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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 F28D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F28D
管理番号 1347463
審判番号 不服2018-5983  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-01 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2014-79970号「過冷却解除素子および過冷却解除装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年11月12日出願公開、特開2015-200469号、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年4月9日の出願であって、平成29年7月26日付けで拒絶理由が通知され、平成29年9月6日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成30年2月5日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされた。これに対して、平成30年5月1日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に、手続補正書が提出され、平成30年5月24日に前置報告がされ、平成30年6月27日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
本願請求項13に係る発明は、下記引用文献1に記載された発明であるか、又は、引用文献1に記載された発明に基いて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一欄
1.特開2010-54162号公報

第3 本願発明
本願請求項1?13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明13」という。)は、平成30年5月1日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

【請求項1】
幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い縦横比1を超える1枚の弾性を有する板片を備え、
前記板片には、切れ目と前記板片における長手方向に延びた中空き部とが形成され、
前記板片は、前記切れ目が形成された前記板片の部分に圧縮応力が加えられるように撓んでいることを特徴とする過冷却解除素子。
【請求項2】
前記板片は、幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い長手部分を有し、
前記長手部分には、それぞれが前記長手部分の幅方向に延びた複数の前記切れ目が形成され、
複数の前記切れ目は、前記長手部分の縦方向に並べて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の過冷却解除素子。
【請求項3】
前記板片は、U字型に形成されており、両端部が前記板片の厚さ方向に重ねられて互いに固定されることによって、撓んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の過冷却解除素子。
【請求項4】
前記板片は、I字型に形成されており、無荷重状態の前記板片における長手方向の寸法よりも短い間隔で配置された一対の板片固定部の間に前記板片の両端部が挟まれることによって、撓んでいることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の過冷却解除素子。
【請求項5】
移動体ガイドと、
前記移動体ガイドに沿って移動可能に設けられ、移動することによって、撓み量が小さくなるように前記板片を押圧して変形させる移動体と
をさらに備えたことを特徴とする請求項1から請求項4までの何れか一項に記載の過冷却解除素子。
【請求項6】
前記板片は、リング形状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の過冷却解除素子。
【請求項7】
潜熱蓄熱材を保持する容器と、
幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い縦横比1を超える1枚の弾性を有する板片を有し、前記板片には切れ目と前記板片における長手方向に延びた中空き部とが形成され、前記切れ目が形成された前記板片の部分に圧縮応力が加えられるように前記板片が撓んだ状態で前記容器内に設けられた過冷却解除素子と、
前記容器の外部から前記過冷却解除素子に変形させる力を加える変形力付加機構と
を備えたことを特徴とする過冷却解除装置。
【請求項8】
前記変形力付加機構は、前記容器外に設けられたアクチュエータと、前記過冷却解除素子と前記アクチュエータとを連結する湾曲変形可能なワイヤとを有していることを特徴とする請求項7に記載の過冷却解除装置。
【請求項9】
前記過冷却解除素子は、移動体ガイドと、前記移動体ガイドに沿って移動可能に設けられ、移動することによって、撓み量が小さくなるように前記板片を押圧して変形させる移動体とをさらに有し、
前記ワイヤは、前記移動体と前記アクチュエータとを連結し、
前記過冷却解除素子および前記変形力付加機構は、一体となって前記容器に着脱可能となっていることを特徴とする請求項8に記載の過冷却解除装置。
【請求項10】
前記容器内に設けられた複数の過冷却解除素子を備え、
それぞれの前記過冷却解除素子は、移動体ガイドと、前記移動体ガイドに沿って移動可能に設けられ、移動することによって、撓み量が小さくなるように前記板片を押圧して変形させる移動体とをさらに有し、
前記ワイヤは、それぞれの前記移動体と前記アクチュエータとを連結していることを特徴とする請求項8に記載の過冷却解除装置。
【請求項11】
前記板片は、リング形状に形成されており、
前記ワイヤは、前記板片と前記アクチュエータとを連結していることを特徴とする請求項7に記載の過冷却解除装置。
【請求項12】
幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い縦横比1を超える1枚の弾性を有する板片を備え、
前記板片には、切れ目が形成され、
前記板片は、前記切れ目が形成された前記板片の部分に圧縮応力が加えられるように撓んでおり、
前記板片は、U字型に形成されており、両端部が前記板片の厚さ方向に重ねられて互いに固定されることによって、撓んでいることを特徴とする過冷却解除素子。
【請求項13】
幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い縦横比1を超える1枚の弾性を有する板片と、
一対の板片固定部を有し、一対の前記板片固定部の間に前記板片を固定するI字型の固定部材と
を備え、
前記板片には、切れ目が形成され、
前記板片は、前記切れ目が形成された前記板片の部分に圧縮応力が加えられるように撓んでおり、
前記板片は、I字型に形成されており、無荷重状態の前記板片における長手方向の寸法よりも短い間隔で配置された一対の前記板片固定部の間に前記板片の両端部が挟まれることによって、撓んでいることを特徴とする過冷却解除素子。

