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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G02B
管理番号 1347507
審判番号 不服2017-16690  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-11-09 
確定日 2019-01-22 
事件の表示 特願2014-48113「タッチパネル,表示装置及び光学シート,並びに光学シートの選別方法及び光学シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月1日出願公開,特開2015-172642,請求項の数(9)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 事案の概要
1 手続等の経緯
特願2014-48113号は,平成26年3月11日を出願日とする特許出願であって,その手続等の経緯は,以下のとおりである。
平成29年 6月15日付け:拒絶理由通知書
平成29年 8月16日差出:意見書
平成29年 8月16日差出:手続補正書
平成29年 8月17日付け:拒絶査定
平成29年11月 9日差出:審判請求書
平成29年11月 9日差出:手続補正書
平成30年 9月14日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月 5日差出:意見書
平成30年11月 5日差出:手続補正書

2 原査定の拒絶の理由
平成29年8月17日付け拒絶査定(以下「原査定」という。)の拒絶の理由は,概略,本件出願の請求項1?請求項11に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用例1:特開2011-221420号公報
引用例2:特開2008-96781号公報
引用例3:特開2014-32960号公報
引用例4:特開2003-121620号公報
引用例5:特開2003-240922号公報
引用例6:特開2013-214059号公報
なお,主引用例は引用例1であり,引用例2は副引用例,引用例3?引用例6は周知技術を示す文献である。

3 当合議体の拒絶の理由
平成30年9月14日付け拒絶理由通知書で通知した拒絶の理由(以下「当合議体の拒絶の理由」という。)は,概略,本件出願の請求項1?請求項3,請求項5?請求項8,請求項10及び請求項11に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,というものである。
引用文献1:特開2010-128255号公報
引用文献2:特開2003-121620号公報
なお,主引用例は引用文献1であり,引用文献2は,引用文献1に記載された発明の構成を推認させる参考文献である。

4 本願発明
本件出願の請求項1?請求項9に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」?「本願発明9」という。)は,平成30年11月5日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項9に記載された事項によって特定されるとおりの,以下のものである。
「【請求項1】
光学シートを構成部材として有するタッチパネルであって,前記光学シートは,一方の面に凹凸形状を有してなり,内部へイズが5?30%であり,前記凹凸形状の三次元平均傾斜角(θa_(3D))が3.0?9.0度であり,かつ,前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し,透過した光について,凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し,正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と,正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に,下記式(I)の関係を満たし,前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり,画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられるタッチパネル。
1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦2.0 (I)

【請求項2】
前記正透過方向の仮想強度の1/2の輝度を示す拡散角度を「α」とし,αの絶対値が1.4?3.0度である請求項1に記載のタッチパネル。

【請求項3】
前記正透過方向の仮想強度の1/3の輝度を示す拡散角度を「β」とし,βの絶対値が1.9?5.0度である請求項1又は2に記載のタッチパネル。

【請求項4】
画素密度300ppi以上の表示素子の前面に光学シートを有してなる表示装置であって,前記光学シートは,一方の面に凹凸形状を有してなり,内部へイズが5?30%であり,前記凹凸形状の三次元平均傾斜角(θa_(3D))が3.0?9.0度であり,かつ,前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し,透過した光について,凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し,正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と,正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に,下記式(I)の関係を満たし,前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度である,表示装置。
1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦2.0 (I)

【請求項5】
一方の面に凹凸形状を有する光学シートであって,前記光学シートは,内部へイズが5?30%であり,前記凹凸形状の三次元平均傾斜角(θa_(3D))が3.0?9.0度であり,かつ,前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し,透過した光について,凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し,正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と,正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に,下記式(I)の関係を満たし,前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり,画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられる光学シート。
1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦2.0 (I)

【請求項6】
前記正透過方向の仮想強度の1/2の強度を示す拡散角度を「α」とし,αの絶対値が1.4?3.0度である請求項5に記載の光学シート。

【請求項7】
前記正透過方向の仮想強度の1/3の強度を示す拡散角度を「β」とし,βの絶対値が1.9?5.0度である請求項5又は6に記載の光学シート。

【請求項8】
一方の面に凹凸形状を有する光学シートの選別方法であって,(a)前記光学シートの内部へイズが5?30%を満たし,前記凹凸形状の三次元平均傾斜角(θa_(3D))が3.0?9.0度であり,かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し,透過した光について,凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し,正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と,正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に,下記式(I)を満たし,前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であるものを光学シートとして選別する,画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられる光学シートの選別方法。
1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦2.0 (I)

