっては、本体1の裏側を脚の前側から当て、孔8が膝蓋骨上に位置し、上辺2が前大腿部上に、下辺3が前下腿部上に位置し、ステー10、11がそれぞれ大腿部より下腿部の左右側に沿って位置するようにし、左右側辺4、5を脚の後側に回し、左側辺4を下にしてその上に右側辺5を重ね、面フアスナ9で本体1上に締結させる。このようにして本体1の左右側辺4、5を後で重ね合わせることにより側辺4、5の凹所6、7は膝窩を囲むように一つの開口を形成する。次いで締付ベルト16、17をそれぞれ大腿部、下腿部の後側上を通るように延ばし、その自由端24、25をリング状金具22、23に挿入して折り返し、適宜引張力を加えてベルト16、17自身上に面フアスナ20、21でもって固定する。これによって本体1は膝関節部の周りに適切な圧迫力が加えられた状態で固定される。
次に本体1の表側にスリット30、31を通して引き出されているストラップ26、27の自由端34、35をリング状金具32、33に挿入して折り返し、それぞれのストラップ26、27に加える引張力を調整して、膝蓋骨に当るパテラパッド38の圧迫力の方向、強さを望ましい状態に定め、面フアスナ36、37でもって本体1の表面に固定する。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。

「下腿」は、「膝から足首までの部分。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」を意味しているから、引用発明の「ふくらはぎCの下部から踵Hの上方近傍の間」は、「下腿」の一部を含んでいるといえる。

引用発明の「仰向けに寝たときに、ふくらはぎCの下部から踵Hの上方近傍の間のアーチ状の隙間を埋めることのできるクッション材6」は、「クッション材収容部2」に「挿入」され、「装着の際には、クッション材6を挿入したクッション材収容部2を、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがい、左右のフラップ3、4で足LGを包み込むようにして」いることから、引用発明の上記の「クッション材6」は、「ふくらはぎCの下部から踵Hの上方近傍の間」を覆うといえる。

上記イで述べた、引用発明の上記の「クッション材6」は、「ふくらはぎCの下部から踵Hの上方近傍の間」すなわち「下腿」の一部(上記ア)を覆うといえるから、引用発明の「仰向けに寝たときに、ふくらはぎCの下部から踵Hの上方近傍の間のアーチ状の隙間を埋めることのできるクッション材6」は、本願発明1の「下腿の周囲を覆うクッション」に相当する。

引用発明では、「装着の際には、クッション材6を挿入したクッション材収容部2を、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがい、左右のフラップ3、4で足LGを包み込むようにして」いるから、引用発明の「クッション材6」、「クッション材6を挿入したクッション材収容部2」及び「左右のフラップ3、4」(これら3つの部材)は、足LGを包み込むように被覆するといえる。
したがって、上記ウを踏まえると、上記の3つの部材を備える、引用発明の「仰向けに寝たときに、ふくらはぎCの下部から踵Hの上方近傍の間のアーチ状の隙間を埋めることのできるクッション材6を備え」、「装着の際には、クッション材6を挿入したクッション材収容部2を、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがい、左右のフラップ3、4で足LGを包み込むようにして」いる構成は、本願発明1の「下腿の周囲を覆うクッションを含む脚被覆部」の構成に相当する。

引用発明の「血流改善用具1」は、「下肢の下部に装着して使用するものであり」、上記エを踏まえると、「仰向けに寝たときに」、「足LG」の「クッション」となるから、「足LG」用の枕であるといえる。
したがって、引用発明の「下肢の血流改善用具1」は、本願発明1の「脚用枕」に相当する。

以上を総合すると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「下腿の周囲を覆うクッションを含む脚被覆部を備える
脚用枕。」
<相違点>
「脚用枕」に関して、
本願発明1は、
「前記脚被覆部が下腿にフィットするように前記脚被覆部を締める強さである締付力を調節可能な第1の調節部と、
前記脚被覆部を引っ張ることにより前記締付力を調節可能な第2の調節部とを備え、
前記第1の調節部は、脹脛が締め付けられるように前記脚被覆部が下腿にフィットする状態、および、前記脚被覆部が下腿に取り付けられた状態でユーザーが移動する場合に前記脚被覆部が下腿に保持される状態を形成できるように前記締付力を調節可能である」構成を備えるのに対して、
引用発明は、
「装着の際には、クッション材6を挿入したクッション材収容部2を、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがい、左右のフラップ3、4で足LGを包み込むようにして、足LGの前方に向けて延びる左右のフラップ3、4の前端の面ファスナ5a、5bを重ね合わせて係合させることにより固定する」構成を備える点。

(2)判断
以下、相違点について検討する。

(ア)
本願発明1の技術背景は、「ユーザーが脚用枕を下腿に取り付けて就寝することにより、就寝時に下腿がむくみにくくなる。これは、脚用枕が下腿に取り付けられることにより踵が寝具から浮き上がること、および、脚用枕により脹脛が締め付けられることにより、筋ポンプ作用が向上し、血管からの血液の染み出しが抑制されることが関係していると考えられる。」(本願明細書の段落【0002】)ものと理解できる。
本願発明1の課題は、「脚のむくみの抑制効果をさらに高めた脚用枕を提供することである。」(同段落【0004】)ものと理解できる。
(イ)
引用発明の課題は、「足の膝に負担をかけることなく足の疲労を回復することができる下肢の血流改善用具を提供することにあ」り(摘記(1b)の段落【0007】)、「ふくらはぎは人体の血流を支配する大きなファクタであることが知られているが、就寝時のふくらはぎに着目すると、仰向けに寝ると、ふくらはぎが押し潰された状態にな」り、「ふくらはぎが押し潰されると当該部位を通る血管が圧迫された状態になることから好ましい事ではない。」(摘記(1c)の段落【0009】)ものと理解できる。
(ウ)
上記(ア)及び(イ)を踏まえて検討すると、引用発明は、「クッション材6を挿入したクッション材収容部2を、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間に当てがい」「固定する」ものであるから、本願発明1の「脹脛が締め付けられるように」するものとは、明らかに構造が異なるものである。
引用発明において、「脹脛が締め付けられるように」する構造を採用すると、「ふくらはぎの膨らみを自然に近い状態、典型的には立位姿勢のときの膨らみ状態に保つこと」(摘記(1d)の段落【0013】)ができなくなり、ふくらはぎが押し潰されてしまうから、引用発明の課題(上記(イ))を解決することができなくなってしまう。
したがって、引用発明において、「脹脛が締め付けられるように」する構造を採用することには、阻害要因があるといえる。
(エ)
引用文献2には、「圧迫力」すなわち「締め付け」に係る技術が記載されている(「締付ベルト16、17」により、「適宜引張力を加えて」、「適切な圧迫力が加えられた状態で固定される」ことや、「ストラップ26、27に加える引張力を調整して」、「圧迫力の方向、強さを望ましい状態に定め」、「固定する」こと。摘記(2c)を参照。)。
しかしながら、引用文献2の「圧迫力」すなわち「締め付け」に係る技術を、引用発明に適用しても、ふくらはぎCの下部から踵Hの近傍までの間が締め付けられるだけであり、上記相違点に係る本願発明の構成に至るものではない。

上記アのとおりであるから、本願発明1は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2及び3について
本願発明2及び3は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定したものであるから、本願発明1と同様に、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 小括
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-10 
出願番号 特願2015-37481(P2015-37481)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 出口 昌哉
仁木 学
発明の名称 脚用枕  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