第4 引用文献等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由で引用された刊行物であって、本願出願前に頒布された刊行物である特開2010-54162号(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「図3は、蓄熱装置10の詳細構成を示す図で、(a)は、後述する加圧板15が非加圧位置にある状態、(b)は、加圧板15が加圧位置にある状態をそれぞれ示している。また、図4は、蓄熱カプセル21の詳細構造を示す図で、(a)は外観を示す図、(b)は、変形していない状態の断面図、(c)は、加圧されて変形した状態の断面図、(d)は、内部に設置した過冷却解除用の部材(以下、「発核部材」という。)22の詳細構成を示す図である。図4に示すように、蓄熱カプセル21は中空の球形状であり、内部に蓄熱材20が封入されている。蓄熱カプセル21は、例えばポリエチレンやポリプロピレンなどの柔軟性を有する合成樹脂材料からなる。また、蓄熱カプセル21の外周には、楔状の括れ部21aが形成されている。括れ部21aは、蓄熱カプセル21の中心を通る面の周囲に直線帯状に形成されている。」(段落【0029】)

(2)「蓄熱カプセル21の内部に設置した発核部材22は、弾性を有する金属材料からなり、短冊状に形成された板状部材で、その長手方向に向かう両側辺には、複数の切込部22aが交互に形成されている。切込部22aは、発核部材22の内側に向かって楔状に切り込まれている。発核部材22は、図4(b)に示すように、蓄熱カプセル21内の対向する括れ部21aの間に、断面の長手方向が略S字形状に撓められた状態で架け渡されている。また、蓄熱カプセル21内の底部には、重り23が取り付けられている。重り23は、蓄熱材20よりも比重の大きな材料からなる部材で、熱交換室11内に収容した蓄熱カプセル21の向きや配列を揃える働きをする。なお、後述するように、括れ部21aにも蓄熱カプセル21の向きや配列を揃える働きがあるので、蓄熱カプセル21を正確に揃える必要が無ければ、重り23は省略してよい。」(段落【0030】)

(3)「第一室12の最上段に収容された蓄熱カプセル21の上部には、加圧板(加圧部材)15が設置されている。加圧板15は、最上段の蓄熱カプセル21に当接する平板状の部材からなり、上面側には、アクチュエータ(移動機構)16により加圧板15の面と直交する方向へ進退移動するロッド16aが連結されている。アクチュエータ16は、ECU50の指令で動作するようになっている。したがって、加圧板15は、アクチュエータ16の駆動によるロッド16aの進退移動に伴い、図3(a)に示す非加圧位置と、図3(b)に示す加圧位置との間で上下動するようになっている。加圧位置において、熱交換室11に収容された蓄熱カプセル21が押圧されることで、互いに接した状態で配列された複数の蓄熱カプセル21が一度に加圧され、図3(b)及び図4(c)に示すように変形する。この蓄熱カプセル21の変形に伴い、蓄熱カプセル21内に設置した発核部材22の形状が変化し、蓄熱材20の過冷却状態が解除される。」(段落【0035】)

(4)「【図4】



したがって、引用文献1の上記(1)?(4)の記載を参照すれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「蓄熱カプセルの内部に設置され、弾性を有する金属材料からなり、短冊状に形成された発核部材で、その長手方向に向かう両側辺には、複数の切込部が交互に形成され、切込部は、発核部材の内側に向かって楔状に切り込まれており、蓄熱カプセル内の対向する括れ部の間に、断面の長手方向が略S字形状に撓められた状態で架け渡されている発核部材。」