【請求項9】
一方の面に凹凸形状を有する光学シートの製造方法であって,(a)前記光学シートの内部へイズが5?30%を満たし,前記凹凸形状の三次元平均傾斜角(θa_(3D))が3.0?9.0度であり,かつ(b)前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し,透過した光について,凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し,正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と,正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に,下記式(I)を満たし,前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であるように製造する,画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられる光学シートの製造方法。
1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦2.0 (I)」

第2 当合議体の拒絶の理由について
1 引用文献1の記載及び引用発明
(1) 引用文献1の記載
当合議体の拒絶の理由で引用され,本件出願前に頒布された刊行物である前記引用文献1には,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や,判断に活用した箇所を示す。
ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防眩性に優れた光学シートの製造方法及び該方法により得られる光学シートに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の表面に用いる光学シートとして,基材の観察者側の面に防眩性を有する機能層が積層されたものが知られている。
…(省略)…
【0003】
…(省略)…従来から,防眩性を評価する方法として,ヘイズ値や内部ヘイズと総ヘイズの比が一般に用いられてきた。
…(省略)…
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら,同じヘイズ値であっても防眩性が異なる場合が多く見られ,ヘイズ値及び内部ヘイズと総ヘイズの比を指標としての製造では,必ずしも良好な光学シートを安定に生産することはできないことがわかった。
本発明はこのような状況下,防眩性の高い光学シートを安定して供給する製造方法及び防眩性の高い光学シートを提供することを目的とする。」

イ 「【課題を解決するための手段】
【0006】
…(省略)…
【0007】
…(省略)…
本発明者らは,…(省略)…拡散正反射方向を中心にして,特定の角度範囲の拡散反射強度の総和を用いることで,防眩性の評価を簡便に行い得ること,及び光学シートの製造過程において,これを指標として,材料の特定,製造条件などを制御することで,防眩性の高い光学シートを効率よく,且つ安定して製造し得ることを見出した。
…(省略)…
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,従来のヘイズ値では評価し得なかった防眩性の評価が簡便に行え,防眩性の高い光学シートを効率よく製造する方法を提供することができる。」

ウ 「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
…(省略)…
図3に示すような光学シートについて5の方向から可視光線を照射すると,6の方向に正透過されるとともに,一部の光が拡散される。この6の方向,すなわち,0度における透過強度が正透過強度Qである。また,拡散正透過±2度と拡散正透過±1度での透過強度をそれぞれ測定し,該強度を直線で結び,拡散正透過角度(0度)に外挿した透過強度を仮想正透過強度Uと定義する(図4参照)。
そして,光学シートの製造過程において,Q/Uを指標として,材料の選定,製造条件の制御などを行うことにより,防眩性の高い光学シートを効率よく製造することを可能とするものである。
なお,拡散透過強度の測定は,具体的には以下のように測定する。
【0011】
(拡散透過強度の測定方法)
光学シートの裏面から(光学シートの観察者側と反対側の面)から垂直に可視光線を照射する。光束が光学シート面から入射し,拡散透過した光を-85度?+85度までの範囲で1度ごとに受光器を走査することにより拡散透過強度を測定する。なお,拡散透過強度を測定する装置については,特に制限はないが,本発明においては,日本電色工業(株)製「GC5000L」を使用した。なお,本測定においては,-85度?+85度間での範囲を測定したが,-1,-2,0,+1および+2度のみの測定を行うことで簡便な測定ができオンラインでの自動調整も容易となる。
【0012】
光学シートの仮想正透過強度に対する正透過強度の比が防眩性を決定する理由を,概念図である図4を用いて説明する。
光学シートにおいて,一般に内部拡散要素及び外部拡散要素の分布は疎であるため,拡散特性の強度分布は前記拡散要素による拡散強度分布と拡散要素が存在せず正透過のみの強度を持つ二つの強度分布の和になる。ここで,Uは拡散要素による拡散特性の正透過を近似したものであり,Uが大きいということは,拡散要素の比率が大きいことを意味する。したがって,Q/Uは光学シートの中で,防眩性に全く寄与しない平面および内部拡散の存在しない部分の面積と,防眩性に寄与する拡散要素の存在する部分の面積との比を指し示す尺度となっているため,Q/Uが防眩性を決定する指標として優れているものと推察している。
【0013】
本発明の製造方法では,下記式(I)を指標として制御することが特徴である。
Q/U<21.4 (I)
Q/Uが21.4未満となるように製造することによって,防眩性に優れた光学シートを得ることができる。より良好な防眩性を得るとの観点からは,Q/Uは7.2未満であることが好ましく(式(II)Q/U<7.2),5.7未満であることがさらに好ましい(式(III)Q/U<5.7)。
【0014】
本発明におけるQ/U<21.4を達成するには,内部拡散要素及び外部拡散要素によって透過輝度分布及び強度を調整することによって達成できる。
…(省略)…
【実施例】
【0045】
…(省略)…
【0046】
製造例1
透明基材としてトリアセチルセルロース(富士フィルム(株)製,厚さ80μm)を用意した。透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA),ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA),及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)の混合物(質量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)を用い(屈折率1.51),これに透光性粒子として,ポリスチレン粒子(屈折率1.6,平均粒径3.5μm,(d75-d25)/MVが0.05)及びスチレン-アクリル共重合粒子(屈折率1.56,平均粒径3.5μm,(d75-d25)/MVが0.04)を,透明樹脂100質量部に対して,各々18.5及び3.5質量部含有させた。これに溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を,透明樹脂100質量部に対して,190質量部配合して得られた樹脂組成物を,前記透明基材に塗工し,0.2m/sの流速で70℃の乾燥空気を流通させ,1分間乾燥させた。その後,紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm^(2))透明樹脂を硬化させ,光学シート(防眩シート)を作製した。塗膜厚は3.5μmとした。この光学シートに関し,上記方法にて評価した結果を第2表に示す。
【0047】
製造例2?7及び製造例10?18
製造例1において,透明基材の種類,透明樹脂の種類,透光性粒子の種類及び含有量,溶剤の種類及び含有量,乾燥条件,及び塗膜厚を第1表に記載するように変化させて光学シート(防眩シート)を作製した。それぞれの光学シートに関し,製造例1と同様に評価した結果を第2表に示す。
…(省略)…
【0050】
【表1】

