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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 A21D
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A21D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A21D
管理番号 1347516
審判番号 不服2017-13034  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-09-04 
確定日 2019-01-23 
事件の表示 特願2014-555289「グルテンフリー調理用製品」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日国際公開、WO2013/114048、平成27年 3月 5日国内公表、特表2015-506694、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年1月31日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年2月1日(FR)フランス)を国際出願日とする出願であって、平成29年4月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年9月4日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がされたものである。
その後、当審において平成30年8月3日付けで拒絶理由が通知され、同年10月23日付けで意見書及び手続補正書が提出された。

第2 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明7」という。)は、平成30年10月23日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
- アルファ化グルテンフリーデンプンを含むグルテンフリーデンプンと、
- エンドウマメ由来の繊維と、
- エンドウマメ由来のタンパク質と、
を含み、
前記グルテンフリーデンプンの含有率が、総重量の35.8?41.4%であり、
前記エンドウマメ由来の繊維の含有率が、総重量の4.9?9.3%であり、
前記エンドウマメ由来のタンパク質の含有率が、総重量の1.4?3.2%である、グルテンフリー焼成品用組成物。
【請求項2】
前記グルテンフリーデンプンが、非変性グルテンフリーデンプン、変性グルテンフリーデンプン又はこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記グルテンフリーデンプンが、非変性グルテンフリーデンプンである、ことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
焼成することが意図され、請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を用いることによって得られるグルテンフリー生地。
【請求項5】
請求項4に記載の生地を焼成することによって得られる、グルテンフリー焼成品。
【請求項6】
セリアック病に罹患している個体による摂食が意図される焼成品の生産を目的とする、請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項7】
セリアック病に罹患している個体による摂食が意図される焼成品の家庭での製造のためのミックスであって、請求項1?3のいずれか1項に記載の組成物を含むことを特徴とする、ミックス。」

第3 原査定の概要
原査定の拒絶の理由は、本願の請求項1?7に係る発明は、当業者が下記の引用文献1?3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
引用文献1.特開2011-36212号公報
引用文献2.米国特許出願公開第2001/0055642号明細書
引用文献3.国際公開第2010/100368号

第4 引用文献の記載及び引用発明
(1)引用文献1には、以下の事項が記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審による。以下同じ。)。
「【請求項1】
少なくとも穀粉を含む菓子用プレミックスにおいて、穀粉の主成分が大豆粉及びグネツム種子粉であることを特徴とする菓子用プレミックス。
・・・
【請求項4】
穀粉は、米粉、アルファ化米粉、澱粉、及びアルファ化澱粉からなる群より選択される少なくとも1種の補助穀粉を合計で40重量%以下含有する請求項1?3のいずれかに記載の菓子用プレミックス。」
「【0035】
実施例1
大豆粉(生大豆を粉末化したもの)50重量部、グネツム種子粉50重量部を混合してスポンジケーキ用プレミックスを調製した。調製したスポンジケーキ用プレミックス全量、全卵179重量部、上白糖126.3重量部、無塩バター21重量部、及び牛乳52.6重量部を混合し泡立ててスポンジケーキ用生地を調製した。その後、調製したスポンジケーキ用生地を型に入れ、オーブン(上火175?180℃、下火170℃)で25分焼成することによりスポンジケーキを製造した。
【0036】
実施例2?10及び比較例1?3
下記表1に記載の配合を採用した以外は実施例1と同様の方法でスポンジケーキを製造した。なお、きな粉の原料としては黒大豆を用い、澱粉としてはコーンスターチを用い、アルファ化澱粉としてはワキシーアルファ-Yを用いた。
【0037】
【表1】



これらの記載、特に実施例3、5に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「大豆粉、グネツム種子粉、澱粉としてコーンスターチ、アルファ化澱粉としてワキシーアルファ-Yを含むスポンジケーキ用プレミックス。」

(2)引用文献2には、以下の事項が記載されている(当審訳を示す。)。
「20.以下を含む大豆ベース製品の製造方法。
大豆成分およびアルファ化デンプンを含む乾燥成分を、アルファ化デンプンを糊化するのに十分な温度で、水を含む湿潤成分と組み合わせて生地を調製すること;ここで、大豆成分は、乾燥成分の約60重量%?約90重量%、α化デンプンは、乾燥成分の約10重量%?約40重量%、湿潤成分は生地の約25重量%?約45重量%である、
生地をシート化し、生地から生地片を切断すること、
生地片を焼成すること」(4頁右欄)
「26.湿潤成分がさらにミルクを含む、請求項20に記載の方法。」(4頁右欄)
「[0011]α化デンプンは、好ましくは、穀物または穀類デンプン、塊茎デンプン、根デンプン、植物デンプン、マメ科デンプン、ハイブリッドデンプン、およびこれらの混合物からなる群から選択される。有利には、これらは、アルファ化コーンスターチ、米デンプン、アロールートデンプン、エンドウ豆デンプン、タピオカデンプン、およびジャガイモデンプンを含むことができる。」(2頁左欄5?10行)