2.その他の文献について
前置報告書において、新たな引用文献として引用された刊行物である特開平3-117894号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)「図において、蓄熱装置1は、安定な過冷却状態を有する潜熱蓄熱材2と、過冷却した前記潜熱蓄熱材2の過冷却状態を解除する過冷却解除手段3を封入した蓄熱容器4から構成されている。
前記潜熱蓄熱材2は、過冷却と結晶化を反復し、結晶化に発熱するもので、この蓄熱材2の一例として酢酸ナトリウム三水塩を使用する。この酢酸ナトリウム3水塩は、無水酢酸ナトリウムを所望量の水に溶解して製造するものである。また、この酢酸ナトリウム三水塩は、過冷却された液体時に衝撃を受けると結晶化し、この結晶化時に発熱する性質を有している。
前記過冷却を解除する過冷却解除手段3は、第2図の本発明の一実施例に係る蓄熱装置に具備した過冷却解除手段の展開図、第3図の本発明の一実施例に係る蓄熱装置に具備した過冷却解除手段の構成図に示すように構成されている。
すなわち、解除手段3は、-枚の金属板10に開口部11を設け、また金属板10の一端側を突出部12とし、前記開口部11に突出部12を摺接可能な状態に挿入してリング状に構成されている。
また、解除手段3の開口部11は外力を加えることで生じるずれの方向に狭まる形状にし、この開口部11に挿入する突出部12は外力を加えることで生じるずれの方向に広がる形状に構成されている。
このように構成することにより、外力を加えると開口部11の切断面13と突出部12の切断面14が衝突もしくは密接状態でずれ合うことにより、わずかな間隙に蓄熱材を挟み込んだ状態で集中応力が発生する。
従って、蓄熱容器4内の前記潜熱蓄熱材2が過冷却の状態において、蓄熱容器4の外部より解除手段3を押すと、これによって潜熱蓄熱材2に衝撃を与えるため、潜熱蓄熱材2は衝撃を受けた部分から徐々に結晶化(過冷却解除)を開始し、連鎖的に全て(蓄熱容器4内全体)の潜熱蓄熱材2が晶析する。この晶析により潜熱蓄熱材2の潜熱が放出され、この熱が蓄熱容器4の外部へ伝達されるので、この蓄熱容器4を身体に接触することによって身体が温められ、ヒータとして使用することができる。」(3頁左上欄18行?同左下欄最終行)

(2)「第5図は本発明の他の実施例に係る蓄熱装置に具備した過冷却解除手段の構成図である。第5図(a)の解除手段20は、一方の金属板21に開口部22を設け、他方の金属板23に前記開口部22に摺接可能な突出部24を設け、前記開口部22に前記突出部24が挿入可能な状態に金属板同志を接続する。この時点では開口部22と突出部24は離れており、過冷却状態を解除するために解除手段20を押したときに開口部22に突出部24が挿入され、開口部22、突出部24のそれぞれの切断面が衝突もしくは密接状態でずれ合うように構成されている。
このように構成することによっても前述の実施例と同様の効果が得られる。
また、第5図(b)に示すように解除手段20の一方の金属板21の開口部22を複数設け、この複数の開口部22に摺接可能に他方の金属板23に複数の突出部24を設けたものである。このように構成することによっても前述の実施例と同様の効果が得られる。更に、複数の開口部22,複数の突出部24を設けることで複数の切断面で衝突もしくは密接状態でずれ合うため、より確実に過冷却状態の解除を行うことができる。」(4頁左下欄11行?同右下欄13行)

(3)「第5図



第5 対比・判断
以下、事案に鑑み、原査定の対象になった本願発明13から検討する。
1.本願発明13について
(1)対比
本願発明13と引用発明を対比すると、次のことがいえる。
引用発明の「発核部材」は「板状部材」であり、図4(d)の記載からすれば、幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い縦横比1を超えるものであり、また、弾性を有する金属材料からなるものであるから、本願発明13の「幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い縦横比1を超える1枚の弾性を有する板片」に相当する。
また、引用発明の「蓄熱カプセル内の対向する括れ部」と本願発明13の「板片固定部」は、板状部材(板片)を固定する部材である点で一致する。
そして、引用発明の板状部材は、図4(d)に記載された形状からすればI字型であり、その「切込部」は、本願発明13の板片の「切れ目」に相当し、引用発明の板状部材は、括れ部の間に、撓められた状態で架け渡されているから、当該板片は、「切れ目が形成された板片の部分に圧縮応力が加えられるように撓んでおり、前記板片は、I字型に形成されており、無荷重状態の前記板片における長手方向の寸法よりも短い間隔で配置された一対の板片固定部の間で撓んでいる」ものと認められる。
また、引用発明は発核部材を構成する板状部材が形状変化することにより過冷却状態を解除するものである(上記第5 1.(3)参照。)から、引用発明の「発核部材」は、本願発明13の「過冷却解除素子」に相当する。
してみると、本願発明13と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