【0051】
A;ポリスチレン粒子(屈折率1.6,平均粒径3.5μm,(d75-d25)/MVが0.05)
…(省略)…
M;ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA),ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA),及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)の混合物(質量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)(屈折率1.51)
…(省略)…
Y;トルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合物(質量比7:3)
【0052】
【表2】

…(省略)…
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の光学シートの製造方法によれば,従来のヘイズ値では評価し得なかった防眩性の評価が簡便に行え,防眩性の低下の少ない光学シートを効率よく製造することができる。」

エ 図3,図4
【図3】

【図4】


(2) 引用発明
ア 引用発明1
引用文献1の【0010】,【0011】,【0046】及び【0050】には,製造例6として,次の「透明基材の観察者側の面に厚さ3.5μmの塗膜を有する防眩シート」の発明が記載されている(以下「引用発明1」という。)。
なお,【0046】に記載の「トリアセチルセルロース」は,材料ではなくフィルムのことであるから,「トリアセチルセルロースフィルム」と読み替えた。また,「Q」及び「U」の定義は,【0010】及び【0011】の記載,並びに,図4を基に記載した。
「 透明基材としてトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を用意し,
透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA),ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA),及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)の混合物(質量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)を用い(屈折率1.51),これに透光性粒子として,ポリスチレン粒子(屈折率1.6,平均粒径3.5μm,(d75-d25)/MVが0.05)を,透明樹脂100質量部に対して16質量部含有させ,これに溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を,透明樹脂100質量部に対して,190質量部配合し,
得られた樹脂組成物を透明基材に塗工し,1m/sの流速で55℃の乾燥空気を流通させ,1分間乾燥させ,
その後,紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm^(2))透明樹脂を硬化させて作製した,透明基材の観察者側の面に厚さ3.5μmの塗膜を有する防眩シートであって,
防眩シートの観察者側(塗膜側)と反対側の面から垂直に可視光線を照射し防眩シートの塗膜側の面から拡散透過する光を,光が拡散されずに透過する角度を0度として-85度?+85度までの範囲で1度ごとに測定し,横軸が角度で縦軸が光強度のグラフとしたときの,
0度の光強度をQとし,
+2度における光強度と+1度における光強度を直線で結んで外挿して得られる0度の光強度は,-2度における光強度と-1度における光強度を直線で結んで外挿して得られる0度の光強度と同じ値となるところ,これをUとしたとき,
Q/Uが1.65であり,
内部ヘイズが29.7%である,
防眩シート。」