(3)引用文献3には、以下の事項が記載されている(対応する特表2012-519011号による訳を示す。)。
「【請求項1】
少なくとも1つの植物性タンパク質および少なくとも1つの植物性食物繊維を含有する造粒粉末であって、・・・造粒粉末。
・・・
【請求項12】
前記粉末が、エンドウタンパク質および不溶性植物性食物繊維、好ましくは豆科植物食物繊維、さらにより好ましくはエンドウ食物繊維を含有することを特徴とする、請求項1?10のいずれか一項に記載される造粒粉末。」
「【0021】
したがって、本発明の目的の1つは、動物性タンパク質に対する置き換えとしての植物性タンパク質を提起する・・・」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
引用発明の「コーンスターチ」、「ワキシーアルファ-Y」は、いずれもグルテンを含むものではないから、本願発明の「グルテンフリーデンプン」に相当し、引用発明の「ワキシーアルファ-Y」は、本願発明の「アルファ化グルテンフリーデンプン」に相当する。
引用発明の「スポンジケーキ用プレミックス」は、焼成品用組成物といえるものであって、グルテンを含まないから、本願発明の「グルテンフリー焼成品用組成物」に相当する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
アルファ化グルテンフリーデンプンを含むグルテンフリーデンプンを含むグルテンフリー焼成品用組成物。

[相違点1]
本願発明は、「エンドウマメ由来の繊維と、エンドウマメ由来のタンパク質と、を含み、」「エンドウマメ由来の繊維の含有率が、総重量の4.9?9.3%であり」、「エンドウマメ由来のタンパク質の含有率が、総重量の1.4?3.2%である」のに対し、引用発明はエンドウマメ由来の繊維と、エンドウマメ由来のタンパク質とを含まない点。
[相違点2]
本願発明は、「グルテンフリーデンプンの含有率が、総重量の35.8?41.4%」であるのに対し、引用発明はグルテンフリーデンプンの含有率を特定するものではない点。

(2)判断
上記相違点1について検討すると、引用文献1には、エンドウマメについて言及するところがないから、同文献は、相違点1に係る構成を示唆するものではない。
引用文献2には、エンドウ豆デンプンについて記載されているが、エンドウマメ由来の繊維、エンドウマメ由来のタンパク質、それらの重量割合については記載されていない。
引用文献3には、エンドウタンパク質とエンドウ食物繊維について記載されているとともに、動物性タンパク質をエンドウタンパク質に置き換える旨の示唆もあるといえる。しかし、引用文献1に、スポンジケーキ用プレミックスが全卵を含むことが記載されているものの、スポンジケーキにおける全卵をエンドウタンパク質に置き換えることは、技術常識に照らして普通のこととはいえず、引用文献3には、スポンジケーキ用プレミックスに用いることを示唆する記載はないことを踏まえると、引用文献3の動物性タンパク質をエンドウタンパク質に置き換える旨の示唆を踏まえても、引用発明に引用文献3のエンドウタンパク質とエンドウ食物繊維を採用することは当業者が容易に想到し得たとはいえない。また、引用文献1には、穀粉の主成分が大豆粉及びグネツム種子粉であることが記載されていることから、引用発明の大豆をエンドウマメに変更することが当業者にとって容易であるともいえない。
よって、引用発明において、相違点1に係る本願発明1の構成を採用することは、引用文献2、3の開示を参照しても、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
したがって、上記相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?7について
本願発明2?7も、上記相違点1に係る本願発明1の構成と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献1?3に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

なお、引用文献2を主引用文献として検討しても、引用文献2に記載された発明はエンドウマメ由来の繊維と、エンドウマメ由来のタンパク質とを含まないから、上記相違点1と同様の点で本願発明1?7と相違し、その判断についても同様となる。

第6 当審拒絶理由について
当審では、請求項1に記載されたグルテンフリーデンプン、エンドウ豆由来の繊維の含有率の数値の根拠となる記載が当初明細書等にないことから、本願は、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をしたものであり、請求項1?7には、アルファ化されたグルテンフリーデンプンが含まれることの特定がないから、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項1号に規定する要件を満たしておらず、請求項4の「レシピに用いることによって得られる」の技術内容が明確でないから、特許請求の範囲の記載が特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知した。
しかし、平成30年10月23日付けの手続補正書により、請求項1のグルテンフリーデンプン、エンドウ豆由来の繊維の含有率の数値が補正され、請求項1に「アルファ化グルテンフリーデンプンを含む」ことを特定し、請求項4の「レシピに用いることによって得られる」との記載を削除する補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1?7は、当業者が引用文献1?3に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2019-01-08 
出願番号 特願2014-555289(P2014-555289)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A21D)
P 1 8・ 55- WY (A21D)
P 1 8・ 537- WY (A21D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小金井 悟  
特許庁審判長 田村 嘉章
特許庁審判官 井上 哲男
紀本 孝
発明の名称 グルテンフリー調理用製品  
代理人 布施 行夫  
代理人 大渕 美千栄  

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