【一致点】
幅方向の寸法よりも縦方向の寸法の方が長い縦横比1を超える1枚の弾性を有する板片と、一対の板片固定部を有し、一対の前記板片固定部の間に前記板片を固定する部材を備え、前記板片には、切れ目が形成され、前記板片は、前記切れ目が形成された前記板片の部分に圧縮応力が加えられるように撓んでおり、前記板片は、I字型に形成されており、無荷重状態の前記板片における長手方向の寸法よりも短い間隔で配置された一対の前記板片固定部の間に板片の両端部が挟まれることによって、撓んでいる過冷却解除素子。

【相違点】
本願発明13は板片を固定する部材が、I字型の固定部材であるのに対して、引用発明は対向する括れ部を有する蓄熱カプセルである点

(2)相違点についての判断
上記相違点について検討すると、引用発明は、蓄熱材を収容する蓄熱カプセル自体に括れ部を設けて板片を固定する部材として構成したものであるが、これをI字型に構成した場合には蓄熱カプセルとしての構成を維持できず、そのような構成の変更を当業者が容易に想到できるとはいえない。
また、前置報告書で示された引用文献2の上記記載された事項が公知であるものの、当該引用文献2記載の過冷却解除手段は、蓄熱容器とは別体の板片を固定する部材として構成され、蓄熱容器内に封入されて、外部から押すことで作動するものであり(上記第5 2.(1)参照。)、蓄熱カプセルの一部として構成された括れ部で発核部材を支持し、蓄熱カプセルを変形させることにより発核部材を作動させる(上記第5 1.(3)参照。)引用発明において、引用文献2記載の過冷却解除手段を採用する動機付けはなく、むしろ、構成上の阻害要因があるといえる。
そうすると、当業者といえども引用文献2に記載された事項を踏まえても、本願発明13の上記相違点に係る構成を容易に想到できたとはいえない。
よって、本願発明13は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本願発明1から6について
本願発明1と引用発明を対比すると、本願発明1は板片が「板片における長手方向に延びた中空き部」を有するのに対し、引用発明は板状部材(板片)が中空き部を有していない点で、少なくとも相違する。
上記相違について検討すると、引用発明の板状部材(板片)に中空き部を設ける動機付けは認められない。
また、図4(d)を参照すれば、引用発明の板状部材の切込部(切れ目)は、板状部の中心線を越えて切り欠かれたものであるから、板状部材の長手方向に中空き部を設けた場合には、切込部と中空き部が繋がって板状部材が分離されてしまうことになるから、引用発明に中空き部を設けるには構成上の阻害要因があるといえる。
よって、引用発明の板状部材(板片)に中空き部を設けることが容易であるということはできず、本願発明1を引用発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、請求項2ないし6は請求項1を引用するものであるから、本願発明1が引用発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本願発明2ないし6も引用発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3.本願発明7から11について
本願発明7も、本願発明1同様、板片が「板片における長手方向に延びた中空き部」を有するものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、請求項8ないし11は請求項7を引用するものであるから、本願発明7が引用発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない以上、本願発明8ないし11も引用発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

4.本願発明12について
本願発明12と引用発明を対比すると、本願発明12は板片がU字型に形成されているのに対し、引用発明は板状部材(板片)が短冊状に形成されている点で、少なくとも相違する。
上記相違について検討すると、引用発明の板状部材(板片)をU字型にする動機付けは認められない。
また、引用発明の板状部材の切込部(切れ目)は、板状部の中心線を越えて切り欠かれたものであるから、板状部材をU字型に構成し場合には、切込部により板状部材が分離されてしまうことになるから、引用発明の板状部材をU字型にすることには構成上の阻害要因があるといえる。
よって、引用発明の板状部材(板片)をU字型にすることが容易であるということはできず、本願発明12を引用発明から当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては本願発明13を拒絶することはできないし、本願発明1?12についても、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-07 
出願番号 特願2014-79970(P2014-79970)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F28D)
P 1 8・ 113- WY (F28D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西山 真二  
特許庁審判長 山崎 勝司
特許庁審判官 井上 哲男
槙原 進
発明の名称 過冷却解除素子および過冷却解除装置  
代理人 大宅 一宏  
代理人 吉田 潤一郎  
代理人 梶並 順  
代理人 上田 俊一  
代理人 松岡 隆裕  
代理人 曾我 道治  

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