イ 引用発明2
同様に,引用文献1には,製造例6として,次の発明が記載されている(以下「引用発明2」という。)。
「 透明基材としてトリアセチルセルロースフィルム(厚さ80μm)を用意する工程,
透明樹脂としてペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA),ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA),及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)の混合物(質量比;PETA/DPHA/PMMA=86/5/9)を用い(屈折率1.51),これに透光性粒子として,ポリスチレン粒子(屈折率1.6,平均粒径3.5μm,(d75-d25)/MVが0.05)を,透明樹脂100質量部に対して16質量部含有させ,これに溶剤としてトルエン(沸点110℃)とシクロヘキサノン(沸点156℃)の混合溶剤(質量比7:3)を,透明樹脂100質量部に対して,190質量部配合する工程,
得られた樹脂組成物を透明基材に塗工し,1m/sの流速で55℃の乾燥空気を流通させ,1分間乾燥させる工程,
その後,紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm^(2))透明樹脂を硬化させる工程からなる,透明基材の観察者側の面に厚さ3.5μmの塗膜を有する防眩シートであって,
防眩シートの観察者側(塗膜側)と反対側の面から垂直に可視光線を照射し防眩シートの塗膜側の面から拡散透過する光を,光が拡散されずに透過する角度を0度として-85度?+85度までの範囲で1度ごとに測定し,横軸が角度で縦軸が光強度のグラフとしたときの,
0度の光強度をQとし,
+2度における光強度と+1度における光強度を直線で結んで外挿して得られる0度の光強度は,-2度における光強度と-1度における光強度を直線で結んで外挿して得られる0度の光強度と同じ値となるところ,これをUとしたとき,
Q/Uが1.65であり,
内部ヘイズが29.7%である,
防眩シートの作製方法。」

2 対比及び判断
(1) 対比
事案に鑑みて,本願発明5の「光学シート」と引用発明1の「防眩シート」を対比すると,以下のとおりとなる。
ア 凹凸形状
引用発明1の「防眩シート」は,「樹脂組成物を透明基材に塗工し,1m/sの流速で55℃の乾燥空気を流通させ,1分間乾燥させ」,「その後,紫外線を照射して(窒素雰囲気下にて200mJ/cm^(2))透明樹脂を硬化させて作製した,塗膜厚が3.5μmの防眩シート」である。また,引用発明1の「樹脂組成物」には,「透光性粒子として,ポリスチレン粒子(屈折率1.6,平均粒径3.5μm,(d75-d25)/MVが0.05)」が含まれる。
引用発明1の「塗膜」の厚さ(3.5μm)と「透光性粒子」の平均粒径(3.5μm)からみて,引用発明1の「防眩シート」は,塗膜側の面に凹凸形状を有するといえる。
そうしてみると,引用発明1の「防眩シート」は,本願発明5の「光学シート」の,「一方の面に凹凸形状を有してなり」という要件を満たす。

イ 内部ヘイズ
引用発明1の「防眩シート」は,「内部ヘイズが29.7%である」。
そうしてみると,引用発明1の「防眩シート」は,本願発明5の「光学シート」の,「内部へイズが5?30%であり」という要件を満たす。

ウ 式(I)の関係
引用発明1は,「防眩シートの観察者側(塗膜側)と反対側の面から垂直に可視光線を照射し防眩シートの塗膜側の面から拡散透過する光を,光が拡散されずに透過する角度を0度として-85度?+85度までの範囲で1度ごとに測定し,横軸が角度で縦軸が光強度のグラフとしたときの」,「0度の光強度をQとし」,「+2度における光強度と+1度における光強度を直線で結んで外挿して得られる0度の光強度は,-2度における光強度と-1度における光強度を直線で結んで外挿して得られる0度の光強度と同じ値となるところ,これをUとしたとき」,「Q/Uが1.65であ」る。
そうしてみると,引用発明1の「防眩シート」の,「Q」が取る値,及び「U」が取る値は,それぞれ,本願発明5の「光学シート」の,「正透過方向の強度」が取る値,及び「正透過方向の仮想強度」が取る値と同じになると考えられる。そして,引用発明1の「防眩シート」においては,「Q/Uが1.65であ」るから,引用発明1の「防眩シート」は,本願発明5の「光学シート」の,式(I)の関係を満たすといえる。
(当合議体注:下記式(I)は,以下の式である。
1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦2.0 (I)
)

エ 光学シート
以上ア?ウを勘案すると,引用発明1の「防眩シート」は,本願発明5の「光学シート」に相当する。

(2) 一致点及び相違点
ア 一致点
本願発明5と,引用発明1は,次の構成で一致する。
「 一方の面に凹凸形状を有する光学シートであって,前記光学シートは,内部へイズが5?30%であり,かつ,前記光学シートの凹凸形状を有する面とは反対側の面方向から前記光学シートに垂直に可視光線を照射し,透過した光について,凹凸形状を有する面側から一定角度範囲の強度を測定し,正透過方向に対して+2度での強度と+1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度と,正透過方向に対して-2度での強度と-1度での強度とを結ぶ直線を正透過角度に外挿した強度との平均値を「正透過方向の仮想強度」とした際に,下記式(I)の関係を満たす,光学シート。
1.0≦正透過方向の強度/正透過方向の仮想強度≦2.0 (I)」

イ 相違点
本願発明5と引用発明1は,以下の点で相違する。
(相違点1)
「光学シート」について,本願発明5は,「画素密度300ppi以上の表示素子の前面に用いられる」であるのに対して,引用発明1は,「防眩シート」である点。

(相違点2)
「光学シート」について,本願発明5は,「前記凹凸形状の三次元平均傾斜角(θa_(3D))が3.0?9.0度であり」,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり」という構成を具備するのに対して,引用発明1は,これが明らかではない点。

(3) 判断
事案に鑑みて,相違点2について検討する。
引用発明1は,表2に記載された諸量は明らかであるとしても,これら諸量を根拠として,引用発明1の「防眩シート」が,前記相違点2に係る本願発明5の,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり」という構成を具備するとはいいがたい。すなわち,Qは0度の光強度に基づく値であり,Uは±1度及び±2度の光強度に基づく値であり,ヘイズは±2.5度以上の光強度に基づく値であり,これら諸量から,3.5?8.0度の光強度を合理的に導き出すことはできない。

また,引用文献1には,「正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度」に関する知見は,記載されておらず,示唆もされていない。すなわち,引用発明1は,「Q/Uが防眩性を決定する指標として優れている」(【0012】)という知見に基づく発明にとどまるといえる。

以上のとおりであるから,たとえ当業者といえども,引用発明1に基づいて,上記相違点2に係る本願発明5の構成に到ることはないといえる。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明5は,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

(4) 他の発明について
ア 本願発明6及び本願発明7について
本願発明6及び本願発明7は,いずれも,前記相違点2で挙げた,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり」という構成を具備する「光学シート」の発明である。
したがって,本願発明6及び本願発明7も,本願発明5と同じ理由により,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

イ 本願発明1?本願発明4について
また,本願発明1?本願発明4は,いずれも,前記相違点2で挙げた,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり」という構成を具備する「光学シート」を有するタッチパネル又は表示装置である。
したがって,本願発明1?本願発明4も,本願発明5と同じ理由により,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

ウ 本願発明8について
本願発明8は,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であるものを光学シートとして選別する」,「光学シートの選別方法」の発明である。
これに対して,前記(5)で述べたとおり,引用文献1には,前記相違点2で挙げた,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり」という構成を具備する「光学シート」が記載されていない。
そうしてみると,たとえ当業者といえども,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であるものを光学シートとして選別する」ような「光学シートの選別方法」を発明することはないといえる。
したがって,本願発明8も,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

エ 本願発明9について
本願発明9の「光学シートの製造方法」は,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であるように製造する」,「光学シートの製造方法」である。
これに対して,前記(5)で述べたとおり,引用文献1には,前記相違点2で挙げた,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり」という構成を具備する「光学シート」が記載されていない。引用文献1には,前記1(2)イに記載したとおりの引用発明2が記載されているにとどまる。
そうしてみると,たとえ当業者といえども,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であるように製造する」ような「光学シートの製造方法」を発明することはないといえる。
したがって,本願発明9も,引用文献1に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

(5) 小括
以上のとおりであるから,当合議体の拒絶の理由によっては,もはや本件出願を拒絶することはできない。

第3 原査定について
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1には,「前記正透過方向の仮想強度の1/10の輝度を示す拡散角度を「γ」とし,γの絶対値が3.5?8.0度であり」という構成を具備する「光学シート」は記載も示唆もされていない。
また,引用例2?引用例6についてみても,同様である。
したがって,本願発明5は,引用例1?引用例6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。
本願発明1?本願発明4及び本願発明6?本願発明9についても,同様に,引用例1?引用例6に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第4 まとめ
以上のとおり,当合議体の拒絶の理由,及び原査定の拒絶の理由によっては,本件出願を拒絶することはできない。
また,他に本件出願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-08 
出願番号 特願2014-48113(P2014-48113)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G02B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 徹  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 清水 康司
樋口 信宏
発明の名称 タッチパネル、表示装置及び光学シート、並びに光学シートの選別方法及び光学シートの製造方法  
代理人 大谷 保  
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